説明

アルケニルシラン調製方法

【発明の詳細な説明】
本発明は、アルケニルシラン類を調製するための方法に関する。より詳しく述べるならば、本発明は、ガス状のアセチレン列炭化水素をケイ素と結合した水素原子を含有しているガス状シランと、所望のアルケニルシランの収率を最大限にし且つ望ましくない副生物とガス状のアセチレン列炭化水素を処理することに関連する危険との両方を最小限にする条件下にヒドロシリル化触媒の存在下で反応させることによって、アルケニルシラン類を調製することに関する。
本発明の目的は、ケイ素と結合した1又は2個の炭化水素基を任意的に含むアルケニルシラン類、特にビニルハロシラン類及びビニルアルコキシシラン類の調製方法を提供することである。この方法は、少量の望まれない副生物、特にジシリルアルカン類、のみを生じ、その上アセチレン列炭化水素反応物の爆発的分解に寄与しない条件下での、アセチレン列炭化水素とSiH含有シランとの反応を伴う。
本発明の方法は、アセチレン列炭化水素とSiH含有シランとのガス状混合物と接触させらる比較的薄い移動液体層の形をした反応媒体を特徴とする。この反応媒体は、可溶化されたヒドロシリル化触媒と反応の生成物として生成されるアルケニルシランとを含んでなる。この反応媒体は任意的に、上記の触媒、アルケニルシラン及びアセチレン列炭化水素反応物のための溶媒である有機液体を含むことができる。
本発明は、アセチレン列炭化水素とケイ素結合水素原子を含有しているシランとの反応によりアルケニルシランを調製するための改良方法であって、反応が当該アルケニルシランと可溶化されたヒドロシリル化触媒とを含んでなる液体媒体の存在下で行われる方法を提供する。改良点には次に掲げる(a),(b)及び(c)、すなわち、(a)上記アセチレン列炭化水素及び上記シランから本質的になる均質ガス状混合物を、この混合物が上記アルケニルシラン及び上記触媒を含んでなる、当該アセチレン列炭化水素のための効果的な溶媒である液体反応媒体の少なくとも一つの移動層の表面と接触させられる反応器へ導き入れることによって、当該アセチレン列炭化水素の臨界爆発分解圧力により低い圧力下に上記の反応を行なわせること、(b)上記混合物中のアセチレン列炭化水素及びガス状シランの相対濃度を炭化水素のシランに対する1よりも大きいモル比に相当する濃度に維持すること、そして、(c)上記均質混合物及び上記液体層の流量を調整して、上記反応器内の温度を上記アルケニルシランの生成に有利であり且つ当該アルケニルシランのそれ以上の反応及び上記アセチレン列炭化水素の分解には寄与しない水準に維持すること、が含まれる。
本発明の方法を特徴づける反応条件は、液体反応媒体の形態と、アセチレン列不飽和炭化水素とSiH含有シランとの混合物がこの反応媒体と接触する様式である。
この反応媒体は、ヒドロシリル化触媒と、そして本発明の方法の主要生成物として生成されるアルケニルシランとを含んでなる。下記において検討するように、反応媒体は任意的にて、アルケニルシラン、ヒドロシリル化触媒そしてアセチレン列炭化水素反応物のための溶媒である有機液体を含有する。
生成物収率の向上及び望ましくない副生物、特にジシリルアルカン、の量の減少は、反応媒体として比較的薄い移動液体層又は膜が存在することに由来する。反応媒体のこの形態は、アセチレン列炭化水素とSiH含有シランとの発熱反応により発生した熱が反応の場から運び去られる速度を大いに増大させる。この熱は、除去されないとすれば、アセチレン列炭化水素の分解及び/又は本発明の方法の生成物として生成されたアルケニルシランとSiH含有シランとが反応してジシリルアルカンを生成する速度を増大させることの原因となりかねない。
本発明の方法を実施するための反応器の好ましい態様では、二つのガス状反応物の混合物を反応媒体の少なくとも一つの薄層と、この層が反応器内の表面を流下している時に接触させる。好ましくは、上記の表面は垂直方向に配置される。移動層の厚さは一般に2mm未満である。反応媒体は、熱の均一な発生及び移動を保証するため層の全体を通して均一に配分すべきである。反応媒体の移動層の厚さ及びこの層が移動する速度についての最適な範囲は、反応器の大きさ及びガス状反応物の流量に応じてこれらの典型的範囲から多少変動しても差し支えない、ということを理解すべきである。ガス状反応物と反応媒体との相対的な方法は本発明の方法の運転可能性に関して重要ではないながらも、最も好ましくは、液体層とガス状反応物混合物とは反対方向に移動する。移動液体層とガス状反応物の流れとの接触の角度は、一般には90〜180℃である。実験室規模の反応器における液体層の流量は、一般には、反応器表面積1cm2当り約4cc/minから約24cc/minまでの範囲内である。
ガス状反応物の混合物が反応器へ導き入れられそして反応媒体の移動層と接触する速度は、アセチレン列炭化水素とSiH含有シランとの反応により発生する熱の量に影響を及ぼす。実験室規模の反応器におけるガス状反応物の流量は、一般には、標準温度及び圧力(25℃及び1気圧)の条件下で測定して約400cc/minから約1000cc/minまでである。ガス状反応物についての最適流量は、少なくとも幾分かは反応器の容量によって決められる。
液体の反応媒体がそれに沿って流れる表面は、反応器内に位置する1又は2以上の管の内面又は外面でよく、あるいは反応器自体の外殻でよい。
ガス状のアセチレン列炭化水素とSiH含有シランとの反応は発熱反応であるから、液体層への全表面積とこれらのガス状反応物が液体層へ吸収される速度とは、移動する液体層の温度を決定する二つの最も重要な因子である、ということは明らかなはずである。本発明の方法に従えば、この温度は一般に約30℃から約120℃までである。アセチレン炭化水素としてアセチレンを使用すれば、この温度範囲は好ましくは50℃から約80℃までである。この温度範囲外で運転すると、望まれないジシリルアルカンの収率が上昇する。
液体反応混合物を反応のために所望される温度範囲内に至るまで加熱してからガス状反応物混合物を導き入れる方が、一般には好ましい。反応がいったん開始されると、液体反応混合物を冷却して温度を所望の範囲内に維持することが必要とされるかもしれない。
本発明の方法の反応条件(2気圧より低い圧力及び30℃から約120℃までの温度)下でガスとして存在する末端に不飽和のあるアセチレン列炭化水素はいずれも、本発明の方法に従ってSiH含有シランと反応させることができる。これらのアセチレン列炭化水素は、式R1C≡CHにより表すことができ、この式でR1は水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。一般にはアセチレンが好ましい炭化水素であるが、これは、その価格、入手可能性、高い反応性、そしてこの反応物を使用して製造されるビニルシラン類の商業的な有用性に基づくものである。
ケイ素と結合した水素原子を有し且つ本発明の方法の条件下でガスとして存在するシランはいずれも、シラン反応物として使用することができる。これらのシランは、一般式HSiR2nX3-nで表すことができ、この式においてR2は一価の炭化水素基又は一価のハロゲン化炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子か又は炭素原子数1〜4個のアルコキシ基を表し、そしてnは0,1又は2である。好ましいシランではR2が存在する場合それはメチル基を表し、そしてXは塩素又はメトキシ基を表す。選択された特定のシランが周囲圧力下で約120℃により低い温度で沸騰しない場合、そのシランが沸騰する温度は反応器内の圧力を大気圧より低い圧力まで低下させることにより低下させることができる。
好ましいシラン類には、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン及びメチルジメトキシシランが含まれるが、これらに限定されるものではなく、この選択は、これらのシランを調製するのに必要とされる中間体の価格と入手可能性、及び最終のアルケニルシランの有用性に基づいている。
発明者らは、所望のアルケニルシランの収率は、SiH含有シランに対するアセチレン列炭化水素のモル比が少なくとも1:1である場合に、少量のジシリルアルカン副生物の生成を伴うだけで最小限にすることができる、ということを発見した。反応がアセチレンとメチルジクロロシランかあるいはジメチルクロロシランのいずれかとの反応である場合には、この比は好ましくは1.1:1と1.3:1との間である。反応物にはかかわりなく、SiH含有シラン1モル当り約3モルのアセチレン列炭化水素よりも高いアセチレン列炭化水素の相対濃度は、反応完了後の未反応アセチレン列炭化水素の存在を埋め合わせるようには所望のアルケニルシランの収率又は純度を実質上少しも向上させない。
過剰の炭化水素反応物は、回収しそして再循環させるか、あるいは化学反応もしくはガス抜きにより処分しなくてはならない。アセチレン列炭化水素の毒性及び爆発性性は、これらの物質の処分を甚だしく厄介にしかねず、またアルケニルシランを製造する経費を有意に増加させかねない。
未反応のアセチレン列炭化水素の量を減少させるための一つの方法は。直列につながれた二つの反応器を使用して、それにより第一の反応器から出てくる未反応のアセチレン列炭化水素をケイ素と結合した水素を有する追加のシランと混合し、第二の反応器へ進ませて、そして本発明の方法に従って処理することを必要とする。
液体反応媒体に溶ける公知のヒドロシリル化触媒のうちのいずれを使用しても、アセチレン列炭化水素とSiH含有シランとの反応を促進することができる。ヒドロシリル化触媒の最もよく使用される部類の一つは、周期表の白金族からの金属及びこれらの金属の化合物である。
塩化白金酸のような白金ハロゲン化物は、これらの化合物の触媒活性と、アルケニルシラン及びこの明細書の後の部分で検討される1又は2種以上の任意的な有機液体により形成される反応媒体におけるそれらの溶解度とに基づいて、本発明の方法にとっての触媒の好ましい群である。
ヒドロシリル化触媒の最適濃度は、少なくとも部分的には、液体反応媒体中に存在している二つの反応物といずれかの有機液体との組成にし、そして反応条件に依存する。典型的には、アセチレン列炭化水素とSiH含有シランとの反応を促進するのに必要とされる触媒の量は、反応器内に存在しているケイ素と結合した水素の100万モル当り約1グラム原子から約100グラム原子までの白金に相当する。連続プロセスの間には追加の触媒を加えて、反応媒体が反応器から抜き出されるにつれて失われた量に取って代えなくてはならない、ということが理解されよう。
可溶化されたヒドロシリル化触媒及び本発明の方法の所望の生成物として生成されたアルケニルシランのほかに、液体反応媒体は当該触媒及び当該アルケニルシランのための溶媒である少なくとも1種の有機液体を任意的に含むことができる。副生物、特に対応するジシリルアルカンの収率を低下させるために、有機液体はまたアセチレン列炭化水素のための効果的な溶媒であるべきである。有機液体についての一つの追加の必要条件は、反応帯域において生じる温度において沸騰又は急速に蒸発しないことである。
好ましい有機液体には、液体の脂肪族及び芳香族炭化水素、アルキレングリコールのアルキルエーテル、エーテル類及びケトン類が含められるが、これらには限定されない。好ましい有機液体には、トルエン、キシレン、エチレングリコールのジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが含まれるが、好ましい有機液体にはこれらには限定されない。これらの有機液体は、個々に使用することができ、あるいは個々の液体が互いに相溶性である限りは混合物として使用することができる。
本発明の液体反応媒体中に1又は2種以上の有機液体が存在している場合、それらは典型的には、液体反応媒体の10重量%から約80重量%まで、好ましくは10重量%から40重量%までを構成する。
この明細書の先の部分に開示されたように、アセチレン列炭化水素とSiH含有シランとの反応は移動する層又は膜の形をしている液体反応媒体中で起こる。本発明の方法の一つの態様によれば、上記の層又は膜は、液体反応媒体の流れを反応器内に位置する少なくとも一つの垂直方向の管の内壁に沿って導くことにより形成される。反応器は、これらの管を少なくとも一つ有し、そしてそれは、管の上端部及び下端部に位置する不浸透性の板で支持される。これらの板は、管の周囲全体を取囲んで管の外壁と接触し、そして反応器の外殻に達する。これらの板の形状配置は、反応器を上室、中央室及び下室に分ける。
反応器の上室には、液体反応媒体がそれを通って反応器へ入って上部の板の上面に流れ、そして管に入る、口が装備される。反応器の上室はまた、未反応のガス状物質を反応器からそれを通して抜き出すことのできる口をも有する。
液体反応媒体がそれを通って入る管の端部には、好ましくは、反応媒体の流れを管の壁に沿うように向けるために少なくとも一つの堰が装備される。管の外壁は、管内で起こる発熱反応により発生しそして管壁を通して伝えられる熱を除去するために、循環する液体冷却剤、好ましくは水、と接触する。この冷却液は、反応器の中央室を通って循環する。この配置は、時として「管側反応器」と呼ばれる。この種の反応器の例は、米国特許第4422899号明細書に記載された垂直管型の熱交換器である。本発明の方法に関係して使用するのに適した反応器は、上記の参照米国特許明細書の熱交換器の特徴であるノズル及び溢流管よりも、むしろ孔のあいていない連続管を有する。反応器の下室には、反応媒体をそれを通して反応器から抜き出して再循環させることのできる口が装備される。ガス状反応物の混合物は、反応器の下室へ導き入れられて、管のそれぞれを通って上方に向かう。好ましくは、反応物は、液体反応混合物を支えている各管の下方の端部の直下に配置される垂直向きのノズルを通して導き入れられる。
反応器内の圧力は、アセチレン列炭化水素が反応の温度において爆発分解を受けそうな圧力よりも低い。アセチレン列炭化水素としてアセチレンを使用すれば、この圧力は典型的には大気圧から絶対圧力で約2気圧までである。安全上の理由と、ガス状物質を加圧下で反応させるのに必要とされる余分な装置がなく、それにより反応器の設計が簡単になることに基づいて、大気圧がより好ましい。
別の種類の反応器操作によれば、ガス状反応物の混合物は管の外壁と反応器の外殻の内面とにより定められる前述の中央室へ導き入れられる。好ましい態様によれば、ガス状反応物の流れは液体反応媒体の各層又は膜に突き当るように向けられる。液体反応媒体は、この中央室の上部から入って、管の外壁に沿ってそして任意的に外殻の壁の内側に沿って下向きに流れ、またガス状反応物の流れは液体反応媒体の各層又は膜に突き当るように向けられる。この別の配置は、時として「外殻側反応器」と称される。この種の配置の利点には、より効率的な物質移動と、気相及び液相の混合のより以上の管理とが含められる。この態様では、冷媒は管の中を流れる。
外殻側反応器では、ガス状反応物の流れの方向及び流体反応媒体の流れの方向は90℃と180℃の間の角度をなすことができる。この種の好ましい反応器では、反応媒体がガス状反応物と接触する時に反応媒体の管の表面との接触を維持するため邪魔板が用意される。
以下に掲げる例は、本発明の一つの態様を説明しようとするものであって、特許請求項の範囲に定義された本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。別段の指示がない限りは、この例において明示された部数及び百分率は、全て重量によるものである。
外殻により完全に取囲まれた長さ20cmの管を3本有する実験室規模の垂直管反応器を使って、アセチレンとメタルジクロロシランとの反応を行わせた。上記の管は、水平方向に合わせた直径10cmの不浸透性の板により上端部及び下端部で支持され、そしてこの板は、管を完全に取囲みそして反応器の外殻とその周長に沿って接触して、そりにより反応器を上室、中央室及び下室に分けた。管の上端部及び下端部は、それぞれの板から約5mm突き出し、そして管の下端部は反応器の底から10cmの距離で終えていた。反応器の下室には、反応器内の3本の管のおのおのの開放端へアセチレン/メチルジクロロシラン混合物の個々を流れを向ける三つのノズルを備えたガス導管が装備された。これらのノズルは管の下端の1cm下方に位置した。反応器の下方部分には、液体反応媒体をそれぞれと通して抜き出す出口も設けられ、そして液体反応媒体を反応器の上室にある入口へポンプにより再循環させた。
上室には、上記の入口のほかに、未反応のガス状物質をそれを通して抜き出すことのできる出口が用意された。
反応器の中央室には、反応器の運転中に水をそれらを通して循環させて管の外表面と接触させる入口及び出口を用意した。
入口を通って反応器の上室に入った液体反応媒体は、この液体の流れを管の内壁に沿う方向に向ける堰を越えて流れることにより管の上端部に入った。
反応器の運転中は、ガス供給ノズルを通って反応器の下室に入るアセチレン及びメチルジクロロシランの三つの流れを、反応媒体がその中を下向きに流れる管を通して上方へ向かわせた。
第1表に列挙された量のメチルビニルジクロロシラン及び溶媒を混ぜ合わせ、次にこの混合物100部と0.05部の触媒溶液を混ぜ合わせて、最初の反応媒体を調製した。溶媒は、キシレン(1)、メチルエチルケトン(2)又はエチレングリコールのジメチルエーテル(3)であった。触媒溶液は、溶液1ml当り0.1ミリモルの白金を含有している塩化白金酸イソプロパノール溶液であった。
反応媒体を反応器を通して2■/minの流量でポンプ送りして、処理を開始した。反応器の中央室を通って流れる水は、サーモスタットで67℃の温度に維持した。熱電対により反応器の下室の液溜めの温度を監視して、循環水の温度を制御した。反応媒体の温度が67℃に達したところで、ガス状のアセチレン/シラン混合物の流れを開始した。アセチレンのシランに対するモル比は1.3:1であり、ガス状反応物の混合物は680cc/minの流量で導き入れた。反応媒体の容量は、過剰分を反応器の壁の溢流口を通して流出させて初期のレベルに維持した。これを集めて、そして8時間の反応期間の終りに蒸留して、反応の主生成物として生成されたメチルビニルジクロロシラを回収した。
メチルビニルジクロロシラン(A)の、反応の副生物である1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン(B)に対する重量比を、気流クロマトグラフィーを使って測定した。この重量比は第1表で報告される。


第1表のデータは、ジシリルエタン副生物に関するビニルシランの収率はアセチレンにとってより効果的な溶媒である溶媒を使うことにより増加させることができる、ということを証明する。エチレングリコールのジメチルエーテルは、メチルエチルケトンよりも効果的なアセチレンのための溶媒であり、そしてメチルエチルケトンはキシレンよりも効果的な溶媒である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式R1C≡CH(ここに、R1は水素又は炭素原子数1〜4個のアルキル基を表す)で示されるアセチレン列炭化水素とケイ素結合水素原子を含有しているシランとの反応によりアルケニルシランを調製するための方法であり、該反応が上記アルケニルシランと可溶化されたヒドロシリル化触媒とを含んでなる液体媒体の存在下で行われる方法であった、(a)上記アセチレン列炭化水素及び上記シランから本質的になる均質ガス状混合物を、この混合物が上記アルケニルシラン及び上記触媒を含んでなる、当該アセチレン列炭化水素のための効果的な溶媒である液体反応媒体の少なくとも一つの薄い移動層の表面と接触させられる反応器へ導き入れ前記薄い液体移動層と前記ガス混合物を反対方向に移動させることによって、当該アセチレン列炭化水素の臨界爆発分解圧力より低い圧力下に上記の反応を行なわせること、(b)上記混合物中のアセチレン列炭化水素及びガス状シランの相対濃度を炭化水素のシランに対する1よりも大きいモル比に相当する濃度に維持すること、そして、(c)上記均質混合物及び上記液体媒体の流量を調整して、上記反応器内の温度を上記アルケニルシランの生成に有利であり且つ当該アルケニルシランのそれ以上の反応及び上記アセチレン列炭化水素の分解には寄与しない水準に維持すること、を特徴とするアルケニルシラン調製方法。
【請求項2】前記ガス状シランが式HSiR2nX3-nで表され、この式中のR2は一価の炭化水素基又は一価のハロゲン化炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子か又は炭素原子数1〜4個のアルコキシ基を表し、そしてnは0,1又は2であって、前記液体媒体が当該アセチレン列炭化水素、当該触媒及び当該アルケニルシランのための効果的な溶媒である有機液体を含有し、前記移動層の厚さが2mm未満であり、そしてこの層の流層が反応器表面積1cm2当り4〜24cc/minである、請求項1記載の方法。
【請求項3】アセチレン列炭化水素とガス状シランとのモル比が1.1:1から1.3:1までであり、R1が水素であり、R2がアルキル基、フェニル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、nが1又は2であり、前記有機液体が液体炭化水素、エーテル化されたグリコール、又はケトンであって、該グリコール及びケトンの炭化水素基は炭素原子数1〜4個のアルキル基であり、そして前記ヒドロシリル化触媒が白金又はロジウムの化合物である、請求項2記載の方法。
【請求項4】R2がメチル基であり、前記液体媒体の温度が30℃から120℃までであり、この液体媒体の一部分が当該アルケニルシランを回収するために定期的又は連続的に取り出されて、そして前記触媒と前記有機液体とを含んでなる実質的に等しい容量の溶液により置換され、そして当該ヒドロシリル化触媒が塩化白金酸である、請求項3記載の方法。
【請求項5】前記有機媒体が前記液体媒体の10重量%から40重量%までを構成し、当該液体媒体の温度が60℃〜80℃までであって、前記混合物の反応が大気圧下で行われ、当該液体媒体の温度がこの媒体と接触する表面を加熱又は冷却して制御され、そして未反応のアセチレン列炭化水素が前記反応器から追加のガス状シランと混ぜ合わされそして当該方法に従って反応させられる別の反応器へ回される、請求項4記載の方法。
【請求項6】前記液体媒体が管内を流れ、また当該管の外側が当該液体媒体の温度を50〜80℃に維持するのに必要とされる温度の水と接触する垂直管型反応器で実施される、請求項5記載の方法。

【特許番号】第2954987号
【登録日】平成11年(1999)7月16日
【発行日】平成11年(1999)9月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−185473
【出願日】平成2年(1990)7月16日
【公開番号】特開平3−52892
【公開日】平成3年(1991)3月7日
【審査請求日】平成9年(1997)7月11日
【出願人】(999999999)ダウ コーニング コーポレーション
【参考文献】
【文献】特開 平1−83089(JP,A)
【文献】特開 昭57−4995(JP,A)
【文献】特開 平1−168691(JP,A)
【文献】特公 昭50−37174(JP,B2)