説明

アルコキシレート化合物

【課題】粘度が高い反応液を用いた場合であっても、効率良くアルキレンオキサイドの活性水素含有化合物への付加を成し得る方法を提供する。
【解決手段】活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドを付加する場合において、反応液の粘度が10mPa・s以上の場合に、撹拌反応器内部に垂直方向に連続的に設けられた羽根の回転により、下記式(1):


(式中、Aはアルキレンオキサイドの供給により新たに浸漬された羽根の長さ(m)であり、hはアルキレンオキサイド供給前の液面高さ(m)であり、hはアルキレンオキサイド供給後の液面高さ(m)である)
で表される数値Cが0.5以上となるように撹拌する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレンイミンや不飽和アルコールなどの活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドを付加する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンイミンや不飽和アルコールといった活性水素含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(アルコキシレート化合物)は、各種洗剤や化学品等の原料として広く用いられている。アルキレンオキサイドの付加方法としては、活性水素含有化合物とアルキレンオキサイドとを、酸触媒または塩基触媒の存在下において反応させることが一般的である。例えば、PCT国際公開公報97/23546にはポリアミンへのポリエチレンオキサイド付加の方法が開示されており、より詳しくはポリアミンに含まれるNH結合1molに対して約1molのエチレンオキサイドを付加し、触媒を加えた後、さらに所定量のエチレンオキサイドを付加する方法が開示されている。
【0003】
反応液中にアルキレンオキサイドを供給した場合、反応液の溶解度以上に供給されたアルキレンオキサイドは反応容器の気相中に存在する。気相中のアルキレンオキサイドは、アルキレンオキサイド付加反応の進行によって液相中のアルキレンオキサイド濃度が溶解度以下に下がったとき液相中に吸収され、さらなるアルキレンオキサイド付加反応に供される。
【0004】
しかしながら、反応液の粘度が高い反応条件下においては、気相中に存在するアルキレンオキサイドの液相への吸収が遅いため、液相中において充分なアルキレンオキサイド量を確保できず、また、反応器の圧力が下がりにくい。その結果、アルキレンオキサイドの液相への吸収が律速段階となってしまい、目的であるアルキレンオキサイドと活性水素含有化合物との反応速度が低下する問題があった。反応速度の低下は、生産性を低めるのみならず、不純物の生成、反応液の着色などの原因ともなる。
【0005】
一方、アルキレンオキサイド付加反応においては、一旦生成した付加物の分解や、反応系に存在する水とアルキレンオキサイドとの反応によって、アルコキシレート化合物の特性を低下させる成分が副生する問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、反応液の粘度が高い場合であっても、効率良くアルキレンオキサイドを活性水素含有化合物へ付加させうるアルコキシレート化合物の製造方法を提供することである。
【0007】
また本発明の目的とするところは、アルコキシレート化合物の特性低下の原因となる副生成物の含有量を抑制しうるアルコキシレート化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、撹拌反応器に供給されてなる活性水素含有化合物に、アルキレンオキサイドを供給して、アルコキシレート化合物を製造する方法であって、アルキレンオキサイド付加反応中の反応液の最高粘度が10mPa・s以上であり、前記反応液は、前記撹拌反応器内部に垂直方向に連続的に設けられた羽根の回転により撹拌され、下記式(1):
【0009】
【数1】

【0010】
(式中、Aはアルキレンオキサイドの供給により新たに浸漬された羽根の長さ(m)であり、hはアルキレンオキサイド供給前の液面高さ(m)であり、hはアルキレンオキサイド供給後の液面高さ(m)である)
で表される数値Cが0.5以上であることを特徴とするアルコキシレート化合物の製造方法である。
【0011】
アルキレンオキサイドを活性水素含有化合物に付加する際に、反応液表面近傍を上記条件を満足するように撹拌すると、気相中のアルキレンオキサイドの液相への吸収を促進させることができる。このため、反応液の粘度が高い場合であっても、効率良くアルキレンオキサイドを活性水素含有化合物へ付加させることができる。また、反応時間を短縮できるため、副生成物の生成量を減少させることができる。
【0012】
また本発明は、撹拌反応器に供給されてなる活性水素含有化合物に、アルキレンオキサイドを供給して、アルコキシレート化合物を製造する方法であって、反応液は、前記撹拌反応器内部に垂直方向に連続的に設けられた羽根の回転により撹拌され、アルキレンオキサイドを付加した後に、下記式(2):
【0013】
【数2】

【0014】
(式中、Bは前記反応液の減少により気相に新たに露出した羽根の長さ(m)であり、hはアルキレンオキサイド供給後の液面高さ(m)であり、hは不純物または溶剤除去処理後の液面高さ(m)である)
で表される数値C’が0.5以上となるように前記反応液を前記羽根の回転により撹拌しながら、不純物または溶剤を除去することを特徴とするアルコキシレート化合物の製造方法である。
【0015】
アルキレンオキサイドを付加した後に、このような条件を満足するように反応液表面近傍を撹拌することによって、副生する不純物や溶剤を効率良く除去できる。
【0016】
さらに本発明は、触媒存在下、アルケニル基含有ヒドロキシ化合物にアルキレンオキサイドを供給して、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が40モル以上のアルコキシレート化合物を製造する方法であって、アルキレンオキサイド付加反応の際の反応温度(X)、反応時間(Y)および触媒濃度(Z)が下記式(3):
【0017】
【数3】

【0018】
(式中、Xは反応温度(℃)であり、Yは反応時間(アルキレンオキサイド投入時間(hr)+熟成時間(hr))であり、Zは触媒濃度(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対する触媒の質量%)である)
を満足することを特徴とする、アルコキシレート化合物の製造方法である。
【0019】
アルキレンオキサイド付加反応の際に、反応温度(X)と反応時間(Y)と触媒濃度(Z)とが特定の関係を満足する条件下で付加反応を行うことにより、ポリアルキレンオキサイドの副生を抑制することができる。
【0020】
アルコキシレートの製造に関する上記発明を組み合わせて用いてもよく、その場合には、それぞれの効果を発現させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法を用いることによって、効率良くアルキレンオキサイドを活性水素含有化合物へ付加させることができる。また、アルコキシレート化合物の特性低下の原因となる副生成物の含有量を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
アルキレンオキサイド付加反応進行中における、羽根と液面との関係について、図1を参照しながら説明する。図1は、反応液3を撹拌する羽根2を備えた撹拌反応器1の概略図である。hはアルキレンオキサイド供給前の反応液の液面、即ち、活性水素含有化合物を含む溶液の液面高さ(m)である。なお、本発明において「液面高さ」とは静置時における反応器底部からの液面高さをいう。また、「撹拌反応器」とは、内部に羽根2が備えられ、活性水素含有化合物とアルキレンオキサイドとの反応が進行する容器をいい、「反応液」とは撹拌反応器内部において液相として存在し、活性水素含有化合物とアルキレンオキサイドとの反応が進行する液体を指す。
【0023】
撹拌されている反応液3にアルキレンオキサイドが供給され、反応液3の液面が上昇する。このとき、羽根2を用いて気液境界面を撹拌することによって、気相中に存在するアルキレンオキサイドを効果的に液相中に吸収させることができる。従って、羽根2はアルキレンオキサイド供給前の液面よりも気相方向にまで設けられてなり、反応液3の液面が上昇した場合であっても、気液境界面に羽根が存在し、気液境界面が撹拌されることが好ましい。羽根はアルキレンオキサイド供給開始時に気液境界面に存在することが好ましいが、ない場合を排除するものではない。具体的には、アルキレンオキサイド供給後の液面高さ(アルキレンオキサイドの供給終了時の液面高さ)をh(m)としたとき、下記式(1):
【0024】
【数4】

【0025】
で表される数値Cが0.5以上であることが本発明の効果を得るために必要である。なお、式中Aとは、アルキレンオキサイドの供給により新たに反応液3中に浸漬された羽根の長さ(m)であり、アルキレンオキサイドの供給により、羽根2が反応液3中に完全に浸漬する場合には、開始時液面高さhから羽根2の上部端辺までの長さとして与えられる数値である。羽根が間欠的に設けられてなる場合には、Aの長さは実際に羽根が設けられてなる部分の合計を指し、例えば0.4mの羽根が0.1m間隔で垂直方向に間欠的に設けられてなる撹拌反応器において2mの液面高さ上昇があった場合のA値は1.6mとなる。本発明の効果をより効果的に得るためには、数値Cは0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらにより好ましく、0.9以上であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。なお、数値Cが1の場合とは、反応中気液境界面に常に羽根2が存在している撹拌条件である。
【0026】
図2を参照して、アルキレンオキサイド付加に対する撹拌羽根の影響を説明する。ライン1は気液境界面が上昇した場合においても常に気液境界面に図7に示すタイプの羽根が存在するように設計された撹拌反応器(C=1)を用いたケースであり、ライン2は図6に示す4つの羽根が間欠的に設けられた撹拌反応器(C=0.11)を用いたケースであり、ライン3は気液境界面が上昇した場合においても常に気液境界面に図4に示すタイプの羽根が存在するように設計された撹拌反応器(C=1)を用いたケースである。なお、ライン2のケースにおいては羽根と羽根との間隔は充分に広く設けられている。アルキレンオキサイド付加反応は、撹拌反応器中の気相の圧力が一定になるように進行させた。すなわち、気相中のアルキレンオキサイドが溶液中に吸収され、圧力が低下した場合に、低下した圧力を補うように新たにアルキレンオキサイドを供給する方式とした。グラフの横軸はアルキレンオキサイド供給開始からの経過時間であり、縦軸は供給されたアルキレンオキサイド量を示す。
【0027】
ライン1およびライン3においては、気液境界面に常に羽根が存在し、充分撹拌されるため、液相へのアルキレンオキサイドの溶解が一定の速度で進行し、溶解速度も充分速い。一方、ライン2においては羽根が存在する場合(グラフ中、「2段目」、「3段目」、「4段目」と記載した位置近傍)においては、液相へのアルキレンオキサイドの溶解速度が上昇する。しかしながら、アルキレンオキサイドの供給とともに気液境界面が上昇し、気液境界面に羽根が存在しなくなると溶解速度が低下する。その結果、図2に示すように溶解に要する時間が長くなり、生産性の低下や不純物・着色の発生といった弊害を招来する。
【0028】
アルキレンオキサイド付加後の反応液中には、未付加の原料、エチレンオキサイド付加モル数の少ない製品、副生した不純物(2,3−ブタンジオン、アセトニトリル、分子量200以下の低級アミンなど)、活性水素含有化合物やアルキレンオキサイドを供給する際に含まれ得る溶媒、触媒を添加する際に用いられる溶媒などが含まれる。そこで、生成物の純度を高める目的で不純物や溶剤を除去することが好ましい。このとき羽根2の撹拌を利用して効率良く純度向上を図ることができる。即ち、アルキレンオキサイドを供給する場合と同様に、気液境界面を羽根2の作用で撹拌することによって、液相中の不純物および/または溶剤を効率良く気化させて除去することができる。従って、羽根2は反応液3の液面が下降した場合であっても、気液境界面に羽根が存在し、気液境界面が撹拌されることが好ましい。具体的には、アルキレンオキサイド供給後の液面高さ(m)をh、不純物または溶剤除去処理後(処理終了時の液面高さ(m)をhとしたとき、下記式(2):
【0029】
【数5】

【0030】
で表される数値C’が0.5以上となるように反応液を羽根の回転により撹拌しながら不純物および/または溶剤を除去することが好ましい。なお、式中Bとは、不純物および/または溶剤の除去を伴う反応液の減少によって気相に新たに露出した羽根の長さ(m)であり、撹拌反応器の垂直方向の長さとして与えられる数値である。活性水素含有化合物および/またはアルキレンオキサイドを供給する際に溶媒が用いられない場合には液面の下降は実際には殆ど生じないが、このような場合には、不純物および/または溶剤除去の開始時に気液境界面に羽根が存在するように条件を調整すればよい。不純物および/または溶剤の除去は、アルキレンオキサイド付加反応に用いた撹拌反応器を用いて行ってもよく、別個に不純物を除去する撹拌反応器を設けてもよい。また、上記不純物および/または溶剤の除去は、後述する不活性ガスによるバブリングと併用することによってより一層の効果が得られる。単蒸留、薄膜蒸留、スプレードライヤー処理等を併用することも有用である。本発明の効果をより効果的に得るためには、数値C’は0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらにより好ましく、0.9以上であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。なお、数値C’が1の場合とは、プロセス中、気液境界面に常に羽根2が存在している撹拌条件である。
【0031】
本発明の方法は、反応液3の粘度に無関係に適用できるものであるが、高粘度の反応液に適用した場合に特に有益な効果が得られるものである。この観点からは、反応液3の最高粘度が10mPa・s以上である場合に本発明は有益である。また本発明は、最高粘度が30mPa・s以上となる場合により有益であり、50mPa・s以上となる場合にさらにより有益であり、100mPa・s以上となる場合に特に有益である。最高粘度の上限は特に限定されるものではないが、一定値以上に粘度が高くなると反応液を撹拌させることが困難になるため、好ましくは200,000mPa・s以下、より好ましくは30,000mPa・s以下、特に好ましくは10,000mPa・s以下とするとよい。反応液の粘度はB型粘度計を用いて測定することができる。
【0032】
次に、撹拌反応器、羽根形状等の本発明に用いられる装置について詳細に説明する。
【0033】
撹拌反応器の形状は特に限定されるものではないが、効率のよい撹拌を達成するためには撹拌反応器の横方向の断面が円形である撹拌反応器を用いることが適切である。具体的には円筒形や、図3に示すような撹拌反応器上部になるほど撹拌反応器直径が段階的に大きくなる形状などが挙げられる。図3に示すような撹拌反応器を用いた場合には、初期仕込み量に対する目的物の仕上がり量の比を大きくすることができ、アルキレンオキサイドの付加モル倍率を高めることができる。本発明は、液面高さ変化が大きい場合に特に効果的であり、具体的にはアルキレンオキサイド供給前の液面高さ(m)に対するアルキレンオキサイド供給後の液面高さ(m)の比(h/h)が1.5以上のときに効果的であり、2以上のときにより効果的であり、3以上の時に特に効果的である。撹拌反応器は、反応液量に対する気液境界面の面積を考慮すると、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)がより小さいことが好ましいが、本発明の効果は供給された液体の縦横比が1以上となるように設計されているときに有効であり、1.5以上であるときにより有効であり、2以上であるときに特に有効である。従って、装置の反応液供給部の縦横比が上記値を満足するように設計されていることが好ましい。縦横比の上限は特に限定されるものではないが、縦横比が高すぎると装置の設計上不具合が生じる恐れがあるため5以下であることが実際的である。段階的に撹拌反応器直径が大きくなる形状の撹拌反応器を用いる場合には、「撹拌反応器の直径」とは直径が最大となる部分の直径を意味し、段階的な広がり度合いは段階的に直径を大きくした効果を高めるためには30〜60°程度が好適である。しかしながら、いずれの場合も上記範囲に限定されるものではなく、反応条件や使用する活性水素含有化合物の種類に応じて適宜変更することは勿論可能であり、そのような方法を排除するものではない。
【0034】
撹拌反応器底部および蓋部の形状も特に限定されるものではなく、平面状、コニカル状、楕円状など各種形状を有することが可能である。撹拌反応器スケールに関しても特に制限はないが、本発明の効果を工業的に得るためには撹拌反応器内部の体積が1m以上であることが好ましく、5m以上であることがより好ましく、10m以上であることが特に好ましい。
【0035】
撹拌反応器内部には反応液を撹拌するための羽根2が設けられる。羽根は、上記式(1)で表される数値Cに関する条件を満足するために、撹拌反応器内部に垂直方向に連続的に設けられていることが好ましい。なお、本発明において「垂直方向」とは水平面に対して垂直な方向を意味する。また「連続的な羽根」とは、図1に示すような平板タイプ、図4に示すような複数枚の平板が組み合わさったタイプ(住友重機械工業株式会社製トルネード翼等)のような垂直方向に切れ目がないタイプ、図5に示すような2以上の撹拌羽根が垂直方向に切れ目なく設けられてなるタイプ(神鋼パンテック株式会社製フルゾーン翼、綜研化学株式会社製Hi−Fミキサー等)などの種々の形態を含む概念であり、撹拌力に問題が無ければ間欠的ではあるが略連続的に羽根が設けられてなるタイプでもよい。羽根の具体例としては、上記例示したものの他にも、図6に示すようなパドル羽根が間欠的に設けられてなるピッチドパドル型、図7に示すような撹拌力を増すために羽根に切れ目が入っているタイプ(住友重機械工業株式会社製マックスブレンド等)、スクリュー型、ヘリカルリボン型、広幅パドル型、アンカー型、ピッチドパドル型、馬蹄型、ゲート型、パドル多段翼、シングルリボンスクリュー翼、ダブルリボンスクリュー翼、コーン型、ディスクタービン型、ファンタービン型、ピッチドタービン型、ハイドロフォイル型、湾曲羽根ファンタービン型、矢羽根タービン型、ファドラー型、フルマージン型、プロペラ型、往復回転式翼などが挙げられ、使用する反応液の粘性や製造スケールに応じて適宜使いわければよい。また、本発明の効果が得られる限りにおいては各種改良を加えてもよい。市販の撹拌器を用いてもよく、スーパーミックスHR−100、HR−320、HR−500i(いずれも佐竹化学機械株式会社製)、サンメラー(三菱重工業株式会社製)、VCR(三菱重工業株式会社製)、ベンドリーフ(八光産業株式会社製)、スーパーブレンド(住友重機械工業株式会社製)、ログボーン(神鋼パンテック株式会社製)、ねじり格子翼(株式会社日立製作所製)、ウォールウェッター(関西化学機械製作株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
羽根は、反応液を均一に撹拌するためには撹拌反応器の中心に回転軸があることが好ましい。羽根の大きさは羽根の種類や撹拌反応器の大きさ、反応させる化合物の種類によって適宜選択すればよく一義的に決定できないが、羽根の回転半径が撹拌反応器半径の30〜90%程度であることが好適である。羽根の設けられる範囲は、各種反応条件に対応するためには、撹拌反応器底部近傍から蓋部近傍に渡って設けられていることが好ましいが、実際に反応液が供給される量が一定量なのであればそれに応じて羽根の設置位置を限定することも可能である。
【0037】
撹拌反応器および羽根の材質は、ステンレスなど各種金属材を用いることができ、グラスライニングや電解研磨を利用した表面仕上げなどの改善処理を施すこともできる。
【0038】
撹拌反応器には反応液に徐々にアルキレンオキサイドを供給するための供給手段が設けられることが好ましい。供給手段についても特に限定はないが、アルキレンオキサイドの液相への吸収効率を上げるためには反応液を撹拌反応器上部からシャワーリングする供給手段が設けられてなることが好ましい。
【0039】
また、撹拌反応器にはアルキレンオキサイド付加による結果物(アルコキシレート化合物)を、不活性ガスによって脱臭するためのバブリング手段が設けられてなることが好ましい。このようなバブリングによって反応液中の不純物を効果的に除去することができ、純度の高く、臭気の少ないアルコキシレート化合物を得ることができる。活性水素含有化合物としてポリアルキレン(C−C)イミンを用いた場合には不純物が生じやすいため脱臭工程により除去することが特に求められる。バブリングに用いられる不活性ガスとしてはアルゴン、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、またはこれらの混合ガスなどが挙げられ、効果的なバブリング処理を施すためには反応液への不活性ガス吹き出し口を2か所以上設け、不活性ガスを供給することが好ましい。泡の大きさは微細であるほど好ましく、具体的にはノズルの径を40mm以下とすることが好ましく、30mm以下とすることがより好ましい。不活性ガスの供給にあたっては、撹拌反応器内部に供給手段を設けることが好ましく、例えばガス吹き出し口が設けられたリング状の不活性ガス供給手段を反応液中に浸漬するように設けることができる。バブリングの代わりに、または併用して、単蒸留、薄膜蒸留またはスプレードライヤー処理によって反応液中の不純物を除去してもよい。単蒸留とは精留部分のない回分蒸留を意味し、一般的な装置によって実施することができる。薄膜蒸留は、ヒックマン型蒸留機、流下膜式蒸留機、ロータートレイ型蒸留機、ブラシ式分子蒸留機等を用いて行うことができ、圧力0.1mmHg以下、温度100〜200℃の条件で行うことが適切である。スプレードライヤー処理は、上部より目的物を噴霧し、下部より100〜200℃の熱風不活性ガスを吹き込むことにより実施できる。この場合、目的物を粒状にして乾燥するため、蒸発表面積が大きく、液滴と熱風との接触時間が短くてすみ、目的物の熱負荷による変質を低減できる。その他の脱臭方法としては活性炭、モレキュラーシーブス、多孔質高分子、ゼオライトなどを挙げることができる。ただし、これらを用いて脱臭した場合には使用後の後処理が必要となることを留意して使用する必要がある。
【0040】
撹拌反応器には、上記構成要素以外の構成要素を付加してもよい。例えば、撹拌力を高めるために撹拌反応器側面に沿って邪魔板を設けたり、冷却コイルを設けることができる。冷却コイルは撹拌力低下の原因となるが、本発明の方法を用いることによりこの弊害を解決することができる。
【0041】
続いて本発明のアルコキシレート化合物の製造条件について詳細に説明する。
【0042】
活性水素含有化合物は、アルキレンオキサイドと反応可能な化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する化合物が挙げられる。本発明を実施する上で特に有効な化合物としては、ポリアルキレン(C−C)イミン、ポリアルキレン(C−C)グリコール、不飽和結合を有するアルコール、多価アルコールなどが挙げられる。ポリアルキレン(C−C)イミンの具体例としてはポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリイソプロピレンイミン、ポリイソブチレンイミンなどが挙げられるが、製造コストを考慮するとポリエチレンイミンであることが好ましい。ポリアルキレン(C−C)グリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリイソプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールなどが挙げられ、同様の理由によりポリエチレングリコールが好ましい。ポリマーの重量平均分子量は特に制限はないが、分子量が低すぎると高分子の有する本来の性質が得られなくなる恐れがあり、高すぎると粘度が上昇し取り扱いが不便になる恐れがある。この観点から重量平均分子量は300以上であることが好ましく、600以上であることが好ましい。上限に関しては、2000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらにより好ましく、5000以下であることが特に好ましい。また、ポリマーは直鎖状、枝分かれ状のいずれも使用可能である。不飽和結合を有するアルコールとしては、アルケニル基含有ヒドロキシ化合物、イソプロパノール、メタリルアルコールなどが挙げられる。アルケニル基含有ヒドロキシ化合物は、特に制限されるものではないが、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−ブテン−1−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール等の不飽和アルコール等;これら不飽和アルコールに後述するアルキレンオキサイドを1〜25モル程度付加させたアルコキシレート化合物;等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。活性水素含有化合物へのアルキレンオキサイドの平均付加モル数を40モル以上とすることを所望する場合には、アルケニル基含有ヒドロキシ化合物として、不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加させたアルコキシレート化合物を用い、多段階でアルキレンオキサイドを付加することが好ましい。多価アルコールとしては、ソルビトール、グリセリンなどが挙げられる。
【0043】
活性水素含有化合物は、各種公知の方法によって調製、精製することができる他、市販の化合物(例えば、ポリアルキレンイミンとして株式会社日本触媒製エポミン(登録商標)SP−018、SP−006など)を使用することもできる。
【0044】
これらの活性水素含有化合物は、アルキレンオキサイドが供給される前に撹拌反応器に供給され、予め撹拌されることが好ましい。撹拌反応器への活性水素含有化合物の供給方法は特に限定されるものではなく、化合物一般に通常要求される配慮をすればよい。活性水素含有化合物の供給量も撹拌反応器の内部体積や使用する化合物等によって決定されるため一義的に決定できないが、撹拌反応器の内部体積の5〜50体積%程度供給することが適切である。活性水素含有化合物は単体で供給してもよく、場合によっては水やアセトンなどの溶媒と共に供給してもよい。ただし、溶媒と共に加える場合には溶媒中の活性水素との反応に起因する不純物の生成に留意する必要がある。また、活性水素含有化合物を含む溶液は、気相中のアルキレンオキサイドの液相中への溶解度や分配平衡を考慮すると、供給されるアルキレンオキサイドの極性との差が小さいことが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法において用いることのできる前記アルキレンオキサイドは、特に制限されるものではないが、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが好ましい。具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソプロピレンオキサイド、イソブチレンオキサイドなどが挙げられるが、これらの中では反応性、製造コストの観点からエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。アルキレンオキサイドは単独で用いても複数のアルキレンオキサイドを併用してもよく、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。また、セメント分散剤用の原料としてアルコキシレート化合物を用いる場合には、少なくともエチレンオキサイドが含まれることが望ましく、このとき、全アルキレンオキサイドに対するエチレンオキサイドの割合は50〜100モル%とするのがよい。エチレンオキサイドが50モル%未満であると、得られるアルコキシレート化合物を用いてセメント分散剤用ポリマーを得た場合に減水性能が低下する傾向がある。全アルキレンオキサイドに対するエチレンオキサイドの割合は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。また、アルキレンオキサイドの代わりに、グリシドールやエピクロロヒドリン等のエポキシド含有化合物を用いてもよい。
【0046】
アルキレンオキサイドの供給方法としては、上述したようにシャワーリングする方法や、蓋や内壁上部に注入口を設ける方法が挙げられる。アルキレンオキサイドの供給量は、所望する生成物によって異なるため一義的に決定することは困難であるが、供給されるアルキレンオキサイド総量(mol)と活性水素含有化合物中の活性水素基量(mol)との比(アルキレンオキサイド/活性水素基)が、0.5〜200程度となるように供給することが一般的である。一般に、付加させるアルキレンオキサイドの量が多くなるほど、副生成物の生成も増す傾向がある。このことを考慮すると、本発明によって生じる副生成物の生成を効率良く抑制する効果は、アルキレン付加モル数が多いほど有益である。具体的には、本発明は、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が40モル以上である場合に有益であり、45モル以上である場合により有益であり、60モル以上である場合にさらに有益であり、90モル以上である場合にとりわけ有益であり、110モル以上である場合に最も適している。
【0047】
好ましいアルキレンオキサイドの供給速度も、反応系や撹拌反応器によって異なるため一義的に定義することは困難であるが、気相の圧力が一定値を上回らないように供給するとよい。具体的には圧力が0.5〜10kg/cm程度となるように供給することが適当である。アルキレンオキサイドは単体で供給してもよく、場合によっては水やアセトンなどの溶媒と共に供給してもよい。ただし、溶媒と共に加える場合には溶媒中の活性水素との反応に起因する不純物の生成に留意する必要がある。
【0048】
アルキレンオキサイド付加反応を行う際には、触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらの水酸化物等の1種または2種以上を用いるとよい。具体的には、例えば、ナトリウム、ナトリウムアマルガム、ナトリウムハライド、ナトリウムメトキサイド、カリウム、カリウムアマルガム、カリウムハライド、カリウムメトキサイド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0049】
本発明の方法によって得られるアルコキシレート化合物としては、ポリアルキレンイミンにアルキレンオキサイドが付加したポリアミンポリエーテルポリオール重合体、イソプレノールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物、アルケニル基含有ヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。アルコキシレート化合物は、付加したアルキレンオキサイドの末端が水素であってもよいし、その後アルキル化を行うことにより炭化水素基に変換されていてもよい。炭化水素基としては、炭素数1〜30のものが好ましく、例えば、脂肪族または脂環族アルキル基;フェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基;等が挙げられる。
【0050】
反応中の羽根の撹拌動力についても、羽根の種類、付加するアルキレンオキサイド、活性水素含有化合物の種類によって適宜選択すべき数値であるため一義的には規定できないが、一般的には撹拌不良による不均一反応の発生や反応速度の低下を抑制する観点から、撹拌動力が0.2〜3kW/mが適当であり、0.5〜2.5kW/mがより適当である。撹拌動力は一定に保つ必要は無く、反応条件に応じて撹拌動力を変化させてもよい。
【0051】
反応温度、反応圧力、反応方法などについては、所望する最終生成物や求める純度、収率などに応じて適宜選択すればよいが、反応温度については温度が高いほど反応液におけるアルキレンオキサイドの溶解度が低下する傾向がある。このため、本発明は、反応液温度を100℃以上にする必要がある場合に有益であり、120℃以上にする必要がある場合により有益であり、140℃以上にする必要がある場合に特に有益である。ただし、反応温度が低い条件に本発明を適用することを除外するものではない。また、反応中の撹拌反応器中の雰囲気は、減圧してアルキレンオキサイドを供給して、雰囲気ガスの大部分をアルキレンオキサイドガスとしてもよく、アルキレンオキサイドの爆発性を低下させるために窒素やアルゴン等の不活性ガスで置換してからアルキレンオキサイドの供給を開始してもよい。
【0052】
また、アルキレンオキサイドが付加される活性水素含有化合物がアルケニル基含有ヒドロキシ化合物である場合には、下記式(3):
【0053】
【数6】

【0054】
を満足する条件でアルキレンオキサイド付加反応を進行させることが好ましい。このような条件でアルキレンオキサイド付加反応を進行させることによって、アルコキシレート化合物製造に伴い生成する副生物の量を抑制することができる。この効果は、前述のようにアルキレンオキサイドの平均付加モル数が40モル以上である場合に有益であり、45モル以上である場合により有益であり、60モル以上である場合にさらに有益であり、90モル以上である場合にとりわけ有益であり、110モル以上である場合に最も適している。なお、式中、Xは反応温度(℃)であり、Yは反応時間(アルキレンオキサイド投入時間(hr)+熟成時間(hr))であり、Zは触媒濃度(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対する触媒の質量%)である。
【0055】
反応温度(X)は、アルキレンオキサイド付加反応の反応温度を表し、反応液の温度を測定することによって求め得る。また、反応温度がアルキレンオキサイド付加反応中に変化する場合には平均温度を、前記式(3)における反応温度として用いる。例えば、一分毎に温度を測定して平均温度を算出する。反応温度(X)は、前記式(3)を満足するように設定すればよいのであるが、好ましくは80〜155℃の範囲内、より好ましくは90〜140℃の範囲内、さらに好ましくは100〜130℃の範囲内である。反応温度(X)が高過ぎると、ポリアルキレンオキサイドの副生が増える傾向があり、例えば、得られたアルコキシレート化合物を用いてセメント分散剤用ポリマーを得た場合、減水性能等が低下する傾向がある。一方、反応温度(X)が低過ぎると、付加速度が遅くなり、生産性が低下する原因となる。
【0056】
反応時間(Y)は、アルキレンオキサイド投入時間と熟成時間との合計時間を表す。例えば、アルケニル基含有ヒドロキシ化合物および触媒中に、前記アルキレンオキサイドを連続的に投入して付加反応を行う場合には、アルキレンオキサイドを投入している時間および反応を完結させるために熟成させる時間の合計時間となる。反応時間(Y)は、前記式(3)を満たすよう反応時間(Y)をコントロールすればよいのであるが、好ましくは50時間以内、より好ましくは40時間以内、さらに好ましくは30時間以内である。反応時間(Y)が長すぎると、副生成物の生成量が増える傾向がある。
【0057】
触媒濃度(Z)は、仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対する触媒の質量比を表す。前記式(3)を満足するように設定すればよいのであるが、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは8000ppm以下、さらに好ましくは5000ppm以下、最も好ましくは3000ppm以下である。触媒濃度が高すぎると、副生成物が多量に発生する傾向がある。
【0058】
前記式(3)を満足する条件でアルコキシレート化合物を調製することによって、副生成物の生成を効果的に抑制することが可能である。好ましくは、アルキレンオキサイド付加反応で副生するポリアルキレンオキサイドの生成量が、該付加反応で生成する全生成物中15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下となる。副生するポリアルキレンオキサイドの生成量が前記割合より多いと、アルコキシレート化合物の特性が低下する恐れがある。例えば、得られたアルコキシレート化合物を用いてセメント分散剤用ポリマーを得た場合、減水性能等の性能が低下する傾向がある。なお、ポリアルキレンオキサイドの生成量は、通常の方法で測定することができ、例えば、ポリエチレングリコールであれば、実施例で後述する測定方法によって測定することができる。
【0059】
また、アルキレンオキサイド付加反応においては、副生成物としてイソプレンが生成することがあるが、本発明の製造方法によれば、イソプレンの生成量を抑制することも可能である。好ましくは、該付加反応で生成する全生成物中、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは900ppm以下、さらに好ましくは800ppm以下、とりわけ好ましくは700ppm以下となる。なお、イソプレンの生成量は、例えば、実施例で後述する測定方法によって測定することができる。
【0060】
以下には、活性水素含有化合物としてポリエチレンイミンを用いてポリアミンポリエーテルポリオール重合体を得る際の反応について、本発明に係る一実施形態として説明する。
【0061】
まず、撹拌反応器にポリエチレンイミンを供給する。これにポリエチレンイミンに含まれるNH結合1モルに対して0.85〜1.05モル等量のエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドをそのまま、あるいは必要に応じて溶剤により希釈して、本発明の方法に従って反応させる。エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加は溶媒存在下において付加しても、無溶媒中で付加してもよい。反応時の圧力は2.0〜4.2kg/cm程度が好適である。
【0062】
次に、NaOH、KOH、NaOCH等の触媒を系中に添加する。触媒はそのまま添加しても、水やメタノール等に溶解して添加してもよい。このとき触媒添加量が少なすぎると反応速度が遅くなり、多すぎると不純物の生成量が増加する恐れがある。また、不純物の生成を抑制する観点からは、触媒としてKOHを用いることが最も好ましい。
【0063】
溶媒を用いて触媒を添加した場合には、触媒を脱気および/または加熱により揮発させた後、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドをそのまま、あるいは必要に応じて溶剤により希釈して、100〜200℃の温度下、好ましくは150〜175℃温度下で本発明の方法に従って反応させる。反応時の圧力は2.5〜8kg/cm程度が好適である。このようなアルキレンオキサイドの付加を二段階に分けて行うことによって、不純物の生成や着色を好適に防止することができる。
【0064】
アルキレンオキサイド付加完了後、100〜170℃程度の温度で0〜3時間熟成させ、触媒を中和するために炭素数2〜6個のカルボン酸(CHCOOH、CHCHCOOH、(CHCHCOOH、CHCH(OH)COOHなど)、リン酸、塩酸、硫酸等を用いて40〜60℃程度で処理する。
【0065】
続いて、窒素、アルゴン等の不活性ガスを通気することによって結果物を脱臭する。必要に応じて、水やエタノール等の揮発性溶媒をポリアミンポリエーテルポリオール重合体質量に対して1〜10質量%加え、100〜170℃において0〜0.01MPaに減圧することによって脱臭してもよい。これらは併用してもよく、例えば窒素を通気しながら、水を用いて0〜0.005MPaに減圧して脱臭することができる。脱臭時間は、1〜8時間が好適であり、3〜5時間がより好適である。
【0066】
ポリアミンポリエーテルポリオール重合体は、1〜3級アミノ基、水酸基を利用して、反応性置換基をもつ単量体もしくはポリマーにより、さらに変性もしくは架橋することもできる。例えば、エポキシ基やイソシアネート基、無水カルボン酸、アジリジン基、エピクロロヒドリン、アルキルクロライド等による4級化、カルボン酸とのエステル化もしくはアミド化、不飽和性単量体によるマイケル付加等が挙げられる。使用されうる化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸基含有単量体、炭素数1〜20の(メタ)アクリル酸エステル、炭素数1〜20のアルキルアリルエーテル等の不飽和結合を持つ単量体、(メタ)アクリル酸クロリド、グリシジル(メタ)アクリレート、メチレンクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、トルイレンジイソシアネート等のイソシアネート等が挙げられる。
【0067】
得られるポリアミンポリエーテルポリオール重合体の用途については特に制限がないが、例としては潤滑剤、切削油剤、粘度指数向上剤、流動化剤、滑剤、水性及び油性塗料、紙薬、カーボンブラック、シリカ等の無機及び有機分散剤、乳化剤、乳化重合用活性剤、ゲル化剤、粘度調整剤、液体・ゲル状もしくは固体洗剤用組成物(分散剤、ビルダー)、凝集剤、水性または油性インク組成物、インクジェットプリンター用インク組成物、帯電防止剤、固体電解質、ブリーディング防止剤、染料等が挙げられる。
【0068】
また、活性水素含有化合物としてアルケニル基含有ヒドロキシ化合物を用いる場合には、得られたアルコキシレート化合物は、セメント添加剤用ポリカルボン酸を得るのに好適に用いることができる。その際には、不飽和ジカルボン酸類もしくはこれらのエステル類、不飽和スルホン酸類、不飽和アミド類、ビニルエステル類、または芳香族ビニル類とアルコキシレート化合物とを共重合させる。本発明の方法によって製造されたアルコキシレート化合物は不純物含有量が少ないため、得られるセメント添加材用ポリカルボン酸は減水性能等の性能に優れた効果を発揮するものとなる。以下、アルコキシレート化合物をセメント添加剤用ポリカルボン酸原料として用いる場合の一例について説明する。しかしながら、以下の用途に限定されるものではない。
【0069】
セメント添加剤用ポリカルボン酸は、アルケニル基含有ヒドロキシ化合物から合成されたアルコキシレート化合物(A)と、不飽和カルボン酸類(B)と、必要に応じて,これら(A)または(B)と共重合可能な他の単量体(C)とを共重合することにより得られる。
【0070】
不飽和カルボン酸類(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびこれらの一価金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、二価金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機アミン塩(エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等);マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等と炭素数1〜22のアルコールとのハーフエステル;炭素数2〜4のグリコールのハーフエステルと炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド;等が挙げられる。
【0071】
他の単量体(C)としては、例えば、スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン等のスチレン類;1,3−ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の不飽和モノカルボン酸類に炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを1〜500モル付加させた付加物類;ヘキセン、ヘプテン、デセン等のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;アリルアルコール等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル類またはアリルエーテル類;等が挙げられる。
【0072】
アルコキシレート化合物(A)/前記不飽和カルボン酸類(B)/前記他の単量体(C)の割合は、1〜99/1〜99/0〜90(質量比)とすることが好ましく、5〜99/2〜80/0〜50(質量比)とすることがより好ましく、10〜95/2〜50/0〜25(質量比)とすることがさらに好ましい。
【0073】
前記(A)、(B)および必要に応じて(C)を共重合する際の重合方法については、特に制限はなく、重合開始剤を用いて、例えば、溶液重合や塊状重合等の公知の方法で行なえばよい。また、前記共重合は、回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。
【0074】
前記重合開始剤としては、特に制限はないが、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド等を用いることができる。また、前記重合開始剤とともに促進剤を併用してもよく、促進剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、アスコルビン酸等の還元剤を用いることができる。さらに、共重合の際には、必要に応じて、例えば、メルカプトプロピオン酸、ドデシルメルカプタン、デカンチオール等の連鎖移動剤を用いることもできる。なお、これら重合開始剤、促進剤および連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
また、前記共重合の際には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。使用できる溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族または脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;等の1種または2種以上を用いることができる。
【0076】
このようにして得られたセメント添加剤用ポリカルボン酸は、重量平均分子量が3,000〜200,000、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜80,000であるのがよい。
【0077】
アルコキシレート化合物を用いて得られたポリカルボン酸は、例えば、セメント分散剤等の無機物分散剤や増粘剤等の有効成分として用いられるが、特にセメント分散剤として好適に用いられる。このとき、前記ポリカルボン酸は、単独または混合物の形態や、水溶液の形態でそのままセメント分散剤として使用することができる。また、前記ポリカルボン酸を他の公知のセメント添加剤と組み合わせて使用してもよく、このような公知のセメント添加剤としては、例えば、従来のセメント分散剤、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、および消泡剤等を挙げることができる。
【0078】
前記ポリカルボン酸を必須とするセメント分散剤は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメントや各種混合セメント等の水硬セメント、または、石膏等のセメント以外の水硬材料等に用いることができる。また、セメント組成物に配合し得る細骨材および粗骨材についても、特に制限されるものではなく、現在使用されている数多くの種類の細骨材および粗骨材から適宜選択して使用することができる。また、セメント組成物中への細骨材および粗骨材の配合量等についても、特に制限されるものではなく、使用する材料等に応じて、適宜決定すればよい。
【0079】
前記セメント分散剤を用いてなるセメント組成物、すなわち、少なくともセメント、水および前記セメント分散剤を含有する組成物における前記セメント分散剤の配合割合は、セメント固形分に対して、0.01〜1.0質量%、好ましくは0.02〜0.5質量%である。セメント分散剤が上記範囲を満たすように配合されて調製されたセメント組成物では、例えば、スランプ保持時間がはるかに向上するほか、単位水量の低減、コンクリート強度の増大、およびモルタルまたはコンクリートの耐久性の向上等の各種好ましい諸効果がもたらされる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、ポリエチレングリコール、イソプレンおよび2,3−ブタンジオンの生成量、ならびにポリカルボン酸の重量平均分子量などについては、以下の条件で測定した。
【0081】
(ポリエチレングリコールの生成量)
カラム:shodex製、LCカラム「GF−310(長さ400mm)」
溶離液:水
流速:1ml/分
標準物質:ポリエチレングリコール(重量平均分子量1,000)
検出器:RI
(イソプレン、2,3−ブタンジオンの生成量)
ヘッドスペース(TEKMER製)で80℃10分間加熱処理後、GLサイエンス社製「GC353」で定量
カラム:J&W Scientific社製「DB−1(長さ300mm)」
検出器:FID
(ポリカルボン酸の重量平均分子量)
カラム:東ソー社製「TSKguardcolumnSWXL」+「TSKgelG4000SWXL」+「TSKgelG3000SWXL」+「TSKgelG2000SWXL」
溶離液:水10999gとアセトニトリル6001gとの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解させ、さらに30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶液
流速:0.8ml/秒
カラム温度:35℃
標準物質:ポリエチレングリコール(重量平均分子量272,500、219,300、85,000、46,000、24,000、12,600、7,100、4,250、1,470)
検出器:日本Waters社製、示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製「MILLENNIUM ver2.18」
<実施例1>
活性水素含有化合物(3−メチル−3−ブテン−1−オール)に平均10モルのエチレンオキサイドが付加した不飽和アルコール(以下、「IPN−10」とも記載):粘度15mPa・s(120℃))を図4に示すトルネードタイプの羽根が備えられた撹拌反応器(住友重機器工業株式会社製「マックスブレンド」)に2.3m供給した。触媒として水酸化ナトリウム(5.4kg)を仕込み、撹拌しながら反応容器内部を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃に加熱した。仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対する触媒濃度は、0.05質量%であった。気相部の濃度が45体積%に保たれるようにエチレンオキサイドを供給し、15時間かけて7.5m供給した。なお、反応温度は120℃であり、得られたイソプレノールに平均50モルのエチレンオキサイドが付加した不飽和アルコール(以下、「IPN−50」とも記載)を含む反応液の粘度は56mPa・s(120℃)であった。反応中の撹拌動力は1kW/mとした。本実施例においては、製造中常に気液境界面に羽根が存在していた。即ち、上記式(1)のCの値は1であった。また、上記式(3)のJ値は693であった。条件および結果を表1に示す。着色はAPHAおよびガードナーで比較した(以下同じ)。
【0082】
<実施例2>
撹拌反応器として図7に示すマックスブレンド翼が備えられた撹拌反応器を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレンオキサイド付加を行った。製造に要した時間は7時間であった。製造中は、常に気液境界面に羽根が存在しており、上記式(1)のCの値は1であった。また、上記式(3)のJ値は693であった。条件および結果を表1に示す。
【0083】
<比較例1>
撹拌反応器として5つの45°傾斜パドル翼が備えられた撹拌反応器を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレンオキサイド付加を行った。製造に要した時間は70時間であった。製造前後の液面高さから上記式(1)のCの値を算出したところ、0.11であった。また、上記式(3)のJ値は2079であった。条件および結果を表1に示す。
【0084】
<実施例3>
撹拌反応器として図5に示すフルゾーン翼が備えられた撹拌反応器を用い、実施例1と同様の手順により、ポリエチレングリコール(PEG)に対するエチレンオキサイド付加を行った。反応液粘度、付加温度等の条件は表1に示す通りである。製造中は、常に気液境界面に羽根が存在しており、上記式(1)のCの値は1であった。また、製造に要した時間は8時間であった。結果を表1に示す。
【0085】
<比較例2>
撹拌反応器として5つの傾斜パドル翼(傾斜角:最下部45°,その他90°)が設けられた撹拌反応器を用いた以外は、実施例3と同様にしてポリエチレングリコール(PEG)に対するエチレンオキサイド付加を行った。反応液粘度、付加温度等の条件は表1に示す通りである。製造前後の液面高さから上記式(1)のCの値を算出したところ、0.257であった。また、製造に要した時間は12時間であった。結果を表1に示す。
【0086】
<実施例4>
撹拌反応器として図7に示すマックスブレンド翼が備えられた撹拌反応器を用い、実施例1と同様の手順により、ポリエチレンイミン(株式会社日本触媒製SP−006;以下「PEI−6」とも記載)に対するエチレンオキサイド付加を行った。反応液粘度、付加温度等の条件は表1に示す通りである。製造中は、常に気液境界面に羽根が存在しており、上記式(1)のCの値は1であった。また、製造に要した時間は8時間であった。結果を表1に示す。
【0087】
<比較例3>
撹拌反応器として5つの45°傾斜パドル翼が備えられた撹拌反応器を用いた以外は、実施例4と同様にしてポリエチレンイミンに対するエチレンオキサイド付加を行った。反応液粘度、付加温度等の条件は表1に示す通りである。製造前後の液面高さから上記式(1)のCの値を算出したところ、0.42であった。また、製造に要した時間は15時間であった。結果を表1に示す。
【0088】
<実施例5>
撹拌反応器として図7に示すマックスブレンド翼が備えられた撹拌反応器を用い、実施例1と同様の手順により、ポリエチレンイミン(株式会社日本触媒製SP−018;以下「PEI−18」とも記載)に対するエチレンオキサイド付加を行った。反応液粘度、付加温度等の条件は表1に示す通りである。製造中は、常に気液境界面に羽根が存在しており、上記式(1)のCの値は1であった。また、製造に要した時間は12時間であった。
結果を表1に示す。
【0089】
<比較例4>
撹拌反応器として5つの45°傾斜パドル翼が備えられた撹拌反応器を用いた以外は、実施例5と同様にしてポリエチレンイミンに対するエチレンオキサイド付加を行った。反応を継続したが、実施例5と同量のエチレンオキサイドを付加することができず、途中で中止した。反応液粘度、付加温度等の条件は表1に示す通りである。なお、反応中止時を終了時として上記式(1)のCの値を算出したところ、0.45であった。
【0090】
【表1】

【0091】
表1に示すように、本発明の方法を適用することにより、アルキレンオキサイドの付加反応を促進させることができ、生産性が向上することが示された。また、副生する不純物量を低減させることができることが示された。
【0092】
続いて、前記式(3)で定義されるJ値と不純物生成量との関係について、以下の実施例を用いて説明する。
【0093】
<実施例6>
図4に示すトルネードタイプの羽根が備えられた撹拌反応器(住友重機器工業株式会社製「マックスブレンド」;スケール2kg)に、IPN−10を460g、水酸化ナトリウム1g(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対して0.05質量%)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。そして、気相部のエチレンオキサイド濃度が50体積%以下になるように120℃を保持したままエチレンオキサイド1540gを26時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持し、反応時間28時間で付加反応を完結させ、IPN−50を得た。上記付加反応で副生したポリエチレングリコールの生成量は全生成物中8.7質量%であり、イソプレンの生成量は740ppmであった。上記付加反応におけるJ値は1021であった。なお、上記付加反応において、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)の値は1.1であった。結果を表2に示す。
【0094】
<実施例7>
温度計、窒素・酸素導入管、および攪拌翼(神鋼バンテック(株)製「フルゾーン翼」;C値1.0)を備えたステンレス製撹拌反応器を用い、反応温度を100℃とした以外は、実施例6と同様にしてIPN−50を得た。上記付加反応で副生したポリエチレングリコールの生成量は全生成物中3.1質量%であり、イソプレンの生成量は220ppmであった。上記付加反応におけるJ値は575であった。なお、上記付加反応において、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)の値は1.1であった。結果を表2に示す。
【0095】
<実施例8>
実施例6と同様のタイプのステンレス製高圧反応器に、IPN−10を460g、水酸化カリウム4g(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対して0.20質量%)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃まで加熱した。そして、気相部のエチレンオキサイド濃度が50体積%以下になるように100℃を保持したままエチレンオキサイド1540gを5.5時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持し、反応時間7.5時間で付加反応を完結させ、IPN−50を得た。上記付加反応で副生したポリエチレングリコールの生成量は全生成物中3.3質量%であり、イソプレンの生成量は140ppmであった。上記付加反応におけるJ値は435であった。なお、上記付加反応において、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)の値は1.1であった。結果を表2に示す。
【0096】
<実施例9>
反応時間を38時間とした以外は実施例8と同様にしてIPN−50を得た。上記付加反応で副生したポリエチレングリコールの生成量は全生成物中6.0質量%であり、イソプレンの生成量は590ppmであった。上記付加反応におけるJ値は760であった。なお、上記付加反応において、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)の値は1.1であった。結果を表2に示す。
【0097】
<実施例10>
実施例6と同様のタイプのステンレス製高圧反応器に、3−メチル−3−ブテン−1−オール330g、水酸化ナトリウム4.4g(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対して0.22質量%)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃まで加熱した。そして、気相部のエチレンオキサイド濃度が50%以下になるように100℃を保持したままエチレンオキサイド1670gを8時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持し、反応時間10時間で付加反応を完結させ、IPN−10を得た。
【0098】
続いて、反応器を50℃まで冷却した後、生成物を1540g抜き出し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。そして、気相部のエチレンオキサイド濃度が50体積%以下になるように120℃を保持したままエチレンオキサイド1540gを13時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持し、反応時間15時間で付加反応を完結させIPN−50を得た。上記付加反応で副生したポリエチレングリコールの生成量は全生成物中6.2質量%であり、イソプレンの生成量は610ppmであった。また、上記付加反応におけるJ値は1159であった。なお、上記付加反応における触媒は、先に行なったIPN−10の合成時に使用した水酸化ナトリウムの残存分とし、その量は、仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対して0.05質量%であった。なお、上記付加反応において、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)の値は1.1であった。結果を表2に示す。
【0099】
<実施例11>
実施例6と同様のタイプのステンレス製高圧反応器に、3−ブテン−1−オール280g、水酸化ナトリウム4.4g(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対して0.22質量%)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃まで加熱した。そして、気相部のエチレンオキサイド濃度が50体積%以下になるように100℃を保持したままエチレンオキサイド1720gを8時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持し、反応時間10時間で付加反応を完結させ、3−ブテン−1−オールに平均10モルのエチレンオキサイドを付加したアルコキシレート化合物(BPN−10)を得た。
【0100】
続いて、反応器を50℃まで冷却した後、生成物を1550g抜き出し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。そして、気相部のエチレンオキサイド濃度が50体積%以下になるように120℃を保持したままエチレンオキサイド1550gを13時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持し、反応時間15時間で付加反応を完結させ、3−ブテン−1−オールに平均50モルのエチレンオキサイドを付加したアルコキシレート化合物(BPN−50)を得た。上記付加反応で副生したポリエチレングリコールの生成量は全生成物中6.3質量%であり、イソプレンの生成量は640ppmであった。また、上記付加反応におけるJ値は1159であった。なお、上記付加反応における触媒は、先に行なったBPN−10の合成時に使用した水酸化ナトリウムの残存分とし、その量は、仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対して0.05質量%であった。なお、上記付加反応において、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)の値は1.1であった。結果を表2に示す。
【0101】
<比較例5>
温度計、窒素・酸素導入管、および攪拌翼(「プロペラ型翼」;C値0(アルキレンオキサイド供給前から羽根が全て浸かっている状態であった))を備えたステンレス製高圧反応器に、IPN−10を460g、水酸化ナトリウム1g(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対して0.05質量%)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で140℃まで加熱した。そして、気相部のエチレンオキサイド濃度が50体積%以下になるように140℃を保持したままエチレンオキサイド1540gを24時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持し、反応時間26時間で付加反応を完結させIPN−50を得た。なお、上記付加反応で副生したポリエチレングリコールの生成量は全生成物中20.0質量%であり、イソプレンの生成量は1280ppmであった。また、上記付加反応におけるJ値は2052であった。なお、上記付加反応において、撹拌反応器における最大液面の高さ(m)/撹拌反応器の直径(m)(L/S)の値は1.1であった。
【0102】
【表2】

【0103】
表2に示すように、J値を用いて反応条件を制御することによって、生成する不純物量を効果的に抑制できることが示された。
【0104】
<参考例1(セメント分散剤用ポリカルボン酸の製造)>
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、実施例1で製造したIPN−50を800g、マレイン酸を83g、およびイオン交換水を546g仕込み、撹拌下で65℃まで加熱した後に、30%過酸化水素水2.4gを混合した。そして、イオン交換水39.1gにアスコルビン酸0.9gを溶解させた溶液を1時間で滴下し、その後、1時間その温度を保持して共重合反応を完結させ、30%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH7.0まで中和し、重量平均分子量27,300のセメント分散剤用ポリカルボン酸を得た。
【0105】
<参考例2および3(セメント分散剤用ポリカルボン酸の製造)>
実施例1で製造したIPN−50の代わりに、参考例2では実施例6で製造したIPN−50を用い、参考例3では比較例1で製造したIPN−50を用いたこと以外は、それぞれ参考例1と同様にして、セメント分散剤用ポリカルボン酸を得た。参考例2で得られたポリカルボン酸の重量平均分子量は23,900であり、参考例3で得られたポリカルボン酸の重量平均分子量は20,400であった。
【0106】
以上の参考例1〜3で得られたセメント分散剤用ポリカルボン酸を用いて、以下の方法でモルタルフロー値を評価した。
【0107】
すなわち、太平洋セメント普通ポルトランドセメント400g、豊浦標準砂800g、およびセメント分散剤用ポリカルボン酸を含むイオン交換水260g(セメントに対して固形分が0.14質量%)を、室温でモルタルミキサーを用いて3分間機械練りし、モルタルを調製した。このモルタルを、ステンレス板上に載置した直径55mm、高さ55mmの中空円筒に詰め、この円筒を垂直に持ち上げたときにステンレス板上に広がったモルタルの直径を2方向について測定し、その平均値をモルタルフロー値とした。結果は以下に示す通りであった。
【0108】
参考例1(実施例1で製造したIPN−50を使用):110mm
参考例2(実施例2で製造したIPN−50を使用):105mm
参考例3(比較例1で製造したIPN−50を使用):68mm
上記結果から、本発明の製造方法を用いて製造されたアルコキシレート化合物から得られるポリカルボン酸は、セメント分散剤として高いモルタルフロー値を発現しうることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】平板タイプの羽根が設けられた撹拌反応器における撹拌状況を示す概略図である。
【図2】アルキレンオキサイド付加に対する撹拌羽根の影響を説明するグラフである。
【図3】上部になるほど直径が段階的に大きくなる形状を有する撹拌反応器の概略図である。
【図4】複数枚の平板が組み合わさったタイプ(トルネードタイプ)の羽根の概略図である。
【図5】2つの撹拌羽根が垂直方向に切れ目なく設けられてなるタイプ(フルゾーンタイプ)の羽根の概略図である。
【図6】パドル羽根が間欠的に設けられてなるタイプの羽根の概略図である。
【図7】穴を設けることによって撹拌力を向上させたタイプ(マックスブレンドタイプ)の羽根の概略図である。
【符号の説明】
【0110】
1 撹拌反応器
2 羽根
3 反応液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌反応器に供給されてなる活性水素含有化合物に、アルキレンオキサイドを供給して、アルコキシレート化合物を製造する方法であって、
アルキレンオキサイド付加反応中の反応液の最高粘度が10mPa・s以上であり、
前記反応液は、前記撹拌反応器内部に垂直方向に連続的に設けられた羽根の回転により撹拌され、
下記式(1):
【数1】

(式中、Aはアルキレンオキサイドの供給により新たに浸漬された羽根の長さ(m)であり、h1はアルキレンオキサイド供給前の液面高さ(m)であり、h2はアルキレンオキサイド供給後の液面高さ(m)である)
で表される数値Cが0.5以上であることを特徴とするアルコキシレート化合物の製造方法。
【請求項2】
前記活性水素含有化合物は、ポリアルキレン(C2−C4)イミンであることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシレート化合物の製造方法。
【請求項3】
前記数値Cが0.7以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルコキシレート化合物の製造方法。
【請求項4】
撹拌反応器に供給されてなる活性水素含有化合物に、アルキレンオキサイドを供給して、アルコキシレート化合物を製造する方法であって、
反応液は、前記撹拌反応器内部に垂直方向に連続的に設けられた羽根の回転により撹拌され、
アルキレンオキサイドを付加した後に、下記式(2):
【数2】

(式中、Bは前記反応液の減少により気相に新たに露出した羽根の長さ(m)であり、h2はアルキレンオキサイド供給後の液面高さ(m)であり、h3は不純物または溶剤除去処理後の液面高さ(m)である)
で表される数値C’が0.5以上となるように前記反応液を前記羽根の回転により撹拌しながら、不純物または溶剤を除去することを特徴とするアルコキシレート化合物の製造方法。
【請求項5】
アルキレンオキサイドを付加した後に、2か所以上の吹き出し口から供給された不活性気体で、前記反応液をバブリングすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルコキシレート化合物の製造方法。
【請求項6】
前記活性水素含有化合物はアルケニル基含有ヒドロキシ化合物であり、アルキレンオキサイド付加反応の際の反応温度(X)、反応時間(Y)および触媒濃度(Z)が下記式(3):
【数3】

(式中、Xは反応温度(℃)であり、Yは反応時間(アルキレンオキサイド投入時間(hr)+熟成時間(hr))であり、Zは触媒濃度(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対する触媒の質量%)である)
を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルコキシレート化合物の製造方法。
【請求項7】
前記アルケニル基含有ヒドロキシ化合物に付加されるアルキレンオキサイドの平均付加モル数が40モル以上であることを特徴とする請求項6に記載のアルコキシレート化合物の製造方法。
【請求項8】
前記アルキレンオキサイド付加反応で副生するポリアルキレンオキサイドの生成量が、前記アルキレンオキサイド付加反応で生成する全生成物に対して15質量%以下である、請求項6または7に記載のアルコキシレートの製造方法。
【請求項9】
触媒存在下、アルケニル基含有ヒドロキシ化合物にアルキレンオキサイドを供給して、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が40モル以上のアルコキシレート化合物を製造する方法であって、アルキレンオキサイド付加反応の際の反応温度(X)、反応時間(Y)および触媒濃度(Z)が下記式(3):
【数4】

(式中、Xは反応温度(℃)であり、Yは反応時間(アルキレンオキサイド投入時間(hr)+熟成時間(hr))であり、Zは触媒濃度(仕込み原料から算出されるアルコキシレート化合物理論量に対する触媒の質量%)である)
を満足することを特徴とする、アルコキシレート化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−52055(P2009−52055A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299870(P2008−299870)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2002−140264(P2002−140264)の分割
【原出願日】平成14年5月15日(2002.5.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】