説明

アルコール検出装置

【課題】 複数個のセンサによって呼気中のアルコール濃度を検出する装置において、各センサが確実に呼気を検出できるようにすることを課題としている。
【解決手段】 少なくとも酸素センサ17が設けられたアルコール検出装置101において、運転者Mが吹き込んだ呼気A(呼気集合体A”)中の酸素濃度が設定値以下に低下したことを酸素センサ17が検出したことをトリガとして、ファン7の回転数を低下させ、呼気集合体A”が低速でセンサ部分(第2支持部12)を通過するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者から排出される呼気中のアルコール濃度を検出するためのアルコール検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、車両(例えば、自動車)に搭載されるアルコール検出装置について説明する。近年、車両の飲酒運転は重大な社会問題となっていて、運転者が酒気を帯びた状態で車両を運転することは厳禁とされている。これを担保するため、各種の車両用アルコール検出装置の発明が出願されている。
【0003】
アルコール検出装置として、各種の技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、このアルコール検出装置の場合、運転者が弱い呼気を吹き込んだ場合には良好な検出結果が得られるが、使用者が強い呼気を吹き込んだ場合には、呼気がセンサ部分を通過するときの流速が大きくなり、安定した測定結果を得ることが困難になる。
【0004】
特に複数個のセンサを使用する場合、おのおののセンサの応答性が異なるため、ファンによって大きな流速を有する呼気をセンサ部分に送り込むと、センサによっては検出エラーを生じ、高精度なアルコール検出が困難になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した不具合に鑑み、複数個のセンサによって呼気中のアルコール濃度を検出する装置において、各センサが確実に呼気を検出できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明は、
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中の要素を検出する複数のセンサと、を備え、
前記いずれかのセンサが前記呼気中の要素の変化を検出したことをトリガとして、前記ファンの回転数を調整するようにしたことを特徴としている。そして、前記ファンの回転数の調整は、その回転を所定時間だけ減速又は停止することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアルコール検出装置は上記したように構成されていて、使用者の呼気中の要素(例えば、酸素濃度やアルコール濃度等)の変化を検出する複数のセンサが設けられている。これらのセンサには、それらの応答性に差があるため、一定以上の流速を有する呼気集合体となって通過する呼気の要素を的確に検出できない場合がある。しかし、本発明に係るアルコール検出装置では、いずれかのセンサ(例えば、応答性が最も良好なセンサ)が呼気の要素の変化を検出したことをトリガとして、ファンの回転数が調整(減速又は停止)される。これにより、センサ部分(各センサが配置されている部分)を通過する呼気集合体の流速が低下されるため、すべてのセンサが確実に呼気集合体の要素の変化を検出し、アルコール検出の精度が高くなる。
【0009】
前記センサは、少なくとも前記呼気中の酸素濃度の変化を検出する酸素センサを含み、
前記所定時間は、前記酸素センサが、吹き込まれた呼気中の酸素濃度が設定値以下になったことを検出してから設定値以上に回復したことを検出するまでとすることができる。
【0010】
ファンの回転数を調整するトリガとなるセンサを温度センサとし、この温度センサが、呼気集合体の酸素濃度が設定値(例えば20%)以下となったことを検出してから回復するまでファンの回転を減速又は停止することができる。なお、トリガとなるセンサは、酸素センサ以外のものであってもよい。
【0011】
前記ファンの駆動手段はDCモータであり、
前記酸素センサと接続され、該酸素センサから出力される酸素濃度の信号をパルス信号に変換するPWM制御装置を有し、
前記PWM制御装置によって前記ファンの回転数を調整することができる。
【0012】
前記ケース体に設けられた呼気入口と前記ファンとの間に空間部が設けられていてもよい。また、前記ファンと前記センサとの間に、前記ファンによって下流側に送られる呼気を当ててその流速を低下させるための邪魔板が設けられていてもよい。
【0013】
これらの手段を講じることにより、アルコール検出装置の構成を複雑にすることなく、吹き込まれた呼気の流速をいっそう低下させることができ、各センサによる要素変化の検出がより確実なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るアルコール検出装置101が搭載された運転席の概略図である。
【図2】第1実施例のアルコール検出装置101の全体斜視図である。
【図3】同じく分解斜視図である。
【図4】アルコール検出センサ16の斜視図である。
【図5】(a)は第1実施例のアルコール検出装置101の断面模式図、(b)は比較例のアルコール検出装置100の断面模式図である。
【図6】PWM制御回路200の概略図である。
【図7】(a)〜(d)は各センサ14〜16による要素の検出結果を示すタイムチャートである。
【図8】第2実施例のアルコール検出装置102の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書では、車両に搭載されたアルコール検出装置について説明する。
【0016】
図1は本発明に係るアルコール検出装置101が搭載された運転席の概略図、図2は第1実施例のアルコール検出装置101の全体斜視図、図3は同じく分解斜視図、図4はアルコール検出センサ16の斜視図、図5の(a)は第1実施例のアルコール検出装置101の断面模式図、(b)は比較例のアルコール検出装置100の断面模式図である。
【実施例1】
【0017】
図1に示されるように、車両(自動車)の運転席に実施例のアルコール検出装置101が取り付けられている。このアルコール検出装置101は、例えば運転席のインストゥルメントパネル1に対して着脱自在に、ケーブル2で連結されている。運転席に着席した運転者M(使用者)が、車両のエンジンを始動させようとするとき、アルコール検出装置101に呼気を吹き付ける。この呼気中のアルコール濃度が所定値以下であれば、装置ECU(図示せず)は、運転者Mが酒気帯び状態ではないと判断し、エンジンの始動を許可する。もし、呼気中のアルコール濃度が所定値を超えるものであれば、装置ECUは、運転者Mが酒気帯び状態であると判断し、エンジンの始動を許可しない。これにより、飲酒運転を防止する。
【0018】
図2及び図3に示されるように、第1実施例のアルコール検出装置101は、フロントパネル3とリアパネル4とを備えるケース体5に、複数種類のセンサ(後述)が装着された複合ガスセンサの形態としてなる。ケース体5には枠部材6が内装されていて、この枠部材6にファン7とセンサ支持部材8が取り付けられる。センサ支持部材8は、ファン7を固定する固定板部9と、呼気をスムーズに流すためにテーパ筒形状とされた第1支持部11と、各センサを固定するためにストレート筒形状とされた第2支持部12とを備えている。センサ支持部材8の第2支持部12に、基板13に実装された各センサ(温度センサ14、湿度センサ15、アルコール検出センサ16及び酸素センサ17)が支持される。
【0019】
フロントパネル3とリアパネル4とが一体となって形成されるケース体5は運転者Mが把持しやすい大きさであり(図1参照)、把持したときのフィーリングを良好にするためにその下部3a、4aが連続的に細くなっている。そして、そのフロントパネル3の正面部には、運転者Mが吹き付けた呼気を通すための吸気孔18(呼気入口)が設けられている。第1実施例のアルコール検出装置101の場合、多数の小径の吸気孔18が設けられている。
【0020】
センサ支持部材8の固定板部9に固定されたファン7は、フロントパネル3の吸気孔18に対向配置されるようにして枠部材6に組み付けられる。このファン7は、例えばアウターロータ型のブラシレスDCモータであり、枠部19と、枠部19に回転可能に支持される回転軸部21と、その外周面から半径方向に突出する複数枚(第1実施例の場合、8枚)の羽根部22とを備えている。また、枠部材6には、スピーカ23が装着された基板24、液晶パネル25及びスイッチ26が装着されたスイッチ基板27が取り付けられる。液晶パネル25は、運転者Mのアルコール濃度の検出結果を文字表示するものであり、フロントパネル3の表示窓28から運転者Mが視認可能である。スイッチ26は、ファン7、各センサ14〜17、スピーカ23及び液晶パネル25に通電して、アルコール検出装置101を作動可能とするものである。このスイッチ26は、フロントパネル3の側壁部に設けられた窓部29に配置され、ノブ31を押すことによって作動する。なお、図3において32は、アルコール検出装置101のケーブル2を保護するためのブッシュであり、33は、リアパネル4に設けられた排気孔である。
【0021】
運転者Mがフロントパネル3の吸気孔18に吹き付けた呼気は、吸気孔18を通過し、ファン7によってセンサ支持部材8の部分に送出される。このとき、ファン7によって呼気が攪拌され、呼気と外気(呼気と同時に流入する空気、及び予めセンサ支持部材7内に存する空気)とが混ざり合う。そして、各センサ14〜17に接触することにより呼気のアルコール濃度が検出された後、リアパネル4の排気孔33から外部(車両の室内)に排気される。
【0022】
次に、各センサ14〜17について説明する。温度センサ14は、例えば「サーミスタ」と称され、ニッケル、コバルト、マンガン等の酸化物よりなるセラミクス半導体である。呼気の温度は、運転者Mによる呼気の吹付け方法によって変化する。例えば、運転者Mが吹き付けた呼気が体内(肺)から生じたものである場合、その温度は高く、しかもアルコールを含んでいるか否かの判定が容易である。しかし、口内から生じたものであったり、不正手段によって吹き付けたものであったりする場合、その温度は低い。また、外気温によっても変化する。このため、温度センサ14により、呼気の温度を検出することにより、それが運転者Mの肺からの呼気であるか否かを判定する。
【0023】
湿度センサ15は、空気中の水分量の変化によってセンサ素子の導電率や静電容量が変化することによって、当該空気の湿度を計測するセンサ(例えば、容量変化型湿度センサ)である。ここでアルコール検出センサ16は、外気中の湿度にも反応してしまう場合がある。また、運転者Mの呼気には、当該運転者Mが酒気帯び状態でなくてもアルコールを含んでいるため、アルコール検出センサ16が通常状態(酒気を帯びていない状態)の呼気のアルコールを検出してしまう場合がある。このため、湿度センサ15が検出する湿度をモニタすることにより、アルコール検出センサ16が外気の湿度や通常状態の呼気のアルコールを検出しても、それらの検出値を採用しないようにすることができる。
【0024】
図4に示されるように、アルコール検出センサ16は半導体式のガスセンサであり、金属酸化物(例えば酸化スズ)の半導体の表面にガス(呼気中のアルコール)が吸着することによる電導度(電気抵抗)の変化を測定するものである。ベース部材34の上面に感ガス素子35(金属酸化物の半導体)が設置されていて、その周囲が金属のキャップ36で覆われている。キャップ36の上面に窓部36aが設けられ、その窓部36aが二重金網構造のメッシュ37で覆われている。このメッシュ37により、検出される呼気の流速の影響が軽減される。
【0025】
酸素センサ17は、外気と混ざり合うことによって希釈される呼気の酸素濃度を検出するものであり、例えばジルコニア固体電解質を用いたものとすることができる。ここで、車室内の外気の酸素濃度は、天候や乗員の数が変化してもほぼ一定である。しかし、呼気の酸素濃度(換言すれば、呼気の希釈率)は、外気によって希釈された場合であっても外気の酸素濃度よりも低い。即ち、酸素センサ17が検出する酸素濃度の変化をモニタすることにより、センサ支持部材8内の空気に呼気が含まれているか否かを判定することができる。
【0026】
第1実施例のアルコール検出装置101について、更に詳細に説明する。図5において、(a)は本発明の実施例のアルコール検出装置101の断面模式図であり、(b)は通常の状態(前述した不具合を想定しない状態)で設計されると想定されるアルコール検出装置100の断面模式図で、本発明との差異を明確にするための比較例として示したものである。なお、以下の図において、センサはアルコール検出センサ16と酸素センサ17のみを図示する。
【0027】
図5の(a)に示される第1実施例のアルコール検出装置101と図5の(b)に示される比較例のアルコール検出装置100とを比較すると、第1実施例のアルコール検出装置101は、フロントパネル3とファン7の回転軸部21との隙間eが、比較例のアルコール検出装置101における隙間e’よりも長くなっている。即ち、アルコール検出装置101における隙間e’が1〜2mmであるとすると、第1実施例のアルコール検出装置101の隙間eは5mm程度であり、フロントパネル3とファン7との間に大きな空間部Q1が形成されている。
【0028】
また、第1実施例のアルコール検出装置101は、センサ支持部材8におけるファン7とセンサ16、17との間で、第1支持部11と第2支持部12との接続部にリング状の邪魔板38が設けられている。しかも、第1実施例のアルコール検出装置101におけるセンサ支持部材8の第1支持部11の傾斜は、比較例のアルコール検出装置100におけるセンサ支持部材8の第1支持部11の傾斜よりも緩くなっている。このため、ファン7から邪魔板38までの距離Lは、比較例のアルコール検出装置100における同距離L’よりも少し大きく、ファン7と邪魔板38との間に空間部Q2が形成されている。
【0029】
邪魔板38の軸心部分には、呼気Aが通る通気孔38aが設けられている。邪魔板38の通気孔38aの孔径d1は、ファン7の回転軸部21の外径Dよりも小さい。運転者Mが吹き込んだ強い呼気Aのうち、ファン7の羽根部22の隙間をすり抜けたものがあっても邪魔板38に当たって逆流し、ファン7の回転軸部21に当たってその流速を低下させ、かつ空間部Q2にいったん停留した後、回転軸部21の外径Dよりも小さい孔径d1の通気孔38aを通ってセンサ部分(各センサ14〜17が配置されている部分)に送出される。これにより、運転者Mが呼気Aを強く吹き込んだ場合であっても、弱く吹き込んだ場合であってもその呼気Aがセンサ部分を通過するときの流速が小さく、かつ一定となるため常に安定した測定結果を得ることができる。なお、距離e(空間部Q1の大きさ)は、例えばファン7の羽根部22の回転軸部21からの半径方向の突出長さHの半分以上で突出長さH以下とすることができる。また、ファン7から邪魔板38までの距離L(空間部Q2の大きさ)は、例えばファン7の羽根部22の突出長さHと同程度又はそれ以上とすることができる。
【0030】
第1実施例のアルコール検出装置101の場合、ファン7を駆動するモータ7aは、例えば5Vで4000min−1(rpm)の回転数を有するDCモータであり、その回転数は装置ECU(図示せず)に組み込まれたPWM制御回路200(Pulse Width Modulation)によって調整可能である。PWM制御回路200の原理について説明する。図6に示されるように、PWM制御回路200は、PWMジェネレータ39によって生成されるPWM波のデューティ比をアナログ入力電圧(可変電圧41)により制御し、このPWM波でトランジスタ42をスイッチングさせてモータ7aの回転数を増減させるものである。ここで、酸素セン17とPWMジェネレータ39とが接続されていて、酸素センサ17から出力される酸素濃度の信号によりPWMジェネレータ39が作動する。なお、図6において、43はモータ7aを保護するためのフライホイールダイオードである。
【0031】
図7に、第1実施例のアルコール検出装置101における各センサ14〜17が検出したときのタイムチャートを示す。図7の(a)は温度センサ14のタイムチャート、同じく(b)は湿度センサ15のタイムチャート、同じく(c)は酸素センサ17のタイムチャート、同じく(d)はアルコール検出装置センサ16のタイムチャートを示していて、それらの横軸は時間を示し、縦軸は順に呼気Aの温度(℃)、湿度(%)、酸素濃度(%)及びアルコール濃度(ppm)を示す。また、酸素センサ17のタイムチャートに設けられた直線(水平線)は、酸素センサ17によって検出された呼気Aの酸素濃度が20%の状態を示す。第1実施例のアルコール検出装置101の場合、呼気Aの酸素濃度によってファン7のモータ7aの回転数を調整している。即ち、呼気Aの酸素濃度が20%以上であるときはモータ7aを4000min−1で通常回転させ、酸素濃度が20%より低くなればモータ7aの回転数を例えば1000min−1に低下させ、酸素濃度が20%に回復すれば、モータ7aの回転数を4000min−1の通常回転に復帰させている。
【0032】
次に、図5を参照しながら、第1実施例のアルコール検出装置101の作用について説明する。運転者Mがアルコール検出装置101、100の吸気孔18に強い呼気Aを吹き込んだとき、比較例のアルコール検出装置100の場合、その呼気Aはすぐにファン7によって攪拌されて下流側に送出される。呼気Aによっては、図5の(b)の矢印44で示されるように、ファン7の羽根部22の隙間をすり抜けて大きな流速でセンサ部分(センサ支持部材8において、各センサ14〜17が配置されている部分。即ち、第2支持部12をいう。)に送出されてしまうものもある。すると、安定した測定結果を得ることが困難になる。
【0033】
これに対して第1実施例のアルコール検出装置101の場合、図5の(a)に示されるように、車両の運転者Mが、アルコール検出装置101の吸気孔18に吹き込んだ呼気Aは集合体となって、ケース体5のフロントパネル3とファン7の回転軸部21との間に形成された大きな空間部Q1でいったん停留した後(その状態の呼気集合体を、符号A’で示す。)、ファン7に吸い込まれて攪拌されながら下流側に送出される。そして、空間部Q2内で停留したり、邪魔板38に当たって逆流したりする。これにより、呼気集合体A’の流速が更に低下するため、呼気集合体A’は層流に近い状態となって邪魔板38の通過孔38aを通り、呼気集合体A”となって更に下流側のセンサ部分(センサ支持部8の第2支持部12)に送出される。
【0034】
ここで、各センサ14〜17が呼気集合体A”内の要素(この場合、酸素濃度、アルコール濃度、温度及び湿度)を検出するときの感度特性には差(感度の高低)がある。例えば、図7に示されるように、酸素センサ17がピーク値を検出する時間t1と湿度センサ15がピーク値を検出する時間t2とは異なっていて、両者の間に反応遅れ時間Δtが発生する。このため、呼気集合体A”の流速が所定速度以上であると要素の検出が困難であったり、検出エラーを生じたりするおそれがある。
【0035】
第1実施例のアルコール検出装置101の場合、各センサ14〜17のうち、呼気集合体A”に対する酸素センサ17の応答性が最も良好である。このため、最初に酸素センサ17が、呼気集合体A”の酸素濃度を検出する。そして、呼気集合体A”中の酸素濃度が所定値(例えば20%)以下となったこと(これは、呼気集合体A”がセンサ部分に接近したことを意味する。)をトリガとしてファン7の回転数を調整する。即ち、酸素センサ17からPWMジェネレータ39に指令が送られ、PWMジェネレータからその指令に対応するPWM波のデューティ比に比例した平均電流がモータ7aに流れてファン7の回転数が低下する。第1実施例のアルコール検出装置101の場合、ファン7の回転数を4000min−1から例えば1000min−1に低下させる。
【0036】
これにより、呼気集合体A”の流速が低下し、呼気集合体A”はセンサ部分を低速で通過する。この結果、酸素センサ17以外の各センサ14〜16が、呼気集合体A”の要素を確実に検出する。そして、呼気集合体A”がセンサ部分を通過することにより、その酸素濃度が所定値(例えば20%)にまで回復したら、再度ファン7の回転数を原レベルに復帰させて、呼気集合体A”を迅速に排気する。これにより、酸素センサ17と比較して低感度である他のセンサ14、15,17がそれぞれの要素の検出エラーを起こしてしまうことが防止され、常に高精度の要素の検出が可能となる。
【0037】
なお、第1実施例のアルコール検出装置101は、所定の場合にファン7の回転数を低下させるものであり、各センサ14〜17による呼気集合体A”の要素の検出が終了次第、その呼気集合体A”を迅速に排気することができるという利点がある。しかし、所定の場合にファン7の回転を停止させてもよい。
【実施例2】
【0038】
第1実施例のアルコール検出装置101では、フロントパネル3に多数の吸気孔18が設けられている形態である。しかし、図8に示される第2実施例のアルコール検出装置102のように、吸気孔45が1つであってもよい。このとき、吸気孔45の孔径d2は、ファン7の回転軸部21の外径Dよりも小さくすることが望ましい。これにより、運転者Mが吹き込んだ呼気Aがファン7の回転軸部21に当たって、その流速を低下させてから下流側に送出されるようになる。
【0039】
また、上記の各実施例のアルコール検出装置101、102の場合、酸素センサ17の感度が最も良好であるため、酸素センサ17が呼気集合体A”の濃度変化(濃度の低下)を検出したことをトリガとしてファン7の回転数を調整しているが、他のセンサ14〜16が要素を検出したことをトリガとしてもよい。
【0040】
上記の各実施例のアルコール検出装置101、102では、アルコール検出センサ16と酸素センサ17とを呼気集合体A”の送出方向に対して同一円周上に配置している。しかし、それらを呼気Aの送出方向に沿って直列に配置してもよい。なお、本出願人による実験の結果、各センサ14〜17の配置を異ならせた場合であっても、検出精度の有意差は認められなかった。
【0041】
本明細書では、各実施例のアルコール検出装置101、102が車両に搭載される場合について説明した。しかし、このアルコール検出装置101を車両に搭載される以外の用途で使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両(例えば、自動車)のアルコール検出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
101、102 アルコール検出装置
200 PWM制御回路(PWM制御装置)
5 ケース体
7 ファン
7a モータ(DCモータ)
14 温度センサ(センサ)
15 湿度センサ(センサ)
16 アルコール検出センサ(センサ)
17 酸素センサ(センサ)
18、45 吸気孔(呼気入口)
38 邪魔板
A 呼気
A’、A” 呼気集合体(呼気)
M 運転者(使用者)
Q1 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中の要素を検出する複数のセンサと、を備え、
前記いずれかのセンサが前記呼気中の要素の変化を検出したことをトリガとして、前記ファンの回転数を調整するようにしたことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項2】
前記ファンの回転数の調整は、その回転を所定時間だけ減速又は停止することであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール検出装置。
【請求項3】
前記センサは、少なくとも前記呼気中の酸素濃度の変化を検出する酸素センサを含み、
前記所定時間は、前記酸素センサが、吹き込まれた呼気中の酸素濃度が設定値以下になったことを検出してから設定値以上に回復したことを検出するまでであることを特徴とする請求項2に記載のアルコール検出装置。
【請求項4】
前記ファンの駆動手段はDCモータであり、
前記酸素センサと接続され、該酸素センサから出力される酸素濃度の信号をパルス信号に変換するPWM制御装置を有し、
前記PWM制御装置によって前記ファンの回転数を調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアルコール検出装置。
【請求項5】
前記ケース体に設けられた呼気入口と前記ファンとの間に空間部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアルコール検出装置。
【請求項6】
前記ファンと前記センサとの間に、前記ファンによって下流側に送られる呼気を当ててその流速を低下させるための邪魔板が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアルコール検出装置。
【請求項7】
車両に搭載され、使用者がケース体の呼気入口を自身の口元に近づけて呼気を吹き込むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のアルコール検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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