説明

アルコール濃度検出装置

【課題】アルコールセンサが交換されたとしても、アルコール濃度を算出するためのアルコール濃度算出式のキャリブレーションをする工程の煩わしさを低減できるアルコール濃度検出装置を提供すること。
【解決手段】アルコールセンサ211が搭載される基板21に、そのアルコールセンサ211のアルコール濃度算出式を導くためのキャリブレーションデータが記憶されたEEPROM213も搭載してセンサASSY2を構成する。これにより、そのセンサASSY2が交換されたとしても、アルコールセンサ211とともに、EEPROM213も交換されることになる。したがって、そのEEPROM213に記憶されたキャリブレーションデータに基づいて、交換後のアルコールセンサ211のアルコール濃度算出式を定めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲酒運転を防止するために用いられ、自動車の運転手等の被験者の呼気中に含まれているアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲酒運転を防止するために、自動車の運転手の呼気中に含まれているアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この種のアルコール濃度検出装置は、被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性(センサ物性)を示す金属酸化物等の半導体が用いられた半導体センサが搭載される。
【0003】
その半導体センサにエタノール等のアルコールが反応すると、そのアルコール濃度に応じてセンサ物性としてのセンサ抵抗が変化する。したがって、アルコール濃度とセンサ物性との関係を示したアルコール濃度算出式を予め求めておき、そのアルコール濃度算出式に検出されたセンサ物性を代入することによって、呼気に含まれているアルコール濃度を算出することができる。
【0004】
このようなアルコール濃度検出装置を用いることによって、自動車の運転手の呼気中から基準値以上のアルコール濃度が検出された場合には、自動車の走行を不能にするなどして飲酒運転を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−212217号公報
【特許文献2】特開2009−42024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体センサは、使用環境、使用時間等によって半導体の表面にシリコン等の不純物が付着し、時間の経過とともにその付着量も多くなっていく。そして、半導体表面に不純物が付着すると、アルコールに対する感度が悪くなる。すなわち、半導体センサは使用環境、使用時間等によって劣化する。劣化した半導体センサを用いると、同じアルコール濃度のアルコールと反応した場合であっても、劣化する前と異なるセンサ抵抗を示すので、正確でないアルコール濃度が算出されることになる。そのため、半導体センサは定期的に交換する必要がある。
【0007】
しかしながら、交換後の半導体センサは、交換前の半導体センサと厳密に特性が一致しているわけではないので、交換前の半導体センサのアルコール濃度算出式をそのまま用いることができない。したがって、交換後の半導体センサの特性が反映されたアルコール濃度算出式を改めて求めるキャリブレーション工程が必要となってくる。
【0008】
そこで従来では、キャリブレーション工程として、交換後の半導体センサを搭載したアルコール濃度検出装置に、予めアルコール濃度が分かっている気体を吹き付けて、その半導体センサのセンサ抵抗を計測していた。つまりアルコール濃度をそれぞれ変化させて、それぞれについてセンサ抵抗を計測する。そして、各計測点に基づいてアルコール濃度算出式を求める。このように、交換毎にこのようなキャリブレーション工程を行うのは煩わしいという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、上記キャリブレーション工程の煩わしさを低減して、半導体センサを簡易に交換することができるアルコール濃度検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のアルコール濃度検出装置は、被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性(以下「センサ物性」という)を示す半導体センサと、
その半導体センサである搭載半導体センサの前記センサ物性から前記アルコール濃度を算出するためのアルコール濃度算出式が、同種の他の半導体センサのアルコール濃度算出式と共通する基本算出式と、前記搭載半導体センサ固有の定数とからなる式であり、その定数であるキャリブレーションデータが記憶された第一の記憶手段と、を含む交換可能なセンサASSYと、
前記基本算出式が記憶された基本算出式記憶手段と、
前記センサ物性を計測するセンサ物性計測手段と、
前記第一の記憶手段から前記キャリブレーションデータを読み出す読出手段と、
その読出手段が読み出した前記キャリブレーションデータと前記基本算出式記憶手段に記憶された前記基本算出式とに基づいて定まる前記アルコール濃度算出式と、前記センサ物性計測手段が計測した前記センサ物性とに基づいて、前記アルコール濃度を算出するアルコール濃度算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、半導体センサが搭載されたセンサASSYは、交換可能であるので、そのセンサASSYを他のセンサASSYと交換することによって半導体センサを交換することができる。ここで、アルコール濃度算出式は、同種の他の半導体センサのアルコール濃度算出式と共通する基本算出式と、各半導体センサ固有の定数とからなる式であると考えられる。そこで、センサASSYには、その半導体センサ固有の定数であるキャリブレーションデータが記憶された第一の記憶手段が搭載されている。したがって、センサASSYが交換された場合には、半導体センサが交換されるとともに、交換後の半導体センサに対応するキャリブレーションデータが記憶された第一の記憶手段に交換されることになる。また、基本算出式記憶手段には上記基本算出式が記憶されている。したがって、半導体センサが交換されたとしても、第一の記憶手段に記憶されたキャリブレーションデータと基本算出式記憶手段に記憶された基本算出式とに基づいて、交換後の半導体センサのアルコール濃度算出式を定めることができる。そこで、アルコール濃度算出手段は、読出手段が読み出したキャリブレーションデータと基本算出式記憶手段に記憶された基本算出式とに基づいて定まるアルコール濃度算出式と、センサ物性計測手段が計測したセンサ物性とに基づいて、アルコール濃度を算出する。したがって、仮にセンサASSYが交換されたとしても、交換後の半導体センサについて、改めてアルコール濃度算出式を求めるキャリブレーション工程が不要となるので、半導体センサを簡易に交換することができる。
【0012】
また、キャリブレーションデータとして、上記定数ではなくアルコール濃度算出式そのものを記憶しておいてもよい。すなわち、本発明のアルコール濃度検出装置は、被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性(以下「センサ物性」という)を示す半導体センサと、
その半導体センサである搭載半導体センサの前記センサ物性から前記アルコール濃度を算出するためのアルコール濃度算出式であるキャリブレーションデータが記憶された第一の記憶手段と、を含む交換可能なセンサASSYと、
前記センサ物性を計測するセンサ物性計測手段と、
前記第一の記憶手段から前記キャリブレーションデータを読み出す読出手段と、
その読出手段が読み出した前記キャリブレーションデータと、前記センサ物性計測手段が計測した前記センサ物性とに基づいて、前記アルコール濃度を算出するアルコール濃度算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
これによれば、半導体センサごとのアルコール濃度算出式において共通する基本算出式がない場合であっても、半導体センサが交換されるとアルコール濃度算出式そのものも交換される。したがって、交換後の半導体センサについて、改めてアルコール濃度算出式を求めるキャリブレーション工程が不要となるので、半導体センサを簡易に交換することができる。
【0014】
また、本発明のアルコール濃度検出装置は、前記センサASSYが交換されたか否かを判断する交換有無判断手段と、
前記読出手段が読み出した前記キャリブレーションデータを記憶する第二の記憶手段と、をさらに備え、
前記交換有無判断手段によって、前記センサASSYが交換されていないと判断された場合には、前記読出手段は前記キャリブレーションデータを読み出さないで、前記アルコール濃度算出手段は、前記第二の記憶手段に記憶されている前回の前記キャリブレーションデータをそのまま用いて前記アルコール濃度を算出するとしてもよい。
【0015】
その交換有無判断手段が行う判断方法に関して、前記第一の記憶手段には前記センサASSYの識別番号も記憶されており、
前記交換有無判断手段は、前回と今回で前記第一の記憶手段に記憶されている前記識別番号が変わったか否かによって、前記センサASSYが交換されたか否かを判断することができる。
【0016】
これによって、簡易、確実にセンサASSYが交換されたか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アルコール濃度検出装置1の斜視図である。
【図2】アルコール濃度検出装置1の分解図である。
【図3】アルコールセンサ211の詳細を示した図である。
【図4】アルコール濃度の算出方法を説明するための図である。
【図5】アルコール濃度を検出するときのCPU17が実行する処理を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
以下、本発明のアルコール濃度検出装置の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態のアルコール濃度検出装置1を斜め前方から見た斜視図、図2はアルコール濃度検出装置1の分解図、図3は図2のアルコールセンサ211の詳細を示した図である。まず、これら図1〜図3を参照して、アルコール濃度検出装置1の構成を説明する。なお、このアルコール濃度検出装置1は、例えば自動車に設けられて、飲酒運転を防止するために用いられる。すなわち、アルコール濃度検出装置1は、運転者の呼気に含まれているアルコール濃度を検出して、そのアルコール濃度が所定の基準値より大きい場合には、エンジンを制御するエンジンECU(図示外)が自動車の走行を不能にする。
【0019】
アルコール濃度検出装置1は、運転者が把持できる大きさであり、図1、図2に示すように、その筐体10の正面には、運転者の呼気を内部に取り込む取込口111が形成されている。運転者は、アルコール濃度を検出するときには、アルコール濃度検出装置1を把持し、口元にこの取込口111を近づけて、この取込口111に呼気を吹きかけることになる。
【0020】
また、筐体10は、図2に示すように、正面カバー101と背面カバー102とからなり、その背面カバー102には、取込口111から取り込んだ呼気を外に排出する排出口18が形成されている。つまり、取込口111から取り込んだ呼気は、呼気流路5内を進行し、その呼気流路5内で後述する半導体センサ211等の各種センサと接触し、その後、排出口18から排出されることになる。
【0021】
また、アルコール濃度検出装置1は、アルコール濃度の検出結果等を表示する表示部12が設けられている。図1に示すように、その表示部12は、筐体10正面に露出しており、運転者がその表示部12の表示状態を視認できるようになっている。
【0022】
また、アルコール濃度検出装置1は、アルコール濃度の検出の開始を指示するスイッチ13が設けられ、図1に示すように、そのスイッチ13の頭が筐体10の正面に露出しており、運転者がそのスイッチ13を押下操作できるようになっている。そのスイッチ13が運転者によって操作されたときには、筐体10の内部に設けられたファン14(図2参照)が駆動して、運転者が吹きかけた呼気が内部に取り込まれる。
【0023】
また、筐体10の内部には、運転者が吹きかけた呼気と反応して、その呼気に含まれているアルコール濃度を算出するための各種センサ211、221、231、232が設けられている。そして、図2に示すように、これらセンサ211、221、231、232は、基板21に固定されている。
【0024】
アルコールセンサ211は、被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じたセンサ抵抗を示す半導体センサである。ここで、図3に示すように、アルコールセンサ211は、表面が酸化スズ等の金属酸化物161をコーティングして焼結したものである。また、アルコールセンサ211の表面には、その金属酸化物161と重ねて、白金より成るコイル18Cもコーティングされている。
【0025】
アルコールセンサ211の機能について説明する。大気(アルコール分を含まない又は非常に少ない)中では、大気中の酸素原子と金属酸化物161(酸化スズ)中の電子が結合しているため、金属酸化物161には電気が流れにくい状態となっている。一方、金属酸化物161にアルコール分を含む呼気が接触すると、呼気中のアルコール分と表面の酸素原子とが反応し、金属酸化物161中の電子と結合している酸素原子が剥ぎ取られる。これにより、金属酸化物161中の電子が自由になって電気が流れるようになる。この変化を検出回路19にて検出し、金属酸化物161の電気抵抗値(センサ物性)の変化を計測することにより、呼気中のアルコール濃度が測定される。なお、検出回路19が本発明の「センサ物性計測手段」に相当する。
【0026】
また、アルコールセンサ211は、大気中に含まれている水蒸気が付着してアルコールに対する感度が変化することがある。そこで、定期的に、コイル18Cに接続された電源回路18Sによって、コイル18Cに電流を流し、金属酸化物161を所定温度に加熱して、付着した水蒸気を除去している(エージング)。
【0027】
このアルコールセンサ211は、上述したように、反応したアルコール濃度に応じたセンサ物性を示す。ここで、図4(a)は、センサ抵抗Rとアルコール濃度Xとの対応関係61を例示した図である。なお、本実施形態では、アルコール濃度Xと抵抗値Rとの対応関係61は、説明の便宜のため比例関係としている。図4(a)に示すように、呼気に含まれているアルコール濃度Xが大きくなるほど、アルコールセンサ211の抵抗値Rが小さくなる。これは、アルコール濃度Xが大きくなるほど、アルコールセンサ211の金属酸化物161中の電子と結合している酸素原子の剥ぎ取られる量が多くなるためである。例えば、図4(a)に示すように、(1)運転者がアルコール濃度x1の呼気を吹き付けた場合、アルコールセンサ211が抵抗値r1を示し、(2)その抵抗値r1が検出回路19(図3参照)で検出されることになる。したがって、その対応関係61を予め求めておけば、図4(b)に示すように、(3)検出された抵抗値r1からアルコール濃度x1を算出することができる。つまり、その対応関係61を示したアルコール濃度算出式(下記式1)に、センサ抵抗r1を代入することによって、アルコール濃度x1を算出することができる。
(式1)アルコール濃度X=A1×(センサ抵抗R)+C1
【0028】
なお、式1のアルコール濃度算出式は、説明の便宜上、対応関係61に対応させて、傾きA1、切片C1のセンサ抵抗を変数とした一次関数としているが、センサ抵抗Rとアルコール濃度Xとの対応関係及びアルコール濃度算出式は、図4、式1に限定されるものではない。
【0029】
そして、アルコールセンサ211は、使用環境、使用時間等によって金属酸化物161の表面にシリコン等の不純物が付着し、時間の経過とともにその付着量も多くなっていく。そして、金属酸化物161表面に不純物が付着すると、アルコールに対する感度が悪くなる。すなわち、アルコールセンサ211は使用環境、使用時間等によって劣化する。劣化したアルコールセンサ211を用いると、同じアルコール濃度のアルコールと反応した場合であっても、劣化する前と異なるセンサ抵抗を示すので、正確でないアルコール濃度が算出されることになる。そのため、アルコールセンサ211は定期的に交換する必要がある。
【0030】
しかしながら、交換後のアルコールセンサ211は、交換前のアルコールセンサ211と厳密に特性が一致しているわけではないので、交換前のアルコールセンサ211のアルコール濃度算出式をそのまま用いることができない。ただし、どのアルコールセンサ211であっても、アルコール濃度算出式は、図4、式1に示すような、センサ抵抗を変数とした一次関数の式で表され、上記傾きA1、切片C1がアルコールセンサ211ごとに異なると考えられる。つまり、アルコール濃度算出式は、下記式2の基本算出式と、各アルコールセンサ211固有の定数A1、C1とからなる式であると考えられる。
(式2)アルコール濃度X=A×(センサ抵抗R)+C
【0031】
そして、本発明のアルコール濃度検出装置1は、図2に示すように、アルコールセンサ211が搭載されている基板21に、アルコールセンサ211固有の定数A1、C1がキャリブレーションデータとして記憶されたEEPROM213が設けられている。詳細は後述するが、アルコール濃度を算出する際には、このEEPROM213に記憶されたキャリブレーションデータが用いられる。
【0032】
さらに、EEPROM213には、現在搭載されているアルコールセンサ211の識別番号○○○○も記憶されている。なお、EEPROM213が本発明の「第一の記憶手段」に相当する。
【0033】
また、基板21には、アルコールセンサ211の他に、酸素センサ221、湿度センサ231、温度センサ232が搭載されている。酸素センサ221は、呼気や大気等の雰囲気中の酸素濃度を検出するセンサであり、例えば多孔質基板で形成された気体拡散孔により通過量が制限された酸素イオンの移動を電流として検出することにより、酸素濃度を検出するものである。
【0034】
また、湿度センサ231は雰囲気の湿度を検出するセンサであり、例えば水分子付着による抵抗の変化を検出することにより、湿度を検出するものである。また、温度センサ232は、気温を検出するセンサであり、例えば気温による抵抗の変化を検出することにより、気温を検出するものである。
【0035】
これら酸素センサ221、湿度センサ231及び温度センサ232は、例えば上記特許文献2(特開2009−42024号公報)記載のように、取り込まれた気体に運転者の呼気が含まれているかを判定したり、運転者によって吹きかけられた呼気が大気で希釈された場合に、その希釈率を算出したりするために用いられる。
【0036】
そして、これらアルコールセンサ211、酸素センサ221、湿度センサ231、温度センサ232、EEPROM213及び基板21からセンサASSY2が構成される。上述したように、アルコールセンサ211は、時間の経過とともに劣化するので、定期的に交換する必要がある。そこで、本発明では、センサASSY2単位で、アルコールセンサ211を交換できるようになっている。つまり、センサASSY2が交換されると、アルコールセンサ211が交換されるとともに、EEPROM213も交換されることになる。そして、交換後のセンサASSY2のEEPROM213には、交換後のアルコールセンサ211に対応したキャリブレーションデータが記憶されている。
【0037】
説明を図2に戻り、筐体10の内部には、CPU17が設けられており、そのCPU17は基板16に搭載されている。また基板16には、EEPROM等のメモリ171も搭載されており、CPU17は、そのメモリ171に記憶されているプログラムにしたがってアルコール濃度を算出するための各種処理を実行する。また、このメモリ171は、本発明の「基本算出式記憶手段」として機能し、上記式2の基本算出式が記憶されている。さらに、メモリ171には、前回のアルコール濃度算出時のときに搭載されていたセンサASSY2に搭載されたEEPROM213に記憶されたキャリブレーションデータ(定数A1、C1)及び識別番号△△△△が記憶されている。したがって、メモリ171が本発明の「第二の記憶手段」に相当する。
【0038】
次に、アルコール濃度を検出するときのCPU17が実行する処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、フローチャートの処理は、例えばスイッチ13(図1参照)が運転者によって操作されたときに開始される。
【0039】
先ず、ステップS11では、センサASSY2に搭載されたEEPROM213から、センサASSY2の識別番号○○○○を読み出す。続くステップS12では、読み出した識別番号○○○○と、メモリ171に記憶されている識別番号△△△△とを比較して、センサASSY2が他のセンサASSY2に交換されたか否かを判断する。なお、ステップS12を実行するCPU17が本発明の「交換有無判断手段」に相当する。ここで、識別番号○○○○と識別番号△△△△とが一致する場合は、センサASSY2は交換されていないとして、処理をステップS15に進める。
【0040】
そして、ステップS15では、メモリ171に記憶されているキャリブレーションデータ(定数A1、C1)をそのまま用いて、運転者の呼気に含まれているアルコール濃度を算出する。具体的には、先ずファン14を駆動して、運転者の呼気を取り込み、検出回路19(図3参照)で検出されたアルコールセンサ211のセンサ抵抗を取得する。そして、メモリ171に記憶されているキャリブレーションデータ(定数A1、C1)と同じくメモリ171に記憶されている基本算出式(上記式2参照)とに基づいてアルコール濃度算出式(下記式3参照)を定める。そのアルコール濃度算出式にセンサ抵抗を代入してアルコール濃度を算出する。その後、図5のフローチャートの処理を終了する。
(式3)アルコール濃度X=A1×(センサ抵抗R)+C1
【0041】
なお、ステップS15において、算出されたアルコール濃度が所定の基準値よりも大きい場合には、その旨を表示部12で表示するとともに、図示しないエンジンECUにその旨を伝える。そして、エンジンECUが自動車の走行を不能にして、飲酒運転を防止する。
【0042】
一方、センサASSY2が他のセンサASSY2に交換されたとする。そして、交換後のセンサASSY2のEEPROM213に記憶されているキャリブレーションデータが定数A2、C2とする。この場合、ステップS11では、交換後のセンサASSY2に搭載されたEEPROM213から、交換後のセンサASSY2の識別番号○○○○が読み出される。続くステップS12においては、読み出した識別番号○○○○が、メモリ171に記憶されている識別番号△△△△と一致しないので、センサASSY2が他のセンサASSY2に交換されたと判断されて、処理をステップS13に進める。
【0043】
ステップS13では、交換後のセンサASSY2のEEPROM213に記憶されているキャリブレーションデータ(定数A2、C2)を読み出す。なお、ステップS13を実行するCPU17が本発明の「読出手段」に相当する。そして、続くステップS14では、交換後のセンサASSY2の識別番号○○○○と読み出したキャリブレーションデータ(定数A2、C2)とを、交換前のセンサASSY2のそれらに代えて、メモリ171に保存する。これにより、次回からは、その交換後のセンサASSY2の識別番号○○○○とキャリブレーションデータ(定数A2、C2)とに基づいて、センサASSY2が交換されたか否かを判断し(S12)、アルコール濃度を算出することができる(S15)。
【0044】
その後、ステップS15で、交換後のセンサASSY2のキャリブレーションデータ(定数A2、C2)に基づいて、アルコール濃度算出式を定める。この場合、上記式3において、定数A1、C1に代えて、定数A2、C2に置き換わることになる。そして。その定めたアルコール濃度算出式に基づいてアルコール濃度を算出する。なお、ステップS15を実行するCPU17が本発明の「アルコール濃度算出手段」に相当する。その後、図5のフローチャートの処理を終了する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、アルコールセンサ211が搭載される基板21に、そのアルコールセンサ211のキャリブレーションデータが記憶されたEEPROM213も搭載されてセンサASSY2が構成される。そして、そのセンサASSY2が交換された場合には、アルコールセンサ211とともに、EEPROM213も交換されることになる。したがって、そのEEPROM213に記憶されたキャリブレーションデータとメモリ171に記憶された基本算出式とに基づいて、交換後のアルコールセンサ211のアルコール濃度算出式を定めることができる。これにより、交換後のアルコールセンサ211について、改めてアルコール濃度算出式を求めるキャリブレーション工程が不要となるので、アルコールセンサ211を簡易に交換することができる。
【0046】
(第二実施形態)
次に、本発明のアルコール濃度検出装置の第二実施形態について第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。上記第一実施形態では、キャリブレーションデータとして、アルコール濃度算出式のアルコールセンサ211固有の定数としていたが、本実施形態では、キャリブレーションデータとして、各アルコールセンサ211のアルコール濃度算出式そのものがEEPROM213に記憶される。その他の構成、処理は、第一実施形態と同じである。
【0047】
そして、アルコール濃度を算出する際には、EEPROM213からアルコール濃度算出式を読み出して、そのアルコール濃度算出式に基づいてアルコール濃度を算出する。
【0048】
これによっても、センサASSY2が交換された場合には、交換後のアルコールセンサ211のアルコール濃度算出式が記憶されたEEPROM2も交換されることになるので、交換後のアルコールセンサ211について、改めてアルコール濃度算出式を求めるキャリブレーション工程が不要となるので、アルコールセンサ211を簡易に交換することができる。また、各アルコール濃度算出式で共通する基本算出式がない場合も対応することができる。
【0049】
なお、本発明のアルコール濃度検出装置は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、上記実施形態では、基板21にアルコールセンサ211以外のセンサ221、231、232も搭載してセンサASSY2を構成していたが、センサ221、231、232は他の基板に設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 アルコール濃度検出装置
2 センサASSY
17 CPU
19 検出回路(センサ物性計測手段)
21 基板
171 メモリ(基本算出式記憶手段、第二の記憶手段)
211 アルコールセンサ(半導体センサ)
213 EEPROM(第一の記憶手段)
S12 交換有無判断手段
S13 読出手段
S15 アルコール濃度算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性(以下「センサ物性」という)を示す半導体センサと、
その半導体センサである搭載半導体センサの前記センサ物性から前記アルコール濃度を算出するためのアルコール濃度算出式が、同種の他の半導体センサのアルコール濃度算出式と共通する基本算出式と、前記搭載半導体センサ固有の定数とからなる式であり、その定数であるキャリブレーションデータが記憶された第一の記憶手段と、を含む交換可能なセンサASSYと、
前記基本算出式が記憶された基本算出式記憶手段と、
前記センサ物性を計測するセンサ物性計測手段と、
前記第一の記憶手段から前記キャリブレーションデータを読み出す読出手段と、
その読出手段が読み出した前記キャリブレーションデータと前記基本算出式記憶手段に記憶された前記基本算出式とに基づいて定まる前記アルコール濃度算出式と、前記センサ物性計測手段が計測した前記センサ物性とに基づいて、前記アルコール濃度を算出するアルコール濃度算出手段と、を備えることを特徴とするアルコール濃度検出装置。
【請求項2】
被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性(以下「センサ物性」という)を示す半導体センサと、
その半導体センサである搭載半導体センサの前記センサ物性から前記アルコール濃度を算出するためのアルコール濃度算出式であるキャリブレーションデータが記憶された第一の記憶手段と、を含む交換可能なセンサASSYと、
前記センサ物性を計測するセンサ物性計測手段と、
前記第一の記憶手段から前記キャリブレーションデータを読み出す読出手段と、
その読出手段が読み出した前記キャリブレーションデータと、前記センサ物性計測手段が計測した前記センサ物性とに基づいて、前記アルコール濃度を算出するアルコール濃度算出手段と、を備えることを特徴とするアルコール濃度検出装置。
【請求項3】
前記センサASSYが交換されたか否かを判断する交換有無判断手段と、
前記読出手段が読み出した前記キャリブレーションデータを記憶する第二の記憶手段と、をさらに備え、
前記交換有無判断手段によって、前記センサASSYが交換されていないと判断された場合には、前記読出手段は前記キャリブレーションデータを読み出さないで、前記アルコール濃度算出手段は、前記第二の記憶手段に記憶されている前回の前記キャリブレーションデータをそのまま用いて前記アルコール濃度を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルコール濃度検出装置。
【請求項4】
前記第一の記憶手段には前記センサASSYの識別番号も記憶されており、
前記交換有無判断手段は、前回と今回で前記第一の記憶手段に記憶されている前記識別番号が変わったか否かによって、前記センサASSYが交換されたか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載のアルコール濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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