説明

アルコール飲料の製造におけるアルコール発酵停止の減少

アルコール飲料の製造のための方法であって、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる方法。本方法は、飲料出発溶液へのグルコースイソメラーゼの添加を伴う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料の製造方法であって、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる方法に関する。本方法は、飲料出発溶液へのグルコースイソメラーゼの添加を伴う。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料の製造において、1:1から著しく離れたグルコース/フルクトース比は、アルコール発酵停止、すなわち、酵母が全ての糖を発酵させない、をもたらし得、そしてそれは従って、甘すぎるアルコール飲料をもたらし得ることは当業者に知られている。
【0003】
これは、工業的に関連するアルコール飲料の製造にとって、重要な課題であり得る。
【0004】
本発明者らの最高の知識のために、このアルコール発酵停止の課題に工業的に関連しない溶液は、現在利用することができる。
【0005】
出願番号PCT/EP2008/068149を有する国際PCT出願は、2008年12月22日に提出された。出願人は、Chr. Hansen A/Sであり、前記出願は、この本出願の出願日において、公開されていない。
【0006】
PCT/EP2008/068149は、本発明により記述されるように、酵素の使用を含む、グレープジュースからのワインの製造方法を記述する。アルコール発酵のための基礎として、他の飲料出発溶液の使用は、PCT/EP2008/068149に記述されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明により解決される課題は、アルコール飲料の製造のための新たな方法であって、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる方法を提供することである。
【0008】
本発明者らは、飲料出発溶液(以下、「溶液」として称することもある)へのグルコースイソメラーゼの添加が、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる、約1:1の溶液中のグルコース/フルクトース比を維持することを発見した。さらなる詳細については、本明細書の実施例を参照のこと。
【0009】
上記で言及したように、1:1から著しく離れたグルコース/フルクトース比は、アルコール発酵停止をもたらし得、すなわち、酵母が全ての糖を発酵させず、得られる飲料が甘くなりすぎることは当業者に知られている。
【0010】
本発明の方法において特に関連する酵素は、グルコースイソメラーゼEC 5.3.1.5(正式名称キシロースイソメラーゼ)である。しかしながら、当業者に知られているように、それはまた、「グルコースイソメラーゼ」とも呼ばれ得る。グルコースイソメラーゼは、例えば、この酵素分類の関連する商品、例えば、本明細書の実施例に用いられる商品に用いられる名称である。
【0011】
典型的な飲料出発溶液、すなわち、グルコース及びフルクトースを含む溶液において、グルコースイソメラーゼにより触媒される、本明細書で適切な、よく知られている反応は以下:
D‐グルコース <=> D‐フルクトース
である。
【0012】
当業者によく知られているように、この酵素分類はまた、反応:
D‐キシロース <=>D‐キシルロース
を触媒する。
このキシロースに関連する反応は、本明細書では関連性が低い。
【0013】
酵母アルコール発酵が開始される前に、アルコール発酵に用いられる典型的な溶液は、一般的に約1:1のグルコース/フルクトース比を有する。
【0014】
酵母アルコール発酵において、酵母がフルクトースよりもグルコースを「好む」ことは当業者に知られている。別の方法で言えば、グルコースは、酵母によって好んで最初に代謝され得、これは、溶液中で1:1より低いグルコース/フルクトース比をもたらし得る。
【0015】
本明細書で記載されるグルコースイソメラーゼを用いる肯定的な効果の一つの理論は、アルコール発酵において、例えば酵母により取り除かれたグルコースが、溶液中に、グルコース/フルクトース比が1:1よりも低くなる状況を作る(それは「多過ぎる」フルクトース−「少なすぎる」グルコースとなる)ことである。グルコースイソメラーゼが反応を示すグルコース/フルクトース平衡は、結果として、「強制的に」左に移動し=>フルクトースは、グルコースに変換され、1:1のグルコース/フルクトース比を「回復」し=>アルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる。
【0016】
酵母アルコール発酵の前に、O2は、未発酵溶液(飲料出発溶液)中に存在する。当業者に知られているように、通常の酵母発酵は一般的に二つの部分から成る:
【0017】
部分1
好気培養(酸素が存在する)
これは、酵母がその細胞数を約4時間ごとに倍増する初期の高速増殖プロセスである(通常24〜72時間)。
【0018】
部分2
嫌気発酵(酸素は存在しない)
緩徐活性及び酵母は糖(グルコース及びフルクトースの双方)を発酵し、酵母細胞の数を増加させるよりも、むしろ、それをアルコール(糖=>2エチルアルコール + 2 CO2)に変換する。(このプロセスは、酵母及び処方に依存して、数日から数週間を要する)。
【0019】
従って、酵母発酵において、O2は、早く又は遅れて消滅する。しかしながら、グルコースイソメラーゼは、O2の有無にかかわらず活性であり、従って、アルコール酵母発酵の実際の開始の前、又は実際のアルコール酵母発酵の最中の双方で、機能することができる。
【0020】
従って、本発明の第一の態様は、アルコール飲料を製造するための方法であって、以下のステップ:
(1):溶液中で、1:1に近いグルコース/フルクトース比を維持するために、アルコール酵母発酵の最中、有効量のグルコースイソメラーゼで飲料出発溶液を処理すること;及びその後
(2):PCT/EP2008/068149に記述したように、飲料出発溶液がグレープジュースでないことを条件として、目的のアルコール飲料を製造するためのさらなる適切なステップ、
を含む、方法に関する。
【0021】
本明細書で示されるように、グルコースイソメラーゼは、アルコール飲料の通常の製造条件において、比較的安定である。従って、有効量のグルコースイソメラーゼは、アルコール酵母発酵の実際の開始の前に添加することができ、それはその後、アルコール酵母発酵の最中もなお十分に機能する。それが未発酵のグレープジュースに添加される場合を示す、本明細書の実施例を参照のこと。
【0022】
あるいは、有効量のグルコースイソメラーゼは、アルコール酵母発酵の最中に添加されてもよい。それがアルコール酵母発酵の最中に添加される場合、それは、好ましくは発酵の開始時に、例えば、酵母が溶液に添加されるのとほぼ同時に行われる。
【0023】
定義
用語の全ての定義は、アルコール発酵に関する技術分野内で、当業者の一般的な理解に従う。
【0024】
有効量のグルコースイソメラーゼでの溶液の処理に関連する第一の態様のステップ1の用語「1:1に近いグルコース/フルクトース比を維持する」は、有効量のグルコースイソメラーゼを用いることに直接的に関するように見られてもよい。上記で説明されるように、グルコースイソメラーゼの本明細書で関連する機能は、1:1のグルコース/フルクトース比を「回復する」ことを試みることである。従って、本明細書で記載されるように、グルコースイソメラーゼの添加により、それは、自動的に本明細書に記述されるように溶液中の1:1に近い比を得る。
【0025】
本発明の実施形態は、実施例のみを通じて、下記で記述される
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
グルコースイソメラーゼ
本方法に用いられるグルコースイソメラーゼは、関連する商業的に入手可能な酵素製品などの多数の様々な適切な供給源から得てもよい。
【0027】
当業者に知られているように、アルコール発酵の通常の条件内(例えば、関連するpH値、温度など)で機能する酵素を含む、市販されている、多数の様々な商業的に入手可能なグルコースイソメラーゼ酵素製品が存在する。
【0028】
下記の実施例では、以下の商業的に入手可能な酵素製品が用いられる:
グルコースイソメラーゼ:Sigma製の製品(# G4166-50g)。カタログ番号は本明細書の実施例を参照のこと。
【0029】
好ましい製造パラメータ−第一の態様のステップ1
当業者に知られているように、飲料製造手順における変更は、飲料生成物の官能特性を変える。それ故、通常の飲料製造手順と本明細書に記述されるような方法の実施との間で一致することが好ましい。その結果として、本発明の実施を通して、悪影響は、得られる飲料の風味、芳香について観察されない。
【0030】
本質的に、アルコール飲料の熟練した製造者は、本明細書に記載されるようなグルコースイソメラーゼの添加を除いて、彼らの好ましい製造プロセスにおいて、好ましくは、何らかの変更をするべきではない。
【0031】
酵素が触媒するプロセスは、通常、酵素の最適pH内で行われる。この発明の好ましい実施は、それらのpHを調整することなく、未発酵溶液(飲料出発溶液)を処理することである。幸いなことに、本明細書で用いられるような酵素の好適で適切な商業的に入手可能な製品は、製造プロセスの本明細書に関連するステップにおいて、十分な活性及び安定性を示す。
【0032】
特定の飲料の製造において、一般的なpH及び温度において、合理的で適切な活性及び安定性を示すことを提供する、任意の酵素は、本明細書で記述されるように、本発明による方法に用いることができることが理解される。従って、可溶性の酵素調製物が通常好ましいとしても、可溶性の及び固定化された酵素調製物の双方は用いられてもよい。
【0033】
好ましい実施形態では、適切な酵素調製物(単数又は複数)は、固体水溶性調製物、好ましくは、非粉末調製物である。固体調製物の保存安定性は、液体調製物の保存安定性より優れており、また、任意の保存剤を添加する必要がない。使用者が使用の直前に、少量の水に固体形態剤を溶解することが望ましい。
【0034】
所定の応用のために、どのくらいの量の任意の種類の酵素が必要であるかを見出すことは、当業者にとって容易である。
例えば、処理時間及び温度の詳細に応じて、溶液1 hlにつき、およそ、約100〜5,000,000国際単位のグルコースイソメラーゼ活性が適切である。
【0035】
従って、特定のプロセスパラメータ下で試験をすることが比較的容易であるので、酵素の適切な投与量を明記する、付加価値を提供しない。以下で説明されるように、実施例に適用される適切な量は上記のレベル内であり、上記の範囲は任意の適切な応用を網羅すると想定される。
【0036】
当業者に知られるように、国際単位は、1分につき、1マイクロモルの基質の変換を触媒する酵素の量として定義される。条件はまた、規定される必要がある。当業者に知られるように、それは通常、30℃の温度、及び最大基質変換速度を生じる、pH値及び基質濃度を用いる。
【0037】
本明細書では、国際単位は、上述のように、当該技術分野に従って定義され、すなわち、30℃の温度、及び最大基質変換速度を生じるpH値及び基質濃度で決定される。
【0038】
当業者に知られているとおり、最適なpH値及び最適な基質濃度は、対象の特定の酵素に対して、変更し得る。しかしながら、例えば、この最適なpH及び基質濃度は一般的に、適切な商業的酵素製品について、製品文書上で提供されるので、これを特定することは容易である。さらに、対象の特定の酵素について、最適なpH及び基質濃度などのパラメータの特定をすることは、一般的な日常的な作業である。
【0039】
本発明による製造方法に用いられる特定の飲料出発溶液(溶液)は、酵素の基質として作用する。飲料出発溶液中のグルコース及びフルクトースの存在は、本方法が特定の飲料の製造において対象であるかどうかを決定する重要な因子であることは、明らかである。典型的には、果物を含む溶液から製造される飲料は、本方法により恩恵を受ける。
【0040】
一つの実施形態では、出発溶液は、グレープジュースではない。
【0041】
特定の基質(飲料出発溶液)に応じて、糖含量及びグルコースとフルクトースの比は、変更し得る。例えば、リンゴでは、グルコース:フルクトース比は、30:70であり、マンゴーでは、その比は24:76であり、パイナップルでは、その比は43:57であり、ストロベリーではその比は20:80である。当業者に知られているように、これらの比は、気候及び成長条件及び収穫の時期に応じて変動し得る。この比は、酵素の最適な投与量を選択することに関連する。容易に入手可能なこの情報に基づいて、当業者が、特定の応用のために酵素の最適な投与量を選択することは、困難なことではない。
【0042】
好ましい実施形態では、グルコースイソメラーゼ活性は、溶液1 hlにつき、およそ、約5,000〜500,000国際単位が適切である。
【0043】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、有効量のグルコースイソメラーゼ酵素は、酵母アルコール発酵の終了時に、溶液中の当含量が、4 g/l未満、より好ましくは1 g/l未満、さらにより好ましくは0.1 g/l未満となることである。
【0044】
本明細書の実施例2、表IIでは、グルコースイソメラーゼの添加は、発酵後のグレープジュースにおいて、測定できないほどの(「0」)糖をもたらした、言い換えれば、グルコースイソメラーゼの添加は、望ましくないアルコール発酵停止を完全に防いだことを見ることができる。当業者により理解されるように、発酵停止が存在する場合、酵母は全ての糖を使用せず、酵母アルコール発酵の終了時に溶液中に相当量の糖が残る。
【0045】
上記の項目(A)の下で特定されるような少量の糖がここに残る場合、それは、望ましくないアルコール発酵停止が有意に存在しないことを意味する。
【0046】
アルコール飲料の芳香(aroma)、風味、及び芳香(bouquet)は極めて繊細な性質であるという事実のために、本発明により製造されるアルコール飲料が所望の特性を保有するかどうかは、予測することができない。加えて、可溶性のグルコースイソメラーゼ調製物を用いて本発明により製造されるアルコール飲料が、不活性のグルコースイソメラーゼの痕跡を含むかどうか、従って従来の方法で製造された飲料と異なるかどうかが熟慮される。しかしながら、本発明に従って製造されたアルコール飲料は、風味及び芳香を含む、従来の方法で製造された製品の全ての通常の特性を有することが発見された。
【0047】
好ましい製造パラメータ−第一の態様のステップ2
第一の態様のステップ2の実施、すなわち、対象のアルコール飲料を製造するためのさらなる適切なステップは、本発明の方法の必須のステップである。しかしながら、アルコール飲料の製造において、従来の慣習の実施は明確に意図され、それらの慣習は、アルコール発酵及びワイン醸造学(enology)(oenology)の技術分野における当業者によく知られているので、このステップの詳細な検討は、本明細書で提供されることを必要とされない。
【0048】
例えば、これらのさらなる適切なステップは、適切な保存ステップであってもよい。
【0049】
低アルコール含量のアルコール飲料−グルコースオキシダーゼの添加
地球温暖化のために、世界的に、果物及び液果類は、より多くの糖を含む。この糖は、アルコール発酵においてアルコールに変換され、増加したアルコールレベルを有する最終生成物をもたらす。
【0050】
US4675191 (Novo Industri、Denmark‐1987年公開)では、酵素グルコースオキシダーゼの使用に関する、ワインにおけるアルコール含量を減少させるための方法が、記述されている。記述される方法について、2段落、25〜29行:「この発明の方法は、未発酵グレープジュースを酸素の存在下でグルコースオキシダーゼを用いて処理し、その結果、グレープジュース中のグルコースをグルコン酸に変換し、その後、そのように処理されたグレープジュースを発酵することを含む」と記載している。
【0051】
従って、US4675191は、グルコースオキシダーゼが、未発酵グレープジュースからいくらかのグルコースを取り除き得ることを記述している。グレープジュース中の少ない糖は、最終ワイン中の低いアルコール含量を暗示する。
【0052】
グルコースオキシダーゼは、アルコール含量が低下したワインを作るために、本明細書のいくつかの実施例に用いられている。これらの実施例から、グルコースイソメラーゼの存在は、本明細書で記述されるように、アルコール含量を減少させるためのグルコースオキシダーゼの使用を伴うワインプロセスを著しく改善することが、明らかに見ることができる。
【0053】
改良に関するグルコースイソメラーゼについての一つの理由は、本明細書で述べられているように(例えば、本明細書の実施例2及び3を参照のこと)、グルコースイソメラーゼが発酵停止を著しく減少させることである。
【0054】
従って、本発明の実施形態では、本方法のステップ(1)のアルコール酵母発酵の開始前に、以下のステップ:
少なくとも一部の溶液中のグルコースをグルコン酸に変換するのに十分な期間、酸素の存在下で、未発酵の飲料出発溶液を、有効量のグルコースオキシダーゼで処理すること、
が行われる。
【0055】
ステップ(A)のグルコースオキシダーゼの添加は、US4675191に記述されるように本質的に行われ得る。実際、製造者は一般的に、グルコースオキシダーゼの添加を除いて、通常の慣習に関して何れの変更もしない。
【0056】
グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)は、溶液中で、下記の反応:
ベータ‐D‐グルコース + O2 <=> D‐グルコノ‐1,5‐ラクトン + H2O2
を触媒する。溶液内では、発生した「D‐グルコノ‐1,5‐ラクトン」は、自発的にグルコン酸に変換される。従って、D‐グルコノ‐1,5‐ラクトンは取り除かれ、平衡はそれ故、右に移動し=>グルコースは溶液から取り除かれる。
【0057】
酵素調製物がまたカタラーゼ活性を有する場合、発生したH2O2はまた取り除かれ=>平衡は従ってさらにより右に移動し=>より多くのグルコースが除かれる。カタラーゼ活性の関与は、本明細書の好ましい実施形態である。カタラーゼ(EC 1.11.1.6)は、反応:
2H2O2<=>O2 + 2H2O
を触媒する。
【0058】
グルコースオキシダーゼが上記のステップ(A)に記述されるように用いられる場合、イソメラーゼは、グルコースオキシダーゼと一緒に未発酵溶液に添加されることが好ましい。これは、大変肯定的な結果を伴う本明細書中の実施例で行われる。
【0059】
有効量のグルコースオキシダーゼで未発酵溶液を処理するこのステップ(A)に関連する好ましい実施形態は、下記で記述される。
【0060】
グルコースオキシダーゼ及びイソメラーゼの併用に起因するグルコースの著しい除去を説明する一つの熟慮される理論は、次の通りである。グルコースオキシダーゼにより取り除かれたグルコースが、溶液中に、グルコース/フルクトース比が1:1よりも低くなる状況(「多過ぎる」フルクトース−「少なすぎる」グルコース)を作る。グルコースイソメラーゼが反応を示すグルコース/フルクトース平衡は、結果として、「強制的に」左に移動し=>フルクトースは、グルコースに変換され、1:1のグルコース/フルクトース比を「回復」し=>グルコースオキシダーゼは、「新たに」作られたグルコースを受け取って作用し、従って、いっそう多くの全糖(グルコース及びフルクトースの双方)が溶液から取り除かれる。
【0061】
上記で論じたように、1:1のグルコース/フルクトース比の維持はまた、アルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる利点を有する。
【0062】
本方法に用いられるグルコースオキシダーゼは、本明細書で記述されるように、例えば、関連する商業的に入手可能な酵素製品などの多数の様々な適切な供給源から入手されてもよい。
【0063】
当業者に知られているように、適切なpH値、温度などの中で機能する酵素を含む、市販されている、多数の様々な商業的に入手可能なグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ酵素製品が存在する。別の有用な酵素は、他のヘキソース糖を変換することができるヘキソースオキシダーゼである。
【0064】
当業者に知られている通り、アルコール飲料製造パラメータ(例えば、関連するpH値、温度など)の通常の条件内で機能する酵素を含む、市販されている、多数の様々な商業的に入手可能なグルコースオキシダーゼ酵素製品が存在する。
【0065】
下記の実施例では、以下の商業的に入手可能な酵素製品:
グルコースオキシダーゼ:Hyderase(登録商標)(Amano製)
が用いられる。
【0066】
Hyderase(登録商標)製品の利点は、それがカタラーゼ活性を含むことでもある。
【0067】
先に言及されたように、任意の溶液及び所望の糖変換について、どのくらいの量の任意の種類の酵素が必要であるかを見出すことは、当業者にとって容易である。
【0068】
例えば、処理時間及び温度の詳細に応じて、溶液1 hlにつき、およそ、約1,000〜50,000,000国際単位のグルコースオキシダーゼ活性が適切である。
【0069】
好ましい実施形態では、溶液1 hlにつき、およそ、約15,000〜5,000,000国際単位のグルコースオキシダーゼ活性が用いられる。
【0070】
好ましい実施形態では、ステップ(A)の間、二つのグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ酵素の有効量及び期間は、溶液中の糖含量が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも14%、よりさらに好ましくは少なくとも17%減少すること、である。
【0071】
上記で述べたように、本明細書の実施例において、糖含量(グルコース及びフルクトースの双方)は、19%減少した。
【0072】
下記の実施例では、本発明の原理を例証するために、グレープジュースが用いられる。製造プロセスは、他の飲料出発溶液が用いられる場合でも、非常に類似しており、それ故、本明細書の教示及び実施例は、任意の特定の飲料の製造において、当業者が本発明を実施することを可能にすることは、理解される。
【実施例】
【0073】
実施例1:グレープジュース中の酵素的糖減少−第一の態様のステップ(1)の実施例。
【0074】
ワイン及び任意の他のアルコール飲料における最終アルコール含量を減少させるための一つの可能な方法は、アルコール発酵前に、溶液中の糖濃度を減少させることである。それ故、グレープジュースの酵素処理は、全糖の含量を減少させるために行われた。
【0075】
三つの独立した実験例は、それぞれの場合において、二つの再現を用いて行われた。それぞれのサンプルにおいて、200 mlグレープジュース(Pinot Blanc 2007、Germany、滅菌済み)は、ガラスフラスコに加えられ、磁気的撹拌機で連続的に混合された。サンプルは、実験を通して通気された。
【0076】
100 mgグルコースオキシダーゼ(Hyderase、Amano、>15,000 u/g、溶液1 hlにつき、150,000 uに相当する)、又は100 mgグルコースオキシダーゼ及び1 gグルコースイソメラーゼ(Sigma、G4166-50 g、>350 u/g、溶液1 hlにつき、35,000 uに相当する)の双方は、フラスコに添加された。インキュベーションは、室温で3日間、行なわれた。
【0077】
サンプルは、酵素の添加の直前、及び3日後に取られた。サンプルは、Boehringer Mannheim/R-biopharm(カタログ番号 10 139 106 035)により供給されている商業的なUVに基づくアッセイを用いて、製造者により提供される手順に従って、グルコース及びフルクトースの存在について分析された。この実験の結果は、下記の表Iに要約される。
【0078】
表I:グレープジュース中の酵素的糖減少(グルコース及びフルクトース)。GOX=グルコースオキシダーゼ。
【0079】
【表1】

【0080】
結論
この実施例1のこれらの結果は、グルコースオキシダーゼのみを用いるプロセスは、約12%の全糖の減少をもたらし、グルコースイソメラーゼのさらなる添加は、それを約19%の糖減少まで著しく上昇させた。グレープジュース中の少ない糖は、ワイン又は他のアルコール飲料中の少ないアルコール含量を意味する。
【0081】
実施例2:処理されたグレープジュースの酵母発酵‐第一の態様のステップ(1)及びステップ(2)の双方の実施例
【0082】
一般的なワイン製造プロセスの全シミュレーションは、実験室規模で行われた。この実験では、酵素処理は、アルコール発酵、又はマロラクティック発酵のような主要なワイン製造パラメータに悪影響を与えることなく、最終アルコールレベルに影響を与えたことが示された。
【0083】
全ての実験は、室温約22℃で行われた。6つの実験は、発酵フラスコ中でそれぞれ4リットルのグレープジュース(Pinot Blanc 2007、Germany、滅菌済み)で行われた。グレープジュースのpHは、調整されず、物質はこの実施例に記載された酵素以外には添加されなかった。
【0084】
グレープジュースは、下記に記述されるように、酵素で3日間プレインキュベートされ、その後11日間のアルコール発酵、及び10日間のマロラクティック発酵が行われた。
【0085】
酵素処理
6つのフラスコは、二つフラスコの3つの群に分けられた。
群1のグレープジュースは、0.5 g/lのグルコースオキシダーゼ(Hyderase、Amano、>15,000 u/g、溶液1 hlにつき750,000 uに相当)と共に、二番目の群のグレープジュースは、0.5 g/lのグルコースオキシダーゼ及び2 g/lのグルコースイソメラーゼ(Sigma、G4166-50 g、>350 u/g、溶液1 hlにつき70,000 uに相当)と共に3日間プレインキュベートされ、対照の群のグレープジュースは、酵素で処理されなかった。酵素添加に続いて、アルコール発酵が開始される前に、フラスコは、酵素存在下で3日間激しく通気された。酸素が酵素的変換を媒介するグルコースオキシダーゼに要求されるので、通気は重要である。
【0086】
アルコール発酵
アルコール発酵は、再水和された凍結乾燥ワイン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) Merit. Ferm, Chr. Hansen, 0.1 g/l)の、9E+05 CFU/mlの最終濃度までの植菌により開始された。再水和は、室温で10分間、ペプトン水(15 g/lトリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCl、1.14 g/l 2%消泡剤1510、BHD 63215)で行われた。
【0087】
この時点で、通気は停止され、プロセスは、酵母代謝の結果として、その数日間後に酸素に枯渇した。アルコール発酵は、室温で11日間行われ、それは全糖のアルコールへのほぼ完全な変換をもたらした。
【0088】
マロラクティック発酵
アルコール発酵に続いて、マロラクティック発酵が開始された。プロセスのこの部分の目的は、リンゴ酸を、よりすばらしい感覚的感動(sensoric sensation)をもたらす乳酸に変換することであり、従って、ワイン製造プロセスの重要な一部である。マロラクティック発酵は、細菌オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)により、主に行われる。オエノコッカス・オエニの増殖がグレープジュースの酵素処理により損なわれる場合、それは非常に望ましくない。
【0089】
アルコール発酵の開始後11日、マロラクティック発酵は、発酵されたグレープジュースへのオエノコッカス・オエニ(Viniflora、Chr. Hansen.、バッチ番号:2711097)の添加により開始された。凍結乾燥されたオエノコッカス・オエニ(8.2E+11 CFU/gの0.7 g)は、100 mlのペプトン水(15 g/lトリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCl、1.14 g/l 2% 消泡剤1510、BHD 63215)中で10分間再水和された。3 mlが、4000 mlの発酵されたグレープジュースに添加され、4.3*106 CFU/mlの最終濃度をもたらした。これは、室温でさらに10日置かれた。
【0090】
結果
アルコールレベルに対する酵素処理の効果
グルコース及びフルクトースレベルは、Boehringer Mannheim/R-biopharmにより供給される、商業的なUVに基づくアッセイ(カタログ番号10 139 106 035)を用いて、供給者により供給される手順を用いて、測定された。
【0091】
表II:アルコール発酵の開始・終了時における糖レベル。
【0092】
【表2】

【0093】
文献(Bestimmung des alkoholgehalts nach Dr. Rebelein. Issued by: C Schliesmann Kellerie-Chemie GmbH & Co. KG, Auwiesenstrasse 5, 74523 Schwabische Hall (2001))に記載されるようなDr. Rebelein滴定方法を用いて、アルコール発酵の最中の異なる日に、アルコールは測定された。未処理のグレープジュースでは、発酵はほぼ完了し、プロセスの終了時に、12.7%の最終アルコールレベルに達した。ジュースが、グルコースオキシダーゼ及びグルコースイソメラーゼの双方で前処理された場合、糖発酵は完了し、しかしアルコールの最終レベルはなお著しく低かった(11.8%)。
【0094】
ジュースがグルコースオキシダーゼのみで前処理された場合、発見されるアルコールの低いレベルは、不完全な発酵の結果である。この実験において、グルコースオキシダーゼ処理されたジュースは、発酵の終了時点での残余の糖、特にフルクトースの高いレベルにより、通常のワイン製造においては使用できない(表II)。
【0095】
従って、グルコースイソメラーゼのさらなる添加は、グレープジュースにおけるグルコース/フルクトース比を約1:1で維持することに役立ち、それは、GOXのみを使用するときに示されるような、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる。
【0096】
さらに、イソメラーゼを伴う実験は全ての糖を取り除いた一方で、対照(未処理グレープジュース)においては、いくらかのフルクトース糖(8 g/l)がなおも存在していた。これは、イソメラーゼ自体が発酵停止を防いだことを表す。
【0097】
表III:発酵におけるアルコールレベル。11日に、マロラクティック発酵が開始された。グルコースオキシダーゼ(GOX)で前処理されたサンプル中のアルコールレベルは、これらの値が、大幅に遅延されたアルコール発酵の結果であることを、イタリック体で示した。Nd:未決定。
【0098】
【表3】

【0099】
結論
この実施例2の結果は、対照の12.7と比較して、GOX+イソメラーゼがアルコール百分率を11.8%まで著しく減少させたことを示す。
【0100】
さらに、グルコースイソメラーゼのさらなる添加は、グレープジュースにおけるグルコース/フルクトース比を約1:1の比で維持することに役立ち、それは、GOX単独を用いることと比較して、望ましくないアルコール発酵停止のリスクを著しく減少させる。
【0101】
ジュースがグルコースオキシダーゼのみで前処理されたときに発見されるアルコールの低いレベル(9.3%)は、不完全な発酵、言い換えれば、望ましくないアルコール発酵停止の結果である。この実験において、グルコースオキシダーゼ処理されたジュースは、発酵の終了時点において、残余の糖、特にフルクトースの高いレベルにより、通常のワイン製造において使用することができない(表II)。
【0102】
さらに、イソメラーゼを伴う実験は全ての糖を取り除いた一方で、対照(未処理グレープジュース)においては、いくらかのフルクトース糖(8 g/l)がなおも存在していた。これは、イソメラーゼ自体が発酵停止を防いだことを表す。
【0103】
実施例3:アルコール発酵の間の酵母の増殖‐イソメラーゼの添加はアルコール発酵停止を著しく減少させる。
【0104】
フルクトース濃度がグルコース濃度よりも大幅に高い場合、発酵停止は典型的に生じることは、当業者に知られている。アルコール発酵において、アルコール発酵の開始時に1:1であるグルコース/フルクトース比は、好ましくない値に変化し、遅延した発酵をもたらし得る。
【0105】
この実施例3では、遅延した(停止した)発酵は、グルコースオキシダーゼ単独でのジュースの処理により誘発された。
【0106】
アルコール発酵における酵母の増殖及び生存能力に対するグルコースイソメラーゼの影響を調査するために、模擬ワイン製造は、本明細書で実施例2に記載されたように行われた。グレープジュースは下記に記載されるように、酵素と3日間プレインキュベートされ、その後11日間のアルコール発酵、及び10日間のマロラクティック発酵が行われた。
【0107】
3つの独立した実験は、それぞれの場合において、二つの再現を用いて行われた。それぞれのサンプルでは、200 mlグレープジュース(Pinot Blanc 2007、Germany、殺菌済み)は、ガラスフラスコに添加され、磁気的撹拌機で連続的に混合された。サンプルは、実験を通して通気された。
【0108】
100 mgグルコースオキシダーゼ(Hyderase、Amano、>15,000 u/g)、又は100 mgグルコースオキシダーゼ及び1 gグルコースイソメラーゼ(Sigma、G4166-50 g、>350 u/g)の双方は、フラスコに添加された。インキュベーションは、室温で3日間行われた。この後、アルコール発酵は、再水和された凍結乾燥ワイン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ、Merit. Ferm、Chr. Hansen、0.1 g/l)で9E+05 CFU/mlの最終濃度までの植菌により開始された。再水和は、室温で10分間、ペプトン水(15 g/lトリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCl、1.14 g/l 2% 消泡剤1510, BHD 63215)で行われた。アルコール発酵開始の11日後、マロラクティック発酵は、発酵されたグレープジュースへのオエノコッカス・オエニ(Viniflora、Chr. Hansen.、バッチ番号:2711097)の添加により開始された。凍結乾燥されたオエノコッカス・オエニ(8.2E+11 CFU/gの0.7 g)は、100 mlのペプトン水(15 g/l トリプトン、Oxoid L 42、9 g/l NaCl、1.14 g/l 2% 消泡剤1510、BHD 63215)中で10分間再水和された。3 mlは、4000 mlの発酵されたグレープジュースに添加され、4.3*106 CFU/mlの最終濃度をもたらした。これは、室温でさらに10日間置かれた。
【0109】
サッカロマイセス・セレビシエのコロニー形成単位(CFU)の数は、異なる時点で、発酵されたグレープジュースからサンプルを取り出し、段階希釈をYGC固形培地アガープレート上にプレーティングし、続く30℃での一晩のインキュベートにより測定された。
【0110】
糖レベルは、Boehringer Mannheim/R-biopharmにより供給されている商業的な、UVに基づくアッセイ(カタログ番号 10 139 106 035)を用いて、供給者により提供される手順に従って、分析された。
【0111】
結果
アルコール発酵停止に対するイソメラーゼの効果
アルコール発酵において、グレープジュース中の糖は、酵母サッカロマイセス・セレビシエによりエタノールに変換される。
【0112】
グルコースオキシダーゼ単独での処理は、サッカロマイセス・セレビシエの遅延した増殖のために(表IVに示されるように)、遅延したアルコール発酵(発酵停止)をもたらすことが示された。グルコースオキシダーゼで前処理されたマストでは、アルコール発酵の最初の数日において、酵母の増殖は大変乏しい。CFUの数は、アルコール発酵の1日目では検出限界を下回り、2日目では、約3 log単位を下回った。これは、発酵停止の明らかな表れである。
【0113】
この結果は糖分析により支持された。未処理のマストでは、約60%の糖が、酵母発酵の3日後に発酵される一方で、GOXで前処理されたマストでは、10%未満が発酵された。
【0114】
しかしながら、前処理及びアルコール発酵においてグルコースイソメラーゼが存在する場合、発酵プロセスは、未処理マストの発酵とほぼ同様に振舞った。残っている糖レベル及びサッカロマイセス・セレビシエCFU数(表IV)の双方は、未処理マストに匹敵した。言い換えると;グルコースイソメラーゼは、GOX処理により引き起こされた発酵停止を克服することができた。
【0115】
表IV:アルコール発酵中に生存しているサッカロマイセス・セレビシエ細胞カウント。グレープジュースは、記述されたように3日間前処理された。酵母はt=0日に添加された。Nd=検出限界未満。
【0116】
【表4】

【0117】
結論
この実施例3で示されるように、GOX単独の使用は、著しい望ましくない発酵停止を誘導し得る。
【0118】
この実施例3の結果は、イソメラーゼの添加が、ワイン製造のために一般的に用いられるサッカロマイセス・セレビシエの増殖に対するGOXの添加の悪影響を克服することに役立ち得ることを示す。
【0119】
実施例4:合成グレープジュースの発酵におけるグルコースイソメラーゼの効果
【0120】
定義された条件下でグルコースイソメラーゼ単独の効果を調べるために、合成グレープジュースの発酵が行われた。グレープジュースは、酵母窒素源(YNB)、酒石酸、及び様々な量のグルコース及びフルクトースから成る。
【0121】
グルコースイソメラーゼの効果は、発酵間の酵母増殖及びグルコース/フルクトース減少及びエタノール製造を分析する観点から調査される。
【0122】
実験は、それぞれ500 ml合成グレープジュースを含むオートクレーブされた1 lの発酵フラスコで行われ、全ての発酵は二重に行われた。合成グレープジュース培地(0.67% YNB、2.0 g/l酒石酸、様々な量のグルコース及びフルクトース、ミリQ水、そして50%w/w KOHでpH調整された)は、再水和された凍結乾燥ワイン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ、Merit. Ferm、Chr. Hansen, 0.1 g/l)で、9E+05 CFU/mlの最終濃度まで植菌された。
【0123】
酵素グルコースイソメラーゼEC 5.3.1.5 (Sigma G4166、>350 U/g)は、酵母植菌の直前にフラスコに添加された(0.5 g/l)。発酵は、室温(約23℃)で41日間、撹拌されずに行われた。サッカロマイセス・セレビシエのコロニー形成単位の数、及び所定の時間における糖レベルは、実施例3に記述されるように測定された。エタノール濃度は、Boehringer Mannheim/R-biopharm により供給される酵素的UV法及び手順(カタログ番号10 176 290 035)に従って、測定された。
【0124】
表V:発酵及び予測の要約
【0125】
【表5】

【0126】
結果
合成グレープジュースの発酵におけるグルコースイソメラーゼの効果。
高い糖レベル(全糖=260 g/l)を有し、バランスのとれた及びアンバランスなグルコース/フルクトース比の双方を有するジュースの発酵は、グルコースイソメラーゼで処理されない場合、発酵停止をもたらした。表V及びVIを参照のこと。これは、高い糖レベル単独が、発酵停止を引き起こし得ることを示す。イソメラーゼを含むにつれて、しかしながら、発酵はより早くなり、全ての糖は発酵された。
【0127】
表VI:最初の4つの実験におけるアルコール発酵の間のグルコース及びフルクトースの減少。酵母植菌日t=0日。
【0128】
【表6】

【0129】
低い及びアンバランスな糖(60/100)を含む設定は、最終アルコール濃度が減少したワインの製造を象徴するために支持される。ここで、CIの効果は、2つの異なるpH値:それぞれpH 3.6及びpH 5.2で観察される。合計18及び5 g/lの残余の糖を示す、pH 3.6、6日におけるイソメラーゼを伴う発酵60/100と、pH 5.2、6日とを比べて、上昇したpHにおいて、酵素は予測されたように、より活性であることを示される。しかしながら、双方のpH値において、GIで処理された発酵は、酵母が発酵を完了するのに4日を超えてかかる場合、処理されていない発酵よりもより効果的である。バランスのとれたグルコース/フルクトース比及び200 g/lの糖の合計量を含む、より標準的なジュースのようなものにおいて、グルコースイソメラーゼの効果を試験する場合、結果は、酵素で改良されたアルコール発酵と大体同じであった。
【0130】
表VII:設定5〜10におけるアルコール発酵の間のグルコース及びフルクトースの減少。酵母植菌日t=0日。
【0131】
【表7】

【0132】
サッカロマイセス・セレビシエの細胞カウントは、糖を測定することから得られるこれらのデータを支持する。発酵の最初の2週間の間、全ての設定において、酵母のほぼ同様の成長が見られていたが、しかしその後、グルコースイソメラーゼで処理された発酵において、酵母はより早く死滅する傾向がある。これは、酵素で処理された場合、発酵がより早く完了することを示唆する。
【0133】
表VII:アルコール発酵最中のサッカロマイセス・セレビシエの生存CFUカウント。酵母はt=0日に添加された。オープン記号(○)は、グルコースイソメラーゼを用いなかった実験を表し、グローズド(●)記号は酵素を用いた実験を表す。
【0134】
【表8】

【0135】
結論
実施例4に示されるように、グルコースイソメラーゼの使用は、より効率的なアルコール発酵をもたらし、発酵停止のリスクを大幅に減少させる。これは、高及び低レベルの、並びにバランスのとれた及びアンバランスなグルコース及びフルクトースの比の双方を伴うグレープジュースに適用される。
【0136】
参考文献
1. US4675191 (Novo Industri、Denmark‐1987年公開)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール飲料の製造方法であって、以下のステップ:
(1):溶液中で1:1に近いグルコース/フルクトース比を維持するために、アルコール酵母発酵の間、有効量のグルコースイソメラーゼで飲料出発溶液を処理すること、及びその後、
(2):対象の飲料を製造するためのさらなる適切なステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記のアルコール酵母発酵の実際の開始前に、前記の有効量のグルコースイソメラーゼが添加される、すなわちそれが未発酵溶液に添加される;
又は
前記のアルコール酵母発酵の最中に、好ましくは発酵の開始時に、例えば酵母が溶液に添加されるのとほぼ同時に、前記の有効量のグルコースイソメラーゼが添加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記有効量のグルコースイソメラーゼ酵素が:
(A):酵母アルコール発酵の終了時に、前記の溶液の糖含量が4 g/l未満である、
ようなものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の溶液中の糖含量が、0.1 g/l未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記の有効量のグルコースイソメラーゼ酵素が以下:
(i):溶液1 hlにつき、100〜5,000,000国際単位のグルコースイソメラーゼ活性、
である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1のステップ(1)のアルコール酵母発酵の開始前に、以下のステップ:
(A):前記の溶液中のグルコースの少なくとも一部をグルコン酸に変換するのに十分な期間、酸素の存在下で、未発酵の飲料出発溶液を、有効量のグルコースオキシダーゼで処理すること、
が行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グルコースイソメラーゼが、前記グルコースオキシダーゼと一緒に未発酵溶液中に添加される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記の有効量のグルコースオキシダーゼ酵素が以下:
(i):溶液1 hlにつき、およそ、約1,000〜50,000,000国際単位のグルコースオキシダーゼ活性;
である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(1)において、前記の二つのグルコースオキシダーゼ/イソメラーゼ酵素についての有効量及び期間が:
(A):前記の未発酵溶液中の糖含量が少なくとも17%減少する、
ようなものである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコール飲料が、果物リンゴ酒(cider)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−532590(P2012−532590A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518958(P2012−518958)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059603
【国際公開番号】WO2011/003888
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503260310)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (23)
【Fターム(参考)】