説明

アルゴン精製方法、およびアルゴン精製装置

【課題】ガス精製に要するエネルギーを低減しつつ高純度アルゴンを高回収率で得るのに適した方法と装置を提供する。
【解決手段】本方法は、不純物を含むアルゴンガスG0をルテニウム触媒に接触させる前処理工程と、PSA法により、前処理を経たガスG1の不純物を吸着剤に吸着させ、アルゴンが富化された準精製ガスG2を導出する吸着工程、吸着剤から不純物を脱着させ塔内ガスを導出する脱着工程、および吸着工程を経た吸着塔と脱着工程を経た吸着塔との内部圧力を均圧化する均圧工程、を含むサイクルを行うPSAガス分離工程と、TSA法により、吸着剤が低温の状態にて準精製ガスG2を導入して不純物を吸着剤に吸着させ、準精製ガスG2よりアルゴンが富化された精製ガスG6を導出する吸着工程、および吸着剤を昇温させつつ吸着剤から不純物を脱着させ塔内ガスを導出する再生工程、を含むサイクルを行うTSAガス分離工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力変動吸着法および温度変動吸着法を利用してアルゴンを精製するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、製鋼用真空脱ガス炉、太陽電池用シリコンプラズマ溶解炉などにおける炉内雰囲気ガスとして、アルゴンが使用されることが多い。炉内雰囲気ガスとして使用されたアルゴンは、水素、一酸化炭素、空気(主に窒素と酸素)などの不純物の混入により純度が低下している。炉内雰囲気ガスとして使用されたアルゴンについては、再利用のため、混入した不純物を吸着剤に吸着させることによって精製される場合がある。さらに、そのような不純物の吸着を効率よく行うために、吸着処理の前処理として不純物中の酸素と可燃成分とを反応させることが提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された方法においては、アルゴンおよび不純物を含む混合ガスにおける酸素の量を、水素、一酸化炭素等の可燃成分を完全燃焼させるのに必要な化学量論量よりも僅かに少なくなるように調節する。次に、一酸化炭素と酸素との反応よりも水素と酸素との反応を優先させるパラジウムまたは金を触媒として、混合ガスにおける酸素を一酸化炭素、水素等と反応させることで、一酸化炭素を残留させた状態で二酸化炭素と水を生成する。次いで、圧力変動吸着法(PSA法)によって混合ガスに含有される二酸化炭素と水を常温で吸着剤に吸着させて非吸着ガスを排出させる。しかる後に、温度変動吸着法(TSA法)によって上記の非吸着ガスに含有される一酸化炭素と窒素を−10℃〜−50℃の温度で吸着剤に吸着させ、ここで吸着されなかったガスを精製ガスとして取得している。このような低温で一酸化炭素と窒素を吸着した吸着剤を再生する場合、一酸化炭素は窒素に比べて吸着剤から脱離させるのにエネルギーを要することから工業的に不利である。
【0004】
特許文献2に開示された方法においては、混合ガスにおける酸素の量を、水素、一酸化炭素等の可燃成分を完全燃焼させるのに十分な量とする。次に、パラジウム系の触媒を用いて混合ガスにおける酸素を一酸化炭素、水素等と反応させることで、酸素を残留させた状態で二酸化炭素と水を生成する。次いで、混合ガスに含有される二酸化炭素と水を常温で吸着剤に吸着させて非吸着ガスを排出させる。しかる後に、TSA法によって上記の非吸着ガスに含有される酸素と窒素を−170℃程度の温度で吸着剤に吸着させ、ここで吸着されなかったガスを精製ガスとして取得している。TSA法(温度変動吸着法)で酸素を吸着するには吸着時のガスの温度を−170℃程度まで低下させる必要がある。すなわち、吸着処理の前処理で酸素を残留させるため、吸着処理の際の冷却エネルギーが増大し、精製負荷が大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3496079号公報
【特許文献2】特許第3737900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、不純物を含むアルゴンガスを精製するにあたり、ガス精製に要するエネルギーを低減しつつ、高純度アルゴンを高回収率で得るのに適した方法および装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供されるアルゴンの精製方法は、少なくとも酸素、一酸化炭素、水素および窒素を不純物として含むアルゴンガスからアルゴンを濃縮精製する方法であって、上記アルゴンガスをルテニウム触媒に接触させて当該アルゴンガスに含まれる一酸化炭素および水素を酸素と反応させることにより、二酸化炭素および水に変化させて当該一酸化炭素および水素を実質的に除去する前処理工程と、PSA吸着剤が充填された3塔以上のPSA吸着塔を用いて行う圧力変動吸着法により、上記PSA吸着塔が相対的に高圧である状態にて、当該PSA吸着塔に、上記前処理工程を経て一酸化炭素および水素が除去された混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を上記PSA吸着剤に吸着させ、当該PSA吸着塔からアルゴンが富化された準精製ガスを導出するPSA吸着工程、上記PSA吸着塔を減圧して上記PSA吸着剤から不純物を脱着させ、当該PSA吸着塔からガスを導出する脱着工程、上記PSA吸着塔に洗浄ガスを導入しつつ当該PSA吸着塔からガスを導出する洗浄工程、および、上記吸着工程を経たPSA吸着塔の内部圧力および上記洗浄工程を経たPSA吸着塔の内部圧力を均圧化するための均圧工程、を含むサイクルを繰り返し行う圧力変動式ガス分離工程と、TSA吸着剤が充填されたTSA吸着塔を用いて行う温度変動吸着法により、上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤が低温の吸着温度にて、当該TSA吸着塔に上記準精製ガスを導入して当該準精製ガス中の不純物を上記TSA吸着剤に吸着させ、当該TSA吸着塔から、上記準精製ガスよりもアルゴンが富化された精製ガスを導出するTSA吸着工程、および上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤を高温の温度へと昇温させつつ当該TSA吸着剤から不純物を脱着させて当該TSA吸着塔からオフガスを導出することにより当該TSA吸着剤を再生する再生工程、を含むサイクルを繰り返し行う温度変動吸着式ガス分離工程と、を含む。
【0008】
好ましくは、上記前処理が施される前の上記混合ガスは、当該混合ガスにおける酸素モル濃度が一酸化炭素モル濃度と水素モル濃度との和の1/2を超えるように調節される。
【0009】
好ましくは、上記圧力変動式ガス分離工程における上記均圧工程は、当該均圧工程の開始から途中までにおいて上記吸着工程を経たPSA吸着塔から第1ガスを導出して当該PSA吸着塔の内部圧力を吸着圧力より低い第1圧力とする第1均圧工程と、当該PSA吸着塔から第2ガスを導出して当該PSA吸着塔の内部圧力を上記第1圧力よりも低い第2圧力とする、上記第1均圧工程の後の第2均圧工程とを含み、上記第2均圧工程では、上記洗浄工程を経たPSA吸着塔に上記第2ガスを導入して当該PSA吸着塔の内部圧力を上記第2圧力まで昇圧し、上記第1均圧工程では、上記第2均圧工程を経て内部圧力が上記第2圧力まで昇圧されたPSA吸着塔に上記第1ガスを導入して当該PSA吸着塔の内部圧力を上記第1圧力まで昇圧する。
【0010】
好ましくは、上記洗浄工程の後で且つ上記第2均圧工程の前に行われ、上記洗浄工程を経て相対的に低圧である状態のPSA吸着塔に対するガスの出入りを遮断することにより、当該PSA吸着塔内の上記PSA吸着剤からガスを脱着させて当該ガスを回収するための回収工程をさらに備える。
【0011】
好ましくは、上記PSA吸着剤は、カーボンモレキュラーシーブを含む。
【0012】
好ましくは、上記TSA吸着塔は、その内部に上記TSA吸着剤が充填された吸着管を備え、上記TSA吸着工程では、液状冷媒を上記TSA吸着塔内に通流させることにより、上記TSA吸着剤を冷却し、上記再生工程では、液状熱媒を上記TSA吸着塔内に通流させることにより、上記TSA吸着剤を加熱する。
【0013】
好ましくは、上記TSA吸着工程における上記吸着温度は、−50〜−10℃である。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供されるアルゴンの精製装置は、少なくとも酸素、一酸化炭素、水素および窒素を不純物として含むアルゴンガスからアルゴンを濃縮精製するための装置であって、上記アルゴンガスをルテニウム触媒に接触させて当該アルゴンガスに含まれる一酸化炭素および水素を酸素と反応させるための前処理装置と、PSA吸着剤が充填された3塔以上のPSA吸着塔を用いて行う圧力変動吸着法により、上記PSA吸着塔が相対的に高圧である状態にて、当該PSA吸着塔に、上記前処理工程を経て一酸化炭素および水素が除去された混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を上記PSA吸着剤に吸着させ、当該PSA吸着塔からアルゴンが富化された準精製ガスを導出するPSA吸着工程、上記PSA吸着塔を減圧して上記PSA吸着剤から不純物を脱着させ、当該PSA吸着塔からガスを導出する脱着工程、上記PSA吸着塔に洗浄ガスを導入しつつ当該PSA吸着塔からガスを導出する洗浄工程、および、上記吸着工程を経たPSA吸着塔の内部圧力および上記洗浄工程を経たPSA吸着塔の内部圧力を均圧化するための均圧工程、を含むサイクルを繰り返し行うように構成された圧力変動吸着式ガス分離装置と、TSA吸着剤が充填されたTSA吸着塔を用いて行う温度変動吸着法により、上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤が低温の吸着温度にある状態にて、当該TSA吸着塔に上記準精製ガスを導入して当該準精製ガス中の不純物を上記TSA吸着剤に吸着させ、当該TSA吸着塔から、上記準精製ガスよりもアルゴンが富化された精製ガスを導出するTSA吸着工程、および上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤を高温の温度へと昇温させつつ当該TSA吸着剤から不純物を脱着させて当該TSA吸着塔からオフガスを導出することにより当該TSA吸着剤を再生する再生工程、を含むサイクルを繰り返し行うように構成された温度変動吸着式ガス分離装置と、を備える。
【0015】
本発明の第2の側面において、好ましくは、上記TSA吸着塔は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し、当該第1および第2ガス通過口と連通し且つ上記TSA吸着剤が充填された吸着管を備え、上記温度変動吸着式ガス分離装置は、上記吸着管内の上記TSA吸着剤を冷却するために上記TSA吸着塔に供給される液状冷媒を保持するための冷媒貯槽と、上記吸着管内の上記TSA吸着剤を加熱するために前記TSA吸着塔に供給される液状熱媒を保持するための熱媒貯槽と、上記冷媒貯槽から上記TSA吸着塔に上記冷媒を供給するための第1の冷媒ラインと、上記TSA吸着塔から上記冷媒貯槽に上記冷媒を戻すための第2の冷媒ラインと、上記熱媒貯槽から上記TSA吸着塔に上記熱媒を供給するための第1の熱媒ラインと、上記TSA吸着塔から上記熱媒貯槽に上記熱媒を戻すための第2の熱媒ラインと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るアルゴン精製方法によれば、上述の前処理、圧力変動吸着法(PSA法)および温度変動吸着法(TSA法)を実行し、これによってアルゴンの高純度化を図るところ、高純度化されるアルゴン(精製ガス)を得るためのエネルギーを低減しつつ、高い回収率を達成しやすい。本方法の前処理においては、ルテニウム触媒を用いて上記アルゴンガスに不純物として含まれる一酸化炭素および水素を酸素と反応させる。ルテニウム触媒は、一酸化炭素や水素を反応させる能力が他の白金系触媒などよりも優れており、一酸化炭素および水素を完全に他の化合物に変成することができる。また、ルテニウム触媒によれば、反応に必要な雰囲気温度(反応温度)が他の触媒と比べて低温でよく、このことは、前処理におけるアルゴンガスの加熱ためのエネルギーの低減に資する。
【0017】
また、本方法のPSA法によるガス精製においては、PSA吸着工程を終えたPSA吸着塔内のガスはアルゴン濃度が比較的に高い(準精製ガスと同程度)ところ、このようなアルゴン濃度の高いガスを、均圧工程において、洗浄工程を経た他のPSA吸着塔に導入することにより、PSA吸着工程に備えるべく当該他のPSA吸着塔の昇圧に供する。そのため、当該他のPSA吸着塔に導入される上記アルゴン濃度の高いガスは、装置外に排出されずに後のPSA吸着工程にて準精製ガスとして取り出され、次のTSA法によるガス精製に付される。したがって、本方法は、高純度アルゴンを高回収率で得るのに適している。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るアルゴン精製装置の全体概略構成図である。
【図2】本発明に係るアルゴン精製装置の一部であるPSAガス分離装置の構成図である。
【図3】図2に示すPSAガス分離装置にて実行されるPSAガス分離工程において、各PSA吸着塔で行われる工程(ステップ1〜9)の一例、および各ステップにおける各弁の開閉状態を示す図である。
【図4】図3に示すステップ1〜9におけるガス流れ状態を表す図である。
【図5】図3に示すステップ1〜9における各PSA吸着塔の内部圧力の変化を表す図である。
【図6】本発明に係るアルゴン精製装置の一部であるTSAガス分離装置の構成図である。
【図7】図6に示すTSAガス分離装置にて実行されるTSAガス分離工程において、各TSA吸着塔で行われる工程(ステップ1〜6)、および各ステップにおける各弁の開閉状態を示す図である。
【図8】図2に示すPSAガス分離装置にて実行されるPSAガス分離工程において、各PSA吸着塔で行われる工程(ステップ1〜9)の他の例、および各ステップにおける各弁の開閉状態を示す図である。
【図9】図8に示すステップ1〜9におけるガス流れ状態を表す図である。
【図10】図8に示すステップ1〜9における各PSA吸着塔の内部圧力の変化を表す図である。
【図11】本発明の実施例および比較例をまとめた表である。
【図12】本発明の実施例および比較例をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態として、アルゴンを含む原料ガスからアルゴンを濃縮分離する方法について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るアルゴン精製方法を実行するのに使用することができるアルゴン精製装置の概略構成を示している。アルゴン精製装置Xは、濃度調節装置1と、加熱器2と、反応器3と、冷却器4と、圧縮機5と、脱水機6と、ライン7と、吸着装置8とを備え、アルゴンを含む原料ガス(アルゴンガス)を供給しつつ連続的にアルゴンを精製することができるように構成されている。
【0022】
原料ガスG0は、シリコン結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、製鋼用真空脱ガス炉、太陽電池用シリコンプラズマ溶解炉などにおける炉内雰囲気ガスとして使用されて不純物が混入しているアルゴンであり、少なくとも一つの所定の炉(図示略)から連続的に又は断続的に排出されたものである。この排ガス(原料ガスG0)の排出流量や、圧力、組成は、炉で実施中の工程や炉の操業条件に応じて変動することが多く、急激に変動する場合もある。原料ガスG0は、図外のフィルター等(図示略)により防塵され、ブロア等のガス送り手段(図示略)を介して、原料ガス導入端E1を通じてライン7に導入される。原料ガスG0は、例えば、主成分としてアルゴンを含み、且つ、不純物として酸素、一酸化炭素、水素、窒素、および水を含む。また、二酸化炭素、炭化水素等の他の不純物を含む場合もある。主たる不純物は例えば窒素である。原料ガスG0における不純物の濃度は特に限定されず、例えば5モルppm〜40000モルppm(4モル%)程度とされるが、上記ガス送り手段によっては、空気が混入する場合があり、不純物濃度にして30モル%程度まで含有する場合もある。
【0023】
濃度調節装置1、加熱器2、反応器3、冷却器4、圧縮機5、および脱水機6は、ライン7内において直列に配されている。濃度調節装置1は、必要に応じて原料ガスG0に酸素を添加するためのものであり、ライン7と連結されている。濃度調節装置1は、例えば、各不純物の濃度を測定する濃度分析計と、酸素貯留部と、開度や開状態時間を制御可能なバルブとを備え、当該バルブによって酸素貯留部からライン7へと必要に応じて供給される酸素の流量が制御される。このような濃度調節装置1は、反応器3に導入される原料ガスにおける酸素モル濃度が一酸化炭素モル濃度と水素モル濃度との和の1/2以下である場合、原料ガスG0に所定量の酸素を添加する。酸素の添加により、反応器3に導入される原料ガスG0における酸素モル濃度が一酸化炭素モル濃度と水素モル濃度との和の1/2を超える値となるように調節される。
【0024】
加熱器2は、反応器3に導入される前に原料ガスG0を昇温するためのものであり、例えば電気ヒータよりなる。加熱器2による原料ガスG0の加熱温度は、反応器3における反応を完結するために100℃以上にするのが好ましく、触媒の寿命短縮を防止する観点から300℃以下とするのが好ましい。
【0025】
反応器3は、原料ガスG0中の酸素を一酸化炭素および水素のそれぞれと反応させることにより二酸化炭素および水に変化させて、一酸化炭素および水素を実質的に除去するためのものである。反応器3には、下記の反応式(1)、(2)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、ルテニウム触媒を採用することができる。ルテニウム触媒は、一酸化炭素や水素を反応させる能力が他の白金系触媒よりも優れており、原料ガスG0中に不純物として含まれる一酸化炭素、水素を完全に他の化合物に変成できるので好ましい。また、ルテニウム触媒は、一酸化炭素と水素とを反応させてメタン化させる能力についても他の白金系触媒よりもはるかに優れており、ルテニウム触媒を用いれば、下記の反応式(3)で表される反応も促進される。したがって、このようなルテニウム触媒の使用は、原料ガスG0中に不純物として含まれる一酸化炭素、水素を他の化合物に完全に変成するうえで好ましい。実際に使用されるルテニウム触媒としては、ルテニウムをアルミナ等の担体により担持したものを用いることができる。また、反応器3に充填される触媒としては、ルテニウム触媒だけを用いてもよいが、ルテニウム触媒と他の白金系触媒(プラチナ触媒、パラジウム触媒など)の少なくとも1種類とを含む、複数種類からなる触媒を用いてもよい。
【0026】
【化1】

【化2】

【化3】

【0027】
反応器3内に原料ガスG0が導入されると、触媒の作用により、原料ガスG0における酸素が一酸化炭素および水素と反応し、酸素が残留した状態で二酸化炭素と水が生成される。このようにして、実質的に一酸化炭素および水素が除去されたガスG1(混合ガス)が反応器3から導出される。なお、シリコン結晶引き上げ炉等から排出される原料ガスG0は可燃成分として炭化水素を含む場合もあるが、当該炭化水素のモル濃度は一酸化炭素と水素の合計モル濃度の通常は1/100以下である。よって、通常は濃度調節装置1により、原料ガスG0について一酸化炭素モル濃度と水素モル濃度との和の1/2を僅かに超えるように酸素モル濃度を設定すれば、反応器3においては、炭化水素が燃焼により実質的に除去されて酸素が残留した状態で二酸化炭素と水が生成される。また、反応器3を経たガスG1に炭化水素が残存した場合でも、後のPSAガス分離装置による吸着除去が容易である。したがって、濃度調節装置1による酸素モル濃度の調整に際しては、炭化水素の濃度を考慮する必要はない。
【0028】
冷却器4は、反応器3から導出されたガスG1を冷却するためのものであり、例えば冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。冷却器4を経たガスG1の温度は、例えば20〜40℃程度とされる。なお、上記の加熱器2、反応器3、および冷却器4は、本発明方法の前処理工程を担う装置(以下、「前処理装置」という)である。前処理装置は、後段の吸着装置8にガスG1を供給する前に除去すべき不純物の種類や量に応じて、上記したのと異なる構成を採用してもよい。
【0029】
圧縮機5は、ライン7内を通流するガスG1を加圧しつつ後段の吸着装置8に向けて送り出すためのものである。
【0030】
脱水機6は、圧縮機5から供給されるガスG1について脱水操作を行い、当該ガスG1の水分含有率を低減するためのものである。脱水機6としては市販のものを用いればよく、例えばガスG1を加圧して吸着剤により水分を除去し、吸着剤を減圧下で再生させる加圧式脱水装置、ガスG1を加圧冷却して凝縮された水分を除去する冷凍式脱水装置、ガスG1に含まれる水分を脱水剤により除去し、脱水剤を加熱して再生させる加熱再生式脱水装置等を用いることができる。加熱再生式脱水装置が水分含有率を効果的に低減する上で好ましく、ガスG1における水分を約99%程度除去できるものがよい。なお、脱水機6は、反応器3から導出されるガスG1中の水分が少ない場合には必ずしも必要ではなく、後述するPSAガス分離装置10の3つの吸着塔11A,11B,11Cの下部にアルミナゲル等の脱水剤(吸着剤)を充填することにより、水分除去を十分に賄うことができる。反応器3から導出されるガスG1中の水分が多い場合とは、原料ガスG0に空気が混入した場合であり、例えば原料ガスG0に空気が20モル%混入すると、酸素が4モル%程度混じる。これを水素と反応させれば8モル%の水分が副生する。このような場合、脱水機6は必須である。空気の混入が1モル%以上の場合は脱水機6を用いた方がよい。
【0031】
吸着装置8は、直列的に配置された圧力変動吸着式ガス分離装置(PSAガス分離装置)10および温度変動吸着式ガス分離装置(TSAガス分離装置)20と、これらにつながるラインとを備えている。
【0032】
図2に示すように、PSAガス分離装置10は、3つの吸着塔11A,11B,11C(PSA吸着塔)と、ガス流路をなす複数のライン12〜17とを備え、脱水機6を経たガスG1から圧力変動吸着法(PSA法)を利用してアルゴンを濃縮分離することが可能なように構成されている。
【0033】
吸着塔11A,11B,11Cのそれぞれは、両端にガス通過口11a,11bを有し、ガス通過口11a,11bの間において、ガスG1に含まれる不純物を選択的に吸着するための吸着剤(PSA吸着剤)が充填されている。例えば、不純物たる窒素や、一酸化炭素、二酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、ゼオライトを用いることができる。例えば、不純物たる酸素や二酸化炭素、メタンを吸着するための吸着剤としては、カーボンモレキュラーシーブを用いることができる。例えば、不純物たる水分を吸着するための吸着剤としては、アルミナゲルを用いることができる。一種類の吸着剤を吸着塔11A,11B,11C内に充填してもよいし、複数種類の吸着剤を吸着塔11A,11B,11C内にて積層させて充填してもよい。吸着塔11A,11B,11C内に充填する吸着剤の種類や数については、吸着塔11A,11B,11Cにて除去すべき不純物の種類および量に応じて決定する。本実施形態では、前処理を経たガスG1に含まれる酸素を効率よく除去するために、吸着剤としては、カーボンモレキュラーシーブが好適に用いられる。
【0034】
吸着塔11A,11B,11Cのガス通過口11aは、分岐路12A,12B,12Cを介してライン12に接続されている。分岐路12A,12B,12Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁12a,12b,12cが設けられている。
【0035】
吸着塔11A,11B,11Cのガス通過口11aはまた、分岐路13A,13B,13Cを介してオフガスライン13に接続されている。分岐路13A,13B,13Cには自動弁13a,13b,13cが設けられている。オフガスライン13の端部にはサイレンサ13dが設けられており、オフガスライン13の当該端部は、サイレンサ13dを介して大気中に開放している。
【0036】
吸着塔11A,11B,11Cのガス通過口11aはさらに、分岐路14A,14B,14Cを介して下部均圧ライン14に接続されている。分岐路14A,14B,14Cには自動弁14a,14b,14cが設けられている。
【0037】
吸着塔11A,11B,11Cのガス通過口11bは、分岐路15A,15B,15Cを介して準精製ガスライン15に接続されている。分岐路15A,15B,15Cには、自動弁15a,15b,15cが設けられている。準精製ガスライン15には、均圧槽15d、圧力調整弁15eが設けられている。圧力調整弁15eは、各吸着塔11A,11B,11C内を所望の吸着圧力とするように制御するためのものである。準精製ガスライン15の端部は、後述するTSAガス分離装置20のライン22aに接続されている。
【0038】
吸着塔11A,11B,11Cのガス通過口11bはまた、分岐路16A,16B,16Cを介して洗浄ライン16に接続されている。分岐路16A,16B,16Cには自動弁16a,16b,16cが設けられている。洗浄ライン16は、準精製ガスライン15の途中に分岐状に接続されており、ガス通過口11bから導出される準精製ガスの一部を洗浄ガスとしていずれかの吸着塔に導入するためのものである。洗浄ライン16には、逆止弁16d、流量計16e、および流量制御弁16fが設けられている。
【0039】
吸着塔11A,11B,11Cのガス通過口11bはさらに、分岐路17A,17B,17Cを介して上部均圧ライン17に接続されている。分岐路17A,17B,17Cには自動弁17a,17b,17cが設けられている。
【0040】
上記構成のPSAガス分離装置10においては、ラインや分岐路に設けられた各自動弁の開閉状態を適宜切り替えることにより、各吸着塔11A,11B,11C内でのガスの流れ方向や圧力が調整される。PSAガス分離装置10を用いて行うPSAガス分離行工程では、吸着塔11A,11B,11Cのそれぞれにおいて、例えば、吸着工程と、脱着工程と、洗浄工程と、均圧工程とを含むサイクルが繰り返される。
【0041】
吸着工程は、塔内が所定の高圧状態にあるいずれかの吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物(酸素、二酸化炭素、窒素、水など)を吸着剤に吸着させ、当該吸着塔からアルゴンが富化された非吸着ガス(準精製ガス)を導出するための工程である。脱着工程は、例えば吸着工程を終えたいずれかの吸着塔を減圧して吸着剤から不純物を脱着させ、塔内のガスをオフガスとして塔外へ導出するための工程である。洗浄工程は、他の吸着塔から導出されたアルゴン濃度の高いガス(例えば準精製ガス)を洗浄ガスとして導入しつつ、塔内のガスをオフガスとして塔外へ導出するための工程である。均圧工程は、例えば吸着工程を終えたいずれかの吸着塔と洗浄工程を終えた他の吸着塔とを連通させ、両吸着塔内の圧力差により両吸着塔の間でガスの流れを生じさせて、両吸着塔の内部圧力を均圧化するための工程である。均圧工程では、当該均圧工程の開始時に相対的に高圧である吸着塔(吸着工程を終えた吸着塔)は降圧させられ、均圧工程の開始時に相対的に低圧である吸着塔(洗浄工程を終えた吸着塔)は昇圧させられる。
【0042】
本実施形態に係るアルゴン精製方法においては、PSAガス分離装置10を用いて混合ガスからアルゴンが富化された準精製ガスが分離される。具体的には、図3に示す態様で自動弁12a〜12c,13a〜13c,14a〜14c,15a〜15c,16a〜16c,17a〜17cを切り替えることにより、装置内において所望のガス流れ状態を実現し、例えば以下のステップ1〜9からなる1サイクルを繰り返すことができる。なお、図3では、各自動弁の開状態を○で表し且つ閉状態を×で表す。本方法の1サイクルにおいては、吸着塔11A,11B,11Cのそれぞれにて、吸着工程、第1均圧(減圧)工程、第2均圧(減圧)工程、脱着洗浄工程、第2均圧(昇圧)工程、待機、および第1均圧(昇圧)工程が行われる。図4は、ステップ1〜9におけるPSAガス分離装置10でのガスの流れ状態を模式的に表したものである。図5は、ステップ1〜9における各吸着塔11A,11B,11Cの内部圧力の変化を表す。
【0043】
ステップ1では、図3に示すように各自動弁の開閉状態が選択され、図4(a)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔11Aにて吸着工程が、吸着塔11Bにて第2均圧(昇圧)工程が、吸着塔11Cにて第2均圧(減圧)工程が行われる。
【0044】
図3および図4(a)を参照するとよく理解できるように、ステップ1では、所定の高圧状態にある吸着塔11Aのガス通過口11a側にガスG1(混合ガス)が導入されて、当該ガスG1中の不純物(二酸化炭素、水、窒素など)が吸着塔11A内の吸着剤に吸着され、且つ、アルゴンが富化された準精製ガスG2が吸着塔11Aのガス通過口11b側から導出される。準精製ガスG2は、準精製ガスライン15を介してTSAガス分離装置20に向けて送出される。吸着塔11Bでは先に脱着洗浄工程が行われ、吸着塔11Cでは先に第1均圧(減圧)工程が行われる(図4(i)に示されるステップ9参照)。このため、ステップ1の開始時には、吸着塔11Bの内部圧力は脱着圧力と同程度の低い圧力である一方、吸着塔11Cの内部圧力は吸着塔11Bの内部圧力よりも高い圧力(第1圧力)となっている。したがって、ステップ1では、吸着塔11Cのガス通過口11a,11b両側からガスG4(第2ガス)が導出され、当該ガスG4は、ライン14,17を介して吸着塔11Bに導入される。これにより、吸着塔11Bの内部が昇圧する一方、吸着塔11Cの内部が降圧し、ステップ1の終了時には、両吸着塔11B,11Cの内部圧力は、いずれも第2圧力となる(図5参照)。
【0045】
ステップ2では、図3に示すように各自動弁の開閉状態が選択され、図4(b)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔11Aにて吸着工程が、吸着塔11Bにて待機が、吸着塔11Cにて脱着洗浄工程が行われる。
【0046】
図3および図4(b)を参照するとよく理解できるように、ステップ2では、吸着塔11Aにおいて、ステップ1から引き続き吸着工程が行われ、準精製ガスG2が導出される。吸着塔11Bについては、ガス通過口11a,11bのそれぞれに通じる分岐路12B,13B,14B,15B,16B,17Bに設けられた自動弁12b,13b,14b,15b,16b,17bがすべて閉じていることから、ガスの出入りが遮断されて待機状態とされる。吸着塔11Bの内部は、先のステップ1の終了時の第2圧力と略同一の圧力(第2圧力)に維持される。これとともに、ステップ2では、吸着塔11Aからの準精製ガスG2の一部が洗浄ライン16、流量制御弁16fを介して吸着塔11Cのガス通過口11b側に洗浄ガスとして導入される。吸着塔11Cでは、吸着剤から不純物が脱着しており、通過口11bから導入される洗浄ガスと入れ替わるようにしてガス通過口11a側からガスG5がオフガスとして導出される。このガスG5は、オフガスライン13およびサイレンサ13dを介して装置外(大気中)に排出される。
【0047】
ステップ3では、図3に示すように各自動弁の開閉状態が選択され、図4(c)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔11Aにて第1均圧(減圧)工程が、吸着塔11Bにて第1均圧(昇圧)工程が、吸着塔11Cにて脱着洗浄工程が行われる。
【0048】
先のステップ2において、吸着塔11Aでは吸着工程が行われ、吸着塔11Bでは待機状態とされる。このため、ステップ3の開始時には、吸着塔11Aの内部圧力は吸着圧力と同程度の高い圧力である一方、吸着塔11Bの内部圧力は吸着塔11Aの内部圧力よりも低い圧力(第2圧力)となっている。したがって、ステップ3では、吸着塔11Aのガス通過口11a,11b両側からガスG3(第1ガス)が導出され、当該ガスG3は、ライン14,17を介して吸着塔11Bに導入される。これにより、吸着塔11Bの内部が昇圧する一方、吸着塔11Aの内部が降圧し、ステップ3の終了時には、両吸着塔11A,11Bの内部圧力は、いずれも第1圧力となる(図5参照)。これとともに、ステップ3では、先のステップ2において吸着塔11Aから導出されて準精製ガスライン15に残存する準精製ガスG2が洗浄ライン16、流量制御弁16fを介して吸着塔11Cのガス通過口11b側に洗浄ガスとして導入される。吸着塔11Cでは、ステップ2から引き続き吸着剤から不純物が脱着しており、通過口11bから導入される洗浄ガスと入れ替わるようにしてガス通過口11a側からガスG5がオフガスとして導出される。このガスG5は、オフガスライン13およびサイレンサ13dを介して装置外に排出される。
【0049】
ステップ1〜3において、ステップ1〜2の吸着工程にある吸着塔11Aの内部の最高圧力(吸着圧力)は、例えば700〜800kPaGである。ステップ1の第2均圧工程の終了時点における吸着塔11B,11Cの内部の圧力(第2圧力)は、例えば200〜250kPaGである。ステップ2の待機状態にある吸着塔11Bの内部の圧力は、例えば200〜250kPaGである。ステップ3の第1均圧工程の終了時点における吸着塔11A,11Bの内部の圧力(第1圧力)は、例えば400〜450kPaGである。ステップ2〜3にわたる脱着洗浄工程にある吸着塔11Cの内部の最低圧力(脱着圧力)は、例えば0〜30kPaGである。
【0050】
ステップ4〜6では、ステップ1〜3で吸着塔11Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔11Bにおいて、図4(d)〜(f)に示すように吸着工程(ステップ4,5)、第1均圧(減圧)工程(ステップ6)が行われる。これとともに、ステップ4〜6では、ステップ1〜3で吸着塔11Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔11Cにおいて、図4(d)〜(f)に示すように第2均圧(昇圧)工程、待機、第1均圧(昇圧)工程が行われる。これとともに、ステップ4〜6では、ステップ1〜3で吸着塔11Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔11Aにおいて、図4(d)〜(f)に示すように第2均圧(減圧)工程(ステップ4)、脱着洗浄工程(ステップ5,6)が行われる。
【0051】
ステップ7〜9では、ステップ1〜3で吸着塔11Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔11Cにおいて、図4(g)〜(i)に示すように吸着工程(ステップ7,8)、第1均圧(減圧)工程(ステップ9)が行われる。これとともに、ステップ7〜9では、ステップ1〜3で吸着塔11Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔11Aにおいて、図4(g)〜(i)に示すように第2均圧(昇圧)工程、待機、第1均圧(昇圧)工程が行われる。これとともに、ステップ7〜9では、ステップ1〜3で吸着塔11Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔11Bにおいて、図4(g)〜(i)に示すように第2均圧(減圧)工程(ステップ7)、脱着洗浄工程(ステップ8,9)が行われる。
【0052】
以上のようにして、PSAガス分離装置10からは、アルゴンが富化された準精製ガスG2が、TSAガス分離装置20に向けて送出され続ける。
【0053】
次に、TSAガス分離装置20の具体的な構成について説明する。図6に示すように、TSAガス分離装置20は、吸着塔21A,21B(TSA吸着塔)と、ガス流路をなすライン22a〜22eと、熱交換器23Aと、クーラ23Bと、冷媒タンク23Cと、冷媒ポンプ23Dと、ブラインクーラ23Eと、熱媒タンク23Fと、熱媒ポンプ23Gと、冷媒流れ及び熱媒流れに係るライン24a〜24hとを備え、PSAガス分離装置10からの準精製ガスG2から、温度変動吸着法(TSA法)を利用してアルゴンを更に濃縮分離することが可能なように構成されたものである。
【0054】
吸着塔21A,21Bのそれぞれは、ガス通過口21a,21b、少なくとも一本の吸着管21c、二枚の管板21d、空間部21e,21fを有する。吸着管21cには、準精製ガスG2に含まれる不純物たる窒素を選択的に吸着するための吸着剤(TSA吸着剤)が充填されている。そのような吸着剤として、例えば、CaX型ゼオライト、Caモルデナイト型ゼオライト、およびLiX型ゼオライトを用いることができる。一種類の吸着剤を吸着管21c内に充填してもよいし、複数種類の吸着剤を吸着管21c内にて積層させて充填してもよい。このような吸着管21cは、塔内において管板21dに支持されており、吸着管21c内部と空間部21eないしガス通過口21a,21bとは連通している。また、空間部21eはガス流路の一部であり、空間部21fは、冷媒や熱媒を受容する部位であり、これら空間部21e,21fは管板21dによって仕切られている。
【0055】
TSAガス分離装置20には、精製ガス取出しライン30およびオフガスライン40が接続されている。精製ガス取出しライン30は、後述する各吸着塔21A,21Bのガス通過口21bから導出される精製ガスG6を回収するためのラインである。オフガスライン40は、後述する各吸着塔21A,21Bのガス通過口21aから導出されるオフガス(ガスG7)を装置外(大気中)に排出するためのものである。
【0056】
ライン22aは、PSAガス分離装置10からの準精製ガスG2を吸着塔21A,21Bに供給するためのものであり、上述の準精製ガスライン15と、分岐路を介して吸着塔21A,21Bの各ガス通過口21aのそれぞれとを繋いでいる。
【0057】
ライン22bは、各吸着塔21A,21Bから導出される精製ガスG6の流路であり、精製ガス取出しライン30と、分岐路を介して吸着塔21A,21Bの各ガス通過口21bのそれぞれとを繋いでいる。
【0058】
ライン22cは、ライン22b内を通流する精製ガスの一部を吸着塔21A,21Bに供給するためのものであり、ライン22bと、分岐路を介して吸着塔21A,21Bの各ガス通過口21bのそれぞれとを繋いでいる。
【0059】
ライン22dは、各吸着塔21A,21Bから導出されるガスG7を装置外に排出するためのものであり、オフガスライン40と、分岐路を介して吸着塔21A,21Bの各ガス通過口21aのそれぞれとを繋いでいる。
【0060】
ライン22eは、吸着塔21A,21Bを互いに接続するためのものであり、分岐路を介して吸着塔21Aのガス通過口21bと吸着塔21Bのガス通過口21bとを繋いでいる。
【0061】
熱交換器23Aは、PSAガス分離装置10の吸着塔11A,11B,11Cから導出され、準精製ガスライン15を介して供給された準精製ガスG2を冷却するためのものである。クーラ23Bは、熱交換器23Aを経た準精製ガスG2を冷却するためのものである。冷媒タンク23Cは、液状の冷媒M1を保持するためのものである。冷媒M1としては、例えば、エタノール水溶液、メタノール水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化メチレン、またはエチレングリコールを使用することができる。冷媒ポンプ23Dは、冷媒タンク23C内の冷媒M1をブラインクーラ23E側ないし吸着塔21A,21B側に送流するためのものである。ブラインクーラ23Eは、冷媒M1が吸着塔21A,21Bに至る前に当該冷媒M1を所定温度まで冷却するための、冷凍機付き冷媒冷却器である。熱媒タンク23Fは、液状の熱媒M2を保持し且つ熱媒M2を加熱するためのものである。熱媒タンク23Fには所定の加熱手段(図示略)が設けられている。熱媒M2としては、例えば、エタノール水溶液、メタノール水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化メチレン、またはエチレングリコールを使用することができる。本実施形態では、冷媒M1および熱媒M2は同種の液体である。熱媒ポンプ23Gは、熱媒タンク23F内の熱媒M2を吸着塔21A,21B側に送流するためのものである。
【0062】
ライン24a,24bは、吸着塔21A,21Bへの冷媒供給用ラインであり、冷媒タンク23C、冷媒ポンプ23D、ブラインクーラ23Eを直列に連結し、且つ、吸着塔21A,21Bの空間部21fの下端側と連通可能に設けられている。
【0063】
ライン24c,24dは、吸着塔21A,21Bからの冷媒回収用ラインであり、吸着塔21A,21Bの空間部21fの上端側と連通可能であり且つ空間部21fの下端側と連通可能に、設けられている。また、ライン24c,24dは、冷媒タンク23Cに接続されている。
【0064】
ライン24e,24fは、吸着塔21A,21Bへの熱媒供給用ラインであり、熱媒タンク23Fおよび熱媒ポンプ23Gを直列に連結し、且つ、吸着塔21A,21Bの空間部21fの下端側と連通可能に設けられている。
【0065】
ライン24g,24hは、吸着塔21A,21Bからの熱媒回収用ラインであり、吸着塔21A,21Bの空間部21fの上端側と連通可能であり且つ空間部21fの下端側と連通可能に、設けられている。また、ライン24g,24hは、熱媒タンク23Fに接続されている。
【0066】
ライン22a〜22e,24a〜24hには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な複数の自動弁25a〜25j,26a〜26hが設けられており、各自動弁25a〜25j,26a〜26hの開閉状態を適宜切り替えることにより、各吸着塔21A,21B内での流体の流れ方向や圧力が調整される。各吸着塔21A,21Bにおいては、自動弁25a〜25j,26a〜26hの切り替え状態に応じて、吸着工程(TSA吸着工程)、および再生工程を含むサイクルが繰り返される。吸着工程では、吸着管21c内が所定の高圧・低温状態にある吸着塔に準精製ガスG2を供給することにより当該準精製ガスG2中の不純物窒素を吸着管21c内の吸着剤に吸着させ、当該吸着塔から、上記準精製ガスG2よりもアルゴンが富化された精製ガスG6を導出させる。再生工程では、吸着工程を終えた吸着塔内の圧力を低下させる減圧工程、吸着塔内の温度を上昇させる昇温操作を行い、吸着剤からの不純物の脱着、塔外への導出を高温・低圧下で行う加熱脱着工程、および吸着管21c内を降温させる冷却操作と吸着工程への準備として吸着管21c内の圧力を上昇させる昇圧操作とを同時に行う冷却昇圧工程が順次行われる。なお、吸着工程を行っている吸着塔においては、吸着管21c内の最高圧力(吸着圧力)は例えば0.4〜1MPaGとされ、吸着管21c内の吸着剤の最低温度(吸着温度)は例えば−50〜−10℃とされる。加熱脱着工程を行っている吸着塔においては、吸着管21c内の最低圧力(脱着圧力)は例えば大気圧程度とされ、吸着管21c内の吸着剤の最高温度(脱着温度)は例えば30〜50℃とされる。
【0067】
本発明の実施形態においては、以上のように構成されたTSAガス分離装置20を用いて準精製ガスG2から精製ガスG6が分離される。各吸着塔21A,21Bでは図7に示すようなタイミング(ステップ)で各工程が行われ、ステップ1〜6を1サイクルとして、このようなサイクルが繰り返し行われる。なお、図7には、各ステップにおける各自動弁25a〜25j,26a〜26hの開閉状態を同時に示した。図7では、各自動弁の開状態を○で表し且つ閉状態を×で表す。
【0068】
ステップ1では、図7に示したように各自動弁の開閉状態が選択され、吸着塔21Aでは吸着工程が行われ、吸着塔21Bでは減圧工程(塔内の減圧、昇温)が行われている。
【0069】
より具体的には、ステップ1では、冷媒M1が、冷媒タンク23Cからライン24aを介して吸着塔21Aの空間部21fの下端側に供給される。この冷媒M1は、冷媒タンク23Cから冷媒ポンプ23Dによってポンプアップされてブラインクーラ23Eを通過して冷却されたものである。ブラインクーラ23Eによる冷媒M1の冷却温度は例えば−50〜−40℃である。これとともに、吸着塔21Aの空間部21fの上端側からライン24cを介して冷媒タンク23Cに冷媒M1が回収される。この冷媒M1は、冷媒タンク23Cに回収される前にクーラ23Bを通過し、準精製ガスG2を冷却するのに利用される。冷媒M1と準精製ガスG2の比熱の差が大きいので、クーラ23Bでは効率よく準精製ガスG2を冷却することができる。冷媒M1は、吸着塔21Aの空間部21fとブラインクーラ23Eとの間を巡回し、これにより、吸着塔21Aの吸着管21c内の吸着剤は冷却され続けて低温の吸着温度に維持される。吸着温度は低くとも−50℃とする。本実施形態では、吸着温度は例えば−35℃である。これとともに、吸着塔21Aのガス通過口21a側にライン22aを介して準精製ガスG2が導入されて、当該ガスG2中の不純物窒素を吸着塔21Aの吸着管21c内の吸着剤に吸着させ、且つ、準精製ガスG2よりもアルゴンが富化された精製ガスG6が吸着塔21Aのガス通過口21b側から導出される。精製ガスG6は、ライン22b、精製ガス取出しライン30を介して装置外へ取り出される。この精製ガスG6は、装置外に取り出される前に熱交換器23Aを通過し、準精製ガスG2を冷却するのに利用される。換言すると、精製ガスG6は、熱交換器23Aを通過する際に、相対的に高温な準精製ガスG2によって加熱される。吸着工程にある吸着塔21Aの吸着管21cの内部圧力は、0.01〜1MPaGの範囲である。
【0070】
これとともに、熱媒M2が、熱媒ポンプ23Gによってポンプアップされて熱媒タンク23Fからライン24fを介して吸着塔21Bの空間部21fの下端側に供給される。熱媒タンク23F内では、熱媒M2は例えば45〜50℃に加熱されている。これとともに、吸着塔21Bの空間部21fの上端側からライン24hを介して熱媒タンク23Fに熱媒M2が回収される。熱媒M2は、吸着塔21Bの空間部21fと熱媒タンク23Fとの間を巡回し、これにより、吸着塔21Bの吸着管21c内の吸着剤は加熱されて昇温する。また、吸着塔21Bでは、先に吸着工程を行っていたことから、ステップ1の開始時に吸着管21cの内部は大気圧よりも高圧下にある(図7に示されるステップ6参照)。そして、吸着塔21Bの吸着管21c内のガスがガス通過口21a側から導出され、ライン22dを介してオフガスライン40に送り出される。これにより、吸着塔21Bの吸着管21cの内部は、所定の圧力まで減圧される。
【0071】
ステップ2では、図7に示したように各自動弁の開閉状態が選択され、吸着塔21Aでは吸着工程が行われ、吸着塔21Bでは加熱脱着工程が行われている。
【0072】
より具体的には、ステップ2では、吸着塔21Aにおいて、ステップ1から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG6が導出される。精製ガスG6は、熱交換器23Aを通過する際に、相対的に高温な準精製ガスG2によって加熱される。そして、加熱されたこの精製ガスG6は、一部がライン22b、精製ガス取出しライン30を介して装置外へ回収され、残りがパージガスとしてライン22cを介して吸着塔21Bに供給される。
【0073】
これとともに、熱媒M2が、吸着塔21Bの空間部21fと熱媒タンク23Fとの間を巡回し、これにより、吸着塔21Bの吸着管21c内の吸着剤は加熱され続けて例えば40℃に至るまで昇温される。加熱脱着工程における吸着剤の最高温度は高くとも50℃とする。吸着塔21Bでは、先に減圧工程を終えて、吸着管21cの内部は高温・低圧下にあることから、吸着剤から不純物窒素が脱着する。また、これとともに、吸着塔21Bのガス通過口21b側に、吸着塔21Aから導出された精製ガスG6の一部がライン22cを介して導入されつつ、吸着塔21Bのガス通過口21a側から吸着管21c内のガスが導出される。これにより、吸着管21cの内部を洗浄することができる。さらに、吸着塔21Bに導入される精製ガスG6は熱交換器23Aで加熱されているため、吸着管21c内の吸着剤の昇温(加熱)に寄与する。吸着塔21Bのガス通過口21a側から導出されたガスG7は、ライン22dを介してオフガスライン40に送り出される。また、加熱脱着工程にある吸着塔21Bの吸着管21cの内部圧力は、吸着工程における吸着管21cの内部圧力より低い限りにおいて、大気圧から0.1MPaGの範囲である。
【0074】
ステップ3では、図7に示したように各自動弁の開閉状態が選択され、吸着塔21Aでは吸着工程が行われ、吸着塔21Bでは冷却昇圧工程が行われている。
【0075】
より具体的には、ステップ3では、吸着塔21Aにおいて、ステップ2から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG6が導出される。この精製ガスG6は、一部がライン22b、精製ガス取出しライン30を介して装置外へ回収され、残りがパージガスとしてライン22eを介して吸着塔21Bに供給される。
【0076】
これとともに、冷媒M1が、冷媒タンク23Cからライン24bを介して吸着塔21Bの空間部21fの下端側に供給される。この冷媒M1は、冷媒タンク23Cから冷媒ポンプ23Dによってポンプアップされてブラインクーラ23Eを通過して冷却されたものである。これとともに、吸着塔21Bの空間部21fの上端側からライン24dを介して冷媒タンク23Cに冷媒M1が回収される。冷媒M1は、吸着塔21Bの空間部21fとブラインクーラ23Eとの間を巡回し、これにより、吸着塔21Bの吸着管21c内の吸着剤は冷却され続けて例えば−35℃(吸着温度)に至るまで降温される。これとともに、吸着塔21Bのガス通過口21b側に、吸着塔21Aから導出された精製ガスG6の一部がライン22eを介して導入される。これにより、吸着塔21Bの吸着管21c内部を昇圧することができる。さらに、吸着塔21Bへと導入される精製ガスG6は、吸着工程を経て低温であり且つ加熱されていないため、吸着塔21Bの吸着管21c内の吸着剤の冷却に寄与する。
【0077】
ステップ4〜6では、ステップ1〜3で吸着塔21Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔21Bにおいて吸着工程が行われる。これとともに、ステップ4〜6では、ステップ1〜3で吸着塔21Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔21Aにおいて、減圧工程(ステップ4)、加熱脱着工程(ステップ5)、冷却昇圧工程(ステップ6)が行われる。
【0078】
以上のようにして、TSAガス分離装置20では、吸着塔21A,21BのいずれかでTSA吸着工程が常時的に行われ、アルゴン精製装置Xから、高純度の精製ガスG6が回収され続ける。この精製ガスG6において、窒素は1モルppm未満の濃度にまで除去されている。
【0079】
本実施形態のアルゴン精製方法では、前処理、PSA法およびTSA法を実行し、これによってアルゴンの高純度化を図るところ、高純度化されるアルゴン(精製ガスG6)を得るためのエネルギーを低減しつつ、高い回収率を達成しやすい。
【0080】
本方法の前処理においては、原料ガスG0中の一酸化炭素および水素がすべて酸素と反応しうるように必要に応じて原料ガスG0中の酸素モル濃度が調節されたうえで、反応器3にてルテニウム触媒を用いて原料ガスの転化反応(上述の反応式(1)、(2)で表す)が行われる。ルテニウム触媒は、一酸化炭素や水素を反応させる能力が他の白金系触媒などよりも優れており、原料ガスG0中に不純物として含まれる一酸化炭素および水素を完全に他の化合物に変成することができる。また、ルテニウム触媒によれば、反応温度が他の触媒と比べて低温でよく、このことは、加熱器2における原料ガスG0の加熱ためのエネルギーの低減に資する。
【0081】
本方法のPSA法においては、例えば吸着工程を終えた吸着塔11A(11B,11C)内のガスはアルゴン濃度が比較的に高い(準精製ガスG2と同程度)ところ、このようなアルゴン濃度の高いガスを、均圧工程において、脱着洗浄工程を経た他の吸着塔11B,11Cに導入することにより、吸着工程に備えるべく当該他の吸着塔11B,11Cの昇圧に供する。そのため、当該他の吸着塔11B,11Cに導入される上記アルゴン濃度の高いガスは、装置外に排出されずに後の吸着工程にて準精製ガスG2として取り出され、次のTSAガス分離工程に付される。したがって、本方法は、高純度アルゴンを高回収率で得るのに適している。
【0082】
また、本方法のPSA法において、均圧工程は、第1均圧工程と、第2均圧工程とを有する。例えば上記したステップ3,4(図3〜図5)を参照するとよく理解できるように、第1均圧工程では、吸着工程を経た吸着塔11Aにおいて均圧工程の開始から途中までアルゴン濃度の高いガスG3(第1ガス)を導出しつつ、当該第1ガスを吸着塔11Bに導入し、吸着塔11A,11Bの内部圧力を吸着圧力よりも低い第1圧力とする。第2均圧工程では、第1均圧(減圧)工程を終えた吸着塔11Aにおいてアルゴン濃度の高いガスG4(第2ガス)を導出しつつ、当該第2ガスを、脱着洗浄工程を終えた吸着塔11Cに導入し、吸着塔11B,11Cの内部圧力を、上記の第1圧力よりも低い第2圧力とする。これら第1均圧工程および第2均圧工程は、圧力差が比較的に少ない2つの吸着塔の間で行われ、第1均圧工程が行われる2つの吸着塔の組み合わせと、第2均圧工程が行われる2つの吸着塔の組み合わせとは異なる。このような第1均圧工程および第2均圧工程は、3塔以上の吸着塔を用いて行われるPSA法において、吸着塔間の圧力差に応じて生じるガス流れを工夫することにより実現可能であり、均圧工程において昇圧する吸着塔については、異なる他の2つの吸着塔から2段階でアルゴン濃度の高いガスG4,G3(第2ガスおよび第1ガス)が順次導入され、吸着圧力に比較的近い第1圧力まで昇圧される。その結果、アルゴン濃度の高いより多くのガスG4,G3(第2ガスおよび第1ガス)を、装置外に排出せずに準精製ガスG2として取り出すことができるので、アルゴンの回収率をより高めるうえで適している。
【0083】
本方法のPSA法においては、吸着塔11A,11B,11Cに充填される吸着剤(PSA吸着剤)として、カーボンモレキュラーシーブが用いられる。カーボンモレキュラーシーブは酸素の吸着能力に優れるので、PSA法によりガスG1(混合ガス)中の酸素をほぼ完全に除去することができ、後のTSA法において除去すべき不純物としては窒素だけでよい。すなわち、TSA法における吸着温度は、酸素を除去する場合は窒素を除去する場合に比べて極端に低温である必要があることころ、本方法ではTSA法にて除去すべき不純物が窒素だけであるため、TSAガス分離装置2での吸着工程における吸着剤(TSA吸着剤)の吸着温度を比較的に高い温度(−50〜−10℃)とすることができる。これにより、TSA法における不純物除去のための冷却エネルギーを低減することができる。
【0084】
また、本方法のTSA法においては、TSAガス分離装置20でのTSAサイクル時間を短縮化しやすい。本実施形態では、吸着剤の温度変動を伴うTSA法を実行するうえで、液状の冷媒M1および液状の熱媒M2を用いて吸着剤の温度変動を実現するからである。
【0085】
具体的には、TSA法における加熱脱着工程では、液状の熱媒M2を用いて吸着管21c内の吸着剤を加熱する。吸着剤が充填されている吸着管21cに液状の熱媒M2を接触させて、当該熱媒M2から吸着管21c内の吸着剤へと熱を供給することによって、吸着剤を加熱する。液状の熱媒M2は気体よりも比熱が相当程度に大きいので、TSA法において吸着剤を加熱するための媒体として気体を用いる場合よりも、本実施形態のように液状の熱媒M2を用いて吸着剤を加熱する場合の方が、吸着剤を所望の温度にまで早く昇温させることができる。これにより、短時間で加熱脱着工程を終了させることが可能である。加熱脱着工程時間の短縮化は、TSAサイクル時間の短縮化に資する。
【0086】
一方、冷却昇圧工程では、液状の冷媒M1を用いて吸着管21c内の吸着剤を冷却する。吸着剤が充填されている吸着管21cに液状の冷媒M1を接触させて、当該冷媒M1によって吸着管20c内の吸着剤から熱を奪うことによって、吸着剤を冷却する。液状の冷媒M1は気体よりも比熱が相当程度に大きいので、TSA法において吸着剤を冷却するための媒体として気体を用いる場合よりも、本実施形態のように液状の冷媒M1を用いて吸着剤を冷却する場合の方が、吸着剤を所望の温度にまで早く降温させることができる。これにより、短時間で冷却昇圧工程を終了させることが可能である。冷却昇圧工程時間の短縮化は、TSAサイクル時間の短縮化に資する。
【0087】
本実施形態のアルゴン精製方法において、TSAガス分離装置20での吸着工程における吸着剤の吸着温度は、上述のように−50℃以上である。このような構成は、本方法を簡便に実施し、本方法の実施のための装置に要するコストを抑制する観点から好ましい。低くとも−50℃の吸着温度を実現する程度に冷媒M1を冷却することは、比較的入手が容易な冷却機等によって実現可能だからである。
【0088】
次に、本発明に係るアルゴン精製方法の他の例について説明する。本実施形態のアルゴン精製方法は、PSA法における各吸着塔11A,11B,11Cで実行される工程(ステップ1〜9)について、上記実施形態で図3〜図5を参照して上述した方法と比べて一部変更が加えられたものである。
【0089】
図8は、図2を参照して上述したPSAガス分離装置10を用いて混合ガスからアルゴンが富化された準精製ガスを分離するために各吸着塔で行われる工程の他の例を示す。
【0090】
本実施形態のPSA法おいては、図8に示す態様で自動弁12a〜12c,13a〜13c,14a〜14c,15a〜15c,16a〜16c,17a〜17cを切り替えることにより、装置内において所望のガス流れ状態を実現し、例えば以下のステップ1〜9からなる1サイクルを繰り返すことができる。なお、図8では、各自動弁の開状態を○で表し且つ閉状態を×で表す。本実施形態の1サイクルにおいては、吸着塔11A,11B,11Cのそれぞれにて、吸着工程、第1均圧(減圧)工程、第2均圧(減圧)工程、脱着洗浄工程、回収工程、第2均圧(昇圧)工程、待機、および第1均圧(昇圧)工程が行われる。すなわち、上記実施形態の第1均圧工程と並行して行われていた脱着洗浄工程(ステップ3の吸着塔11C、ステップ6の吸着塔11A、およびステップ9の吸着塔11B)に代えて、回収工程を実行する。図9は、図8に示すステップ1〜9におけるPSAガス分離装置10でのガスの流れ状態を模式的に表したものである。図10は、図8に示すステップ1〜9における各吸着塔11A,11B,11Cの内部圧力の変化を表す。
【0091】
回収工程では、例えばステップ3の吸着塔11Cに着目すると分かるように、吸着塔11Cのガス通過口11a,11bのそれぞれに通じる分岐路12C,13C,14C,15C,16C,17Cに設けられた自動弁12c,13c,14c,15c,16c,17cがすべて閉じていることから、ガスの出入りが遮断されている。また、図9および図10を参照すると理解できるように、先のステップ2では脱着洗浄工程がなされ、回収工程の開始時には吸着塔11Cの内部圧力は低い状態にあるが、回収工程(ステップ3)では、図10に示すように、吸着塔11Cの内部圧力が若干上昇する。回収工程時の内部圧力の上昇は、吸着剤に吸着されていたアルゴンが脱着されたことによると考えられる。アルゴンは不純物ガス成分に比べて吸着容量が小さく、吸着剤に吸着される量(吸着容量)そのものは少ない。その一方、様々な内部圧力状態における種々のガス成分の吸着容量の関係から、アルゴンについては、酸素や二酸化炭素などの他のガス成分に比べて脱着し難く、内部圧力が十分に低い状態にあるときの方が脱着し易い。回収工程時に脱着したガス(主にアルゴン)は、後に行われる吸着工程において準精製ガスG2として取り出される。したがって、PSA法において回収工程を実行する本実施形態は、アルゴンの回収率をより高めるうえで適している。
【0092】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るアルゴンの精製方法および精製装置の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々に変更が可能である。例えば、PSAガス分離装置10やTSAガス分離装置20のガス流路をなすラインの構成については、上記実施形態とは異なる構成を採用してもよい。上記実施形態においてPSAガス分離装置やTSAガス分離装置から装置外へ排出していたガス(上記実施形態におけるガスG5やガスG7)を、装置外に排出せずに、例えば回収用ラインを介して、濃度調節装置に導入される前の原料ガスに合流させてもよい。かかる構成によれば、精製ガスにおけるアルゴン回収率を高めることができる。PSAガス分離装置の吸着塔数については上記実施形態で示した3塔式だけに限定されるものではなく、4塔以上の場合でも同様の効果が期待できる。また、PSAガス分離装置やTSAガス分離装置においてそれぞれ実行される複数工程からなるサイクルについても、上記実施形態とは異なる態様とすることができる。
【実施例】
【0093】
〔実施例1〕
本実施例では、図面を参照して上述したアルゴン精製装置Xを用いて原料ガスG0(アルゴンガス)の精製を行った。
【0094】
原料ガス導入端E1を通じてアルゴン精製装置Xに供給される原料ガスG0は、不純物として酸素を500モルppm、水素を20モルppm、一酸化炭素を1800モルppm、窒素を1000モルppm、二酸化炭素を20モルppm、水分を20モルppmそれぞれ含有するものを用いた。この原料ガスG0を標準状態で8.0L/minの流量で反応器3に導入し、さらに、その原料ガスG0に酸素を標準状態で7.28mL/minの流量で添加した。
【0095】
反応器3には、アルミナ担持のルテニウム触媒(商品名:RUA,ズードケミー触媒(株)製)を96mL充填し、反応器3内の反応条件については、温度を180℃、圧力を大気圧、空間速度を4500/hとした。反応器3から流出するガスG1(混合ガス)について、脱水機6により水分を除去し、吸着装置8(PSAガス分離装置10およびTSAガス分離装置20)により不純物を除去した。PSAガス分離装置10に導入されるガスG1における不純物の組成は、酸素が450モルppm、窒素が1000モルppm、水素が1モルppm未満、一酸化炭素が1モルppm未満、二酸化炭素が2000モルppm、水分が1モルppm未満であった。ガスG1の不純物の組成を図12の表に示した。
【0096】
PSAガス分離装置10は、吸着塔11A,11B,11Cを具備する3塔式とし、各吸着塔11A,11B,11Cには、PSA吸着剤として円柱状成形炭のカーボンモレキュラーシーブ(型番:GN−UC−H,クラレケミカル(株)製)を1L充填した。PSA法の操作条件は、吸着圧力を0.8MPaG、脱着圧力を10kPaG、サイクルタイムを80sec/塔とし、図8および図9に示されたステップからなるサイクルを繰り返した。すなわち、本実施例では、均圧工程については第1均圧工程および第2均圧工程を2段階で行い、第2均圧工程を5sec、第1均圧工程と並行して行われる回収工程を15sec実施した。
【0097】
PSAガス分離装置10から流出する準精製ガスG2の組成は、アルゴンが99.9モル%以上、酸素が1モルppm未満、窒素が220モルppm、一酸化炭素が1モルppm未満、二酸化炭素が0モルppm、水分が1モルppm未満であった。また、準精製ガスG2におけるアルゴン回収率(PSAガス分離装置10に導入されるガスG1における100%濃度換算アルゴンに対する、取得される準精製ガスG2における100%濃度換算アルゴンの割合)は、55%であった。なお、各ガス成分の濃度測定は、酸素濃度については、微量酸素濃度計(型番:DF−150E,DELTA F社製)を用いて行い、一酸化炭素濃度については、ガス分析計(型番:GC−FID,島津製作所(株)製)を用いてメタナイザーを介して行い、二酸化炭素濃度についてはガス分析計(型番:GC−TCD,島津製作所(株)製)を用いて行い、窒素濃度については、ガス分析計(型番:GC−PID,ジーエルサイエンス(株)製)を用いて行い、水分については露点計を用いて行った。
【0098】
TSAガス分離装置20は、吸着塔21A,21Bを具備する2塔式とし、各吸着塔21A,21Bには、TSA吸着剤としてCaX型ゼオライト(型番:SA−600A,東ソー(株)製)を1.5L充填した。TSA法の操作条件は、吸着圧力を0.8MPaG、吸着温度を−35℃、脱着圧力を0.1MPaG、脱着温度を40℃とした。TSAガス分離装置20から流出する精製ガスG6中の窒素濃度は1モルppm未満となった。実施例1の結果を図11の表に示した。
【0099】
〔実施例2〕
本実施例においては、原料ガスG0の供給態様が実施例1と異なっており、これにともない、PSA法で使用する吸着剤の充填量、PSA法の操作条件、およびTSA法で用いる吸着剤の充填量を実施例1と異ならせた。
【0100】
本実施例で原料ガス導入端E1を通じてアルゴン精製装置Xに供給される原料ガスG0は、不純物として酸素を6モル%、水素を20モルppm、一酸化炭素を1800モルppm、窒素を24モル%、二酸化炭素を20モルppm、水分を20モルppmそれぞれ含有するものを用いた。この原料ガスG0を標準状態で8.0L/minの流量で反応器3に導入した。なお、原料ガスG0は、アルゴン精製装置Xに向けて送り出される過程で空気が混入したものであり、酸素濃度および窒素濃度が実施例1に比べて相当に高い。このため、原料ガスG0が原料ガス導入端E1を介してアルゴン精製装置Xに導入される時点で一酸化炭素および水素をすべて二酸化炭素および水に変成させるのに十分な酸素濃度となっており、酸素の添加は不要であった。
【0101】
PSAガス分離装置10の各吸着塔11A,11B,11Cに充填するPSA吸着剤については、実施例1と同じものを使用したが、その充填量を4Lとした。PSA法の操作条件は、吸着圧力を0.8MPaG、脱着圧力を10kPaG、サイクルタイムを120sec/塔とし、均圧工程については、第2均圧工程を5sec、第1均圧工程と並行して行われる回収工程を30sec実施した。TSAガス分離装置20の各吸着塔21A,21Bに充填するTSA吸着剤については、実施例1と同じものを使用したが、その充填量を15Lとした。その他の条件は、実施例1と同様とした。準精製ガスG2の組成およびアルゴン回収率を図11の表に示した。なお、精製ガスG6中の窒素濃度は1モルppm未満となった。
【0102】
〔実施例3〕
本実施例においては、PSA法にて回収工程を行わない以外は実施例1と同様にして原料ガスの精製を行った。すなわち、本実施例では、図3および図4に示されたステップからなるサイクルを繰り返した。準精製ガスG2の組成が酸素濃度1モルppm未満もしくは窒素濃度220モルppmとなる操作条件でガス分離操作を行った場合のアルゴン回収率を図11の表に示した。なお、精製ガスG6中の窒素濃度は1モルppm未満となった。
【0103】
〔実施例4〕
本実施例においては、PSA法にて均圧工程を2段階ではなく1段階とした以外は実施例1と同様にして原料ガスの精製を行った。均圧工程を1段階とする本実施例では、図8および図9に示されたステップのうちステップ3,6,9が省略されるとともに、ステップ2,5,8における脱着洗浄工程を回収工程に置き換えたステップからなるサイクルを繰り返した。準精製ガスG2の組成が酸素濃度1モルppm未満もしくは窒素濃度220モルppmとなる操作条件でガス分離操作を行った場合のアルゴン回収率を図11の表に示した。なお、精製ガスG6中の窒素濃度は1モルppm未満となった。
【0104】
〔実施例5〕
本実施例においては、PSA法にて均圧工程を2段階ではなく1段階とし、且つ、回収工程を行わない以外は実施例1と同様にして原料ガスの精製を行った。本実施例では、図3および図4に示されたステップのうちステップ3,6,9が省略されたステップからなるサイクルを繰り返した。準精製ガスG2の組成が酸素濃度1モルppm未満もしくは窒素濃度220モルppmとなる操作条件でガス分離操作を行った場合のアルゴン回収率を図11の表に示した。なお、精製ガスG6中の窒素濃度は1モルppm未満となった。
【0105】
〔比較例1〕
本比較例においては、反応器3に充填する触媒を上記の実施例1と異ならせた。本比較例では、反応器3には、アルミナ担持のプラチナ触媒(商品名:DASH−220触媒,エヌ・イー ケムキャット(株)製)を96mL充填し、反応器3内の反応条件については、温度を180℃、圧力を大気圧、空間速度を4500/hとした。その他の条件は実施例1と同様にして原料ガスの精製を行った。PSAガス分離装置10に導入されるガスG1(反応器3および脱水機6を経たガス)の不純物の組成は、酸素が950モルppm、窒素が1000モルppm、水素が2モルppm未満、一酸化炭素が1410モルppm、二酸化炭素が560モルppm、水分が1モルppm未満であった。ガスG1の不純物の組成を図12の表に示した。本比較例では、PSA法を経た準精製ガスG2中の一酸化炭素濃度(200モルppm)も高かった。また、TSA法によるガス分離では、準精製ガスG2中の一酸化炭素が窒素よりも優先的に吸着され、吸着された当該一酸化炭素が脱着し難い。そのため、窒素の吸着除去量が実質的に減少し、TSA法を経て最終的に得られた精製ガスG6については、窒素が5モルppm、一酸化炭素が1モルppm残存しており、高純度のアルゴンを得ることができなかった。
【0106】
〔比較例2〕
本比較例においては、反応器3内の温度を300℃とした以外は比較例1と同様にして原料ガスの精製を行った。PSAガス分離装置10に導入されるガスG1の不純物の組成を図12の表に示した。本比較例における準精製ガスG2および精製ガスG6のガス組成は、実施例1におけるものと同等であった。本比較例では、反応器3内の温度を300℃と高温にする必要があるので、加熱器2における原料ガスの加熱に要するエネルギーが実施例の場合と比べてかなり大きかった。
【0107】
〔比較例3〕
本比較例においては、PSA法にて均圧工程を行わず、且つ、回収工程を行わない以外は実施例1と同様にして原料ガスの精製を行った。準精製ガスG2の組成が酸素濃度1モルppm未満もしくは窒素濃度220モルppmとなる操作条件でガス分離操作を行った場合のアルゴン回収率を図11の表に示した。なお、精製ガスG6中の窒素濃度は1モルppm未満となった。
【0108】
本発明の実施例1〜5によれば、不純物がほぼ完全に除去された高純度のアルゴン(精製ガス)を取得することができる。このことは、ルテニウム触媒を用いた前処理を実施することにより、不純物たる一酸化炭素および水素がほぼ完全に二酸化炭素および水に変化し(一部はメタンに変化する場合もある)、不純物たる一酸化炭素および水素が実質的に除去されたことによると考えられる。また、図11に示された表の実施例1〜5および比較例3を、それぞれ対比すると理解できるように、PSA法において均圧工程を実施する場合は、均圧工程を実施しない場合と比べてアルゴンの回収率が高かった。均圧工程は1段よりも2段の方がアルゴン回収率が高く、また、PSA法にて回収工程を実施する場合は実施しない場合よりもアルゴン回収率が高かった。さらに、図12の表の比較例1に示すように、前処理においてルテニウム触媒の代わりにプラチナ触媒を用いた場合(反応器3内の温度は180℃)には、取得ガスにおけるアルゴンの純度はあまり高くなかった。このことは、前処理において一酸化炭素および水素が酸素と十分に反応しておらず、前処理後のガスに一酸化炭素や水素(特に一酸化炭素)が比較的に高い濃度で残存したことによると考えられる。
【符号の説明】
【0109】
X アルゴン精製装置
1 濃度調節装置
2 加熱器
3 反応器
4 冷却器
5 圧縮機
6 脱水機
7 ライン
8 吸着装置
10 PSAガス分離装置
11A,11B,11C 吸着塔(PSA吸着塔)
12 ライン
13 オフガスライン
14 下部均圧ライン
15 準精製ガスライン
16 洗浄ライン
17 上部均圧ライン
20 TSAガス分離装置
21A,21B 吸着塔(TSA吸着塔)
21a ガス通過口(第1ガス通過口)
21b ガス通過口(第2ガス通過口)
21c 吸着管
22a〜22e ライン
23C 冷媒タンク
23F 熱媒タンク
24a〜24h ライン
30 精製ガス取出しライン
40 オフガスライン
M1 冷媒
M2 熱媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸素、一酸化炭素、水素および窒素を不純物として含むアルゴンガスからアルゴンを濃縮精製する方法であって、
上記アルゴンガスをルテニウム触媒に接触させて当該アルゴンガスに含まれる一酸化炭素および水素を酸素と反応させることにより、二酸化炭素および水に変化させて当該一酸化炭素および水素を実質的に除去する前処理工程と、
PSA吸着剤が充填された3塔以上のPSA吸着塔を用いて行う圧力変動吸着法により、上記PSA吸着塔が相対的に高圧である状態にて、当該PSA吸着塔に、上記前処理工程を経て一酸化炭素および水素が除去された混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を上記PSA吸着剤に吸着させ、当該PSA吸着塔からアルゴンが富化された準精製ガスを導出するPSA吸着工程、上記PSA吸着塔を減圧して上記PSA吸着剤から不純物を脱着させ、当該PSA吸着塔からガスを導出する脱着工程、上記PSA吸着塔に洗浄ガスを導入しつつ当該PSA吸着塔からガスを導出する洗浄工程、および、上記吸着工程を経たPSA吸着塔の内部圧力および上記洗浄工程を経たPSA吸着塔の内部圧力を均圧化するための均圧工程、を含むサイクルを繰り返し行う圧力変動式ガス分離工程と、
TSA吸着剤が充填されたTSA吸着塔を用いて行う温度変動吸着法により、上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤が低温の吸着温度にて、当該TSA吸着塔に上記準精製ガスを導入して当該準精製ガス中の不純物を上記TSA吸着剤に吸着させ、当該TSA吸着塔から、上記準精製ガスよりもアルゴンが富化された精製ガスを導出するTSA吸着工程、および上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤を高温の温度へと昇温させつつ当該TSA吸着剤から不純物を脱着させて当該TSA吸着塔からオフガスを導出することにより当該TSA吸着剤を再生する再生工程、を含むサイクルを繰り返し行う温度変動吸着式ガス分離工程と、を含む、アルゴン精製方法。
【請求項2】
上記前処理が施される前の上記混合ガスは、当該混合ガスにおける酸素モル濃度が一酸化炭素モル濃度と水素モル濃度との和の1/2を超えるように調節される、請求項1に記載のアルゴン精製方法。
【請求項3】
上記圧力変動式ガス分離工程における上記均圧工程は、当該均圧工程の開始から途中までにおいて上記吸着工程を経たPSA吸着塔から第1ガスを導出して当該PSA吸着塔の内部圧力を吸着圧力より低い第1圧力とする第1均圧工程と、当該PSA吸着塔から第2ガスを導出して当該PSA吸着塔の内部圧力を上記第1圧力よりも低い第2圧力とする、上記第1均圧工程の後の第2均圧工程とを含み、
上記第2均圧工程では、上記洗浄工程を経たPSA吸着塔に上記第2ガスを導入して当該PSA吸着塔の内部圧力を上記第2圧力まで昇圧し、
上記第1均圧工程では、上記第2均圧工程を経て内部圧力が上記第2圧力まで昇圧されたPSA吸着塔に上記第1ガスを導入して当該PSA吸着塔の内部圧力を上記第1圧力まで昇圧する、請求項1または2に記載のアルゴン精製方法。
【請求項4】
上記洗浄工程の後で且つ上記第2均圧工程の前に行われ、上記洗浄工程を経て相対的に低圧である状態のPSA吸着塔に対するガスの出入りを遮断することにより、当該PSA吸着塔内の上記PSA吸着剤からガスを脱着させて当該ガスを回収するための回収工程をさらに備える、請求項3に記載のアルゴン精製方法。
【請求項5】
上記PSA吸着剤は、カーボンモレキュラーシーブを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のアルゴン精製方法。
【請求項6】
上記TSA吸着塔は、その内部に上記TSA吸着剤が充填された吸着管を備え、
上記TSA吸着工程では、液状冷媒を上記TSA吸着塔内に通流させることにより、上記TSA吸着剤を冷却し、
上記再生工程では、液状熱媒を上記TSA吸着塔内に通流させることにより、上記TSA吸着剤を加熱する、請求項1ないし5のいずれかに記載のアルゴン精製方法。
【請求項7】
上記TSA吸着工程における上記吸着温度は、−50〜−10℃である、請求項1ないし6のいずれかに記載のアルゴン精製方法。
【請求項8】
少なくとも酸素、一酸化炭素、水素および窒素を不純物として含むアルゴンガスからアルゴンを濃縮精製するための装置であって、
上記アルゴンガスをルテニウム触媒に接触させて当該アルゴンガスに含まれる一酸化炭素および水素を酸素と反応させるための前処理装置と、
PSA吸着剤が充填された3塔以上のPSA吸着塔を用いて行う圧力変動吸着法により、上記PSA吸着塔が相対的に高圧である状態にて、当該PSA吸着塔に、上記前処理工程を経て一酸化炭素および水素が除去された混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を上記PSA吸着剤に吸着させ、当該PSA吸着塔からアルゴンが富化された準精製ガスを導出するPSA吸着工程、上記PSA吸着塔を減圧して上記PSA吸着剤から不純物を脱着させ、当該PSA吸着塔からガスを導出する脱着工程、上記PSA吸着塔に洗浄ガスを導入しつつ当該PSA吸着塔からガスを導出する洗浄工程、および、上記吸着工程を経たPSA吸着塔の内部圧力および上記洗浄工程を経たPSA吸着塔の内部圧力を均圧化するための均圧工程、を含むサイクルを繰り返し行うように構成された圧力変動吸着式ガス分離装置と、
TSA吸着剤が充填されたTSA吸着塔を用いて行う温度変動吸着法により、上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤が低温の吸着温度にある状態にて、当該TSA吸着塔に上記準精製ガスを導入して当該準精製ガス中の不純物を上記TSA吸着剤に吸着させ、当該TSA吸着塔から、上記準精製ガスよりもアルゴンが富化された精製ガスを導出するTSA吸着工程、および上記TSA吸着塔内の上記TSA吸着剤を高温の温度へと昇温させつつ当該TSA吸着剤から不純物を脱着させて当該TSA吸着塔からオフガスを導出することにより当該TSA吸着剤を再生する再生工程、を含むサイクルを繰り返し行うように構成された温度変動吸着式ガス分離装置と、を備える、アルゴン精製装置。
【請求項9】
上記TSA吸着塔は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し、当該第1および第2ガス通過口と連通し且つ上記TSA吸着剤が充填された吸着管を備え、
上記温度変動吸着式ガス分離装置は、
上記吸着管内の上記TSA吸着剤を冷却するために上記TSA吸着塔に供給される液状冷媒を保持するための冷媒貯槽と、
上記吸着管内の上記TSA吸着剤を加熱するために前記TSA吸着塔に供給される液状熱媒を保持するための熱媒貯槽と、
上記冷媒貯槽から上記TSA吸着塔に上記冷媒を供給するための第1の冷媒ラインと、
上記TSA吸着塔から上記冷媒貯槽に上記冷媒を戻すための第2の冷媒ラインと、
上記熱媒貯槽から上記TSA吸着塔に上記熱媒を供給するための第1の熱媒ラインと、
上記TSA吸着塔から上記熱媒貯槽に上記熱媒を戻すための第2の熱媒ラインと、を備える、請求項8に記載のアルゴン精製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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