アルツハイマー病の治療のための化合物および方法
(i)哺乳類からの肺サーファクタントタンパク質C前駆物質(CTproSP-C、「CTC」)のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質; および(ii)哺乳類からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;からなる群より選択された単離されたタンパク質が、ヒトを含む哺乳におけるアルツハイマーの治療のために開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は医薬の分野に関する。更に具体的には、本発明は、ヒトなどの哺乳類におけるアルツハイマー病の治療および薬物療法のための薬物に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
アルツハイマー病は、ヒトにおける認知症の最も一般的な原因の1つである。それは、アミロイドβ-ペプチド (Aβ-ペプチド)の細胞外沈着からなるアミロイドプラークの存在により特徴付けられる、罹患した個体の脳における神経細胞変性に関連する慢性的かつ致命的な疾患である。Aβ凝集に起因する神経細胞萎縮は、アセチルコリンおよび他の情報伝達物質の欠乏を生じる。40-42アミノ酸残基を有するAβ-ペプチドはアミロイド前駆物質タンパク質 (APP)のプロセッシングによって生成されることが知られており、アミロイド前駆物質タンパク質は中枢神経系のニューロンにより正常に発現される膜タンパク質であるが、このプロセッシングの理由は完全には理解されていない。放出されたAβ ペプチドは、APP (Aβ 残基 29-40/42)の膜貫通領域の一部を含み、かつ不一致のヘリックス、すなわちβ-ストランドを形成する高い性向を有するアミノ酸から構成されるヘリックスを含む。Aβは、その安定化している膜環境から外れると、誤った折り畳みおよび凝集を起こしやすい。
【0003】
アルツハイマー病の治療に対する現在の治療的なアプローチは、主に症状を治療することに向けられ、且つコリン作動性交換療法、例えば、アセチルコリンエステラーゼの阻害、可溶性Aβオリゴマーと相互作用する低分子量阻害剤、および既に形成されたβシート構造の伸長を妨げる、所謂、βシートブレーカーなどを含む。
【0004】
凝集を妨げるために示唆されるもう1つの戦略は、シャペロンと機能的に定義される分子を利用することである。シャペロンは、複雑な細胞内環境においてタンパク質の正確な折り畳みを助けることにより重要な役割を演じている。多くの分子的シャペロン、例えば、ヒートショックタンパク質(Hsp)が折り畳み過程において重要であることが知られており、広範に研究されている。これらのシャペロンの幾つかも明らかにあるポリペプチドのアミロイドフィブリルと相互作用し、影響を与え得る。Aβ1-42 の凝集は、Hsp90または組み合わせHsp70/Hsp40により阻害される(CG Evans et al, J Biol Chem 281: 33182-33191, 2006)。更に、細胞外シャペロンクラスタリン(アポリポタンパク質 J)は、Aβを含む多くのポリペプチド(E Matsubara et al, Biochem J 316(Pt 2): 671-679, 1996)およびプリオンタンパク質のフラグメント(S McHattie and N Edington, Biochem Biophys Res Commun 259: 336-340, 1999)のフィブリル形成を阻害することが示されている。構造的に多様なシャペロンのアミロイド疾患の抑制における役割は、証明されておらず、幾つかの報告さえも、タンパク質シャペロンがアミロイドフィブリル形成を促進することを示す(例えば、SK DebBurman et al. Proc Nat Acad Sci USA 94: 13938-13943, 1997を参照)。分子的シャペロンに加えて、化学的および薬理学的シャペロンの効果が誤った折り畳み疾患との関連で研究されている。シャペロンまたは他の手段を使用する如何なる有効な療法も、今までのところ、何れのアミロイド疾患についても見出されていない。
【0005】
Aβペプチドに対するモノクローナル抗体は、神経毒性のフィブリルへの凝集を妨げ、既に形成されたアミロイドを溶解する。しかしながら、抗体療法は、非常に効果であり、多様に重篤な副作用を付随する。アルツハイマー病の遺伝子組換えマウスモデルにおけるβ-アミロイドでのワクチン接種は、アミロイドプラークの数と全体的なアミロイド量の有意な減少と、認識能力におけるある程度の改善さえも示す。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、Aβ-ペプチドのアミロイドフィブリルへの凝集を減少することである。
【0007】
また本発明の目的は、哺乳類の脳におけるAβ-ペプチドの細胞外沈着からなるアミロイドプラークの形成を減少することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療のための新しい治療の選択肢を提供することである。
【0009】
以下の記述から明白であろうこれらの目的および他の目的のために、本発明は、(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質C前駆物質(CTproSP-C)のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;および(ii) ヒト(配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;
からなる群より選択される、薬物として使用するための単離タンパク質を提供する。
【0010】
驚くべきことに、この単離されたタンパク質が、アミロイドフィブリル形成の減少およびAβ-ペプチドの凝集の減少する能力を有することが見出された。これは、特に、CTproSP-Cシャペロン活性とアルツハイマー病に関連するAβ-ペプチドのための内因性のターゲット(SP-CおよびproSP-C)の間の構造的な相違の観点において驚くべきことである。また、proSP-C遺伝子が肺組織においてのみ発現することからも非常に驚くべきことである。本発明は、ここにおいて開示される、CTproSP-Cの基質特異性についての驚くべき洞察に基づくものであり、これは従来においては知られていなかった。
【0011】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(a) 哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの全ての保存された残基(配列番号18)、および(b1) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性;または(b2) ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性;を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号18)は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)の以下の全ての保存された残基を含む:Phe-1、Gly-4、Ser-5、Thr-6、Gly-7、Val-9、Asp-12、Tyr-13、Gln-14、Leu-16、Leu-17、Ala-19、Tyr-20、Lys-21、Pro-22、Ala-23、Pro-24、Gly-25、Thr-26、Cys-28、Tyr-29、Met-31、Lys-32、Ala-34、Pro-35、Ile-38、Pro-39、Ser-40、Leu-41、Glu-42、Ala-43、Arg-46、Lys-47、Gln-70、Gly-73、Gly-77、Ser-81、Phe-87、Leu-88、Gly-89、Val-92、Thr-94、Leu-95、Cys-96、Gly-97、Glu-98、Pro-100、Leu-101およびTyr-103。
【0012】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(a) 哺乳類のCTproSP-C (配列番号11)の全ての保存された残基、および(b) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-Cの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号11)は、ヒト CTproSP-C (配列番号2)の以下の全ての保存された残基を含む;His-1、Met-2、Ser-3、Gln-4、Lys-5、His-6、Thr-7、Glu-8、Met-9、Val-10、Leu-11、Glu-12、Met-13、Ser-14、Pro-18、Glu-19、Gln-21、Leu-24、Ala-25、Thr-32、Ala-34、Thr-35、Phe-36、Gly-39、Ser-40、Thr-41、Gly-42、Val-44、Asp-47、Tyr-48、Gln-49、Leu-51、Leu-52、Ala-54、Tyr-55、Lys-56、Pro-57、Ala-58、Pro-59、Gly-60、Thr-61、Cys-63、Tyr-64、Met-66、Lys-67、Ala-69、Pro-70、Ile-73、Pro-74、Ser-75、Leu-76、Glu-77、Ala-78、Arg-81、Lys-82、Gln-105、Gly-108、Gly-112、Ser-116、Phe-122、Leu-123、Gly-124、Val-127、Thr-129、Leu-130、Cys-131、Gly-132、Glu-133、Pro-135、Leu-136 and Tyr-138。
【0013】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(i) ヒト CTproSP-C (配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および(ii) ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される。
【0014】
ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、500または500未満、例えば、250または250未満、例えば、200または200未満、例えば、150または150未満のアミノ酸残基からなる。ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、consists of 90または90以上の、例えば、100または100以上の、例えば、150アミノ酸残基または150以上のアミノ酸残基からなる。好ましい大きさの範囲は、90〜200アミノ酸残基、例えば、100〜150アミノ酸残基である。
【0015】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-C、および(ii) ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメイン、からなる群より選択される。
【0016】
特定の態様において、単離されたタンパク質は、
ヒト CTproSP-C (配列番号2)、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)、および配列番号21を有するヒトからのCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメインからなる群より選択される。配列番号21を有する伸長されたBrichosドメインの利点は、Brichosドメインよりもより安定性であり、一方で、Brichosドメインおよび伸長されたBrichosドメインの両方ともが全長CTproSP-C タンパク質と同じ機能を有する。ある態様において、単離されたタンパク質は、ヒト CTproSP-C (配列番号2)である。もう1つの態様において、単離されたタンパク質は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)である。
【0017】
1つの態様において、当該ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188対応する位置はグルタミンではない。更なる態様において、ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188対応する位置は厳密に保存される。
【0018】
1つの態様に従うと、単離されたタンパク質は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療における使用に適している。
【0019】
1つの態様に従うと、本発明は、予防的、対症および治療的療法からなる群より選択される治療を提供する。
【0020】
もう1つの側面に従うと、本発明は、治療学的に有効量の本発明に従う単離されたタンパク質およびそのために適切な薬学的担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
1つの態様に従うと、薬学的組成物は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療において有用である。
【0022】
1つの側面に従うと、本発明は、治療学的に有効量の本発明に従う単離されたタンパク質または本発明に従う薬学的組成物を、それを必要とするヒトを含む哺乳類に対して投与することを含む前記哺乳類おけるアルツハイマー病を治療する方法を提供する。
【0023】
1つの態様に従うと、本発明は、予防的、対症および治療的療法からなる群より選択される治療を提供する。
【0024】
もう1つの側面に従うと、本発明は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療のための薬物の製造ために本発明に従う単離タンパク質の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、既知の哺乳類のCTproSP-Cアミノ酸配列(配列番号2、5-11)のproSP-Cプロセッシングおよびアラインメントの概略図を示す。
【図2】図2は、セルロース膜上のSP-C誘導ペプチドスポットへのCTproSP-CBrichosおよびCtproSP-Cの結合を示す。
【図3】図3は、セルロース膜上のペプチドスポットへのCTproSP-Cの結合、Aβ ペプチド試料のSDS-PAGEおよびAβ ペプチド試料の透過電子顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、Aβペプチド試料の透過電子顕微鏡写真を示す。
【図5】図5は、CTproSP-Cを伴ってまたは伴わないでインキュベートされた可溶性AβペプチドフラクションのSDS-PAGEを示す。
【図6】図6は、Aβ ペプチド単独、またはCTproSP-Cの存在でのAβ ペプチドについてのMALDI-MSグラフを示す図である。
【図7】図7は、抗体4G8またはS-タンパク質でプローブ化されたAβおよびAβ+CTproSP-CのSECフラクションのイムノブロット法分析を示す。
【図8】図8は、重炭酸アンモニウムバッファ中でAβと混合されたCTproSP-Cのナノ−スプレーESI-MSスペクトルを示す。
【図9】図9は、CTproSP-CおよびCTproSP-CとAβとの混合物のナノ−スプレーESI-MSスペクトルを、前記混合物のMS/MSスペクトルと共に示す。
【図10】図10は、ADHの熱誘導性凝集とCTproSP-C の等モル量の不在および存在でのインスリンの還元誘導性凝集を示す。
【図11】図11は、CTproSP-Cまたは切断されたCtproSP-Cに対するターゲットペプチドの相対的な結合をターゲットペプチド濃度の関数として示す。
【図12】図12は、CTproSP-Cを伴うおよび伴わないAβ(1-40)およびβ(1-42)についての経時的な217 nmでのCD信号の大きさを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[添付配列の一覧]
配列番号1 ヒト proSP-C
配列番号2 ヒト CTproSP-C
配列番号3 ヒト SP-C
配列番号4 ヒト CTproSP-CBrichos
配列番号5 ウシ CTproSP-C
配列番号6 アカゲザル CTproSP-C
配列番号7 マウス CTproSP-C
配列番号8 ミンク CTproSP-C
配列番号9 ウサギ CTproSP-C
配列番号10 ラット CTproSP-C
配列番号11 保存された哺乳動物 CTproSP-C
配列番号12 ウシ CTproSP-CBrichos
配列番号13 アカゲザル CTproSP-CBrichos
配列番号14 マウス CTproSP-CBrichos
配列番号15 ミンク CTproSP-CBrichos
配列番号16 ウサギ CTproSP-CBrichos
配列番号17 ラット CTproSP-CBrichos
配列番号18 保存された哺乳動物 CTproSP-CBrichos
配列番号19 ヒト Aβ ペプチド1-40
配列番号20 S-tagged ヒト CTproSP-C
配列番号21 ヒト CTproSP-CBrichos 86-197
[発明の詳細な説明]
驚くべきことに、CTproSP-C (「CTC」としても知られる)、哺乳類の CTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質が、アミロイドフィブリル形成およびAβペプチドの凝集を減少する能力を有することが見出された。
【0027】
最初の側面に従うと、本発明は、
(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質 (CTproSP-C)のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
(ii)ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される、薬物として使用するための単離タンパク質を提供する。
【0028】
本明細書および付属する特許請求の範囲を通じて使用されるとき、用語「%同一性」は、以下の通りに算出される。照会配列は、CLUSTAL W アルゴリズム(Thompson, J.D., Higgins, D.G. and Gibson, T.J., Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680 (1994))を使用してターゲット配列に対して整列される。比較が、整列された配列の最短に対応する窓に亘り行われる。各位置のアミノ酸残基が比較され、ターゲット配列における同一の対応を有する照会配列における位置のパーセンテージが%同一性として報告される。
【0029】
本明細書および付属する特許請求の範囲に亘って使用されるとき、用語「%類似性」は、疎水性残基、Ala、Val、Phe、Pro、Leu、Ile、Trp、MetおよびCysが類似する;塩基性残基Lys、ArgおよびHisが類似する;酸性残基GluおよびAspが類似する;親水性、無電荷残基Gln、Asn、Ser、ThrおよびTyrが類似するという例外を伴って、「% 同一性」について記載された通りに算出される。残りの天然アミノ酸Glyは、これに関連して何れの他のアミノ酸とも類似しない。
【0030】
この説明に亘って本発明に従う代替的な態様は、同一性の特定のパーセンテージに変わり、対応する類似性のパーセンテージを実現する。他の代替的な態様は、同一性の特定のパーセンテージ、並びに、もう1つの、各配列についての同一性の好ましいパーセンテージの群より選択された、より高いパーセンテージの類似性を実現する。例えば、単離されたタンパク質配列は、もう1つのタンパク質配列に対して70%類似性であってよく;または、それはもう1つの配列に対して70%同一性であってもよく;またはそれはもう1つの配列に対して70%同一性であり、更にその上90%類似性であってもよい。
【0031】
肺サーファクタントタンパク質 C (SP-C;配列番号3)は、35アミノ酸残基を有する疎水性、アシル化された膜貫通ペプチドである。それは197アミノ酸残基(191 aa 変異体がヒトを含む若干の種において存在する)のプロタンパク質、肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質 (proSP-C; 配列番号1)として合成される。ProSP-Cは、肺胞型II上皮細胞においてのみ発現され、小胞体(ER)膜タンパク質内に、そのC末端がERルーメン内に固定される。ProSP-Cは、蛋白分解性の切断を受け(図1Aを参照)、成熟したSP-Cペプチドは、ヒトproSP-Cの残基24-58に対応する。SP-Cと他のタンパク質および脂質成分は、肺胞に分泌され、気液界面での表面張力を低下する原因になり、それによって、呼気の終わりの肺胞圧潰を防ぐ。図1Aにおいて更に説明される通り、proSP-Cのプロセッシングは、C末端フラグメント、肺サーファクタントタンパク質C前駆物質(CTproSP-C;配列番号2、5-10;図1B)のC末端ドメンインを生成する。成熟したCTproSP-Cタンパク質は、ヒト proSP-Cの残基59-197に対応する。
【0032】
ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、500未満または500、例えば、250未満または250、例えば、200未満または200、例えば、150未満または150のアミノ酸残基からなる。ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、90または90以上、例えば、100または100以上、例えば、150または150以上のアミノ酸残基からなる。好ましい大きさの範囲は、90〜200アミノ酸残基、例えば、100〜150アミノ酸残基である。
【0033】
SP-C (配列番号3)、および従ってproSP-C (配列番号1)はまた、これはβストランドを形成する高い性向を有するバリン、イソロイシンおよびロイシン(「ポリVal領域」)からなる膜貫通(TM)α-へリックス(残基9-34に対応する)を含む。それは良好に保存され、公知の相同なタンパク質を欠く。不調和なSP-Cへリックスは、従って、溶液中で準安定であり、自然発生的にβシート凝集およびアミロイドフィブリルに変換する。SP-Cフィブリルは、肺胞タンパク症(PAP)患者の肺胞において観察されるが、正常な対照において観察されない。
【0034】
更に、CTproSP-C (配列番号2)、および従って、proSP-C (配列番号1)は、Brichosドメイン (CTproSP-CBrichos; 配列番号4)として公知のドメインを含み、ヒトproSP-Cの残基94-197(配列番号1)に対応する。Brichosドメインは約100アミノ酸を含み、退行性および増殖性疾患に関連する幾つかのタンパク質において見出され、例えば、アミロイド形成および家族性ブリティッシュおよびデンマーク認知症に関連するBri、並びに、胃癌に関連するCA11において見出される。また、Brichosドメインにおける突然変異体、proSP-Cミスホールディングおよび細胞内凝集が、肺疾患と関連することも知られている。エクソンの欠失を有するproSP-C(proSP-CΔExon4)の発現の増加は、C末端短縮化プロタンパク質を生成し、遺伝子組み換えマウスにおける肺異常形態発生および形質移入された細胞におけるERストレスを引き起こす。Brichosドメインにおけるもう1つの突然変異体は、プロタンパク質における位置188でのロイシンについてのグルタミンの置換を引き起こし、これは優勢遺伝性の間質性肺疾患に関連する。肺由来A549細胞またはヒト胚腎(HEK)293 細胞におけるBrichos突然変異体proSP-CΔExon4またはproSP-CL188Qの発現は、不溶性の凝集の形成を増加し、これはアポトーシスを引き起こす。これに対して、Brichosドメインと膜貫通ドメイン (SP-C)との間の領域に位置する2つの他の突然変異体、proSP-CI73TおよびproSP-CE66Kは、細胞内輸送の変化と関連するが、凝集とは関連しない。従って、proSP-CおよびCTproSP-CのBrichosドメインは、(pro)SP-C凝集の防止に関係する。1つの態様において、ヒト proSP-Cにおけるロイシン188に対応する位置はグルタミンではない。更なる態様において、ヒト proSP-Cにおけるロイシン188に対応する位置は厳密に保存される。明らかに、ヒト proSP-Cにおけるロイシン188に対応する位置は、CTproSP-C (ヒトにおけるロイシン130)およびCTproSP-CBrichos (ヒトにおけるロイシン95)並びに若干の他の種において異なる番号を有し、図1B並びに配列番号1-2および4-18を参照されたい。
【0035】
CTproSP-Cは、非へリックスSP-Cのポリバリン部分に対して結合し、この結合は、混合性CTproSP-C/SP-C系のヘリックス含量を増加する結果を導く。特に、組換えヒトCTproSP-Cの完全長非ヘリックスSP-Cへの結合が、SP-Cのαヘリックス形成を導く。
【0036】
組換えヒト CTproSP-CのSP-Cへの結合は、CTproSP-C Brichosドメイン(ヒト proSP-C94-197;配列番号4) および疎水性残基(Val、Leu、Ile)を含むSP-C「poly-Val」領域(SP-C13-35)において見出されるモチーフの結合を介して生じる。
【0037】
ProSP-Cはまた、他の哺乳類種においても発現され、対応するSP-CおよびCTproSP-C切断産物が提供される。ウシ、アカゲザル、マウス、ミンク、ウサギおよびラットからの対応するCTproSP-Cアミノ酸配列を配列番号3-8に示す。(70%同一性よりも大きい)それらの高度な保存は、天然環境においてSP-CとproSP-Cとの安定化に関わる、ヒト CTproSP-Cと共通する機能に関係するが、ここにおいて開示されるように、Aβタンパク質の安定化を含む。ここで示されたように、CTproSP-Cのこれらの2つの機能は、構造上の関連があり、本発明は、従って、何れかの哺乳類のCTproSP-C、特に、ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して、好ましくはヒトからのCTproSP-C(ヒト proSP-C59-197;配列番号2)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。
【0038】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号2、5-10)の高度な保存は、図1Bから明らかであり、図1Bは、公知の哺乳類種間で厳密に保存されたアミノ酸残基を示す(「ストリクト(Strict)」; 配列番号11)。これらのアミノ酸残基の保存は、CTproSP-Cにおけるこれらのアミノ酸残基の機能と関連する。好ましい態様において、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基は、保存されたアミノ酸残基と同一であり、即ち、単離されたタンパク質は、配列番号11の定義されたアミノ酸残基を含む。即ち、あるCTproSP-Cに対する全体的な同一性/類似性の度合いに加えて、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基が、この態様における保存されたアミノ酸残基と一致している。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-Cの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号11)は、全て以下のヒト CTproSP-C(配列番号2)の保存された残基を含むことを示す:His-1、Met-2、Ser-3、Gln-4、Lys-5、His-6、Thr-7、Glu-8、Met-9、Val-10、Leu-11、Glu-12、Met-13、Ser-14、Pro-18、Glu-19、Gln-21、Leu-24、Ala-25、Thr-32、Ala-34、Thr-35、Phe-36、Gly-39、Ser-40、Thr-41、Gly-42、Val-44、Asp-47、Tyr-48、Gln-49、Leu-51、Leu-52、Ala-54、Tyr-55、Lys-56、Pro-57、Ala-58、Pro-59、Gly-60、Thr-61、Cys-63、Tyr-64、Met-66、Lys-67、Ala-69、Pro-70、Ile-73、Pro-74、Ser-75、Leu-76、Glu-77、Ala-78、Arg-81、Lys-82、Gln-105、Gly-108、Gly-112、Ser-116、Phe-122、Leu-123、Gly-124、Val-127、Thr-129、Leu-130、Cys-131、Gly-132、Glu-133、Pro-135、Leu-136 and Tyr-138。
【0039】
図1Bのアラインメントからのもう1つの知見は、保存された哺乳動物配列は個々の哺乳類種の配列に関するギャップを含むことである。従って、例えば、ヒト CTproSP-Cに対する単離されたタンパク質のアラインメントは、例えば、0〜5のギャップまたは0〜3のギャップなどの幾つかのギャップを含んでよいことが認識される。ヒトCTproSP-Cにおいて、残基88-93、101-103および115は、ある哺乳類種において喪失しており、一方で、1または1以上の哺乳類種は、ヒトCTproSP-Cの残基16-17および115-116の間に更なる残基を有する。
【0040】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のCTproSP-Cタンパク質、特にヒト(配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cタンパク質、特にヒト(ヒト proSP-C59-197;配列番号2)からのCTproSP-Cであるタンパク質を含む。表記「CTproSP-C」は、一般に何れかの哺乳類のCTproSP-C、好ましくはヒトCTproSP-Cをいう。
【0041】
更に、CTproSP-CのBrichosドメインは、完全長CTproSP-Cと同じ結合能力を有する従って、本発明は、哺乳類のBrichosドメイン、好ましくはヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット(配列番号10) CTproSP-CのBrichosドメイン、より好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C94-197; SEQ ID NO:2)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。
【0042】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のBrichosドメイン、好ましくはヒト、ウシ、アカゲザル、マウス、ミンク、ウサギまたはラット CTproSP-CのBrichosドメイン、より好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C94-197;配列番号2)を含むタンパク質を含む。表記「proSP-CのBrichosドメイン」、「proSP-CBrichos 」、「CTproSP-CのBrichosドメイン」および「CTproSP-CBrichos」は、一般に何れかの哺乳類のproSP-CのBrichosドメイン、および好ましくはヒト proSP-CのBrichosドメインをいう。
【0043】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質特に、ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) またはラット (配列番号18)からのCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質;および好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C59-197; 配列番号4)であるタンパク質を含む。
【0044】
哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4、12-17)の高度な保存は、図1Bから明白であり、公知の哺乳類種間で厳密に保存されたアミノ酸残基が示されている(「ストリクト(Strict)」; 配列番号18)。これらのアミノ酸残基の保存は、CTproSP-CBrichosにおけるこれらのアミノ酸残基の機能に関連する。好ましい態様において、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基は保存されたアミノ酸残基に一致し、即ち、単離されたタンパク質は、配列番号18の定義されたアミノ酸残基を含む。即ち、あるCTproSP-CBrichosに対する同一性/類似性の全体的な程度に加えて、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基がこの態様における保存されたアミノ酸残基に対して同一である。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号18)は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)の以下の全ての保存された残基を含むことを示す:Phe-1、Gly-4、Ser-5、Thr-6、Gly-7、Val-9、Asp-12、Tyr-13、Gln-14、Leu-16、Leu-17、Ala-19、Tyr-20、Lys-21、Pro-22、Ala-23、Pro-24、Gly-25、Thr-26、Cys-28、Tyr-29、Met-31、Lys-32、Ala-34、Pro-35、Ile-38、Pro-39、Ser-40、Leu-41、Glu-42、Ala-43、Arg-46、Lys-47、Gln-70、Gly-73、Gly-77、Ser-81、Phe-87、Leu-88、Gly-89、Val-92、Thr-94、Leu-95、Cys-96、Gly-97、Glu-98、Pro-100、Leu-101およびTyr-103。
【0045】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質、特異的に、ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号18)からのCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質、好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C59-197; 配列番号4)であるタンパク質を含む。
【0046】
特定の態様において、単離されたタンパク質は、BrichosドメインおよびCTproSP-Cの非Brichos部分からの多くの残基を含んでもよい。例えば、配列番号21は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメインとヒトCTproSP-Cの非Brichos部分からの8つの更なるアミノ酸残基を含む。機能は維持されるが、得られるタンパク質は、Brichosドメイン単独よりもより安定し、従って、非凝集タンパク質をより高い収率で得ることにおいて有利である。
【0047】
細胞膜内部において、ポリペプチドは、無極性の側鎖を曝して、極性の主鎖を隠す必要がある。従って、バリン、イソロイシン、ロイシンおよびフェニルアラニンのみが小胞体(ER)膜への挿入が促進し、α-ヘリックス形成は、挿入過程の重要な一部分である。ProSP-Cは、多くのバリンおよび幾つかのイソロイシンおよびロイシンからなる単一のα-ヘリックス膜貫通ドメインを有する完全なER膜タンパク質であり、このドメインが成熟SP-C(ヒト SP-C、配列番号3)を産生する。バリンおよびイソロイシン残基の高いβシート性向のために、また、この特徴が、SP-CおよびproSP-Cをインビトロおよび生細胞の両者においてβシートポリマー(アミロイドフィブリル)を形成し易くする。
【0048】
内因性の抗アミロイド機能が存在し、それによりERルーメンのproSP-C (CTproSP-C)のC末端ドメインは、未解決の機序を介して、proSP-CおよびSP-Cの膜貫通セグメントが凝集からβシートになるのを防止する。SP-Cは、高度に保存され、相同性タンパク質を欠き、その疎水性「プロVal」領域はバリン、イソロイシンおよびロイシンを含む。しかしながらCTproSP-Cの親和性は、驚くべきことにこれらの3つの疎水性アミノ酸残基に限定されるものではない。CTproSP-Cは、前例のない特異性で、7つの残基セグメントに対して5つを認識する。CTproSP-Cは、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはチロシンの伸展に対して結合するが、アラニン、トリプトファン、グリシン、プロリンまたはトレオニン対応物に対しては結合しない。従って、CTproSP-C は、生物学的な疎水性スケールに従う膜挿入を促進する残基(T Hessa et al, Nature 433, 377-381, 2005)およびチロシンに対して結合する。生物学的な疎水性スケールとCTproSP-C基質特異性との間の例外は、セルロース結合型ペプチドに対する結合により明らかになるように、CTproSP-Cがチロシンの伸展に対して結合することである。これは、チロシン残基がCTproSP-Cにおいて露出されており、疎水性染料1,1'-ビス(4-アニリノ-5,5'-ナフタレンスルホネート)と結合することにより説明することができる。更に、CTproSP-Cは、非らせん状高次構造においてペプチドに対して排他的に結合する。
【0049】
CTproSP-Cの特異的な基質は、Hsp70ファミリーシャペロンBiPおよびDnaKと類似性を有し、BiPはER膜を介したそれらの移動の後に疎水性ポリペプチドと結合する。BiPは、結合のために伸長したペプチド構造の要求性と適合性の疎水性残基のパターンの変化で7残基ペプチドセグメントを認識する。しかしながら、バリンは、BiPに対して結合しているペプチドにおいて過少に評価され、一方で、CTproSP-CはポリTrpに対しては結合せず、BiP基質において最も好ましい残基である。同様に、DnaK結合のために要求される中心的な5つの残基の性質は、CTproSP-Cの基質特異性に類似するが、塩基性残基のフランキングのためのDnaKの要求は、CTproSP-Cについては見られない。
【0050】
共に、これらのデータは、直ちに、CTproSP-Cの機能に対する説明を示唆するものである;それはαらせん状、膜挿入型、高次構造を達成していないproSP-Cの候補膜貫通セグメントの何れかの部分との結合によるβシート凝集を防止する。proSP-Cの膜貫通ドメイン内の何れかの短いセグメントをターゲティングすることは、特定のアミノ酸配列を認識することによってでは不可能である。
【0051】
結論として、CTproSP-Cは、SP-Cシャペロンであり、SP-Cに関してのCTproSP-Cの天然の安定化、ヘリックス促進効果は、主にバリン(10残基)、イソロイシンおよびロイシンを含むが、フェニルアラニンを含まないSP-C(ヒト SP-Cの残基13-35、配列番号3)の疎水性「ポリVal」領域に対する結合を介して生じる。実際、CTproSP-Cのフェニルアラニンに対する親和性は、我々知識の中で最良であり、従来知られてはいなかった。更に、CTproSP-C基質特異性以上に、定義毎に、それが膜に挿入され得る緻密な、らせん状の高次構造を形成することに失敗した他の候補膜貫通セグメントに結合できることを示す。
【0052】
SP-Cと対照的に、βシート形成のための性向を有するAβペプチドのターゲット領域(配列番号19)は、架橋する残基16-23であり、2つのフェニルアラニン残基を含むが、1つのバリン残基のみを含む。従って、驚くべきことに、本発明に従う単離されたタンパク質はアミロイドフィブリル形成を減少し、Aβペプチドの凝集を低下する能力を有する。アルツハイマー病に関連するアミロイドβペプチド(Aβ1-40;配列番号19)に向かうCTproSP-C活性は、ここにおいて実験的に評価されている。
【0053】
Aβは、その前駆体物質タンパク質APPのTMセグメントから切り出され、膜から放出されたときに、アミロイドフィブリルに凝集し、もしそれらが非らせん状の高次構造であれば、CTproSP-C基質特異性に対応する領域、L17VFF20およびI31IGLMVGGVV40を含む。実際に、CTproSP-Cは、完全にアミロイドフィブリル形成とAβの凝集をブロックする。proSP-Cの膜貫通ドメインの他のアミロイド形成ポリペプチドを捕らえるためのCTproSP-Cの能力は、それが即ち膜挿入および非らせん状高次構造のために十分な疎水性を認識する性質が一般にアミロイド形成を操作することを示唆する。これは、疎水性およびβシート特性がアミロイド形成性タンパク質の凝集速度を合理化するために使用できるという観察と一致する。CTproSP-Cは、非折り畳み膜貫通セグメントの架橋認識および且つproSP-C、SP-Cおよび Aβ ペプチドのためのアミロイド防止のために見出された最初のシャペロンである。
【0054】
従って、特に、本発明は、肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質 (CTproSP-C)の
(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのC末端ドメインに対して少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;および
(ii) ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療において薬物として使用するための単離タンパク質を提供する。
【0055】
特定の態様において、当該治療は、予防的療法であってもよい。他の特定の態様において、治療は、対症療法であってもよい。ある特定の態様において、治療は、治療的療法であってよい。
【0056】
もう1つの態様に従うと、本発明は、本発明に従う治療学的に有効量の単離タンパク質と、そのために適切な薬学的担体を含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療において有用である。
【0057】
関連する側面に従うと、本発明は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療のための薬物を製造するための本発明に従う単離タンパク質の使用を提供する。
【0058】
本発明に従う単離されたタンパク質は、薬学的組成物に組み込まれてもよい。そのような組成物は、典型的に、候補化合物と適切な薬学的に許容される担体を含む。ここにおいて使用されるとき、「適切な薬学的担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを含み、それらは薬学的投与に適合性である。補充性の活性化合物もまた、組成物に組み込まれてもよい。
【0059】
薬学的組成物は、その目的とする投与径路に適合性であるように製剤化される。投与径路の例は、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮的、経粘膜的、くも膜下腔内、脳室内(例えば、外科的に大槽腔に配置されるインラインフィルターを具備するオマヤリザーバーシャントを使用する)および直腸投与を含む。
【0060】
組成物のために潜在的に有用な非経口送達系は、緩徐溶解プリマー粒子、移植用輸液系およびリポソームを含む。非経口適用のために有用な溶液または懸濁液は、以下の成分を含んでもよい;例えば、注入のための水、生理的食塩溶液、固定用油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒などの滅菌希釈液;ベンジルアルコールまたはメチレンパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アセテート,
クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調節するための薬剤。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムなどで調整されてよい。非経口製剤はガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは多投与用バイアル内に内封されてもよい。
【0061】
アルツハイマー病の治療はまた、中枢神経系、好ましくは、脳に、本発明に従う単離されたタンパク質の直接的な送達により効果を及ぼされてもよい。
【0062】
注入のために適切な薬学液組成物は、滅菌水溶液(そこにおいて水を溶解する)または分散液、並びに滅菌注入用溶液または分散系の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与のために、適切な担体は、生理的食塩水、静菌水、クレモフォアEL(登録商標)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は、滅菌されるべきであり、簡単に注射器に収めることが可能な範囲で流動性であるべきである。製造および貯蔵の条件下で安定しているべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染活性に対して保存性であるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物などを含む溶媒または分散媒体であってよい。適切な流動性は、例えば本発明に従う単離されたタンパク質の粒子上のコーティング(例えば、レシチン)の使用により、分散系の場合において必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により維持されてよい。微生物活性の防止は、種々の抗微生物および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成されてよい。多くの場合において、好ましくは、組成物には等張剤が含まれる。そのような薬剤の例は、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトールおよびソルビトール、および塩酸ナトリウムを含む。注入用組成物の延長された吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどを組成物に含ませることにより齎されてよい。
【0063】
滅菌注入用溶液は、本発明に従う単離されたタンパク質を所望の量で適切な溶媒に、所望に応じて上述において列記された成分の1つまたはその組み合わせと共に組み込み、続いて、滅菌濾過されることにより調製されてよい。一般的に、分散系は、本発明に従う単離されたタンパク質を、基本の分散媒と上述において列記されたものからの所望の他の成分とを含む滅菌媒体に組み込むことにより調製される。滅菌注入用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、製剤の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、前もって濾過滅菌されたその溶液から、何れかの更なる所望の成分を追加した本発明に従う単離されたタンパク質の粉末を得る。
【0064】
経口用組成物は、一般的に、不活性希釈液または食用担体を含む。経口治療用投与の目的のために、本発明に従う単離されたタンパク質が賦形剤と共に組み込まれて、錠剤、トローチまたはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態において使用され得る。
【0065】
薬学的に適合する結合剤および/または補助剤物質が組成物の一部分として含まれてよい。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは何れかの以下の成分または同様の性質の化合物を含んでよい:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterotes);滑沢剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリン;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー。
【0066】
吸入による投与のために、化合物は、適切な高圧ガス、例えば、二酸化炭素ガスを含む加圧容器若しくはディスペンサー、または噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0067】
全身投与も、経粘膜的または経皮的手段によりなされてもよい。経粘膜的または経皮的投与のために、浸透されるべき障壁に対して適切な浸透剤が、製剤において使用される。そのような浸透剤は、一般的に当該技術分野において公知であり、例えば、経粘膜的投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は、鼻腔用スプレーまたは坐薬の使用を得て達成されてもよい。経皮的投与のために、本発明に従う単離されたタンパク質は、当該分野において公知の通りの軟膏、膏肓、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0068】
本発明に従う単離されたタンパク質はまた、直腸送達のために坐薬(例えば、ココアバターよよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用する)または保定浣腸(retention enemas)の形態に製剤化されてもよい。
【0069】
1つの態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、生体からの急速な消失に対して化合物を保護するであろう担体と共に、例えば、移植体およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤として調製される。生分解性、生物適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などが使用されてもよい。そのような製剤の製造方法は、当業者には明白であろう。リポソームの懸濁液(モノクローナル抗体でアルツハイマー病に特異的に罹患した細胞に対してターゲティングするリポソームを含む)も、薬学的に許容可能な担体として使用されてよい。これらは、当業者に公知の方法に従って製造され得る。
【0070】
投与の容易性および投与量の均一性のために、投与量形態にある経口または非経口組成物を製剤化することが遊離である。ここで使用される単位投与量形態は、治療されるべき対象のために単位投与量として適切化された物理的な個別の単位をいい、各単位は、所望の治療効果を生じるために算出された予め決定された量の本発明に従う単離されたタンパク質を所望の薬学的担体と関連して含む。
【0071】
本発明に従う単離されたタンパク質の毒性および治療学的効果は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、LD50(集団の50%が致死する用量)およびED50(集団の50%が治療学的効果を奏する用量)を決定するための手順により決定されてよい。適切な動物モデルは、例えば、アミロイドについて以下に記載される通りに使用されてよい(Sturchler-Pierrat et al, Rev Neurosci, 10: 15-24, 1999; Seabrook et al, Neuropharmacol 38: 1-17, 1999; DeArmond et al, Brain Pathology 5: 77-89, 1995; Telling, Neuropathol Appl Neurobiol 26: 209-220, 2000; and Price et al, Science 282: 1079-1083, 1998)。
【0072】
毒性効果と治療学的効果との用量比は、治療学的な指標であり、LD50/ED50比として表され得る。高い治療学的指標を示す化合物が好ましい。一方で、毒性の副作用を示す化合物が使用されてもよく、注意が払われた上でそのような化合物が影響を受ける組織の部位をターゲティングする送達系が設計されるべきであり、それにより影響を受けない細胞に対する潜在的な損傷を最小化し、それにより副作用を減少する。
【0073】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための用量範囲の製剤化において使用され得る。化合物の容量は、殆ど毒性のない、または毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。
【0074】
用量は、使用される投与量形態および利用される投与経路に依存してこの範囲で変化してもよい。本発明の方法において使用される何れかの化合物のために、治療学的有効量が、細胞培養アッセイ、例えば、フィブリル形成率または細胞死率が観察されることなど、によって最初に見積もられ得る。用量は、細胞培養物において決定されたように、IC50を含む循環性血漿濃度率(即ち、症状の最大半減の阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するために動物試験において処方されてよい。そのような情報は、ヒトにおいて使用される用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿における濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィにより測定されてよい。
【0075】
ここにおいて定義されるとき、本発明に従う治療学的に有効量の単離タンパク質(即ち、有効用量)は、体重1kg当たり約0.1〜100mg、より好ましくは体重1kg当たり約1〜100mg、更により好ましくは体重1kg当たり約1〜50mgの範囲である。化合物は、対象に対して延長された時間、例えば、対象の生存期間に亘り投与されて得る。1mg/kg〜100mg/kgの用量が、例えば、脳における活性のために設計された抗体の場合などにおいて通常適切である。
【0076】
ある場合において、化合物は、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、および更により好ましくは約4、5または6週間の間、1週間毎に1回投与され得る。化合物はまた、長期に亘り投与され得る。当業者は、これらに限定するものではないが、疾患および疾病の重症度、先の治療、対象の一般的な健康および/または年齢および他の疾患の存在などを含む、ある因子が、対象を効果的に治療するために必要とされる用量および期間に影響を与え得ることを認めるであろう。更に、治療学的に有効量の化合物での対象の治療は、単回療法を含み、または好ましくは一連の治療を含んでもよい。
【0077】
ヒトAPPを発現するマウスまたはヒトに投与するためのヒトCTproSP−CおよびそのBrichosドメインを含む本発明に従う組み換え単離タンパク質は、幾つかの方法で製造され得る。組み換えタンパク質は、例1において記載するように精製されてよい。タンパク質が血液脳関門(BBB)を通過する可能性を高めるために、幾つかの方法が想定される。
【0078】
2つの主な戦略のは、BBBを経る薬物の通過のために明らかになっている。それらは、受容体媒介性経細胞輸送により、または特異的受容体、例えば、グルコース、アミノ酸またはペプチドのための受容体の使用による、いずれかによる内因性の移送系を使用する。ペプチドは、特に、様々な積荷を運ぶためのBBBを通過するベクターとして魅力的に見える。多くの異なるペプチドは、エンドサイトーシス(典型的にはLDL受容体による)を引き起こすこと、BBBを通過する積荷を送達することが示されている。これらのペプチドの幾つかは、両親媒性に陽性に荷電された細胞浸透性ペプチド(CPP、例えば、ペネトラチン(penetratin)、ApoE誘導性ペプチドおよびその他)であるが、これらはまた高用量では高毒性であり得る。synBファミリーのような他のペプチドもたま、疎水性部分以外は陽性に荷電されている。エンドサイトーシストリガー性ペプチドの多くの欠点は、それらが、効率的であるために、安定したαへリックスを形成するために比較的大きく、効果的な取り込みに関連付けられることである。経細胞輸送による送達の利点は、積荷が完全に実質的であり、完全に可変性であることである。飽和性の移送系によるBBBを通過することが示されている特異的な内因性のペプチドが薬物を送達するためのベクターとして機能する経路は、また、生存可能な代替的である。この種の幾つかの比較的短いペプチド例えばMIF-1(Pro-Leu-Gly、オキシトシンの誘導体)およびペプチド T (8 残基、HIVエンベロープからの誘導体)が、BBBを横切って効率的に輸送されることが示されている(例えば、de Boer AG and Gaillard PJ, Clin Pharmacokinet. 46:553-76, 2007; de Boer AG and Gaillard PJ, Annu Rev Pharmacol Toxicol. 47:323-55, 2007; Pardridge WM, Drug Discov Today. 12:54-61, 2007を参照されたい。BBBを横切る輸送のための方法が記載されている)。現行の場合において、前記ペプチドまたはタンパク質がCTproSP−CまたはBrichosドメインと混合されてもよく、或いはそれらがCTproSP−CまたはそのBrichosドメインに対して共有結合的に結合されて発現されてもよい。
【0079】
他の製剤において、CTproSP−CまたはそのBrichosドメインは、BBBを横切る送達のためのナノ粒子に対して連結され得る(Lockman PR et al., Drug Dev Ind Pharm. 28:1-13, 2002; Tosi G et al., Expert Opin Drug Deliv. 5:155-74, 2008)。
【0080】
そのような脂質化などの修飾はまた、タンパク質の安定化のために、および(例えば、脳への)取り込みおよび組織浸透を向上するために使用されてもよい。抗体の脂質化の方法は、以下に記載される(Cruikshank et al, J Acquired Immune Deficiency Syndromes Hum Retrovirol 14: 193, 1997)。
【0081】
本発明に従う単離タンパク質が、動物(例えば、ヒト)に対してアルツハイマー病の治療のために投与されるべき場合、医師、獣医師または研究者は、例えば、最初は比較的低用量で処方してよく、その後に適切な応答が得られるまで用量を増やしてよい。加えて、何れかの特定の動物対象のために特定の用量レベルが、使用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路、排泄速度、何れかの薬物の組み合わせおよび調節されるべき発現または活性の程度を含む多様な因子に依存するであろうことが理解される。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、容器、パックまたはディスペンサー内に投与のための説明書と共に含まれてもよい。例えば、説明書は、アルツハイマー病を有するまたはアルツハイマー病の危険のある個体を治療するための組成物の使用のための指導を含んでよい。
【0083】
もう1つの態様に従うと、本発明は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療の方法であって、それを必要とする哺乳類に対して、本発明に従う治療学的に有効量の単離タンパク質または本発明に従う薬学液組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0084】
特定の態様において、治療は予防的療法であってもよい。他の特定の態様において、治療は対症療法であってよい。ある特定の態様において、治療は治療的療法であってもよい。
【0085】
本発明は、アルツハイマー病の危険性のある(または感受性の)対象の予防的および治療学液方法の両方を提供する。ここにおいて使用されるとき、用語「治療」は、本発明に従う単離タンパク質の感謝に対する適用または投与、またはアルツハイマー病、疾患の症状、または疾患に対する罹患傾向を有する患者からの単離組織または細胞系に対して本発明に従う単離タンパク質の適用または投与するときに定義され、当該疾患、疾患の商標または疾患に向かう傾向を治療、治癒、緩和、軽減、変化、矯正、改善、向上または影響させる目的を伴う。
【0086】
1つの側面において、本発明は、対象に対して、ポリペプチドの凝集および/またはαへリックス形成を安定化を減少するを本発明に従う単離タンパク質を投与することにより、Aβペプチドにより生じるフィブリル形成に関連する疾患または症状を予防する(即ち、疾患または症状に関連して疾患の罹患リスクを低下するまたは症状の発生率を低下する)方法を提供する。アルツハイマー病のリスクに向かう対象は、従来公知の適切な診断または前兆アッセイの何れかまたは組み合わせにより同定することが可能である。予防薬の投与は、疾患が予防されるように、またはその進行が遅れるように、疾患を特徴付ける症状が顕在化する以前に行われる。
【0087】
本発明に従う単離されたタンパク質は、患者に対して、治療学的に有効な用量で投与されて、アルツハイマー病に関連するフィブリン形成に関連する疾病を予防、治療または改善し得る。治療学的に有効な用量は、疾病の症状の改善を齎すのに十分な化合物の量をいう。そのような化合物の毒性作用および治療学的作用は、上述したような標準的な薬学的手順により決定され得る。
【0088】
また、本発明に従うタンパク質は、単離されたタンパク質が中枢神経系におけるこれらの細胞により発現するように神経系、好ましくは脳における細胞に形質移入するための例えば、発現ベクター、プラスミドまたはウイルスを使用することにより、遺伝子療法により投与されてもよい。これはアルツハイマー病の治療のために有用である。
【0089】
次に、本発明は次の限定されない例によってさらに説明される。
【0090】
[例]
[例1−組み換えヒトCTproSP-CBrichos (ヒト proSP-C94-197; 配列番号4)、組み換え ヒト CTproSP-C (proSP-C59-197; 配列番号2)および組み換えヒトCTproSP-CL188Qの発現および単離]
CTproSP-C およびCTproSP-CL188Q構築物をJohansson et al, J Biol Chem 281:21032-21039, 2006に述べられるように作製した。CtproSP-CBrichos構築物は、CTproSP-C構築物および次のプライマー(DNA technology AIS, Aarhus, Denmark):5’-GGTGCCATGGCTTTCTCCATCGGCTCCACT-3’ (フォワードプライマー)および5’-CTCTAGAGGATCCGGATCCCTAGATGTAGTAGAGCGGCACCTCC-3' (リバースプライマー)から増幅された;下線を付した配列はそれぞれBamHIおよびNcoI 切断部位である。増幅されたDNAフラグメントは、BamHIおよびNcoIで設計され、かつ発現ベクターpET-32c (Novagen, Madison, WI)に結合された。このベクターは、挿入部位の上流にチオレドキシン、ヘキサヒスチジンおよびS-タグのためのコード領域を含む。
【0091】
CTproSP-CおよびCTproSP-CBrichosの発現のために、形質転換E. coli, 株Origami (DE3) pLysS (Novagen, Madison, WI)を一定撹拌、16時間で100 μg/mlアンビシリンを含むLuria-Bertani媒体中、37℃で成長させた。温度は25℃を下回り、発現は0.5 mMのIPTGの添加によってOD600 =1.1にて誘導され、かつバクテリアを別に4時間に亘って成長させた。細胞をそれから20分間に亘って6000xgで遠心分離によって収穫し、20 mM トリス-HCl, pH 8, 2 mM MgCl2中、リゾチームおよびDnaseとインキュベートし、さらにNi-NTAアガロースカラム上に添加した。カラムを20 mMトリス、pH 8、の100 ml で洗浄し、それから20 mMイミダゾールを含む20 mMトリス、pH 8、の20mlで洗浄した。ターゲットタンパク質をそれから20 mMトリス中の150 mMイミダゾールで溶出した。溶出されたタンパク質は、チオレドキシンおよびHisタグが8℃で3時間に亘って酵素/基質重量比0.002にてトロビンでの切断によって取り除かれた後20 mMトリス、pH8に接触して透析された。このイミダゾールは15mM濃度に添加した後、溶液を放出されたチオレドキシンHisタグを取り除くためにNi-NTAアガロースカラムに再適用される。CTproSP-CL188Qは、前出(Johansson et al, J Biol Chem 281:21032-21039, 2006)に記述されたように発現され、かつ精製された。概要において、タンパク質はE大腸菌中にてチオドキシン/His6/S-タグで溶融タンパク質として発現される。タンパク質は、固定化した金属親和性およびイオン交換クロマトグラフィを用いて精製された。トロビンはチオドキシン-タグおよびHis6-タグを取り除くために用いることができる。タンパク質純度は、SDS-PAGEおよび非変性PAGEでチェックできる。
【0092】
全ての結果として得られたタンパク質は、S-タグが付された、例えばS-タグ化ヒト CTproSP-C (配列番号20)である。別の特定がされていない限り、S-タグが付されたタンパク質が以下の例に用いられる。
【0093】
[例2−セルロース膜上でSP-C 誘導ペプチドスポットに結合するCTproSP-CBrichos,CTproSP-CおよびCTproSP-CL188Qの分析]
、SP-C (proSP-C24-58)から誘導された10-残基フラグメントを含むスポット膜(Frank R, J Immunol Meth, 267:13-26, 2002)をSigma Genosys (Cambridge, England)から購入した。膜をメタノールに5分間浸漬し、それからT-TBS (50 mM Tris, 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, pH 8, containing 0.05 % Tween)で3x30分間洗浄し、T-TBS中、22℃で1時間に亘って1μg/ ml CTproSP-CBrichos, CTproSP-CまたはCTproSP-CL188Qでのインキュベーションを続けた。次に、膜は1時間に亘ってTBS中にて2 % BSAでブロックされた。T-TBSで 4x1時間洗浄した後、膜を2 % BSA を含むT-TBS中に 1:5000に希釈されたHRP-複合化S-タンパク質 (Novagen, Madison, WI) でインキュベートした。次に、膜をT-TBSで 4x1時間再び洗浄し、かつ結合を製造者の取扱説明書に従ってECLによって視覚化した。
【0094】
以下に詳述されるようにセルロース膜に結合される全SP-C アミノ酸配列 (配列番号3)に相当する重複配列を持つ10残基ペプチドはCTproSP-C (配列番号4)に結合するために探査された。
【0095】
図2Aは、SP-C から誘導される10残基フラグメントを含むスポットへのCTproSP-Cの結合を示す。ペプチドスポット1から25はスポット8, 9, 11, 12, 17および18(下記参照)を除外するとN-からC末端方向(図2B参照)中にSP-C配列を占める。スポット8および9がそれらのLeu-置換(KRLLLLLLLL) またはAla-置換(KRAAAAAAAA)型をそれぞれ含むのに対して、スポット7はSP-C中にKRLLIVVVVVセグメントを含む。同様な方法において、スポット10-12はRLLIVVVVVV (SP-C中の位置12-21), RLLLLLLLLL,およびRAAAAAAAAAをそれぞれ含み、かつスポット16-18はVVVVVLVVVV (SP-C中の位置17-26), LLLLLLLLLL, and AAAAAAAAAAをそれぞれ含む。スポット21および23は同じペプチド (LVVVVIVGAL)を含む。
【0096】
図2Bは、SP-C配列に従うペプチドへのCTproSP-C結合の概要を表示する。破線はCTproSP-Cが結合していないペプチドを記し、一方、実線はCTproSP-Cが結合するペプチドを表す。SP-C配列の下線部分は、その膜貫通領域に相当する。番号1-35は、成熟SP-C ペプチド (配列番号3)を示し、proSP-C (配列番号1)の相当する残基は24-58である。
【0097】
したがって、図2A-Bは結合モチーフが疎水性残基、すなわちSP-Cの膜貫通「ポリVal」領域から誘導されるペプチドを含む領域に見出されることを示す。ポリLeuでのポリValモチーフの置換は、図2Aにおいて、それぞれスポット対7/8, 10/11および16/17に対応し、結合において変更を生じない。これに対して、ポリAlaでのポリValの置換は、図2Aにおいて、それぞれスポット対7/9, 10/12 および16/18に対応し、結合は無効化される。
【0098】
CTproSP-C基質特異性の分析に用いられるのと同じペプチドスポット膜は、CTproSP-C (proSP-C59-197)のそれと非常に類似する結合プロフィルを示したCTproSP-CBrichos (proSP-C94-197)で探査された。図2Cに示されるように、Brichosドメインは、CTproSP-C結合特性を反復する。これに対し、CTproSP-CL188QはSP-Cのいかなるフラグメントに結合されない(図2D)。したがって、CTproSP-CおよびCTproSP-CBrichosは同じ基質特異性を有し、一方、CTproSP-CL188Qは無効な基質結合を示す。
【0099】
[例3− CTproSP-C およびその Brichosドメインの基質特異性]
指示残基のセルロース結合十量体への組み換えヒトCTproSP-C およびそのBrichosドメインの結合を調査するために、指示アミノ酸残基の十量体がセルローススポット膜に共有的に取り付けられる(Frank R, J Immunol Meth, 267:13-26, 2002)。組み換えヒト S-タグを付したCTproSP-C (配列番号20) および ヒト CTproSP-C の(S-タグ化) Brichosドメインは例1で述べたように大腸菌で生成された。
【0100】
膜は、0.05 % Tween (T-TBS)を含む50 mM トリス中の1 μg/ ml CTproSP-C、137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, pH 8で22℃にて1時間に亘ってインキュベートされた。2% BSAで1時間に亘るブロックし、T-TBSで4x1時間洗浄した後、膜は1:5000に希釈されたHRP-複合化S-タンパク質 (Novagen, Madison, WI)でインキュベートされた。次に、膜は上のように再び洗浄され、結合S-タグを付したCTproSP-Cが増強されたケミルミネッセンスによって視覚化された、図3A参照。CTproSP-C は、V、I、L、F、M、またはYの伸展に結合するが、A、W、G、P、またはT対応物に結合しない。したがって、CTproSP-Cは生物学的疎水性スケールによる膜挿入を促進する残基およびYに結合する。SP-Cに結合しない突然変異体ヒトCTproSP-CL188Qおよびヒト Bri タンパク質のER-ルーメンの部分はコントロールとして用いられ、かつ両者は幾つかの膜結合ペプチドへの結合に機能しなくなる。
【0101】
ヒト CTproSP-Cの結合容量は、ヒト CTproSP-C .(データ示さず)のBrichos領域によって反復された。
【0102】
[例4−CTproSP-Cの基質特異性]
CTproSP-Cの結合特異性を調査するために、非らせん状(ターゲット、非α、第1レーン)中、またはらせん状高次構造(ターゲット、-α、第2レーン)中のLLLLLLLLILLLILGALL ペプチド、および非ターゲットペプチド(第3、第4のレーン)はセルローススポット膜に共有的に取り付けられる(Frank R, J Immunol Meth, 267:13-26, 2002)。異なる高次構造に関して、ペプチドは50%水性ギ酸からプロットされる、ペプチドがβ-ストランド高次構造である、またはエタノールからプロットされる、それはらせん状である。異なる溶媒がCTproSP-Cの人為的結合に起因することの可能性を除外するために、非ターゲットペプチド (IPCCPV) 50%水性ギ酸(第3レーン)またはエタノール(第4レーン)から吸収される。ペプチドは、PR 648 Slot Blot濾過マニホールド(Amersham Biosciences, US)を用いるニトロセルロース膜(Whatman, Germany)上にプロットされる。1 μg/ml の組み換えヒト CTproSP-Cは、添加され、かつ22℃で2時間に亘ってインキュベートされた。その後、膜はトリスバッファ生理食塩水、pH 7、で繰り返し洗浄され、かつ結合CTproSP-Cは免疫検出によって視覚化され、例3のようにケミルミネッセンスで増強された。図3bで分かるように、CTproSP-Cは非らせん上高次構造中でペプチドに排他的に結合する。
【0103】
[例5−CTproSP-Cの抗アミロイド特性]
実験開始時と37℃で単独(-)または2.5 μM CTproSP-C (+)と共に7日間に亘るインキュベーション後の溶解性Aβ1-40 (25 μM)の量。電子顕微鏡写真は6日間のインキュベーション後のAβ単独およびAβ + CTproSP-Cに対するそれらの欠乏からの豊富なアミロイドフィブリルを示す。フィブリルは実験の開始時に幾つかの試料には見られない。実験は、DMSO のストック溶液からのAβの希釈後に、10 mM リン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 150 mM 塩化ナトリウムで遂行された。Aβ1-40は、2.5 μM CTproSP-Cの存在または不在にて37℃、撹拌下でインキュベートされた。
【0104】
実験の開始時および7日後に、試料は凝集のレベルを測定するために取り除かれた。試料は、16000×gで6分間に亘って遠心分離され、上澄みは取り除かれ、かつ16000×gで別に2分間に亘って遠心分離された。次に、最終遠心分離からの上澄みは非還元性条件、10-16%トリス−トリシンゲル上でSDS-PAGEによって分析され、かつクーマシーで染色された。電子顕微鏡写真のために、2 μlの一定分量が200メッシュ銅グリッド上で1分間吸着され、かつ75 kV で操作されるHitachi H7100 顕微鏡を用いて実験し、撮影する前に、30分間に亘って2%酢酸ウラニルで染色された。
【0105】
得られたSDS-PAGEおよび写真は図3cに示される。それは、CTproSP-Cはアミロイドフィブリル高次元構造およびAβインビトロの凝集を完全にブロックすることが明白である。
【0106】
[Example 6 −CTproSP-CがAβ1-40のフィブリル高次構造を防ぐ]
Aβ1-40 (配列番号19)をBachem (Germany)から購入し、かつ-70℃で使用まで凍結乾燥状態にて貯蔵された。単量体出発溶液を促進するために、ペプチドを作業バッファで希釈する前に、ジメチルスルホキシド(DMSO)の1 mg/mlで溶解し、攪拌し、かつ超音波処理した。
【0107】
ヒト組換えCTproSP-Cが発現され、かつ例1(配列番号20)に記述されるように精製された。
【0108】
Aβ1-40凝集およびフィブリル高次構造実験は、10 mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.0, 10% (v/v) DMSOを含む150 mM塩化ナトリウム中の25 μMのAβ濃度で遂行された。Aβ1-40は、25 および2.5 μM CTproSP-Cの存在および不在で、37℃、攪拌下にてインキュベートされた。種々の時間点で、試料を凝集レベルを測定するために取り除いた。試料を16000×gで6分間に亘って遠心分離し、上澄みを16000×gで別の2分間に亘って取り除き、かつ遠心分離した。次に、最終遠心分離からの上澄みを非還元性条件、10-16%トリス−トリシンゲル上で、SDS-PAGEによって分析し、かつクーマシーで染色した。対照として、Aβ1-40を2.5 μMニワトリクリスタチン(MW 13.3 kDa)またはヒトアンチトロンビン(MW 58 kDa)で前述下のと同様な手法でインキュベートした。
【0109】
フィブリル高次構造の程度を測定するために、Aβ1-40を2.5 μM CTproSP-Cの存在または不在で前述したようにインキュベートし、同様に25 μMニワトリクリスタチンまたはウシ血清アルブミンでインキュベートした。6日後に試料を取り除き、かつ透過電子顕微鏡写真 (TEM)によって分析した、以下参照。
【0110】
既に形成されたフィブリルを解離するCTproSP-Cの能力を調査するために、25 μM Aβ1-40を37℃、振盪で6日間に亘ってインキュベートし、フィブリルの存在をTEMによって検証し、かつその後CTproSP-Cを25 μMの最終濃度まで添加した。試料をさらに1から7日間に亘ってインキュベートし、その後フィブリルの量をTEMを用いて再び測定した。
【0111】
各試料に対して、2 μlの一定分量を200メッシュ銅グリッド上で1分間に亘って吸着し、かつ75 kVで操作されるHitachi H7100顕微鏡写真を用いて試験し、撮影する前に、2%酢酸ウラニルで30秒間に亘って染色した。
【0112】
Aβ1-40をCTproSP-Cの存在および不在で1:1 および10:1モル比にてインキュベートした。6日間のインキュベーション後に得られたTEM画像は図4に示される。簡単に、図4は37℃、10 mMリン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 10%DMSO (v/v)単独(A)を持つ150 mM 塩化ナトリウム中25 μMのCTproSP-C (B), 2.5 μMのCTproSP-C (C), 25 μM BSA (D)または25 μMニワトリクリスタチン(E)と一緒にインキュベートされた25 μM Aβ1-40から形成された16000xgペレットの透過電子顕微鏡写真を示す。スケールバー=100nm。
【0113】
6日間のインキュベーション後に得られたTEM画像は、Aβ1-40 (図4A )のフィブリル高次構造がCTproSP-Cの存在で、等モル未満でさえ完全に無効にされることを示す。等モル量でニワトリクリスタチンも、BSAもAβ1-40フィブリル高次構造を防ぐAβ1-40に相関し(図4D-E)、CTproSP-CおよびAβ1-40間の相互作用の特異性を示す。
【0114】
Aβ1-40のプリフォームアミロイドフィブリルは、フィブリルを形成するために用いられるAβ1-40濃度と相関する1:1モル比にてCTproSP-Cでインキュベートされた。TEMで観測されるフィブリルの量または出現での変化は、CTproSP-Cでの7日間のインキュベーションまでの後でも見られなかった(データ示さず)。これらの実験は、CTproSP-Cが既に形成されたフィブリルを解離するための能力を有さないが、むしろフィブリル高次構造の経路上で種を相互作用することを示す。
【0115】
[例7− CTproSP-CがAβ1-40の凝集を防ぐ]
Aβ1-40をCTproSP-C並びに参照タンパク質ニワトリクリスタチンまたはヒトアンチトロンビンでAβ/タンパク質 10:1のモル比にてインキュベートした。7日後に、16000×gでの遠心分離後の溶解性Aβ1-40の量をSDS-PAGEによって分析した。
【0116】
図5は、10 mMリン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 10% DMSO (v/v)を持つ150 mM 塩化ナトリウム中、2.5 μMのCTproSP-C (CTC), ニワトリクリスタチン(Cyst)またはヒト アンチトロンビン(HAT)の存在または不在で0 および7日間に亘ってインキュベートされた(A) 25 μM Aβ1-40の16000×g溶解性フラクションのSDS-PAGE;および10 mMリン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 10% DMSO (v/v)を持つ150 mM 塩化ナトリウム中、2.5 μMのCTproSP-Cの存在または不在で0または20日間に亘ってインキュベートされた(B) 25 μM Aβ1-40を示す。
【0117】
t=0でのAβの量は、全ての混合物に対して等しいが、7日間後にAβはAβ単独またはニワトリクリスタチンで共インキュベートされた試料から全く見られなかった。溶解性Aβの毎分量はアンチトロンビンで共インキュベートされた試料で観察され、一方、CTproSP-Cを含む試料はt=0で観察されるように溶解性Aβの殆ど等量を示した(図5A)。CTproSP-C およびAβの共インキュベーションの20日後に、溶解性Aβが見出された (図5B)。
【0118】
図5に見られるように、CTproSP-Cは20日間までに亘って溶解状態でAβを保持でき、かつそのようにすべき類似寸法の対象タンパク質の能力がないはCTproSP-C効果が特異性相互作用に基づいていることをさらに示す。
【0119】
[例8−CTproSP-CはAβ1-40の凝集を防止する]
Aβ1-40は、DMSOに溶解して、231μMの濃度にし、50mMの酢酸アンモニウムバッファ、pH7.0中の25μMCTproSP-Cと共に、またはこれを含ませずに25μMの濃度に希釈した。各混合物からの試料をMALDI分析のために直ちに採取した。この溶液を次に37℃で撹拌しながら2日間インキュベートし、その後、更に振盪なしで22℃で更に4日間インキュベートした。
【0120】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)分析のために、試料を0.1%のトリ不ルオロ酢酸(TFA)を含む30%アセトニトリルに希釈し、Aβ1-40濃度を4μMにし、0.5μlの各試料を30%のアセトニトリル中、0.1%TFAの0.8μMのソマトスタチンの0.5μlと混合した。混合物を、アセトン中の20mg/ml溶液からプレ結晶化し、50%アセトニトリル、0.1%TFA中に溶解された1μlのシナピン酸(20mg/ml)と共結晶化したMALDIターゲットプレート上のシナピン酸の層の上に載せた。2000および10000massの間のデータを電荷比(m/z)をディレイド・エクストラクションを使用した線形モードで操作したBruker Autoflex (Bruker Daltonics, Billerica, MA) 質量分析計で得た。1000ショットを各サンプルについて自動的に得た;50の異なる位置について、位置毎に20レーザーショットのバッチを予め定義したシューティングパターンを使用して平均化した。
【0121】
CTproSP-CによるAβ1-40凝集における阻害効果を、25μMのAβ1-40をCTproSP-Cと等モル量と共にまたは伴わずに、37℃で2日間撹拌しながらインキュベートし、更に22度で4日間インキュベートしたときに明らかになった。サンプルをモノマー、可溶性Aβ1-40の存在をMALDI MSにより、ソマトスタチンを内部非凝集標準として使用して分析して、ペプチドを予測するために信頼できる濃度を得た。幾つかの異なる点からの自動収集を各MALDIターゲットのために使用して、人為的エラーおよび偏りを最小化した。
【0122】
図6は、ソマトスタチン(理論質量3149.61 Da)を内部標準として使用したMALDI MSにより評価されたMSAβ1-40の定量化(理論質量4329.86 Da)を示す。パネル(A)および(B)は、Aβ1-40単独、(C)および(D)は25μMのAβ1-40+25μMCTCを示す。(A)および(C)における試料は、インキュベート前に、(B)および(D)のサンプルは2日間37℃で撹拌を行ってインキュベートし、更に22℃で50mMの酢酸アンモニウムバッファpH7.0でインキュベートした後に分析した。
【0123】
この方法を使用して、ソマトスタチンとAβ1-40 濃度の間の良好な相関を得た(R2 >0.9)。単独でインキュベートされたAβ1-40 は溶液中でソマトスタチンに対して可溶性ペプチドが80%の減少を示した(図6Aおよび6B)のに対して、一方で、Aβ1-40 および CTproSP-Cの両方を含む試料においては、可溶性Aβ1-40の量が分析期間に亘り一定して維持された(図6Cおよび6D)。従って、MALDI質量分析は、CTproSP-CがAβ1-40の凝集を阻害する効果を有する、即ち、溶解し、モノマー状態にあるAβ1-40は維持されたことが確認される。
【0124】
[例9−サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)およびイムノブロット分析を使用するCTproSP-CおよびAβ1-40 の相互作用試験]
イムノブロットと組み合わせたSECを使用して、Aβ1-40 とCTproSP-Cとの相互作用を試験した。SECをFPLC装置(FPLC instrument (Amersham Biosciences))を装着したセファデックス200カラム(Superdex 200 column (Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden))上で行った。カラムを150mMの塩化ナトリウムを含む10mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.0で平衡化し、214nmでの吸光度を記録した。カラムをフィブリノーゲン(340kDA)、アルドレース(158kDa)、ウシ血清アルブミン(67kDa)およびニワトリシステイン(13.3kDa)で初期較正した。
【0125】
3つの異なる試料の相互作用試験について;(i) 34 μM Aβ1-40, (ii) 34 μM CTproSP-C および (iii) 34 μM のAβ1-40 および CTproSP-C、を10mMリン酸ナトリウムバッファpH7.0、150mM塩化ナトリウム、10%(v/v)DMSO中で調製した。全ての試料を調製した後に直接にカラムに添加し、流速0.7ml/minで平衡化と同じバッファを使用して溶離した。1.2mlのフラクションを全ての運転から回収し、100μl/フラクションをニトロセルロース膜(Whatman, Germany)に、PR648スロットブロット濾過マニフォールド(Amersham Biosciences, US)を使用してブロットした。
【0126】
Aβ1-40 およびCTproSP-Cの両方を含む試料について、2セットのブロットを分析し、両方のペプチドの検出を可能にした。Aβ1-40 の検出のために、膜をリン酸バッファ生理食塩水(PBS)pH7.4中で5分間煮沸し、TBS-Tween(0.1%)中で冷却し、その後5%の脱脂乾燥乳でブロッキングした。膜をモノクローナル抗体4G8(1:2000、Signet, UK)と、続く抗マウスHRP複合化第2抗体(1:5000、GE Healthcare, UK)で探査した。SタグCTproSP−Cの検出のために、膜を5%の脱脂乳でブロックし、HRP複合化Sタンパク質(1:5000, Novagen, US)で探査した。上昇したケミルニネッセンス(Millipore)を使用して、両方の場合に結合した抗体を検出した。イメージJを使用して、スポットの強度を測定した。
【0127】
図7は、Aβ および Aβ+CTproSP-C (「CTC」)の抗体4G8またはS-タンパク質でプローブ化したSECのイムノブロット分析フラクションを示す。図7は、85−89mlの溶離量に対応するSECフラクションのイムノブロット分析を示す。カラムに添加された試料に含まれるポリペプチドは、左に示す。上段の2つの行は、抗体4G8でプローブ化し、Aβ1-40と認識され、下の行はS-タンパク質でプローブ化し、S-タグ化CTproSP-C(配列番号20)を検出した。図7Bおよび7Cは、SECフラクション(溶離量75-110ml)のイムノブロットの強度を示し、抗4G8(B)またはS-タンパク質(C)でプローブ化したものである。Aβ + CTproSP-Cを含む試料は、実線により示し、Aβ単独(B)およびCTproSP-C単独(C)は点線で表す。矢印は、公知の質量のタンパク質の溶出位置から見積もられる分子量を示す。図は、3つの独立した流路を示す。
【0128】
Aβ1-40 のための214 nm 吸収プロファイルを低数量オリゴマー種の存在とパターン互換性を示し、定量のより高分子量種が空隙の用量で溶出し、プレフィブリル可溶性オリゴマーを示す。
【0129】
Aβ1-40 + CTproSP-C試料において、より大きなAβは存在せず、これは更に凝集アッセイからの結果を支持する。CTproSP-C自身は、2つ群のオリゴマーとして示される。明白に示されたピークが三量体から五量体のサイズに対応する位置で溶出し、もう一つのピークが十二量体に対応する位置に溶出した。この結果は、CTC三量体およびそのオリゴマーが主に種であることを示す超遠心およびESI質量分析のデータと良好に一致する(C Casals et al, Febs J, 275:536-547, 2008)。
【0130】
Aβ1-40 + CTproSP-CのSECのための吸収プロフィールは、CTproSP-C三量体から五量体に対応するピークがCTproSP-C単独の溶出に対応して約30%増大し、これはAβがCTproSP-Cに結合し、CTproSP-C三量体-五量体を安定化することを示唆する。Aβ/CTproSP-C 複合体に対応する非特異的なピークは、吸収測定により検出され、恐らく、CTproSP-C単独の比較的大きな溶出量のためである。
【0131】
Aβ1-40 および CTproSP-Cの混合物のSECと、続く、フラクションのドットブロット分析は、しかしながら、ポリペプチド単独に対応する独自のピークを明確に示す(図7)。これは、Aβ および CTproSP-Cの相互作用と、安定な複合体形成を示す。観察された新たなピークは、約110kDaの複合体に対応し、〜52kDaに対応するAβピークの不在に付随する(図7BおよびC)。従って、暗示的に、新たな種はAβ1-40の12量体(52kDa)であり得るものであり、CTCの三量体(55kDa)に対して結合する。
【0132】
従って、SEC は、2つの分子が相互作用し、クロマトグラフィの間に安定する複合体を形成することを示す。形成された複合体は、Aβ 12-merと相互作用するCTproSP-C三量体からなることが明らかである。これらの知見は、Aβオリゴマーの存在と一致し、恐らく、 SECおよびSDS-PAGEの間にインタクトに留まることが可能であり、CTproSP-Cと関連するミセル用構造である。
【0133】
[例10−エレクトロスプレイイオン化質量分析(ESI-MS)を使用したCTproSP-CおよびAβ1-40の相互作用試験]
Aβ/CTproSP-C複合体形成の更なる試験のために、Aβ1-40 および CTproSP-Cの混合物、並びに別個のポリペプチドをESI質量分析を使用して分析した。
【0134】
1.1mMで-20℃で20mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.0、30mM塩化ナトリウム中で貯蔵したCTproSP-C (理論平均分子量18264.89 Da)を、単独で分析のために10mMの酢酸アンモニウムバッファpH6.9の10μMに希釈した。Aβ1-40 (理論平均分子量 4329.9 Da) を1%(v/v)のアンモニアを含む10mMの重炭酸アンモニウムバッファpH10.8に溶解し、100μMの濃度のAβにし、使用するまで-20℃で貯蔵した。CTproSP-C および Aβ1-40を共に分析し、10μMのCTCおよび50μMのAβ1-40の混合物を10mMの重炭酸アンモニウムバッファ中に調製し最終pH7-8にした。
【0135】
Dataは、1000-5000m/zの間をスキャン毎に2秒、および0.1秒のスキャン間の間隔で、MassLynx4.1プログラムの制御下で陽イオンモードで操作したZ-スプレー供給器を装備したQTOF Ultima API 質量分析装置(Waters, Milford, MA)上で得た。試料はナノフローエレクトロスプレーオン化を介して、金属コートホウケイ酸塩ガラスキャピラリーニードル(Proxeon Biosystems, Odense, Denmark)から導入し、供給源温度を80℃に設定した。スプレー条件は、キャピラリ電圧を1.2〜1.9kVで、コアおよびRFレンズエネルギーを100および38Vにそれぞれした。ESインターフェース領域のポンピングを制限し、ピラニ真空管を1.8から1.95mbarにまでバッキングして読み取りに持ち込み、5.85×10-5mbarの分析圧を使用して、衝突ガスとしてアルゴンを使用して行った。MSモードにおいて、衝撃電圧を1.0Vに設定し、MS/MSモードにおいて、CTproSP-C/Aβ1-40複合体を衝突電圧80Vまで増大することにより崩壊した。危機をV-モード(シングルリフレクターモード)において、10,000(FWHM ディフィニッション)の解像度で運転し、質量スケールをPEG-3400に対して構成した。
【0136】
図8は、10mM重炭酸アンモニウムバッファpH7-8中の50μMの Aβ1-40 と混合した10μMのCTproSP-C (CTC)「ナノスプレーESI-MSスペクトラムを示す。標識されたピークは、CTC または Aβ1-40 単独のスペクトルから推論したときの異なる電荷状態を有するCTproSP-C およびAβ1-40のヘテロマーに対応する。
【0137】
個々のペプチドから得たピークパターンの比較とAβ1-40 およびCTproSP-Cの複合体を形成したことが示された混合した試料との比較。CTproSP-Cオリゴマーが見られた(図8、ピークは示さず)。混合物については、7つのピークは、CTproSP-C または Aβのホモマーに対応しないが、その代わりに発生したCTproSP-C/Aβのヘテロマーに割り当てられ得る。Aβ1-40に結合した1つのCTproSP-Cに対応する低い信号強度のピークは、9(m/z 2511)または10(m/z 2260)電荷が見られた。完全な荷電状態は、16-23電荷(m/z 3696 to 2572)を有して包囲され、1つのAβ1-40 ペプチドと複合体中のテトラマーのCTproSP-Cに対応することが観察された。
【0138】
m/z 3485 (図8)でのピークは、CTproSP-C単独のスペクトルでは見られず、[3CTproSP-C+Aβ]17+で対応するピークがMS/MSのために選択されて、それが2つのペプチドの複合体、即ち、MS/MSによるCTproSP-C/Aβ複合体の崩壊によるもの、を表すことを確認した。図9は、ナノスプレーESI-MSスペクトルの(A)10mM重炭酸アンモニウムバッファpH7-8中の10μMCTproSP-C(CTC)および(B)重炭酸アンモニウムバッファpH7-8中の50μMのAβ1-40と混合された10μMのCTproSP-Cを示す。図9Cは、混合試料中でm/z 3484で観察されたイオンが、MS/MSのために選択され、使用された衝突電圧は80Vであった。図9Dは、標識されたCTproSP-C/Aβ複合体から放出された Aβ1-40に対応するピークを伴う図9Cからの1000および1600の間の範囲のm/zの拡大である。
【0139】
衝突電圧は、10から80Vに増大され、複合体の十分な崩壊が明らかとなった。これは、多くの娘イオンを生じ、主に、CTproSP-C and Aβ1-40のモノマーに対応するが、CTproSP-Cトリマーにも対応する(図9Cおよび9D)。興味深いことに、娘イオンヘキサマー中でCTproSP-Cが見いだされ、これは少なくとも一部武運の選択されたイオンが実際に [6CTproSP-C+2Aβ]34+またはより大きなヘテロマーに対応することを示す。また、衝撃後のスペクトルにおける存在も、10 (m/z 4087)および9 (m/z 4541)電荷を有するダイマーCTproSP-Cおよびモノマー化されたAβ1-40からなるヘテロマーであり、これはMSモードにおいては見られなかった(図9Cおよび9D)。
【0140】
従って、ESI質量分析を使用すると、主に見出される複合体は、モノマーAβと相互作用しているCTproSP-Cトリマーであった(図8)。CID実験は、複合体のAβ/CTproSP-C特性を確認した(図9)。CTproSP-C/Aβ 複合体のストイキオメトリは、SECおよびESI-MSとの間の違いを明らかにした。ESI-MSは、直接のCTproSP-C/Aβ 相互作用を破壊することなく、Aβミセルまたは同様の凝集を破壊することにおいてSECよりもより効果的であるかもしれない。SECおよびESI-MSデータの組み合わせは、CTproSP-Cトリマーが十二量体アッセンブリにおいて存在するAβ分子に対して結合することを示唆する。
【0141】
[例11− シャペロンアッセイ]
CTproSP-Cの古典的なシャペロンとして作用する能力、例えば、不安定なタンパク質の凝集を防止すること、を評価するために、アルコール脱水素酵素またはインスリンのいずれか使用するアッセイを使用した。
【0142】
CTproSP-C存在および不在でパン酵母からのADHの熱誘導性凝集を、50℃15分で処理した後、Cary 3 分光光度計(Varian Techtron, Mulgrave, Australia)において光散乱(360nmで吸収)を測定した。全ての実験は、ADHおよび6.25μMの各CTproSP-C濃度で行い、試料を20mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.4、150mM塩化ナトリウムで調整した。
【0143】
図10Aは、ADHの熱誘導性凝集とCTproSP-C の等モル量の不在(破線)および存在(実線)でのインスリンの還元誘導性凝集を示す。50℃で、ADHは5分以内に凝集を開始した。等モル量のCTproSP-Cの添加は、ADH凝集の前の遅滞期の短い延長を引き起こした。好ましいの効果は、例えば、ADH凝集を完全に阻害するsHspαクリスタリンなどのシャペロンの効果と比較して小さい(JI Clark & QL Huang, Proc Natl Acad Sci USA 93: 15185-15189, 1996)。
【0144】
CTproSP-C存在および不在のインスリンのβシャペロンの還元誘導性凝集は、同様に360nmで明らかな吸収が測定されたことによりモニターされた。50mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.0中の40μMインスリン(Sigma, Sweden)を含む溶液と、CTproSP-C含有および非含有、モル比1:1を5分間41℃でプレインキュベートした。ジチオスレイトール(DTT)を次に最終濃度20μMで添加し、360nmでの吸収における電荷を15分間41℃でモニターした。
【0145】
図10Bは、等モル量のCTproSP-C(CTC)の不在(点線)および存在(実線)におけるインスリンの還元誘導性凝集を示す。41℃でのインスリンの還元は、約3ubn後に凝集を開始した。モル比1:1のCTproSP-Cの添加は、全くインスリン凝集に影響しなかった。
【0146】
CTproSP-CがADHおよびインスリンの凝集を防止することができないことがこの結果から明らかになった。これはCTproSP-Cが、伝統的なシャペロン、例えば、Hsp70またはHspsの典型的な特性を有していないことを示す。
【0147】
[例12−CTproSP−CおよびそのBrichosドメインの基質結合特異性]
切断型ヒトCTproSP−Cを例1に記載の通りに作製した。このタンパク質は、原型のBrichosドメインの位置94と比べて、proSP-Cにおける位置86で開始し、結果としてヒトCTproSP−CのBrichosドメインの伸長型を得た。伸長型CTproSP−CBrichos タンパク質の配列は配列番号21である。
【0148】
伸長型CTproSP−CBrichosとCTproSP-Cの基質結合特異性を、種々の濃度のトリペプチドVVVおよびLLLの存在下でESI-MSにより試験した。タンパク質-トリペプチドヘテロマー[PL]およびタンパク質(即ち、伸長型CTproSP-CBrichosまたはCTproSP-C)[P]の相対的な濃度は、逆重畳積分スペクトルから決定した。 [PL]/[P]の比は、トリペプチド濃度を関数として、プロットして両方のタンパク質と両方のリガンドについての結合曲線を得た。図11に示す通り、伸長型CTproSP-CBrichos (「BRICHOS」)およびCTproSP-C(「CTC」)は、2つのトリペプチドLLL(図11A)およびVVV(図11B)に対して同様に結合したことが分かった。従って、伸長されたBrichosドメインは、完全長CTproSP-Cと同様の基質結合プロフィールを有する。
【0149】
[例13−Aβ ペプチドおよびCTCとの円偏光二色性(CD)分光学的試験]
Aβは、βシート構造を形成し、それによりその凝集を導き、最終的にフィブリルを形成する。我々の目的は、CTproSP-Cが、ランダムコイル状態にあるAβペプチドを安定化するか否か、それによりAβペプチドをβシートおよびフィブリル形成から妨げるか否かを決定することである。CTproSP-Cは、Aβ ペプチドと相互作用することが分かっているタンパク質である。我々は、Aβ(1-40) およびAβ(1-42) を使用して、それらのCTproSP-Cとの相互作用の試験をCD分光学的分析を使用して行った。
【0150】
Aβ ペプチドは、TFAおよびHFIPにより調製し、その後20mMのNaOHに200μMの濃度でボルテックスと超音波により溶解した。ペプチド溶液を次に10mMのリン酸ナトリウムバッファpH7で希釈し、最終ペプチド濃度を20μMにした。CTproSP-Cを20μMの濃度で使用した。遠UV領域(190-260nm)におけるCDスペクトルを22℃で分光偏光計(Jasco, Tokyo, Japan)を用いて、バンド幅1nmと反応時間2秒を用いて記録し、10データポイント/nmを回収した。mdegにおけるCDシグナルを波長の関数としてプロットした。
【0151】
Aβ(1-40)およびAβ(1-42)は、主にランダム二次構造から時間t=0で数時間後までβシートに支配される構造に変換した。Aβ(1-40) またはAβ(1-42) 単独の挙動とは対照的に、等モル量でのCTproSP−Cの存在は、事実上少なくとも5時間は不変のAβ立体構造を維持する。CTproSP−CとAβ(1-40) またはAβ(1-42)との混合物のCDスペクトラから、CTproSP−Cからの寄与が減算された。結果は、両方のAβペプチドが主にランダム立体構造を維持し、それによりβシート凝集を観察期間に亘り回避することを示す。
【0152】
同じデータを示す代替的な方法は、217nm(βシート含有量の測定)でのCDシグナルの大きさの展開を経時的にCTproSP-C「CTC」存在および不在でのAβ(1-40) およびAβ(1-42)についてプロットすることであり、図12に示す通りである。これは、経時的にAβ(1-40) (図12A)またはAβ(1-42) (図12B)の CD217nm シグナルの大きさの増大(四角)を示し、CTproSP-C (丸)存在(1:1)は、大きくこの増大を防止する。
【0153】
これらの結果は、ヒトCTproSP-CがAβ(1-40) および Aβ(1-42)における同じ構造上の効果を有することを示す。
【0154】
[例14−細胞培養実験]
Aβ重合化は、培養物中の細胞に対して毒性のアッセンブリを生じる。MTT (3-(4, 5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルルテトラゾリウムブロミド)を使用して、CTproSP-C または CTproSP-CBrichos存在または不在における重合型のAβ1-42で処理した後のPC12細胞の酸化的能力についてモニターした。
【0155】
PC12細胞は、10%のウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン(National Veterinary Institute, Sweden)添加DMEM中、5%の二酸化炭素中で培養する。細胞が適切な密度で96ウェル細胞+プレート(Sarstedt, Sweden)に配置される。次の日、培地を10%のウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン含有しフェノールレッドを含まないDMEMに交換した(45μl/ウェル)。典型定期に、Aβ1-42 は10μMで、(5μl/ウェル)結果として最終濃度1μMに直接(4時間処理実験)に、または37℃での4時間のプレインキュベートの後に(18時間処理実験)のいずれかで、単独か、または等モル量または5倍のモル過料濃度でCTproSP-C またはCTproSP-CBrichos と共に、添加される。PBSをAβ調製物のために使用する溶媒と同じ量でコントロール処理として使用する。細胞を4または18時間、処理と共にインキュベートし、およびその後フェノールレッドを含まないDMEM中に0.6mg/mlで溶解したMTTを添加し(50μl/ウェル)、最終濃度0.3mg/mlMTTを得て、2時間37℃で細胞とインキュベートする。紫色のホルマザン結晶構造を、細胞培養用の培地に対して直接に添加する50%のジメチルホルムアミドおよび20%のSDSを水中に含む可溶化バッファを使用して溶解する。575nmでの吸収を記録して、コントロール処理を100%生細胞と設定する。
【0156】
[例15−遺伝子組み換えマウスにおける実験]
ヒトにおけるアルツハイマー病に関連する1または幾つかの突然変異を有するヒトAβ 前駆物質 (APP)を発現しているマウスを、典型的に使用して、治療戦略の評価を行う。ウェディッシュ変異(APP K670N/M671L)のみを有するAPP発現マウスに対して、またはアルクチック変異を追加したスウェディッシュ変異(APP E693G) (Lord A et al., Neurobiol Aging 27: 67-77, 2006)APP発現マウスに対して、CTproSP-C またはCTproSP-CBrichosを3-15mg/kgの用量で、10-30週に亘り、週1回から3回、静脈内、腹腔内、鼻腔内または頭蓋内投与する。治療の効果を、偽−、または未処理コントロールに比較してCHSにおけるプラーク沈着の組織学的試験により評価したが、これらを可溶性および非可溶性Aβの量および行動パラメータなどの他の測定にも使用する。
【0157】
[例16−ヒトへの投与]
CTproSP-CまたはCTproSP-CBrichos は、3-15mg/kgの用量で、10-30週に亘り、週1回から3回、静脈内、腹腔内、鼻腔内または頭蓋内に、健康な個体およびアルツハイマー病を罹患した個体に対して投与される。治療の効果は、偽−、または未処理コントロールと比較してCNSにおけるプラーク沈着の組織学的試験により評価した。可溶性Aβおよび非可溶性Aβの量および行動パラメータなどの他の測定にも使用する。
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は医薬の分野に関する。更に具体的には、本発明は、ヒトなどの哺乳類におけるアルツハイマー病の治療および薬物療法のための薬物に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
アルツハイマー病は、ヒトにおける認知症の最も一般的な原因の1つである。それは、アミロイドβ-ペプチド (Aβ-ペプチド)の細胞外沈着からなるアミロイドプラークの存在により特徴付けられる、罹患した個体の脳における神経細胞変性に関連する慢性的かつ致命的な疾患である。Aβ凝集に起因する神経細胞萎縮は、アセチルコリンおよび他の情報伝達物質の欠乏を生じる。40-42アミノ酸残基を有するAβ-ペプチドはアミロイド前駆物質タンパク質 (APP)のプロセッシングによって生成されることが知られており、アミロイド前駆物質タンパク質は中枢神経系のニューロンにより正常に発現される膜タンパク質であるが、このプロセッシングの理由は完全には理解されていない。放出されたAβ ペプチドは、APP (Aβ 残基 29-40/42)の膜貫通領域の一部を含み、かつ不一致のヘリックス、すなわちβ-ストランドを形成する高い性向を有するアミノ酸から構成されるヘリックスを含む。Aβは、その安定化している膜環境から外れると、誤った折り畳みおよび凝集を起こしやすい。
【0003】
アルツハイマー病の治療に対する現在の治療的なアプローチは、主に症状を治療することに向けられ、且つコリン作動性交換療法、例えば、アセチルコリンエステラーゼの阻害、可溶性Aβオリゴマーと相互作用する低分子量阻害剤、および既に形成されたβシート構造の伸長を妨げる、所謂、βシートブレーカーなどを含む。
【0004】
凝集を妨げるために示唆されるもう1つの戦略は、シャペロンと機能的に定義される分子を利用することである。シャペロンは、複雑な細胞内環境においてタンパク質の正確な折り畳みを助けることにより重要な役割を演じている。多くの分子的シャペロン、例えば、ヒートショックタンパク質(Hsp)が折り畳み過程において重要であることが知られており、広範に研究されている。これらのシャペロンの幾つかも明らかにあるポリペプチドのアミロイドフィブリルと相互作用し、影響を与え得る。Aβ1-42 の凝集は、Hsp90または組み合わせHsp70/Hsp40により阻害される(CG Evans et al, J Biol Chem 281: 33182-33191, 2006)。更に、細胞外シャペロンクラスタリン(アポリポタンパク質 J)は、Aβを含む多くのポリペプチド(E Matsubara et al, Biochem J 316(Pt 2): 671-679, 1996)およびプリオンタンパク質のフラグメント(S McHattie and N Edington, Biochem Biophys Res Commun 259: 336-340, 1999)のフィブリル形成を阻害することが示されている。構造的に多様なシャペロンのアミロイド疾患の抑制における役割は、証明されておらず、幾つかの報告さえも、タンパク質シャペロンがアミロイドフィブリル形成を促進することを示す(例えば、SK DebBurman et al. Proc Nat Acad Sci USA 94: 13938-13943, 1997を参照)。分子的シャペロンに加えて、化学的および薬理学的シャペロンの効果が誤った折り畳み疾患との関連で研究されている。シャペロンまたは他の手段を使用する如何なる有効な療法も、今までのところ、何れのアミロイド疾患についても見出されていない。
【0005】
Aβペプチドに対するモノクローナル抗体は、神経毒性のフィブリルへの凝集を妨げ、既に形成されたアミロイドを溶解する。しかしながら、抗体療法は、非常に効果であり、多様に重篤な副作用を付随する。アルツハイマー病の遺伝子組換えマウスモデルにおけるβ-アミロイドでのワクチン接種は、アミロイドプラークの数と全体的なアミロイド量の有意な減少と、認識能力におけるある程度の改善さえも示す。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、Aβ-ペプチドのアミロイドフィブリルへの凝集を減少することである。
【0007】
また本発明の目的は、哺乳類の脳におけるAβ-ペプチドの細胞外沈着からなるアミロイドプラークの形成を減少することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療のための新しい治療の選択肢を提供することである。
【0009】
以下の記述から明白であろうこれらの目的および他の目的のために、本発明は、(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質C前駆物質(CTproSP-C)のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;および(ii) ヒト(配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;
からなる群より選択される、薬物として使用するための単離タンパク質を提供する。
【0010】
驚くべきことに、この単離されたタンパク質が、アミロイドフィブリル形成の減少およびAβ-ペプチドの凝集の減少する能力を有することが見出された。これは、特に、CTproSP-Cシャペロン活性とアルツハイマー病に関連するAβ-ペプチドのための内因性のターゲット(SP-CおよびproSP-C)の間の構造的な相違の観点において驚くべきことである。また、proSP-C遺伝子が肺組織においてのみ発現することからも非常に驚くべきことである。本発明は、ここにおいて開示される、CTproSP-Cの基質特異性についての驚くべき洞察に基づくものであり、これは従来においては知られていなかった。
【0011】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(a) 哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの全ての保存された残基(配列番号18)、および(b1) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性;または(b2) ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性;を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号18)は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)の以下の全ての保存された残基を含む:Phe-1、Gly-4、Ser-5、Thr-6、Gly-7、Val-9、Asp-12、Tyr-13、Gln-14、Leu-16、Leu-17、Ala-19、Tyr-20、Lys-21、Pro-22、Ala-23、Pro-24、Gly-25、Thr-26、Cys-28、Tyr-29、Met-31、Lys-32、Ala-34、Pro-35、Ile-38、Pro-39、Ser-40、Leu-41、Glu-42、Ala-43、Arg-46、Lys-47、Gln-70、Gly-73、Gly-77、Ser-81、Phe-87、Leu-88、Gly-89、Val-92、Thr-94、Leu-95、Cys-96、Gly-97、Glu-98、Pro-100、Leu-101およびTyr-103。
【0012】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(a) 哺乳類のCTproSP-C (配列番号11)の全ての保存された残基、および(b) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-Cの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号11)は、ヒト CTproSP-C (配列番号2)の以下の全ての保存された残基を含む;His-1、Met-2、Ser-3、Gln-4、Lys-5、His-6、Thr-7、Glu-8、Met-9、Val-10、Leu-11、Glu-12、Met-13、Ser-14、Pro-18、Glu-19、Gln-21、Leu-24、Ala-25、Thr-32、Ala-34、Thr-35、Phe-36、Gly-39、Ser-40、Thr-41、Gly-42、Val-44、Asp-47、Tyr-48、Gln-49、Leu-51、Leu-52、Ala-54、Tyr-55、Lys-56、Pro-57、Ala-58、Pro-59、Gly-60、Thr-61、Cys-63、Tyr-64、Met-66、Lys-67、Ala-69、Pro-70、Ile-73、Pro-74、Ser-75、Leu-76、Glu-77、Ala-78、Arg-81、Lys-82、Gln-105、Gly-108、Gly-112、Ser-116、Phe-122、Leu-123、Gly-124、Val-127、Thr-129、Leu-130、Cys-131、Gly-132、Glu-133、Pro-135、Leu-136 and Tyr-138。
【0013】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(i) ヒト CTproSP-C (配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および(ii) ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される。
【0014】
ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、500または500未満、例えば、250または250未満、例えば、200または200未満、例えば、150または150未満のアミノ酸残基からなる。ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、consists of 90または90以上の、例えば、100または100以上の、例えば、150アミノ酸残基または150以上のアミノ酸残基からなる。好ましい大きさの範囲は、90〜200アミノ酸残基、例えば、100〜150アミノ酸残基である。
【0015】
1つの態様において、単離されたタンパク質は、(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-C、および(ii) ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメイン、からなる群より選択される。
【0016】
特定の態様において、単離されたタンパク質は、
ヒト CTproSP-C (配列番号2)、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)、および配列番号21を有するヒトからのCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメインからなる群より選択される。配列番号21を有する伸長されたBrichosドメインの利点は、Brichosドメインよりもより安定性であり、一方で、Brichosドメインおよび伸長されたBrichosドメインの両方ともが全長CTproSP-C タンパク質と同じ機能を有する。ある態様において、単離されたタンパク質は、ヒト CTproSP-C (配列番号2)である。もう1つの態様において、単離されたタンパク質は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)である。
【0017】
1つの態様において、当該ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188対応する位置はグルタミンではない。更なる態様において、ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188対応する位置は厳密に保存される。
【0018】
1つの態様に従うと、単離されたタンパク質は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療における使用に適している。
【0019】
1つの態様に従うと、本発明は、予防的、対症および治療的療法からなる群より選択される治療を提供する。
【0020】
もう1つの側面に従うと、本発明は、治療学的に有効量の本発明に従う単離されたタンパク質およびそのために適切な薬学的担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
1つの態様に従うと、薬学的組成物は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療において有用である。
【0022】
1つの側面に従うと、本発明は、治療学的に有効量の本発明に従う単離されたタンパク質または本発明に従う薬学的組成物を、それを必要とするヒトを含む哺乳類に対して投与することを含む前記哺乳類おけるアルツハイマー病を治療する方法を提供する。
【0023】
1つの態様に従うと、本発明は、予防的、対症および治療的療法からなる群より選択される治療を提供する。
【0024】
もう1つの側面に従うと、本発明は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療のための薬物の製造ために本発明に従う単離タンパク質の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、既知の哺乳類のCTproSP-Cアミノ酸配列(配列番号2、5-11)のproSP-Cプロセッシングおよびアラインメントの概略図を示す。
【図2】図2は、セルロース膜上のSP-C誘導ペプチドスポットへのCTproSP-CBrichosおよびCtproSP-Cの結合を示す。
【図3】図3は、セルロース膜上のペプチドスポットへのCTproSP-Cの結合、Aβ ペプチド試料のSDS-PAGEおよびAβ ペプチド試料の透過電子顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、Aβペプチド試料の透過電子顕微鏡写真を示す。
【図5】図5は、CTproSP-Cを伴ってまたは伴わないでインキュベートされた可溶性AβペプチドフラクションのSDS-PAGEを示す。
【図6】図6は、Aβ ペプチド単独、またはCTproSP-Cの存在でのAβ ペプチドについてのMALDI-MSグラフを示す図である。
【図7】図7は、抗体4G8またはS-タンパク質でプローブ化されたAβおよびAβ+CTproSP-CのSECフラクションのイムノブロット法分析を示す。
【図8】図8は、重炭酸アンモニウムバッファ中でAβと混合されたCTproSP-Cのナノ−スプレーESI-MSスペクトルを示す。
【図9】図9は、CTproSP-CおよびCTproSP-CとAβとの混合物のナノ−スプレーESI-MSスペクトルを、前記混合物のMS/MSスペクトルと共に示す。
【図10】図10は、ADHの熱誘導性凝集とCTproSP-C の等モル量の不在および存在でのインスリンの還元誘導性凝集を示す。
【図11】図11は、CTproSP-Cまたは切断されたCtproSP-Cに対するターゲットペプチドの相対的な結合をターゲットペプチド濃度の関数として示す。
【図12】図12は、CTproSP-Cを伴うおよび伴わないAβ(1-40)およびβ(1-42)についての経時的な217 nmでのCD信号の大きさを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[添付配列の一覧]
配列番号1 ヒト proSP-C
配列番号2 ヒト CTproSP-C
配列番号3 ヒト SP-C
配列番号4 ヒト CTproSP-CBrichos
配列番号5 ウシ CTproSP-C
配列番号6 アカゲザル CTproSP-C
配列番号7 マウス CTproSP-C
配列番号8 ミンク CTproSP-C
配列番号9 ウサギ CTproSP-C
配列番号10 ラット CTproSP-C
配列番号11 保存された哺乳動物 CTproSP-C
配列番号12 ウシ CTproSP-CBrichos
配列番号13 アカゲザル CTproSP-CBrichos
配列番号14 マウス CTproSP-CBrichos
配列番号15 ミンク CTproSP-CBrichos
配列番号16 ウサギ CTproSP-CBrichos
配列番号17 ラット CTproSP-CBrichos
配列番号18 保存された哺乳動物 CTproSP-CBrichos
配列番号19 ヒト Aβ ペプチド1-40
配列番号20 S-tagged ヒト CTproSP-C
配列番号21 ヒト CTproSP-CBrichos 86-197
[発明の詳細な説明]
驚くべきことに、CTproSP-C (「CTC」としても知られる)、哺乳類の CTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質が、アミロイドフィブリル形成およびAβペプチドの凝集を減少する能力を有することが見出された。
【0027】
最初の側面に従うと、本発明は、
(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質 (CTproSP-C)のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
(ii)ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される、薬物として使用するための単離タンパク質を提供する。
【0028】
本明細書および付属する特許請求の範囲を通じて使用されるとき、用語「%同一性」は、以下の通りに算出される。照会配列は、CLUSTAL W アルゴリズム(Thompson, J.D., Higgins, D.G. and Gibson, T.J., Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680 (1994))を使用してターゲット配列に対して整列される。比較が、整列された配列の最短に対応する窓に亘り行われる。各位置のアミノ酸残基が比較され、ターゲット配列における同一の対応を有する照会配列における位置のパーセンテージが%同一性として報告される。
【0029】
本明細書および付属する特許請求の範囲に亘って使用されるとき、用語「%類似性」は、疎水性残基、Ala、Val、Phe、Pro、Leu、Ile、Trp、MetおよびCysが類似する;塩基性残基Lys、ArgおよびHisが類似する;酸性残基GluおよびAspが類似する;親水性、無電荷残基Gln、Asn、Ser、ThrおよびTyrが類似するという例外を伴って、「% 同一性」について記載された通りに算出される。残りの天然アミノ酸Glyは、これに関連して何れの他のアミノ酸とも類似しない。
【0030】
この説明に亘って本発明に従う代替的な態様は、同一性の特定のパーセンテージに変わり、対応する類似性のパーセンテージを実現する。他の代替的な態様は、同一性の特定のパーセンテージ、並びに、もう1つの、各配列についての同一性の好ましいパーセンテージの群より選択された、より高いパーセンテージの類似性を実現する。例えば、単離されたタンパク質配列は、もう1つのタンパク質配列に対して70%類似性であってよく;または、それはもう1つの配列に対して70%同一性であってもよく;またはそれはもう1つの配列に対して70%同一性であり、更にその上90%類似性であってもよい。
【0031】
肺サーファクタントタンパク質 C (SP-C;配列番号3)は、35アミノ酸残基を有する疎水性、アシル化された膜貫通ペプチドである。それは197アミノ酸残基(191 aa 変異体がヒトを含む若干の種において存在する)のプロタンパク質、肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質 (proSP-C; 配列番号1)として合成される。ProSP-Cは、肺胞型II上皮細胞においてのみ発現され、小胞体(ER)膜タンパク質内に、そのC末端がERルーメン内に固定される。ProSP-Cは、蛋白分解性の切断を受け(図1Aを参照)、成熟したSP-Cペプチドは、ヒトproSP-Cの残基24-58に対応する。SP-Cと他のタンパク質および脂質成分は、肺胞に分泌され、気液界面での表面張力を低下する原因になり、それによって、呼気の終わりの肺胞圧潰を防ぐ。図1Aにおいて更に説明される通り、proSP-Cのプロセッシングは、C末端フラグメント、肺サーファクタントタンパク質C前駆物質(CTproSP-C;配列番号2、5-10;図1B)のC末端ドメンインを生成する。成熟したCTproSP-Cタンパク質は、ヒト proSP-Cの残基59-197に対応する。
【0032】
ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、500未満または500、例えば、250未満または250、例えば、200未満または200、例えば、150未満または150のアミノ酸残基からなる。ある態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、90または90以上、例えば、100または100以上、例えば、150または150以上のアミノ酸残基からなる。好ましい大きさの範囲は、90〜200アミノ酸残基、例えば、100〜150アミノ酸残基である。
【0033】
SP-C (配列番号3)、および従ってproSP-C (配列番号1)はまた、これはβストランドを形成する高い性向を有するバリン、イソロイシンおよびロイシン(「ポリVal領域」)からなる膜貫通(TM)α-へリックス(残基9-34に対応する)を含む。それは良好に保存され、公知の相同なタンパク質を欠く。不調和なSP-Cへリックスは、従って、溶液中で準安定であり、自然発生的にβシート凝集およびアミロイドフィブリルに変換する。SP-Cフィブリルは、肺胞タンパク症(PAP)患者の肺胞において観察されるが、正常な対照において観察されない。
【0034】
更に、CTproSP-C (配列番号2)、および従って、proSP-C (配列番号1)は、Brichosドメイン (CTproSP-CBrichos; 配列番号4)として公知のドメインを含み、ヒトproSP-Cの残基94-197(配列番号1)に対応する。Brichosドメインは約100アミノ酸を含み、退行性および増殖性疾患に関連する幾つかのタンパク質において見出され、例えば、アミロイド形成および家族性ブリティッシュおよびデンマーク認知症に関連するBri、並びに、胃癌に関連するCA11において見出される。また、Brichosドメインにおける突然変異体、proSP-Cミスホールディングおよび細胞内凝集が、肺疾患と関連することも知られている。エクソンの欠失を有するproSP-C(proSP-CΔExon4)の発現の増加は、C末端短縮化プロタンパク質を生成し、遺伝子組み換えマウスにおける肺異常形態発生および形質移入された細胞におけるERストレスを引き起こす。Brichosドメインにおけるもう1つの突然変異体は、プロタンパク質における位置188でのロイシンについてのグルタミンの置換を引き起こし、これは優勢遺伝性の間質性肺疾患に関連する。肺由来A549細胞またはヒト胚腎(HEK)293 細胞におけるBrichos突然変異体proSP-CΔExon4またはproSP-CL188Qの発現は、不溶性の凝集の形成を増加し、これはアポトーシスを引き起こす。これに対して、Brichosドメインと膜貫通ドメイン (SP-C)との間の領域に位置する2つの他の突然変異体、proSP-CI73TおよびproSP-CE66Kは、細胞内輸送の変化と関連するが、凝集とは関連しない。従って、proSP-CおよびCTproSP-CのBrichosドメインは、(pro)SP-C凝集の防止に関係する。1つの態様において、ヒト proSP-Cにおけるロイシン188に対応する位置はグルタミンではない。更なる態様において、ヒト proSP-Cにおけるロイシン188に対応する位置は厳密に保存される。明らかに、ヒト proSP-Cにおけるロイシン188に対応する位置は、CTproSP-C (ヒトにおけるロイシン130)およびCTproSP-CBrichos (ヒトにおけるロイシン95)並びに若干の他の種において異なる番号を有し、図1B並びに配列番号1-2および4-18を参照されたい。
【0035】
CTproSP-Cは、非へリックスSP-Cのポリバリン部分に対して結合し、この結合は、混合性CTproSP-C/SP-C系のヘリックス含量を増加する結果を導く。特に、組換えヒトCTproSP-Cの完全長非ヘリックスSP-Cへの結合が、SP-Cのαヘリックス形成を導く。
【0036】
組換えヒト CTproSP-CのSP-Cへの結合は、CTproSP-C Brichosドメイン(ヒト proSP-C94-197;配列番号4) および疎水性残基(Val、Leu、Ile)を含むSP-C「poly-Val」領域(SP-C13-35)において見出されるモチーフの結合を介して生じる。
【0037】
ProSP-Cはまた、他の哺乳類種においても発現され、対応するSP-CおよびCTproSP-C切断産物が提供される。ウシ、アカゲザル、マウス、ミンク、ウサギおよびラットからの対応するCTproSP-Cアミノ酸配列を配列番号3-8に示す。(70%同一性よりも大きい)それらの高度な保存は、天然環境においてSP-CとproSP-Cとの安定化に関わる、ヒト CTproSP-Cと共通する機能に関係するが、ここにおいて開示されるように、Aβタンパク質の安定化を含む。ここで示されたように、CTproSP-Cのこれらの2つの機能は、構造上の関連があり、本発明は、従って、何れかの哺乳類のCTproSP-C、特に、ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して、好ましくはヒトからのCTproSP-C(ヒト proSP-C59-197;配列番号2)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。
【0038】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号2、5-10)の高度な保存は、図1Bから明らかであり、図1Bは、公知の哺乳類種間で厳密に保存されたアミノ酸残基を示す(「ストリクト(Strict)」; 配列番号11)。これらのアミノ酸残基の保存は、CTproSP-Cにおけるこれらのアミノ酸残基の機能と関連する。好ましい態様において、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基は、保存されたアミノ酸残基と同一であり、即ち、単離されたタンパク質は、配列番号11の定義されたアミノ酸残基を含む。即ち、あるCTproSP-Cに対する全体的な同一性/類似性の度合いに加えて、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基が、この態様における保存されたアミノ酸残基と一致している。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-Cの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号11)は、全て以下のヒト CTproSP-C(配列番号2)の保存された残基を含むことを示す:His-1、Met-2、Ser-3、Gln-4、Lys-5、His-6、Thr-7、Glu-8、Met-9、Val-10、Leu-11、Glu-12、Met-13、Ser-14、Pro-18、Glu-19、Gln-21、Leu-24、Ala-25、Thr-32、Ala-34、Thr-35、Phe-36、Gly-39、Ser-40、Thr-41、Gly-42、Val-44、Asp-47、Tyr-48、Gln-49、Leu-51、Leu-52、Ala-54、Tyr-55、Lys-56、Pro-57、Ala-58、Pro-59、Gly-60、Thr-61、Cys-63、Tyr-64、Met-66、Lys-67、Ala-69、Pro-70、Ile-73、Pro-74、Ser-75、Leu-76、Glu-77、Ala-78、Arg-81、Lys-82、Gln-105、Gly-108、Gly-112、Ser-116、Phe-122、Leu-123、Gly-124、Val-127、Thr-129、Leu-130、Cys-131、Gly-132、Glu-133、Pro-135、Leu-136 and Tyr-138。
【0039】
図1Bのアラインメントからのもう1つの知見は、保存された哺乳動物配列は個々の哺乳類種の配列に関するギャップを含むことである。従って、例えば、ヒト CTproSP-Cに対する単離されたタンパク質のアラインメントは、例えば、0〜5のギャップまたは0〜3のギャップなどの幾つかのギャップを含んでよいことが認識される。ヒトCTproSP-Cにおいて、残基88-93、101-103および115は、ある哺乳類種において喪失しており、一方で、1または1以上の哺乳類種は、ヒトCTproSP-Cの残基16-17および115-116の間に更なる残基を有する。
【0040】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のCTproSP-Cタンパク質、特にヒト(配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cタンパク質、特にヒト(ヒト proSP-C59-197;配列番号2)からのCTproSP-Cであるタンパク質を含む。表記「CTproSP-C」は、一般に何れかの哺乳類のCTproSP-C、好ましくはヒトCTproSP-Cをいう。
【0041】
更に、CTproSP-CのBrichosドメインは、完全長CTproSP-Cと同じ結合能力を有する従って、本発明は、哺乳類のBrichosドメイン、好ましくはヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット(配列番号10) CTproSP-CのBrichosドメイン、より好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C94-197; SEQ ID NO:2)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。
【0042】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のBrichosドメイン、好ましくはヒト、ウシ、アカゲザル、マウス、ミンク、ウサギまたはラット CTproSP-CのBrichosドメイン、より好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C94-197;配列番号2)を含むタンパク質を含む。表記「proSP-CのBrichosドメイン」、「proSP-CBrichos 」、「CTproSP-CのBrichosドメイン」および「CTproSP-CBrichos」は、一般に何れかの哺乳類のproSP-CのBrichosドメイン、および好ましくはヒト proSP-CのBrichosドメインをいう。
【0043】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質特に、ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) またはラット (配列番号18)からのCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質;および好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C59-197; 配列番号4)であるタンパク質を含む。
【0044】
哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4、12-17)の高度な保存は、図1Bから明白であり、公知の哺乳類種間で厳密に保存されたアミノ酸残基が示されている(「ストリクト(Strict)」; 配列番号18)。これらのアミノ酸残基の保存は、CTproSP-CBrichosにおけるこれらのアミノ酸残基の機能に関連する。好ましい態様において、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基は保存されたアミノ酸残基に一致し、即ち、単離されたタンパク質は、配列番号18の定義されたアミノ酸残基を含む。即ち、あるCTproSP-CBrichosに対する同一性/類似性の全体的な程度に加えて、哺乳類種間で保存されたアミノ酸残基に対応する単離されたタンパク質のそれらのアミノ酸残基がこの態様における保存されたアミノ酸残基に対して同一である。言い換えれば、この態様は、対応する位置において、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインの全ての保存された残基を有する単離されたタンパク質(配列番号18)は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)の以下の全ての保存された残基を含むことを示す:Phe-1、Gly-4、Ser-5、Thr-6、Gly-7、Val-9、Asp-12、Tyr-13、Gln-14、Leu-16、Leu-17、Ala-19、Tyr-20、Lys-21、Pro-22、Ala-23、Pro-24、Gly-25、Thr-26、Cys-28、Tyr-29、Met-31、Lys-32、Ala-34、Pro-35、Ile-38、Pro-39、Ser-40、Leu-41、Glu-42、Ala-43、Arg-46、Lys-47、Gln-70、Gly-73、Gly-77、Ser-81、Phe-87、Leu-88、Gly-89、Val-92、Thr-94、Leu-95、Cys-96、Gly-97、Glu-98、Pro-100、Leu-101およびTyr-103。
【0045】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質、特異的に、ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号18)からのCTproSP-CのBrichosドメインタンパク質、好ましくはヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(ヒト proSP-C59-197; 配列番号4)であるタンパク質を含む。
【0046】
特定の態様において、単離されたタンパク質は、BrichosドメインおよびCTproSP-Cの非Brichos部分からの多くの残基を含んでもよい。例えば、配列番号21は、ヒトCTproSP-CのBrichosドメインとヒトCTproSP-Cの非Brichos部分からの8つの更なるアミノ酸残基を含む。機能は維持されるが、得られるタンパク質は、Brichosドメイン単独よりもより安定し、従って、非凝集タンパク質をより高い収率で得ることにおいて有利である。
【0047】
細胞膜内部において、ポリペプチドは、無極性の側鎖を曝して、極性の主鎖を隠す必要がある。従って、バリン、イソロイシン、ロイシンおよびフェニルアラニンのみが小胞体(ER)膜への挿入が促進し、α-ヘリックス形成は、挿入過程の重要な一部分である。ProSP-Cは、多くのバリンおよび幾つかのイソロイシンおよびロイシンからなる単一のα-ヘリックス膜貫通ドメインを有する完全なER膜タンパク質であり、このドメインが成熟SP-C(ヒト SP-C、配列番号3)を産生する。バリンおよびイソロイシン残基の高いβシート性向のために、また、この特徴が、SP-CおよびproSP-Cをインビトロおよび生細胞の両者においてβシートポリマー(アミロイドフィブリル)を形成し易くする。
【0048】
内因性の抗アミロイド機能が存在し、それによりERルーメンのproSP-C (CTproSP-C)のC末端ドメインは、未解決の機序を介して、proSP-CおよびSP-Cの膜貫通セグメントが凝集からβシートになるのを防止する。SP-Cは、高度に保存され、相同性タンパク質を欠き、その疎水性「プロVal」領域はバリン、イソロイシンおよびロイシンを含む。しかしながらCTproSP-Cの親和性は、驚くべきことにこれらの3つの疎水性アミノ酸残基に限定されるものではない。CTproSP-Cは、前例のない特異性で、7つの残基セグメントに対して5つを認識する。CTproSP-Cは、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニンまたはチロシンの伸展に対して結合するが、アラニン、トリプトファン、グリシン、プロリンまたはトレオニン対応物に対しては結合しない。従って、CTproSP-C は、生物学的な疎水性スケールに従う膜挿入を促進する残基(T Hessa et al, Nature 433, 377-381, 2005)およびチロシンに対して結合する。生物学的な疎水性スケールとCTproSP-C基質特異性との間の例外は、セルロース結合型ペプチドに対する結合により明らかになるように、CTproSP-Cがチロシンの伸展に対して結合することである。これは、チロシン残基がCTproSP-Cにおいて露出されており、疎水性染料1,1'-ビス(4-アニリノ-5,5'-ナフタレンスルホネート)と結合することにより説明することができる。更に、CTproSP-Cは、非らせん状高次構造においてペプチドに対して排他的に結合する。
【0049】
CTproSP-Cの特異的な基質は、Hsp70ファミリーシャペロンBiPおよびDnaKと類似性を有し、BiPはER膜を介したそれらの移動の後に疎水性ポリペプチドと結合する。BiPは、結合のために伸長したペプチド構造の要求性と適合性の疎水性残基のパターンの変化で7残基ペプチドセグメントを認識する。しかしながら、バリンは、BiPに対して結合しているペプチドにおいて過少に評価され、一方で、CTproSP-CはポリTrpに対しては結合せず、BiP基質において最も好ましい残基である。同様に、DnaK結合のために要求される中心的な5つの残基の性質は、CTproSP-Cの基質特異性に類似するが、塩基性残基のフランキングのためのDnaKの要求は、CTproSP-Cについては見られない。
【0050】
共に、これらのデータは、直ちに、CTproSP-Cの機能に対する説明を示唆するものである;それはαらせん状、膜挿入型、高次構造を達成していないproSP-Cの候補膜貫通セグメントの何れかの部分との結合によるβシート凝集を防止する。proSP-Cの膜貫通ドメイン内の何れかの短いセグメントをターゲティングすることは、特定のアミノ酸配列を認識することによってでは不可能である。
【0051】
結論として、CTproSP-Cは、SP-Cシャペロンであり、SP-Cに関してのCTproSP-Cの天然の安定化、ヘリックス促進効果は、主にバリン(10残基)、イソロイシンおよびロイシンを含むが、フェニルアラニンを含まないSP-C(ヒト SP-Cの残基13-35、配列番号3)の疎水性「ポリVal」領域に対する結合を介して生じる。実際、CTproSP-Cのフェニルアラニンに対する親和性は、我々知識の中で最良であり、従来知られてはいなかった。更に、CTproSP-C基質特異性以上に、定義毎に、それが膜に挿入され得る緻密な、らせん状の高次構造を形成することに失敗した他の候補膜貫通セグメントに結合できることを示す。
【0052】
SP-Cと対照的に、βシート形成のための性向を有するAβペプチドのターゲット領域(配列番号19)は、架橋する残基16-23であり、2つのフェニルアラニン残基を含むが、1つのバリン残基のみを含む。従って、驚くべきことに、本発明に従う単離されたタンパク質はアミロイドフィブリル形成を減少し、Aβペプチドの凝集を低下する能力を有する。アルツハイマー病に関連するアミロイドβペプチド(Aβ1-40;配列番号19)に向かうCTproSP-C活性は、ここにおいて実験的に評価されている。
【0053】
Aβは、その前駆体物質タンパク質APPのTMセグメントから切り出され、膜から放出されたときに、アミロイドフィブリルに凝集し、もしそれらが非らせん状の高次構造であれば、CTproSP-C基質特異性に対応する領域、L17VFF20およびI31IGLMVGGVV40を含む。実際に、CTproSP-Cは、完全にアミロイドフィブリル形成とAβの凝集をブロックする。proSP-Cの膜貫通ドメインの他のアミロイド形成ポリペプチドを捕らえるためのCTproSP-Cの能力は、それが即ち膜挿入および非らせん状高次構造のために十分な疎水性を認識する性質が一般にアミロイド形成を操作することを示唆する。これは、疎水性およびβシート特性がアミロイド形成性タンパク質の凝集速度を合理化するために使用できるという観察と一致する。CTproSP-Cは、非折り畳み膜貫通セグメントの架橋認識および且つproSP-C、SP-Cおよび Aβ ペプチドのためのアミロイド防止のために見出された最初のシャペロンである。
【0054】
従って、特に、本発明は、肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質 (CTproSP-C)の
(i) ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのC末端ドメインに対して少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;および
(ii) ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療において薬物として使用するための単離タンパク質を提供する。
【0055】
特定の態様において、当該治療は、予防的療法であってもよい。他の特定の態様において、治療は、対症療法であってもよい。ある特定の態様において、治療は、治療的療法であってよい。
【0056】
もう1つの態様に従うと、本発明は、本発明に従う治療学的に有効量の単離タンパク質と、そのために適切な薬学的担体を含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療において有用である。
【0057】
関連する側面に従うと、本発明は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療のための薬物を製造するための本発明に従う単離タンパク質の使用を提供する。
【0058】
本発明に従う単離されたタンパク質は、薬学的組成物に組み込まれてもよい。そのような組成物は、典型的に、候補化合物と適切な薬学的に許容される担体を含む。ここにおいて使用されるとき、「適切な薬学的担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを含み、それらは薬学的投与に適合性である。補充性の活性化合物もまた、組成物に組み込まれてもよい。
【0059】
薬学的組成物は、その目的とする投与径路に適合性であるように製剤化される。投与径路の例は、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮的、経粘膜的、くも膜下腔内、脳室内(例えば、外科的に大槽腔に配置されるインラインフィルターを具備するオマヤリザーバーシャントを使用する)および直腸投与を含む。
【0060】
組成物のために潜在的に有用な非経口送達系は、緩徐溶解プリマー粒子、移植用輸液系およびリポソームを含む。非経口適用のために有用な溶液または懸濁液は、以下の成分を含んでもよい;例えば、注入のための水、生理的食塩溶液、固定用油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒などの滅菌希釈液;ベンジルアルコールまたはメチレンパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アセテート,
クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調節するための薬剤。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムなどで調整されてよい。非経口製剤はガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは多投与用バイアル内に内封されてもよい。
【0061】
アルツハイマー病の治療はまた、中枢神経系、好ましくは、脳に、本発明に従う単離されたタンパク質の直接的な送達により効果を及ぼされてもよい。
【0062】
注入のために適切な薬学液組成物は、滅菌水溶液(そこにおいて水を溶解する)または分散液、並びに滅菌注入用溶液または分散系の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与のために、適切な担体は、生理的食塩水、静菌水、クレモフォアEL(登録商標)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は、滅菌されるべきであり、簡単に注射器に収めることが可能な範囲で流動性であるべきである。製造および貯蔵の条件下で安定しているべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染活性に対して保存性であるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物などを含む溶媒または分散媒体であってよい。適切な流動性は、例えば本発明に従う単離されたタンパク質の粒子上のコーティング(例えば、レシチン)の使用により、分散系の場合において必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により維持されてよい。微生物活性の防止は、種々の抗微生物および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成されてよい。多くの場合において、好ましくは、組成物には等張剤が含まれる。そのような薬剤の例は、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトールおよびソルビトール、および塩酸ナトリウムを含む。注入用組成物の延長された吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどを組成物に含ませることにより齎されてよい。
【0063】
滅菌注入用溶液は、本発明に従う単離されたタンパク質を所望の量で適切な溶媒に、所望に応じて上述において列記された成分の1つまたはその組み合わせと共に組み込み、続いて、滅菌濾過されることにより調製されてよい。一般的に、分散系は、本発明に従う単離されたタンパク質を、基本の分散媒と上述において列記されたものからの所望の他の成分とを含む滅菌媒体に組み込むことにより調製される。滅菌注入用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、製剤の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、前もって濾過滅菌されたその溶液から、何れかの更なる所望の成分を追加した本発明に従う単離されたタンパク質の粉末を得る。
【0064】
経口用組成物は、一般的に、不活性希釈液または食用担体を含む。経口治療用投与の目的のために、本発明に従う単離されたタンパク質が賦形剤と共に組み込まれて、錠剤、トローチまたはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態において使用され得る。
【0065】
薬学的に適合する結合剤および/または補助剤物質が組成物の一部分として含まれてよい。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは何れかの以下の成分または同様の性質の化合物を含んでよい:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterotes);滑沢剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリン;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー。
【0066】
吸入による投与のために、化合物は、適切な高圧ガス、例えば、二酸化炭素ガスを含む加圧容器若しくはディスペンサー、または噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0067】
全身投与も、経粘膜的または経皮的手段によりなされてもよい。経粘膜的または経皮的投与のために、浸透されるべき障壁に対して適切な浸透剤が、製剤において使用される。そのような浸透剤は、一般的に当該技術分野において公知であり、例えば、経粘膜的投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は、鼻腔用スプレーまたは坐薬の使用を得て達成されてもよい。経皮的投与のために、本発明に従う単離されたタンパク質は、当該分野において公知の通りの軟膏、膏肓、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0068】
本発明に従う単離されたタンパク質はまた、直腸送達のために坐薬(例えば、ココアバターよよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用する)または保定浣腸(retention enemas)の形態に製剤化されてもよい。
【0069】
1つの態様において、本発明に従う単離されたタンパク質は、生体からの急速な消失に対して化合物を保護するであろう担体と共に、例えば、移植体およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤として調製される。生分解性、生物適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などが使用されてもよい。そのような製剤の製造方法は、当業者には明白であろう。リポソームの懸濁液(モノクローナル抗体でアルツハイマー病に特異的に罹患した細胞に対してターゲティングするリポソームを含む)も、薬学的に許容可能な担体として使用されてよい。これらは、当業者に公知の方法に従って製造され得る。
【0070】
投与の容易性および投与量の均一性のために、投与量形態にある経口または非経口組成物を製剤化することが遊離である。ここで使用される単位投与量形態は、治療されるべき対象のために単位投与量として適切化された物理的な個別の単位をいい、各単位は、所望の治療効果を生じるために算出された予め決定された量の本発明に従う単離されたタンパク質を所望の薬学的担体と関連して含む。
【0071】
本発明に従う単離されたタンパク質の毒性および治療学的効果は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、LD50(集団の50%が致死する用量)およびED50(集団の50%が治療学的効果を奏する用量)を決定するための手順により決定されてよい。適切な動物モデルは、例えば、アミロイドについて以下に記載される通りに使用されてよい(Sturchler-Pierrat et al, Rev Neurosci, 10: 15-24, 1999; Seabrook et al, Neuropharmacol 38: 1-17, 1999; DeArmond et al, Brain Pathology 5: 77-89, 1995; Telling, Neuropathol Appl Neurobiol 26: 209-220, 2000; and Price et al, Science 282: 1079-1083, 1998)。
【0072】
毒性効果と治療学的効果との用量比は、治療学的な指標であり、LD50/ED50比として表され得る。高い治療学的指標を示す化合物が好ましい。一方で、毒性の副作用を示す化合物が使用されてもよく、注意が払われた上でそのような化合物が影響を受ける組織の部位をターゲティングする送達系が設計されるべきであり、それにより影響を受けない細胞に対する潜在的な損傷を最小化し、それにより副作用を減少する。
【0073】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための用量範囲の製剤化において使用され得る。化合物の容量は、殆ど毒性のない、または毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。
【0074】
用量は、使用される投与量形態および利用される投与経路に依存してこの範囲で変化してもよい。本発明の方法において使用される何れかの化合物のために、治療学的有効量が、細胞培養アッセイ、例えば、フィブリル形成率または細胞死率が観察されることなど、によって最初に見積もられ得る。用量は、細胞培養物において決定されたように、IC50を含む循環性血漿濃度率(即ち、症状の最大半減の阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するために動物試験において処方されてよい。そのような情報は、ヒトにおいて使用される用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿における濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィにより測定されてよい。
【0075】
ここにおいて定義されるとき、本発明に従う治療学的に有効量の単離タンパク質(即ち、有効用量)は、体重1kg当たり約0.1〜100mg、より好ましくは体重1kg当たり約1〜100mg、更により好ましくは体重1kg当たり約1〜50mgの範囲である。化合物は、対象に対して延長された時間、例えば、対象の生存期間に亘り投与されて得る。1mg/kg〜100mg/kgの用量が、例えば、脳における活性のために設計された抗体の場合などにおいて通常適切である。
【0076】
ある場合において、化合物は、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、および更により好ましくは約4、5または6週間の間、1週間毎に1回投与され得る。化合物はまた、長期に亘り投与され得る。当業者は、これらに限定するものではないが、疾患および疾病の重症度、先の治療、対象の一般的な健康および/または年齢および他の疾患の存在などを含む、ある因子が、対象を効果的に治療するために必要とされる用量および期間に影響を与え得ることを認めるであろう。更に、治療学的に有効量の化合物での対象の治療は、単回療法を含み、または好ましくは一連の治療を含んでもよい。
【0077】
ヒトAPPを発現するマウスまたはヒトに投与するためのヒトCTproSP−CおよびそのBrichosドメインを含む本発明に従う組み換え単離タンパク質は、幾つかの方法で製造され得る。組み換えタンパク質は、例1において記載するように精製されてよい。タンパク質が血液脳関門(BBB)を通過する可能性を高めるために、幾つかの方法が想定される。
【0078】
2つの主な戦略のは、BBBを経る薬物の通過のために明らかになっている。それらは、受容体媒介性経細胞輸送により、または特異的受容体、例えば、グルコース、アミノ酸またはペプチドのための受容体の使用による、いずれかによる内因性の移送系を使用する。ペプチドは、特に、様々な積荷を運ぶためのBBBを通過するベクターとして魅力的に見える。多くの異なるペプチドは、エンドサイトーシス(典型的にはLDL受容体による)を引き起こすこと、BBBを通過する積荷を送達することが示されている。これらのペプチドの幾つかは、両親媒性に陽性に荷電された細胞浸透性ペプチド(CPP、例えば、ペネトラチン(penetratin)、ApoE誘導性ペプチドおよびその他)であるが、これらはまた高用量では高毒性であり得る。synBファミリーのような他のペプチドもたま、疎水性部分以外は陽性に荷電されている。エンドサイトーシストリガー性ペプチドの多くの欠点は、それらが、効率的であるために、安定したαへリックスを形成するために比較的大きく、効果的な取り込みに関連付けられることである。経細胞輸送による送達の利点は、積荷が完全に実質的であり、完全に可変性であることである。飽和性の移送系によるBBBを通過することが示されている特異的な内因性のペプチドが薬物を送達するためのベクターとして機能する経路は、また、生存可能な代替的である。この種の幾つかの比較的短いペプチド例えばMIF-1(Pro-Leu-Gly、オキシトシンの誘導体)およびペプチド T (8 残基、HIVエンベロープからの誘導体)が、BBBを横切って効率的に輸送されることが示されている(例えば、de Boer AG and Gaillard PJ, Clin Pharmacokinet. 46:553-76, 2007; de Boer AG and Gaillard PJ, Annu Rev Pharmacol Toxicol. 47:323-55, 2007; Pardridge WM, Drug Discov Today. 12:54-61, 2007を参照されたい。BBBを横切る輸送のための方法が記載されている)。現行の場合において、前記ペプチドまたはタンパク質がCTproSP−CまたはBrichosドメインと混合されてもよく、或いはそれらがCTproSP−CまたはそのBrichosドメインに対して共有結合的に結合されて発現されてもよい。
【0079】
他の製剤において、CTproSP−CまたはそのBrichosドメインは、BBBを横切る送達のためのナノ粒子に対して連結され得る(Lockman PR et al., Drug Dev Ind Pharm. 28:1-13, 2002; Tosi G et al., Expert Opin Drug Deliv. 5:155-74, 2008)。
【0080】
そのような脂質化などの修飾はまた、タンパク質の安定化のために、および(例えば、脳への)取り込みおよび組織浸透を向上するために使用されてもよい。抗体の脂質化の方法は、以下に記載される(Cruikshank et al, J Acquired Immune Deficiency Syndromes Hum Retrovirol 14: 193, 1997)。
【0081】
本発明に従う単離タンパク質が、動物(例えば、ヒト)に対してアルツハイマー病の治療のために投与されるべき場合、医師、獣医師または研究者は、例えば、最初は比較的低用量で処方してよく、その後に適切な応答が得られるまで用量を増やしてよい。加えて、何れかの特定の動物対象のために特定の用量レベルが、使用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路、排泄速度、何れかの薬物の組み合わせおよび調節されるべき発現または活性の程度を含む多様な因子に依存するであろうことが理解される。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、容器、パックまたはディスペンサー内に投与のための説明書と共に含まれてもよい。例えば、説明書は、アルツハイマー病を有するまたはアルツハイマー病の危険のある個体を治療するための組成物の使用のための指導を含んでよい。
【0083】
もう1つの態様に従うと、本発明は、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー型の認知症を含むアルツハイマー病の治療の方法であって、それを必要とする哺乳類に対して、本発明に従う治療学的に有効量の単離タンパク質または本発明に従う薬学液組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0084】
特定の態様において、治療は予防的療法であってもよい。他の特定の態様において、治療は対症療法であってよい。ある特定の態様において、治療は治療的療法であってもよい。
【0085】
本発明は、アルツハイマー病の危険性のある(または感受性の)対象の予防的および治療学液方法の両方を提供する。ここにおいて使用されるとき、用語「治療」は、本発明に従う単離タンパク質の感謝に対する適用または投与、またはアルツハイマー病、疾患の症状、または疾患に対する罹患傾向を有する患者からの単離組織または細胞系に対して本発明に従う単離タンパク質の適用または投与するときに定義され、当該疾患、疾患の商標または疾患に向かう傾向を治療、治癒、緩和、軽減、変化、矯正、改善、向上または影響させる目的を伴う。
【0086】
1つの側面において、本発明は、対象に対して、ポリペプチドの凝集および/またはαへリックス形成を安定化を減少するを本発明に従う単離タンパク質を投与することにより、Aβペプチドにより生じるフィブリル形成に関連する疾患または症状を予防する(即ち、疾患または症状に関連して疾患の罹患リスクを低下するまたは症状の発生率を低下する)方法を提供する。アルツハイマー病のリスクに向かう対象は、従来公知の適切な診断または前兆アッセイの何れかまたは組み合わせにより同定することが可能である。予防薬の投与は、疾患が予防されるように、またはその進行が遅れるように、疾患を特徴付ける症状が顕在化する以前に行われる。
【0087】
本発明に従う単離されたタンパク質は、患者に対して、治療学的に有効な用量で投与されて、アルツハイマー病に関連するフィブリン形成に関連する疾病を予防、治療または改善し得る。治療学的に有効な用量は、疾病の症状の改善を齎すのに十分な化合物の量をいう。そのような化合物の毒性作用および治療学的作用は、上述したような標準的な薬学的手順により決定され得る。
【0088】
また、本発明に従うタンパク質は、単離されたタンパク質が中枢神経系におけるこれらの細胞により発現するように神経系、好ましくは脳における細胞に形質移入するための例えば、発現ベクター、プラスミドまたはウイルスを使用することにより、遺伝子療法により投与されてもよい。これはアルツハイマー病の治療のために有用である。
【0089】
次に、本発明は次の限定されない例によってさらに説明される。
【0090】
[例]
[例1−組み換えヒトCTproSP-CBrichos (ヒト proSP-C94-197; 配列番号4)、組み換え ヒト CTproSP-C (proSP-C59-197; 配列番号2)および組み換えヒトCTproSP-CL188Qの発現および単離]
CTproSP-C およびCTproSP-CL188Q構築物をJohansson et al, J Biol Chem 281:21032-21039, 2006に述べられるように作製した。CtproSP-CBrichos構築物は、CTproSP-C構築物および次のプライマー(DNA technology AIS, Aarhus, Denmark):5’-GGTGCCATGGCTTTCTCCATCGGCTCCACT-3’ (フォワードプライマー)および5’-CTCTAGAGGATCCGGATCCCTAGATGTAGTAGAGCGGCACCTCC-3' (リバースプライマー)から増幅された;下線を付した配列はそれぞれBamHIおよびNcoI 切断部位である。増幅されたDNAフラグメントは、BamHIおよびNcoIで設計され、かつ発現ベクターpET-32c (Novagen, Madison, WI)に結合された。このベクターは、挿入部位の上流にチオレドキシン、ヘキサヒスチジンおよびS-タグのためのコード領域を含む。
【0091】
CTproSP-CおよびCTproSP-CBrichosの発現のために、形質転換E. coli, 株Origami (DE3) pLysS (Novagen, Madison, WI)を一定撹拌、16時間で100 μg/mlアンビシリンを含むLuria-Bertani媒体中、37℃で成長させた。温度は25℃を下回り、発現は0.5 mMのIPTGの添加によってOD600 =1.1にて誘導され、かつバクテリアを別に4時間に亘って成長させた。細胞をそれから20分間に亘って6000xgで遠心分離によって収穫し、20 mM トリス-HCl, pH 8, 2 mM MgCl2中、リゾチームおよびDnaseとインキュベートし、さらにNi-NTAアガロースカラム上に添加した。カラムを20 mMトリス、pH 8、の100 ml で洗浄し、それから20 mMイミダゾールを含む20 mMトリス、pH 8、の20mlで洗浄した。ターゲットタンパク質をそれから20 mMトリス中の150 mMイミダゾールで溶出した。溶出されたタンパク質は、チオレドキシンおよびHisタグが8℃で3時間に亘って酵素/基質重量比0.002にてトロビンでの切断によって取り除かれた後20 mMトリス、pH8に接触して透析された。このイミダゾールは15mM濃度に添加した後、溶液を放出されたチオレドキシンHisタグを取り除くためにNi-NTAアガロースカラムに再適用される。CTproSP-CL188Qは、前出(Johansson et al, J Biol Chem 281:21032-21039, 2006)に記述されたように発現され、かつ精製された。概要において、タンパク質はE大腸菌中にてチオドキシン/His6/S-タグで溶融タンパク質として発現される。タンパク質は、固定化した金属親和性およびイオン交換クロマトグラフィを用いて精製された。トロビンはチオドキシン-タグおよびHis6-タグを取り除くために用いることができる。タンパク質純度は、SDS-PAGEおよび非変性PAGEでチェックできる。
【0092】
全ての結果として得られたタンパク質は、S-タグが付された、例えばS-タグ化ヒト CTproSP-C (配列番号20)である。別の特定がされていない限り、S-タグが付されたタンパク質が以下の例に用いられる。
【0093】
[例2−セルロース膜上でSP-C 誘導ペプチドスポットに結合するCTproSP-CBrichos,CTproSP-CおよびCTproSP-CL188Qの分析]
、SP-C (proSP-C24-58)から誘導された10-残基フラグメントを含むスポット膜(Frank R, J Immunol Meth, 267:13-26, 2002)をSigma Genosys (Cambridge, England)から購入した。膜をメタノールに5分間浸漬し、それからT-TBS (50 mM Tris, 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, pH 8, containing 0.05 % Tween)で3x30分間洗浄し、T-TBS中、22℃で1時間に亘って1μg/ ml CTproSP-CBrichos, CTproSP-CまたはCTproSP-CL188Qでのインキュベーションを続けた。次に、膜は1時間に亘ってTBS中にて2 % BSAでブロックされた。T-TBSで 4x1時間洗浄した後、膜を2 % BSA を含むT-TBS中に 1:5000に希釈されたHRP-複合化S-タンパク質 (Novagen, Madison, WI) でインキュベートした。次に、膜をT-TBSで 4x1時間再び洗浄し、かつ結合を製造者の取扱説明書に従ってECLによって視覚化した。
【0094】
以下に詳述されるようにセルロース膜に結合される全SP-C アミノ酸配列 (配列番号3)に相当する重複配列を持つ10残基ペプチドはCTproSP-C (配列番号4)に結合するために探査された。
【0095】
図2Aは、SP-C から誘導される10残基フラグメントを含むスポットへのCTproSP-Cの結合を示す。ペプチドスポット1から25はスポット8, 9, 11, 12, 17および18(下記参照)を除外するとN-からC末端方向(図2B参照)中にSP-C配列を占める。スポット8および9がそれらのLeu-置換(KRLLLLLLLL) またはAla-置換(KRAAAAAAAA)型をそれぞれ含むのに対して、スポット7はSP-C中にKRLLIVVVVVセグメントを含む。同様な方法において、スポット10-12はRLLIVVVVVV (SP-C中の位置12-21), RLLLLLLLLL,およびRAAAAAAAAAをそれぞれ含み、かつスポット16-18はVVVVVLVVVV (SP-C中の位置17-26), LLLLLLLLLL, and AAAAAAAAAAをそれぞれ含む。スポット21および23は同じペプチド (LVVVVIVGAL)を含む。
【0096】
図2Bは、SP-C配列に従うペプチドへのCTproSP-C結合の概要を表示する。破線はCTproSP-Cが結合していないペプチドを記し、一方、実線はCTproSP-Cが結合するペプチドを表す。SP-C配列の下線部分は、その膜貫通領域に相当する。番号1-35は、成熟SP-C ペプチド (配列番号3)を示し、proSP-C (配列番号1)の相当する残基は24-58である。
【0097】
したがって、図2A-Bは結合モチーフが疎水性残基、すなわちSP-Cの膜貫通「ポリVal」領域から誘導されるペプチドを含む領域に見出されることを示す。ポリLeuでのポリValモチーフの置換は、図2Aにおいて、それぞれスポット対7/8, 10/11および16/17に対応し、結合において変更を生じない。これに対して、ポリAlaでのポリValの置換は、図2Aにおいて、それぞれスポット対7/9, 10/12 および16/18に対応し、結合は無効化される。
【0098】
CTproSP-C基質特異性の分析に用いられるのと同じペプチドスポット膜は、CTproSP-C (proSP-C59-197)のそれと非常に類似する結合プロフィルを示したCTproSP-CBrichos (proSP-C94-197)で探査された。図2Cに示されるように、Brichosドメインは、CTproSP-C結合特性を反復する。これに対し、CTproSP-CL188QはSP-Cのいかなるフラグメントに結合されない(図2D)。したがって、CTproSP-CおよびCTproSP-CBrichosは同じ基質特異性を有し、一方、CTproSP-CL188Qは無効な基質結合を示す。
【0099】
[例3− CTproSP-C およびその Brichosドメインの基質特異性]
指示残基のセルロース結合十量体への組み換えヒトCTproSP-C およびそのBrichosドメインの結合を調査するために、指示アミノ酸残基の十量体がセルローススポット膜に共有的に取り付けられる(Frank R, J Immunol Meth, 267:13-26, 2002)。組み換えヒト S-タグを付したCTproSP-C (配列番号20) および ヒト CTproSP-C の(S-タグ化) Brichosドメインは例1で述べたように大腸菌で生成された。
【0100】
膜は、0.05 % Tween (T-TBS)を含む50 mM トリス中の1 μg/ ml CTproSP-C、137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, pH 8で22℃にて1時間に亘ってインキュベートされた。2% BSAで1時間に亘るブロックし、T-TBSで4x1時間洗浄した後、膜は1:5000に希釈されたHRP-複合化S-タンパク質 (Novagen, Madison, WI)でインキュベートされた。次に、膜は上のように再び洗浄され、結合S-タグを付したCTproSP-Cが増強されたケミルミネッセンスによって視覚化された、図3A参照。CTproSP-C は、V、I、L、F、M、またはYの伸展に結合するが、A、W、G、P、またはT対応物に結合しない。したがって、CTproSP-Cは生物学的疎水性スケールによる膜挿入を促進する残基およびYに結合する。SP-Cに結合しない突然変異体ヒトCTproSP-CL188Qおよびヒト Bri タンパク質のER-ルーメンの部分はコントロールとして用いられ、かつ両者は幾つかの膜結合ペプチドへの結合に機能しなくなる。
【0101】
ヒト CTproSP-Cの結合容量は、ヒト CTproSP-C .(データ示さず)のBrichos領域によって反復された。
【0102】
[例4−CTproSP-Cの基質特異性]
CTproSP-Cの結合特異性を調査するために、非らせん状(ターゲット、非α、第1レーン)中、またはらせん状高次構造(ターゲット、-α、第2レーン)中のLLLLLLLLILLLILGALL ペプチド、および非ターゲットペプチド(第3、第4のレーン)はセルローススポット膜に共有的に取り付けられる(Frank R, J Immunol Meth, 267:13-26, 2002)。異なる高次構造に関して、ペプチドは50%水性ギ酸からプロットされる、ペプチドがβ-ストランド高次構造である、またはエタノールからプロットされる、それはらせん状である。異なる溶媒がCTproSP-Cの人為的結合に起因することの可能性を除外するために、非ターゲットペプチド (IPCCPV) 50%水性ギ酸(第3レーン)またはエタノール(第4レーン)から吸収される。ペプチドは、PR 648 Slot Blot濾過マニホールド(Amersham Biosciences, US)を用いるニトロセルロース膜(Whatman, Germany)上にプロットされる。1 μg/ml の組み換えヒト CTproSP-Cは、添加され、かつ22℃で2時間に亘ってインキュベートされた。その後、膜はトリスバッファ生理食塩水、pH 7、で繰り返し洗浄され、かつ結合CTproSP-Cは免疫検出によって視覚化され、例3のようにケミルミネッセンスで増強された。図3bで分かるように、CTproSP-Cは非らせん上高次構造中でペプチドに排他的に結合する。
【0103】
[例5−CTproSP-Cの抗アミロイド特性]
実験開始時と37℃で単独(-)または2.5 μM CTproSP-C (+)と共に7日間に亘るインキュベーション後の溶解性Aβ1-40 (25 μM)の量。電子顕微鏡写真は6日間のインキュベーション後のAβ単独およびAβ + CTproSP-Cに対するそれらの欠乏からの豊富なアミロイドフィブリルを示す。フィブリルは実験の開始時に幾つかの試料には見られない。実験は、DMSO のストック溶液からのAβの希釈後に、10 mM リン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 150 mM 塩化ナトリウムで遂行された。Aβ1-40は、2.5 μM CTproSP-Cの存在または不在にて37℃、撹拌下でインキュベートされた。
【0104】
実験の開始時および7日後に、試料は凝集のレベルを測定するために取り除かれた。試料は、16000×gで6分間に亘って遠心分離され、上澄みは取り除かれ、かつ16000×gで別に2分間に亘って遠心分離された。次に、最終遠心分離からの上澄みは非還元性条件、10-16%トリス−トリシンゲル上でSDS-PAGEによって分析され、かつクーマシーで染色された。電子顕微鏡写真のために、2 μlの一定分量が200メッシュ銅グリッド上で1分間吸着され、かつ75 kV で操作されるHitachi H7100 顕微鏡を用いて実験し、撮影する前に、30分間に亘って2%酢酸ウラニルで染色された。
【0105】
得られたSDS-PAGEおよび写真は図3cに示される。それは、CTproSP-Cはアミロイドフィブリル高次元構造およびAβインビトロの凝集を完全にブロックすることが明白である。
【0106】
[Example 6 −CTproSP-CがAβ1-40のフィブリル高次構造を防ぐ]
Aβ1-40 (配列番号19)をBachem (Germany)から購入し、かつ-70℃で使用まで凍結乾燥状態にて貯蔵された。単量体出発溶液を促進するために、ペプチドを作業バッファで希釈する前に、ジメチルスルホキシド(DMSO)の1 mg/mlで溶解し、攪拌し、かつ超音波処理した。
【0107】
ヒト組換えCTproSP-Cが発現され、かつ例1(配列番号20)に記述されるように精製された。
【0108】
Aβ1-40凝集およびフィブリル高次構造実験は、10 mMリン酸ナトリウムバッファ、pH 7.0, 10% (v/v) DMSOを含む150 mM塩化ナトリウム中の25 μMのAβ濃度で遂行された。Aβ1-40は、25 および2.5 μM CTproSP-Cの存在および不在で、37℃、攪拌下にてインキュベートされた。種々の時間点で、試料を凝集レベルを測定するために取り除いた。試料を16000×gで6分間に亘って遠心分離し、上澄みを16000×gで別の2分間に亘って取り除き、かつ遠心分離した。次に、最終遠心分離からの上澄みを非還元性条件、10-16%トリス−トリシンゲル上で、SDS-PAGEによって分析し、かつクーマシーで染色した。対照として、Aβ1-40を2.5 μMニワトリクリスタチン(MW 13.3 kDa)またはヒトアンチトロンビン(MW 58 kDa)で前述下のと同様な手法でインキュベートした。
【0109】
フィブリル高次構造の程度を測定するために、Aβ1-40を2.5 μM CTproSP-Cの存在または不在で前述したようにインキュベートし、同様に25 μMニワトリクリスタチンまたはウシ血清アルブミンでインキュベートした。6日後に試料を取り除き、かつ透過電子顕微鏡写真 (TEM)によって分析した、以下参照。
【0110】
既に形成されたフィブリルを解離するCTproSP-Cの能力を調査するために、25 μM Aβ1-40を37℃、振盪で6日間に亘ってインキュベートし、フィブリルの存在をTEMによって検証し、かつその後CTproSP-Cを25 μMの最終濃度まで添加した。試料をさらに1から7日間に亘ってインキュベートし、その後フィブリルの量をTEMを用いて再び測定した。
【0111】
各試料に対して、2 μlの一定分量を200メッシュ銅グリッド上で1分間に亘って吸着し、かつ75 kVで操作されるHitachi H7100顕微鏡写真を用いて試験し、撮影する前に、2%酢酸ウラニルで30秒間に亘って染色した。
【0112】
Aβ1-40をCTproSP-Cの存在および不在で1:1 および10:1モル比にてインキュベートした。6日間のインキュベーション後に得られたTEM画像は図4に示される。簡単に、図4は37℃、10 mMリン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 10%DMSO (v/v)単独(A)を持つ150 mM 塩化ナトリウム中25 μMのCTproSP-C (B), 2.5 μMのCTproSP-C (C), 25 μM BSA (D)または25 μMニワトリクリスタチン(E)と一緒にインキュベートされた25 μM Aβ1-40から形成された16000xgペレットの透過電子顕微鏡写真を示す。スケールバー=100nm。
【0113】
6日間のインキュベーション後に得られたTEM画像は、Aβ1-40 (図4A )のフィブリル高次構造がCTproSP-Cの存在で、等モル未満でさえ完全に無効にされることを示す。等モル量でニワトリクリスタチンも、BSAもAβ1-40フィブリル高次構造を防ぐAβ1-40に相関し(図4D-E)、CTproSP-CおよびAβ1-40間の相互作用の特異性を示す。
【0114】
Aβ1-40のプリフォームアミロイドフィブリルは、フィブリルを形成するために用いられるAβ1-40濃度と相関する1:1モル比にてCTproSP-Cでインキュベートされた。TEMで観測されるフィブリルの量または出現での変化は、CTproSP-Cでの7日間のインキュベーションまでの後でも見られなかった(データ示さず)。これらの実験は、CTproSP-Cが既に形成されたフィブリルを解離するための能力を有さないが、むしろフィブリル高次構造の経路上で種を相互作用することを示す。
【0115】
[例7− CTproSP-CがAβ1-40の凝集を防ぐ]
Aβ1-40をCTproSP-C並びに参照タンパク質ニワトリクリスタチンまたはヒトアンチトロンビンでAβ/タンパク質 10:1のモル比にてインキュベートした。7日後に、16000×gでの遠心分離後の溶解性Aβ1-40の量をSDS-PAGEによって分析した。
【0116】
図5は、10 mMリン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 10% DMSO (v/v)を持つ150 mM 塩化ナトリウム中、2.5 μMのCTproSP-C (CTC), ニワトリクリスタチン(Cyst)またはヒト アンチトロンビン(HAT)の存在または不在で0 および7日間に亘ってインキュベートされた(A) 25 μM Aβ1-40の16000×g溶解性フラクションのSDS-PAGE;および10 mMリン酸ナトリウムバッファ, pH 7.0, 10% DMSO (v/v)を持つ150 mM 塩化ナトリウム中、2.5 μMのCTproSP-Cの存在または不在で0または20日間に亘ってインキュベートされた(B) 25 μM Aβ1-40を示す。
【0117】
t=0でのAβの量は、全ての混合物に対して等しいが、7日間後にAβはAβ単独またはニワトリクリスタチンで共インキュベートされた試料から全く見られなかった。溶解性Aβの毎分量はアンチトロンビンで共インキュベートされた試料で観察され、一方、CTproSP-Cを含む試料はt=0で観察されるように溶解性Aβの殆ど等量を示した(図5A)。CTproSP-C およびAβの共インキュベーションの20日後に、溶解性Aβが見出された (図5B)。
【0118】
図5に見られるように、CTproSP-Cは20日間までに亘って溶解状態でAβを保持でき、かつそのようにすべき類似寸法の対象タンパク質の能力がないはCTproSP-C効果が特異性相互作用に基づいていることをさらに示す。
【0119】
[例8−CTproSP-CはAβ1-40の凝集を防止する]
Aβ1-40は、DMSOに溶解して、231μMの濃度にし、50mMの酢酸アンモニウムバッファ、pH7.0中の25μMCTproSP-Cと共に、またはこれを含ませずに25μMの濃度に希釈した。各混合物からの試料をMALDI分析のために直ちに採取した。この溶液を次に37℃で撹拌しながら2日間インキュベートし、その後、更に振盪なしで22℃で更に4日間インキュベートした。
【0120】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)分析のために、試料を0.1%のトリ不ルオロ酢酸(TFA)を含む30%アセトニトリルに希釈し、Aβ1-40濃度を4μMにし、0.5μlの各試料を30%のアセトニトリル中、0.1%TFAの0.8μMのソマトスタチンの0.5μlと混合した。混合物を、アセトン中の20mg/ml溶液からプレ結晶化し、50%アセトニトリル、0.1%TFA中に溶解された1μlのシナピン酸(20mg/ml)と共結晶化したMALDIターゲットプレート上のシナピン酸の層の上に載せた。2000および10000massの間のデータを電荷比(m/z)をディレイド・エクストラクションを使用した線形モードで操作したBruker Autoflex (Bruker Daltonics, Billerica, MA) 質量分析計で得た。1000ショットを各サンプルについて自動的に得た;50の異なる位置について、位置毎に20レーザーショットのバッチを予め定義したシューティングパターンを使用して平均化した。
【0121】
CTproSP-CによるAβ1-40凝集における阻害効果を、25μMのAβ1-40をCTproSP-Cと等モル量と共にまたは伴わずに、37℃で2日間撹拌しながらインキュベートし、更に22度で4日間インキュベートしたときに明らかになった。サンプルをモノマー、可溶性Aβ1-40の存在をMALDI MSにより、ソマトスタチンを内部非凝集標準として使用して分析して、ペプチドを予測するために信頼できる濃度を得た。幾つかの異なる点からの自動収集を各MALDIターゲットのために使用して、人為的エラーおよび偏りを最小化した。
【0122】
図6は、ソマトスタチン(理論質量3149.61 Da)を内部標準として使用したMALDI MSにより評価されたMSAβ1-40の定量化(理論質量4329.86 Da)を示す。パネル(A)および(B)は、Aβ1-40単独、(C)および(D)は25μMのAβ1-40+25μMCTCを示す。(A)および(C)における試料は、インキュベート前に、(B)および(D)のサンプルは2日間37℃で撹拌を行ってインキュベートし、更に22℃で50mMの酢酸アンモニウムバッファpH7.0でインキュベートした後に分析した。
【0123】
この方法を使用して、ソマトスタチンとAβ1-40 濃度の間の良好な相関を得た(R2 >0.9)。単独でインキュベートされたAβ1-40 は溶液中でソマトスタチンに対して可溶性ペプチドが80%の減少を示した(図6Aおよび6B)のに対して、一方で、Aβ1-40 および CTproSP-Cの両方を含む試料においては、可溶性Aβ1-40の量が分析期間に亘り一定して維持された(図6Cおよび6D)。従って、MALDI質量分析は、CTproSP-CがAβ1-40の凝集を阻害する効果を有する、即ち、溶解し、モノマー状態にあるAβ1-40は維持されたことが確認される。
【0124】
[例9−サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)およびイムノブロット分析を使用するCTproSP-CおよびAβ1-40 の相互作用試験]
イムノブロットと組み合わせたSECを使用して、Aβ1-40 とCTproSP-Cとの相互作用を試験した。SECをFPLC装置(FPLC instrument (Amersham Biosciences))を装着したセファデックス200カラム(Superdex 200 column (Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden))上で行った。カラムを150mMの塩化ナトリウムを含む10mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.0で平衡化し、214nmでの吸光度を記録した。カラムをフィブリノーゲン(340kDA)、アルドレース(158kDa)、ウシ血清アルブミン(67kDa)およびニワトリシステイン(13.3kDa)で初期較正した。
【0125】
3つの異なる試料の相互作用試験について;(i) 34 μM Aβ1-40, (ii) 34 μM CTproSP-C および (iii) 34 μM のAβ1-40 および CTproSP-C、を10mMリン酸ナトリウムバッファpH7.0、150mM塩化ナトリウム、10%(v/v)DMSO中で調製した。全ての試料を調製した後に直接にカラムに添加し、流速0.7ml/minで平衡化と同じバッファを使用して溶離した。1.2mlのフラクションを全ての運転から回収し、100μl/フラクションをニトロセルロース膜(Whatman, Germany)に、PR648スロットブロット濾過マニフォールド(Amersham Biosciences, US)を使用してブロットした。
【0126】
Aβ1-40 およびCTproSP-Cの両方を含む試料について、2セットのブロットを分析し、両方のペプチドの検出を可能にした。Aβ1-40 の検出のために、膜をリン酸バッファ生理食塩水(PBS)pH7.4中で5分間煮沸し、TBS-Tween(0.1%)中で冷却し、その後5%の脱脂乾燥乳でブロッキングした。膜をモノクローナル抗体4G8(1:2000、Signet, UK)と、続く抗マウスHRP複合化第2抗体(1:5000、GE Healthcare, UK)で探査した。SタグCTproSP−Cの検出のために、膜を5%の脱脂乳でブロックし、HRP複合化Sタンパク質(1:5000, Novagen, US)で探査した。上昇したケミルニネッセンス(Millipore)を使用して、両方の場合に結合した抗体を検出した。イメージJを使用して、スポットの強度を測定した。
【0127】
図7は、Aβ および Aβ+CTproSP-C (「CTC」)の抗体4G8またはS-タンパク質でプローブ化したSECのイムノブロット分析フラクションを示す。図7は、85−89mlの溶離量に対応するSECフラクションのイムノブロット分析を示す。カラムに添加された試料に含まれるポリペプチドは、左に示す。上段の2つの行は、抗体4G8でプローブ化し、Aβ1-40と認識され、下の行はS-タンパク質でプローブ化し、S-タグ化CTproSP-C(配列番号20)を検出した。図7Bおよび7Cは、SECフラクション(溶離量75-110ml)のイムノブロットの強度を示し、抗4G8(B)またはS-タンパク質(C)でプローブ化したものである。Aβ + CTproSP-Cを含む試料は、実線により示し、Aβ単独(B)およびCTproSP-C単独(C)は点線で表す。矢印は、公知の質量のタンパク質の溶出位置から見積もられる分子量を示す。図は、3つの独立した流路を示す。
【0128】
Aβ1-40 のための214 nm 吸収プロファイルを低数量オリゴマー種の存在とパターン互換性を示し、定量のより高分子量種が空隙の用量で溶出し、プレフィブリル可溶性オリゴマーを示す。
【0129】
Aβ1-40 + CTproSP-C試料において、より大きなAβは存在せず、これは更に凝集アッセイからの結果を支持する。CTproSP-C自身は、2つ群のオリゴマーとして示される。明白に示されたピークが三量体から五量体のサイズに対応する位置で溶出し、もう一つのピークが十二量体に対応する位置に溶出した。この結果は、CTC三量体およびそのオリゴマーが主に種であることを示す超遠心およびESI質量分析のデータと良好に一致する(C Casals et al, Febs J, 275:536-547, 2008)。
【0130】
Aβ1-40 + CTproSP-CのSECのための吸収プロフィールは、CTproSP-C三量体から五量体に対応するピークがCTproSP-C単独の溶出に対応して約30%増大し、これはAβがCTproSP-Cに結合し、CTproSP-C三量体-五量体を安定化することを示唆する。Aβ/CTproSP-C 複合体に対応する非特異的なピークは、吸収測定により検出され、恐らく、CTproSP-C単独の比較的大きな溶出量のためである。
【0131】
Aβ1-40 および CTproSP-Cの混合物のSECと、続く、フラクションのドットブロット分析は、しかしながら、ポリペプチド単独に対応する独自のピークを明確に示す(図7)。これは、Aβ および CTproSP-Cの相互作用と、安定な複合体形成を示す。観察された新たなピークは、約110kDaの複合体に対応し、〜52kDaに対応するAβピークの不在に付随する(図7BおよびC)。従って、暗示的に、新たな種はAβ1-40の12量体(52kDa)であり得るものであり、CTCの三量体(55kDa)に対して結合する。
【0132】
従って、SEC は、2つの分子が相互作用し、クロマトグラフィの間に安定する複合体を形成することを示す。形成された複合体は、Aβ 12-merと相互作用するCTproSP-C三量体からなることが明らかである。これらの知見は、Aβオリゴマーの存在と一致し、恐らく、 SECおよびSDS-PAGEの間にインタクトに留まることが可能であり、CTproSP-Cと関連するミセル用構造である。
【0133】
[例10−エレクトロスプレイイオン化質量分析(ESI-MS)を使用したCTproSP-CおよびAβ1-40の相互作用試験]
Aβ/CTproSP-C複合体形成の更なる試験のために、Aβ1-40 および CTproSP-Cの混合物、並びに別個のポリペプチドをESI質量分析を使用して分析した。
【0134】
1.1mMで-20℃で20mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.0、30mM塩化ナトリウム中で貯蔵したCTproSP-C (理論平均分子量18264.89 Da)を、単独で分析のために10mMの酢酸アンモニウムバッファpH6.9の10μMに希釈した。Aβ1-40 (理論平均分子量 4329.9 Da) を1%(v/v)のアンモニアを含む10mMの重炭酸アンモニウムバッファpH10.8に溶解し、100μMの濃度のAβにし、使用するまで-20℃で貯蔵した。CTproSP-C および Aβ1-40を共に分析し、10μMのCTCおよび50μMのAβ1-40の混合物を10mMの重炭酸アンモニウムバッファ中に調製し最終pH7-8にした。
【0135】
Dataは、1000-5000m/zの間をスキャン毎に2秒、および0.1秒のスキャン間の間隔で、MassLynx4.1プログラムの制御下で陽イオンモードで操作したZ-スプレー供給器を装備したQTOF Ultima API 質量分析装置(Waters, Milford, MA)上で得た。試料はナノフローエレクトロスプレーオン化を介して、金属コートホウケイ酸塩ガラスキャピラリーニードル(Proxeon Biosystems, Odense, Denmark)から導入し、供給源温度を80℃に設定した。スプレー条件は、キャピラリ電圧を1.2〜1.9kVで、コアおよびRFレンズエネルギーを100および38Vにそれぞれした。ESインターフェース領域のポンピングを制限し、ピラニ真空管を1.8から1.95mbarにまでバッキングして読み取りに持ち込み、5.85×10-5mbarの分析圧を使用して、衝突ガスとしてアルゴンを使用して行った。MSモードにおいて、衝撃電圧を1.0Vに設定し、MS/MSモードにおいて、CTproSP-C/Aβ1-40複合体を衝突電圧80Vまで増大することにより崩壊した。危機をV-モード(シングルリフレクターモード)において、10,000(FWHM ディフィニッション)の解像度で運転し、質量スケールをPEG-3400に対して構成した。
【0136】
図8は、10mM重炭酸アンモニウムバッファpH7-8中の50μMの Aβ1-40 と混合した10μMのCTproSP-C (CTC)「ナノスプレーESI-MSスペクトラムを示す。標識されたピークは、CTC または Aβ1-40 単独のスペクトルから推論したときの異なる電荷状態を有するCTproSP-C およびAβ1-40のヘテロマーに対応する。
【0137】
個々のペプチドから得たピークパターンの比較とAβ1-40 およびCTproSP-Cの複合体を形成したことが示された混合した試料との比較。CTproSP-Cオリゴマーが見られた(図8、ピークは示さず)。混合物については、7つのピークは、CTproSP-C または Aβのホモマーに対応しないが、その代わりに発生したCTproSP-C/Aβのヘテロマーに割り当てられ得る。Aβ1-40に結合した1つのCTproSP-Cに対応する低い信号強度のピークは、9(m/z 2511)または10(m/z 2260)電荷が見られた。完全な荷電状態は、16-23電荷(m/z 3696 to 2572)を有して包囲され、1つのAβ1-40 ペプチドと複合体中のテトラマーのCTproSP-Cに対応することが観察された。
【0138】
m/z 3485 (図8)でのピークは、CTproSP-C単独のスペクトルでは見られず、[3CTproSP-C+Aβ]17+で対応するピークがMS/MSのために選択されて、それが2つのペプチドの複合体、即ち、MS/MSによるCTproSP-C/Aβ複合体の崩壊によるもの、を表すことを確認した。図9は、ナノスプレーESI-MSスペクトルの(A)10mM重炭酸アンモニウムバッファpH7-8中の10μMCTproSP-C(CTC)および(B)重炭酸アンモニウムバッファpH7-8中の50μMのAβ1-40と混合された10μMのCTproSP-Cを示す。図9Cは、混合試料中でm/z 3484で観察されたイオンが、MS/MSのために選択され、使用された衝突電圧は80Vであった。図9Dは、標識されたCTproSP-C/Aβ複合体から放出された Aβ1-40に対応するピークを伴う図9Cからの1000および1600の間の範囲のm/zの拡大である。
【0139】
衝突電圧は、10から80Vに増大され、複合体の十分な崩壊が明らかとなった。これは、多くの娘イオンを生じ、主に、CTproSP-C and Aβ1-40のモノマーに対応するが、CTproSP-Cトリマーにも対応する(図9Cおよび9D)。興味深いことに、娘イオンヘキサマー中でCTproSP-Cが見いだされ、これは少なくとも一部武運の選択されたイオンが実際に [6CTproSP-C+2Aβ]34+またはより大きなヘテロマーに対応することを示す。また、衝撃後のスペクトルにおける存在も、10 (m/z 4087)および9 (m/z 4541)電荷を有するダイマーCTproSP-Cおよびモノマー化されたAβ1-40からなるヘテロマーであり、これはMSモードにおいては見られなかった(図9Cおよび9D)。
【0140】
従って、ESI質量分析を使用すると、主に見出される複合体は、モノマーAβと相互作用しているCTproSP-Cトリマーであった(図8)。CID実験は、複合体のAβ/CTproSP-C特性を確認した(図9)。CTproSP-C/Aβ 複合体のストイキオメトリは、SECおよびESI-MSとの間の違いを明らかにした。ESI-MSは、直接のCTproSP-C/Aβ 相互作用を破壊することなく、Aβミセルまたは同様の凝集を破壊することにおいてSECよりもより効果的であるかもしれない。SECおよびESI-MSデータの組み合わせは、CTproSP-Cトリマーが十二量体アッセンブリにおいて存在するAβ分子に対して結合することを示唆する。
【0141】
[例11− シャペロンアッセイ]
CTproSP-Cの古典的なシャペロンとして作用する能力、例えば、不安定なタンパク質の凝集を防止すること、を評価するために、アルコール脱水素酵素またはインスリンのいずれか使用するアッセイを使用した。
【0142】
CTproSP-C存在および不在でパン酵母からのADHの熱誘導性凝集を、50℃15分で処理した後、Cary 3 分光光度計(Varian Techtron, Mulgrave, Australia)において光散乱(360nmで吸収)を測定した。全ての実験は、ADHおよび6.25μMの各CTproSP-C濃度で行い、試料を20mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.4、150mM塩化ナトリウムで調整した。
【0143】
図10Aは、ADHの熱誘導性凝集とCTproSP-C の等モル量の不在(破線)および存在(実線)でのインスリンの還元誘導性凝集を示す。50℃で、ADHは5分以内に凝集を開始した。等モル量のCTproSP-Cの添加は、ADH凝集の前の遅滞期の短い延長を引き起こした。好ましいの効果は、例えば、ADH凝集を完全に阻害するsHspαクリスタリンなどのシャペロンの効果と比較して小さい(JI Clark & QL Huang, Proc Natl Acad Sci USA 93: 15185-15189, 1996)。
【0144】
CTproSP-C存在および不在のインスリンのβシャペロンの還元誘導性凝集は、同様に360nmで明らかな吸収が測定されたことによりモニターされた。50mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.0中の40μMインスリン(Sigma, Sweden)を含む溶液と、CTproSP-C含有および非含有、モル比1:1を5分間41℃でプレインキュベートした。ジチオスレイトール(DTT)を次に最終濃度20μMで添加し、360nmでの吸収における電荷を15分間41℃でモニターした。
【0145】
図10Bは、等モル量のCTproSP-C(CTC)の不在(点線)および存在(実線)におけるインスリンの還元誘導性凝集を示す。41℃でのインスリンの還元は、約3ubn後に凝集を開始した。モル比1:1のCTproSP-Cの添加は、全くインスリン凝集に影響しなかった。
【0146】
CTproSP-CがADHおよびインスリンの凝集を防止することができないことがこの結果から明らかになった。これはCTproSP-Cが、伝統的なシャペロン、例えば、Hsp70またはHspsの典型的な特性を有していないことを示す。
【0147】
[例12−CTproSP−CおよびそのBrichosドメインの基質結合特異性]
切断型ヒトCTproSP−Cを例1に記載の通りに作製した。このタンパク質は、原型のBrichosドメインの位置94と比べて、proSP-Cにおける位置86で開始し、結果としてヒトCTproSP−CのBrichosドメインの伸長型を得た。伸長型CTproSP−CBrichos タンパク質の配列は配列番号21である。
【0148】
伸長型CTproSP−CBrichosとCTproSP-Cの基質結合特異性を、種々の濃度のトリペプチドVVVおよびLLLの存在下でESI-MSにより試験した。タンパク質-トリペプチドヘテロマー[PL]およびタンパク質(即ち、伸長型CTproSP-CBrichosまたはCTproSP-C)[P]の相対的な濃度は、逆重畳積分スペクトルから決定した。 [PL]/[P]の比は、トリペプチド濃度を関数として、プロットして両方のタンパク質と両方のリガンドについての結合曲線を得た。図11に示す通り、伸長型CTproSP-CBrichos (「BRICHOS」)およびCTproSP-C(「CTC」)は、2つのトリペプチドLLL(図11A)およびVVV(図11B)に対して同様に結合したことが分かった。従って、伸長されたBrichosドメインは、完全長CTproSP-Cと同様の基質結合プロフィールを有する。
【0149】
[例13−Aβ ペプチドおよびCTCとの円偏光二色性(CD)分光学的試験]
Aβは、βシート構造を形成し、それによりその凝集を導き、最終的にフィブリルを形成する。我々の目的は、CTproSP-Cが、ランダムコイル状態にあるAβペプチドを安定化するか否か、それによりAβペプチドをβシートおよびフィブリル形成から妨げるか否かを決定することである。CTproSP-Cは、Aβ ペプチドと相互作用することが分かっているタンパク質である。我々は、Aβ(1-40) およびAβ(1-42) を使用して、それらのCTproSP-Cとの相互作用の試験をCD分光学的分析を使用して行った。
【0150】
Aβ ペプチドは、TFAおよびHFIPにより調製し、その後20mMのNaOHに200μMの濃度でボルテックスと超音波により溶解した。ペプチド溶液を次に10mMのリン酸ナトリウムバッファpH7で希釈し、最終ペプチド濃度を20μMにした。CTproSP-Cを20μMの濃度で使用した。遠UV領域(190-260nm)におけるCDスペクトルを22℃で分光偏光計(Jasco, Tokyo, Japan)を用いて、バンド幅1nmと反応時間2秒を用いて記録し、10データポイント/nmを回収した。mdegにおけるCDシグナルを波長の関数としてプロットした。
【0151】
Aβ(1-40)およびAβ(1-42)は、主にランダム二次構造から時間t=0で数時間後までβシートに支配される構造に変換した。Aβ(1-40) またはAβ(1-42) 単独の挙動とは対照的に、等モル量でのCTproSP−Cの存在は、事実上少なくとも5時間は不変のAβ立体構造を維持する。CTproSP−CとAβ(1-40) またはAβ(1-42)との混合物のCDスペクトラから、CTproSP−Cからの寄与が減算された。結果は、両方のAβペプチドが主にランダム立体構造を維持し、それによりβシート凝集を観察期間に亘り回避することを示す。
【0152】
同じデータを示す代替的な方法は、217nm(βシート含有量の測定)でのCDシグナルの大きさの展開を経時的にCTproSP-C「CTC」存在および不在でのAβ(1-40) およびAβ(1-42)についてプロットすることであり、図12に示す通りである。これは、経時的にAβ(1-40) (図12A)またはAβ(1-42) (図12B)の CD217nm シグナルの大きさの増大(四角)を示し、CTproSP-C (丸)存在(1:1)は、大きくこの増大を防止する。
【0153】
これらの結果は、ヒトCTproSP-CがAβ(1-40) および Aβ(1-42)における同じ構造上の効果を有することを示す。
【0154】
[例14−細胞培養実験]
Aβ重合化は、培養物中の細胞に対して毒性のアッセンブリを生じる。MTT (3-(4, 5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルルテトラゾリウムブロミド)を使用して、CTproSP-C または CTproSP-CBrichos存在または不在における重合型のAβ1-42で処理した後のPC12細胞の酸化的能力についてモニターした。
【0155】
PC12細胞は、10%のウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン(National Veterinary Institute, Sweden)添加DMEM中、5%の二酸化炭素中で培養する。細胞が適切な密度で96ウェル細胞+プレート(Sarstedt, Sweden)に配置される。次の日、培地を10%のウシ胎仔血清およびペニシリン/ストレプトマイシン含有しフェノールレッドを含まないDMEMに交換した(45μl/ウェル)。典型定期に、Aβ1-42 は10μMで、(5μl/ウェル)結果として最終濃度1μMに直接(4時間処理実験)に、または37℃での4時間のプレインキュベートの後に(18時間処理実験)のいずれかで、単独か、または等モル量または5倍のモル過料濃度でCTproSP-C またはCTproSP-CBrichos と共に、添加される。PBSをAβ調製物のために使用する溶媒と同じ量でコントロール処理として使用する。細胞を4または18時間、処理と共にインキュベートし、およびその後フェノールレッドを含まないDMEM中に0.6mg/mlで溶解したMTTを添加し(50μl/ウェル)、最終濃度0.3mg/mlMTTを得て、2時間37℃で細胞とインキュベートする。紫色のホルマザン結晶構造を、細胞培養用の培地に対して直接に添加する50%のジメチルホルムアミドおよび20%のSDSを水中に含む可溶化バッファを使用して溶解する。575nmでの吸収を記録して、コントロール処理を100%生細胞と設定する。
【0156】
[例15−遺伝子組み換えマウスにおける実験]
ヒトにおけるアルツハイマー病に関連する1または幾つかの突然変異を有するヒトAβ 前駆物質 (APP)を発現しているマウスを、典型的に使用して、治療戦略の評価を行う。ウェディッシュ変異(APP K670N/M671L)のみを有するAPP発現マウスに対して、またはアルクチック変異を追加したスウェディッシュ変異(APP E693G) (Lord A et al., Neurobiol Aging 27: 67-77, 2006)APP発現マウスに対して、CTproSP-C またはCTproSP-CBrichosを3-15mg/kgの用量で、10-30週に亘り、週1回から3回、静脈内、腹腔内、鼻腔内または頭蓋内投与する。治療の効果を、偽−、または未処理コントロールに比較してCHSにおけるプラーク沈着の組織学的試験により評価したが、これらを可溶性および非可溶性Aβの量および行動パラメータなどの他の測定にも使用する。
【0157】
[例16−ヒトへの投与]
CTproSP-CまたはCTproSP-CBrichos は、3-15mg/kgの用量で、10-30週に亘り、週1回から3回、静脈内、腹腔内、鼻腔内または頭蓋内に、健康な個体およびアルツハイマー病を罹患した個体に対して投与される。治療の効果は、偽−、または未処理コントロールと比較してCNSにおけるプラーク沈着の組織学的試験により評価した。可溶性Aβおよび非可溶性Aβの量および行動パラメータなどの他の測定にも使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質(CTproSP-C)のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
からなる群より選択され、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療において使用するための単離タンパク質。
【請求項2】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号18)のBrichosドメインの全ての保存された残基、および、
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性;またはヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性、
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される請求項1に記載の単離タンパク質。
【請求項3】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号11)の全ての保存された残基、および
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される請求項2に記載の単離タンパク質。
【請求項4】
ヒト CTproSP-C (配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒト CTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される請求項1〜3の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項5】
200またはそれ以下のアミノ酸残基からなる請求項1〜4の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項6】
150またはそれ以下のアミノ酸残基からなる請求項5に記載の単離タンパク質。
【請求項7】
90またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項1〜6の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項8】
100またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項7に記載の単離タンパク質。
【請求項9】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-C、
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメイン、および
配列番号21を有するヒトからのCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメイン
からなる群より選択される請求項1〜8の何れか1項に記載の単離タンパク質
【請求項10】
ヒトCTproSP-C (配列番号2)、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)、および配列番号21を有するヒトCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメイン
からなる群より選択された請求項9に記載の単離タンパク質。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の単離タンパク質であって、当該ヒト proSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置がグルタミンではない単離タンパク質。
【請求項12】
請求項11に記載の単離タンパク質であって、当該ヒト proSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置が厳密に保存された単離タンパク質。
【請求項13】
ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療における使用のための、治療学的に有効量の請求項1〜12の何れか1項に記載の単離タンパク質とそのために適切な薬学的担体とを含む薬学的組成物。
【請求項14】
治療学的に有効量の請求項1〜12の何れか1項に記載の単離タンパク質または請求項13に記載の薬学的組成物を前記哺乳類に対して投与することを含む、それを必要とするヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病を治療する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記治療が、予防的、対症および治療的療法からなる群より選択される方法。
【請求項16】
ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療ための薬物の製造のための請求項1〜12の何れか1項に記載の単離タンパク質の使用。
【請求項17】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
からなる群より選択される150またはそれ以下のアミノ酸残基からなる、薬物として使用するための単離タンパク質。
【請求項18】
哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号18)の全ての保存された残基、および
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10) からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性;またはヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) or ラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される請求項17に記載の単離タンパク質。
【請求項19】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号11)の全ての保存された残基、および
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される請求項18に記載の単離タンパク質。
【請求項20】
ヒトCTproSP-C (配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
からなる群より選択される、請求項17〜19の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項21】
90またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項17〜20の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項22】
100またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項21に記載の単離タンパク質。
【請求項23】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-C、
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメイン、および
配列番号21を有するヒトからのCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメイン、
からなる群より選択される、請求項17〜22の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項24】
ヒトCTproSP-C (配列番号2)、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)、および配列番号21を有するヒトCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメインからなる群より選択される請求項23に記載の単離タンパク質。
【請求項25】
請求項17〜24の何れか1項に記載の単離タンパク質であって、当該ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置がグルタミンではない単離タンパク質。
【請求項26】
請求項25に記載の単離タンパク質であって、当該ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置が厳密に保存されている単離タンパク質。
【請求項27】
治療学的に有効量の請求項17〜26の何れか1項に記載の単離タンパク質とそのために適切な薬学的担体とを含む薬学的組成物。
【請求項1】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質(CTproSP-C)のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
からなる群より選択され、ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療において使用するための単離タンパク質。
【請求項2】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号18)のBrichosドメインの全ての保存された残基、および、
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性;またはヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性、
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される請求項1に記載の単離タンパク質。
【請求項3】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号11)の全ての保存された残基、および
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9) またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される請求項2に記載の単離タンパク質。
【請求項4】
ヒト CTproSP-C (配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒト CTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される請求項1〜3の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項5】
200またはそれ以下のアミノ酸残基からなる請求項1〜4の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項6】
150またはそれ以下のアミノ酸残基からなる請求項5に記載の単離タンパク質。
【請求項7】
90またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項1〜6の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項8】
100またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項7に記載の単離タンパク質。
【請求項9】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-C、
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメイン、および
配列番号21を有するヒトからのCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメイン
からなる群より選択される請求項1〜8の何れか1項に記載の単離タンパク質
【請求項10】
ヒトCTproSP-C (配列番号2)、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)、および配列番号21を有するヒトCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメイン
からなる群より選択された請求項9に記載の単離タンパク質。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の単離タンパク質であって、当該ヒト proSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置がグルタミンではない単離タンパク質。
【請求項12】
請求項11に記載の単離タンパク質であって、当該ヒト proSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置が厳密に保存された単離タンパク質。
【請求項13】
ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療における使用のための、治療学的に有効量の請求項1〜12の何れか1項に記載の単離タンパク質とそのために適切な薬学的担体とを含む薬学的組成物。
【請求項14】
治療学的に有効量の請求項1〜12の何れか1項に記載の単離タンパク質または請求項13に記載の薬学的組成物を前記哺乳類に対して投与することを含む、それを必要とするヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病を治療する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記治療が、予防的、対症および治療的療法からなる群より選択される方法。
【請求項16】
ヒトを含む哺乳類におけるアルツハイマー病の治療ための薬物の製造のための請求項1〜12の何れか1項に記載の単離タンパク質の使用。
【請求項17】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からの肺サーファクタントタンパク質 C 前駆物質のC末端ドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
からなる群より選択される150またはそれ以下のアミノ酸残基からなる、薬物として使用するための単離タンパク質。
【請求項18】
哺乳類のCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号18)の全ての保存された残基、および
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10) からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性;またはヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16) or ラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメインに対して少なくとも70%の同一性
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群から選択される請求項17に記載の単離タンパク質。
【請求項19】
哺乳類のCTproSP-C (配列番号11)の全ての保存された残基、および
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-Cに対して少なくとも70%の同一性
を有するアミノ酸配列を含むタンパク質からなる群より選択される請求項18に記載の単離タンパク質。
【請求項20】
ヒトCTproSP-C (配列番号2)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、および
ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、
からなる群より選択される、請求項17〜19の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項21】
90またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項17〜20の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項22】
100またはそれ以上のアミノ酸残基からなる請求項21に記載の単離タンパク質。
【請求項23】
ヒト (配列番号2)、ウシ (配列番号5)、アカゲザル(配列番号6)、マウス (配列番号7)、ミンク (配列番号8)、ウサギ (配列番号9)またはラット (配列番号10)からのCTproSP-C、
ヒト (配列番号4)、ウシ (配列番号12)、アカゲザル(配列番号13)、マウス (配列番号14)、ミンク (配列番号15)、ウサギ (配列番号16)またはラット (配列番号17)からのCTproSP-CのBrichosドメイン、および
配列番号21を有するヒトからのCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメイン、
からなる群より選択される、請求項17〜22の何れか1項に記載の単離タンパク質。
【請求項24】
ヒトCTproSP-C (配列番号2)、ヒトCTproSP-CのBrichosドメイン(配列番号4)、および配列番号21を有するヒトCTproSP-Cの伸長されたBrichosドメインからなる群より選択される請求項23に記載の単離タンパク質。
【請求項25】
請求項17〜24の何れか1項に記載の単離タンパク質であって、当該ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置がグルタミンではない単離タンパク質。
【請求項26】
請求項25に記載の単離タンパク質であって、当該ヒトproSP-C (配列番号1)におけるロイシン188に対応する位置が厳密に保存されている単離タンパク質。
【請求項27】
治療学的に有効量の請求項17〜26の何れか1項に記載の単離タンパク質とそのために適切な薬学的担体とを含む薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−521346(P2012−521346A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547867(P2011−547867)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050097
【国際公開番号】WO2010/087771
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511180101)アルファベータ・エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】AlphaBeta AB
【住所又は居所原語表記】c/o Monika Hagman, Sveavaegen 18, S−182 60 Djursholm, Sweden
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050097
【国際公開番号】WO2010/087771
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511180101)アルファベータ・エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】AlphaBeta AB
【住所又は居所原語表記】c/o Monika Hagman, Sveavaegen 18, S−182 60 Djursholm, Sweden
【Fターム(参考)】
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