説明

アルミニウムの寿命評価方法及び寿命評価装置

【課題】 本発明は、実環境中での腐食形態を簡便に評価し、かつ短時間でアルミニウムの寿命を評価するアルミニウムの寿命評価方法及び寿命評価装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る解決手段は、アルミニウムからなる評価体に対して、塩水噴霧ステップ、乾燥ステップ、湿潤ステップを繰り返し行い腐食を加速させる加速工程と、評価体の表面に形成された腐食部分の表面積と、前記評価体の表面積との比を腐食面積比として測定する測定工程と、腐食面積比に基づいて評価体の寿命を評価する評価工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムの寿命評価方法及び寿命評価装置に係る発明であって、特に、複合サイクル試験(Cu2+,Fe3+含有塩水噴霧→乾燥→湿潤)を行い加速評価するアルミニウムの寿命評価方法及び寿命評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の材料としては、成形性、溶接性、耐食性を考慮してアルミニウムが多く使用されている。しかし、アルミニウムが耐食性を有しているといえども、塩害が懸念される地域での長期使用の間には腐食は免れない。そのため、的確な製品の寿命評価が必要不可欠である。
【0003】
従来、アルミニウムの耐食性試験には、短時間で試験を行うために特許文献1に示す腐食促進環境下で試験が行われていた。具体的に、特許文献1では、塩水噴霧→乾燥→湿潤サイクルを繰り返すことにより腐食促進させ、孔食を主体に腐食を評価していた。これにより、特許文献1は、アルミニウム材料について、短期間で市場の相関関係の高い耐食性試験を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−237330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているアルミニウム材料の耐食性試験方法は、アルミニウムの孔食に関してのみ評価が行われている。つまり、特許文献1は、アルミニウム腐食の深さ方向のみ評価しており、アルミニウムの他の腐食形態である表面腐食については評価していないという課題があった。
【0006】
また、特許文献1は、アルミニウム材料の耐食性比較評価のみを行っているだけで、寿命については何ら評価していないという課題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、実環境中での腐食形態を簡便に評価し、かつ短時間でアルミニウムの寿命を評価するアルミニウムの寿命評価方法及び寿命評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る解決手段は、アルミニウムからなる評価体に対して、塩水噴霧ステップ、乾燥ステップ、湿潤ステップを繰り返し行い腐食を加速させる加速工程と、評価体の表面に形成された腐食部分の表面積と、前記評価体の全表面積との比を腐食面積比として測定する測定工程と、腐食面積比に基づいて評価体の寿命を評価する評価工程とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に記載のアルミニウムの寿命評価方法は、評価体の表面に形成された腐食部分の表面積と、前記評価体の全表面積との比を腐食面積比として測定し、当該腐食面積比に基づいて寿命を評価するので、実環境中での腐食形態を簡便に評価し、かつ短時間でアルミニウムの寿命を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
従来、アルミニウムの腐食を評価する場合、孔食の深さを腐食評価指標として採用する場合が多かった。しかし、本実施の形態では、アルミニウムの腐食を評価する腐食評価指標としてアルミニウムの表面が変色する表面腐食を腐食評価指標として採用する。
【0011】
まず、図1に、本発明の実施の形態1に係るアルミニウムの寿命評価装置の構成図を示す。図1に示す寿命評価装置は、アルミニウムの実環境腐食を模擬している。具体的に図1に示す寿命評価装置では、槽1内にアルミニウムの評価体2が評価体設置場所3に設置されている。
【0012】
そして、槽1内には、塩水にCu2+、Fe3+を含めることが可能な塩水噴霧装置4(Cu2+、Fe3+、Cl-濃度を調節可能)と、温度・湿度制御装置5とを備えている。そのため、図1に示す寿命評価装置は、Cu2+、Fe3+含めることが可能な塩水噴霧ステップと、乾燥ステップと、湿潤ステップのサイクルを繰り返し行うことができる。
【0013】
上記サイクルを行うことで、評価体2に腐食が生じることになる。当該腐食を評価するために、図1に示す寿命評価装置では、洗浄装置8及び洗浄ノズル9を設けて、評価体2の表面を水洗浄する。その後、図1に示す寿命評価装置では、評価体2の表面を顕微鏡6で観察し、撮像・画像処理装置7で評価体2の表面積に対する腐食部分の表面積の比(以下、腐食面積比ともいう)を測定する。
【0014】
なお、顕微鏡6は、評価体2に対し90度の位置に設置され、撮像・画像処理装置7は、評価体2の表面の画像を撮像し、当該画像を腐食部分と非腐食部分の二値で表現されるように画像処理(二値化)が行われる。撮像・画像処理装置7は、画像を二値化する際に、ガンマ値、光照射を変更することで、0(黒)から255(白)に分割された輝度レンジのうち、50から100を腐食部分のピークに、200から250を非腐食部分のピークになるように画像を調節している。そのため、撮像・画像処理装置7は、輝度レンジのうち0から150以下が腐食部分、151から255以下が非腐食部分と評価している。
【0015】
なお、図1に示す寿命評価装置では、塩水噴霧ステップや湿潤ステップで顕微鏡6のガラスが曇るため、図示していないがワイパーを設けている。又は、ワイパーの代わりに、ガラスが曇らないように、顕微鏡6にシャッターを設けても良い。
【0016】
以上のように、本実施の形態に係る寿命評価装置では、従来と異なり、アルミニウムの孔食の深さを腐食評価指標とするのではなく、撮像・画像処理装置7を用いて腐食面積比を腐食評価指標としているので、アルミニウムの腐食について孔食だけではなく実環境で問題となっている腐食を再現することができる。
【0017】
また、本実施の形態に係る寿命評価装置では、従来と異なり、アルミニウムの腐食促進剤と考えられているCu2+やFe3+を塩水に含ませ噴霧することにより、アルミニウムの腐食を加速的に促進させることができる。なお、塩水に含ませるCu2+やFe3+は、少なくともいずれか一方でも良い。
【0018】
次に、図1に示す寿命評価装置は、撮像・画像処理装置7で測定した腐食面積比に基づいて、評価装置10で評価体2の寿命の評価する。図2を用いて、寿命の評価方法を説明する。まず、本実施の形態の寿命評価方法では、図2に示すように、横軸をぬれ時間(塩水噴霧時間(塩水噴霧ステップ)+湿潤時間(湿潤ステップ))、縦軸を腐食面積比とし、測定した値をグラフ化する。なお、図2の横軸及び縦軸はともにlogスケールである。また、図2には、比較試験となる実環境データもグラフ化している。但し、実環境データにおいて、ぬれ時間は運転時間としている。
【0019】
本実施の形態に係る寿命評価装置で測定した腐食面積比は、ぬれ時間をt、腐食面積比をH、係数をa,bとすると式1のような関係となる。なお、実環境データも同様に、式1の関係を有している。
【0020】
【数1】

【0021】
本実施の形態に係る寿命評価装置で測定した試験データの係数bは、図2に示すように実環境データの係数bと等しくなる。そのため、本実施の形態に係る寿命評価装置で測定は、実環境を加速した関係にあることが分かる。また、係数aから実環境に対する加速倍率を算出することができる。
【0022】
また、本実施の形態に係る寿命評価方法では、式1のような関係式が成り立つため、ぬれ時間tと腐食面積比Hとの関係を一点測定できれば、図2に示すような関係図を作成することができる。なお、式1の関係から分かるように、log(a)が大きいほど腐食発生時間が速くなるため、腐食進行速度は速くなる。
【0023】
さらに、腐食面積比Hとぬれ時間tとが式1のような関係を有していることから、ある一定値以上の腐食面積比Hを有した場合、その評価体2は製品として使用できないとすると、当該一定値の腐食面積比Hから評価体2の寿命を算出することができる。また、加速倍率が算出できるため、実環境でのアルミニウムの寿命評価を短時間で行うことができる。
【0024】
上述したように、本実施の形態では、アルミニウムの腐食促進剤として、アルミニウムよりイオン化傾向の小さい金属イオン(Cu2+やFe3+)を添加した塩水を噴霧する。そのため、Cl-が酸化被膜を破った後に、Cu2+やFe3+が電気化学作用を促進するために、実環境での腐食モードを保った上で、加速倍率のみを増加させることができる。噴霧水中に添加する薬剤としては、Cu2+、Fe3+、Cl-の他に腐食因子が添加されることがないように、CuCl2やFeCl3を使用する。
【0025】
さらに、アルミニウムの腐食を加速する濃度は、Cu2+として0.01ppm以上、Fe3+として0.01ppm以上添加する。また、濃度5%の塩水噴霧(Cl-)であるため、添加する薬剤の最大量は、それぞれCuCl2が4.5%、FeCl3が2.6%として、CuCl2とFeCl3による塩水噴霧水中のCl-が5%を超えないようにしている。
【0026】
また、実環境中においては、アルミニウムに水分(水道水)が付着すると、Cu2+やFe3+が付着することがわかっている。そして、この水道水中には、最大Cu2+が1.0ppm、Fe3+が0.3ppm含まれているため、Cu2+を1.0ppm、Fe3+を0.3ppm含有する塩水噴霧を適用するのが実環境との関係から好ましいと考えられる。
【0027】
(実施の形態2)
実施の形態1では、腐食面積比を測定する方法として、顕微鏡6と撮像・画像処理装置7とを用いる方法で説明したが、本発明はこれに限られない。そこで、実施の形態1と異なる腐食面積比の測定方法を行う寿命評価装置の構成を図3に示す。図3に示す寿命評価装置でも、図1と同様、槽1、評価体2、評価体設置場所3、塩水噴霧装置4、温度・湿度制御装置5、洗浄装置8、洗浄ノズル9及び評価装置10を備えている。
【0028】
しかし、図3に示す寿命評価装置では、腐食面積比を測定するための顕微鏡6と撮像・画像処理装置7の代わりに、光源及び検出器11が設置されている。この光源及び検出器11は、評価体2の表面に光を照射する光源部分と、評価体2の表面で反射された光源からの反射光を検出し、当該反射光より腐食面積比を測定する検出部分から構成されている。
【0029】
なお、光源部分は、評価体2に対し90度の位置に設置されており、評価体2に向かって光を入射する。そして、検出部分は、光源部分からの光を評価体2の表面で跳ね返えした反射光が全反射である場合、当該部分は非腐食と判断し、反射光が乱反射される場合、当該部分は腐食と判断している。
【0030】
次に、図3に示す寿命評価装置は、光源及び検出器11で測定した腐食面積比に基づいて、評価装置10で評価体2の寿命の評価する。評価装置10での寿命評価は、実施の形態1で説明した方法で行うため、本実施の形態では説明を省略する。
【0031】
なお、図3に示す寿命評価装置でも、塩水噴霧ステップや湿潤ステップで光源及び検出器11のガラスが曇るため、図示していないがワイパーを設けている。又は、ワイパーの代わりに、ガラスが曇らないように、光源及び検出器11にシャッターを設けても良い。
【0032】
以上のように、本実施の形態に係る寿命評価装置では、従来と異なり、アルミニウムの孔食の深さを腐食評価指標とするのではなく、光源及び検出器11を用いて腐食面積比を腐食評価指標としているので、アルミニウムの腐食について孔食だけではなく実環境で問題となっている腐食を再現することができる。
【0033】
(実施例)
次に、上述した実施の形態に係る寿命評価装置を用いて、熱交換器アルミニウムフィンの寿命評価を行った場合の具体的な実施例について説明する。なお、寿命評価を行う熱交換器は、図4に示すような形状をしており、熱交換器の側面からアルミニウムフィン20の部分が確認できる。本発明に係る寿命評価は、熱交換器の側面から確認できるアルミニウムフィン20のうち、当該側面から側面近傍のCu管(図示せず)までの全体を表面観察し、その部分の全体が変色した時間を寿命として評価する。
【0034】
(実施例1)
図1に示した寿命評価装置を用いて、純アルミニウム(1200)からなる熱交換器のアルミニウムフィン(5cm×10cm×10cm)の寿命評価を行った実施例を以下に説明する。なお、純アルミニウム(1200)とは、JIS H4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)において規格化されている合金番号である。そして、純アルミニウム(1200)の成分は、Alが99.00%以上、Si+Feが1.00%以下、Cu,Mn,Zn,Tiのそれぞれが0.05%以下、その他の合計が0.15%以下(但し、個々は0.05%以下)となっている。
【0035】
本実施例では、上述の熱交換器アルミニウムフィン(以下、単にアルミニウムフィンともいう)を評価体2として、評価体設置場所3に設置し、以下に示すサイクル1又はサイクル2のいずれかのサイクルを繰り返すことにより評価体2を腐食させて、評価体2の腐食面積比を測定して寿命を評価している。
【0036】
サイクル1では、塩水噴霧装置4から噴霧される塩水噴霧水中に、Cu2+及びFe3+を0ppm含んでいる。そして、サイクル1では、塩水噴霧ステップ(温度35℃、塩水噴霧水のNacl濃度5%、2時間)→乾燥ステップ(温度60℃、湿度35%RH、4時間)→湿潤ステップ(湿潤温度50℃、湿度95%RH、2時間)の順で行われる。
【0037】
一方、サイクル2では、塩水噴霧装置4から噴霧される塩水噴霧水中に、Cu2+を1ppm、Fe3+を0.3ppm含んでいる。そして、サイクル2では、塩水噴霧ステップ(温度35℃、塩水噴霧水のNacl濃度5%、2時間)→乾燥ステップ(温度60℃、湿度35%RH、4時間)→湿潤ステップ(湿潤温度50℃、湿度95%RH、2時間)の順で行われる。
【0038】
図5に、本実施例において行ったアルミニウムフィンの寿命評価結果を示す。図5では、サイクル1又はサイクル2を行ったアルミニウムフィンのぬれ時間(塩水噴霧時間+湿潤時間)と腐食面積比との関係が示されている。なお、本実施例では、比較例として実環境から採取したアルミニウムフィンの運転時間(ぬれ時間)と腐食面積比との関係も測定して、図5に示している。
【0039】
図5に示すグラフは、式1の関係式を適用することができる。そのため、サイクル1を行ったアルミニウムフィンのぬれ時間と腐食面積比との関係式は、H=4.0×10-41.4(式2)となり、サイクル2を行ったアルミニウムフィンのぬれ時間と腐食面積比との関係式は、H=3.7×10-31.4(式3)となる。なお、比較例である実環境から採取したアルミニウムフィンのぬれ時間と腐食面積比との関係式は、H=2.0×10-51.4(式4)となる。
【0040】
図5及び式2から式4において、本発明に係る寿命評価方法により測定したぬれ時間と腐食面積比との関係式(式2,3)と、実環境データのぬれ時間と腐食面積比の関係式(式4)とは、ともに係数bが1.4と等しい。そのため、サイクル1及びサイクル2が、実環境の加速試験として成立していることがわかる。また、式2と式4との比較から、サイクル1の加速倍率は8.5倍、式3と式4との比較から、サイクル2の加速倍率は、41.6倍となる。よって、Cu2+及びFe3+を含有した塩水噴霧水を用いる場合、加速倍率が増加することがわかる。
【0041】
また、式3から、アルミニウムフィンの腐食面積比が100%となるぬれ時間は、1464hrと評価できるため、実環境でのアルミニウムフィン(純アルミニウム(1200))の寿命は、7.0年であると評価することができる。
【0042】
なお、本実施例では、図1に示す寿命評価装置を用いて腐食面積比を測定しているが、図3に示す寿命評価装置を用いて腐食面積比を測定しても良い。
【0043】
(実施例2)
図3に示した寿命評価装置を用いて、コーティングされている純アルミニウム(1200)からなるアルミニウムフィン(5cm×10cm×10cm)の寿命評価を行った実施例を以下に説明する。本実施例で行ったコーティングは、アルミニウムフィンの腐食を防止するために施されたものであり、主にウレタン系樹脂をコーティング剤として用いている。なお、本実施例に係るコーティングされているアルミニウムフィンを、以下ではアルミニウムフィンAという。
【0044】
本実施例では、アルミニウムフィンAを評価体2として、評価体設置場所3に設置し、実施例1で示したサイクル2を繰り返すことにより評価体2を腐食させて、評価体2の腐食面積比を測定して寿命を評価している。
【0045】
図6に、本実施例において行ったアルミニウムフィンAの寿命評価の結果を示す。図6では、サイクル2を行ったアルミニウムフィンAのぬれ時間(塩水噴霧時間+湿潤時間)と腐食面積比との関係が示されている。なお、図6では、比較のために、実施例1でサイクル2を行ったアルミニウムフィンのぬれ時間(塩水噴霧時間+湿潤時間)と腐食面積比との関係も示している。
【0046】
図6に示すグラフおいても、式1の関係式を適用することができる。そのため、サイクル2を行ったアルミニウムフィンAのぬれ時間と腐食面積比との関係式は、H=4.0×10-41.4(式5)となる。
【0047】
図6及び式3と式5において、本実施例でサイクル2を行ったアルミニウムフィンAのぬれ時間と腐食面積比との関係式(式5)と、実施例1でサイクル2を行ったアルミニウムフィンのぬれ時間と腐食面積比の関係式(式3)とは、ともに係数bが1.4と等しい。そのため、サイクル2を行ったアルミニウムフィンAにおいても、実環境の加速試験として成立していることがわかる。また、式5と式3との比較から、アルミニウムフィンは、コーティングAを施すことにより、4.9倍寿命がのびる。また、アルミニウムフィンAの実環境での寿命は、34年であると評価できる。
【0048】
なお、本実施例では、図3に示す寿命評価装置を用いて腐食面積比を測定しているが、図1に示す寿命評価装置を用いて腐食面積比を測定しても良い。
【0049】
(実施例3)
図1に示した寿命評価装置を用いて、実施例2と異なるコーティング(3種類)が施されている純アルミニウム(1200)からなるアルミニウムフィン(5cm×10cm×10cm)の寿命評価を行った実施例を以下に説明する。本実施例で行ったコーティングは、アルミニウムフィンの腐食を防止するために施されたものであり、主にアミノ系樹脂、スルフォン酸系樹脂、水溶性樹脂のコーティング剤をそれぞれ用いている。なお、アミノ系樹脂でコーティングされているアルミニウムフィンを、以下ではアルミニウムフィンB、スルフォン酸系樹脂でコーティングされているアルミニウムフィンを、以下ではアルミニウムフィンC、水溶性樹脂でコーティングされているアルミニウムフィンを、以下ではアルミニウムフィンD、とそれぞれいう。
【0050】
本実施例では、アルミニウムフィンB,C,Dのそれぞれを評価体2として、評価体設置場所3に設置し、実施例1で示したサイクル2を繰り返すことにより評価体2を腐食させて、評価体2の腐食面積比を測定して寿命を評価している。なお、実環境におけるアルミニウムフィンB,C,Dの寿命も測定を行った。
【0051】
表1に、本実施例において行ったアルミニウムフィンB,C,Dの寿命評価の結果を示す。表1には、各アルミニウムフィンB,C,Dのぬれ時間(塩水噴霧時間+湿潤時間)と腐食面積比とのデータをそれぞれ一点示している。
【0052】
【表1】

【0053】
サイクル2を行ったアルミニウムフィンB,C,Dも、実施例2と同様、実環境の加速試験として成立しているため、式1の関係を有し、かつ係数b=1.4と考えられる。よって、表1で示したデータから、ぬれ時間と腐食面積比との関係式は、アルミニウムフィンBが、H=2.4×10-31.4(式6)、アルミニウムフィンCが、H=4.4×10-41.4(式7)、アルミニウムフィンDが、H=2.8×10-31.4(式8)となる。
【0054】
そして、式6から式8により、アルミニウムフィンB,C,Dの実環境での寿命は、表2のように評価できる。
【0055】
【表2】

【0056】
実環境におけるアルミニウムフィンB,C,Dから評価される寿命は、表2と同程度の寿命になることが確認されている。そのため、アルミニウムフィンB,C,Dの寿命が、表1のぬれ時間程度(80〜200時間程度)で、簡便に寿命を評価することができる効果がある。
【0057】
なお、本実施例では、図1に示す寿命評価装置を用いて腐食面積比を測定しているが、図3に示す寿命評価装置を用いて腐食面積比を測定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1に係る寿命評価装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るぬれ時間と腐食面積比との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る寿命評価装置を示す構成図である。
【図4】本発明の実施例に係るアルミニウムフィンを示す構成図である。
【図5】本発明の実施例1に係るアルミニウムフィンのぬれ時間と腐食面積比との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係るアルミニウムフィンのぬれ時間と腐食面積比との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 槽、2 評価体、3 評価体設置場所、4 塩水噴霧装置、5 温度・湿度制御装置、6 顕微鏡、7 撮像・画像処理装置、8 洗浄装置、9 洗浄ノズル、10 評価装置、11 光源及び検出器、20 アルミニウムフィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムからなる評価体に対して、塩水噴霧ステップ、乾燥ステップ、湿潤ステップを繰り返し行い腐食を加速させる加速工程と、
前記評価体の表面に形成された腐食部分の表面積と、前記評価体の全表面積との比を腐食面積比として測定する測定工程と、
前記腐食面積比に基づいて前記評価体の寿命を評価する評価工程とを備えることを特徴とするアルミニウムの寿命評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアルミニウムの寿命評価方法であって、
前記評価工程は、前記腐食面積比をH、塩水噴霧ステップと湿潤ステップとの合計時間をt、係数をa及びbとすると、log(H)=log(a)+b×log(t)で表される関係に基づいて寿命を評価することを特徴とするアルミニウムの寿命評価方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアルミニウムの寿命評価方法であって、
前記加速工程の前記塩水噴霧ステップは、所定の濃度のCuイオン及びFeイオンのうち少なくとも一方を含む塩水を前記評価体に噴霧することを特徴とするアルミニウムの寿命評価方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のアルミニウムの寿命評価方法であって、
前記測定工程は、前記評価体の表面を撮像した画像を腐食部分と非腐食部分とで二値化して、前記腐食面積比を測定することを特徴とするアルミニウムの寿命評価方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のアルミニウムの寿命評価方法であって、
前記測定工程は、前記評価体の表面の反射光に基づいて腐食部分の表面積を求め、前記腐食面積比を測定することを特徴とするアルミニウムの寿命評価方法。
【請求項6】
所定の濃度の塩水をアルミニウムからなる評価体に噴霧する塩水噴霧部と、
槽内の温度及び湿度を調整する温度・湿度制御部と、
前記評価体の表面を洗浄する洗浄部と、
前記評価体の表面を撮像し、撮像した当該画像を腐食部分と非腐食部分との二値で表現されるように処理し、前記画像に基づいて前記評価体の表面積に対する前記腐食部分の表面積の比を腐食面積比として測定する撮像・画像処理部と、
前記腐食面積比に基づいて前記評価体の寿命を評価する評価部とを備えることを特徴とするアルミニウムの寿命評価装置。
【請求項7】
所定の濃度の塩水をアルミニウムからなる評価体に噴霧する塩水噴霧部と、
槽内の温度及び湿度を調整する温度・湿度制御部と、
前記評価体の表面を洗浄する洗浄部と、
前記評価体の表面に光を照射する光源部と、
前記評価体の表面で反射された前記光源からの反射光に基づいて腐食部分の表面積を求め、前記評価体の表面積に対する前記腐食部分の表面積の比を腐食面積比として測定する検出部と、
前記腐食面積比に基づいて前記評価体の寿命を評価する評価部とを備えることを特徴とするアルミニウムの寿命評価装置。
【請求項8】
請求項7又は請求項8に記載のアルミニウムの寿命評価装置であって、
前記塩水噴霧部は、所定の濃度のCuイオン及びFeイオンのうち少なくとも一方を含む塩水を前記評価体に噴霧することを特徴とするアルミニウムの寿命評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−113994(P2007−113994A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304233(P2005−304233)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】