説明

アルミニウム合金材を用い、耐食性に優れた構造体とその接合方法

【課題】接合前後の寸法あるいは形状の変化が殆ど無く、また、ろう材あるいは溶加材のような接合部材を使用することなく被接合部材同士が接合するアルミニウム合金板を用いた高耐食性を有する構造体とその接合方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、他方の被接合部材としてアルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを用い、前記一方の被接合部材と前記他方の被接合部材とを接合部材を用いることなく接合した構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Si:1.5質量%〜5.0質量%(以下、質量%は単に%と記す。)、Cu:0.05%〜1.2%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなり、接合前と接合後の当該構造体の寸法及び形状が略同一であることを特徴とする高耐食性を有する構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合前後の寸法あるいは形状の変化が殆どなく、また、ろう材あるいは溶加材のような接合部材を使用することなく被接合部材同士が接合するアルミニウム合金材を用い、かつ耐食性に優れた構造体とその接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用熱交換器を代表とするブレージング法で製造される構造体において、材料同士を接合するために、従来はAl−Si合金からなるろう材をクラッドしたブレージングシートを用いるか、ろうを供給するためにろう材を別途塗布あるいは配置する必要があった(非特許文献1)。しかし、ブレージングシートを用いる場合は各層を別々に製造し、さらにそれを合わせる工程が必要であるため、非常に製造コストが高く、それを利用した構造体の製造も必然高価なものとなっている。また、別途ろうを塗布したり、配置したりする場合も、構造体の製造にはやはり高いコストがかかっている。
【0003】
ブレージングシートを用いたブレージング法は、接合部材であるろう材が溶融して被接合部材の接合部の隙間を充填することによる接合を行う。その際に、被接合部材の接合部近辺が局所的に溶融することで金属接合が得られる接合方法である。
【0004】
一方で、金属部材の全体を半溶融状態として行う接合方法も提案されている。特許文献1がその一例であるが、この技術は合金粉末を半溶融させて接合するものであるため、熱交換器のような複雑な形状有する構造体を製造することは困難である。また、特許文献2には、半溶融の合金母材に非金属部材を圧入して非金属部材と合金母材とを接合する方法が提案されており、この技術を金属部材同士の接合に応用することは容易であると思われる。しかしながら、この接合方法では所定の金型にパンチを圧接して接合するため、製品の形状が限定され、やはり複雑な形状を有する構造体を得ることは不可能である。さらに、これらの技術においては半溶融状態における液相率については記載されておらず、接合前後で形状を保つことについては何ら考慮されていない。
【特許文献1】特開2005−030513号公報
【特許文献2】特開2003−088948号公報
【非特許文献1】アルミニウムブレージングハンドブック(改訂版)、p.3〜108、社団法人軽金属溶接構造協会(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、熱交換器を始め各種構造体の製造においては、様々なブレージング法が開発されてきた。例えば車載用熱交換器においては、フィン材を単層で用いる場合はチューブ材にろう材をクラッドしたブレージング材を使用したり、チューブに別途Si粉末やSi含有ろうを塗布したりする必要があった。あるいは、タンク材を単層とした場合は表面にろう材をクラッドしたフィン材を使用するのが一般的であった。このようにすべてを単層の材料のみで製造することができず、コストダウンが困難であった。
【0006】
また、ブレージング法においては、接合部材であるろう材が溶融し、被接合部材の隙間に流動、充填することで接合を可能とする。そのため、熱交換器をはじめとした構造体の設計においては、ろう材が溶融、流動することを考慮することが必要である。例えば、ブレージングシートのろう材のクラッド率が片面5%である場合、ろう材が流動すると最大で10%の寸法変化が生じる可能性がある。しかし、ろう材の流動はろう付加熱時の熱の分布や隙間や接合部の形状に影響されるため均一ではなく、接合前後の寸法変化を正確に予測することが困難である。従って、従来の接合方法を用いた構造体の設計において、接合後の寸法誤差を考慮する必要があるため、精密な寸法精度や清浄な表面品質が要求される構造体の製造には不向きであった。
【0007】
また、従来のブレージング法では、特にろう材が充填し、再凝固した接合部において共晶組織が発生しやすく、共晶組織と地のアルミニウムの電位差により腐食が優先的に進行することが多く、耐食性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の成分を有する被接合部材であるアルミニウム合金材を用いた構造体を、特定の条件で接合し、組み立てる場合、ろう材のような接合部材を用いることなく接合することが可能であり、接合加熱時の変形がほとんど無く、しかも接合後の耐食性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、他方の被接合部材としてアルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを用い、前記一方の被接合部材と前記他方の被接合部材とを接合部材を用いることなく接合した構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Si:1.5質量%〜5.0質量%(以下、質量%は単に%と記す。)、Cu:0.05%〜1.2%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、接合前と接合後の当該構造体の寸法及び形状が略同一であることを特徴とする高耐食性を有する構造体である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の成分としてさらに、Zn:0.1%〜0.8%を含有し、かつCuおよびZnの含有量(質量%)をそれぞれC、Zとした場合、C−0.1Z≧0の関係式を満足することを特徴とする高耐食性を有する構造体である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の成分としてさらにFe:0.1%〜1.0%、Mn:0.3%〜1.8%、Mg:0.05%〜0.5%、Ti:0.05%〜0.3%、Cr:0.05%〜0.3%、Zr:0.05%〜0.3%、V:0.05%〜0.3%、Be:0.0001%〜0.01%、Sr:0.0001%〜0.01%、Bi:0.0001%〜0.01%、Na:0.0001%〜0.01%、Ca:0.0001%〜0.01%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする高耐食性を有する構造体である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3に記載の構造体において、前記一方の被接合部材の接合後の共晶組織の孔食電位が、共晶組織以外の部位の孔食電位より、20mV以上卑でないことを特徴とする高耐食性を有する構造体である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の接合後に長径3μm以上の球状の共晶組織が断面で100個/mm〜3000個/mm存在することを特徴とする高耐食性を有する構造体である。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が0%を超え35%以下となる温度で接合することを特徴とする構造体の接合方法である。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差が10℃以上であることを特徴とする構造体の接合方法である。
【0016】
請求項8の発明は、請求項6または請求項7に記載の構造体の接合方法において、接合前に対する接合後の寸法変化が5%以下であることを特徴とする構造体の接合方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るアルミニウム合金材を用いた構造体は、当該アルミニウム合金材内部に一部生成した液相を利用して接合を行うものであり、本発明のアルミニウム合金材同士の接合は勿論のこと、本発明のアルミニウム合金材と純アルミニウム材との接合、本発明のアルミニウム合金材とこれと異なる組成のアルミニウム合金材との接合、更に本発明のアルミニウム合金材とアルミニウム以外の金属材との接合を、接合部材を利用することなく、被接合部材同士を信頼性の高い金属結合によって可能とする。
【0018】
また、ろう材等の接合部材を利用することなく接合を行うため、接合前後での寸法、形状変化が殆どなく、熱交換器等の設計精度が向上するとともに、精密な寸法精度が要求される構造体を量産製造することが可能である。
【0019】
さらに、本発明のアルミニウム合金材の接合後の耐食性は良好であるため、高い耐食性が要求される構造体、例えば自動車用熱交換器の材料として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】液相の染み出しのメカニズムを示す模式図である。
【図2】接合後の一方の被接合部材のL‐ST面における球状共晶組織の金属組織写真である。
【図3】接合率、ならびに、接合による変形率を測定するための試料を示す斜視図である。
【図4】接合率、ならびに、接合による変形率の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の詳細な説明を示す。
本発明に用いる被接合部材であるアルミニウム合金材は、Si:1.5%〜5.0%、Cu:0.05%〜1.2%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金である。
【0022】
該アルミニウム合金材を成形してチューブ、タンクなどの構造体を作製し、600℃程度の温度で熱処理を行うと、該アルミニウム合金材の内部の一部から液相が生成し、それが材料表面に染み出してきて接合が可能となる。
【0023】
図1に本発明の接合メカニズムである液相の染み出しを模式的に示す。固相線温度より高い温度に加熱されると金属間化合物等の偏析の多い結晶粒界がまず溶融し、次いでマトリクス(アルミニウム材料中で、金属間化合物を除いた部分)中に分散するSi粒子周辺が溶融する。Siの添加量が多いと分散するSi粒子の数が多く、マトリクス内部に多くの球状の液相が存在することになる。加熱温度が高くなると球状の液相は体積を増すが、直接粒界に触れるかあるいは固体内でのSi拡散によって、粒界に液相が移動する。これが粒界を伝って材料表面に染み出し、他方の被接合部材との隙間に充填されて接合が可能となる。液相が外部に流出すると球状の液相は次第に収縮していき、最後は消滅する。一方、球状に溶融した液相が外部に染み出さず残存すると冷却後は図2に示すような球状の共晶組織がマトリクスの結晶粒内に多数分散した組織となる。
【0024】
材料の強度は未溶融のマトリクスと液相に寄与しない金属間化合物が担っている。そのため、本発明に係る構造体は接合の前後で寸法や形状の変化が殆どない。
【0025】
このように、Siはアルミニウムに添加することにより液相を生成し、接合に寄与するが、1.5%未満では接合加熱時に生成する液相の量が少なく、接合をすることができない。一方、5.0%を超えると接合加熱時の液相量が多すぎるため大きく変形してしまい、形状を保つことができない。より好ましくは、1.5%〜3.5%であり、さらに好ましくは、2.0%〜2.5%である。なお、染み出す液相の量は板厚が厚く、加熱温度が高いほど多くなるが、加熱時に必要とする液相の量は構造体の形状に依存するので、必要に応じてSi量や接合条件(温度、時間等)を調整することが望ましい。
【0026】
Cuはアルミニウムに添加することにより、液相の凝固時に共晶組織に濃縮して共晶部の孔食電位を貴にし、共晶部の優先腐食を抑制する。Cuの含有量は0.05%〜1.2%である。0.05%未満ではその効果が少なく、1.2%を超えると鋳造時に割れが生じやすくなる。
【0027】
Zn、Mn、Fe、Mg、Ti、Zr、Cr、Vは、必要により1種以上が添加されていればよい。
【0028】
Znはアルミニウムに添加することにより、液相が生じるとその中に溶け出して、凝固時に液相のZnが濃化する。接合時に、液相が材料表面に染み出すと、その部分はZn濃度が上昇するため、犠牲陽極作用によって耐食性が向上する。Znの添加量は0.1〜0.8%とするのが好ましく、0.1%未満ではその効果が小さく、0.8%を超えると腐食速度が増加し、早期に材料が消耗してしまう。
【0029】
さらに、本発明のアルミニウム合金材がZnを含む場合には、Znが液相凝固時の共晶組織に濃縮し、前述した共晶組織の優先腐食を促進する。そのため、Znを添加した場合にはその分多くのCuを添加することが必要となる。発明者らは鋭意研究を重ねた結果、Cu及びZnの含有量(質量%)をそれぞれC及びZとすると、C−0.1Z≧0の関係式を満足する場合に、本発明のアルミニウム合金材はより優れた耐食性を有することを見出した。Cu%−0.1Zn%の値が0未満の場合、共晶組織の優先腐食が生じやすく、耐食性が不十分となる。
【0030】
Mnは、SiとともにAl−Mn−Si系の金属間化合物を形成し、分散強化により強度を向上させ、或いはアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる。Mnの含有量は、0.3%〜1.8%とするのが好ましく、0.3%未満ではその効果が小さく、1.8%を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成されやすくなり、塑性加工性を低下させる。
【0031】
Feは、SiとともにAl−Fe−Si系の金属間化合物を形成し、分散強化により強度を向上させる。Feの添加量は0.1%〜1.0%とするのが好ましく、0.1%未満ではその効果が小さいだけでなく、高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となる。一方、1.0%を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成されやすくなり、塑性加工性を低下させる。
【0032】
また、本発明のアルミニウム合金材がMnおよび/またはFeを含む場合には、Fe、Mn系の金属間化合物にSiが取り込まれる。そのため本接合に有効に寄与するSi粒子の量はSi、Fe、Mnの添加量に依存する。Si、Fe、Mnの含有量(質量%)をそれぞれS、F、Mとしたとき、1.2≦S−0.3(F+M)≦3.5の関係式を満足することが、本発明のアルミニウム合金の接合性には好ましい。S−0.3(F+M)の値が1.2未満の場合は液相の染み出しが十分でなく、3.5を越えると液相の生成が多くなりすぎて接合時の形状の維持が困難である。
【0033】
Mgはアルミニウムに添加することにより、MgSiの析出により強度を向上させる。しかし、接合時に酸化被膜除去のためにフラックスを使用する場合には、該フラックスと反応して、高融点の化合物を形成するため著しく接合性が低下する。なお、Mgを添加した場合は、Mgのゲッター作用によってフラックスを用いずに接合をおこなうことも可能であるが、この場合、接合部の密着性をより厳しく管理することが望ましい。Mgの含有量は0.05%〜0.5%とするのが好ましく、さらに好ましくは、0.15%〜0.4%である。
【0034】
Tiは、固溶強化により強度を向上させ、また耐食性の向上が図れる。好ましい含有量は、0.05%〜0.3%以下である。0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1%〜0.2%である。
【0035】
Zrは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Zr系の金属間化合物が析出し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。好ましい含有量は、0.05%〜0.3%であり、0.05%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1%〜0.2%である。
【0036】
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系の金属間化合物が析出し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。好ましい含有量は、0.05〜0.3%であり、0.05%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
【0037】
Vは、固溶強化により強度を向上させ、また耐食性の向上が図れる。好ましい含有量は、0.05〜0.3%であり、0.02%未満ではその効果は得られず、0.3%を超えると巨大金属間化合物を形成しやすくなり、塑性加工性を低下させる。より好ましくは、0.1〜0.2%である。
【0038】
また、必要に応じてBe:0.0001%〜0.01%、Sr:0.0001%〜0.01%、Bi:0.0001%〜0.01%、Na:0.0001%〜0.01%、Ca:0.0001%〜0.01%より1種または2種以上添加しても良い。これらの微量元素はSi粒子の微細分散、液相流動性向上等によって本接合における接合精度を改善することができる。規定範囲以下ではその効果が小さく、規定範囲を超えると耐食性を低下させる等の弊害が生じる。
【0039】
次に、本発明に係る構造体の一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の製造工程について説明する。
本発明のアルミニウム合金材の製造工程は、当該アルミニウム合金をDC鋳造して鋳塊を得る鋳造工程と、前記鋳塊を面削した後に加熱し熱間圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された板材を冷間圧延にて所望の板厚とする冷間圧延工程とを有してなる。これらの工程の詳細な条件については特別な制限はないが、熱間圧延前の加熱温度は合金の固相線温度より低くなければならない。固相線温度は、平衡状態図計算ソフト(Thermo−Calc;Thermo―Calc Software AB社製)により計算される。熱間圧延前の加熱温度が固相線温度以上であると、アルミニウム合金が溶解してしまい熱間圧延することができない。また、鋳造工程の後に鋳塊を加熱する、均質化工程を経ても良い。さらに、熱間圧延の後または冷間圧延の途中で加熱を加える中間焼鈍工程、冷間圧延の後に加熱を加える仕上焼鈍工程を経ても良い。均質化工程、中間焼鈍工程、仕上焼鈍工程においても、加熱温度は合金の固相線温度より低くなければならない。また、前記鋳造工程において、双ロールまたはベルトキャスターなどを用いた連続鋳造法を適用しても良い。この場合には、前記熱間圧延工程を省略することができる。
【0040】
本発明のアルミニウム合金材の接合方法の詳細を以下に説明する。
本発明に係るアルミニウム合金材の接合方法では、一方に本発明のアルミニウム合金材を用い、もう一方には相手材として、純アルミニウム材、アルミニウム合金材、またはアルミニウム以外の金属材のいずれかを用いる。相手材にアルミニウム合金材を用いる場合は、相手材を本発明のアルミニウム合金材としても良いし、相手材を本発明とは異なるアルミニウム合金材としても良い。
【0041】
本発明のアルミニウム合金材は、通常、炉中で加熱される。炉の形状に特に制限はなく、例えば1室構造のバッチ炉、自動車用熱交換器の製造などに用いられる連続炉などを用いることができる。なお、炉中の雰囲気に制限はないが、前述の通り非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。また、接合加熱の際に、液相を生成するアルミニウム合金材の固相線温度以上となる時間を20分以内とするのが好ましく、15分以内とするのが更に好ましい。20分を超えると、前述の粒界すべりによる変形が発生するおそれがある。また、接合加熱時の最高到達温度は、液相率が0%を超え35%以下になるよう設定されなければならない。そのための許容されうる最高到達温度の範囲は580℃〜625℃、より好ましくは580℃〜620℃であるが、組成によって加熱条件を調整し、冷却後に長径3μm以上の球状共晶組織が、断面で100個/mm〜3000個/mm存在することが好ましい。
【0042】
アルミニウム材の表層には酸化皮膜が形成されており、これによって接合が阻害される。従って、接合においては酸化皮膜を破壊する必要がある。本発明のアルミニウム合金材を接合する場合には、酸化被膜を破壊するために接合部にフラックスを塗布するのが好ましい。また、酸化皮膜の形成を抑制するために、窒素などの非酸化性ガスの雰囲気中で接合するのが好ましい。接合部にフラックスを塗布し、かつ、非酸化性ガスの雰囲気中で接合するのが特に好ましい。
【0043】
本発明の場合、前述のSi粒子周辺が球状に溶融した部分がマトリクス内にある程度残存し、図2に示すような特徴的な球状の共晶組織となる。良好な接合性と接合時の材料強度のバランスが取れた場合、接合後に長径3μm以上の球状共晶組織が断面で100〜3000個/mm存在するのが好ましいことを見出した。この球状共晶組織の密度が100個/mm未満の場合、接合に寄与した液相が多すぎ、接合加熱中の強度維持が困難となる。3000個/mmを超える場合、接合に寄与した液相が少なく、接合性が低下することになる。例えば被接合部材であるアルミニウム合金材の板厚が厚い場合や、接合時の温度が高温になりやすい部分に配置されたアルミニウム合金部材ではSi量を少なく設定しても充分な液相量が確保できる。具体的には150μm〜300μmの板厚のチューブ材の場合、Si量を1.5%〜3.5%程度として、加熱温度を595℃〜605℃程度とすることが望ましく、その場合、球状共晶組織は500個/mm〜2500個/mmとなる。このように接合後の組織を観察し、球状共晶組織の数密度を測定し、断面で100個/mm〜3000個/mmであるように予め被接合部材であるアルミニウム合金材のSi量を1.5%〜5.0%の範囲で調整することで、良好な接合性を得ることができる。なお、断面とは、アルミニウム合金材の任意の断面であり、例えば厚さ方向に沿った断面でもよく、板材表面と平行な断面でもよい。
【0044】
なお、相手材が本発明のアルミニウム合金材あるいはそれに類似のアルミニウム合金材である場合は、接合後に両者の結晶組織が一体化したものとなり、接合界面が不明瞭となることがある。本発明に係る構造体を製造するための接合方法においては、被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比(以下、液相率と記す)が0%を超え35%以下となる温度で接合する必要がある。液相率が35%を超えると、生成する液相の量が多過ぎてアルミニウム合金材は大きく変形してしまい形状を保てなくなる。一方、液相が生成しなければ接合ができないので液相率は0%より多いことが必要である。但し、液相が少ないと接合が困難となる場合があるため、好ましい液相率は3%〜30%であり、さらに好ましくは10%〜20%である。さらに、この3〜30%の範囲の液相率を30秒以上3600秒以下保つことにより、一層確実な接合を得ることができる。
【0045】
加熱中における実際の液相率を測定することは、極めて困難である。そこで、本発明で規定する液相率は状態図を利用して組成と温度の平衡計算によって求めるものとする。具体的には、前述したようにThermo−Calcによって合金組成と加熱時の最高到達温度から計算される。
【0046】
上記の条件を満たすことで必要な接合特性を得ることできるが、中空部があり、比較的脆弱な構造体を形成する場合においては、構造体内に発生する応力が高すぎると構造を維持できない場合がある。特に液相率が大きい場合は比較的小さな応力に留めたほうが良好な形状を維持できる。液相が生成する被接合部材内に発生する応力のうちの最大値をP(kPa)、液相率をV(%)とした場合、P≦460−12Vの条件を満たせば、非常に安定した接合が得られる。なお、両被接合部材から液相が発生する場合は、両被接合部材各々に対して、各々の応力P、液相率Vを用いてP≦460−12Vを算出し、両被接合部材ともこの式を同時に満たすように接合を行う。各被接合部材内の各部位に発生する応力は、形状と荷重から求められる。例えば、構造計算プログラムなどを用いて計算する。
【0047】
接合部の圧力と同様に接合部の表面形態も接合性に影響を与え、両面が平滑なほうがより安定した接合が得られる。本発明においては、接合前の両被接合部材の接合面の表面の凹凸から求められる算術平均うねりWa1とWa2の和が、Wa1+Wa2≦10(μm)を満たす場合には、更に十分な接合が得られる。なお、算術平均うねりWa1、Wa2は、JISB0633で規定されるものであり、波長が25〜2500μmの間で凹凸となるようカットオフ値を設定し、レーザー顕微鏡やコンフォーカル顕微鏡で測定されたうねり曲線から求められる。
【0048】
また、本発明に係る接合方法では、液相を生成するアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差を10℃以上とするのが好ましい。固相線温度を超えると液相の生成が始まるが、固相線温度と液相線温度の差が小さいと、固体と液体が共存する温度範囲が狭くなり、発生する液相の量を制御することが困難となる。従って、この差を10℃以上とするのが好ましい。例えば、この条件を満たす組成を有する2元系の合金としては、Al−Si系合金、Al−Cu系合金、Al−Mg系合金、Al−Zn系合金、Al−Ni系合金などが挙げられ、これら共晶型合金は固液共存領域を大きく有するので本接合方法に有利である。しかしながら、他の全率固溶型、包晶型、偏晶型などの合金であっても、固相線温度と液相線温度の差が5℃以上であるなら接合が可能となる。また、上記の2元系合金は主添加元素以外の添加元素を含有することができ、実質的には3元系や4元系合金、更に5元以上の多元系の合金も含まれる。例えばAl−Si−Mg系やAl−Si−Cu系、Al−Si−Zn系、Al−Si−Cu−Mg系などが挙げられる。
【0049】
なお、固相線温度と液相線温度の差は大きくなるほど適切な液相量に制御するのが容易になる。従って、固相線温度と液相線温度の差に上限は特に設けない。
【0050】
本接合では、接合前後において構造体の寸法や形状がほとんど変化しない。すなわち、溶接法のビードや、ろう付法でのフィレットのような接合後の形状変化が、本発明に係る接合方法では殆ど発生しない。それにも拘わらず、溶接法やろう付法と同じく金属結合による接合を可能とする。例えば、ブレージングシート(ろう材クラッド率が片面5%)を用いてドロンカップタイプの積層型熱交換器を組み立てた場合、ろう付け加熱後には溶融したろう材が接合部に集中するため、積層した熱交換器の高さが5〜10%減少する。従って、製品設計においてはその減少分を考慮する必要がある。本発明においては接合後における寸法変化が5%以下であるため、高精度の製品設計が可能となる。より好ましい寸法変化は3%以下である。
【0051】
次に、本発明のアルミニウム合金材の接合加熱後における耐食性について説明する。
本発明のアルミニウム合金材が腐食環境に晒される場合、例えば自動車用熱交換器のチューブ材として用いられるような場合には、耐食性について考慮しなければならない。既に述べたように、本発明のアルミニウム合金材は接合時に粒界及びその近傍から液相が生成するため、この液相が凝固すると粒界には共晶組織が形成される。必須元素である共晶SiとAl固溶体(以下共晶α相と呼ぶ)とで形成されるが、これが冷却されると共晶α相中の固溶Siが共晶Siに吸収され、共晶α相中の固溶Si濃度は局所的に薄くなる。このため、接合加熱後の共晶α相の孔食電位は周囲よりも卑となり、腐食環境に晒されるとこの共晶αが優先腐食し、腐食貫通を生じやすくなる。
【0052】
発明者らは、様々な合金成分の材料を作製して本発明に係る接合を施し、接合後の共晶組織および共晶組織以外の部位の孔食電位を調べ、またそれらの耐食性を評価した。その結果、接合後の共晶組織の孔食電位が、共晶組織以外の部位の孔食電位より20mV以上卑でない場合に、本発明のアルミニウム合金材は共晶組織の優先腐食を生じず、より優れた耐食性を有することを見出した。
【0053】
また、本発明に係る構造体の耐食性をさらに向上させるために、表面にZn溶射やZn置換フラックス塗布を行っても良く、さらに加熱処理後にクロメート処理やノンクロメート処理などの表面処理を実施して耐食性向上を図っても良い。
【0054】
本発明のアルミニウム合金材を用いることによって、多くの接合部を有し、かつ寸法精度のよい構造体を得ることができる。例えば本発明合金を用いてチューブとタンクを作製し、さらにフィン(ベアフィン)と組み合わせることで、ろう材をクラッドしたブレージングシートを使用せず、すべて単層のアルミニウム合金材からなる熱交換器を構成することができる。また、本発明のアルミニウム合金板をプレス成形し、積層することでラミネートタイプの熱交換器も製造することができる。その他、積層構造をもったオイルクーラー、ヒートシンクなどにも応用することができる。このようなすべて単層材からなる構造体は高温での剛性が従来材より低下する場合があるので、接合加熱の際は、鉄などの高温に耐える材質のジグにセットするとより寸法精度の高いものを得ることができる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
表1に示す成分を有するアルミニウム合金をDC鋳造により鋳造し、両面に面削を施した。これらを480℃に加熱して熱間圧延に供し、さらに1.0mmまで冷間圧延してアルミニウム合金板材とした。ここで、各合金のS−0.3(F+M)の値を計算値A、C−0.1Zの値を計算値Bとして表1に示す。また、問題なく厚さ1.0mmまで圧延できたものは製造性○、途中で割れが生じてしまったものは製造性×として表2に記載した。なお、製造性×のものについては以下の評価を実施できなかった。なお、表1において、合金成分が空欄となっているのは、検出限界以下であることを示す。
【0056】
【表1】

【0057】
このアルミニウム合金板材を切り出し、端面をフライスにより平滑にしたものを組み合わせて、図3に示す接合試験片を作製した。試験片の上板と中板には、表1に示す組成のアルミニウム合金板を用い、下板には純アルミニウム板(A1070)を用いた。上板と中板のアルミニウム合金板は同一組成である。ここで、上板の算術平均うねりWa1は0.5μm、下板の算術平均うねりWa2は0.5μmであった。これら例は、同一組成のアルミニウム合金材同士の接合である。この接合試験片の接合面には、フッ化物系の非腐食性フラックスを塗布した。図3(a)に示すように、下板に中板と上板を順次重ね、重ね合わせたものの上下に板厚1mmのステンレス板の治具を配するようにした。次いで、図3(b)に示すように、上下のステンレス板と側面に2本のステンレス線を架け渡して端部をそれぞれ縛り、下板、中板及び上板からなる試験片を固定して試料とした。なお、図3(a)に記載の数字は、部材の寸法(単位:mm)を表わす。この試験片の場合、ステンレス治具とアルミニウムの熱膨張率の差によって、接合加熱時には接合面に約10kPaの応力が生じていることになる。またこれとは別に、板材単独の試料を、各アルミニウム合金板材から切り出した。
【0058】
上記の試料を、窒素雰囲気中で所定の温度まで加熱しその温度に3分間保持した後に、室温で自然冷却した。ここでの最高到達温度を表2に示す。窒素雰囲気は、酸素濃度100ppm以下で露点−45℃以下に管理した。昇温速度は、520℃以上において、10℃/分とし、冷却速度は、500℃以上において50℃/分とした。また、各合金の各接合温度における液相率をThermo−Calcによって計算し、その値を表2に示した。
【0059】
図3の接合後の試験片を、図4(a)に示す観察断面が得られるように切断した。図4(b)に示すように、上板と中板は接合部1及び接合部2で接合されている。接合部1(2)の一部拡大図を図4(c)に示す。上板と中板に接合界面が見られない部分が、接合されている部分であり、接合界面(図の横線)が見られる部分が、接合されていない未接合の部分である。接合率は、下記式(2)で定義される。
接合率(%)={(L1+L2)/2L0}×100 (2)
【0060】
ここで、L1は接合部1において接合されている部分の長さ、L2は接合部2において接合されている部分の長さ、L0は接合部1と接合部2において、それぞれ接合されるべき長さである。
【0061】
図4(d)に、試験片の天井部を示す。aは試験片の天井部の接合前の長さ、a1は試験片の天井部上側の接合後における湾曲長さ、a2は試験片の天井部下側の接合後における湾曲長さを表わす。下記式(3)で定義される変形率をもって、接合前に対する接合後の寸法変化とした。
変形率(%)={(a1+a2)/2a}×100 (3)
【0062】
さらに、このサンプルの断面を鏡面研磨してケラーエッチングを施し、長径3μm以上の球状共晶組織の数密度を計測した。その結果を表2に示した。
【0063】
接合率が95%以上を◎、90%以上95%未満を○、25%以上90%未満を△、25%未満を×と判定し、表2に示した。また、変形率が3%以下を◎、3%を超え5%以下を○、5%を超え8%以下を△、8%を超えるものを×と判定し、表2に示した。
【0064】
一方、共晶組織の孔食電位評価として、純水中に重量比で5%のNaClを溶解させ、さらに酢酸を添加してpH3にした溶液を調整し、これに板材単独で加熱に供した試料を浸漬し、ポテンショスタッドを用いて900〜600mVの電位にて3時間保持した。ここで、保持した電位の間隔は5mVおきであり、それぞれの保持電位用にはそれぞれ別々の試料を用いた。電位保持後の試料の断面を研磨して観察し、共晶組織の局部腐食が見られた最低の電位を電位E、試料全体の腐食が見られた最低の電位を電位Eとして、電位E−電位Eの値を算出し、これが20mV未満(負の値を含む)である場合を電位評価○、20mV以上である場合を電位評価×として表2に記入した。
【0065】
さらに、耐食性評価として、板材単独で加熱した試料を50mm×50mmに切り出し片面を試験面とし、逆の面を樹脂テープでマスキングした。これをCl500ppm、SO2−100ppm、Cu2+10ppmを含む88℃の高温水中で8時間、室温放置16時間を1サイクルとするサイクル浸漬試験を3ヶ月間に供し、腐食深さが100μm以下だったものは◎、腐食深さが100μmを超えたが腐食貫通の生じなかったものは耐食性評価○、共晶組織の優先腐食により腐食貫通が生じたものは耐食性評価×として表2に記入した。
【0066】
【表2】

【0067】
本発明例1〜20では、本発明で規定する条件を満たしており、製造性、接合率、変形率、電位評価、耐食性評価のいずれも合格であった。
比較例21では、Si成分が少なすぎるため、球状共晶組織の数密度も発明範囲を超えており、接合率の点で劣った。
比較例22では、Si成分が多すぎるため、液相率が多すぎ球状共晶組織の数密度も発明範囲を下回っており、変形率の点で劣った。
比較例23では、Fe成分が多すぎるため圧延中に割れが生じ、製造性の点で劣った。
比較例24では、Cu成分が多すぎるため鋳造中に割れが生じ、製造性の点で劣った。
比較例25では、Cu成分が少なすぎるため電位評価と耐食性評価の点で劣った。
比較例26では、Zn成分が多すぎるため電位評価と耐食性評価の点で劣った。
比較例27では、関係式Bの値が低すぎるため電位評価と耐食性評価の点で劣った。
比較例28では、Mg成分が多すぎるため接合率の点で劣った。
比較例29では、Mn成分が多すぎるため圧延中に割れが生じ、製造性の点で劣った。
比較例30では、Ti、Cr、Zr、V成分が多すぎるため圧延中に割れが生じ、製造性の点で劣った。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明により、接合前後の寸法あるいは形状の変化が殆ど無く、また、ろう材あるいは溶加材のような接合部材を使用することなく被接合部材同士が接合するアルミニウム合金板を用いた構造体とその接合方法が達成され、工業上顕著な効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0069】
a・・試験片の天井部の接合前の長さ
a1・・試験片の天井部上側の接合後における湾曲長さ
a2・・試験片の天井部下側の接合後における湾曲長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金材を一方の被接合部材とし、他方の被接合部材としてアルミニウム合金材、純アルミニウム材及びアルミニウム以外の金属材のいずれかを用い、前記一方の被接合部材と前記他方の被接合部材とを接合部材を用いることなく接合した構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材が、Si:1.5質量%〜5.0質量%(以下、質量%は単に%と記す。)、Cu:0.05%〜1.2%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、接合前と接合後の当該構造体の寸法及び形状が略同一であることを特徴とする高耐食性を有する構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の成分としてさらに、Zn:0.1%〜0.8%を含有し、かつCuおよびZnの含有量(質量%)をそれぞれC、Zとした場合、C−0.1Z≧0の関係式を満足することを特徴とする高耐食性を有する構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の成分としてさらにFe:0.1%〜1.0%、Mn:0.3%〜1.8%、Mg:0.05%〜0.5%、Ti:0.05%〜0.3%、Cr:0.05%〜0.3%、Zr:0.05%〜0.3%、V:0.05%〜0.3%、Be:0.0001%〜0.01%、Sr:0.0001%〜0.01%、Bi:0.0001%〜0.01%、Na:0.0001%〜0.01%、Ca:0.0001%〜0.01%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする高耐食性を有する構造体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載の構造体において、前記一方の被接合部材の接合後の共晶組織の孔食電位が、共晶組織以外の部位の孔食電位より、20mV以上卑でないことを特徴とする高耐食性を有する構造体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に記載の構造体において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の接合後に長径3μm以上の球状の共晶組織が断面で100個/mm〜3000個/mm存在することを特徴とする高耐食性を有する構造体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の全質量に対する当該アルミニウム合金材内に生成する液相の質量の比が0%を超え35%以下となる温度で接合することを特徴とする構造体の接合方法。
【請求項7】
請求項6に記載の構造体の接合方法において、前記一方の被接合部材であるアルミニウム合金材の固相線温度と液相線温度の差が10℃以上であることを特徴とする構造体の接合方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の構造体の接合方法において、接合前に対する接合後の寸法変化が5%以下であることを特徴とする構造体の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−40611(P2012−40611A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157373(P2011−157373)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】