説明

アルミニウム複合体及びその製造方法

【課題】 本発明は、漆黒を呈するアルミニウム複合体を提供するものであり、特に、食器形状に形成することによって表面に塗装を施すことなく漆塗り調を呈する食器を得ることができるアルミニウム複合体を提供する。
【解決手段】 本発明のアルミニウム複合体は、アルミニウム又はアルミニウム合金中に炭化珪素粒子を分散させてなることを特徴とするので、炭化珪素粒子によって漆黒を呈しており様々な用途に展開することでき、例えば、アルミニウム複合体を食器形状に形成することによって漆塗り調の高級感を有する食器を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漆黒調のアルミニウム複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軽量であることからアルミニウム製食器が汎用されており、その表面には、用途に合わせて塗装が施されており、例えば、漆塗り調とするために漆塗りの色調に近い黒色塗装を施して漆塗り調のアルミニウム製食器が提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルミニウム母材とセラミックス容射皮膜との間に、ニッケルベースのボンドコートを溶射して形成したアルミニウム製食器の製造方法において、上記ボンドコートおよびセラミックス溶射皮膜をフレーム粉末溶射により形成したことを特徴とするアルミニウム製食器の製造方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、アルミニウム製食器の使用中に食器同士が接触することによってアルミニウム製食器の表面に施した塗膜が欠けてしまうことがあり、このように塗膜が欠けてしまうと、アルミニウムの色調が露出し、特に、漆塗り調として高級感を持たせたアルミニウム食器の場合には、アルミニウムの淡い色彩によって、漆塗り調の高級感が損なわれてしまうといった問題点を有していた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−265186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、漆黒を呈するアルミニウム複合体及びその製造方法を提供するものであり、特に、食器形状に形成することによって表面に塗装を施すことなく漆塗り調を呈する食器を得ることができるアルミニウム複合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアルミニウム複合体は、アルミニウム又はアルミニウム合金中に炭化珪素粒子を分散させてなることを特徴とする。
【0008】
又、上記アルミニウム複合体において、炭化珪素粒子の粒径が10〜20μmであることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明のアルミニウム複合体の製造方法は、炭化珪素粒子を押し固めて炭化珪素のプリフォームを形成するプリフォーム形成工程と、上記プリフォームに、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯を加圧鋳造により含浸させる溶湯含浸工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
そして、上記アルミニウム複合体の製造方法において、炭化珪素粒子をバインダーを用いることなく押し固めて炭化珪素のプリフォームを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアルミニウム複合体は、アルミニウム又はアルミニウム合金中に炭化珪素粒子を分散させてなることを特徴とするので、炭化珪素粒子によって漆黒を呈しており様々な用途に展開することでき、例えば、アルミニウム複合体を食器形状に形成することによって漆塗り調の高級感を有する食器を得ることができる。
【0012】
そして、アルミニウム複合体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含有しており、軽量性に優れ、アルミニウム複合体によれば、軽量性に優れた種々の物品を製造することができる。
【0013】
又、上記アルミニウム複合体において、炭化珪素粒子の平均粒径が10〜20μmである場合には、アルミニウム又はアルミニウム合金と、炭化珪素粒子とが均一に且つ強固に複合化しており、アルミニウム複合体は全体的により均一な漆黒を呈していると共に優れた機械的強度を有している。
【0014】
そして、本発明のアルミニウム複合体の製造方法は、炭化珪素粒子を押し固めて炭化珪素のプリフォームを形成するプリフォーム形成工程と、上記プリフォームに、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯を加圧鋳造により含浸させる溶湯含浸工程とを備えていることを特徴とするので、炭化珪素粒子からなるプリフォーム中に、アルミニウム又はアルミニウム合金を含浸させることによって、アルミニウム又はアルミニウム合金と、炭化珪素粒子とを強固に且つ均一に複合化させることができ、漆黒を均一に呈し且つ機械的強度に優れたアルミニウム複合体を容易に得ることができる。
【0015】
又、プリフォームを食器形状に形成しておくことによって、表面に塗装を施すことなく漆黒を呈した漆塗り調の食器を直ちに得ることができる。
【0016】
更に、上記アルミニウム複合体の製造方法において、炭化珪素粒子をバインダーを用いることなく押し固めて炭化珪素のプリフォームを形成する場合には、プリフォームにバインダーが含有されていないので、プリフォームにアルミニウム又はアルミニウム合金を含浸させる際にプリフォームに加わる熱によって、バインダーに起因した煤や複合酸化物などの不純物が生じることはなく、アルミニウム複合体に不純物が混入するのを防止してアルミニウム複合体の機械的強度をより優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のアルミニウム複合体は、アルミニウム又はアルミニウム合金中に炭化珪素粒子を分散させてなることを特徴とする。本発明に用いられるアルミニウムにおいて、アルミニウムの純度は特に限定されず、高純度のアルミニウムであっても、低純度のアルミニウムであってもよい。
【0018】
アルミニウム自体は軟らかく展伸性に優れたものであるが、アルミニウム複合体の機械的強度を向上させるために、種々の元素を加えたアルミニウム合金を用いてもよく、このようなアルミニウム合金としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム−マンガン系合金、アルミニウム−シリコン系合金、アルミニウム−マグネシウム系合金、アルミニウム−銅−マグネシウム系合金、アルミニウム−マグネシウム−シリコン系合金、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム系合金、アルミニウム−銅−シリコン系合金などが挙げられ、アルミニウム合金の溶湯温度を600℃程度の低い温度にすることができ、アルミニウム合金の加熱及び冷却時間の短縮によりアルミニウム複合体の製造効率を向上させることができることから、アルミニウム−シリコン系合金が好ましい。
【0019】
そして、上記アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、「アルミニウム類」ということがある)中に分散させる炭化珪素粒子としては特に限定されない。炭化珪素粒子の平均粒径は、小さいと、炭化珪素粒子を押し固めて得られた炭化珪素のプリフォーム中にアルミニウム類の溶湯を均一に含浸させることができないことがある一方、大きいと、得られるアルミニウム複合体の機械的強度が低下することがあるので、10〜20μmが好ましく、12〜16μmがより好ましい。なお、炭化珪素粒子の粒径は、JIS R6001に準拠して電気抵抗法により測定されたものをいう。
【0020】
又、炭化珪素粒子は、粒子径が10.08〜20.20μmのものが好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上含有されていることが好ましい。これは、粒子径が10.08μm未満の炭化珪素粒子が多く含有されていると、炭化珪素粒子を押し固めて得られた炭化珪素のプリフォーム中にアルミニウム類の溶湯を均一に含浸させることができないことがある一方、粒子径が20.20μmを超える炭化珪素粒子が多く含有されていると、得られるアルミニウム複合体の機械的強度が低下することがあるからである。
【0021】
そして、アルミニウム複合体中における炭化珪素粒子の含有量は、少ないと、得られるアルミニウム複合体に漆黒の色彩を付与することができないことがある一方、多いと、得られるアルミニウム複合体の機械的強度が低下することがあるので、アルミニウム類100重量部に対して140〜150重量部が好ましい。
【0022】
なお、本発明のアルミニウム複合体には、その物性を損なわない範囲内において、マグネシウムなどの比較的融点の低い金属、酸化チタンなどの金属酸化物、窒化珪素、炭化珪素などの珪素化合物などを含有させてもよい。
【0023】
次に、本発明のアルミニウム複合体の製造方法について説明する。先ず、炭化珪素粒子を押し固めて炭化珪素のプリフォームを形成する。なお、以下の説明では、炭化珪素のプリフォームの形状を柱状に形成した場合を説明したが、炭化珪素のプリフォームは、得ようとするアルミニウム複合体の形状に合致した形状及び大きさに形成すればよく、例えば、アルミニウム複合体を碗状に形成する場合には、炭化珪素のプリフォームを碗状に形成すればよい。
【0024】
炭化珪素のプリフォームを形成するには、先ず、図1に示したように、炭化珪素のプリフォームの形状に合致した凹部からなる充填部11を有するプリフォーム形成型1を用意し、このプリフォーム形成型1の充填部11内に炭化珪素粒子を常温にて充填し押圧部材2で押圧して押し固めることによって炭化珪素のプリフォームAを作製する(プリフォーム形成工程)。
【0025】
プリフォーム形成型1の充填部11内に炭化珪素粒子を一度に全量、充填してもよいが、プリフォーム形成型1の充填部11内に充填すべき炭化珪素粒子のうちの一部の炭化珪素粒子をプリフォーム形成型1の充填部11内に充填し、押圧部材2を充填部11内に押し込むことによって炭化珪素粒子を押圧した後、プリフォーム形成型1の充填部11内に、残余の炭化珪素粒子の一部の炭化珪素粒子を更に追加して充填し上述と同様の要領でもって押圧部材2で炭化珪素粒子を押圧し、この工程を繰り返して、プリフォーム形成型1の充填部11内に炭化珪素粒子を全量、充填し押圧することによって炭化珪素からなるプリフォームAを形成することができる。このように、プリフォーム形成型1の充填部11内に少量づつ炭化珪素粒子を充填、押圧して押し固めることによって、炭化珪素粒子を均一な押圧力で強固に押し固めることができ、後述する溶湯含浸工程において、プリフォームに亀裂などを生じさせることなく、プリフォームにアルミニウム類の溶湯を均一に含浸させることができる。
【0026】
プリフォーム形成型1の充填部11内に充填した炭化珪素粒子の押圧力は、小さいと、炭化珪素粒子の押し固めが不充分となってプリフォームの機械的強度が低下し、アルミニウム類の溶湯のプリフォーム中への含浸圧力によってプリフォームが亀裂、分断し、得られるアルミニウム複合体中に炭化珪素粒子が偏在した状態となり、アルミニウム複合体の色彩が不均一となることがある一方、大きいと、炭化珪素粒子同士の密着度が高くなり過ぎて炭化珪素粒子間へのアルミニウム類の溶湯の進入が困難となってアルミニウム類と炭化珪素粒子との複合化が困難となることがあるので、4×10-3〜6×10-3MPaが好ましい。
【0027】
ここで、本発明では、プリフォームAの製造にあたってバインダーを用いていない。これは、プリフォームA中にバインダーが含有されていると、後述する溶湯含浸工程において、プリフォームAにアルミニウム類の溶湯を含浸させる際の熱によって、バインダーが燃焼して煤を生じ或いは酸素と反応して複合酸化物を生じ、煤や複合酸化物が起点となってアルミニウム複合体に亀裂が生じ易くなるからである。
【0028】
次に、上述のようにして得られたプリフォームAにアルミニウム類の溶湯を含浸させる(溶湯含浸工程)。先ず、図2に示したようなアルミニウム類の溶湯含浸装置Bを用意する。
【0029】
このアルミニウム類の溶湯含浸装置Bは、炭化珪素のプリフォームAにアルミニウム類の溶湯を含浸させるための金型3と、この金型3を加熱するための加熱器4と、上記金型3を冷却する冷却手段5とからなる。
【0030】
上記金型3は、金型3の上端面に開口し且つアルミニウム類の溶湯を供給し溜めるための溶湯供給部31と、この溶湯供給部31の内底面31aに連通口32aを介して連通し且つプリフォームAよりも僅かに大きな大きさを有するプリフォームの充填部32とからなる。なお、金型3は、アルミニウム複合体を製造する過程において、アルミニウム類と金属間化合物を形成しない材料から構成されている。
【0031】
そして、上記金型3の充填部32内に炭化珪素のプリフォームAを配設した上で、プリフォームAの上端面における外周縁部を除いた部分に黒鉛製の内蓋6を載置し、更に、溶湯供給部31の内底面31a上に絞り板7を配設する。この際、絞り板7の中央部に形成された上下方向に貫通する貫通孔7aの大きさを予め調整しておくことによって連通口32aの開口度を調整することができる。なお、内蓋6の上面とこれに対向する絞り板7の下面とは互いに当接した状態となっている。
【0032】
次に、金型3を別途用意した図示しない加熱手段で必要に応じて所望温度に加熱した上で、金型3を加熱器4で所望温度まで加熱した後に、大気中で加熱、溶解させたアルミニウム類の溶湯Cを金型3の溶湯供給部31内に供給する。この状態では、アルミニウム類の溶湯Cは、絞り板7と内蓋6とによって溶湯供給部31に貯留された状態となっている。なお、加熱器4は、特に限定されず、例えば、電気炉、ガスバーナー、高周波誘導加熱炉などが挙げられる。
【0033】
ここで、金型3の温度は、アルミニウム類の溶湯Cの温度よりも低くなるように調整することが好ましい。これは、金型3の温度がアルミニウム類の溶湯Cよりも高いと、アルミニウム類が金型3を構成する金属、例えば、鉄などと反応して不純物を生成し、得られるアルミニウム複合体に不純物が混入する虞れがあるからである。
【0034】
具体的には、金型3の温度とアルミニウム類の溶湯Cとの温度の差が90〜200℃となるように調整することが好ましく、100〜160℃となるように調整することがより好ましい。これは、温度差が大きいと、金型3によってアルミニウム類の溶湯Cが冷却されてしまい、プリフォームへの湯廻りが低下することがある一方、温度差が小さいと、アルミニウム類が金型3を構成する金属、例えば、鉄などと反応して不純物を生成し、得られるアルミニウム複合体に不純物が混入する虞れがあるからである。
【0035】
しかる後、溶湯供給部31内に貯留したアルミニウム類の溶湯C上に黒鉛製の押し蓋8を載置し、押し蓋8をプリフォームAの方向に向かって押圧することによってアルミニウム類の溶湯Cを充填部32内のプリフォームAに向かって加圧する。押し蓋8を押圧する手段としては、特に限定されず、高圧鋳造用の油圧プレス機の他、サーボモータや水圧ポンプなどが挙げられる。
【0036】
すると、アルミニウム類の溶湯Cは、絞り板7の貫通孔7a、絞り板7と内蓋6との隙間を通じて、プリフォームAとこのプリフォームAに対向する充填部32の内壁面との間に進入し、アルミニウム類の溶湯CがプリフォームA内に該プリフォームAの外周面全体から略均一に含浸される。なお、アルミニウム類の溶湯CをプリフォームAに含浸させている間、アルミニウム類の溶湯Cが固まり、プリフォームAへの湯廻りが低下するのを防止するために、加熱器4によって金型3を加熱することが好ましい。
【0037】
なお、押し蓋8によってアルミニウム類の溶湯Cを押圧する押圧力は、小さいと、アルミニウム類の溶湯CがプリフォームAに含浸せず、アルミニウム類とプリフォームとの複合化が困難となる一方、大きいと、アルミニウム類の溶湯がプリフォームに含浸するよりも、押し蓋8とこれに対向する溶湯供給部31の内面との隙間からアルミニウム類の溶湯が吹き出す虞れがあるので、2〜5MPaが好ましい。
【0038】
次に、金型3を冷却手段5によって冷却することによってアルミニウム複合体を得ることができる。冷却手段5としては、金型3を冷却できれば特に限定されず、例えば、水冷などの強制冷却の他、放冷などの自然冷却であってもよく、具体的には、金型3の下方にシールジャケットを設け、金型3を下方から冷却することが好ましい。
【0039】
このようにして得られたアルミニウム複合体は、アルミニウム類中に炭化珪素粒子が均一に分散した状態となっており、アルミニウム複合体は炭化珪素粒子によって漆黒の色彩を呈する。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
炭化珪素粒子(南興セラミックス社製 商品名「炭化セラミックスパウダ(完全還元焼)(061900)」、平均粒径:14.60μm、粒子径10.08〜20.20μm:89.2重量%)42gを秤量した。
【0041】
しかる後、図1に示したプリフォーム形成型1を用意した。なお、プリフォーム形成型1の充填部は、直径が30mm、高さが50mmの円柱状に形成されていた。プリフォーム形成型1の充填部11内に炭化珪素粒子2gを供給して押圧部材2を用いて5×10-3MPaの圧力で押圧して押し固めた。続いて、プリフォーム形成型1の充填部11内に炭化珪素粒子2gを更に追加供給して押圧部材2を用いて5×10-3MPaの圧力で押圧して押し固めた。この要領を更に19回繰り返して直径が30mmで且つ高さが47mmの円柱状の炭化珪素からなるプリフォームAを得た。
【0042】
次に、図2に示したアルミニウム類の溶湯含浸装置Bを用意した。なお、金型3の充填部32は、直径が32.6mmで且つ高さ55.0mmの円柱状に、溶湯供給部31は、直径が49.5mmで且つ高さが50.0mmの円柱状に形成されていた。
【0043】
そして、金型3におけるプリフォームの充填部32内にプリフォームAを供給、配設した後、このプリフォームAの上端面に直径が29.5mmで且つ厚さが5.0mmの黒鉛製の内蓋6を配設し、更に、溶湯供給部31の内底面31a上に、中央部に直径が12.0mmの貫通孔7aが上下方向に貫通した状態に貫設されてなる直径が49.0mmの平面円形状の絞り板7を配設した。
【0044】
次に、金型3をプレス機に取り付けて電気炉4で700℃に加熱した後に、大気中にて800℃に加熱、溶解させた純度99.9重量%のアルミニウムの溶湯C250gを金型3の溶湯供給部31内に供給した。しかる後、溶湯供給部31内のアルミニウムの溶湯C上に黒鉛製の押し蓋8を載置し、押し蓋8を油圧プレスでプリフォームAに向かって4.9MPaの押圧力でもって2分間に亘って押圧することによってアルミニウムの溶湯Cを充填部32内のプリフォームAに向かって加圧し、絞り板7の貫通孔7a、絞り板7と内蓋6との隙間を通じて、プリフォームAとこのプリフォームAに対向する充填部32の内壁面との間に、溶湯供給部3に供給したアルミニウムの溶湯Cの一部を進入させて、アルミニウムの溶湯CをプリフォームA内に該プリフォームAの外周面全体から略均一に含浸させた。なお、アルミニウムの溶湯CをプリフォームAに含浸させている間、加熱器4によって金型3を加熱すると共に、金型3の下方に設けたシールジャケット5によって下方から金型3を冷却した。
【0045】
続いて、加熱器4による金型3の加熱を停止すると共に金型3全体をシールジャケット5によって冷却して金型3の充填部32内のアルミニウム複合体を冷却した上で、金型3を切断してアルミニウム複合体を取り出した。得られたアルミニウム複合体は、亀裂などは発生しておらず均一な漆黒の色彩を呈していた。又、アルミニウム複合体中、炭化珪素粒子は重量比にてアルミニウム100に対して145含有されていた。
【0046】
(実施例2)
金型3を電気炉4で700℃に加熱する代わりに600℃に加熱したこと、アルミニウムの代わりに、アルミニウム−シリコン系合金を用いたこと以外は実施例1と同様にしてアルミニウム合金複合体を得た。得られたアルミニウム合金複合体は、亀裂などは発生しておらず均一な漆黒の色彩を呈していた。又、アルミニウム複合体中、炭化珪素粒子は重量比にてアルミニウム100に対して145含有されていた。
【0047】
なお、アルミニウム−シリコン系合金は、99.99重量%純度のアルミニウム1800g及び99.9重量%純度のシリコン200gを約880℃に保持したシリコニット炉に供給して溶解し、鋼製鋳型に流して凝固させて得られたアルミニウム−10重量%シリコン系合金である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】プリフォーム形成型の一例を示した縦断面模式図である。
【図2】アルミニウム類の溶湯含浸装置の一例を示した縦断面模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 プリフォーム形成型
2 押圧部材
3 金型
31 溶湯供給部
31a 内底面
32 充填部
32a 連通口
4 加熱器
5 冷却手段
6 内蓋
7 絞り板
7a 貫通孔
8 押し蓋
A プリフォーム
B 溶湯含浸装置
C アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金中に炭化珪素粒子を分散させてなることを特徴とするアルミニウム複合体。
【請求項2】
炭化珪素粒子の平均粒径が10〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム複合体。
【請求項3】
炭化珪素粒子を押し固めて炭化珪素のプリフォームを形成するプリフォーム形成工程と、上記プリフォームに、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯を加圧鋳造により含浸させる溶湯含浸工程とを備えていることを特徴とするアルミニウム複合体の製造方法。
【請求項4】
炭化珪素粒子をバインダーを用いることなく押し固めて炭化珪素のプリフォームを形成することを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−56973(P2008−56973A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233696(P2006−233696)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【出願人】(395012352)株式会社砺波商店 (1)
【Fターム(参考)】