説明

アルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有する電灯

本発明は、真空密閉された光透過性ランプ管内に光源を備える電灯であって、前記光源は、光透過性かつUV吸収性の石英ガラス製の外囲器を有し、該外囲器は、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有し、前記外囲器の前記石英ガラスは、モル比が0.30から0.48の間のアルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有することを特徴とする電灯に関する。さらに本発明は、前記ランプに使用される石英ガラスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空密閉された光透過性ランプ管内に光源を備える電灯であって、前記光源は、光透過性かつUV吸収性の石英ガラス製の外囲器を有し、該外囲器は、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有する電灯に関する。
【背景技術】
【0002】
前述のタイプの電灯は、欧州特許出願第658920号に示されている。この従来の電灯は、石英ガラスランプ管を有し、該ランプ管は、外表面にドープされた石英ガラスの層を有する。電灯は、光透過性かつUV吸収性の石英ガラス製の外囲器を有し、この外囲器は、アルミニウム酸化物と、セリウムおよびチタンからなる群から選定される金属の酸化物とを有し、外囲器の石英ガラスは、シリコン、セリウム、チタン、ユーロピウムおよびアルミニウムの酸化物を有し、セリウムは0.1乃至0.2atm%、チタンは0.01乃至0.04atm%、ユーロピウムは、0.03乃至0.2atm%、およびアルミニウムは、カチオン元素として最大0.8atm%含まれ、アルミニウム/ユーロピウムの原子比は、3乃至8の範囲である。
【0003】
同様の電灯は、米国特許第5,464,462号および米国特許第5,572,091号に示されており、この電灯は、アルミニウムとセリウムの両酸化物および任意の少量のチタン酸化物を有することが示されている。これらの特許では、アルミニウム酸化物およびセリウム酸化物のモル比は、少なくとも0.5である。
【0004】
これらの従来の電灯は、UV遮断特性を有するものの、XLランプのスリーブ等、いくつかの用途では、特性が不十分であることが示されている。
【特許文献1】米国特許第5,464,462号明細書
【特許文献2】米国特許第5,572,091号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、少なくとも可視光線に対して実質的に透明な外囲器を有し、XLランプとして使用することが可能な十分なUV線遮断特性を有する、最初に示したようなタイプの電灯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、この課題は、石英ガラス製の外囲器を、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有する、UV吸収性石英ガラスとすることによって得ることができる。この石英ガラス製の外囲器は、モル比が0.30から0.48の間のアルミニウム酸化物とセリウム酸化物とを有する。
【0007】
シリコン酸化物(SiO2)マトリクス中に、前記酸化物が所与の比率で含まれる石英ガラスは、少なくとも可視光線に対して実質的に透明であり、UV線に対して実質的に不透明である。本願では、石英ガラスとは、ドープされた石英ガラスであって、規定量の全ての成分を満たし、これらの特性を発揮する石英ガラスを意味する。
【0008】
本発明の好適実施例では、電灯の外囲器は、さらにアルミニウム酸化物に対するモル比が、1乃至3の間のチタン酸化物を有する。
【0009】
さらに電灯は、外囲器内にユーロピウム酸化物を有することが好ましく、セリウム酸化物は、0乃至0.5mol%、チタン酸化物は、0乃至0.05ol%、ユーロピウム酸化物は、0.01から0.05mol%、およびアルミニウム酸化物は、最大0.2mol%含まれ、アルミニウム酸化物/ユーロピウム酸化物のモル比は、3から10の間である。
【0010】
本発明の好適な電灯は、0.33±0.015mol%のセリウム酸化物、0.03±0.01mol%のチタン酸化物、0.18±0.015mol%のアルミニウム酸化物、および0.02±0.006mol%のユーロピウム酸化物を有する。
【0011】
セリウム、チタンおよびユーロピウムのそれぞれの元素は、UV線のスペクトルの一部を吸収する。この領域は、相互に補完的に割り当てられ、相互に部分的に重複している。アルミニウム酸化物は、ユーロピウムを実質的にマトリクスに溶解した2価の状態で安定化させる。特に、Al2O3/Eu2O3のモル比が4以上の場合、ユーロピウムによるUV吸収は、最大となり、光の透過性が最大になる。またアルミニウムの好適な影響により、2価のユーロピウムの存在のため、石英ガラスが流動化されることが防止される。ドープされた石英ガラス中に、各ユーロピウム原子に対して少なくとも4つ、特に4つのアルミニウム原子が存在することが好ましいことが示されている。
【0012】
2価の形態は、例えばヘリウムおよび水素のような還元雰囲気下での溶融時に、および石英ガラスバッチ中に、3価の酸化物の状態でユーロピウムが存在する場合に生じる。バッチは、ドープされた石英ガラスのカチオン元素の酸化物、またはそのような元素の混合酸化物を有する。
【0013】
一般に、光源の石英外囲器の厚さは、少なくとも約1mmである。ガラスの添加物の最小量は、これに基づいて定められる。量が少なくなると、ガラスのUV線に対する遮断性は悪くなる。最大の添加物量では、ドープされた石英ガラスは、約97%の重量のシリコン酸化物を有し、この段階では、光学特性とは別の、未だ高いレベルの溶融シリコン酸化物の特性を有する。ドープされた石英ガラスは、その成分とともに添加された不純物を有する。
【0014】
光源は、例えばタングステン製の白熱体であっても良く、この白熱対は、例えばハロゲンを含む不活性ガス中に設置される。あるいは光源は、イオン化媒体中の電極対であっても良く、作動時に電極間には、例えば高圧の放電アークが形成され、放電が継続される。イオン化媒体は、水銀およびハロゲン化金属を含む希ガスを有しても良い。
【0015】
ランプ管およびドープされた石英ガラスの外囲器は、一体化されても良く、この場合、例えばランプ管は、全体がドープされた石英ガラスで構成される。
【0016】
あるいは外囲器は、例えばランプ管を取り囲む分割型としても良い。その後、外囲器は、真空密閉された外部電球となり、あるいは、ランプ管と外部電球の間の、例えば円筒状の本体部となる。この円筒状の本体部は、一端または両端が閉止されていても、されていなくても良い。
【0017】
光源が、可視光のみならずUV線も放射する場合、およびランプが可視光線の放射のために使用される場合、外囲器は前述のいずれの構成においても重要な役割を果たし、生物または物体が、UV線によって損傷を受けることが回避される。外囲器は、光源を照らすためにも重要であり、光源は、外囲器がない場合よりも高い温度に達する。この場合、電灯の発光効率が高くなるという利点が得られる。また、外部電球内の管状の外囲器、または外部電球を構成する管状の外囲器は、電灯の安全性に寄与し、ランプ管が破裂および破損する危険がある場合、外囲器がないと、ランプ近傍が危険にさらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明による電灯の実施例を、各図に示す。
【0019】
図1には、真空密閉された透明石英ガラスランプ管2内に光源1を有する電灯を示す。この図では、光源は、例えば希ガス、水銀およびハロゲン化金属等を含むイオン化ガス中に置かれた電極対である。光源は、光透過性かつUV吸収性の石英ガラス製の外囲器3を有する。外囲器3は、アルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有し、さらにはチタン酸化物とユーロピウム酸化物から選定される金属酸化物を有しても良い。ドープされた石英ガラス製の外囲器は、溶融されて後ろ側の端部でランプ管と接続される。電灯は、ランプキャップ4を有し、電源との接続のため、ケーブル5が、キャップ4から外部に突出されている。電灯は、自動車用のヘッドランプとして使用しても良い。
【0020】
描かれた電灯は、ドープされた石英ガラス製の外囲器を有し、表1に示すガラス1の組成を有するバッチから製作される。
【0021】
【表1】

図2では、図1の電灯と対応する部品番号が10だけ大きな番号で示されている。
【0022】
図に示す通常照明用の放電ランプは、外部電球16の内部に、ドープされた石英ガラス13製の管状外囲器を有し、外部電球16は、真空密閉されている。前記外囲器には、螺旋コイル状の金属ワイヤ17が巻き付けられており、外囲器は、光源から生じるUV線を吸収するが、可視光線は透過する。外囲器は、金属ワイヤと協働して、ランプ管が破損した際に、外部電球16が損傷を受けることを防止する。ランプキャップ14は、接触ピン15を有する。
【0023】
図3では、図1の電灯と対応する部品番号が20だけ大きな番号で示されている。電灯は、光源として白熱体を有する。ドープされた石英ガラス製の外囲器23は、真空密閉されている。従って外囲器23は、ランプ管と一体化されている。外囲器23には、ハロゲンを含むガスが充填されても良い。金属ランプキャップ24は、管状の形状であって、絶縁された接続部25を支持し、自身も第2の接続部として機能する。この電灯は、無UV自動車用ランプとしての使用に適している。本発明による電灯に使用される、ドープされた石英ガラスを得るためのバッチの例は、モル%単位で表1に示されている。ただし、ガラス1およびガラス2は、重量%単位でも示されている。
【0024】
図4には、表の例1(ガラス1)のバッチで得られた石英ガラスの透過率曲線を示す。また図には、従来のガラスで得られた同様の曲線を示す(米国特許第5,464,462号、および第5,572,091号)。得られた曲線は、このガラスが可視光線に対して実質的に透明であって、従来のものよりもUV線を良好に遮断することを示している。
(実施例)
本発明によるガラスの組成および従来のガラスの組成を表1に示した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施例の側面図である。
【図2】第2の実施例の側面図である。
【図3】第3の実施例の側面図である。
【図4】ガラス1の透過率曲線(Ex1)、および米国特許第5,464,462号および5,572,091号に示されている、従来のガラスの同曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空密閉された光透過性ランプ管内に光源を備える電灯であって、前記光源は、光透過性かつUV吸収性の石英ガラス製の外囲器を有し、該外囲器は、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有し、
前記外囲器の前記石英ガラスは、モル比が0.30から0.48の間のアルミニウム酸化物およびセリウム酸化物を有することを特徴とする電灯。
【請求項2】
さらに前記外囲器は、アルミニウム酸化物に対するモル比が1から3の間のチタン酸化物を有することを特徴とする請求項1に記載の電灯。
【請求項3】
さらに前記外囲器は、ユーロピウム酸化物を有し、セリウム酸化物は、0乃至0.5mol%で、チタン酸化物は、0乃至0.05mol%で、ユーロピウム酸化物は、0.01乃至0.05mol%で、アルミニウム酸化物は、最大0.2mol%で、アルミニウム酸化物/ユーロピウム酸化物のモル比は、1から20の間にあることを特徴とする請求項1または2に記載の電灯。
【請求項4】
前記外囲器の前記石英ガラスは、0.33±0.015mol%のセリウム酸化物と、0.057±0.002mol%のチタン酸化物と、0.13±0.015mol%のアルミニウム酸化物とを有することを特徴とする請求項1に記載の電灯。
【請求項5】
シリコン酸化物と、アルミニウム酸化物と、セリウム酸化物とを有するUV吸収石英ガラスであって、前記ガラスは、モル比が0.30から0.48の間のアルミニウム酸化物とセリウム酸化物を有することを特徴とするUV吸収石英ガラス。
【請求項6】
前記アルミニウム酸化物とセリウム酸化物は、0.38から0.42の間のモル比で存在することを特徴とする請求項5に記載の石英ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−505459(P2007−505459A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525934(P2006−525934)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051515
【国際公開番号】WO2005/024893
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501344315)コニンクリユケ フィリップス エレクトロニクス エヌ.ブイ. (174)
【Fターム(参考)】