説明

アルミニウム酸化物の分散液、被覆組成物およびインク吸収媒体

20〜60質量%の熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物粉末を一次粒子の凝集物の形態で含有し、ここで該粉末が50〜150m2/gのBET比表面積を有し、シアーズ数/BET比表面積の比が約0.150〜0.160であり、ここで分散液中の平均凝集直径は200nm未満であることを特徴とするアルミニウム酸化物の分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物の分散液、その製造方法およびその使用に関する。それは被覆組成物およびインク吸収媒体にも関する。
【0002】
高顔料塗料では、インクを多孔質の顔料ネットワーク内に吸収させる。アモルファスシリカは現在、その大きな吸収容量および親水性の性質のために前記の系で最も一般的な顔料タイプである。シリカ被膜の著しい吸収性は、その大きな比表面積に基づき、それは粒子の間および内部の両方の孔の存在に起因する。前者は担体相を被膜表面から素早く運び去るのに対して、後者は狭い孔内に蔓延する強い毛細管圧力のために最終的なインク吸収を引き起こす。さらには、シリカ粒子はそれら表面上の反応性のシラノール基および水和水のおかげでインクと相互作用できる。実際に、シリカはインク溶剤を着色剤に関して選択的に吸収することを示し、それは被覆表面付近で着色剤の分割をもたらす。いくつかのシリカの品種が現在使用可能であり、即ちヒュームドタイプ、コロイドタイプ、沈降タイプおよびゲルタイプである。それらの粒径は一般に100nm未満から1μmより大きい範囲に及んでいる。コロイドシリカ、沈降シリカおよびヒュームドシリカは無孔の一次粒子で構成されるのに対して、シリカゲルは硬質且つ多孔質の3次元的なネットワークとして、下は300nmに至るまでの粒子で存在する。
【0003】
シリカ顔料に加えて、アルミナもインクジェット塗料、特に高性能光沢塗料において使用される。擬ベーマイトは特別なタイプの商用アルミナであり、それは一般に水性の分散液として使用される。さらには、シリコンおよびアルミニウムの混合酸化物もインクジェット塗料に適用される。
【0004】
高顔料被膜用に選択される塗料ポリマー系は、一般に最終的なプリント品質に対して非常に重要であり、なぜなら該ポリマーは顔料粒子を固定し、且つそれらを原紙に結合させ、且つインクの担体相を吸収もするからである。水性のインクジェットインクでは被覆された紙の上のプリントの乾燥は従って一般に際立って結合剤の吸収容量に依存する。これは適した化学的性質および分子量のポリマーを選ぶことによって影響される。
【0005】
高顔料インクジェット塗料において最も一般的な結合剤は水溶性の親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびポリビニルアセテート(PVAc)である。顕著に部分的に加水分解され、比較的低分子量のPVA品種がシリカ顔料と組み合わせられたとき、効果的な結合剤として実績がある。
【0006】
さらには、非イオン性の性質のおかげで、陽イオン性のポリマーおよび表面サイズを含む塗料着色剤のほとんどの添加剤と共にPVAを使用できる。
【0007】
素早いインク吸収の他に、陽イオン性水溶性ポリマー、例えばPVPは水および溶剤の両方と相互作用できる能力のために、高いプリント密度を提供する。この理由のために、陽イオン性のポリマーは一般に媒染剤としてインクジェット塗料に含まれている。例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリ−DADMAC)および陽イオン性PVAはPVPに加えて染料の結合を改善することが知られている。シリカと組み合わせて使用するとき、添加される量は、陽イオン性ポリマーの塗料着色剤流動性への劇的な影響のために、通常、比較的低い。インクジェット塗料に適用されている他の結合剤のタイプは、スチレンアクリルおよびスチレンブタジエンラテックスの水性エマルジョン、並びに特別な結合剤、例えばゼラチンおよびその誘導体である。
【0008】
シリカ被膜において、固体含有率は一般に20%未満であり、それは高速被覆を非常に複雑にする。さらには、時として40質量%より多くの相当な量の結合剤が必要とされる。シリカ紙は一般に他のプリント工程において乏しいプリント適性を示し、それは従来の技術およびインクジェットプリント技術の組み合わせを含む、混成プリント工程へのそれらの適用性を制限し得る。
【0009】
シリカ顔料に加えて、アルミナも特に高性能光沢塗料において、インクジェット塗料に使用される。擬ベーマイトは特別なタイプの商用アルミナであり、それは一般に水性の分散液として使用される。ヒュームドアルミナもインクジェット塗料に使用できる。
【0010】
しかしながら、まだインクジェット基材の品質を改良する必要がある。これは特にインクジェット塗料を製造するために使用する分散液の性質に依存する。
【0011】
本発明の課題は従って金属酸化物粒子の安定な分散液を提供することである。本発明のさらなる課題は、この分散液に基づいて、高い光沢および高い色密度を有する、インク吸収媒体用の被覆組成物を提供することである。
【0012】
本発明は20〜60質量%の熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物粉末を一次粒子の凝集物の形態で含有することを特徴とし、該粉末が
・ 50〜150m2/gのBET比表面積、
・ 約0.150〜0.160のシアーズ数(Sears number)/BET比表面積比
・ 分散液中で200nm未満、好ましくは110〜160nmである平均凝集直径
を有する分散液を提供する。
【0013】
本発明によって使用される熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物は、火炎酸化あるいは好ましくは火炎加水分解法によって製造でき、蒸発可能なアルミニウム化合物、好ましくは塩化物を出発材料として使用する。
【0014】
本発明による分散液中で使用されるアルミナは広範囲のBET比表面積におよぶ。典型的な値は65±10m2/g、100±10m2/gおよび130±10m2/gである。
【0015】
該粒子は一次粒子の凝集物の形態である。一次粒子は個々の独立体としては存在しない。それらの緩い凝集のおかげで、それらは細孔に起因する内部の表面積を有さないが、外部の表面積のみを有する。比表面積は一次粒径の関数である。
【0016】
それ自体が多孔質でないにもかかわらず、本発明によるアルミナ粒子は細孔を形成し、なぜなら全ての単一の一次粒子の間に残った空間があるからである。この空間は凝集物間の細孔を形成する(図1、a=一次粒子、b=凝集物、c=被膜層の顔料、矢印は細孔を示す)。
【0017】
それらの細孔は吸収容量を作製するために必要である。インクジェットインクの溶剤は被膜層内に吸収されなければならない。一般に、この溶剤は水である。RC紙、従ってポリオレフィン層あるいは膜の場合、吸収容量の完全な不足がある。しかし紙上のインクジェット塗料でさえも、素早いプリントの乾燥を確保するために被膜層に必要とされる吸収容量がある。水銀ポロシメトリ(Mercury porosity)は被覆されたインクジェットシートの細孔の容積を測定する優れた手法であることが実証されている。
【0018】
図はアルミナ粉末1(A)、アルミナ粉末2(B)およびアルミナ粉末3(C)の凝集物間の(interaggregate)細孔径分布を示す。
【0019】
本発明による分散液は、アルミニウム酸化物の他に、無機酸(例えば塩酸、硝酸、硫酸)、有機酸(例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸)、無機塩基(例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム)あるいは有機塩基(例えばアミン、水酸化テトラアルキルアンモニウム)、塩(例えば塩化ナトリウム、ギ酸カリウム、硝酸カルシウム)、緩衝液系(例えば燐酸二水素カリウム/燐酸緩衝液、酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液)、イオン性あるいは非イオン性界面活性剤、高分子電解質、ポリマーおよび/または殺生剤も含んでよい。
【0020】
本発明はさらには本発明による分散液の製造方法を提供し、該方法は50〜150m2/gのBET比表面積を有し、一次粒子の凝集物の形態での熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物を水と混合し、2〜11、好ましくは3〜5のpH値に設定し、且つ該混合物を剪断力の導入によって分散させることを特徴とする。
【0021】
熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物を分散させるために、剪断装置、例えばローター・ステーター型機(バッチ機あるいは連続インライン機)、ボールミル、パールミル、揺動ボールミルあるいは高圧ホモジナイザーを使用できる。高圧ホモジナイザーの作業モードは、高圧下で2つの予め分散された懸濁液の流れがノズルを通って放出されることを特徴とする。その2つの分散液の噴射は互いにきっちりと衝突し、そして粒子はそれ自身を粉砕する。他の実施態様において、予め分散された液は高圧下にも置かれるが、該粒子は壁の外装領域に対して衝突する。該作業を所望の回数繰り返して、より小さい粒径を得ることができる。
【0022】
本発明による分散液の利点は、
・ 粒子表面上での高い陽イオン性電荷
・ 分散液の粒径分布が決まったやり方で設定できること
・ 分散液の純度が高いこと
・ 分散液内での電解質レベルが正確に制御できること
・ 分散液内でのアルミニウム酸化物一次粒子の非常に特徴的な"ストラクチャー/架橋"があること
・ 分散液内のアルミナ粒子が高度の堅さおよび摩耗耐性を提供すること
である。
【0023】
本発明はさらには本発明による分散液および少なくとも1つの結合剤を含有する、インク吸収層形成用の被覆組成物を提供する。
【0024】
以下が結合剤として使用できる:ポリビニルアルコール、部分的または完全に鹸化し、且つ主鎖あるいは側鎖上に第一級、第二級、あるいは第三級アミノ基あるいは第三級アンモニウム基を含有する陽イオン化されたポリビニルアルコール。また、それらのポリビニルアルコール同士およびポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、シラン化ポリビニルアルコール、スチレン−アクリレート格子、スチレン−ブタジエン格子、メラミン樹脂、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリウレタン樹脂、合成樹脂、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエステル樹脂(例えば不飽和ポリエステル樹脂)、ポリアクリレート、化工デンプン、カゼイン、ゼラチンおよび/またはセルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)との組み合わせ。ポリビニルアルコールあるいは陽イオン化ポリビニルアルコールが好ましい。
【0025】
該被覆組成物は1つあるいはそれより多くの他の顔料、例えば炭酸カルシウム、層状シリケート、アルミニウムシリケート、プラスチック顔料(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン)、シリカ(例えばコロイド状シリカ、沈降シリカ、シリカゲル、上述のシリカ化合物の陽イオン化変形物)、アルミニウム化合物(例えばアルミニウムゾル、コロイド状アルミニウム酸化物およびそれらのヒドロキシ化合物、例えば擬ベーマイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム)、マグネシウム酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、炭酸マグネシウム、カオリン、粘土、タルク、硫酸カルシウム、炭酸亜鉛、サチン白、リトポンおよびゼオライトも含有できる。
【0026】
該被覆組成物は10〜50質量%のアルミナ含有率を有してよい。それは好ましくは15質量%よりも大きい。
【0027】
該被覆組成物はさらには、アルミナ粒子に対して結合剤を3〜150質量%、好ましくは10〜40質量%、特に3〜15質量%の比率で含有してよい。
【0028】
結合剤系および従って被膜の耐水性を増加させるため、架橋剤、例えばホウ酸、メラミン樹脂、グリオキサールおよびイソシアネートおよび結合剤系の分子鎖を互いに結合させる他の分子を使用できる。
【0029】
さらには、助剤、例えば蛍光増白剤、消泡剤、湿潤剤、pH緩衝液、UV吸収剤および増粘剤も使用できる。
【0030】
本発明はさらには、本発明の分散液を攪拌しながら親水性結合剤の水溶液に添加し、それに他の添加剤を随意に添加してもよく、且つアルミナ粒子の結合剤に対する所望の比および所望の固体含有率が得られるまで随意に希釈してもよいことを特徴とする被覆組成物の製造を提供する。添加の順序は重要ではない。該混合物を随意に一定の時間攪拌し、そして必要であれば真空中で脱気する。添加剤は、例えば顔料、架橋剤、蛍光増白剤、消泡剤、湿潤剤、pH緩衝液、UV吸収剤および増粘剤を意味すると理解される。
【0031】
本発明はさらには本発明による被覆組成物および担体を使用するインク吸収層を提供する。該担体は例えば紙、塗工紙、樹脂膜、例えばポリエステル樹脂であってよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロファン、セルロイドあるいはガラス板を含む。
【0032】
写真原紙、即ち一層あるいはそれ以上の層のポリエチレン膜を表裏に適用した紙が好ましい。ポリエステル膜、PVC膜あるいは予め被覆された紙もまた好ましい。
【0033】
本発明によるインク吸収媒体は、同タイプあるいは他の層のいくつかの被膜層で構成されるインク吸収層における媒体も含む。本発明による被覆組成物は、1層あるいはそれより多くの層中に見られてもよい。従って、例えば他のインク吸収被膜、例えば沈降シリカを含有する被膜を本発明による被覆組成物の下に適用できる。さらには、1つあるいはそれより多くのポリマー層(例えばポリエチレン)を基材および/または本発明による被膜に適用して、被膜の機械的安定性および/または光沢を増加させることができる(例えば写真原紙、ラミネーション)。
【0034】
担体は透明あるいは不透明であってよい。担体の厚さに制限はないが、しかしながら50〜250μmの厚さが好ましい。
【0035】
本発明はさらには、担体に被覆組成物を適用し、そして乾燥させることを特徴とするインク吸収媒体の製造を提供する。該被覆組成物を全ての従来の適用方法、例えば回転ブレードによる適用、ブレード塗布、エアブラシ、ドクターブレード(型彫(profiled)、平滑、分割)、キャスト塗布法、膜プレス、結合−プレス、カーテン塗布およびスロットダイによる適用(例えば塗布ブレード)およびそれらの組み合わせによって適用できる。非常に均質な塗布が可能な方法、例えばキャスト塗布、カーテン塗布およびスロットダイによる適用が好ましい。被覆された基板をすべての従来の方法、例えば空気あるいは対流乾燥(例えば熱風路)、接触あるいは伝導乾燥、エネルギー放射乾燥(例えば赤外およびマイクロ波)によって乾燥できる。
【0036】
本発明のさらなる対象は、本発明によるアルミニウム酸化物分散液を金属、エレクトロニクス産業における半導体素子、ガラス、セラミクス、および他の硬質材料の研磨および洗浄に用いる使用である。
【0037】
本発明のさらなる対象は、本発明によるアルミニウム酸化物分散液の蛍光管、電球あるいは他の光源の被膜への使用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】a:一次粒子、b:凝集物、c:被膜層の顔料を示す図である。
【図2】A:アルミナ粉末1、B:アルミナ粉末2、C:アルミナ粉末3の凝集物間の細孔径分布を示す図である。
【図3】本発明の被覆組成物の性能を示す線図である。
【0039】
実施例1:アルミナ粉末
320kgの予め蒸発させた三塩化アルミニウム(AlCl3)を100Nm3/hの水素および450Nm3/hの空気と共に公知の構成のバーナー内で燃焼させる。
【0040】
火炎反応の後、微細粒子、高表面積アルミニウム酸化物を形成された塩酸ガスからフィルターあるいはサイクロン内で分離し、その後、まだ付着しているHClの残りを、高温で加湿した空気による処理によって除去する。
【0041】
アルミナ粉末2を単離する。その物理的/化学的データを表1に示す。アルミナ粉末1および3を、反応条件を変化させることで同様に製造する。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例2:本発明によるアルミナ分散液
初めに、280リットルの脱イオン水を受容器内でプロピオン酸によりpH3.9にする。80kgのアルミナ粉末2(20質量%のアルミニウム酸化物と等価)をその後、ローター・ステーター機で該水中に導入する。全量の粉末の混合後、得られた懸濁液を激しく約60分剪断する。
【0044】
粉末を導入している間、18リットルの半濃縮された酸を添加することによってpH値をpH=4.0〜4.1に維持する。次の剪断工程を最大剪断エネルギーのローター・ステーター機で実施し、そして合計で60分間継続する。
【0045】
剪断工程の完了後、pH値は4.1である。2kgの殺生剤の添加後、さらに6リットルのプロピオン酸を用いて、pH値を3.9の最終pHにした。分散液の製造が完了したら、14リットルの蒸留水の添加によって液体の容積を400リットルに増加させる。
【0046】
剪断工程後の粒径設定はd50=140nmである。
【0047】
アルミナ粉末1ではd50=126nm、アルミナ粉末3ではd50=110nmである。
【0048】
実施例3:本発明によるインクジェット被膜
12.14%の固体含有率を有する水性ポリビニルアルコール溶液(モヴィオール 40−88、クラリアント社)を400mlビーカー内に入れ、そして多量の水を実施例2によるアルミニウム酸化物分散液と共にそこに添加し、それで18%の固体含有率が得られる。
【0049】
アルミナ分散液を、500rpmで攪拌しながらピペットを使用してポリビニルアルコール溶液内に5分以内でゆっくりと滴下する。それを添加したら、500rpmでさらに30分間、攪拌を継続して均質な被覆組成物を得る。その後、被覆組成物をデシケーターおよび水流ポンプを使用して脱気する。
【0050】
対照として、被覆組成物の混合の後、実際の固体物質、pH値および粘度を測定する。下記の表2の部は、固体物質に対する質量部を意味すると理解される。
【0051】
光沢値を、基準として試験カード2855(黒色スペクトル)を使用したByk−ガードナー光沢計を用いて測定する。
【0052】
被覆組成物のプリント性能を被膜上のテストイメージをプリントアウトすることによって評価し、HP550Cプリンタ、およびエプソンStylus Colour800プリンタをそれぞれ使用し、そしてそれらのプリントされた被膜を3人の独立した人によって評価する。
【0053】
全領域色(黒、マゼンタ、シアン、イエロー)も含有するテストイメージに対して、観察角度2゜およびD50光源でGretagMacbeth(商標)Spectroeyeを使用して色密度を測定する。
【0054】
得られる粘度のデータは実施例2により且つ最長の分散時間の分散液が最低の粘度を生じることを示す。これは被覆組成物中の固体物質を、高すぎて適用できない粘度になることなくまだ増加させる余地があるので望ましい。
【0055】
100ミクロン厚の未処理のポリエステル膜を、120ミクロンのウェット膜のスパイラル型塗布器を有するエリクセンの塗膜装置を使用して被覆する。適用した被覆組成物を、熱風乾燥器を使用して乾燥させる。
【0056】
光沢値の考察
表3に示される光沢値から、本発明による分散液は、60分の分散時間後の被覆組成物において、他の方法によって製造された分散液よりも高い光沢値を生じることが明らかにわかる。
【0057】
EP732219号内に既に開示されているように、写実的な被膜には、高光沢が望ましい。光沢値はEP732219号のものよりも低いが、しかしこれはインクジェット媒体の製造方法が異なるためであり、被覆組成物のせいではない。インクジェット被膜中での分散液の光沢への寄与を測定するために、スパイラル型塗布器をこの試験において意識的に使用する。EP732219号内で使用されるキャスト塗布工程では、光沢は本質的にその工程自身で測定される。
【0058】
2つの異なるタイプのプリンタを使用した場合、実施例2による最長の分散時間での分散液を含有する被膜が最高の結果を生じる。
【0059】
色密度を試験した場合(表4)、本発明の実施例2による最長の分散時間での分散液を含有する被膜が最高の色密度を再現することがわかる。これは可能な最高の写実的な再現を得るために望ましい。
【0060】
下記の表の部は、固体物質に対しての質量部を意味すると理解される。
【0061】
得られた粘度のデータは、最低の粘度が実施例2により且つ最長の分散時間の分散液で得られることを示す。これは望ましく、なぜなら被覆組成物中の固体物質を、適用するには高すぎる粘度になることなくまださらに増加させる余地があるためである。
【0062】
つや消し被覆された110g/m2のインクジェット紙(Zweckform no.2576)を、60ミクロンのウェット膜のスパイラル型塗布器を有するエリクセンの塗膜装置を使用して被覆する。適用した被覆組成物を熱風乾燥器で乾燥させる。
【0063】
該被膜をその後、10barの圧力および50℃でGradek Oy(商標)ラボ用カレンダーを用いて3回カレンダー仕上げする。
【0064】
与えられた実施例からわかるように、本発明による分散液は、インクジェット被覆組成物の製造および高光沢プリント媒体を製造するためのそれらのさらなる処理に著しく適している。このように製造されたインクジェット媒体は特に良好なプリント品質および光沢品質を有している。
【0065】
さらなるインクジェット適用試験結果
粒子の知見に基づき、インクジェット被膜調合物の吐出(make−down)効果、その被膜処理および最後にプリント結果を調査した。被覆されたシートはPET膜である。吐出工程のために、全ての顔料を水中の分散液としてのPVA結合剤溶液に添加する。光沢のあるインクジェット被膜に対して試験した特徴は、調合物の結合剤含有率、流動性能として示される流動特性、およびシートおよびプリントの光沢(60゜)、色品質、解像度である。
【0066】
結合剤含有率はそれぞれの顔料に対して個々に最適化される。結合剤含有率は乾燥の後のひび割れが消失するように最小化されているとみなされる。該被膜調合物のブルックフィールド粘度はその流動性能を判断する手段であり、それぞれの固体含有率も考慮されている。該シートをエプソンStylus Color980上でプリントする。分光光度計を用いて色を測定する。画像分析のラインの鮮鋭度は解像度、および従って間接的に被膜層の吸収能力を示す。
【0067】
正規化された線図(図3、A=アルミナ粉末1(A)、アルミナ粉末2(B)およびアルミナ粉末3(C)を含む塗料)は本発明による被覆組成物の性能を示し、リファレンスとして100m2/gのBET比表面積を有するヒュームドアルミナ粉末を含む。1より大きい値は、リファレンスと比べた利点を示し、且つ1より小さい値は欠点を示す。
【0068】
アルミナ粉末1を含む分散液は、結合剤の需要を劇的に減少させ、且つ塗布工程中の調合物の流動性能を強く改善する。それは解像度も改善する。
【0069】
アルミナ粉末2を含む分散液は、一方、光沢および色品質の両方を改善する。流動性能はリファレンスと比較してさらにより良好である。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム酸化物の分散液において、20〜60質量%の熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物粉末を一次粒子の凝集物の形態で含有することを特徴とし、該粉末が
・ 50〜150m2/gのBET比表面積、
・ 約0.150〜0.160のシアーズ数/BET比表面積比
を有し、平均凝集直径が分散液中で200nm未満である分散液。
【請求項2】
アルミニウム酸化物の他に、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、塩、緩衝液系、イオン性あるいは非イオン性界面活性剤、高分子電解質、ポリマーおよび/または殺生剤も含有することを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
熱分解法で製造されたアルミニウム酸化物を水と混合し、pH値を2〜11に設定し、且つ該混合物を制御された剪断力の導入によって分散させることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の分散液の製造方法。
【請求項4】
剪断装置、例えばローター・ステーター機、ボールミル、パールミル、揺動ボールミルあるいは高エネルギー剪断法を特徴とする、請求項3に記載の分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1あるいは2に記載の分散液および少なくとも1つの結合剤を使用する被覆組成物。
【請求項6】
アルミナ粒子の含有率が10〜50質量%であることを特徴とする、請求項5に記載の被覆組成物。
【請求項7】
アルミナ粒子に対する結合剤の含有率が3〜150質量%、好ましくは10〜40質量%、特に3〜15質量%であることを特徴とする、請求項5あるいは6に記載の被覆組成物。
【請求項8】
本発明による分散液を結合剤の水溶液に添加し、それにさらなる添加物を随意に攪拌しながら添加してもよく、且つアルミナの結合剤に対する所望の比および所望の固体含有率が得られるまで随意に希釈することを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項に記載の被覆組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項5から7までのいずれか1項に記載の被覆組成物および担体を使用するインク吸収媒体。
【請求項10】
被覆組成物を担体に適用し、そして乾燥させることを特徴とする、請求項9に記載のインク吸収媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項1あるいは2に記載のアルミニウム酸化物分散液を、金属、エレクトロニクス産業における半導体素子、ガラス、セラミクス、および他の硬質材料の研磨および洗浄に用いる使用。
【請求項12】
請求項1あるいは2に記載のアルミニウム酸化物分散液を、蛍光管、電球あるいは他の光源の被膜に用いる使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−501651(P2010−501651A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524979(P2009−524979)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056726
【国際公開番号】WO2008/022835
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】