説明

アルミ蓋スチール缶の分別処理装置および分別処理方法

【課題】アルミニウム製の蓋部とスチール製の胴部とからなるスチール缶の分別処理装置、およびその方法を提供する。
【解決手段】球面形状を備える研削体13Aを、スチール缶1の巻き締め加工部4の先端縁5に圧接し、該研削体13Aを回転させながら該巻き締め加工部4における蓋部3の外縁部3Bを研削していくようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ蓋スチール缶のリサイクル処理に関するものであって、具体的には、アルミニウム製の蓋部本体をスチール製の胴部から分離する分別処理装置、および分別処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料等の容器であるスチール缶は、筒状の胴部がスチール製で、蓋部がアルミニウム製であることは知られている。以下、このようなスチール缶を、アルミ蓋スチール缶という。
また、該アルミ蓋スチール缶は、蓋部と胴部とを接合すべく、蓋部材料の外縁部と、胴部材料の端部とを巻き締め加工しているが、該巻き締め加工部の先端部を削ってスチール製の胴部とアルミニウム製の蓋部とを分離し、分別処理しようとする技術は既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−047937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成は、図4に示すように研削体aの研削面が平面であり、該平面状の研削面を巻き締め加工部の先端縁に当接させる構成であったため、該巻き締め加工部をその先端から研削していくと研削部分bが多くなり、アルミニウムの削り粉が多量に発生してしまうという問題があった。このため、上記従来構成は、分離した蓋部本体に含まれるアルミニウムの回収率向上に限界があり、また該アルミニウムの削り粉の処理に多大な労力を要した。
【0005】
そこで本発明は、アルミニウムの回収率が良好なアルミ蓋スチール缶の分別処理装置、および分別処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スチール製の筒状の胴部と、該胴部の少なくとも一端に巻き締め加工されて固定されたアルミニウム製の蓋部とからなるアルミ蓋スチール缶の該巻き締め加工部を研削して該巻き締め加工部から蓋部本体を分離するアルミ蓋スチール缶の分別処理装置であって、分別処理装置本体は、回転軸を有する回転部を有し、該回転軸の先端には、全部または一部が球面形状とされた研削体が固定されており、また該分別処理装置本体は、分別処理対象となるアルミ蓋スチール缶を保持する保持手段を備え、該回転部の回転軸を中心にして回転する該研削体の球面部分と、該保持手段で保持した該アルミ蓋スチール缶における巻き締め加工部の先端縁とを圧接させ、かつ該巻き締め加工部を該蓋部周方向に沿って研削することにより該巻き締め加工部から該蓋部本体を分離するようにしたことを特徴とするアルミ蓋スチール缶の分別処理装置である。
【0007】
また、本発明は、スチール製の筒状の胴部と、該胴部の少なくとも一端に巻き締め加工されて固定されたアルミニウム製の蓋部とからなるアルミ蓋スチール缶の該巻き締め加工部を研削して該巻き締め加工部から蓋部本体を分離するアルミ蓋スチール缶の分別処理方法であって、全部または一部が球面形状とされた研削体を回転させながら、該研削体の球面部分と、分別対象となるアルミ蓋スチール缶における巻き締め加工部の先端縁とを圧接し、該巻き締め加工部を蓋部周方向に沿って研削することにより該巻き締め加工部から該蓋部本体を分離するようにしたことを特徴とするアルミ蓋スチール缶の分別処理方法である。
【0008】
上記構成において、該巻き締め加工部における蓋部に対応する部位が該蓋部の周方向に沿って研削されると、蓋部本体が該巻き締め加工部から切り離されてスチール製の胴部と分離される。ここで、本発明の研削体は、全部または一部が球面形状とされ、該球面部分を巻き締め加工部における先端縁に圧接して該蓋部の外縁部の厚み方向に研削していく構成としたため、従来構成に比べて研削部分が縮小し、アルミニウムの削り粉を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、アルミニウム製の蓋部本体を分離する際に、アルミニウムの削り粉を少量とすることができるため、蓋部本体に含まれるアルミニウムの回収率を向上させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
本発明に係る使用済みアルミ蓋スチール缶1(以下、適宜、スチール缶1という)は、図1等に示すように、スチール製の筒状の胴部2と、該胴部2の上下両端(図1では上端)に配設されたアルミニウム製の蓋部3とからなる。該スチール缶1は、一般に飲料用に使用されているものである。
【0011】
また、該スチール缶1は、胴部2と蓋部3とが、図1等に示すように、公知の巻き締め加工によって接合されている。該巻き締め加工は、胴部2となる胴部材料の端部と蓋部3となる蓋部材料の外縁部とを重ね合わせた状態で外側へ巻き込む加工してなるものである。これにより、蓋部3と胴部2との接合部には、蓋部本体3A上面から所定高さで起立し、かつ最外層が該蓋部3の外縁部3Bで構成されている巻き締め加工部4が形成される。
【0012】
次に、本発明に係るスチール缶1の分別処理装置10を説明する。
分別処理装置10は、該スチール缶1の巻き締め加工部4から蓋部本体3Aを分離する装置であって、図1aに示すように、分別処理装置本体10Aには、回転軸12を有する回転部11が設けられている。また、該回転軸12の先端には、全部が球面形状とされた球体の研削体13Aが固定されている。また、該分別処理装置本体10Aには、分別処理対象となるスチール缶1の胴部2を側方から挟んで保持する保持手段20を備えている。
【0013】
次に、スチール缶1の分別処理方法を説明する。
まず、図1aに示すように、スチール缶1を分別処理装置10の保持手段20を用いて保持し、前記研削体13Aを回転させ、該研削体13Aの球面部分を、該スチール缶1の巻き締め加工部4の先端縁5に圧接する。そして、図1bに示すように、該巻き締め加工部4を、該外縁部3Bの厚み方向に沿って研削していく。また、該研削体13Aおよび/または該スチール缶1を移動させて、平面視環状の該巻き締め加工部4の先端縁5を全周にわたって研削していく。
【0014】
そうすると、図1c,dに示すように、該巻き締め加工部4における該蓋部3の外縁部3Bが磨滅し、これにより該巻き締め加工部4から該蓋部本体3Aが分離する。
【0015】
上記構成において、該巻き締め加工部4の先端縁5は、該研削体13Aの球面形状に対応した形状で研削されていくこととなり、研削部分が従来構成(図4参照)に比べて縮小し、アルミニウムの削り粉の量が低減されることとなる。
【0016】
一方、巻き締め加工部4の先端縁5において研削部分を可及的に縮小してアルミニウムの削り粉を低減しようとすると、極めて鋭利に尖った研削体で該巻き締め加工部4の先端縁5を削っていくことが考えられ得るが、このような構成は該研削体と該巻き締め加工部4の先端縁5とを突き合わせる位置合わせの精度が要求されることとなって装置が複雑化し、コスト高につながる。
しかし、本発明の該研削体13Aは球面形状であるから、図2に示すように、起立状の該巻き締め加工部4の先端縁5に対して仮に該研削体13Aがずれて突き合わせられたとしても、該研削体13Aの球面部分で該巻き締め加工部4を研削していくことができ、該研削体13Aと該巻き締め加工部4とを突き合わせる精度がそれほど高く要求されない。したがって、該研削体13Aを採用することにより、簡易構造の装置を提供することもできる。
【0017】
上記研削体13Aは、一方向に回転させて研削するようにしてもよいし、正逆に回転させながら研削するようにしてもよい。該回転部11は、電力や磁力を利用したモーター等の駆動源が利用できる。
【0018】
なお、図1a〜図1cの構成は、分別処理装置10の回転軸12の軸線方向と、該研削体13Aの巻き締め加工部4の先端縁5に対する圧接方向とが一致しているが、図3aに示すように、該回転軸12の軸線方向と、該巻き締め加工部4の先端縁5に対する圧接方向とが直交するような構成としてもよい。
【0019】
また、上記研削体13Aの半径は適宜変更可能である。また、図3b,cに示すように、少なくとも一部が球面形状である研削体13B,13Cを採用してもよい。また、これら研削体13B,13Cの球面部分の半径も適宜変更可能である。
【0020】
その他、本発明の主旨を逸脱しない限り、実施例は適宜設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】巻き締め加工部の研削過程を示す説明図
【図2】研削体と巻き締め加工部との接触状態を示す説明図
【図3】変形例を示す説明図
【図4】従来構成を示す説明図
【符号の説明】
【0022】
1 アルミ蓋スチール缶(スチール缶)
2 胴部
3 蓋部
3A 蓋部本体
3B 蓋部外縁部
4 巻き締め加工部
5 先端縁
10 分別処理装置
10A 分別処理装置本体
11 回転部
12 回転軸
13A〜13C 研削体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチール製の筒状の胴部と、該胴部の少なくとも一端に巻き締め加工されて固定されたアルミニウム製の蓋部とからなるアルミ蓋スチール缶の該巻き締め加工部を研削して該巻き締め加工部から蓋部本体を分離するアルミ蓋スチール缶の分別処理装置であって、
分別処理装置本体は、回転軸を有する回転部を有し、該回転軸の先端には、全部または一部が球面形状とされた研削体が固定されており、
また該分別処理装置本体は、分別処理対象となるアルミ蓋スチール缶を保持する保持手段を備え、
該回転部の回転軸を中心にして回転する該研削体の球面部分と、該保持手段で保持した該アルミ蓋スチール缶における巻き締め加工部の先端縁とを圧接させ、かつ該巻き締め加工部を該蓋部周方向に沿って研削することにより該巻き締め加工部から該蓋部本体を分離するようにしたことを特徴とするアルミ蓋スチール缶の分別処理装置。
【請求項2】
スチール製の筒状の胴部と、該胴部の少なくとも一端に巻き締め加工されて固定されたアルミニウム製の蓋部とからなるアルミ蓋スチール缶の該巻き締め加工部を研削して該巻き締め加工部から蓋部本体を分離するアルミ蓋スチール缶の分別処理方法であって、
全部または一部が球面形状とされた研削体を回転させながら、該研削体の球面部分と、分別対象となるアルミ蓋スチール缶における巻き締め加工部の先端縁とを圧接し、該巻き締め加工部を蓋部周方向に沿って研削することにより該巻き締め加工部から該蓋部本体を分離するようにしたことを特徴とするアルミ蓋スチール缶の分別処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−245433(P2011−245433A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121913(P2010−121913)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(509049344)株式会社三四四 (1)
【Fターム(参考)】