説明

アレイ型ディスク装置の冗長構成法

【目的】 システム全体の冗長性を抑えながらシステム全体の信頼性を向上させ、また、ディスク装置の障害に対するデータ回復処理もシステム全体で短縮化する。
【構成】 M台の情報ディスク装置3〜5と、N台の冗長ディスク装置6〜8と、M’台の二重化情報ディスク装置9〜10と、N’台の二重化冗長ディスク装置12〜13とを備え(M’≦M,N’≦N,N<M)、アクセス頻度が高かったり、重要な情報や高速なレスポンスが要求される情報が情報ディスク装置3〜4,9〜10と冗長ディスク装置6〜7,12〜13に記録される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はコンピュータシステムにおいてアレイを形成するように配置された複数のディスク装置を冗長的に構成するためのアレイ型ディスク装置の冗長構成法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2は従来のアレイ型ディスク装置の冗長構成法を用いたコンピュータシステムの構成ブロック図であり、この従来例はすべての情報ディスク装置を二重化している。図2において、1は情報処理を行うホストコンピュータ、3〜5はアレイを形成するように配置され情報データを記録するM台の情報ディスク装置、9〜11は情報ディスク装置3〜5を二重化したM台の二重化情報ディスク装置、2はホストコンピュータ1からの要求により当該ディスク装置に情報データを書き込んだり当該ディスク装置から情報データを読み出したりするアレイ型ディスクコントローラである。
【0003】次にこの従来例の動作について説明する。ホストコンピュータ1は、アレイ型ディスクコントローラ2の働きにより、アレイ状に配置された複数の情報ディスク装置3〜5,9〜11を意識する必要がなく、通常のディスク装置に対するようにデータを扱うことができる。
【0004】通常のライト処理は、ホストコンピュータ1からのデータライト要求に対し、アレイ型ディスクコントローラ2がその要求データを当該情報ディスク装置及びそれに対応する二重化情報ディスク装置に書き込む。例えば、その要求データは情報ディスク装置3と二重化情報ディスク装置9に書き込まれる。したがって、情報ディスク装置3内のデータと二重化情報ディスク装置9内のデータとは同じ内容となる。
【0005】通常のリード処理は、ホストコンピュータ1からのデータリード要求に対し、アレイ型ディスクコントローラ2が情報ディスク装置3〜5に書き込まれているデータ位置を把握しており、その要求データを当該情報ディスク装置から読み出し、ホストコンピュータ1へ転送する。このとき、要求データが記録されている当該情報ディスク装置のみがアクセスされ、二重化情報ディスク装置9〜11はアクセスされない。例えば、要求データは情報ディスク装置3から読み出されるが二重化情報ディスク装置9からは読み出されない。
【0006】ロストデータの回復処理は、当該情報ディスク装置に障害が発生した場合、その情報ディスク装置に対応する二重化情報ディスク装置にリード/ライト処理を瞬時に切り換えることにより行う。例えば情報ディスク装置3に傷害が発生した場合、リード/ライト処理を二重化情報ディスク装置9に切り換える。
【0007】図3は他の従来のアレイ型ディスク装置の冗長構成法を用いたコンピュータシステムの構成ブロック図であり、この従来例は誤り訂正符号化により冗長性を作用させている。図3において、1は情報処理を行うホストコンピュータ、3〜5はアレイを形成するように配置され情報データを記録するM台の情報ディスク装置、6〜8はアレイを形成するように配置され上記情報データを誤り訂正符号化することにより生成された冗長データを記録するN台の冗長ディスク装置、2はホストコンピュータ1からの要求により当該ディスク装置に情報データを書き込んだり当該ディスク装置から情報データを読み出したりするアレイ型ディスクコントローラである。
【0008】次にこの従来例の動作について説明する。M台の情報ディスク装置3〜5内の情報データを並列に並べた方向に誤り訂正符号化することにより冗長データを生成し、その冗長データをN台の冗長ディスク装置6〜8に記録する。
【0009】通常のリード処理は、ホストコンピュータ1からのデータリード要求に対し、アレイ型ディスクコントローラ2が情報ディスク装置3〜5に分散されて書き込まれているデータ位置を把握しており、その要求データを当該情報ディスク装置から読み出し、ホストコンピュータ1へ転送する。このとき、その要求データが記録されているディスク装置のみがアクセスされ、冗長ディスク装置6〜8はアクセスされない。
【0010】通常のライト処理は、ホストコンピュータ1からのデータライト要求に対し、情報ディスク装置にデータを書き込む場合は、まずアレイ型ディスクコントローラ2において要求データを書き込む情報ディスク装置に対して、既に書き込まれているデータを読み出す。また、読み出した情報データに対応する冗長ディスク装置に書き込まれている誤り訂正符号化により生成された冗長データを読み出す。アレイ型ディスクコントローラ2は、つぎに、読み出した前情報データと新たに書き込むデータの差分データをとる。この差分データを用いて誤り訂正符号化を行い、差分データに対する差分冗長データを生成する。このとき、該当差分データ以外の差分情報データはすべて零、即ち差分なしとして符号化を行う。つぎに、新たにこの差分冗長データと前冗長データの差分データをとる。これが新たにデータを書き換えた場合の新冗長データとなる。以上の新冗長データの作成方法は誤り訂正符号の線形性によるものである(例えば、今井秀樹著『符号理論』電子情報通信学会 参照)。ライト処理の場合は、書き込みデータと以上の新冗長データを対応する情報ディスク装置及び冗長ディスク装置にオーバーライトする。
【0011】つぎに図3における誤り訂正符号の訂正処理によるロストデータの回復処理について説明する。例として、代表的な誤り訂正符号であるGF(2のm乗)上のRS符号(例えば、今井秀樹著『符号論理』電子情報通信学会p155〜p158参照)を用いて、障害ディスク装置に対してロストデータの回復を行うことを考える。
【0012】図3において、情報ディスク装置3に障害が発生しデータロスが生じたとする。また誤り訂正符号化処理において情報ディスク装置3と関係するデータを記録しているディスク装置を情報ディスク装置3〜5と冗長ディスク装置6〜8とする。アレイ型ディスクコントローラ2は、例えば、通常のデータのリード/ライトの際の異常応答を検知することで、障害が発生したディスク装置が情報ディスク装置3であることを予め認識できる。
【0013】一般にRS符号における誤り訂正処理は、(ステップ1)シンドロームの計算、(ステップ2)誤り位置多項式の計算、(ステップ3)誤り数値多項式の計算、という以上三つのステップに分けられる(例えば、今井秀樹著『符号理論』電子情報通信学会p161〜p175参照)。
【0014】まず図3において、情報ディスク装置3〜5、冗長ディスク装置6〜8から障害を除いたデータを読み出し、シンドロームの計算を行う(ステップ1)。つぎにシンドロームの計算結果をもとに誤り位置多項式の計算を行う(ステップ2)。この場合、誤り位置はアレイ型ディスクコントローラ2により障害ディスク装置を予め把握しており、誤り位置多項式から誤り位置を計算する処理は省略できる。つぎに誤り数値多項式の計算を行う(ステップ3)。誤り数値多項式を解くことによりロストデータは回復される。以上(ステップ1)〜(ステップ3)の処理を障害ディスク装置のデータがすべて回復されるまで繰り返す。
【0015】図3における誤り訂正符号を用いた従来の冗長構成法は、誤り訂正符号化したデータを各ディスク装置に分散して記録するため、誤り訂正符号の最小距離をdとすると、M+N個に分散/記録されたデータ方向に、高々d−1個のディスク装置に障害が発生しデータが失われても、少なくても残りのM+N−(d−1)個の分散されたデータから誤り訂正符号の訂正処理によりロストデータの回復が可能となる(例えば、今井秀樹著『符号理論』電子情報通信学会p33〜p35参照)。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】図2における、すべての情報ディスク装置を二重化する従来の冗長構成法は、障害ディスク装置におけるロストデータの回復処理が、障害情報ディスク装置を対応する冗長ディスク装置に切り換えるだけであり、高速処理が可能であるという利点がある。しかし、冗長度が50%もありシステム全体のディスク装置の容量は総容量の半分しか持てないという欠点がある。また、情報ディスク装置と対応する冗長ディスク装置に同時に障害が発生した場合、ロストデータの回復が不可能となる。
【0017】これに対し、図3における、誤り訂正符号化により冗長性を作用させた従来の冗長構成法は、一般に冗長ディスク装置の台数Nは情報ディスク装置の台数Mより少なく、図2の従来例よりも冗長度が少ないという利点がある。例えば誤り訂正符号化として単純パリティ符号化を考えれば、N=1台の冗長ディスク装置を用意することにより、M+N台のディスク装置のうち一台の障害ディスク装置のロストデータを回復可能である。一般に冗長ディスク装置の台数を増し適当な誤り訂正符号化法をとることによりデータ回復が可能なディスク装置の台数も増す。
【0018】しかし図3における、誤り訂正符号化により冗長性を作用させた従来の冗長構成法は、ライト処理時に該当する情報ディスク装置と共に冗長ディスク装置へのアクセスが必要となり、結果として冗長ディスク装置へのアクセスが非常に多くなる。このため冗長ディスク装置に障害が発生する確率が他の情報ディスク装置に比較して大きくなる。また、情報ディスク装置に障害が発生した場合、ロストデータを修復するためは関連するすべての情報ディスク装置及び冗長ディスク装置にアクセスする必要がある。これらによりロストデータの回復処理に時間がかかるという欠点がある。
【0019】この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、システム全体の冗長性を抑えながらシステム全体の信頼性を向上させ、ロストデータの回復処理時間の短縮化を図れるアレイ型ディスク装置の冗長構成法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】この発明に係るアレイ型ディスク装置の冗長構成法は、通常の情報データを記録する複数の情報ディスク装置3〜5と、上記情報データを誤り訂正符号化して生成された冗長データを記録する複数の冗長ディスク装置6〜8とを設け、更に、上記複数の情報ディスク装置3〜5の一部を二重化構成する複数の二重化情報ディスク装置9〜10と、上記複数の冗長ディスク装置6〜8の一部を二重化構成する複数の二重化冗長ディスク装置12〜13とを設けたものである。
【0021】
【作用】例えば情報ディスク装置3や冗長ディスク装置6に障害が発生すると、対応する二重化情報ディスク装置9や二重化冗長ディスク装置12に切り換えられ、障害処理が高速に実行可能となる。また、二重化していない情報ディスク装置5に障害が発生すれば、例えば冗長ディスク装置8の冗長データに基づく障害処理が可能となる。また、例えば情報ディスク装置3と、それに対応する二重化情報ディスク装置9とに同時に障害が発生すれば、冗長ディスク装置6の冗長データに基づく障害処理が可能となる。
【0022】
【実施例】
実施例1.(請求項1対応)
図1はこの発明の一実施例によるアレイ型ディスク装置の冗長構成法を用いたコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。図1において、1は情報処理を行うホストコンピュータ、3〜5はアレイを形成するように配置され情報データを記録するM台の情報ディスク装置、6〜8はアレイを形成するように配置され上記情報データを誤り訂正符号化して生成された冗長データを記録するN台の冗長ディスク装置、9〜10はM台の情報ディスク装置3〜5の一部を二重化構成するM’台の二重化情報ディスク装置、12〜13はN台の冗長ディスク装置6〜8の一部を二重化構成するN’台の二重化冗長ディスク装置、2はホストコンピュータ1からの要求により当該ディスク装置にデータを書き込んだり当該ディスク装置からデータを読み出したりするアレイ型ディスクコントローラである。ここで、M’≦M,N’≦N,N<Mとする。
【0023】次にこの実施例の動作について説明する。通常のリード処理は、ホストコンピュータ1からのデータリード要求に対し、アレイ型ディスクコントローラ2が情報ディスク装置3〜5に分散されて書き込まれているデータ位置を把握しており、その要求データを当該情報ディスク装置から読み出し、ホストコンピュータ1へ転送する。このとき、その要求データが記録されている情報ディスク装置のみがアクセスされ、他のディスク装置はアクセスされない。
【0024】通常のライト処理は、アレイ型ディスクコントローラ2において、前データと新たに書き込むデータの差分データを用いて誤り訂正符号化を行い、差分データに対する差分冗長データを生成する。つぎに、新たにこの差分冗長データと前冗長データの差分により新冗長データを作成する。ライト処理の場合は、書き込みデータと新冗長データを対応する情報ディスク装置にオーバーライトし、新冗長データは二重化冗長ディスク装置にもオーバーライトする。また書き込みデータも二重化情報ディスク装置がある場合、同様に書き込まれる。
【0025】ロストデータの回復処理については、情報データが記録されている情報ディスク装置に障害が発生した場合、該当する障害情報ディスク装置に対して二重化情報ディスク装置が存在する場合は、障害情報ディスク装置を二重化情報ディスク装置に瞬時に切り換えを行うことにより従来のロストデータの回復処理を行う必要がない。それ以外は従来の場合と同様となる。冗長ディスク装置に障害が発生しデータロスが発生した場合は、二重化冗長ディスク装置に瞬時に切り換えることにより、従来のロストデータの回復処理を行う必要がない。
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、アレイを形成するように配置される複数のディスク装置として、通常の情報データを記録する複数の情報ディスク装置と、上記情報データを誤り訂正符号化して生成された冗長データを記録する複数の冗長ディスク装置と、上記複数の情報ディスク装置の一部を二重化構成する複数の二重化情報ディスク装置と、上記複数の冗長ディスク装置の一部を二重化構成する複数の二重化冗長ディスク装置とを設けて構成したので、アクセス頻度が高かったり、重要な情報や高速なレスポンスが要求される情報のみを二重化構成を持つ情報ディスク装置及び冗長ディスク装置に記録すれば、すべてのディスク装置を二重化構成する必要がなく、システム全体の冗長性を抑えながらシステム全体の信頼性を向上させることが可能となり、また、ディスク装置の障害に対するデータ回復処理もシステム全体で短縮化が可能となるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例によるアレイ型ディスク装置の冗長構成法を用いたコンピュータシステムの構成ブロック図である。
【図2】従来のアレイ型ディスク装置の冗長構成法を用いたコンピュータシステムの構成ブロック図である。
【図3】他の従来のアレイ型ディスク装置の冗長構成法を用いたコンピュータシステムの構成ブロック図である。
【符号の発明】
1 ホストコンピュータ
2 アレイ型ディスクコントローラ
3〜5 情報ディスク装置
6〜8 冗長ディスク装置
9〜10 二重化情報ディスク装置
12〜13 二重化冗長ディスク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アレイを形成するように配置された複数のディスク装置と、情報処理を行うホストコンピュータと、このホストコンピュータからの要求により当該ディスク装置にデータを書き込んだり当該ディスク装置からデータを読み出したりするアレイ型ディスクコントローラとを備えたコンピュータシステムにおいて、上記複数のディスク装置として、通常の情報データを記録する複数の情報ディスク装置と、上記情報データを誤り訂正可能なように誤り訂正符号化して生成された冗長データを記録する複数の冗長ディスク装置とを設けると共に、上記複数の情報ディスク装置の一部を二重化構成する二重化情報ディスク装置と、上記複数の冗長ディスク装置の一部を二重化構成する二重化冗長ディスク装置とを設けたことを特徴とするアレイ型ディスク装置の冗長構成法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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