説明

アレイ基板の製造方法及びアレイ基板並びにスクリーンの製造方法及びスクリーン

【課題】複数の微小な凸部または凹部が並べられて構成されるアレイ基板を、型部材を用いて転写成形する際に、外縁部を所定の寸法で切除し、基板に凸部や凹部が形成された領域を所定の寸法で容易に得ることができるアレイ基板の製造方法が要望されていた。
【解決手段】熱可塑性を有する基板に対し、アレイ状に転写される複数の凸部または凹部および溝が、基板に転写される複数の凸部または凹部、および溝となる突起部の形状を備える型部材と、型部材を基板に押圧をすることによって、型部材に形成された前記凸部または凹部、および突起部を当該基板に転写をする基板転写工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ基板の製造方法及びアレイ基板並びにスクリーンの製造方法及びスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の微小な凸部、または凹部が並べられて形成されているアレイ基板が、プロジェクターなどの投射型表示装置から射出された投射光を反射させて、画像の表示をするスクリーンに適用されてきた。これらアレイ基板は、樹脂を原材料とし形成をする方法として、インプリント成形法(以下、「転写成形法」と称する。)を用いることができ、投射光を反射させるスクリーンを容易に成形をすることができることが知られている。
【0003】
特許文献1では、フレネルレンズをホットプレス(転写成形法)によって製造をする方法において、成形用金型を形成する方法について、導電性樹脂基材を用いて前記導電性樹脂基材が露出し、かつフレネルレンズパターン形状に加工された主面を有するフレネルレンズ電鋳用母型として使用し、電鋳により前記主面上に電着した金属から複製金型を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−156484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複製金型(以下、「型部材」と称する。)を用いる転写成形法によるアレイ基板の製造方法において、転写によって凸部または凹部が形成された領域と、凸部または凹部が形成されない領域、すなわちアレイ基板として不要な部分となる外縁部の切除をする切除位置の精度管理が難しいという課題があった。また、原材料が薄いフイルム状基板の場合や大型のアレイ基板をスクリーンとして用いる場合、外縁部の切除をする際に、アレイ基板の位置がずれることによって、斜めに切除される場合があり、アレイ基板の外形寸法が不揃いになるという課題があった。特許文献1では、前述する課題については触れられていない。
【0006】
このため型部材を用いてアレイ基板などを転写成形する際に、外縁部を所定の寸法で切除し、基板に凸部や凹部が形成された領域を所定の寸法で容易に得ることができるアレイ基板の製造方法が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
(適用例1)本適用例に係るアレイ基板は、熱可塑性を有する基板に対し、アレイ状に転写される複数の凸部または凹部および溝が凸部または凹部と、溝となる突起部との形状を備えた型部材によって転写され、転写される溝は、基板の厚み未満の深さに形成され、基板の外縁部の切除に用いられることを特徴とする。
【0009】
このようなアレイ基板によれば、アレイ基板となる基板に、アレイ状に形成される複数の凸部または凹部および溝が、当該基板に形成される凸部または凹部および溝の形状を備える型部材によって、同時に転写され形成される。また、転写される溝の深さは、当該基板の厚み未満とすることで、基板に転写された溝を基準に基板と、アレイ基板として不要な外縁部とを引き裂くことで、容易に外縁部の切除をすることができる。従って、アレイ基板に凸部または凹部が形成される領域の縁から、アレイ基板の縁までの間隔が一定となり、外形寸法精度の高いアレイ基板を実現できる。
【0010】
(適用例2)本適用例に係るアレイ基板の製造方法は、熱可塑性を有する基板に対し、
前記基板にアレイ状に転写される複数の凸部または凹部、および溝となる突起部の形状を備える型部材と、型部材を基板に押圧をすることによって、型部材に形成された凸部または凹部、および突起部の形状を基板に転写をする基板転写工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
このようなアレイ基板の製造方法によれば、アレイ基板となる基板に転写される複数の凸部または凹部、および溝となる突起部の形状を備える型部材を、転写工程によって基板に押圧をすることで、型部材に備えられた形状が当該基板に転写され、アレイ基板を構成する複数の凸部または凹部および溝を、同時に形成させることができる。従って、アレイ基板として不要な外縁部の切除をする際に、当該アレイ基板と、切除位置との調整をすることなく、形成された溝を基準として引き裂くことで、切除に係る装置を設けることなく外縁部を切除できる。
【0012】
(適用例3)上記適用例に係るアレイ基板の製造方法において、型部材を電気鋳造によって形成をする型部材形成工程を備えることが好ましい。
【0013】
このようなアレイ基板の製造方法によれば、型部材の形成は、アレイ基板に転写される形状を備える母型を元に、電気鋳造によって母型にメッキ層を電着させ型部材の形成をすることで、アレイ基板に形成される溝となる形状を母型に備えることなく、溝の形成をする突起部を備える型部材の形成をすることができる。従って、既に製作している母型を用いて、溝となる突起部を備える型部材の形成をすることができ、突起部の形成をするための新たな母型を要しない。
【0014】
(適用例4)本適用例に係るスクリーンは、熱可塑性を有する基板に対し、アレイ状に転写される複数の凸部または凹部および溝が、凸部または凹部と、溝となる突起部との形状を備えた型部材によって転写され、転写される溝は、基板の厚み未満の深さに形成されて基板の外縁部の切除に用いられ、基板に転写された複数の凸部または凹部に投射光を反射させる反射膜を備えることを特徴とする。
【0015】
このようなスクリーンによれば、スクリーン基材となる基板に、投射光の反射をさせる反射膜が形成される凸部または凹部、およびスクリーンとして不要な外縁部の切除に用いる溝を、当該基板に形成される凸部または凹部および溝の形状を備える型部材を基板に押圧し転写することで同時に形成される。また、転写される溝の深さは、当該基板の厚み未満とすることで、基板に転写された溝を基準に基板と、外縁部とを引き裂くことで、当該基板と、切除位置との調整をなく外縁部の切除をすることができる。このことによって、スクリーン基材となる基板に凸部または凹部が形成される領域の縁から、基板の縁までの間隔が一定となり、外形寸法精度の高いスクリーンを得ることができる。従って、外形寸法精度が高いことから投射光の反射をさせる反射膜が所定の部分に形成されるため、投射光が所定の方向以外に反射されることを抑制した観察しやすいスクリーンが実現できる。
【0016】
(適用例5)本適用例に係るスクリーンの製造方法は、熱可塑性を有する基板対し、基板にアレイ状に転写される複数の凸部または凹部、および溝となる突起部の形状を備える型部材の形成をする型部材形成工程と、型部材を基板に押圧をすることによって、型部材に形成された凸部または凹部、および突起部の形状を基板に転写をする基板転写工程と、基板に転写された複数の凸部または凹部に対し、投射光を反射させる反射膜の形成をする反射膜形成工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
このようなスクリーンの製造方法によれば、スクリーン基材となる基板に転写される複数の凸部または凹部、および溝となる突起部の形状を備える型部材形成工程で形成し、当該型部材を転写工程によって基板に押圧することで、型部材に備えられた形状が基板に転写される。また、投射光の反射をする反射膜が形成される凸部または凹部と、スクリーンとして不要な外縁部の切除に用いる溝とが同時に形成することができる。このことによって、基板に凸部または凹部が形成された第1基板面の縁から、その周囲に備わる当該スクリーン製造かかる装置に、アレイ基板の固定をするために用いる保持領域との間隔が一定となる。このことによって、反射膜の加工をする位置も一定に保つことができる。従って、反射膜形成工程において、反射膜が形成される凸部または凹部の投射光に対応した所定の部分に、反射膜の形成をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る型部材形成工程を示す模式図。
【図2】第1実施形態に係る基板の基板転写工程を示す模式図。
【図3】第1実施形態に係るアレイ基材製造方法で形成されたアレイ基板を示す模式図。
【図4】第2実施形態に係るスクリーンの設置例を示す模式図。
【図5】第2実施形態に係るスクリーン基材の転写工程および表面を示す模式図。
【図6】第2実施形態に係るスクリーン基材の反射膜形成工程を示す模式図。
【図7】第2実施形態に係るスクリーン表面の一部を模式的に示す概断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態を図面に基づいて説明をする。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際の構成要素とは適宜に異ならせて記載をしている。
【0020】
(第1実施形態)
図1から図3を参照して本実施形態のアレイ基板1の製造方法と、当該製造方法を用いて製造されたアレイ基板について説明をする。図1は、アレイ基板1となる基板を変形させる型部材220の形成をする型部材形成工程を示す模式図である。図2は、アレイ基材に型部材220の形状の転写をする基板転写工程を示す模式図である。また、図3は、本実施形態のアレイ基材製造方法で形成されたアレイ基板1を示す模式図である。
【0021】
凹部または凸部がアレイ状に形成されたアレイ基板1の製造方法について説明をする。アレイ基板1の製造方法の工程は、工程順に型部材形成工程と、基板転写工程とを備えている。
【0022】
(型部材形成工程)
型部材形成工程は、アレイ基板1に形成をする形状を備える母型(以下「マスター」と称する。)の形成をする工程である。型部材形成工程は、マスター形成工程と、電気鋳造工程(以下「電鋳工程」と称す。)と、型部材加工工程とを有し構成されている。
【0023】
型部材形成工程は、先ず形成をするアレイ基板1の形状に沿ったマスター114をマスター形成工程によって形成をする。マスター形成工程は、マシニング加工やエッチングによって、アレイ基板1に形成される凹凸形状に沿った当該凹凸形状をマスター114に形成させる。なお、マスター114の材質は、金属やガラス、樹脂など後述する電鋳工程によるメッキ槽110への浸漬に耐えられる材質であれば良い。
【0024】
電鋳工程は、電気メッキを利用した表面形状の複製であって、マスター114を用いて、その表面形状の元となるマスター主面114aに、型部材220となるメッキ層を電着させ、マスター主面114aに形成されている形状が型部材220に複製される。
【0025】
マスター114の表面が絶縁性を備える材質の場合、表面形状が複製されるマスター主面114aに導電処理を施す必要がある。また、マスター114の表面が導電性を備える材質の場合、マスター114の形状が複製されるマスター主面114a以外のマスター114の表面に絶縁膜114bを形成し、絶縁処理を施す必要がある。本実施形態では、導電性を有するマスター114を用いることとして説明を続ける。
【0026】
図1(a)および図1(b)は、型部材形成工程および当該工程で形成されるマスター114と、型部材220との概断面を示す図である。
【0027】
電鋳工程は、図1(a)に示すように、被メッキ材となるニッケルや銅などの金属イオンを含む電解溶液111で満たされたメッキ槽110に、マスター114と、陽極電極113とを浸漬させる。次に、陽極電極113をプラス極とし、マスター114をマイナス極(陰極)として直流電源112に接続し、直流電圧の印加をする。直流電圧の印加をすることで、図1(b)に示すように、陽極電極113から電解溶液111を通じて陰極となるマスター114に電流112aが流れる。電流112aが流れることによって、導電性を有するマスター主面114aおよびマスター側面114cで還元反応が生じ、電解溶液111に含まれる金属イオンが析出し、メッキ層がマスター主面114aの形状に沿って電着をすることで型部材220が形成される。
【0028】
ここで、電鋳工程によって形成されるメッキ層は略等方に成長をするため、マスター主面114aの凹凸形状が、形成される型部材220のベース面220bにも再現される。また、マスター側面114cは、平面を備える面であるため、電着するメッキ層も平面形状となり、マスター主面114aに電着されるメッキ層と略同じ厚みとなる。電鋳工程は、所定の厚さにメッキ層によって型部材220が形成されるまでおこなう。
【0029】
型部材加工工程は、電鋳工程で形成された型部材220をマスター114から脱型し、型部材220の裏面となるベース面220bの平滑化と、突起部220cを切断加工をする工程である。図1(c)に示すように、ベース面220bは、後述をする基板転写工程において、基板10の変形に用いるプレス転写装置210で基板10を押圧をする力を型部材220に均等に加えるため、マスター主面114aの形状があらわれているベース面220bの加工を施す。本実施形態では、マスター主面114aの形状があらわれている凹凸部分を仕上げ線120aに沿って研削し、ベース面220bが平滑化される。
【0030】
また、型部材220に形成された突起部220cは、後述をする基板転写工程において、基板10に切除用の溝11の形成をするため、切除に適した厚みとなるように仕上げ線120bに沿って加工を施す。さらに、図1(d)に示すように、マスター114と、型部材220を脱型した後に、突起部220cを切除に適した長さとなるように仕上げ線120cに沿って加工を施す。なお、本実施形態では、突起部220cの厚みtは、0.1mm程度とし、型部材220の押圧面220aからの長さLは、基板10の厚み未満となるように仕上げ線120cに沿って切除をする。切除される突起部220cの端部の形状は、突起部220cに対して直角になるように図1(d)では図示しているが、突起部220cの端部が斜めになるように切除してもよい。
【0031】
型部材形成工程の説明において、マスター114と、型部材220の上面図は省略するが、型部材形成工程で形成される型部材220は、当該型部材220の周囲に突起部220cが形成され備えられている。
【0032】
(基板転写工程)
図2に示す基板転写工程は、アレイ基板1となる基板10を変形させる工程である。本実施形態では、基板転写工程によって、複数の凹部1cを基板10の第1基板面10aに転写させる。また、基板転写工程は、熱を加えた基板10に、型部材220を加熱しながら押圧をする転写装置として、プレス転写装置210を用いて実施される。
【0033】
図2(a)は、プレス転写装置210の構成、および基板10を示す概断面である。図2(b)は、プレス転写装置210が動作し、基板10を押圧し、型部材220に形成されている形状を転写させている状態を示す概断面図である。図2を参照して基板転写工程の説明をする。
【0034】
プレス転写装置210は、基板10に形成させる形状とは逆形状の形状に、前述の型部材形成工程で形成された型部材220を加熱しながら、基板10を上下方向から高圧力で押圧し、基板10を型部材220の形状に沿わせて熱変形させて、必要な形状を転写し形成させる装置である。
【0035】
図2(a)に示すように、プレス転写装置210は、基板10の下側に、下側型ベース211と、下側型ベース211の上部には、凸状に形成された凸部221と、突起部220cを備える型部材220とを備えて構成される。また、プレス転写装置210は、基板10の上側に、上側型ベース212を備えて構成される。
【0036】
上側型ベース212の第2基板面10b側は、平面を有して形成されている。また、プレス転写装置210は、上側型ベース212と、基板10との間に、高圧力で基板10の押圧をする際に、基板10へ圧力を均等に加えるため、緩衝部材213を備えている。
【0037】
緩衝部材213として本実施形態では、アラミド繊維からなるフェルト部材213aおよび基板10に接する面にテフロン(登録商標)樹脂製シート213bを組み合わせて用いている。また、緩衝部材213としてシリコーンゴムを用いることもできる。
【0038】
基板転写工程は、先ず、プレス転写装置210に対して、型部材220の形状を転写させる基板10の給材をする。基板10の給材は、図2(a)に示すように、基板10の第1基板面10aが型部材220に相対し、第2基板面10bが緩衝部材213に相対するように給材をする。次に、加熱されている下側型ベース211と、上側型ベース212とによって、給材した基板10を予熱し、その後に、固定されている下側型ベース211に向かい上側型ベース212が移動をすることで、基板10を押し付けて加圧をする。
【0039】
図2(b)に示すように、基板10は、プレス転写装置210によって下側型ベース211と、上側型ベース212とに押し付けることにより、これら基板転写工程によって、基板10の第1基板面10aは、型部材220に形成された凸部221に沿って変形して型部材220の形状が転写される。さらに、突起部220cが基板10に押し付けられることで、基板10に溝11となる突起部220cの形状が転写され、基板10に溝11が形成される。形成された溝11は、基板10と、その溝11の外縁部12とを引き裂くことでアレイ基板1に不要な外縁部12を切除し、一連のアレイ基板の製造工程が完了する。
【0040】
図3は、上述したアレイ基板1の製造方法を用いて形成されたアレイ基板1を示す模式図である。アレイ基板1の第1基板面1aに形成させる凹部1cは、アレイ基板の仕様によって、凸形状の凸部2cを形成させる場合もある。この場合、型部材220は、凸部221に代えて凹部222を備え、上述の基板転写工程によって、基板10の第1基板面10aに凸形状の凸部2cの形成をする。
【0041】
図3(a)に示すアレイ基板1は、凸部221が備えられた型部材220を用いて形成されたアレイ基板1である。当該アレイ基板1は、型部材220に備えられた凸部221の形状に沿って第1基板面1aに凹状の凹部1cが形成される。また、基板10と、外縁部12とを引き裂いて外縁部12が切除された際に、切除跡11bがアレイ基板1に残る。
【0042】
図3(b)に示すアレイ基板1は、凹部222(不図示)が備えられた型部材220を用いて形成された基板10である。当該アレイ基板1は、型部材220に備えられた凹部222の形状に沿って第1基板面1aに凸状の凸部2cが形成される。前述と同様に、切除跡11bがアレイ基板1に残る。
【0043】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態のアレイ基板1は、アレイ基板1となる基板10に、アレイ状に形成される複数の凸部2cまたは凹部1cおよび溝11が、当該基板10に形成される凸部2cまたは凹部1c、および溝11の形状を備える型部材220によって、同時に転写され形成される。また、転写される溝11の深さは、当該基板10の厚み未満とする。
【0044】
このことによって、アレイ基板1に形成される凸部2cまたは凹部1cが形成される領域の縁から、溝11までの間隔が一定とるため、当該基板10と、外縁部12とを溝11を基準に引き裂くことで、外形寸法精度の高いアレイ基板1を実現できる。従って、このようなアレイ基板1が適用される光学製品において、アレイ基板1を取り付ける位置を一定に保つことができ、例えば、当該アレイ基板1に形成された凹部1cまたは凸部2cをレンズアレイとして適用した場合、アレイ基板1を透過する光束が乱れることなく所定の集光または散光をさせることができる。
【0045】
本実施形態のアレイ基板1の製造方法は、アレイ基板1となる基板10に転写される複数の凸部2cまたは凹部1c、および溝11となる突起部220cを備える型部材220を転写工程によって基板10に押圧をすることで、型部材220に備えられた凸部2cまたは凹部1cおよび溝11を同時に形成させることができる。
【0046】
このことによって、外縁部12の切除をする際に、当該基板10と、切除をする位置との調整をすることなく、形成された溝11を基準として引き裂くことで外縁部12の切除をすることができる。また、突起部220cの端部を斜めに切断をすることで、転写される溝11の端部が鋭角となり、引き裂く力によって基板10の変形を抑制し、基板10の端面に切除跡11bの発生を抑制することができる。従って、外縁部12の切除に係る工程や装置を設けることなく外縁部12の切除をすることができ、アレイ基板1の製造に掛かる時間および費用の抑制をすることができるアレイ基板1の製造方法の実現をすることができる。
【0047】
本実施形態のアレイ基板1の製造方法は、アレイ基板1に転写される形状を備えるマスター114を元に、電鋳工程によってマスター114にメッキ層を電着させ、型部材220の形成をする。この際に、マスター側面114cにもメッキ層を電着させる。このことによって、アレイ基板1に形成される溝11となる形状をマスター側面114cにも電着させ、溝11の形成をする突起部220cを備える型部材220の形成をすることができる。従って、既に製作しているマスター114を含めて、溝11となる突起部220cを備える型部材220を形成することができる。
【0048】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態で説明をしたアレイ基板1の製造方法を用いて製造される投射光の反射をする反射膜を備えるスクリーンの製造方法である。
【0049】
図4は、本実施形態に係るスクリーンの設置例を示す模式図である。図5は、第1実施形態で説明をしたアレイ基板1の製造方法を用いて製造するスクリーン基材の転写工程と、スクリーン基材の表面とを示す模式図である。図6は、本実施形態に係るスクリーンの反射膜形成工程を示す模式図である。また、図7は、本実施形態に係るスクリーン表面の一部を模式的に示す概断面図である。
【0050】
図4から図7を用いて本実施形態のスクリーンの製造方法と、その製造方法を用いて製造されたスクリーンについて説明をする。図4から図7までの図面では、床FLに対して垂直方向をY方向、スクリーン50の第1基材面51aに平行で、Y方向に直行する方向をX方向、Y方向及びX方向に直交する方向をZ方向としてXYZ直交座標系で記載をする。また、重力の作用する方向を基準として、落下作用となる方向を下方向、逆方向を上方向とする。
【0051】
本実施形態のスクリーン50は、図4に示すように、スクリーン50近傍の床FLに設置したプロジェクターPJなどの投射型表示装置から射出された投射光Lpをスクリーン50の第1基材面51aで反射させて、反射した投射光Lpの観察をするスクリーン50である。
【0052】
スクリーン基材51は、図5(a)に示すように、スクリーン基材51の表面となる第1基材面51aには凹部51cが略全領域に形成されている。凹部51cは、X方向において、スクリーン基材51のX方向の中心線Yc上の所定の位置を中心とする円弧状に配列し、Y方向において、この中心を同心とする同心円状に配列するスクリーン基材51として、第1実施形態の転写工程によって形成される。なお、図5(a)はスクリーン1枚分のスクリーン基材51を見た図である。
【0053】
また、スクリーン基材51には、前述した第1実施形態の転写工程によって、凹部51cが形成される第1基材面51aの周囲となる保持領域51gに取付孔51fが形成される。取付孔51fは、後述をする反射膜形成工程をおこなう際に、当該スクリーン基材51を蒸着装置(不図示)に取り付けるために形成される。
【0054】
図5(b)に示すように、取付孔51fの形成は、第1実施形態で説明をした型部材220の所定位置に、ベース面220bからドリル刃などによって、取付孔51fの形状となる孔220eを穿孔し、押圧面220aに生じるバリを突起部220dとして用いて、スクリーン基材51へ型部材220に形成された形状の転写工程をおこなう。転写工程をおこなうことで、スクリーン基材51に、複数の凹部51cと同時に取付孔51fと、外縁部12の切除に用いる溝11との形成をする。
【0055】
本実施形態のスクリーン製造方法の工程は、反射膜形成工程を備えている。なお、第1実施形態で説明をしたアレイ基板1の製造方法を用いて、本実施形態のスクリーン基材51が形成され、外縁部12が切除される。また、本実施形態のスクリーンの製造方法は、反射膜形成工程からスクリーン製造方法に係る工程をおこなう。
【0056】
反射膜形成工程は、凹部51cの内面51dに選択的に投射光LPの反射をする反射膜51eの形成をする工程である。なお、本実施形態の反射膜形成工程は、アルミニウムからなる反射膜51eを蒸着によって形成をする蒸着工程を含んで構成されている。
【0057】
図6に示す蒸着工程は、スクリーン基材51を当該スクリーン基材51の第1基材面51aが、蒸着源Sの上方に相対して傾斜をするように取付孔51fを用いて蒸着装置に取り付けられる。なお、スクリーン基材51の第1基材面51aは、図4で示したスクリーン50のY軸方向で示す上側が下側に比べて、蒸着源Sから離れた状態に取り付けられる。また、蒸着源Sは、図5に示した中心線Yc上で、スクリーン基材51の下側に設置される。
【0058】
図6に戻り、蒸着工程の詳細の説明をする。蒸着工程は、反射膜51eの形成をする際、スクリーン基材51の第1基材面51aに対して、斜めに投射光Lpの射出をするプロジェクターPJの位置を仮想光源位置Pとして予定しておく。ここで、蒸着源Sの配置は、第1基材面51aに形成された凹部51cに対する蒸着材料の角度θsが、第1基材面51aの各凹部51cに対する仮想光源Pからの投射光Lp入射角度θpと等しいか、それよりも角度が小さくなるように蒸着源Sを配置して、投射光Lpの入射方向から各凹部51cに蒸着材料を蒸着させる。
【0059】
前述の蒸着工程をおこなうことで、凹部51cの内面51dに投射光Lpが投射される領域に沿って、反射膜51eが形成される。なお、このように斜め方向から蒸着をおこない、反射膜51eを選択的に形成をすることで、蒸着源Sを中心にして、スクリーン基材51の第1基材面51aの各凹部51cに放射状で部分的に反射膜51eが形成される。本実施形態では、反射膜51eの形成に蒸着法を用いたが、スプレーコート法や印刷法によって反射膜51eの形成をすることができる。
【0060】
図7(a)は、上述したスクリーンの製造方法によって形成したスクリーン50の一部を模式的に示す概断面図である。形成されたスクリーン50は、プロジェクターPJから投射された投射光Lpをスクリーン50に形成された凹部51cの反射膜51eによって、観察者側(Z軸方向)に反射される。また、スクリーン50に、室内灯等からの不要な外光60が入射した場合は、反射膜51e以外の凹部51cに吸収されるため、観察者側には反射されることの抑制をする。
【0061】
また図7(b)は、本実施形態に係るスクリーン50の形成される凹部51cを凸部52cに替えたスクリーン50の一部を模式的に示す概断面図である。図7(b)に示すスクリーン50は、スクリーン基材51の第1基材面51aに形成された凹部51cに替えて、凸状の凸部52cが形成されたアレイ基板1をスクリーン基材51として用いたスクリーン50である。スクリーン基材51の第1基材面51aに複数の凸部52cが形成され、その凸部52cへ選択的に反射膜52eが形成されている点が前述スクリーン50と異なっている。
【0062】
なお、反射膜52eの形成をする反射膜形成工程は、前述の凹部51cを備えるスクリーン50の形成と同様の工程および方法でおこなわれる。
【0063】
反射膜52eの形成をする反射膜形成工程は、第1実施形態の転写工程の後に行われる。反射膜形成工程は、前述の凹部51cを備えたスクリーン基材51と同様に、蒸着工程によって、スクリーン基材51の斜め方向から蒸着されて、凸部52cの外面52dに選択的に反射膜52eを形成させる。
【0064】
上述した第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態のスクリーン50の製造方法によれば、投射光Lpの反射をするスクリーン50の製造をする際に、上述したアレイ基板1をスクリーン基材51として用いることで、凸部52cまたは凹部51cが形成された第1基材面51aの縁から、その周囲に備わる保持領域51gの縁までの間隔が一定となる。このことによって、スクリーンの製造工程で用いる装置にスクリーン基材51を固定に用いる保持領域51gと、第1基材面51aとの間隔が一定となるため、加工位置も一定となることで、加工品質を均一に保つことができる。したがって、反射膜形成工程において、反射膜が形成される凸部または凹部の投射光に対応した所定の部分に、反射膜の形成をすることができる。
【0065】
本実施形態のスクリーンによれば、スクリーン50に投射された投射光Lpの反射をする反射膜が所定の部分に形成されているため、投射光Lpが所定の方向以外に反射されることを抑制した観察しやすいスクリーンの実現をすることができる。
【0066】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等を加えて実施をすることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0067】
(変形例1)第1実施形態のアレイ基板1は、半円状の凸部2cまたは凹部1cが整列して形成されている。しかし、これに限定されずに多角形状の凸部2cまたは凹部1cを整列して形成しても良い。
【0068】
(変形例2)第2実施形態のスクリーン50は、半円状の凸部52cまたは凹部51cが整列し形成されたアレイ基板1を用いている。しかし、これに限定されずに多角形状の凸部52cまたは凹部51cを整列して形成されたアレイ基板1を用いて、反射膜を形成しスクリーンを構成しても良い。
【符号の説明】
【0069】
1…アレイ基板、1a…第1基板面、1c…凹部、2c…凸部、10…基板、10a…第1基板面、10b…第2基板面、11…溝、11b…切除跡、12…外縁部、50…スクリーン、51…スクリーン基材、51…スクリーン基材面、51a…第1基材面、51c…凹部、51d…内面、51e…反射膜、51f…取付孔、51g…保持領域、52c…凸部、52d…外面、52e…反射膜、60…外光、110…メッキ槽、111…電解溶液、112…直流電源、112a…電流、113…陽極電極、114…マスター、114a…マスター主面、114b…絶縁膜、114c…マスター側面、120a…仕上げ線、120b…仕上げ線、120c…仕上げ線、210…プレス転写装置、211…下側型ベース、212…上側型ベース、213…緩衝部材、213a…フェルト部材、213b…樹脂製シート、220…型部材、220a…押圧面、220b…ベース面、220c…突起部、220d…突起部、220e…孔、221…凸部、222…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性を有する基板に対し、
アレイ状に転写される複数の凸部または凹部および溝が、前記凸部または前記凹部と、前記溝となる突起部との形状を備えた型部材によって転写され、
転写される前記溝は、前記基板の厚み未満の深さに形成され、前記基板の外縁部の切除に用いられること、
を特徴とするアレイ基板。
【請求項2】
熱可塑性を有する基板に対し、
前記基板にアレイ状に転写される複数の凸部または凹部、および溝となる突起部の形状を備える型部材と、
前記型部材を前記基板に押圧をすることによって、前記型部材に形成された前記凸部または前記凹部、および前記突起部の形状を前記基板に転写をする基板転写工程と、
を備えることを特徴とするアレイ基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のアレイ基板の製造方法であって、
前記型部材を電気鋳造によって形成をする型部材形成工程を備えること、を特徴とするアレイ基板の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性を有する基板に対し、
アレイ状に転写される複数の凸部または凹部および溝が、前記凸部または前記凹部と、前記溝となる突起部との形状を備えた型部材によって転写され、転写される前記溝は、前記基板の厚み未満の深さに形成されて前記基板の外縁部の切除に用いられ、
前記基板に転写された複数の前記凸部または前記凹部に投射光を反射させる反射膜を備えること、
を特徴とするスクリーン。
【請求項5】
熱可塑性を有する基板対し、
前記基板にアレイ状に転写される複数の凸部または凹部、および溝となる突起部の形状を備える型部材の形成をする型部材形成工程と、
前記型部材を前記基板に押圧をすることによって、前記型部材に形成された前記凸部または前記凹部、および前記突起部の形状を前記基板に転写をする基板転写工程と、
前記基板に転写された複数の凸部または凹部に対し、投射光を反射させる反射膜の形成をする反射膜形成工程とを備えること、
を特徴とするスクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230289(P2012−230289A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99237(P2011−99237)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】