説明

アンダーランプロテクタ構造

【課題】オフセット衝突時において、他の車両が受ける衝撃を好適に緩和することができ、且つエネルギ吸収量の低下を抑制することが可能なアンダーランプロテクタ構造を提供する。
【解決手段】アンダーランプロテクタ構造は、フロントアンダーランプロテクタ(以下、FUPと称する)5と、FUP5を支持するステーブラケット6と、FUP5の吸収体押圧部14によって前後方向に押圧されるエネルギ吸収体7と、エネルギ吸収体7の後方を支持するステップ固定部ブラケット8を有している。FUP5の張出部13には、張出部13の一部を前後方向に折り返すことによって形成された易伸長部15である折畳み部16が設けられている。車両に衝突体9が衝突し、FUP5の吸収体押圧部14が後方に移動しようとしてFUP5の張出部13に引っ張り荷重が作用したときに折畳み部16が展開して、吸収体押圧部14の後方への移動を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーランプロテクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11−255050号公報には、プロテクタブラケットと乗降用ステップのステップ固定部材とをシャシフレームの側面にそれぞれ固定し、フロントアンダーランプロテクタの中央寄りの箇所をプロテクタブラケットによって支持するとともに、フロントアンダーランプロテクタの端部とステップ固定部材との間にエネルギー吸収型の結合部材を架設したアンダーランプロテクタ構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−255050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造では、フロントアンダーランプロテクタの中央寄りの箇所がプロテクタブラケットによってシャシフレームに強固に支持されているので、フロントアンダーランプロテクタの端部側に他の車両が衝突するオフセット衝突時には、フロントアンダーランプロテクタの中央寄りの箇所の後方への移動が規制された状態で、フロントアンダーランプロテクタの端部側が後方へ移動する。このとき、フロントアンダーランプロテクタの端部側には、車幅方向外側に斜め後方へ向かう引っ張り荷重が作用し、中央寄りの箇所と端部との間には、引っ張り荷重に対抗する反力が車幅方向内側の斜め前方に向かって発生する。この反力の前後方向の成分(前方へ向かう分力)は、他の車両に荷重として作用し、車幅方向の成分(車幅方向内側に向かう分力)は、結合部材にせん断力として作用する。このため、衝突荷重が増大して過大な反力が発生すると、他の車両に作用する荷重も過大となり、他の車両が受ける衝撃を十分に緩和することができない可能性が生じる。また、結合部材に作用するせん断力が増大すると、結合部材に屈曲が発生し、結合部材の前後方向の潰れ変形が不十分となり、エネルギー吸収量の低下を招く可能性がある。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、オフセット衝突時において、他の車両が受ける衝撃を好適に緩和することができ、且つエネルギー吸収量の低下を抑制することが可能なアンダーランプロテクタ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明のアンダーランプロテクタ構造は、アンダーランプロテクタと、ステーブラケットと、エネルギ吸収体とを備える。アンダーランプロテクタは、車幅方向外端側の吸収体押圧部と、吸収体押圧部よりも車幅方向内側の張出部と、張出部よりも車幅方向内側の被支持部とを有し、車両の車体フレームの前方又は後方の端部下方で車幅方向に延びる。ステーブラケットは、車体フレームに固定され、アンダーランプロテクタの被支持部を支持する。エネルギ吸収体は、アンダーランプロテクタの吸収体押圧部の後方又は前方で車体フレームに支持され、車両の衝突によって後方又は前方へ移動する吸収体押圧部に押圧されて衝突エネルギを吸収する。アンダーランプロテクタの張出部は、張出部に引っ張り荷重が作用したときに伸長して吸収体押圧部の後方又は前方への移動を許容する易伸長部を有する。
【0007】
上記構成では、車両のアンダーランプロテクタの被支持部がステーブラケットによって車体フレームに強固に支持されているので、アンダーランプロテクタの吸収体押圧部に他の車両が前方又は後方から衝突するオフセット衝突時には、アンダーランプロテクタの被支持部の後方又は前方への移動が規制された状態で、アンダーランプロテクタの吸収体押圧部が後方又は前方へ移動する。このとき、アンダーランプロテクタの吸収体押圧部及び張出部には、車幅方向外側の斜め後方又は前方へ向かう引っ張り荷重が作用する。この引っ張り荷重が増大すると、易伸長部が伸長して吸収体押圧部の後方又は前方への移動を許容する。この易伸長部の伸長は、引っ張り荷重に対抗する反力の発生を抑制するので、他の車両に作用する上記反力の前後方向の分力とエネルギ吸収体にせん断力として作用する上記反力の車幅方向の分力とについても、それぞれ発生が抑制される。従って、他の車両に作用する荷重の増大が抑制され、他の車両が受ける衝撃を好適に緩和することができる。また、エネルギ吸収体の屈曲に起因したエネルギ吸収量の低下を抑制することができる。
【0008】
また、アンダーランプロテクタの易伸長部は、張出部の一部を車幅方向と交叉する方向に折り返すことによって形成され、張出部に引っ張り荷重が作用したときに展開する折り畳み部であってもよい。
【0009】
上記構成では、アンダーランプロテクタの吸収体押圧部及び張出部に作用する車幅方向外側の斜め後方又は前方の引っ張り荷重が増大すると、折畳み部が展開することによって伸長し、吸収体押圧部の後方又は前方への移動を許容する。このため、他の車両に作用する荷重の増大が抑制され、他の車両が受ける衝撃を好適に緩和することができるとともに、エネルギ吸収量の低下を抑制することができる。
【0010】
また、折畳み部はアンダーランプロテクタと一体的に形成されるので、簡単な構造で部品点数も増加せず、コストの上昇を抑えることができる。
【0011】
また、アンダーランプロテクタは、被支持部を有する車幅方向内側の第1プロテクタと、吸収体押圧部を有する車幅方向外側の第2プロテクタとに分割形成され、第2プロテクタの車幅方向の内端部は、第1プロテクタの車幅方向の外端部と重なる初期位置で第1プロテクタに仮保持されるとともに、第1プロテクタによる仮保持が解除された状態で車幅方向外側へスライド移動可能に前記第1プロテクタに支持され、アンダーランプロテクタの易伸長部は、張出部に引っ張り荷重が作用して仮保持が解除されたときに第1プロテクタの外端部から車幅方向外側に向かってスライド移動する第2プロテクタの内端部であってもよい。
【0012】
上記構成では、第2プロテクタの吸収体押圧部及び張出部に作用する車幅方向外側の斜め後方又は前方へ向かう引っ張り荷重が増大し、第1プロテクタによる第2プロテクタの内端部の仮保持が解除されると、第2プロテクタの内端部は、初期位置から車幅方向外側に向かってスライド移動して、吸収体押圧部の後方又は前方への移動を許容する。このため、他の車両に作用する荷重の増大が抑制され、他の車両が受ける衝撃を好適に緩和することができるとともに、エネルギ吸収量の低下を抑制することができる。
【0013】
また、第2プロテクタの内端部のスライド移動によって、易伸長部が伸長するため、第2プロテクタが伸長した際に、第2プロテクタは前後方向への凹凸状の形状変化が生じ難く、第2プロテクタの前面又は後面の平滑性が損なわれ難い。従って、第2プロテクタから他の車両に入力する衝撃荷重の車幅方向のばらつきが抑制され、他の車両が受ける衝撃荷重の局部的な増大を抑制することができる。
【0014】
また、上記アンダーランプロテクタ構造において、アンダーランプロテクタは、車体の前方の端部下方で車幅方向に延びるフロントアンダーランプロテクタであり、車体フレームの側部に支持され、車両のキャブへ昇降する乗員の足場となる昇降用ステップを固定するステップ固定部材を備え、ステップ固定部材は、エネルギ吸収体を後方から支持してもよい。
【0015】
上記構成では、車両のフロントアンダーランプロテクタの吸収体押圧部に前方から他の車両が衝突するオフセット衝突時に、吸収体押圧部が後方へ移動してエネルギ吸収体を押圧する。エネルギ吸収体はステップ固定部材により後方を支持されているので、前後方向に潰れ変形して衝撃エネルギを吸収し、他の車両が受ける衝撃を好適に緩和することができる。また、エネルギ吸収体の支持には、車両に既存のステップ固定部材を利用することができるので、特別な支持構造を必要とせず、コストの上昇を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両のオフセット衝突時において、他の車両が受ける衝撃を好適に緩和することができ、且つエネルギ吸収量の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わるアンダーランプロテクタ構造を備えたキャブオーバートラックの模式側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わるアンダーランプロテクタ構造を説明する模式上面図である。
【図3】第1の実施形態において衝突が発生したときの状態を説明する模式上面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係わるアンダーランプロテクタ構造を説明する模式上面図である。
【図5】第2の実施形態において衝突が発生したときの状態を説明する模式上面図である。
【図6】本発明をリアアンダーランプロテクタに適用した場合のキャブオーバートラックの模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、図中UPは車両上方を、図中INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明における前後方向は、車両の前後方向を意味し、左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係わる車両1は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)よりも前方に位置するキャブオーバー型の車両であり、車両1の前部には、アンダーランプロテクタ構造3を備えている。このアンダーランプロテクタ構造3は、車両1の左右に対称的に設けられて、共通のフロントアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)5を左右で支持する。なお、左右のアンダーランプロテクタ構造3はほぼ同様の構成を有するため、以下では右側について説明し、左側の説明を省略する。
【0020】
図2に示すように、アンダーランプロテクタ構造3は、メインフレーム4と、フロントアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)5と、ステーブラケット6と、エネルギ吸収体7と、ステップ固定ブラケット(ステップ固定部材)8とを備えている。
メインフレーム4は、車両1の車幅方向両側で車両前後方向に延びており、クロスメンバ11によって、左右各メインフレーム4の前端部間が連結されている。
【0021】
ステーブラケット6は、基部17とサポート部18とを有している。基部17はメインフレーム4の前端部に固定され下方に延びている。サポート部18は、基部17の前面下端部に接合されている。
【0022】
フロントアンダーランプロテクタ(以下、FUPと称する)5は板状に形成され、ステーブラケット6のサポート部18に固定されて車幅方向に延びている。FUP5はステーブラケット6に固定されるブラケット固定部(被支持部)12と、ブラケット固定部12から車幅方向外側に延びる張出部13と、張出部13よりも車幅方向外側の吸収体押圧部14とを有している。FUP5の張出部13には、折畳み部16が一体的に設けられて易伸長部15を形成している(図2参照)。折畳み部16は第1屈曲部16a、折返し部16b及び第2屈曲部16cを有し車幅方向と交叉する後方へ延びる略T字状に形成されている。すなわち、FUP5は、ブラケット固定部12から車幅方向外側の第1屈曲部16aへ延び、第1屈曲部16aから略直角に屈曲して車幅方向と交叉する後方へ延び、折返し部16bで前方に折り返して第2屈曲部16cへ延び、第2屈曲部16cで更に略直角に屈曲して車幅方向へ延びる。車両1に他の車両などの衝突体9が衝突する前の初期位置では、第1屈曲部16aと第2屈曲部16cとは互いに接触している。車両1に衝突体9が衝突しFUP5の張出部13に引っ張り荷重が作用した場合は、折り返し部16bが略V字状に展開し、第1屈曲部16aと第2屈曲部16cとが車幅方向に離間して易伸長部15が伸長する。
【0023】
ステップ固定ブラケット8は、メインフレーム4の外側部に固定される一端8aと、乗員がキャブ2に昇降する際の足場として機能する昇降用ステップ19を支持する他端8bと、一端8aと他端8bとの間に形成されるエネルギ吸収体7を固定するエネルギ吸収体固定部8cとを一体的に有する。ステップ固定ブラケット8は、一端8aから他端8bへ向かって車幅方向外側へ延び、曲折して下方へ延び、再び曲折して車幅方向外側へ延びている。
【0024】
エネルギ吸収体7は、前後で開口する矩形筒状の本体20と前の開口を閉止する前板21と後ろの開口を閉止する後板22とから構成される。前板21の前面は、FUP5の吸収体押圧部14の後面に固定され、後板22の後面は、ステップ固定ブラケット8のエネルギ吸収体固定部8cに固定されている。エネルギ吸収体7がステップ固定ブラケット8を介して車体側に支持され後方への移動が規制されているので、エネルギ吸収体7の前方から衝撃荷重が入力すると、本体20が前後方向に潰れ変形を起こし、エネルギ吸収体7に入力する衝撃エネルギを効率的に吸収する。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、車両1の前面に衝突体9が衝突する前は、FUP5の張出部13に設けられた易伸長部15である折畳み部16は略T字状であり、折畳み部16の第1屈曲部16aと第2屈曲部16cとが接している。
【0026】
衝突体9が前方から車両1の端部側に衝突するオフセット衝突が発生し衝突体9がFUP5の吸収体押圧部14に当接すると、FUP5はブラケット固定部12の後方への移動が規制された状態で、吸収体押圧部14が後方へ移動しエネルギ吸収体7を押圧する。このとき、吸収体押圧部14及び張出部13には、車幅方向外側の斜め後方へ向かう引っ張り荷重が作用する。この引っ張り荷重が増大すると、図3に示すように、張出部に設けられた易伸長部15である折畳み部16の折り返し部16bが略V字状に展開し、第1屈曲部16aと第2屈曲部16cとが車幅方向に離間して易伸長部15が伸長し、吸収体押圧部14の後方への移動を許容する。易伸長部15の伸長は、引っ張り荷重に対抗する車幅方向内側の斜め前方に向かう反力の発生を抑制するので、衝突体9に作用する上記反力の前後方向前方に向かう分力とエネルギ吸収体7にせん断力として作用する上記反力の車幅方向内側に向かう分力とについても発生が抑制される。従って、衝突体9に作用する荷重の増大が抑制され、衝突体9が受ける衝撃を好適に緩和することができる。また、エネルギ吸収体7の屈曲に起因したエネルギ吸収量の低下を抑制することができる。
【0027】
また、折畳み部16は、FUP5と一体的に形成されているので、簡単な構造で部品点数も増加せず、コストの上昇を抑えることができる。
【0028】
また、エネルギ吸収体7は、ステップ19を固定するためのステップ固定ブラケット8を介してメインフレーム4に支持されるので、エネルギ吸収体7を車体側部に支持するための特別な機構を必要としない。従って、既設のステップ固定ブラケット等を利用することができ、コストの上昇を抑えることができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態を、図面に基づいて説明する。図4に示すように、アンダーランプロテクタ構造3は、メインフレーム4と、フロントアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)23と、ステーブラケット6と、エネルギ吸収体7と、ステップ固定用ブラケット8とを備えている。なお、左右のアンダーランプロテクタ構造3は、ほぼ同様の構成を有するため、以下では右側について説明し、左側の説明を省略する。また、メインフレーム4、ステーブラケット6、エネルギ吸収体7、ステップ固定用ブラケット8は第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
フロントアンダーランプロテクタ(以下、FUPと称する)23は、矩形筒状の第1プロテクタ24と、板状の第2プロテクタ25とによって分割形成され車幅方向へ延びている。第1プロテクタ24の上下方向及び前後方向の各内径は、第2プロテクタ25の板幅及び板厚よりもそれぞれ大きく、第1プロテクタ24の内側に第2プロテクタ25が挿入可能となるように設定されている。第1プロテクタ24はステーブラケット6に固定されるブラケット固定部26(被支持部)と、ブラケット固定部26よりも車幅方向外側の張出部27の一部を有している。第2プロテクタ25は張出部27の他部と張出部27よりも車幅方向外側の吸収体押圧部28とを有している。第2プロテクタ25の車幅方向の内端部25aは、第1プロテクタ24の車幅方向の外端部24aに挿入されて易伸長部29を形成している。第2プロテクタ25は、第2プロテクタ25の内端部25aの外面と第1プロテクタ24の外端部24aの内面とがスポット溶接等の溶着によって第1プロテクタに仮保持されている。仮保持のための溶着強度は、車両1に衝突体9が衝突して、吸収体押圧部28が後方に押圧されてFUP23の張出部27に所定の引っ張り荷重が作用したとき、仮保持が解除されるように設定される。仮保持が解除されると、第2プロテクタ25の内端部25aは、仮保持された位置を初期位置として車幅方向外側へスライド移動し、FUP23の吸収体押圧部28の後方への移動を許容する。
【0031】
なお、第1プロテクタ24の形状は、第2プロテクタ25の内端部25aをスライド移動可能に支持する形状であれば、上記矩形筒状に限定されず、断面略U字状や板状等の他の形状であってもよい。
【0032】
本実施形態では、図4に示すように、車両1の前面に衝突体9が衝突する前は、易伸長部29であるFUP23の第2プロテクタ25の内端部25aは、第1プロテクタ24の外端部24aの内側の初期位置に仮保持されている。
【0033】
衝突体9が前方から車両1の端部側に衝突するオフセット衝突が発生すると、FUP23はブラケット固定部26の後方への移動が規制された状態で、吸収体押圧部28が後方へ移動しエネルギ吸収体7を押圧する。このとき、吸収体押圧部28及び張出部27には、車幅方向外側の斜め後方へ向かう引っ張り荷重が作用する。この引っ張り荷重が増大すし、第1プロテクタ24の外端部24aと第2プロテクタ25の内端部25aとを溶着している溶着強度を超えると、図5に示すように、仮保持が解除され、易伸長部29である第2プロテクタ25の内端部25aは、初期位置から車幅方向外側に向かってスライド移動し、吸収体押圧部28の後方への移動を許容し、引っ張り荷重に対抗する反力の発生を抑制する。従って、衝突体9に作用する荷重の増大が抑制され、衝突体9が受ける衝撃を好適に緩和することができる。また、エネルギ吸収体7の屈曲に起因したエネルギ吸収量の低下を抑制することができる。
【0034】
また、第2プロテクタ25の内端部のスライド移動によって、易伸長部が伸長するため、第2プロテクタ25が伸長した際に、第2プロテクタ25に前後方向への凹凸状の形状変化が生じ難く、第2プロテクタ25の前面の平滑性が損なわれ難い。従って、第2プロテクタ25から衝突体9に入力する衝撃荷重の車幅方向のばらつきが抑制され、衝突体9が受ける衝撃力の局部的な増大を抑制することができる。
【0035】
なお、FUP5又は23の張出部13又は27に設けた易伸長部15又は29は、第1の実施形態又は第2の実施形態に限定されず、車両1に衝突体9が衝突し、FUPの張出部に引っ張り荷重が作用したときに伸長してFUPの吸収体押圧部の後方への移動を許容する構造であればよく、例えば、前後方向又は上下方向に複数の折返しを有する蛇腹構造が車幅方向に延びてFUPの張出部に形成されてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、エネルギ吸収体7の後板22の後面をステップ固定ブラケット8によって支持したが、エネルギ吸収体7の支持は、FUPの吸収体押圧部14又は28からの押圧に対してエネルギ吸収体7の後方への移動が規制される構造であればよく、例えば、車体フレーム側部に固定される支持ブラケット等を別途設けて、エネルギ吸収体7を支持してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、アンダーランプロテクタ構造3を、車両1の前方に配置されるフロントアンダーランプロテクタ5又は23に適用したが、図6に示すように、車両1の後方(車体フレームの後部下方)に配置されるリアアンダーランプロテクタ30に適用することも可能である。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、貨物車両などの大型車両のアンダーランプロテクタの構造として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
3 アンダーランプロテクタ構造
4 メインフレーム(車体フレーム)
5 フロントアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)
6 ステーブラケット
7 エネルギ吸収体
8 ステップ固定ブラケット(ステップ固定部材)
9 衝突体
12 ブラケット固定部(被支持部)
13 張出部
14 吸収体押圧部
15 易伸長部
16 折畳み部
19 昇降用ステップ
23 フロントアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)
24 第1プロテクタ
24a 第1プロテクタの車幅方向の外端部
25 第2プロテクタ
25a 第2プロテクタの車幅方向の内端部
26 ブラケット固定部 (被支持部)
27 張出部
28 吸収体押圧部
29 易伸長部
30 リアアンダーランプロテクタ(アンダーランプロテクタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向外端側の吸収体押圧部と、該吸収体押圧部よりも車幅方向内側の張出部と、該張出部よりも車幅方向内側の被支持部とを有し、車両の車体フレームの前方又は後方の端部下方で車幅方向に延びるアンダーランプロテクタと、
前記車体フレームに固定され、前記アンダーランプロテクタの前記被支持部を支持するステーブラケットと、
前記アンダーランプロテクタの前記吸収体押圧部の後方又は前方で前記車体フレームに支持され、前記車両の衝突によって後方又は前方へ移動する前記吸収体押圧部に押圧されて衝突エネルギを吸収するエネルギ吸収体と、を備え
前記アンダーランプロテクタの前記張出部は、該張出部に引っ張り荷重が作用したときに伸長して前記吸収体押圧部の後方又は前方への移動を許容する易伸長部を有する
ことを特徴とするアンダーランプロテクタ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のアンダーランプロテクタ構造であって、
前記アンダーランプロテクタの前記易伸長部は、前記張出部の一部を車幅方向と交叉する方向に折り返すことによって形成され、前記張出部に引っ張り荷重が作用したときに展開する折り畳み部である
ことを特徴とするアンダーランプロテクタ構造。
【請求項3】
請求項1に記載のアンダーランプロテクタ構造であって、
前記アンダーランプロテクタは、前記被支持部を有する車幅方向内側の第1プロテクタと、前記吸収体押圧部を有する車幅方向外側の第2プロテクタとに分割形成され、
前記第2プロテクタの車幅方向の内端部は、前記第1プロテクタの車幅方向の外端部と重なる初期位置で前記第1プロテクタに仮保持されるとともに、前記第1プロテクタによる仮保持が解除された状態で車幅方向外側へスライド移動可能に前記第1プロテクタに支持され、
前記アンダーランプロテクタの前記易伸長部は、前記張出部に引っ張り荷重が作用して前記仮保持が解除されたときに前記第1プロテクタの外端部から車幅方向外側に向かってスライド移動する前記第2プロテクタの内端部である
ことを特徴とするアンダーランプロテクタ構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載のアンダーランプロテクタ構造であって、
前記アンダーランプロテクタは、前記車体の前方の端部下方で車幅方向に延びるフロントアンダーランプロテクタであり、
前記車体フレームの側部に支持され、前記車両のキャブへ昇降する乗員の足場となる昇降用ステップを固定するステップ固定部材を備え、
前記ステップ固定部材は、前記エネルギ吸収体を後方から支持する
ことを特徴とするアンダーランプロテクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254738(P2012−254738A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129440(P2011−129440)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)