説明

アンチエイジング活性剤をスクリーニングするために可溶形のデスモグレインIタンパク質を用いる方法

【課題】デスモグレイン1に少なくとも部分的に由来する、複合体化した又は複合退化していない可溶性ペプチド形を、皮膚老化の1以上の徴候を示す表皮に関する、可能性のある活性剤の有効性を特徴付けるために用いる方法を提供する。
【解決手段】1以上の複合化したまたは複合化していない可溶性ペプチド形のデスモグレイン1を、表皮に関する活性剤および/または処置、特にはアンチエイジング活性剤および/または処置、の有効性を評価する為のマーカーとして用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスモグレインIに少なくとも部分的に由来する、複合体化したまたは複合体化していない可溶性ペプチド形を、皮膚老化の1以上の兆候を示す表皮に関する、可能性のある活性剤の有効性を特徴付ける為に用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮は、その細胞が互いに結合され及び互いに連結され並びに基底膜上に横たわる組織である。それらは、例えば皮膚の表面で、外部皮膜を若しくは表皮を形成し、又は、粘膜の表面で、内部皮膜を形成する。それらは腺を形成することもできる。
【0003】
より特には、これらの上皮は、細胞増殖、細胞遊走及び細胞分化の全ての段階で作用し、及びまた種々の細胞外マトリックス成分の合成の全ての段階でも作用する細胞内及び細胞外シグナルの細かく制御されたセットの実行から、そのホメオスタシスがもたらされる構造物である。これらのシグナルは特に、ケラチノサイトにより産生される因子の作用からもたらされうる。
【0004】
上皮の正確な生理学的機能を維持することは、特に、上皮の最終的な分化及び/又はプロテオグリカン合成に関係する。
【0005】
より特には表皮に関して、上皮は、特には皮膚幹細胞を含み且つ表皮の胚芽層を構成するケラチノサイトの基底層、該基底層上に配置される多面細胞(polyhedral cells)のいくつかの層から構成される「有棘」層、明確な細胞質内封入体、ケラトヒアリン顆粒、を含む扁平細胞と呼ばれる1〜3の層を含む「顆粒」層、及び、最後に、角質細胞と呼ばれる、ケラチノサイトの分化の最終段階にあるケラチノサイトから構成される角質層(又はstratum corneum)と呼ばれる上部の細胞のセットに慣習的に分類される。
【0006】
角質層、生物と環境との間のバリアの機能を果たす皮膚の最外側の部分、及び毛幹、頭髪を構成する毛包の出現部分、は両方とも、ケラチノサイト分化プロセスの結末を表す。表皮分化は、基底層からのケラチノサイトが、角質細胞(これは完全に角質化した死細胞である)の形成を結果するように分化及び移動する成熟プロセスに従う。この分化は、一定に維持される表皮の厚さを結果し及びすなわち表皮のホメオスタシスを確保するであろう完全に調和した現象の結果である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの皮膚の疾患及び病理学的状態は、表皮のホメオスタシスの機能障害からもたらされうる。
【0008】
老いた皮膚の場合、この機能障害は一般に、しわ(マイクロレリーフ及び深いしわ)の出現、弾力性の喪失、荒れた感じ及び乾燥により表される。組織学的観点から、真皮−表皮接合の平板化並びに真皮の厚さ及び表皮の厚さにおける減少が観察される。コラーゲン及びグリコサミノグリカンの含有量が減少する。皮膚のバリア機能が損なわれる。これらの現象全てが、太陽への長期にわたる曝露により増加される。
【0009】
同様に、この機能障害は、閉経期の間の女性において悪化されうる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今日では、これらの機能障害は、角質層において発現される或るタンパク質の発現及び/又は生物学的活性の種々の調節に特に関連しうることが知られている。これは特に、デスモグレインIの場合にあてはまる。
【0011】
デスモグレインI(DGIとしても知られている)は、そのプレプロタンパク質形において、1049のアミノ酸を有し且つ、それがグリコシル化されているかいないかによって、約114kDa〜150kDaの分子量を有する膜貫通型糖タンパク質である。位置36、110及び180でのアスパラギン残基のグリコシル化部位に加えて、このタンパク質の配列は、カルシウム結合性部位も含む。
【0012】
このタンパク質はカドヘリンに関係し、そして、デスモグレインII及びIIIも含むタンパク質ファミリーに属する。DGIは、デスモソーム中にだけ存在し、これは主要な構造要素の一つである。
【0013】
文献米国特許出願公開第2004/0142335号明細書は、トランスクリプトーム分析により、年配の個体の皮膚中のデスモグレインIタンパク質をコードするmRNAの発現の、若い個体のそれと比べての増加を報告する。この文献は、いずれの可溶性ペプチド形のデスモグレインIにも言及しない。
【0014】
より最近、本発明者らは、それらの一部について、表皮の経時的老化の間の、角質層におけるデスモグレインIの発現の有意な増加及びそれ故に後者の蓄積に気付いた。それ故に、角質層におけるデスモグレインIの発現水準は、特には老化の点で、皮膚の生理学的状態を特徴付けする為の有用な指標を構成する。
【0015】
本発明は、その一部について、剥離タイプ処置を受けたヒト角質層における、デスモグレインIと異なるが明らかにそれに由来する可溶性ペプチド形の、本発明者らによる特徴付けに由来する。本発明者らにより特徴付けされた該ペプチド形は、デスモグレインIのタンパク質分解から少なくとも部分的に得られると考えられうる。
【0016】
特に、本発明の可溶性ペプチド形は、デスモグレインIの完全配列、すなわち配列ID NO 2、と異なる。
【0017】
以下から明らかなとおり、これらの複合体化された又は複合体化されていない、このタンパク質の可溶性ペプチド形は、本発明者らにより、本明細書以下の特定のELISAアッセイ技術、特には実施例1に記載されたELISAアッセイ技術、の開発のおかげで特徴付けされた。
【0018】
その結果、これらの可溶形は、アンチエイジング活性剤についてのスクリーニングの為の特に有利な手段又は、皮膚老化の間に観察される、特には角質層中のデスモグレインIの蓄積に関する作用、おそらくは分解タイプの作用、による皮膚老化を防ぎ及び/又は処置する為の処置の有効性を特徴付けさえする為の特に有利な手段であると分かる。
【0019】
該2つの場合、考慮下の活性剤又は処置の有効性は、本発明に従う考慮下の可溶形の少なくとも1つ又はいくつかさえの放出における増加により確認される。
【0020】
すなわち、その局面の一つに従い、本発明は、配列ID NO 1の全部又は一部により表される核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその類似体に少なくとも部分的に由来する少なくとも1つの複合体化した又は複合体化していない可溶性ペプチド形を、皮膚老化を防ぎ及び/又は処置することにおいて役立つ活性剤をスクリーニングする為の手段として用いる方法に関する。
【0021】
好ましい実施態様に従い、本発明にとって適当な可溶性ペプチド形は、配列ID NO 2により表されない。
【0022】
これらの可溶性ペプチド形の量の増加は、アンチエイジング処置の有効性の指標である。
【0023】
特に、該ペプチド形の存在の検出又は含有量の増加の検出は、皮膚老化を防ぎ及び/又は処置することにおいて役立つ特性を有する活性剤を示す。
【0024】
本発明は、活性剤、特にはアンチエイジング活性剤、をスクリーニングする方法であって、
a)本発明に従う少なくとも1つの可溶形を放出することができる少なくとも1つの細胞タイプを、該可溶性ぺプチド形の放出にとって適当な条件下で、少なくとも1つの試験アンチエイジング活性剤との接触に付すること、
b)該可溶性ペプチド形の含有量を決定すること、及び
c)工程b)において決定された該含有量を、化学的又は生物学的試験化合物の不在下において決定された該可溶形の含有量と比較すること
からなる工程を少なくとも含む上記方法にも関する。
【0025】
有利に、可溶形の含有量の増加が観察される活性剤を選択する工程が、工程c)の終わりで実施されてもよい。
【0026】
その局面の他に従い、本発明は、個体において、経時的老化に関連する皮膚老化の兆候、例えばしわ及び細かいしわなど、を防ぎ及び/又は処置することが意図された化粧的又は治療的処置の有効性を特徴付ける為の非侵襲的方法、特には非侵襲的な化粧方法であって、本発明に従う少なくとも1つの可溶性ペプチド形デスモグレインIの定性的又は定量的な特徴付けを少なくとも含む上記方法にも向けられる。
【0027】
特に、本発明の方法に従い、該ペプチド形の存在又は該ペプチド形の含有量の増加の検出又は特徴付けは、該活性剤又は該処置の有効性を反映する。
【0028】
1つの実施態様に従い、上記で定義された方法の1つは、少なくとも1つの可溶性ペプチド形デスモグレインIの特徴付けの工程の終わりで、このように評価された該個体に、該可溶形について得られた情報に関して確立され又は選択されたケア組成物、特には化粧的ケア組成物、を施与することからなる少なくとも1つの追加工程も含みうる。特に、該追加工程は、該特徴付け工程に続きうる。
【0029】
1つの実施態様に従い、該特徴付け工程の終わりで得られうる情報の種類にとってそれぞれ適当であるような組成物は、広い範囲の組成物から選ばれうる。
【発明の効果】
【0030】
すなわち、本発明の利点は、第一に、上皮、及び特には皮膚の表皮、の生理学的状態を特徴付ける為の、並びに第二に、それに従って該上皮又は表皮にとって適当な処置を調節する為の、簡単であり且つ迅速である方法を提案することである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】デスモグレインIの分解に対して作用する活性剤の監視における、本発明に従う高感度ELISAアッセイの有効性を示すグラフである。
【図2】本発明に従う可溶性ペプチド形の量に対する、10%のビフィディオバイオティック(bifidiobiotic)(CLR複合体)及び0.002%のフィトスフィンゴシン−SLCから構成されるセラム(serum)(処置「G」)の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
表現「皮膚老化の兆候」は、経時的老化に起因する皮膚の外観の全ての変更、例えばしわ及び細かいしわ、しわだらけの皮膚、皮膚の弾力性及び/又は緊張度の欠如、真皮の菲薄化及び/又はコラーゲン繊維の分解、それによりたるんでおり及びしわのある皮膚の出現をもたらす、など、を意味することが意図される。
【0033】
より特には、上記で定義された非侵襲的方法は、個体における皮膚老化の兆候を防ぎ及び/又は処置することができる処置の有効性を特徴付けることを狙いとし、
i.該個体を代表する少なくとも第1の皮膚表面試料を用意すること、
ii.該試料において、特にはELISAアッセイ技術により、特には本明細書以下の実施例1において記載されたとおりのELISAアッセイ技術により、本発明に従う少なくとも1つの可溶性ペプチド形を定量すること、
iii.該個体を代表する第2の皮膚表面試料に対して工程i.及びii.を繰り返すこと、及び
iv.工程ii.及びiii.の終わりで得られた結果を、特にはそれから該処置の少なくとも1つの効果に関する情報を推定する為に、比較すること、ここで該第1及び第2の皮膚表面試料は異なる処置段階に対応する、
からなる工程を少なくとも含む。
【0034】
工程ii.におけるデータの参照値又は部分は、該処置の施与の前に、該処置の対象である個体を代表する上皮、特には表皮、から得られたデータの部分でありうる。
【0035】
1つの好ましい実施態様に従い、該第1の試料は、処置前の状態を代表し、そして、該第2は、処置の過程の間の状態又は処置後の状態を代表する。
【0036】
工程iv.における、該可溶性ペプチド形の存在又は含有量の増加の検出は、該処置の有効性を反映する。
【0037】
さらに他の実施態様に従い、本発明の方法はさらに、該個体における、工程iv.の終わりで得られた該情報に関して確立された又は選択された化粧的ケア組成物の施与により該処置を調節することからなる工程を含みうる。
【0038】
さらに他の実施態様に従い、本発明は、本発明に従う少なくとも1つの可溶性ペプチド形を、デスモグレインIに関して作用することができる、特にはそれを分解することができる、及び結果としてデスモグレインIの可溶形の放出を誘発し及び促進することができる生物学的又は化学的化合物をスクリーニングする為の手段として用いる方法にも関する。
【0039】
該可溶形の特徴付けは、上皮の状態の診断を確立する為に有用であるともわかりうる。
【0040】
すなわち、本発明は、本発明に従う可溶性ペプチド形を、上皮の状態、特には上皮の経時的老化の状態、のin vitro又はex vivoの特徴付けの為の手段として、上皮の経時的老化の状態を示す該ペプチド形の存在の検出又は含有量の減少の検出の為の手段として、用いる方法に関する。
【0041】
その局面の他に従い、本発明は、表皮の経時的状態を、特にはin vitroで又はex vivoで、特徴付ける為の非侵襲的方法、特には非侵襲的化粧方法であって、本発明に従う可溶性ペプチド形デスモグレインIの定性的又は定量的な特徴付けを少なくとも含む上記方法に関する。
【0042】
上皮の状態の特徴付けのこの方法は、
a)該上皮の表面試料における、本発明に従う少なくとも1つの可溶性ペプチド形の含有量を、特にはELISAアッセイ技術により、決定すること、及び
b)工程a)で決定された該含有量を参照値と比較すること
からなる工程を少なくとも含む。
【0043】
1つの変形の実施に従い、得られたデータ又は値の部分は、例えば、該特徴付けの対象であるものと異なり且つその状態が既知である少なくとも1つの上皮、特には表皮から得られたデータ又は値の参照部分と比較して評価されうる。
【0044】
本発明の方法は、in vitro、ex vivo又はin vivoで実施されうる。
【0045】
以下に続く記載から明らかなように、本発明に従う方法は、その実施が非侵襲的手順を要求しない限りにおいて特に有利である。
【0046】
これは、角質層におけるこれらの新規バイオマーカーの本発明者らによる局在化が、試料を局所的に簡単に採ることによる該マーカーの発現の定量的な又は定性的な特徴付けを実施することを可能にするからである。
【0047】
有利に、それは、剥ぎ取りによって簡単に採られた、考慮下の個体の角質層の試料ついて実施されうる。該試料採取方法は例えば、考慮下の上皮、例えば表皮など、に粘着テープの一部を施与することから成る剥ぎ取り技術でありうる。この粘着テープをはがしたときに、該上皮の部分、例えば表皮部分、が除去される。タンパク質抽出後、続いて、該部分は本発明において考慮されるようなELISAアッセイにより分析される。
【0048】
さらに他の局面に従い、本発明は、複数層化細胞モデル(a pluristratified cell model)、特には再構築された皮膚のモデル、を調製し及び/又は改善する為に、本発明に従う可溶性ペプチド形の有効量を用いる方法に関する。
【0049】
本発明の目的の為に、表現「有効量」は、期待される効果を得る為に必要な最小量を意味することが意図される。
【0050】
さらに他の局面に従い、本発明は、分離された再構築された皮膚を調製する方法であって、本発明に従う少なくとも1つの可溶性ペプチド形を、分離された再構築された皮膚を生成することができる細胞、及び特にはケラチノサイト、との接触に付することからなる工程を少なくとも含む上記方法に関する。
【0051】
「可溶形」のデスモグレインIの定義
【0052】
本発明の目的の為に、語「可溶(又は可溶性)」は、本発明に従う考慮下の複合体化した又は複合体化していないペプチド形の能力であって、カオトロピック剤またはイオン性界面活性剤などのタンパク質変性物質を有さない水または水性媒体の中に(例えば、そのような剤の存在下においてだけ抽出されることができる未変性の(native)デスモグレインとは対照的に)可溶化する上記能力を説明することが意図される。
【0053】
本発明の目的の為に、語「複合化」は、本発明に従う考慮下のペプチド形の1つと、デスモグレインIと異なるタンパク質若しくはこのタンパク質の断片との、又は他の可溶形のデスモグレインIタンパク質若しくはその誘導体との、可溶性の結合物をいう。
【0054】
本発明の目的の為に、語「デスモグレインIタンパク質の誘導体」は、本明細書以下に定義されるように、その断片又は類似体を意味する。
【0055】
これらの可溶性の複合化した形は、デスモグレインIタンパク質又はその断片と、第2のタンパク質(標的タンパク質とも呼ばれる)との会合からもたらされる産物でありうる。
【0056】
デスモグレインI及び/又はその断片と相互作用することができるこれらのタンパク質の例として、デスモコリン2a(Dsc2)、プラコフィリン1、2及び3、プラコグロビン、カリクレイン5、成長ホルモン1(GH1)、SSSCA1(27kD セントロメアの自己抗原)、RuvB様1、C3orf10タンパク質並びにVRK3(ワクシニア関連キナーゼ3)が特に言及されうる。
【0057】
前に特定されたとおり、本発明に従う該可溶形は配列ID No.1の全部又は一部により表される核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその類似体のタンパク質分解に少なくとも部分的に由来する。
【0058】
本発明の目的の為に、表現「核酸配列の断片」は、本発明に従う可溶形が由来するポリペプチド又はその類似体を部分的にコードする核酸配列、及び特には配列ID No.1により表される核酸配列若しくはその類似体を意味することが意図される。
【0059】
表現「核酸配列の類似体」は、任意的に核酸コードの縮重からもたらされ、且つ該核酸配列により部分的にコードされる配列と同一のまたは類似の配列を有する可溶形を部分的にコードする任意の核酸配列を意味することが意図される。
【0060】
該核酸配列は、全てのあり得る源、すなわち動物から、特には哺乳類から、またはさらにより特にはヒトから、または植物から、または微生物(とりわけウィルス、ファージ、バクテリア)から、あるいは代わりに菌類から、それらが該源の有機体中に天然に存在してよくまたは存在しなくてもよいという事実を早まって判断することなく、得られてよい。
【0061】
他の実施態様に従い、本発明に従う可溶形は、配列ID No.2に表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその類似体のタンパク質分解に少なくとも部分的に由来する。
【0062】
本発明の目的の為に、語「デスモグレインI」は、一般に、他に示されない限り、その見かけ分子量またはその等電点を変更することができる、位置36、110又は180のアスパラギン残基についてのN−アセチルグリコシル化タイプの翻訳後修飾を受けた又は受けていないかもしれないタンパク質の配列(配列ID No.2)を意味することが意図される。
【0063】
さらに、ポリペプチドの一次配列、すなわち一続きのアミノ酸、は、プロテアーゼ酵素、たとえばトリプシンなど、により特異的に認識される部位(該酵素は、これらの部位の認識が有効になると、プロテオリシスによるポリペプチドの開裂を誘発するであろう)を決定することが知られている。このプロテオリシスは、種々のペプチド又はタンパク質分解断片を結果し、これは、それらが可溶形である場合に、本発明に従う考慮下のデスモグレインIの可溶性ペプチド形を代表するとわかる。
【0064】
すなわち、1つの特定の実施態様に従い、本発明に従う可溶形が得られるポリペプチドは、配列ID No.3、配列ID No.4、配列ID No.5、配列ID No.6、配列ID No.7、配列ID No.8、配列ID No.9、配列ID No.10、配列ID No.11、配列ID No.12、配列ID No.13、配列ID No.14、配列ID No.15、配列ID No.16、配列ID No.17、配列ID No.18、配列ID No.19、配列ID No.20、配列ID No.21、配列ID No.22、配列ID No.23、配列ID No.24、配列ID No.25、配列ID No.26、配列ID No.27、配列ID No.28、配列ID No.29、配列ID No.30、配列ID No.31、配列ID No.32、配列ID No.33、配列ID No.34、配列ID No.35、配列ID No.36、配列ID No.37、配列ID No.38、配列ID No.39、配列ID No.40、配列ID No.41、配列ID No.42、配列ID No.43、配列ID No.44、配列ID No.45、配列ID No.46、配列ID No.47、配列ID No.48、配列ID No.49、配列ID No.50、配列ID No.51、配列ID No.52、配列ID No.53、配列ID No.54、配列ID No.55、配列ID No.56、配列ID No.57、配列ID No.58、配列ID No.59、配列ID No.60、配列ID No.61、配列ID No.62、配列ID No.63、配列ID No.64、配列ID No.65、配列ID No.66、配列ID No.67、配列ID No.68、配列ID No.69、配列ID No.70、配列ID No.71、配列ID No.72、配列ID No.73、配列ID No.74、配列ID No.75、配列ID No.76、配列ID No.77、配列ID No.78、配列ID No.79、配列ID No.80、配列ID No.81、配列ID No.82、配列ID No.83、配列ID No.84及び配列ID No.85、ならびにそれらの混合物から選ばれるアミノ酸配列を有する。
【0065】
語「ポリペプチドの類似体」は、配列相同性、特には該ポリペプチドの特徴的配列の1つに関する配列相同性及び、同じ性質の生物学的活性も示す任意のポリペプチドを意味することが意図される。この類似体はペプチド模倣剤でありうる。
【0066】
該相同性は、少なくとも85%、例えば少なくとも90%、および例えば少なくとも95%でありうる。該相同性は、視覚による比較によって、または、当技術分野において一般的に用いられる任意のコンピューターツール、例えばwww.ncbi.nlm.nih.govで利用可能でありかつデフォルトパラメーターと一緒に用いられるBLASTプログラムなど、の手段によって決定されうる。
【0067】
該配列相同性は、本発明に従うポリペプチドの特徴的配列における、1以上(1またはそれより多い)のアミノ酸の欠失から、または1以上のアミノ酸の挿入から、または1以上のアミノ酸の置換から生じる、本発明に従うペプチドの配列における変異または変化に起因する改変からもたらされうる。
【0068】
本発明の目的の為に、語「断片」は、デスモグレインIの少なくとも4つの、少なくとも6つの、特には少なくとも8つの、およびより特には少なくとも12の連続したアミノ酸を含み、かつ実質的に類似の生物学的活性を有する任意のペプチド部分を意味することが意図される。一般に、該ポリペプチド類似体は、天然のアミノ酸配列についての同類置換(conservative substitutions)を含みうる。
【0069】
これらの改変のいくつかが一緒にされうる。
【0070】
本発明において考慮されうる変異の例として、非徹底的に、同様のハイドロパシー指標を有するアミノ酸残基による1以上のアミノ酸残基の置換、しかしながらデスモグレインIの天然の生物学的特性に実質的に影響を及ぼすことがない、が言及されうる。
【0071】
該ハイドロパシー指標は、アミノ酸の疎水性およびそれらの電荷に従い、それらに割り当てられる指標である(Kyte et al. (1982), J. Mol. Biol., 157: 105)。
【0072】
本発明に含まれる該可溶形は、1以上の翻訳後修飾を受けたポリペプチドに由来しうる。
【0073】
語「翻訳後修飾」は、ペプチドまたはタンパク質が、細胞内におけるその合成の最後で受けることができるすべての修飾、例えば、1以上のホスホリル化、1以上のチオール化(thiolation)、1以上のアセチル化、1以上のグリコシル化、1以上の脂質付加(lipidation)、例えばファルネシル化又はパルミトイル化など、構造的再配列、例えばジスルフィド架橋の形成など、および/またはペプチド配列内の開裂など、を包含することが意図される。
【0074】
さらに、該類似体は、該天然のポリペプチドと同じ生物学的活性を実質的に有する。
【0075】
1つの実施態様に従い、本発明の実施にとって適当な可溶形は、デスモグレインIの天然形(native form)の酵素的若しくは化学的な溶解後に得られる、又は化学的若しくは生物学的合成により得られる、又はこれらの可溶形をおよびまたその種々の翻訳後の形を天然に発現する生物学的組織、例えば皮膚、からの抽出により得られる、天然の又は合成のポリペプチドでもありうる。
【0076】
1つの実施態様に従い、本発明に従う複合化した可溶形は、デスモグレインI若しくはその断片と、他のデスモグレインIタンパク質若しくはその断片又は標的タンパク質のいずれかとの会合に由来しうる。
【0077】
標的タンパク質は、デスモコリン2a(Dsc2)、プラコフィリン1、2及び3、プラコグロビン、カリクレイン5、成長ホルモン1(GH1)、SSSCA1(27kD セントロメアの自己抗原)、RuvB様1、C3orf10タンパク質並びにVRK3(ワクシニア関連キナーゼ3)から特には選ばれうる。
【0078】
当技術分野の当業者は、組み換えDNAに基づく方法、例えばマニュアル「Molecular Cloning - A Laboratory Manual" (2nd edition), Sambrook et al., 1989, Vol. I-III, Coldspring Harbor Laboratory, Coldspring Harbor Press, NY, (Sambrook)」に記載されたそれらなど、により本発明に従う可溶形を入手しうる。
【0079】
他の実施態様に従い、本発明の実施にとって適当な可溶形は、上記で同定されたそれらとは別の他のポリペプチドと、親水性若しくは疎水性ターゲティング剤と、バイオコンバージョン前駆体と、又は発光性の、放射性の若しくは測色的な標識剤と結合した形にもありうる。
【0080】
非限定な様式で、本発明に従う可溶形と結合されうる化合物の例として、蛍光タンパク質、例えば「緑色蛍光タンパク質」など、蛍光性化学的化合物、例えばローダミン、フルオレセイン、又はTexas Red(商標)など、リン光発光性化合物、放射性元素、例えばH、14C、35S、121I又は125Iなど、又は測色的標識剤、例えばガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ又はアルカリホスファターゼの作用に感受性の発色性基質など、が言及されうる。
【0081】
本発明に従う可溶形と結合されうる化合物の性質によって、当技術分野の当業者に既知の、特には反応性の化学的官能基による、化学的方法により、又は分子生物学的方法により、該結合が実施されうる。
【0082】
ポリペプチドを検出する為の方法として、ウェスタンブロッティング、スロットブロッティング(slot blotting)、ドットブロッティング、シングルプレックスタイプ又はマルチプレックスタイプのELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)方法、プロテオミクス又はグライコミクスの方法、銀に基づく染料による、クマシーブルーによる若しくはSYPROによるポリアクリルアミドゲル中のポリペプチドの染色、免疫蛍光、UV吸収、慣用の免疫組織化学的方法、電子顕微鏡若しくは共焦点顕微鏡、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、TR−FRET(時間分解FRET)方法、FLIM(蛍光寿命イメージング顕微鏡)方法、FSPIM(蛍光スペクトルイメージング顕微鏡)方法、FRAP(光漂白後蛍光回復)方法、リポーター遺伝子方法、AFM(原子間力顕微鏡)方法、表面プラズモン共鳴方法、, マイクロカロリメトリー方法、フローサイトメトリー方法、バイオセンサー方法、ラジオイムノアッセイ(RIA)方法、等電点電気泳動方法、及び酵素的アッセイ、ペプチドチップ、糖チップ、抗体チップを用いる方法、マススペクトロメトリー方法、及びSELDI−TOFスペクトロメトリー方法(Ciphergen)が言及されうる。
【0083】
上記から明らかになるように、本発明に従う考慮下の可溶形は、ELISA方法により、より特には本明細書以下の実施例1に記載されるELISA方法により、有利に特徴付けられる。
【0084】
アンチエイジング活性剤についてのスクリーニングの目的の為に及び/又は皮膚老化の兆候に対する処置の有効性を特徴付けする為に、本発明に従う可溶形を用いる方法
【0085】
上記で特定されたとおり、その局面の1つに従い、本発明は、アンチエイジング活性剤の有効性又は化粧的若しくは治療的な処置の有効性を、本発明に従う可溶形の定性的若しくは定量的な分析により、特にはin vitroで若しくはex vivoの様式で、特徴付ける為の非侵襲的方法に関する。
【0086】
これらの方法は、その実施が、そのような特徴付けを実施する為に外科的技術に義務的に頼ることを要求しない限りにおいて、特に有利である。
【0087】
本明細書以下に記載される、本発明に従う方法は、個体から採られた上皮の、特には表皮の試料、例えば分離された試料など、について実施されうる。
【0088】
本発明に従う方法はまた、上皮細胞モデル、特には表皮のモデル、から又は再構築された分離された皮膚から採られた上皮、特には表皮の試料に対して、それらの状態を決定する為に実施されうる。
【0089】
該表皮の抽出物はすなわち、簡単な剥ぎ取りにより得られることができ、そして、本明細書以下の実施例1に記載されるようなELISA方法によって直接的に分析されることができる。
【0090】
該剥ぎ取り技術は、該表皮の表面に粘着性表面、例えば3MからのBlenderm(商標)、D'squam(CuDERMからの市販の粘着物)、又はシアノアクリレート接着剤など、を施与することからなる。これらの剥ぎ取りのおかげで、付着した角質細胞及びそれらの細胞間の空間(intercellular space)の内容物が、試料採取されることができ、そしてその後、タンパク質含有量にアクセスすることを可能とする抽出に付されることができる。
【0091】
該方法にとって適当な試料を採ることはまた、より直接的には、例えば流体回路と組み合わせられた(仏国特許出願公開第2 667 778号明細書に記載されたような)羽根タービンタイプ又はスパイラルセル(spiral cell)タイプのアクセサリーにより皮膚表面を「洗浄」することにより、又は、簡単に、皮膚の表面でのバッファーのしずくの添加/除去により、実施されてもよい。
【0092】
本発明の実施にとって適当な他の試料採取方法の指示として、二枚刃システムにより又は薄片生検により角質層の上部を削り取ることに基づく方法が言及されうる。この技術は、次に、ミネラル、アミノ酸又は脂質の含有量を決定する為に種々の技術によって直接的に分析されることができるうろこ状構造物(squamae)を収集することを可能にする。
【0093】
該試料採取の終わりで、該試料は、本明細書以下の実施例1において考慮されるELISA方法によって特徴付けられる。
【0094】
この方法は特に、本発明に従う考慮下の可溶形の検出にとって適当な抗体の使用に基づく。
【0095】
表皮の状態を評価する為の手段として使用されることができる抗体は、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)、に記載されたような、当技術分野の当業者に既知の任意の方法により得られうる。有利には、用いられる該抗体は、組み換え抗体、例えば会社Antibodies−by−design(AbD)により開発されたものなど、でありうる。
【0096】
本明細書以下の実施例1に記載されるように、デスモグレインIの可溶形を検出する方法は特に、2つの抗体、すなわちHuCAL technologyにより開発された捕捉抗体(AbD クローン AbyD03984)及びMSD指示に従う「スルホ−タグ(sulpho−tag)」により標識された検出抗体(モノクローナル抗体、クローン129204、R&Dsystems)、の使用を要求する。
【0097】
生物学的又は化学的化合物のスクリーニング
【0098】
本発明は、デスモグレインIに対して作用することができ、そして結果的に、本発明に従う可溶形の放出に影響することができる、生物学的若しくは化学的化合物、又はアンチエイジング活性剤さえ、又は物理化学的因子をスクリーニングする方法であって、
a)本発明に従う少なくとも1つの可溶性ペプチド形を放出することができる少なくとも1つの細胞タイプを、該可溶性ペプチド形の放出にとって適当な条件下で、少なくとも1つの化学的若しくは生物学的試験化合物との接触に付すること、
b)該可溶性ペプチド形の含有量を決定すること、及び
c)工程b)において決定された該含有量を、化学的若しくは生物学的試験化合物の不在下において決定された該可溶形の含有量と比較すること
からなる工程を少なくとも含む上記方法に関する。
【0099】
有利に、可溶形の含有量の増加が観察される活性剤を選択する工程が、工程c)の終わりで実施されてもよい。
【0100】
工程c)において実施された比較は、デスモグレインIを変える、及びそれ故に、本発明に従う可溶形の放出に影響する該試験された化合物の特性に関する情報を推定することを可能にしうる。
【0101】
この点において、デスモグレインI(角質層中に齢とともに蓄積する)に関する有効性を示す化合物は、本発明に従うデスモグレインIの可溶形の放出を誘発する。
【0102】
該可溶性ペプチド形の存在の検出又は含有量の増加の検出は、デスモグレインIに対して作用することができる化学的又は生物学的化合物を示す。
【0103】
より特には、個体における皮膚老化の兆候を防ぎ及び/又は処置することができる処置の有効性を特徴付ける為に役立つ該方法は、
i.該個体を代表する少なくとも第1の皮膚表面試料を用意すること、
ii.該試料における、本発明における考慮下の少なくとも1つの可溶形を、特にはELISAアッセイ技術により、定量すること、
iii.該個体を代表する第2の皮膚表面試料について、工程i.及びii.を繰り返すこと、及び
iv.工程ii.及びiii.の終わりで得られた結果を、特にはそれから該処置の少なくとも1つの効果に関する情報を推定する為に、比較すること、ここで該第1及び第2の皮膚表面試料は異なる処置段階に対応する、
からなる工程を少なくとも含みうる。
【0104】
該生物学的若しくは化学的化合物、又はアンチエイジング活性剤さえ、又は試験されるべき物理化学的因子の使用の前に参照値測定が実施される場合、本発明に従う方法はまた、必要に応じて、該化合物の潜在的有効性を評価することを可能にもしうる。
【0105】
本発明に従う可溶形の放出は、該化合物の存在により影響されなくてよく、又は他方で、刺激されなくてもよい。
【0106】
刺激効果が観察される場合、該試験された化合物は、例えばアンチエイジング活性剤として用いられることができる。
【0107】
本発明に従う方法は、分離された細胞試料について実施されうる。
【0108】
本発明に従う可溶形の含有量の決定は、本明細書以下の実施例1に記載されたような特定のELISA方法により実施される。
【0109】
本発明はまた、複数層化細胞モデル(pluristratified cell model)、特には表皮の又は粘膜のタイプの複数層化細胞モデル、特には再構築された皮膚モデルを調製し及び/又は改善する為に、有効量の本発明に従う可溶形を用いる方法にも関する。
【0110】
本発明の目的の為に、語「再構築された皮膚モデル」は、種々の細胞タイプ、例えば特には皮膚の天然の構成要素、例えばケラチノサイト、フィブロブラスト、ランゲルハンス細胞及びメラノサイトなど、が一緒にされたモデルを意味することが意図される。
【0111】
該フィブロブラスト細胞は、放射線照射されてよく又はされなくてもよい。
【0112】
そのようなモデル及びその調製は、当技術分野の当業者に知られている。
【0113】
すなわち、本発明は、分離された再構築された皮膚を調製する方法であって、本発明に従う少なくとも1つの可溶形を、分離された再構築された皮膚を生成することができる細胞、及び特にはケラチノサイトとの接触に付することからなる工程を少なくとも含む上記方法にも向けられる。
【0114】
本発明の目的の為に、その局面の他に従い、上記で記載されたとおりのデスモグレインIの可溶形は、化粧的又は治療的組成物中において用いられうる。
【0115】
本発明に従う考慮下の全ての化粧的又は治療的組成物が生理学的に許容できる媒体を用いることが理解される。
【0116】
本発明の目的の為に、語「生理学的に許容できる媒体」は、上皮又はケラチン物質、例えば皮膚、頭皮、唇、粘膜、及びケラチン繊維、例えば髪、爪、及び体毛など、への組成物の施与、又は必要に応じて経口的又は非経口的な組成物の施与にとって適当である媒体を意味することが意図される。
【0117】
1つの特定の実施態様に従い、本発明は、化粧的又は治療的組成物の形にありうる。
【0118】
本発明に従う組成物は、該可溶形に加えて、少なくとも1つの化粧的及び/又は治療的活性剤を含みうる。
【0119】
本発明の文脈において用いられうる活性剤の例として、化粧用油、例えばシリコーン油、トリグリセリドタイプの植物油、炭化水素に基づく油、例えばパールリーム油など、並びに脂肪酸及び脂肪アルコールのエステルなど、が言及されうる。
【0120】
皮膚の状態を改善する為の他の活性剤、例えば保湿性活性剤など、又は天然の脂質バリアを改善する為の活性剤、例えばセラミド、コレステロールサルフェート及び/又は脂肪酸、並びにそれらの混合物など、もまた用いられうる。
【0121】
皮膚に対する活性を有する酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、グルコシダーゼ、アミダーゼ、セレブロシダーゼ及び/又はメラナーゼ(melanase)、並びにそれらの混合物など、を用いることも可能でありうる。
【0122】
一般に、本発明に従う任意の組成物は、皮膚に(体の任意の皮膚の領域に)又は粘膜に(口腔粘膜、頬(jugal)、歯肉、生殖器、結膜などに)施与されうる。
【0123】
既知の様式で、化粧的組成物(化粧料組成物)は、化粧料の分野で通例であるアジュバント、例えば親水性若しくは親油性ゲル化剤、親水性若しくは親油性添加物、保存料、抗酸化剤、溶媒、香料、フィラー、スクリーニング剤、臭気吸収物及び染料など、も含みうる。
【0124】
本発明に従う組成物の種々の成分の量は、考慮下の技術分野において慣用的に用いられるものである。
【0125】
他の局面に従い、本発明は、皮膚老化の兆候の化粧的処置の為の方法であって、本発明に従う少なくとも1つの化粧的組成物を、皮膚、粘膜及び/又はケラチン繊維の少なくとも一部に施与することからなる少なくとも1つの工程を含む上記方法に関する。
【0126】
他の局面に従い、本発明は、デスモグレインIの可溶性ペプチド形を、又はその類似体を、又はそのようなポリペプチドの活性、発現及び/若しくは安定性を調節する剤を、特には皮膚老化の兆候を防ぐ為に、特には老化した皮膚を防ぎ及び/又は処置する為に、用いる方法、特には化粧的に及び/又は治療的に用いる方法にも関する。
【0127】
他の実施態様に従い、本発明は、本発明に従う可溶形を調節する剤の使用方法に関する。
【0128】
本発明の目的の為に、語「調節」は、或る効果の観点から、この効果を刺激し又は抑制する作用を意味することが意図される。
【0129】
本発明の目的の為に、表現「生物学的活性及び/又は発現を調節する剤又は調節することができる化学的若しくは生物学的化合物」は、本発明に従う可溶形に対し、又は該可溶形を部分的にコードする核酸配列に対し、又は該可溶形が関与する細胞内若しくは細胞外シグナル伝達経路若しくは代謝経路の要素に対し、又は該可溶形をコードする核酸配列の転写及び/又は翻訳を調節することに、並びにまた該可溶形の安定性を調節することに関与する要素に対し、直接的に若しくは間接的に作用することができる任意の化合物を意味することが意図される。
【0130】
この調節性剤は、本発明の可溶形の発現を抑制し又は活性化する剤であってよく、又は該可溶形の安定性を制御する剤であってよい。
【0131】
より特には、該調節性剤は、本発明に従う可溶形の発現の活性化因子でありうる。
【0132】
1つの好ましい実施態様に従い、該調節性剤は、本発明に従う可溶形の安定性を、そのタンパク質溶解的分解を抑制することによって、促進する剤である。
【0133】
本明細書以下に現れる実施例は、本発明の非限定的な説明として提示される。
【実施例1】
【0134】
本発明に従う可溶形のデスモグレインIをアッセイする為の高感度ELISAアッセイの開発
【0135】
「デスモグレイン」特異的96ウェルプレートが、会社MesoScale Discovery(MSD)の技術によりカスタムメイドで開発された。
【0136】
デスモグレインの細胞外ドメインに対して向けられた組換え捕捉抗体(クローン AbyD03984)が、HuCAL technology(会社:Antibodies by Design)によって、組換えデスモグレイン(R&D systems)により実施されたスクリーニングにより、開発された。
【0137】
該捕捉抗体は、スモールスポットタイプの標準的96ウェルプレート(MesoScale)に200μg/mlの濃度で堆積された。
【0138】
参照曲線(400〜6ng/ml)が、組換えデスモグレインタンパク質を用いて確立された。それぞれのプレートは、ブロッキングバッファー(MesoScale)により、1時間、環境温度(ambient temperature)でブロックされた。夫々の試料の25μl及び標準の25μlが、3通りに堆積され、そして、環境温度で、1時間、攪拌しながらインキュベートされた。該プレートは次に、Trisバッファー(MesoScale)により4回洗浄された。該プレートは次に、1時間、環境温度で、1ug/mlの濃度でMSD指示に従い「スルホ−タグ」により標識された25μlの検出抗体(モノクローナル抗体、クローン129204、R&D Systems)と一緒に、攪拌しながらインキュベートされた。該プレートは、150μlの1×リードバッファーT(MesoScale)の添加の前に、Trisバッファー(MesoScale)により4回洗浄された。該プレートは、「Sector Imager 6000」を用いて読み取られた。該データは、Bradfordキット(Bio−Rad)を用いて測定された、全タンパク質のμg当たりのデスモグレインのngの点で標準化された。
【実施例2】
【0139】
デスモグレインIの分解に対して作用する活性剤をスクリーニングする為の高感度ELISAアッセイの使用
【0140】
プロトコル
【0141】
6mgの細かく粉砕された足裏角質層(plantaire Stratum Corneum:PSC)が、96ウェルマルチスクリーン0.22μmフィルトレーションシステムプレート(Millipore)の夫々のウェルに分配される。夫々のアッセイが、3通りに実施される。
【0142】
0.1M Trisバッファー中の0.2及び2%でのEDTAの100μl(pH8)が、該PSCに添加される。該プレートは、環境温度で、10分間、インキュベートされる。該プレートは次にろ過され、そして該ウェルが、200μlのPBSバッファーにより5回リンスされる。0.1MのTrisバッファー(pH8)の200μlが夫々のウェルに添加される。該プレートが、2時間、攪拌しながら、30℃でインキュベートされ、そして次に、レセプションプレート(reception plate)にろ過される。夫々の反応媒体がこのように収集される。
【0143】
デスモグレインIペプチドが、Mesoscale MA6000 DB016プレート(この開発は前に記載された)上でアッセイされる。
【0144】
それぞれのアッセイが、25μlの反応媒体により直接に実施される。標準範囲が、組換えデスモグレイン(R&D systems)により同じ条件下で調製される。結果は、AU(任意の単位(arbitrary unit)=「sector imager 6000」上で得られたシグナル)又は全タンパク質のμg当たりのデスモグレインのngのいずれかで表されうる。
【0145】
図1は、可溶形のデスモグレインIの放出(コルネオデスモソームの分解を促進する処置、例えばEDTAファミリーのキレート剤による処置など、により誘発された)を実際に監視することを可能にする。
【0146】
それ故に、該アッセイは、in vitroで放出された該可溶形を測定することによるデスモグレインI分解刺激性効果を評価する為に適当である。
【0147】
それ故に、このアッセイは、老化した角質層において観察されるデスモグレインIの異常蓄積を補うことを可能にする分子の効果又は化粧的処方物の効果、特にはアンチエイジング活性剤の効果、をモニタリングする為に示される。
【実施例3】
【0148】
剥ぎ取りにより採られた種々の試料におけるデスモグレインIの可溶形の含有量の特徴付け
【0149】
この特徴付けは、実施例1に記載されたELISAアッセイを用いて実施される。
【0150】
製品研究が、56日、すなわち2ヶ月、にわたり、(24の女性個体の1グループ、コーカサス人種の皮膚を有する、40〜45歳)前腕について採られた試料により実施された。
【0151】
該製品は、10%のBifidiobiotic(CLR complex)及び0.002%のフィトスフィンゴシン−SLCから構成されるセラム(serum)(処置「G」)である。
【0152】
該CLR complexは、INCI名:Bifidat ferment Lysate下で、EINECS名:Bifidobacterium longum下で、EINECS番号:306−168−4下で、及びCAS番号:96507−89−0下で登録された溶解物に関する。
【0153】
そのような溶解物は特に、会社K.Richter GmbHにより、名称Repair Complex CLR(商標)下で販売される。フィトスフィンゴシン−サリチレート誘導体は、会社Evonik Goldschmidtにより名称フィトスフィンゴシン−SLC下で販売されるものである。
【0154】
この研究の為に、D−squame試料が、前腕(後部面)から採られた。
【0155】
a)該D−squame試料からのタンパク質の抽出
【0156】
該角質ディスクが、2mlエッペンドルフチューブに置かれ、粘着表面は内側を向いている、そこへ、チューブ当たりで550μlの「Native+」抽出バッファー(TBS、1%Triton X−100、1MのNaCl)と1つのステンレス鋼ボール(stainless steel bead)とが添加される。該チューブは次に、MM400バイブレーションミル(Retsch)のラック中に置かれる。抽出は、30Hzで2分の1サイクルの間の振動粉砕により実施される。該媒体が、次に回収され、そして0.45μmのMillipore Ultrafree カラムによりろ過され、4℃で、5000gでの5分間の遠心が続く。上清が、分析されるのを待つ間、−20℃で貯蔵される。
【0157】
b)統計的分析
【0158】
処置効果についての分析が、母数効果(fixed effects)としての時間因子、及び変量効果(random effects)としての被験者因子(the subject factor)による、対にされた活性剤−プラセボ差異についての分散の分析の混同モデルを用いて実施される。
【0159】
0日目及び56日目での処置効果が、対比により試験される。
【0160】
変量は、必要なときに、それらの分布をよりガウス分布にするように、あらかじめlog変換される。
【0161】
SPSSソフトウェア(バージョン14)が、記述的分析(平均値のグラフ及びボックスプロット)の為に用いられ、そしてSAS Enterprise Guideソフトウェア(バージョン3)が、干渉部分の為に用いられる。
【0162】
第1の種のα−リスクが、両側アプローチにおいて5%で固定された。
【0163】
この研究の結果が図2に示される。
【0164】
図2は、可溶形の量に対する、該試験された製品の効果を明らかにする。デスモグレインIの可溶形の放出の有意な増加が観察され、それによりデスモグレインIの放出に対するこの製品の刺激性効果を実証する。
【0165】
それ故に、該試験された製品は、それが齢にともなうデスモグレインIの蓄積に対抗することを可能とするので、実際のアンチエイジング効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列ID No.1の全部又は一部により表される核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその類似体に少なくとも部分的に由来する少なくとも1つの複合化した又は複合化していない可溶性ペプチド形を、皮膚老化を防ぎ及び/又は処置するのに役立つ活性剤をスクリーニングする為の手段として用いる方法。
【請求項2】
該ペプチド形の存在又は含有量の増加の検出が、皮膚老化を防ぎ及び/又は処置するのに役立つ特性を有する活性剤を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ペプチドが、配列ID No.2により表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその類似体のタンパク質分解に少なくとも部分的に由来する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該ポリペプチドが、配列ID No.3、配列ID No.4、配列ID No.5、配列ID No.6、配列ID No.7、配列ID No.8、配列ID No.9、配列ID No.10、配列ID No.11、配列ID No.12、配列ID No.13、配列ID No.14、配列ID No.15、配列ID No.16、配列ID No.17、配列ID No.18、配列ID No.19、配列ID No.20、配列ID No.21、配列ID No.22、配列ID No.23、配列ID No.24、配列ID No.25、配列ID No.26、配列ID No.27、配列ID No.28、配列ID No.29、配列ID No.30、配列ID No.31、配列ID No.32、配列ID No.33、配列ID No.34、配列ID No.35、配列ID No.36、配列ID No.37、配列ID No.38、配列ID No.39、配列ID No.40、配列ID No.41、配列ID No.42、配列ID No.43、配列ID No.44、配列ID No.45、配列ID No.46、配列ID No.47、配列ID No.48、配列ID No.49、配列ID No.50、配列ID No.51、配列ID No.52、配列ID No.53、配列ID No.54、配列ID No.55、配列ID No.56、配列ID No.57、配列ID No.58、配列ID No.59、配列ID No.60、配列ID No.61、配列ID No.62、配列ID No.63、配列ID No.64、配列ID No.65、配列ID No.66、配列ID No.67、配列ID No.68、配列ID No.69、配列ID No.70、配列ID No.71、配列ID No.72、配列ID No.73、配列ID No.74、配列ID No.75、配列ID No.76、配列ID No.77、配列ID No.78、配列ID No.79、配列ID No.80、配列ID No.81、配列ID No.82、配列ID No.83、配列ID No.84及び配列ID No.85並びにそれらの混合物から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アンチエイジング活性剤をスクリーニングする方法であって、
a)請求項1〜4のいずれか1項に定義された少なくとも1つの可溶性ペプチド形を放出することができる少なくとも1つの細胞タイプを、該可溶性ペプチド形の放出にとって適当な条件下で、少なくとも1つの試験アンチエイジング活性剤との接触に付すること、
b)該可溶性ペプチド形の含有量を決定すること、及び
c)工程b)において決定された該含有量を、化学的又は生物学的試験化合物の不在下において決定された該可溶形の含有量と比較すること
からなる工程を少なくとも含む前記方法。
【請求項6】
個体において、経時的老化と関連する皮膚老化の兆候を防ぎ及び/又は処置することが意図された化粧的又は治療的処置の有効性を特徴付ける為の方法であって、請求項1〜4のいずれか1項において定義された少なくとも1つの可溶性ペプチド形の定性的又は定量的特徴付けを少なくとも含む前記方法。
【請求項7】
該可溶性ペプチド形の存在又は含有量の増加の検出又は特徴付けが、該活性剤の又は該処置の有効性を反映する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
個体における皮膚老化の兆候を防ぎ及び/又は処置することが意図された処置の有効性を特徴付けする為の非治療的方法であって、
i.該個体を代表する少なくとも第1の皮膚表面試料を用意すること、
ii.該試料において、特にはELISAアッセイ技術により、請求項1〜4のいずれか1項に記載の少なくとも1つの可溶性ペプチド形を定量すること、
iii.該個体を代表する第2の皮膚表面試料について工程i.及びii.を繰り返すこと、及び
iv.工程ii.及びiii.の終わりで得られた結果を比較すること、ここで該第1及び第2の皮膚表面試料は異なる処置段階に対応する、
からなる工程を少なくとも含む前記方法。
【請求項9】
工程iv.における、該可溶性ペプチド形の存在の検出又は含有量の増加の検出が、該処置が有効であることを示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該個体における、工程iv.の終わりで得られた情報に関して確立され又は選択された化粧的ケア組成物の施与により該処置を調節することからなる工程をさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に定義された少なくとも1つの可溶性ペプチド形を、可溶形のデスモグレインIの放出を促進することができる活性な生物学的又は化学的化合物をスクリーニングする為の手段として用いる方法。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項に定義された可溶性ペプチド形を、上皮の経時的皮膚老化の状態をin vitro又はex vivoで特徴付けする為の手段として用いる方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−175538(P2010−175538A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−4447(P2010−4447)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(595100370)ロレアル (108)
【氏名又は名称原語表記】L′OREAL
【Fターム(参考)】