説明

アンテナ装置

【課題】 限られた空間に互いに影響し合わないように複数のメディアに対応する複数のアンテナ装置を搭載する。
【解決手段】 アンテナベース10上にアンテナ基板12が立設されて配置され、アンテナ基板12には第1パターン12aと、接続ラインを介して第1パターン12aに接続される第2パターン12bと、第1コイル12cと第2コイル12dを介して第2パターン12bに接続される第3パターン12eとが形成されている。第1パターンの側端とSDARSアンテナ13との間隔Laは32mm以上とされ、第2パターン12bの斜辺とSDARSアンテナ13を結ぶ仰角θaが約30°以下とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車へ搭載可能な小型低姿勢の複数のメディアに対応できるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のアンテナ装置のように限られた空間しか有していないアンテナカバーを備えるアンテナ装置に、さらにアンテナを組み込んでも良好な電気的特性を得るアンテナ装置が提案されている。この従来のアンテナ装置100の構成を図79に示す。
この図に示す従来のアンテナ装置100は、アンテナカバー110と、このアンテナカバー110の下端に嵌合されているアンテナベース120と、アンテナベース120に取り付けられているアンテナ基板130と、アンプ基板134と、平面アンテナユニット135から構成されている。アンテナカバー110の長手方向の長さは約200mmとされ、横幅は約75mmとされている。アンテナカバー110は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナカバー110内には、アンテナ基板130を立設して収納できる空間と、アンプ基板134をアンテナベース120にほぼ平行に収納する空間が形成されている。アンテナカバー110の下面には金属製のアンテナベース120が取り付けられている。そして、アンテナベース120にアンテナ基板130が立設して固着されていると共に、アンテナ基板130の前方に位置するようにアンプ基板134がアンテナベース120に固着されている。また、アンテナ基板130の下縁の中央部に矩形状の切欠130aが形成されており、この切欠130a内に位置するように平面アンテナユニット135がアンテナベース120に取り付けられている。このアンテナベース120をアンテナカバー110の下面に取り付けることにより、アンテナカバー110の内部空間にアンテナ基板130とアンプ基板134と平面アンテナユニット135とを収納することができる。
【0003】
また、アンテナベース120の下面からは、アンテナ装置100を車両に取り付けるためのボルト部121が突出して形成されている。このボルト部121には貫通孔が形成されており、複数本のケーブルがボルト部121を介してアンテナ装置100から導出される。さらに、アンテナ基板130は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており、AM放送とFM放送を受信可能なアンテナを構成するアンテナ素子131のパターンが上部に形成されている。アンテナ基板130のアンテナベース120からの高さはh1、長さはpとされている。また、アンテナ素子131の長さはアンテナ基板130と同じpとされ、幅(高さ)はh2とされている。さらに、アンテナ素子131の下縁と平面アンテナユニット135の上面との間隔はdとされている。このアンテナ素子131の大きさは、アンテナカバー110の内部空間の制約から高さh1は約75mm程度までの高さ、長さpは約90mm程度までとされている。ここで、FM波帯の周波数100MHzの波長をλaとすると、約75mmの寸法は約0.025λa、約90mmの寸法は約0.03λaとなり、アンテナ素子131は波長λaに対して超小型のアンテナとなる。
【0004】
なお、1μH〜3μH程度のアンテナコイルがアンテナ素子131の給電点とアンプ基板134におけるアンプの入力との間に直列に挿入されており、アンテナ素子131とアンテナコイル132とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させている。また、アンプ基板134に設けられているアンプは、アンテナ素子131により受信されたFM放送信号とAM放送信号とを増幅して出力している。さらに、アンテナ素子131の直下に衛星ラジオ放送を受信する平面アンテナユニット135が配置されている。平面アンテナユニット135は、摂動素子を備え円偏波を受信可能なパッチ素子を備えている。平面アンテナユニット135は、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service:衛星ディジタルラジオサービス)受信用のアンテナとされ、その中心周波数は2338.75MHzとされている。平面アンテナユニット135の動作周波数帯の中心周波数の波長をλsとした際に、平面アンテナユニット135の上面とアンテナ素子131の下端との間隔が約0.25λs以上とされている。これにより、アンテナ素子131の影響を受けることなく平面アンテナユニット135の水平面内の放射指向特性を無指向性とすることができると共に、良好なゲイン特性が得られるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−135741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の車両には安全性や快適性を求め様々な情報機器の搭載が進められている。それに伴い、多くのメディアに対応するため車両には放送系受信アンテナ及び情報通信系アンテナの搭載が必要とされている。車両(移動体)用のアンテナに求められる性能は水平面内において無指向性であることが一般的ある。従って、アンテナ搭載位置として適している位置は、金属物による遮蔽や反射の影響が最も少ない車両の外側であり、特にルーフパネル上が好条件となる。しかし、車両デザインとの整合性を考慮するとメディア毎に複数のアンテナをルーフパネル上に林立して設置することは困難である。また、法規制により車両からの突起(アンテナ高)には制限が設けられている場合が多く、各メディアの送受信に適した波長のアンテナサイズとした場合には長くなることから、法規制を回避するために脱着式エレメントとしている。この場合、付け忘れによる受信・通信不具合や盗難による被害等が懸念される。
【0007】
従来のアンテナ装置は衛星ラジオ放送を受信するアンテナユニットを備えているが、さらに他のメディアに対応するアンテナを搭載するとアンテナカバー内は限られた空間とされていることから、互いにアンテナ同士が影響し合って良好な指向特性やゲイン特性を得られないという問題点があった。
そこで、本発明は限られた空間に互いに影響し合わないように複数のメディアに対応する複数のアンテナ装置を搭載できるアンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、アンテナカバーの下端がアンテナベースに嵌合されて内部に収納空間が形成されているアンテナ装置であって、前記アンテナベース上に立設されて配置され、下部の給電点から上部にかけて側縁に沿って形成された第1パターンと、該第1パターンと接続ラインで接続された上部に形成された第2パターンと、直列接続されたチョークコイルとローディングコイルを介して前記第2パターンに接続された上部に形成された第3パターンとを有するアンテナ基板と、前記第1パターンの側端と所定間隔Laだけ離隔されて前記アンテナベース上に配置されたアンテナユニットとを備え、前記第2パターンの前記側縁側の斜辺と前記アンテナユニットのほぼ中心とを結ぶ仰角θaが約30°以下とされていると共に、前記アンテナユニットの使用周波数帯域の中心周波数の波長をλとした際に、前記所定間隔Laが約λ/4以上とされていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアンテナ装置では、アンテナユニットをアンテナカバーとアンテナベースとで形成される収納空間内に収納する際に、第2パターンの側縁側の斜辺とアンテナユニットのほぼ中心とを結ぶ仰角θaが約30°以下とされていると共に、アンテナユニットの使用周波数帯域の中心周波数の波長をλとした際に、所定間隔Laが約λ/4以上とされている。これにより、収納空間が限られた空間であっても互いにアンテナ同士が極力影響し合うことなく配置することができる。なお、第1パターンは2GHz帯の電話用アンテナとして動作し、第1パターンと第2パターンが900MHz帯の電話用アンテナとして動作し、チョークコイルは、900MHz帯以上において第3パターンを第2パターンから高周波的に切り離すよう機能し、直列接続された第3パターン、チョークコイル、ローディングコイル、第2パターンおよび第1パターンの全体がAM/FM周波数帯のアンテナとして動作する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の各部の寸法を示す側面図である。
【図6】本発明のアンテナ装置にかかるAMPSの仰角に対する平均値の利得特性を示す図である。
【図7】本発明のアンテナ装置にかかるPCSの仰角に対する平均値の利得特性を示す図である。
【図8】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角0°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図9】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角0°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図10】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角0°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図11】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角0°、周波数1990MHzに対する指向特性を示す図である。
【図12】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角5°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図13】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角5°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図14】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角5°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図15】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角5°、周波数1990MHzに対する指向特性を示す図である。
【図16】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角10°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図17】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角10°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図18】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角10°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図19】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角10°、周波数1990MHzに対する指向特性を示す図である。
【図20】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角20°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図21】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角20°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図22】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角20°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図23】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角20°、周波数1990MHzに対する指向特性を示す図である。
【図24】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角30°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図25】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角30°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図26】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角30°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図27】本発明のアンテナ装置にかかるAMPS/PCSの仰角30°、周波数1990MHzに対する指向特性を示す図である。
【図28】本発明のアンテナ装置にかかるGPSの仰角に対する利得特性を示す図である。
【図29】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角に対する平均値の利得特性を示す図である。
【図30】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角に対する最小値の利得特性を示す図である。
【図31】本発明のアンテナ装置にかかるXM(地上波)の仰角に対する平均値の利得特性を示す図である。
【図32】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角20°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図33】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角20°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図34】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角30°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図35】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角30°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図36】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角40°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図37】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角40°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図38】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角50°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図39】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角50°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図40】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角60°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図41】本発明のアンテナ装置にかかるXM(衛星波)の仰角60°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図42】本発明のアンテナ装置にかかるXM(地上波)の仰角0°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図43】本発明のアンテナ装置にかかるXM(地上波)の仰角0°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図44】本発明のアンテナ装置にかかるXM(地上波)の仰角10°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図45】本発明のアンテナ装置にかかるXM(地上波)の仰角10°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図46】本発明のアンテナ装置にかかるXM(地上波)の仰角15°、周波数2.3325GHzに対する指向特性を示す図である。
【図47】本発明のアンテナ装置にかかるXM(地上波)の仰角15°、周波数2.345GHzに対する指向特性を示す図である。
【図48】本発明のアンテナ装置におけるSDARSアンテナの位置を変更した他のアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。
【図49】他のアンテナ装置のXM(衛星波)の仰角に対する平均値の利得特性を示す図である。
【図50】他のアンテナ装置のXM(衛星波)の仰角に対する最小値の利得特性を示す図である。
【図51】他のアンテナ装置のXM(衛星波)の仰角20°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図52】他のアンテナ装置のXM(衛星波)の仰角30°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図53】他のアンテナ装置のXM(衛星波)の仰角40°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図54】他のアンテナ装置のXM(衛星波)の仰角50°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図55】他のアンテナ装置のXM(衛星波)の仰角60°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図56】他のアンテナ装置のXM(地上波)の仰角0°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図57】他のアンテナ装置のXM(地上波)の仰角5°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図58】他のアンテナ装置のXM(地上波)の仰角10°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図59】他のアンテナ装置のXM(地上波)の仰角15°、周波数2.33875GHzに対する指向特性を示す図である。
【図60】本発明の実施例かかるアンテナ装置においてチョークコイルとローディングコイルの高さを低くしたさらに他のアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。
【図61】さらに他のアンテナ装置のAMPSの仰角に対する利得特性を示す図である。
【図62】さらに他のアンテナ装置のPCSの仰角に対する利得特性を示す図である。
【図63】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角0°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図64】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角0°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図65】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角0°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図66】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角0°、周波数1930MHzに対する指向特性を示す図である。
【図67】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角10°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図68】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角10°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図69】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角10°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図70】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角10°、周波数1930MHzに対する指向特性を示す図である。
【図71】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角20°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図72】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角20°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図73】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角20°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図74】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角20°、周波数1930MHzに対する指向特性を示す図である。
【図75】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角30°、周波数824MHzに対する指向特性を示す図である。
【図76】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角30°、周波数894MHzに対する指向特性を示す図である。
【図77】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角30°、周波数1850MHzに対する指向特性を示す図である。
【図78】さらに他のアンテナ装置のAMPS/PCSの仰角30°、周波数1930MHzに対する指向特性を示す図である。
【図79】従来のアンテナ装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の構成を図1ないし図5に示す。ただし、図1は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す平面図であり、図2は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す側面図であり、図3は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す正面図であり、図4は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す側面図であり、図5は本発明にかかるアンテナ装置1の各部の寸法を示す側面図である。
これらの図に示す本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、車両のルーフに取り付けられるアンテナ装置とされており、長手方向の長さL1は約210mm、横幅L3は約66mmとされ、車両に取り付けられた際に車両から突出する高さL2は約67mmとされて小型で低姿勢とされている。このアンテナ装置1の形状は先端に行くほど細くなる流線型とされており、車両の美観・デザインを損ねないようある程度の範囲内において自由に形状を決定することができる。そして、アンテナ装置1の下面には、ゴム製またはエラストマー製の柔軟なベースパッドが嵌着されており、車両に水密に取り付けることができるようにされている。
【0012】
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、AMラジオ帯と、76〜90MHzあるいは88〜108MHzのFMラジオ帯と、824〜894MHzのAMPS(Digital Advanced Mobile Phone System)あるいは880〜960MHzのGSM(Global System for Mobile Communications)900の900MHz帯の電話帯と、1850〜1990MHzのPCS(Personal Communication Services)あるいは1710〜1880MHzのGSM1800の2GHz帯の電話帯と、1.57542GHzのGPS帯と、2.320〜2.3325GHzのSirius radioあるいは2.3325〜2.345GHzのXM RadioのSDARS(Satellite Digital Audio Radio)帯とを受信できるアンテナを備えている。このように、本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、AM/FM/TEL(2周波数)/GPS/SDARSの6つのメディアに対応している。
【0013】
この本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、樹脂製のアンテナカバー11と、このアンテナカバー11の下端に嵌合されている金属製のアンテナベース10と、アンテナベース10にほぼ垂直に取り付けられているアンテナ基板12と、アンテナベース10上の前方に並んで取り付けられているSDARSアンテナ13とGPSアンテナ14と、アンテナ基板12における下部を切り欠いた部分に配置されている回路基板15とを備えている。アンテナカバー11は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなる流線型の外形形状とされている。アンテナカバー11内には、図4に示すように立設されたアンテナ基板12およびSDARSアンテナ13とGPSアンテナ14を収納する収納空間と、回路基板15を横方向に収納する空間が形成されている。アンテナカバー11の下端には金属製のアンテナベース10が嵌着されている。そして、アンテナベース10にアンテナ基板12が立設されて固着されている。
【0014】
図4に示すようにアンテナ基板12の一面には、例えば銅箔とされた第1パターン12a、第2パターン12bと第3パターン12eとがプリントにより形成されている。第1パターン12aは、アンテナ基板12の前方の側縁に沿って下部から上部に向かう縦方向にほぼ矩形状に形成されており、下部は次第に細くなるようテーパ状に形成されて下端が給電点12gとされている。この給電点12gは回路基板15に組み込まれた分波回路の入力に接続される。第2パターン12bは、アンテナ基板12の上部に横方向に形成されており、アンテナ基板12の前方の側縁側に斜辺が形成されたほぼ矩形状とされている。この斜辺と最も前方に配置されているSDARSアンテナ13のほぼ中心とを結ぶ仰角がθaとされ、仰角θaが約30deg以下となるようSDARSアンテナ13が配置されている。第2パターン12bの前部の所定箇所と、第1パターン12aの下部の所定箇所とは接続ライン12fにより接続されている。第3パターン12eは、アンテナ基板12の上部に横方向に細長いほぼ矩形状に形成されており、前方の下部が一部切り取られている。
【0015】
第3パターン12eのこの切り取られた部分と第2パターン12bの後端とが、第1コイル12cおよび第2コイル12dの直列回路を介して接続されている。第1コイル12cと第2コイル12dとは互いの中心軸が直交して配置されて、第1コイル12cと第2コイル12dとが互いに独立して機能するようにされている。この第1コイル12cは900MHz帯および2GHz帯の電話帯において、第3パターン12eを第2パターン12bから高周波的に切り離すチョークコイルとして作用している。また、第2コイル12dは後述するAM/FMアンテナのローディングコイルとして作用する。このように、第1コイル12cと第2コイル12dとは、それぞれ異なる動作を行うことから、それぞれ独立したコイルとしていると共に互いの中心軸が直交して配置されて互いに干渉しないようにされている。なお、第1コイル12cは800MHzないし900MHzにおいて共振するようになり、この共振は第1コイル12cの線間容量とアンテナベース10間の浮遊容量と第1コイル12cのインダクタンスとにより生じる。また、第2パターン12bの後端に第1コイル12cを接続しているのは、第2パターン12bの後端における高周波電流の小さい位置にローディングコイルを接続して放射効率を極力低下させないためである。
【0016】
Cで示す矩形の破線で囲われているアンテナ基板12に形成されている第1パターン12aは、2GHz帯の電話帯のTEL_PCSアンテナとして動作し、Bで示す矩形の破線で囲われている第1パターン12aと第2パターン12bとが接続ライン12fで接続されて900MHz帯の電話帯のTEL_AMPSアンテナとして動作する。なお、接続ライン12fはPCS帯において第1パターン12aが独立して動作するように、PCS帯におけるチョークコイルとして作用する。また、Aで示す折曲された矩形の破線で囲われている直列接続された第1パターン12a、第2パターン12b、第1コイル12c、第2コイル12d、第3パターン12eの全体がFMラジオ帯にほぼ共振するAM/FMアンテナとして動作する。この場合、第2コイル12dが、AM/FMアンテナをFMラジオ帯に共振させるためのローディングコイルとして作用する。なお、AM/FMアンテナはAMラジオ帯においては非共振アンテナとして動作する。このため、給電点12gからはTEL_PCSアンテナとTEL_AMPSアンテナとAM/FMアンテナとの受信信号が出力されて回路基板15に組み込まれた分波回路に入力される。この分波回路において、電話帯の受信信号とAM/FMラジオの受信信号とが分波されて、AM/FMラジオ帯の受信信号はアンプで増幅され、それぞれケーブルを介して出力される。
また、第1コイル12cおよび第2コイル12dの下面におけるアンテナベース10からの高さがHとされており、高さHは約38mmとされている。高さHを約38mm以上とすることによりTEL_PCSアンテナの指向特性を妨げないようになって、その利得が確保されると共に、その指向特性が良好になる。
【0017】
アンテナベース10の最も前方に配置されているSDARSアンテナ13は、マイクロストリップ平面アンテナとされており、その後端と第1パターン12aの前方の側縁とがLaだけ離隔されており、間隔Laは約32mmとされている。この場合、SDRASアンテナ13の動作周波数帯の中心周波数の波長をλとするとλ/4が約32mmとなり、SDRASアンテナ13の利得を確保すると共に、その指向特性を良好にするために間隔Laは約λ/4以上とされる。そして、SDRASアンテナ13とアンテナ基板12との間にGPSアンテナ14が配置されている。GPSアンテナ14は、マイクロストリップ平面アンテナとされている。また、アンテナベース10の下面からは、アンテナ装置1を車両に取り付けるためのボルト部10aが突出して形成されている。このボルト部10aには貫通孔が形成されており、複数本のケーブルがボルト部10aを介してアンテナ装置1から導出される。この場合、ボルト部10aが挿通される穴が車両のルーフに形成され、これらの穴にボルト部10aが挿通されるようルーフ上にアンテナ装置1を載置する。そして、車両内に突出したボルト部10aにナットを締着することによりアンテナ装置1を車両のルーフに固着することができる。この際に、ボルト部10aから引き出されたケーブルが車両内に導かれる。このボルト部10aの貫通孔を挿通して外部へ引き出されているケーブルは、電話帯の送信/受信信号を伝達するケーブルと、AM/FMラジオの受信信号を導出するケーブルと、SDARSアンテナ13から導出されたケーブルと、GPSアンテナ14から導出されたケーブルとされている。それぞれのケーブルの先端には、AM/FM out端子、TEL in/out 端子、SDARS out 端子、GPS out 端子が設けられて、これらの端子は対応する受信機の入力端子にそれぞれ接続される。
【0018】
図5に示すアンテナ基板12に形成されている第1パターン12aないし第3パターン12eの寸法の一例を挙げると、第1パターン12aの縦方向の長さD1が約39mm、幅W1が約20mmとされ、第2パターン12bの長さD2が約20mm、幅W2が約15mmとされ、第3パターン12eの長さD3が約69mm、幅W3が約27.5mmとされている。
ここで、本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の電気的特性を図6ないし図47に示す。この場合、第1パターン12aないし第3パターン12eの寸法は上記の通りとされ、SDARSアンテナ13の後端と第1パターン12aの前方の側縁との間隔Laが約32mm、第2パターン12bの斜辺とSDARSアンテナ13のほぼ中心とを結ぶ仰角θaが約30deg、第1コイル12cおよび第2コイル12dの下面におけるアンテナベース10からの高さHが約38mm、第1コイル12cの線径が約φ0.55mm、巻き径が約φ3mmで巻き数が約12.5ターン、第2コイル12dの線径が約φ0.55mm、巻き径が約φ5.8mmで巻き数が約13.5ターンとされている。また、アンテナ装置1は直径約1mのアース板上に設置されている。
【0019】
まず、図6に、本発明のアンテナ装置1においてAMPS帯の下限周波数824MHzおよび上限周波数894MHzにおけるTEL_AMPSアンテナの仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図6を参照すると、仰角が0degで824MHzでは約−2.4dBi、894MHzで約−3.0dBiの平均利得が得られており、仰角が5,10,15,20,25,30degと大きくなるに従って平均利得も上昇していく。仰角が30degで824MHzでは約2.6dBi、894MHzで約3.2dBiの良好な平均利得が得られている。TEL_AMPSアンテナの全AMPS帯における仰角0〜30degに対する平均利得は、下限周波数824MHzと上限周波数894MHzとにおけるTEL_AMPSアンテナの仰角に対する平均利得とほぼ同様の特性になることが確かめられており、周波数が高くなるほど、かつ、仰角が小さくなるほど平均利得は低下する。すなわち、TEL_AMPSアンテナにおいては仰角が0degで894MHzの約−3.0dBiの平均利得が最小値の平均利得となる。
このように、TEL_AMPSアンテナはAMPS帯において良好な利得特性を示している。
【0020】
次に、図7に、本発明のアンテナ装置1においてPCS帯の下限周波数1850MHzおよび上限周波数1990MHzにおけるTEL_PCSアンテナの仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図7を参照すると、仰角が0degで1850MHzでは約−0.8dBi、1990MHzで約−0.2dBiの平均利得が得られており、仰角が5,10,15,20degと大きくなるに従って平均利得も上昇していくが、約20degで飽和し25,30degとなるに従って平均利得は下降していく。仰角が20degで1850MHzでは約4.1dBi、1990MHzで約4.9dBiの良好な平均利得が得られている。TEL_PCSアンテナの全PCS帯における仰角0〜30degに対する平均利得は、下限周波数1850MHzと上限周波数1990MHzとにおけるTEL_PCSアンテナの仰角に対する平均利得とほぼ同様の特性になることが確かめられており、周波数が約1910MHzで仰角が0degの約−1.0dBiの平均利得が最小値の平均利得となる。
このように、TEL_PCSアンテナはPCS帯において良好な利得特性を示している。
【0021】
次に、図8ないし図27には、本発明のアンテナ装置1において、AMPS帯の下限周波数824MHzおよび上限周波数894MHzで仰角0,5,10,20,30degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性、および、PCS帯の下限周波数1850MHzおよび上限周波数1990MHzで仰角0,5,10,20,30degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されている。
図8にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角0degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約−1.2dBi、最小利得が約−3.6dBiでリップルが約2.4dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。
図9にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角0degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約−2.2dBi、最小利得が約−3.8dBiでリップルが約1.6dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。
【0022】
図10にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角0degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約1.5dBi、最小利得が約−4.9dBiでリップルが約6.4dBで約±120°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。
図11にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角0degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約1.3dBi、最小利得が約−4.9dBiでリップルが約7.3dBで約±105°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。
【0023】
図12にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角5degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約−0.9dBi、最小利得が約−2.4dBiでリップルが約1.5dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角0degの時より向上している。
図13にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角5degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約−0.3dBi、最小利得が約−2.0dBiでリップルが約1.7dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角0degの時より向上している。
【0024】
図14にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角5degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.2dBi、最小利得が約−2.5dBiでリップルが約5.7dBで約±120°方向の利得が低下しているが仰角0degの時より改善されたやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角0degの時より向上している。
図15にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角5degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.1dBi、最小利得が約−3.6dBiでリップルが約7.7dBで約±105°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。
【0025】
図16にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角10degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約0.5dBi、最小利得が約−0.9dBiでリップルが約1.4dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角5degの時より向上している。
図17にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角10degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約1.2dBi、最小利得が約−0.3dBiでリップルが約1.5dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角5degの時より向上している。
【0026】
図18にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角10degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.5dBi、最小利得が約−1.4dBiでリップルが約5.9dBで約±105°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角5degの時より向上している。
図19にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角10degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.5dBi、最小利得が約−2.2dBiでリップルが約7.7dBで約±105°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角5degの時より向上している。
【0027】
図20にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角20degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約1.8dBi、最小利得が約1.1dBiでリップルが約0.7dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
図21にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角20degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.0dBi、最小利得が約2.0dBiでリップルが約1.0dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
【0028】
図22にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角20degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約6.2dBi、最小利得が約0.3dBiでリップルが約5.9dBで約±105°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
図23にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角20degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約7.3dBi、最小利得が約−0.1dBiでリップルが約7.4dBで約±105°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
【0029】
図24にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角30degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約2.9dBi、最小利得が約2.2dBiでリップルが約0.7dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より向上している。
図25にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角30degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.8dBi、最小利得が約2.9dBiでリップルが約0.9dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より向上している。
【0030】
図26にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角30degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.4dBi、最小利得が約−2.4dBiでリップルが約6.8dBで約±105°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より低下している。
図27にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角30degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.2dBi、最小利得が約−1.5dBiでリップルが約6.7dBで約±120°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より低下している。
図8ないし図27を参照すると、TEL_AMPSアンテナの全AMPS帯における水平面内の指向特性は仰角0〜30degにおいてほぼ無指向性の良好な指向特性が得られている。また、TEL_PCSアンテナの全PCS帯における水平面内の指向特性は仰角0〜30degにおいて楕円形の指向特性とされているが、実用上においては十分な指向特性が得られている。
【0031】
次に、図28に本発明のアンテナ装置1において、GPS帯の周波数1575.42MHzにおけるGPSアンテナ14の仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図28を参照すると、仰角が10degで約−2.7dBiの平均利得が得られており、仰角が20,30,40,50,60,70,80,90degと大きくなっても平均利得は約0dBi〜約2dBiの間だけで変化しておりわずかな範囲でしか変化せず安定した平均利得が得られている。そして、80degで約1.6dBiの最大値が得られている。
このように、GPSアンテナ14はGPS帯において良好な利得特性を示している。
【0032】
次に、図29に本発明のアンテナ装置1において、SDARSアンテナ13でXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzおよび上限周波数2345MHzにおいて衛星波(Satellite)を受信する場合の仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図29を参照すると、仰角が20degで2332.5MHzでは約2.4dBi、2345MHzで約2.3dBiの平均利得が得られており、仰角が25,30,35,40,45,50,55,60degと大きくなっても2332.5MHzでの平均利得は約1.5dBi〜約2.5dBiの間だけで変化しておりほぼ一定の平均利得が得られている。また、2345MHzでの平均利得も約1.4dBi〜約2.4dBiの間だけで変化しておりほぼ一定の平均利得が得られていると共に、XM Radio帯の全帯域において約1.4dBi以上の良好な平均利得が得られている。
【0033】
また、図30に本発明のアンテナ装置1において、SDARSアンテナ13でXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzおよび上限周波数2345MHzにおいて衛星波(Satellite)を受信する場合の仰角に対する最小値の利得特性を示す。この最小値は、水平面内指向特性における利得の最小値である。図30を参照すると、仰角が20degで2332.5MHzでは約−2.0dBi、2345MHzで約−2.1dBiの最小利得が得られており、仰角が25,30,35,40,45,50,55,60degと大きくなるに従って最小利得が上昇する傾向を示している。2332.5MHzでの最小利得は約−2.0dBi〜約1.7dBiの間だけで変化しておりわずかな範囲でしか変化しない安定した最小利得が得られており、55degで約1.7dBiの最大の最小値が得られる。また、2345MHzでの最小利得も約−2.1dBi〜約1.4dBiの間だけで変化しており、十分な最小利得が得られていると共にわずかな範囲でしか変化しない安定した最小利得が得られており、60degで約1.4dBiの最大の最小値が得られる。また、最小利得はXM Radio帯の全帯域において約−2.1dBi以上の十分な最小利得が得られている。
【0034】
SDARSアンテナ13の全XM Radio帯における仰角20〜60degに対する平均利得および最小利得は、下限周波数2332.5MHzと上限周波数2345MHzとにおけるSDARSアンテナ13の仰角に対する平均利得および最小利得とほぼ同様の特性になることが確かめられており、平均利得は仰角によらずほぼ一定となり、最小利得は仰角が大きくなるにつれて若干上昇するだけとなる。
このように、SDARSアンテナ13はXM Radio帯の衛星波(Satellite)を受信する場合において良好な利得特性を示している。
【0035】
次に、図31に本発明のアンテナ装置1において、SDARSアンテナ13でXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzおよび上限周波数2345MHzにおいて地上波(Terrestrial)を受信する場合の仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図31を参照すると、仰角が0degで2332.5MHzでは約−3.2dBi、2345MHzで約−3.4dBiの平均利得が得られており、仰角が5,10,15degと大きくなるに従って上昇していき、15degで2332.5MHzでの平均利得は約2.5dBiが得られ、15degで2345MHzでの平均利得も約2.3dBiが得られるようになる。
SDARSアンテナ13の全XM Radio帯における仰角0〜15degに対する平均利得は、下限周波数2332.5MHzと上限周波数2345MHzとにおけるSDARSアンテナ13の仰角に対する平均利得とほぼ同様の特性になることが確かめられており、平均利得は仰角が大きくなるにつれて上昇するようになる。
このように、SDARSアンテナ13はXM Radio帯の地上波(Terrestrial)を受信する場合においても実用上十分な利得特性を示している。
【0036】
次に、図32ないし図41には、本発明のアンテナ装置1においてXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzおよび上限周波数2345MHzにおいて衛星波(Satellite)を受信する場合の仰角20,30,40,50,60degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されている。
図32にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角20degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.4dBi、最小利得が約−2.0dBiでリップルが約6.3dBとなり約150°方向および約−120°方向の利得が低下しているがほぼ無指向性の指向特性が得られている。
図33にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角20degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.0dBi、最小利得が約−2.1dBiでリップルが約7.1dBとなり約150°方向および約−120°方向の利得が低下しているがほぼ無指向性の指向特性が得られている。
【0037】
図34にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角30degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.6dBi、最小利得が約−1.1dBiでリップルが約5.7dBのほぼ無指向性の指向特性が得られている。
図35にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角30degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.9dBi、最小利得が約−1.2dBiでリップルが約6.1dBのほぼ無指向性の指向特性が得られている。
【0038】
図36にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角40degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.1dBi、最小利得が約1.1dBiでリップルが約2.0dBのほぼ無指向性の良好な指向特性が得られている。
図37にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角40degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約2.7dBi、最小利得が約0.4dBiでリップルが約3.9dBのほぼ無指向性の良好な指向特性が得られている。
【0039】
図38にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角50degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.2dBi、最小利得が約0.9dBiでリップルが約3.3dBのほぼ無指向性の良好な指向特性が得られている。
図39にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角50degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.3dBi、最小利得が約0.9dBiでリップルが約3.4dBのほぼ無指向性の良好な指向特性が得られている。
【0040】
図40にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角60degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.0dBi、最小利得が約1.0dBiでリップルが約2.0dBのほぼ無指向性の良好な指向特性が得られている。
図41にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角60degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.1dBi、最小利得が約1.4dBiでリップルが約1.7dBのほぼ無指向性の良好な指向特性が得られている。
このように、SDARSアンテナ13の水平面内の指向特性は仰角が大きくなるほど無指向性に近づいていくようになる。これは、仰角が大きくなるほどアンテナ基板12に形成されている第1パターン12aおよび第2パターン12bからなるTEL_AMPSアンテナの影響を受けないようになるからと考えられる。
【0041】
次に、図42ないし図47には、本発明のアンテナ装置1においてXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzおよび上限周波数2345MHzにおいて地上波(Terrestrial)を受信する場合の仰角0,10,15degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されている。
図42にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角0degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約0.2dBi、最小利得が約−13.2dBiでリップルが約13.4dBとなり、約140°方向の利得が低下していると共に約−120°方向の利得がかなり低下している。これは、仰角が小さいことからアンテナ基板12に形成されている第1パターン12aおよび第2パターン12b等の影響を受けるためと考えられるが、十分実用に適する指向特性が得られている。
図43にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角0degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約0.9dBi、最小利得が約−13.4dBiでリップルが約14.3dBとなり、約140°方向の利得が低下していると共に約−120°方向の利得がかなり低下し、利得および指向特性は周波数が高くなるほど劣化している。しかし、十分実用に適する指向特性が得られている。
【0042】
図44にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角10degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.1dBi、最小利得が約−6.7dBiでリップルが約10.8dBで約140°方向の利得が低下していると共に、約−120°方向の利得がかなり低下している。しかし、仰角0degに比較して利得および指向特性は改善されており、十分実用に適する指向特性が得られている。
図45にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角10degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.1dBi、最小利得が約−6.2dBiでリップルが約10.3dBで約140°方向および約−120°方向の利得が低下している。しかし、仰角0degに比較して利得および指向特性は改善されており、十分実用に適する指向特性が得られている。
【0043】
図46にはXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzで仰角15degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.3dBi、最小利得が約−4.6dBiでリップルが約9.9dBで約140°方向の利得が低下していると共に、約−120°方向の利得がかなり低下している。しかし、仰角10degに比較して利得および指向特性は改善されており、十分実用に適する指向特性が得られている。
図47にはXM Radio帯の上限周波数2345MHzで仰角15degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.7dBi、最小利得が約−3.9dBiでリップルが約9.6dBで約140°方向および約−120°方向の利得が低下している。しかし、仰角10degに比較して利得および指向特性は改善されており、十分実用に適する指向特性が得られている。
上記の通り、本発明のアンテナ装置1におけるSDARSアンテナ13は、XM Radio帯の衛星波(Satellite)および地上波(Terrestrial)を受信するに適したアンテナとなる。
【0044】
次に、本発明にかかるアンテナ装置1において、SDARSアンテナ13の後端と第1パターン12aの前方の側縁との間隔Laが約λ/4(約32mm)以上とされると共に、第2パターン12bの斜辺とSDARSアンテナ13のほぼ中心とを結ぶ仰角θaが約30deg以下とされる理由について説明する。図48に、本発明にかかるアンテナ装置1において、SDARSアンテナ13をその後端と第1パターン12aの前方の側縁との間隔が短くなるよう配置して約30mmの間隔Lbに変更されると共に、第2パターンの斜辺とSDARSアンテナ13のほぼ中心とを結ぶ仰角が約35degとされた仰角θbに変更されたアンテナ装置2の構成を示している。なお、第2パターンの形状は図48に示す第2パターン12b’のように前方に向かって延伸されており、その長さD4が約30mmとされている。アンテナ装置2の他の構成はアンテナ装置1と同様とされている。
【0045】
ここで、図48に示すアンテナ装置2の電気的特性を図49ないし図59に示す。この場合、第2パターン12b’の寸法は上記の通りとされ、間隔Lbは約30mm、仰角θbは約35degとされ、他の寸法等についてはアンテナ装置1と同様とされている。
図49にアンテナ装置2において、SDARSアンテナ13でXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzおよび上限周波数2345MHzにおいて衛星波(Satellite)を受信する場合の仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図49を参照すると、仰角が20degで2332.5MHzでは約2.2dBi、2345MHzで約1.6dBiの平均利得が得られており、アンテナ装置1における平均利得よりは若干低下しているが、十分な平均利得が得られている。そして、仰角が25,30,35,40,45,50,55,60degと大きくなっても2332.5MHzでの平均利得は約1.6dBi〜約3.1dBiの間だけで変化しておりほぼ一定の平均利得が得られている。また、2345MHzでの平均利得も約1.3dBi〜約2.7dBiの間だけで変化しておりほぼ一定の平均利得が得られていると共に、XM Radio帯の全帯域において約1.3dBi以上の良好な平均利得が得られている。
【0046】
また、図50にアンテナ装置2において、SDARSアンテナ13でXM Radio帯の下限周波数2332.5MHzおよび上限周波数2345MHzにおいて衛星波(Satellite)を受信する場合の仰角に対する最小値の利得特性を示す。この最小値は、水平面内指向特性における利得の最小値である。図30を参照すると、仰角が20degで2332.5MHzでは約−1.8dBi、2345MHzで約−4.5dBiの最小利得が得られており、仰角が25,30,35,40,45,50,55,60degと大きくなるに従って最小利得が上昇する傾向を示している。2332.5MHzでの最小利得は約−1.4dBi〜約2.3dBiの間だけで変化しておりわずかな範囲でしか変化しないようになり、60degで約1.7dBiの最大値が得られる。また、2345MHzでの最小利得は約−4.5dBi〜約1.8dBiの間で変化しており、アンテナ装置1における最小値−2.1dBiよりかなり低い−4.5dBiが最小値となっている。この場合、仰角が約30degより小さい場合は、周波数が高くなるにつれて最小値がより低下していくようになる。
【0047】
このように、間隔Lbを約30mmに変更すると共に、仰角θbを約35degに変更すると、SDARSアンテナ13の全XM Radio帯における仰角20〜60degに対する最小利得の最小値が−4.5dBiとなって実用上の十分な利得を確保できないようになる。このため、本発明にかかるアンテナ装置1においては、間隔Laを約32mm、仰角θaを約30degにしているのである。なお、間隔Laを大きくすればするほど仰角θaも小さくなって、SDARSアンテナ13は第1パターン12aおよび第2パターン12bから離隔されて、その影響が低減されるようになる。すなわち、間隔Laを大きくすればするほど仰角θaを小さくすればするほどSDARSアンテナ13の利得は上昇するようになる。そして、間隔Laを約32mmに、仰角θaを約30degとした際にSDARSアンテナ13の利得は実用上十分な利得となることから、本発明のアンテナ装置1においては間隔Laを約32mm(λ/4)以上に、仰角θaを約30deg以下にしているのである。
【0048】
次に、図51ないし図55には、図48に示すアンテナ装置2においてXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzにおいて衛星波(Satellite)を受信する場合の仰角20,30,40,50,60degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されている。
図51にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角20degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.6dBi、最小利得が約−3.5dBiでリップルが約8.1dBとなり約50°方向の利得が低下していると共に、約150°方向および約−120°方向の利得がかなり低下するようになっている。
図52にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角30degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.3dBi、最小利得が約−1.4dBiでリップルが約5.7dBとなり約60°方向および約150°方向ないし約−120°方向までの利得が低下するようになっている。
【0049】
図53にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角40degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.6dBi、最小利得が約0.5dBiでリップルが約3.1dBとなりほぼ無指向性の指向特性が得られている。
図54にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角50degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.3dBi、最小利得が約1.5dBiでリップルが約2.7dBとなりほぼ無指向性の指向特性が得られている。
図55にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角60degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.0dBi、最小利得が約2.3dBiでリップルが約1.7dBとなりほぼ無指向性の指向特性が得られている。
【0050】
次に、図56ないし図59には、図48に示すアンテナ装置2においてXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzにおいて地上波(Terrestrial)を受信する場合の仰角0,5,10,15degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されている。
図56にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角0degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約0.6dBi、最小利得が約−13.3dBiでリップルが約13.9dBとなり、約30°方向ないし60°方向の利得が低下していると共に約150°方向および約−120°方向の利得が非常に低下しており、無指向性が得られていない。このように最小利得が約−13.3dBiと小さいと共に無指向性が得られないことから、実用に十分な指向特性が得られていない。
図57にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角5degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約2.6dBi、最小利得が約−11.0dBiでリップルが約13.5dBとなり、約50°方向の利得が低下していると共に約150°方向および約−120°方向の利得が非常に低下していると共に約−120°方向の利得がかなり低下しており、無指向性が得られていない。このように最小利得が約−11.0dBiと小さいと共に無指向性が得られないことから、実用に十分な指向特性が得られていない。
【0051】
図58にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角10degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.4dBi、最小利得が約−8.0dBiでリップルが約12.4dBとなり、約50°方向の利得が低下していると共に約150°方向および約−120°方向の利得がかなり低下しているが、仰角0degの時よりはかなり向上している。しかし、最小利得が−8.0dBiと十分ではなく、実用に十分な指向特性が得られていない。
図59にはXM Radio帯の中心周波数2338.75MHzで仰角15degにおけるSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.7dBi、最小利得が約−5.8dBiでリップルが約11.5dBとなり、約50°方向の利得が低下していると共に約150°方向および約−120°方向の利得がかなり低下しているが、仰角0degの時よりはかなり向上している。しかし、最小利得が−5.8dBiと十分ではなく、実用に十分な指向特性が得られていない。
このように、図48に示すアンテナ装置2においてXM Radio帯を受信するSDARSアンテナ13の水平面内の指向特性は、衛星波(Satellite)や地上波(Terrestrial)に限らず低仰角における指向特性は実用に十分な指向特性が得られていない。ただし、仰角が大きくなるにつれて指向特性は改善されるようになる。
【0052】
次に、本発明にかかるアンテナ装置1において、第1コイル12cおよび第2コイル12dの下面におけるアンテナベース10からの高さHを約38mm以上とする理由について説明する。図60に、本発明にかかるアンテナ装置1において、第1コイル12c’および第2コイル12d’の下面におけるアンテナベース10からの高さを低くなるよう配置して約31.5mmの高さHbに変更されたアンテナ装置3の構成を示している。
ここで、図60に示すアンテナ装置3の電気的特性を図61ないし図78に示す。この場合、第1コイル12c’および第2コイル12d’の下面におけるアンテナベース10からの高さHbが約31.5mmとされ、他の寸法等についてはアンテナ装置1と同様とされている。
【0053】
図61に、アンテナ装置3においてAMPS帯の下限周波数824MHzおよび上限周波数894MHzにおけるTEL_AMPSアンテナの仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図61を参照すると、仰角が0degで824MHzでは約−2.0dBi、894MHzで約−2.8dBiの平均利得が得られており、仰角が5,10,15,20,25,30degと大きくなるに従って平均利得も上昇していく。仰角が30degで824MHzでは約2.9dBi、894MHzで約2.4dBiの良好な平均利得が得られている。アンテナ装置3におけるTEL_AMPSアンテナは、周波数が高くなるほど、かつ、仰角が小さくなるほど平均利得は低下する。また、本発明にかかるアンテナ装置1におけるTEL_AMPSアンテナは仰角0〜30degのほぼ全体にわたり低域より高域の周波数における平均利得が向上しているが、アンテナ装置3におけるTEL_AMPSアンテナでは仰角0〜30degのほぼ全体にわたり低域より高域の周波数における平均利得が低下している。すなわち、第1コイル12c’および第2コイル12d’の高さHbを低くして約31.5mmとするとAMPS帯の高域における平均利得が低下するようになる。
【0054】
次に、図62に、図60に示すアンテナ装置3において、PCS帯の下限周波数1850MHzおよび上限周波数1990MHzにおけるTEL_PCSアンテナの仰角に対する平均値の利得特性を示す。この平均値は、水平面内指向特性における利得の平均値である。図62を参照すると、仰角が0degで1850MHzでは約−0.8dBi、1990MHzで約−0.7dBiの平均利得が得られており、仰角が5,10,15,20degと大きくなるに従って平均利得も上昇していくが、約20degで飽和し25,30degとなるに従って平均利得は下降していく。仰角が20degで1850MHzでは約3.9dBi、1990MHzで約4.7dBiの良好な平均利得が得られている。しかし、アンテナ装置3におけるTEL_PCSアンテナのPCS帯における仰角0〜30degに対する平均利得を、本発明にかかるアンテナ装置1におけるTEL_PCSアンテナと比較すると、約1910MHzないし1990MHzにおいて平均利得が低下することが確かめられた。すなわち、第1コイル12c’および第2コイル12d’の高さHbを低くして約31.5mmとするとPCS帯では高域になるにつれて平均利得が低下するようになる。
このように、第1コイル12c’および第2コイル12d’の高さHbを低くして約31.5mmとすると、AMPS帯の高域における平均利得が低下すると共に、PCS帯では高域になるにつれて平均利得が低下することから、本発明にかかるアンテナ装置1においては第1コイル12cおよび第2コイル12dの高さHを約38mm以上としているのである。
【0055】
次に、図63ないし図78には、図60に示すアンテナ装置3において、AMPS帯の下限周波数824MHzおよび上限周波数894MHzで仰角0,10,20,30degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性、および、PCS帯の下限周波数1850MHzおよび上限周波数1990MHzで仰角0,10,20,30degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されている。
図63にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角0degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約−1.5dBi、最小利得が約−2.5dBiでリップルが約1.0dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。
図64にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角0degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約−1.8dBi、最小利得が約−3.9dBiでリップルが約2.1dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。
【0056】
図65にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角0degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約0.9dBi、最小利得が約−4.4dBiでリップルが約5.3dBで約110°方向および約−70°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。
図66にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角0degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約1.5dBi、最小利得が約−5.7dBiでリップルが約7.2dBで約120°方向および約−75°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。
【0057】
図67にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角10degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約0.6dBi、最小利得が約0.0dBiでリップルが約0.6dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角0degの時より向上している。
図68にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角10degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約0.5dBi、最小利得が約−0.8dBiでリップルが約1.3dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角0degの時より向上している。
【0058】
図69にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角10degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.6dBi、最小利得が約−1.6dBiでリップルが約5.9dBで約110°方向および約−70°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角0degの時より向上している。
図70にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角10degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約4.6dBi、最小利得が約−1.8dBiでリップルが約6.4dBで約120°方向および約−70°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角0degの時より向上している。
【0059】
図71にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角20degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約2.9dBi、最小利得が約1.6dBiでリップルが約1.3dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
図72にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角20degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約2.1dBi、最小利得が約1.2dBiでリップルが約0.9dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
【0060】
図73にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角20degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.9dBi、最小利得が約0.7dBiでリップルが約5.2dBで約120°方向および約−70°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
図74にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角20degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約6.6dBi、最小利得が約0.3dBiでリップルが約6.3dBで約120°方向および約−80°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角10degの時より向上している。
【0061】
図75にはAMPS帯の下限周波数824MHzで仰角30degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約3.5dBi、最小利得が約2.3dBiでリップルが約1.2dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より向上している。
図76にはAMPS帯の上限周波数894MHzで仰角30degにおけるTEL_AMPSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約2.8dBi、最小利得が約1.8dBiでリップルが約1.0dBのほぼ無指向性とされた良好な指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より向上している。
【0062】
図77にはPCS帯の下限周波数1850MHzで仰角30degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.3dBi、最小利得が約−1.9dBiでリップルが約7.2dBで約120°方向および約−100°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より低下している。
図78にはPCS帯の上限周波数1990MHzで仰角30degにおけるTEL_PCSアンテナの水平面内の指向特性が示されており、最大利得が約5.0dBi、最小利得が約−1.9dBiでリップルが約6.9dBで約130°方向および約−100°方向の利得が低下しているやや楕円形の指向特性が得られている。利得は仰角20degの時より低下している。
図63ないし図78を参照すると、第1コイル12c’および第2コイル12d’の高さHbを低くして約31.5mmとした場合は、TEL_AMPSアンテナの全AMPS帯における水平面内の指向特性は仰角0〜30degにおいてほぼ無指向性の良好な指向特性が得られているが、AMPS帯の高域における平均利得が低下していることがわかる。また、TEL_PCSアンテナの全PCS帯における水平面内の指向特性は仰角0〜30degにおいて楕円形の指向特性とされており、PCS帯では高域になるにつれて平均利得が低下していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明した本発明にかかるアンテナ装置1において、SDARSアンテナ13は、衛星局からの衛星波と、地上局(ギャップフィラー)からの地上波を受信できるように、衛星波の受信性能としては20degまでの低仰角において水平面内で偏差が少なく、良好な指向特性とされている。また、SDARSアンテナ13は、電気的な干渉を防ぐために、第1パターン12aからλ/4(約32mm)以上間隔を設けて配置されている。
また、GPSアンテナ14は、上空にある複数の衛星から信号を受信することが可能であることから、それ程低仰角における受信性能を確保する必要はない。従って、天頂方向に遮蔽物がないアンテナ基板12とSDARSアンテナ13との間に配置されている。この場合、天頂方向に遮蔽物が無いアンテナ基板12の後方にGPSアンテナ14を配置するようにしても良い。
さらに、TEL_PCSアンテナおよびTEL_AMPSアンテナは、モノポールアンテナとされており、水平面内において通話やデータ通信・緊急通報システム等で利用される。これに適するように本発明にかかるアンテナ装置では、水平面内で無指向性あるいは無指向性に近い指向特性が得られている。また、電気的に波長の短いPCS帯やGSM1800帯の2GHz帯では、アンテナ周辺にある金属物により指向性への影響が懸念されることから、第1コイル12cからなるチョークコイルと、第2コイル12dからなるローディングコイルは電流分布の少ないTEL_AMPSアンテナの上部に位置するよう配置している。
【0064】
さらにまた、AM/FMアンテナはモノポールアンテナとされており、FM周波数の波長の約1/45の高さとなりアンテナ高が低くなる。従って、第1パターン12aないし第3パターン12eおよび第1コイル12cだけで所望のFM周波数に共振させることは困難となる。そこで、電気的な整合を得るために第2コイル12dからなるローディングコイルを設けている。これにより、AM/FMアンテナ全体でFM周波数に共振するようになる。
なお、AM帯においては、その使用周波数から容量性領域でAM/FMアンテナは作用している。従って、良好な受信性能を得られるように容量装荷型としてもよい。
また、第1コイル12cからなるチョークコイルは、自己共振を用いてAMPS 帯あるいはGSM900帯の900MHz帯においてインピーダンスをhighにして、第3パターン12eを高周波的に切り離すために設けられている。すなわち、第1コイル12cは900MHz帯のトラップコイルとなる。さらに、第1コイル12cと第2コイル12dに大きな電流が誘起した場合、磁界結合してインダクタンス性能が変化してしまうことから、互いの中心軸を直交させて配置している。
【符号の説明】
【0065】
1 アンテナ装置、2 アンテナ装置、3 アンテナ装置、10 アンテナベース、10a ボルト部、11 アンテナカバー、12 アンテナ基板、12a 第1パターン、12b 第2パターン、12c 第1コイル、12d 第2コイル、12e 第3パターン、12f 接続ライン、12g 給電点、13 SDARSアンテナ、14 GPSアンテナ、15 回路基板、100 アンテナ装置、100MHz 周波数、110 アンテナカバー、120 アンテナベース、130 アンテナ基板、130a 切欠、131 アンテナ素子、132 アンテナコイル、134 アンプ基板、135 平面アンテナユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナカバーの下端がアンテナベースに嵌合されて内部に収納空間が形成されているアンテナ装置であって、
前記アンテナベース上に立設されて配置され、下部の給電点から上部にかけて側縁に沿って形成された第1パターンと、該第1パターンと接続ラインで接続された上部に形成された第2パターンと、直列接続されたチョークコイルとローディングコイルを介して前記第2パターンに接続された上部に形成された第3パターンとを有するアンテナ基板と、
前記第1パターンの側端と所定間隔Laだけ離隔されて前記アンテナベース上に配置されたアンテナユニットとを備え、
前記第2パターンの前記側縁側の斜辺と前記アンテナユニットのほぼ中心とを結ぶ仰角θaが約30°以下とされていると共に、前記アンテナユニットの使用周波数帯域の中心周波数の波長をλとした際に、前記所定間隔Laが約λ/4以上とされていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1パターンが2GHz帯の電話用アンテナとして動作し、前記第1パターンと前記第2パターンが900MHz帯の電話用アンテナとして動作し、前記チョークコイルは、900MHz帯以上において前記第3パターンを前記第2パターンから高周波的に切り離すよう機能し、直列接続された前記第3パターン、前記チョークコイル、前記ローディングコイル、前記第2パターンおよび前記第1パターンの全体がAM/FM周波数帯のアンテナとして動作することを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記チョークコイルの中心軸と前記ローディングコイルの中心軸とが、ほぼ直交して配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【公開番号】特開2012−124714(P2012−124714A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273794(P2010−273794)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【特許番号】特許第4913900号(P4913900)
【特許公報発行日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000227892)日本アンテナ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】