説明

アンテナ装置

【課題】アンテナの取付角度(方位角、仰角・俯角)について簡単に微調整をする。
【解決手段】マスト5に取り付けられマスト5の軸線回りの回転によりアンテナ本体2Aの向きを調整可能である第1のフレーム11と、第1のフレーム11に取り付けられ第1の回転軸P1回りの回転によりアンテナ本体の向きを調整可能である第2のフレーム13と、第2のフレーム13に取り付けられ第2の回転軸P2回りの回転によりアンテナ本体の向きを調整可能である第3のフレーム21と、第1のフレーム11と第2のフレーム13とを結合し第1のフレーム11に対し第2のフレーム13を第1の回転軸P1回りに回転させてアンテナ本体の向きを微調整可能である第1の微調整手段M1と、第3のフレーム21とアンテナ本体2Aとの間に設けられ第2の回転軸P2回りにアンテナ本体を回転させてアンテナ本体の向きを粗調整および微調整可能である角度調整機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。特に、指向性が鋭いアンテナ(例えばパラボラアンテナ)の取付角度の調整に有効であるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯(30〜300GHz)の電波を使用する無線システムでは、十分広い周波数帯域を利用できるため、多チャンネル映像信号などの大容量の信号を無線伝送するのに適している。そこで、そのような無線伝送を行うために、ミリ波(周波数:60GHz)を、アンテナ装置(例えば,アンテナ本体としてパラボラアンテナを用いるアンテナ装置)を用いて送信し、離れた位置に設けた別のアンテナ装置で受信させることが考えられる。一方、伝送しようとするミリ波は超高周波信号で、半値角が1°以下と指向性が鋭く、アンテナ装置の設置の際に、アンテナ本体の向き(取付角度)を、精度よく調整する必要がある。
【0003】
ところで、アンテナ装置において、アンテナの仰角・俯角の調整において、粗調整を行った後に、微調整用ねじ機構を利用して、微調整を行うものは知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで、特許文献1に記載のものは、マスト取付具と押さえ金具とでマストを挟み,それらをボルトにて締結してアンテナを取り付けるもので、方位角の粗調整・微調整は、前記ボルトを緩め、マスト取付具と押さえ金具とを前記マストの軸線回りに一体に回転させることで行うようになっている。
【0005】
また、特許文献2に記載のものは、マストにマスト取付具とマウント取付具とを用いて、パラボラ反射鏡を取り付けるもので、方位角の粗調整・微調整は、マウント取付具に方位角調整用円弧孔を、マスト取付具に前記方位角調整用円弧孔に対応する挿通孔を設け、前記方位角調整用円弧孔を通じて前記挿通穴にドライバーの軸部先端を挿入し、ドライバーを回動させることで、マスト取付具とマウント取付具とを前記マストの軸線回りに一体に回転させて行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−187602号公報(第4頁右下欄第5行〜第5頁左上欄第4行、図1および図4参照)
【特許文献2】特開平10−284915号公報(段落0019,0026、図2および図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載のものでは、方位角の粗調整も微調整も、アンテナをマストに取り付けるためのマスト取付具と押さえ金具とを固定するボルトを緩め、マスト取付具と押さえ金具とを前記マストの軸線回りに一体に回転させて行うので、粗調整も微調整も同様な調整作業であり、精度が求められる微調整作業が困難である。
【0008】
また、前記特許文献2に記載のものは、方位角の微調整をドライバーを用いて行うので、精度が求められる微調整作業が困難であり、ドライバーが近くにない場合には,微調整作業を行うことができない。
【0009】
よって、仰角・俯角だけでなく、方位角についても微調整が必要とされる指向性が鋭い、前述したようなアンテナの場合には、そのまま用いることができない。
【0010】
本発明は、アンテナの取付角度(方位角、仰角・俯角)について微調整を簡単にすることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、支持部材に対しアンテナ本体が前記支持部材の軸線に平行な第1の回転軸回りおよび前記第1の回転軸に直交する第2の回転軸回りに回転可能に設けられ、前記第1および第2の回転軸回りに回転することで前記アンテナ本体の取付角度を調整する構成とされたアンテナ装置であって、前記支持部材に取り付けられ前記支持部材の軸線回りの回転により前記アンテナ本体の向きを調整可能である第1のフレームと、前記第1のフレームに前記第1の回転軸回りに回転可能に取り付けられ前記第1の回転軸回りの回転により前記アンテナ本体の向きを調整可能である第2のフレームと、前記第2のフレームに取り付けられ前記第2の回転軸回りの回転により前記アンテナ本体の向きを調整可能である第3のフレームと、前記第1のフレームと前記第2のフレームとを結合し前記第1のフレームに対し前記第2のフレームを前記第1の回転軸回りに回転させて前記アンテナ本体の向きを微調整可能である第1の微調整手段と、前記第3のフレームと前記アンテナ本体との間に設けられ前記第2の回転軸回りに前記アンテナ本体を回転させて前記アンテナ本体の向きを粗調整および微調整可能である角度調整機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、前記支持部材に、前記第1の回転軸回りの回転により前記第1のフレームを位置調整してアンテナの向きを粗調整して取り付けた後、さらに、前記第1の微調整手段によって、前記第1の回転軸回りに第2のフレームを回転して、アンテナ本体の向きを微調整することができる。よって、角度調整機構による前記第2の回転軸回りについての、アンテナ本体の向きの粗調整・微調整だけでなく、前記第1の回転軸回りについても、アンテナの向きについて粗調整(第1のフレームの位置調整)・前記第1の微調整手段による微調整を簡単にすることができ、指向性の鋭いアンテナを、所望の方向に向けて精度よく取り付けることができる。
【0013】
請求項2に記載のように、前記第1のフレームは、前記第2の回転軸の軸線に平行に延びる1対の案内板部と、それらを連結する本体板部とを有する一方、前記第2のフレームは、前記第2の回転軸の軸線に平行に延び前記第1のフレームの案内板部の内側または外側に位置する1対の側板部と、前記第1の回転軸の軸線に平行に延び前記側板部を連結する本体板部とを有するものであり、前記第1の微調整手段は、前記第1のフレームの本体板部と前記第2のフレームの本体板部とを相対変位可能に結合するものであり、前記第1の回転軸と前記第1の微調整手段との間に前記支持部材が位置している構成とすることができる。
【0014】
このようにすれば、前記第1の回転軸と前記第1の微調整手段との間に前記支持部材が位置しているので、前記第1の回転軸と前記第1の微調整手段との距離が大きくなり、微調整の際に、前記第2のフレームの、前記第1の回転軸回りの回転角度(前記第1の回転軸回りのアンテナ本体の向きに対応)の制御が容易となる。
【0015】
請求項3に記載のように、前記第1の微調整手段は、前記第1のフレームの本体板部に形成された貫通孔と、前記第2のフレームの本体板部に形成された雌ねじ部と、前記貫通孔に挿通され前記雌ねじ部に螺合する微調整用ボルトと、前記第1のフレームの本体板部と前記第2のフレームの本体板部との間に設けられ前記両本体板部をそれらの間隔を広げる方向に付勢する弾性部材とを有する構成とすることができる。ここで、前記弾性部材としては、前記両本体板部をそれらの間隔を広げる方向に付勢する弾性機能を発揮するものであればよく、例えば板バネやコイルスプリングなどを用いることができる。
【0016】
このようにすれば、前記弾性部材を設けることで、前記微調整用ボルトと前記雌ねじ部との、ねじのバックラッシの影響を受けることなく、前記第1の回転軸回りに前記第2のフレームを回転させて、アンテナの向きを、前記第1の回転軸回りについて精度よく微調整でき、正確な方向調整が実現される。
【0017】
請求項4に記載のように、前記第1のフレームと、前記第2のフレームとの間には、前記第1のフレームに対し前記第2のフレームを固定する第1の固定手段が設けられていることが望ましい。
【0018】
このようにすれば、前記第1の回転軸回りの調整後に前記第1の固定手段にて前記第1のフレームに対し前記第2のフレームを固定することで、前記第1の回転軸回りについて調整された状態でのアンテナの向きが保持される。
【0019】
請求項5に記載のように、前記角度調整機構は、前記アンテナ本体が取り付けられ前記第3のフレームに対して前記第2の回転軸回りに回転することにより前記アンテナ本体の向きを調整可能である第4のフレームと、前記第2のフレームと前記第3のフレームとを結合し前記第2のフレームに対し前記第3のフレームを前記第2の回転軸回りに回転させて前記アンテナ本体の向きを粗調整可能である粗調整手段と、前記第3のフレームと前記第4のフレームとを結合し前記第3のフレームに対し前記第4のフレームを前記第2の回転軸回りに回転させて前記アンテナ本体の向きを微調整可能である第2の微調整手段とを備える構成とすることができる。
【0020】
このようにすれば、簡単な構造で、前記第2の回転軸回りについて、アンテナ本体の向きを、粗調整および微調整することができる。
【0021】
この場合、請求項6に記載のように、前記第2のフレームは、前記本体板部に設けられ前記側板部とは反対側に平行に延びる1対の案内板部を有し、前記第3のフレームは、前記第1の回転軸の軸線と平行に延び前記第2のフレームの案内板部の内側または外側に位置する1対の側板部と、前記第2の回転軸の軸線と平行に延び前記両側板部を連結する本体板部とを有し、前記第4のフレームは、前記第1の回転軸の軸線と平行に延び前記第3のフレームの側板部の内側または外側に位置する1対の側板部と、前記第2の回転軸と平行に延び前記側板部を連結する本体板部とを有するものであり、前記第2のフレームの案内板部、前記第3のフレームの側板部および前記第4のフレームの側板が、前記第2の回転軸回りに相対回転可能に結合されている構成とすればよい。
【0022】
このようにすれば、前記第3のフレームを前記第2の回転軸回りに回転させてアンテナ本体の向きを粗調整することができ、前記第3のフレームに対し前記第4のフレームを前記第2の回転軸回りに回転させてアンテナ本体の向きを微調整できる構造とすることができる。
【0023】
請求項7に記載のように、前記粗調整手段は、前記第2のフレームの案内板部および前記第3のフレームの側板部のうち外側に位置する板部に形成され前記第2の回転軸を中心とする円弧状の、長孔と、前記長孔を通じて挿通され前記第3のフレームを前記第2のフレームに対し前記第2の回転軸回りに回転可能に結合するボルト軸部材とを有する構成とすることができる。
【0024】
このようにすれば、前記第2の回転軸回りに前記第3のフレームが、長孔とボルト軸部材との係合関係で無理なく回転することができるので、前記第3のフレームを前記第2の回転軸回りについて回転することで、アンテナの向きを粗調整できる。
【0025】
請求項8に記載のように、前記第2の微調整手段は、前記第3のフレームの本体板部に形成された貫通孔と、前記第4のフレームの本体板部に形成された雌ねじ部と、前記貫通孔に挿通され前記雌ねじ部に螺合する微調整用ボルトと、前記第3のフレームの本体板部と前記第4のフレームの本体板部との間に設けられ前記両本体板部をそれらの間隔を広げる方向に付勢する弾性部材とを有する構成とすることができる。ここで、弾性部材としては、前記両本体板部をそれらの間隔を広げる方向に付勢する弾性機能を発揮するものであればよく、例えば板バネやコイルスプリングなどを用いることができる。
【0026】
このようにすれば、前記弾性部材を設けることで、ねじのバックラッシの影響を受けることなく、前記第2の回転軸回りに前記第4のフレームを回転させて、アンテナの向きを、前記第2の回転軸回りについて精度よく微調整できる。
【0027】
請求項9に記載のように、前記第3のフレームの側板部と前記第4のフレームの側板部との間に、前記第3のフレームに対し前記第4のフレームを固定する第2の固定手段が設けられていることが望ましい。
【0028】
このようにすれば、前記第2の回転軸回りについてアンテナの向きを微調整した後に前記第2の固定手段にて前記第3のフレームに対し前記第4のフレームを固定することで、微調整された状態が保持される。
【0029】
請求項10に記載のように、前記アンテナ本体は、バラボラアンテナで、前記第4のフレームに、受信部あるいは送信部を備えた前記パラボラアンテナが設けられている構成とすることができる。
【0030】
このようにすれば、離れた位置にある送信部と受信部との間で、前記送信部からミリ波を送信し、それを前記受信部で受信する場合のような、鋭い指向性が求められる場合にも対応することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、上記のように、支持部材に対しアンテナ本体が前記支持部材の軸線に平行な第1の回転軸回りおよび前記第1の回転軸に直交する第2の回転軸回りについて、それぞれ、アンテナの向きを粗調整および微調整できるので、指向性の鋭いアンテナの場合の、アンテナ取付角度の調整に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るアンテナ装置の使用例の説明図である。
【図2】本発明に係るアンテナ装置の側面図である。
【図3】同装置の背面図である。
【図4】同装置を後側上方からみた斜視図である。
【図5】同装置を後側下方からみた斜視図である。
【図6】同装置を前側下方からみた斜視図である。
【図7】同装置の底面図である。
【図8】図2のA−A線断面図である。
【図9】図3のB−B線断面図である。
【図10】アンテナ本体を支持する部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0034】
本発明に係るアンテナ装置は、例えば図1に示すように、送信側のアンテナ装置1Aのアンテナ本体2Aと、受信側のアンテナ装置1Bのアンテナ本体2Bとを対向して配置して、同軸ケーブルに代えて、無線伝送(ミリ波)で超高周波信号(テレビ放送信号を、たとえば60GHzに周波数変換した信号)を伝送するのに使用されるものである。ここで、伝送しようとする超高周波信号(ミリ波)は半値角が1°以下と指向性が鋭いので、パラボラアンテナが送信と受信とを行うのに適している。このときに、対向するパラボラアンテナを正確にずれない方向に調整するために、本発明の特徴点である第1および第2の微調整手段M1,M4が必要になる。なお、送信側のアンテナ装置1Aは、後述する第4のフレーム22に、マウント金具3を介してアンテナ本体2A(例えばパラボラアンテナ)の送信部4Aが設けられているが、受信側のアンテナ装置1Bは、送信部4Aに代えて受信部4Bが設けられている点が異なるだけである。よって、送信側のアンテナ装置1Aも受信側のアンテナ装置1Bも、基本的には同じ構造であるので、続く説明においては、送信側のアンテナ装置1Aについて説明する。
【0035】
アンテナ装置1Aは、図2〜図7および図10に示すように、上下方向に延びるマスト5(支持部材)に対し、アンテナ本体2Aが、互いに直交する第1および第2の回転軸P1,P2回りに回転可能に設けられ、アンテナ本体2Aを第1および第2の回転軸P1,P2回りに回転することでアンテナ本体2Aの取付角度(方位角、仰角・俯角)を調整することができる。第1の回転軸P1は、マスト5が延びる方向に平行な方向の軸線を有するものであり、第2の回転軸P2は第1の回転軸P1に直交する方向の軸線を有するものである。なお、この実施の形態では、第1の回転軸P1は上下方向に延び、この軸回りにアンテナ本体2Aを回転することで、方位角の調整(微調整)ができる。また、第2の回転軸P2は左右方向に延び、この軸回りにアンテナ本体2Aを回転することで、仰角・俯角の調整(粗調整・微調整)ができきる。
【0036】
マスト5には、鉛直断面コ字形状の第1のフレーム11が、1対の固定金具12A,12Bの間にマスト5を挟んで、取付ボルト10にて、それらを締結することで固定されている。この固定に先立って、第1のフレーム11をマスト5の軸線を回転軸として、前記軸線回りに回転し、アンテナ本体2Aの方位角の調整がなされる。つまり、第1のフレーム11をマスト5の軸線回りに回転することでアンテナ本体2Aの向き(方位角)をおおよそ調整できるようなっており、この調整が、アンテナ本体2Aの方位角の粗調整となる。なお、第1のフレーム11の本体板部11Cには、固定金具12Bを第1のフレーム11に取り付けるために固定金具12Bのねじ穴12Baにビス14が挿通される貫通孔11aと、取付ボルト10が螺合されるねじ穴11bが形成されている。固定金具12A,12Bには、取付ボルト10が挿通される貫通孔12Aa,12Bbが形成されている。
【0037】
第1のフレーム11には、マスト5と反対側において、鉛直断面コ字形状の第2のフレーム13が第1の回転軸P1回りに回転可能に取り付けられている。
【0038】
第1のフレーム11は、第2の回転軸P2の軸線に平行に延びる1対の案内板部11A,11Bと、それらの間に配置されそれらを連結する本体板部11Cとを有する。一方、第2のフレーム13も、第2の回転軸P2の軸線に平行に延びる1対の側板部13A,13Bと、第1の回転軸P1の軸線と平行に延び両側板部13A,13Bを連結する本体板部13Cとを有する。本体板部13Cの方が、本体板部11Cよりも上下方向の長さが長く、案内板部11A,11Bの外側に側板部13A,13Bが位置するように両フレーム11,13が相対変位可能に嵌め合わされている。なお、側板部13A,13Bが案内板部11A,11Bの外側に位置するようにようにしてもよい。
【0039】
そして、第1のフレーム11の案内板部11A,11Bと第2のフレーム13の側板部13A,13Bとは、それぞれ、一方の端部において回転軸ボルト15(第1の回転軸P1を構成する)にて回転可能に連結され、他方の端部において、第1のフレーム11に対し第2のフレーム13を第1の回転軸P1回りに回転させてアンテナ本体2Aの向き(方位角)を微調整する微調整手段M1が設けられている。つまり、第1の回転軸P1(回転軸ボルト15)と第1の微調整手段M1との間にマスト5が位置している。
【0040】
第1の微調整手段M1は、図8に詳細を示すように、本体板部11Cと本体板部13Cとの間にスプリング受16A,16Bを介して配置される圧縮スプリング17と、本体板部13Cに形成されたねじ穴13Ca(雌ねじ部)と、本体板部11Cに形成された貫通孔11Caと、この貫通孔11Caおよび圧縮スプリング17を貫通してねじ穴13Caに螺合される方位角微調整用ボルト18とを有する。この微調整用ボルト18を回転することで、本体板部11Cと本体板部13Cとの右側端部の間隔が変化し、第1の回転軸P1回りに第2のフレーム13が回転し、アンテナ本体2Aの方位角が小さく変化し、微調整される。この調整量は微小であるので、ねじ穴13Caと微調整用ボルト18との螺合関係を損ないねじ山がつぶれるというようなことなど起こらない。
【0041】
また、第1の微調整手段M1が設けられている側であって、一方の側において案内板部11A,11B(第1のフレーム11)と側板部13A,13B(第2のフレーム13)との間には、方位角の微調整後に第1のフレーム11に対し第2のフレーム13を固定する第1の固定手段M2が上下にそれぞれ設けられている。この第1の固定手段M2は、側板部13A,13Bに形成され第1の回転軸P1を回転中心とする円弧状の長孔13Aa,13Baと、案内板部11A,11Bに形成され長孔13Aa,13Baに対応するねじ穴11Aa,11Baと、長孔13Aa,13Baを通じてねじ穴11Aa,11Baに螺合される固定ボルト19とを有し、方位角を微調整する際には、固定ボルト19を長孔13Aa,13Baに沿って移動できるように緩められ、微調整終了後には、固定され、その調整終了後の状態を維持できるようにしている。
【0042】
また、第2のフレーム13には、第1のフレーム11とは反対側に、第3のフレーム21が第2の回転軸P2まわりに回転可能に取り付けられている。また、アンテナ本体2Aが取り付けられた第4のフレーム22が、第3のフレーム21に第2の回転軸P2回りに回転可能に取り付けられている。
【0043】
第2のフレーム13の本体板部13Cの左右両側において、側板部13A,13Bとは反対側に平行に延びる略三角形状の案内板部13D,13Eが形成されている。一方、第3のフレーム21は、第1の回転軸P1の軸線に平行に延び第2のフレーム13の案内板部13D,13Eの外側に配置される1対の側板部21A,21Bと、第2の回転軸P2の軸線に平行に延び両側板部21A,21Bを連結する本体板部21Cとを有する。側板部21A,21Bは、略三角形状の下側部分21Aa,21Baの上側に略矩形状の上側部分21Ab,21Bbが連接され、その上側部分21Ab,21Bbが、それらの間に配置される本体板部21Cにて連結されている。
【0044】
第4のフレーム22も、第1の回転軸P1の軸線に平行に延びかつ、第3のフレーム21の側板部21A,21Bの外側に位置しそれらの上側部分21Aa,21Baと略同じ幅である1対の側板部22A,22Bと、第2の回転軸P2の軸線に平行に延び両側板部22A,22Bを連結する本体板部22Cとを有する。なお、第4のフレーム22は上下方向に長く形成され、下部にアンテナ本体2Aが取付固定され、上部にマウント金具3を介して送信部4Aが設けられている。
【0045】
また、第2のフレーム13の案内板部13D,13Eの先端部において、回転軸ボルト23によって、第3のフレーム21の側板部21A,21Bの下側部分21Aa,21Baおよび第4のフレーム22の側板部22A,22Bが相対回転可能に連結され、第2のフレーム13に対し第3および第4のフレーム21,22が第2の回転軸P2(回転軸ボルト23)回りに回転可能になる構成とされている。
【0046】
第2のフレーム13の案内板部13D,13Eと第3のフレーム21の側板部21A,21Bには、それらを結合し本体板部13C寄りに第2のフレーム13に対し第3のフレーム21を第2の回転軸P2回りに回転させてアンテナ本体2Aの仰角・俯角を粗調整する粗調整手段M3が設けられている。そして、第3のフレーム21の本体板部21Cと第4のフレーム22の本体板部22Cには、それらを結合し第3のフレーム21に対し第2の回転軸P2回りに第4のフレーム22を回転させて、アンテナ本体2Aの仰角・俯角を微調整する第2の微調整手段M4が設けられている。
【0047】
第2のフレーム13の案内板部13D,13Eの外側に第3のフレーム21の左右側板部21A,21Bが位置するので、粗調整手段M3は、外側に位置する第3のフレーム21の左右側板部21A,21Bに形成され第2の回転軸P2(回転軸ボルト23の軸線)を中心とする円弧状の、長孔21a,21bと、案内板部13D,13Eに形成され長孔21a,21bに対応するねじ穴(側板部13Eのねじ穴13Eaのみ図示)と、長孔21a,21bを通じて前記ねじ穴に挿通され、第3のフレーム21を第2のフレーム13に対し第2の回転軸P2回りに回転可能に結合する固定用ボルト24(ボルト軸部材)とを有し、第2および第4のフレーム21,22を一体として第2の回転軸P2回りに回転させるものである。
【0048】
第2の微調整手段M4は、第2の回転軸P2から上方に離れた、本体板部21Cの左右方向の略中央位置で、第3のフレーム21の本体板部21Cと第4のフレーム22の本体板部22Cとの間隔を調整するものである。この第2の微調整手段M4は、第3のフレーム21の本体板部21Cに形成された貫通孔21Caと、第4のフレーム22の本体板部22Cに形成されたねじ穴22Ca(雌ねじ部)と、貫通孔21Caに挿通されねじ穴22Caに螺合する仰角・俯角微調整用ボルト27と、第3のフレーム21の本体板部21Cと第4のフレーム22の本体板部22Cとの間にスプリング受け26A,26Bを介して設けられた圧縮スプリング25とを有する。この微調整用ボルト27を回転することで、両本体板部21C,22Cの間隔が変化し、第2の回転軸P2回りに第4のフレーム22が回転し、アンテナ本体2Aの仰角・俯角が変化し調整される。
【0049】
この粗調整手段M3と第2の微調整手段M4とによって、第3のフレーム21とアンテナ本体2A(第4のフレーム22)との間に設けられ第2の回転軸P2回りの回転によりアンテナ位置(仰角、俯角)を調整する角度調整機構が構成されることになる。
【0050】
第3のフレーム21の側板部21A,21B(上側部分21Ab,21Bb)と第4のフレーム22の側板部22A,22Bとの間には、第3のフレーム21に対し第4のフレーム22を固定する第2の固定手段M5が設けられている。この第2の固定手段M5は、側板部22A,22Bに形成され第2の回転軸P2を中心とする円弧状の、長孔22Aa,22Baと、側板部21A,21Bに形成され長孔22Aa,22Baに対応するねじ穴21c,21dと、長孔22Aa,22Baを通じてねじ穴21c,21dに螺合される固定用ボルト28とを有し、アンテナ本体2Aの仰角・俯角を微調整する際には、固定用ボルト28を長孔22Aa,22Baに沿って移動できるように緩められ、微調整終了後には固定され、その微調整終了後の状態を維持できるようにしている。
【0051】
続いて、アンテナ本体2Aの方位角および仰角・俯角の調整方法について説明する。
(方位角の調整)
マスト5(支持部材)に、マスト5の軸線回りの回転により第1のフレーム11を位置調整(粗調整)して取り付けた後、微調整用ボルト18の回転によって、第1の回転軸P1回りに第2のフレーム13を回転して微調整することができる(第1の微調整手段M1)。このとき、固定ボルト19の締め付けは緩められている。
【0052】
この微調整の際に、圧縮スプリング17が設けられているので、微調整用ボルト18とねじ穴13Caとの螺合におけるバックラッシの影響を受けることなく、精度よく微調整できる。
【0053】
第1の回転軸P1回りの微調整終了後に固定ボルト19(第1の固定手段M2)と回転軸ボルト15を締め付けることで第1のフレーム11に対し第2のフレーム13が固定され、方位角について微調整された状態が保持される。
(仰角・俯角の調整)
第2の回転軸P2回りについても、粗調整のほか、微調整をすることができる。
【0054】
固定用ボルト24を緩めた状態で、第2のフレーム13に対し第2の回転軸P2回りに第3のフレーム21を回転させて、仰角・俯角の粗調整をすることができる(粗調整手段M3)。この粗調整後に、固定用ボルト24を締め付けることで第2のフレーム13に対し第3のフレーム21が固定され、粗調整された状態が保持される。また、側板部21A,21B(第3のフレーム21)の長孔21a,21bと固定用ボルト24との係合関係で、第2のフレーム13に対し第2の回転軸P2回りに第3のフレーム21が、所望の角度となるまで無理なく回転される。
【0055】
この粗調整後に、微調整ボルト27を回転して、第3のフレーム21に対し第2の回転軸P2回りに第4のフレーム22(アンテナ本体2A)を回転させて、アンテナ本体2Aの仰角・俯角の微調整をすることができる(第2の微調整手段M4)。このとき、固定用ボルト28の締め付けは緩められている。この場合、先行技術の場合とは異なり、アンテナ本体2Aの中央部付近に対応する、第4のフレーム22の部位を押して回転させるので、方位角が調整された後の状態で、左右のバランスよく安定した微調整が可能となる。なお、第1の微調整手段M1の場合と同様に、圧縮スプリング25が設けられているので、バックラッシの影響を受けることなく、精度よく微調整できる。
【0056】
この微調整終了後、固定用ボルト28(第2の固定手段M5)と回転軸ボルト23を締め付けることで第3のフレーム21に対し第4のフレーム22が固定され、俯角・仰角について微調整された状態が保持される。
【0057】
上記アンテナ装置によれば、第2の回転軸P2回りの位置調整(粗調整・微調整)だけでなく、第1の回転軸P1回りの位置調整についても、微調整をすることができ、指向性の鋭いアンテナの場合の、取付角度(方位角、仰角・俯角)の調整に有利となる。
【0058】
第1の微調整手段M1によって、第1のフレーム11の本体板部11Cに対し第2のフレーム12の本体板部12Cを第1の回転軸P1回りに回転させる、という簡単な動きで、方位角を微調整することができる。とくに、第1の回転軸P1と第1の微調整手段M1との間にマスト5が位置しているので、微調整用ボルト18の一回転当たりの方位角の変化が小さく、微調整に有利である。
【0059】
第2の微調整手段M4によって、第3のフレーム21の本体板部21Cに対し第4のフレーム22の本体板部22Cを第2の回転軸P2回りに回転させる、という簡単な動きで、仰角・俯角を微調整することができる。
【0060】
前記実施の形態では、支持部材として、上下方向に延びるマスト5を用いているが,本発明はそれに限定されるものではなく、マストが水平方向に延びていてもよいし,傾斜していてもよい。マスト以外を支持部材として用いることもできる。
【符号の説明】
【0061】
M1 第1の微調整手段
M2 第1の固定手段
M3 粗調整手段
M4 第2の微調整手段
M5 第2の固定手段
1A,1B アンテナ装置
2A,2B アンテナ本体
5 マスト(支持部材)
11 第1のフレーム
11A,11B 案内板部
11Aa,11Ba ねじ穴
11C 本体板部
11Ca 貫通孔
13 第2のフレーム
13A,13B 側板部
13Aa,13Ba 長孔
13C 本体板部
13Ca ねじ穴
13D,13E 案内板部
15 回転軸ボルト
17 圧縮スプリング(弾性部材)
18 微調整用ボルト
19 固定ボルト
21 第3のフレーム
21c,21d ねじ穴
21A,21B 側板部
21C 本体板部
21Ca 貫通孔
22 第4のフレーム
22A,22B 側板部
22Aa,22Ba 長孔
22C 本体板部
22Ca ねじ穴
22Aa,22Ba 長孔
23 回転軸ボルト
24 固定用ボルト(ボルト軸部材)
25 圧縮スプリング(弾性部材)
27 微調整用ボルト
28 固定用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に対しアンテナ本体が前記支持部材の軸線に平行な第1の回転軸回りおよび前記第1の回転軸に直交する第2の回転軸回りに回転可能に設けられ、前記第1および第2の回転軸回りに回転することで前記アンテナ本体の取付角度を調整する構成とされたアンテナ装置であって、
前記支持部材に取り付けられ前記支持部材の軸線回りの回転により前記アンテナ本体の向きを調整可能である第1のフレームと、
前記第1のフレームに前記第1の回転軸回りに回転可能に取り付けられ前記第1の回転軸回りの回転により前記アンテナ本体の向きを調整可能である第2のフレームと、
前記第2のフレームに取り付けられ前記第2の回転軸回りの回転により前記アンテナ本体の向きを調整可能である第3のフレームと、
前記第1のフレームと前記第2のフレームとを結合し前記第1のフレームに対し前記第2のフレームを前記第1の回転軸回りに回転させて前記アンテナ本体の向きを微調整可能である第1の微調整手段と、
前記第3のフレームと前記アンテナ本体との間に設けられ前記第2の回転軸回りに前記アンテナ本体を回転させて前記アンテナ本体の向きを粗調整および微調整可能である角度調整機構とを備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1のフレームは、前記第2の回転軸の軸線に平行に延びる1対の案内板部と、それらを連結する本体板部とを有する一方、
前記第2のフレームは、前記第2の回転軸の軸線に平行に延び前記第1のフレームの案内板部の内側または外側に位置する1対の側板部と、前記第1の回転軸の軸線に平行に延び前記側板部を連結する本体板部とを有するものであり、
前記第1の微調整手段は、前記第1のフレームの本体板部と前記第2のフレームの本体板部とを相対変位可能に結合するものであり、
前記第1の回転軸と前記第1の微調整手段との間に前記支持部材が位置していることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の微調整手段は、前記第1のフレームの本体板部に形成された貫通孔と、前記第2のフレームの本体板部に形成された雌ねじ部と、前記貫通孔に挿通され前記雌ねじ部に螺合する微調整用ボルトと、前記第1のフレームの本体板部と第2のフレームの本体板部との間に設けられ前記両本体板部をそれらの間隔を広げる方向に付勢する弾性部材とを有することを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1のフレームと、前記第2のフレームとの間には、前記第1のフレームに対し前記第2のフレームを固定する第1の固定手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記角度調整機構は、前記アンテナ本体が取り付けられ前記第3のフレームに対して前記第2の回転軸回りに回転することにより前記アンテナ本体の向きを調整可能である第4のフレームと、
前記第2のフレームと前記第3のフレームとを結合し前記第2のフレームに対し前記第3のフレームを前記第2の回転軸回りに回転させて前記アンテナ本体の向きを粗調整可能である粗調整手段と、
前記第3のフレームと前記第4のフレームとを結合し前記第3のフレームに対し前記第4のフレームを前記第2の回転軸回りに回転させて前記アンテナ本体の向きを微調整可能である第2の微調整手段とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2のフレームは、前記本体板部に設けられ前記側板部とは反対側に平行に延びる1対の案内板部を有し、
前記第3のフレームは、前記第1の回転軸の軸線と平行に延び前記第2のフレームの案内板部の内側または外側に位置する1対の側板部と、前記第2の回転軸の軸線と平行に延び前記両側板部を連結する本体板部とを有し、
前記第4のフレームは、前記第1の回転軸の軸線と平行に延び前記第3のフレームの側板部の内側または外側に位置する1対の側板部と、前記第2の回転軸と平行に延び前記側板部を連結する本体板部とを有するものであり、
前記第2のフレームの案内板部、前記第3のフレームの側板部および前記第4のフレームの側板が、前記第2の回転軸回りに相対回転可能に結合されていることを特徴とする請求項5記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記粗調整手段は、前記第2のフレームの案内板部および前記第3のフレームの側板部のうち外側に位置する板部に形成され前記第2の回転軸を中心とする円弧状の長孔と、前記長孔を通じて挿通され前記第3のフレームを前記第2のフレームに対し前記第2の回転軸回りに回転可能に結合するボルト軸部材とを有することを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第2の微調整手段は、前記第3のフレームの本体板部に形成された貫通孔と、前記第4のフレームの本体板部に形成された雌ねじ部と、前記貫通孔に挿通され前記雌ねじ部に螺合する微調整用ボルトと、前記第3のフレームの本体板部と前記第4のフレームの本体板部との間に設けられ前記両本体板部をそれらの間隔を広げる方向に付勢する弾性部材とを有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第3のフレームの側板部と前記第4のフレームの側板部との間に、前記第3のフレームに対し前記第4のフレームを固定する第2の固定手段が設けられていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記アンテナ本体は、バラボラアンテナで、
前記第4のフレームに、受信部あるいは送信部を備えた前記パラボラアンテナが設けられていることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1つに記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−80362(P2012−80362A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224220(P2010−224220)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】