説明

アンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法

【課題】 本発明は、リン酸アンモニウムマグネシウム形成反応に、反応生成物を繰り返し使用することで、反応原料のマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を新たに補給することなく、アンモニア態窒素を含む排水を浄化処理する方法の提供。
【解決手段】 そのアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法は、アンモニア態窒素を含む排水にマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を混合してリン酸アンモニウムマグネシウムを析出させ固液分離する第1工程、固液分離後のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーに次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩又はハロゲンガスを接触させてリン酸アンモニウムマグネシウムを分解させリン酸マグネシウム及び窒素を形成する第2工程、並びに第2工程で生成したリン酸マグネシウムを第1工程に循環しマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源として利用する第3工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的硝化脱窒素処理を用いることなくアンモニア態窒素を含む排水を浄化処理する方法に関する。
より詳しくは、本発明は、固体であるリン酸アンモニウムマグネシウムの形成反応を利用するアンモニア態窒素を含む排水を浄化処理する方法に関する。
さらにいえば、リン酸アンモニウムマグネシウム形成反応に、反応生成物を繰り返し使用することで、反応原料のマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を新たに補給することなく、アンモニア態窒素を含む排水を浄化処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア態窒素成分を含む排水は、凝集沈殿法その他の薬剤添加による処理が難しく、専ら嫌気性細菌による生物処理である生物学的硝化脱窒素処理が行われるのが現状である。
その生物処理方法は、アンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する硝化工程と、硝酸態窒素を窒素ガスに変換する脱窒工程の2工程により行われるため、2つの異なる反応槽が必要となると共に、著しく長い処理時間を要するため、処理効率が著しく悪いという問題があった。
【0003】
また、この生物処理方法では、脱窒素細菌を保有するために、大容量の嫌気槽が必要となり、設備建設コスト高騰、装置設置面積の増大を招くという問題もある。
さらに、この脱窒素細菌の活動は、周囲の温度環境、被処理水中に含有される成分等により著しく影響される。
そのため、特に温度が低くなる冬場になると活動が低下し、その結果脱窒素作用が低下し処理効率が不安定となるという問題もある。
【0004】
[先行技術文献]
【特許文献1】特開平7−284762号公報
【特許文献2】特開平11−10194号公報
【特許文献3】特開2001−104966
【0005】
このようなことに加えて、近年排水中の窒素の総量が規制されるなど排水処理基準の厳格化などとあいまって有効、かつ、簡易な処理方法の開発機運が高まっており、特に、高濃度、小規模の排水処理ニーズに対応できる処理方法が求められている。
そのようなことから、近年生物処理によらない方法が提案されており、それには水和酸化鉄粒子とゼオライト粒子を用いてアンモニア性窒素及びリン酸イオンの両者を吸着し、排水中からアンモニア性窒素及びリン酸イオンの両者を分離除去する方法がある(特許文献1)。
【0006】
この方法では、アンモニア性窒素及びリン酸イオンの両者を吸着した吸着剤である水和酸化鉄粒子及びゼオライト粒子を苛性ソーダ溶液により処理してアンモニア性窒素及びリン酸イオンの両者を脱着させる。
そのアンモニア性窒素及びリン酸イオンの両者を含む苛性ソーダ脱着液と可溶性マグネシウム化合物とを混合して、固体であるリン酸アンモニウムマグネシウム(NH4MgPO4)の6水塩を形成し濾過等の固液分離により、リン酸アンモニウムマグネシウムを分離回収する。
【0007】
この回収されたリン酸アンモニウムマグネシウム・6水塩(以下、これを「MAP」という)は、窒素分とリン分を含有する肥料等として利用可能であり、この方法は、下水等の排水に希薄な濃度で含有されるアンモニア性窒素及びリン酸イオンの両者を除去して排水の浄化をできる上に、かつ分離したMAP(NH4MgPO4・6H2O)は有効利用できる有価成分であることから、優れた浄化技術であると提案者は賞賛している。
【0008】
しかしながら、この方法による処理を工業的に行うためには、以下の問題点がある。
(1)MAP結晶を系外に取出す操作は煩雑で、そのために該結晶を搬送、貯留等するためには大掛かりな装置が必要になる
(2)MAP結晶は装置内部に固着してスケール化しやすく、装置のメンテナンスに手間がかかる。
(3)MAP結晶には、不純物が付着し易く、そのため有効利用が難しく、処分費用がかかり、かつこの方法には燐酸イオン源とマグネシウムイオン源とが必要であり、そのためのコストもかかる。
【0009】
この方法とは別にリン酸イオン含有排水にマグネシウム塩を添加し、その後生物処理を行う方法もあり、この方法でもMAPは有価成分として回収するが、排水中に含有するリンの化合物がMAPを形成可能な正リン酸以外の形態のものも多く、そのためMAPの生成効率及び回収効率が低いということから、これを改良した方法も既に提案されている(特許文献2)。
この改良方法は、MAPを形成するために用いるマグネシウム塩を添加する前に、排水中のリンの化合物を生物処理により正リン酸に転化せしめるものである。
【0010】
この改良方法及び前記した吸着による方法の両方法とも、MAPを形成する際のリン酸イオンについては、排水中に含有するものを利用しており、MAPを形成するにはアンモニウムイオンとリン酸イオンが等モル量であることが必要であるが、排水中に含有するリン酸イオンはアンモニウムイオンに比べると大分少ない量である。
その結果、アンモニウムイオンを充分に除去するには、不足分のリン酸分を排水中に添加することが必要となる。
【0011】
また、前記改良方法においては、生物処理が不必要になったわけではなく、それに加えてMAP生成用の設備及び分離用設備等が必要となり、そのため設備建設コストが特段低減したわけでもない。
さらに、吸着による方法は、2種の吸着剤を用いており、そのための設備機器もコストを要し、かつ高度な処理技術も必要であり、これらの点でも生物処理による方法に比し特段優れているともいえない。
【0012】
そのようことから、排水中のリン酸イオンが少量でアンモニウムイオンと等モル量存在しない場合においてもリン酸成分を添加することなく、MAPを形成し、分離回収する技術も既に提案されている(特許文献3)。
その方法は、MAPからアンモニア及び水を放出したもの(以下、「H−MAP」という)を、アンモニウムイオン含有排水と混合してMAPを形成し、その形成したMAPを固液分離により分離し、分離後のMAPを加熱してアンモニア及び水を放出分離するものである。
【0013】
その結果、この特許文献3の提案の方法では、H−MAP及びMAPはアンモニアの分離除去に繰り返し利用することができる。
以上のとおりであるから、この提案の方法では、マグネシウムイオン源及びリン酸イオン源は繰り返し使用することができ、一度排水中にH−MAPを添加したら、その後それらイオン源の排水中への添加は一切不要となる。
【0014】
そのため、外部から排水中への反応材料の投入は最初の一度だけであり、その後は反応材料の添加は一切必要なく、このMAPの熱分解を繰り返す方法は、生物処理を使用しない点に加えこの点においても優れている。
前記のとおりではあるが、このMAPの熱分解を繰り返す方法は、MAPの分解が熱分解であることから、エネルギー消費量が高く、かつ分解後生成するのが排水から分離したアンモニアのそのもので、窒素に転化していないことから、無害、無臭化されておらず、これらの点において充分な技術と言い難いところがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明者は、この熱分解を繰り返す方法の利点を活かしつつ、先の短所を解消できる技術の研究開発に鋭意努め、その結果開発に成功したのが本発明である。
すなわち、本発明者は、MAPの結晶を分離して、その分解方法について検討している過程において、結晶の状態であっても次亜ハロゲン酸等の酸化剤によってアンモニア成分を分解除去できる意外な事実を見出し、その知見を利用することで本発明を完成させた。
【0016】
したがって、本発明者は、この熱分解を繰り返す方法の利点を活かしつつ、先の短所を解消することができる、アンモニア態窒素を含む排水を浄化処理する方法を提供することを発明の解決すべき課題とするものである。
すなわち、本発明は、排水中のアンモニア態窒素をMAPとして分離除去するものであり、その際には、マグネシウムイオン源及びリン酸イオン源は繰り返し使用することができる利点を活かしつつ、MAPの分解に熱分解を使用せず、かつMAPの分解後にアンモニアを生成することなく、窒素まで分解することができるアンモニア態窒素を含む排水を浄化処理する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記課題を達成するためのアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法を提供するものであり、それはアンモニア態窒素を含む排水にマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を混合してリン酸アンモニウムマグネシウムを析出させ固液分離する第1工程、固液分離後のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーに次亜ハロゲン酸塩又はハロゲンガスを接触させてリン酸アンモニウムマグネシウムを分解させリン酸マグネシウム及び窒素を形成する第2工程、並びに第2工程で生成したリン酸マグネシウムを第1工程に循環しマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源として利用する第3工程を含むことを特徴とするものである。
【0018】
そして、そのアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法は、以下のことが好ましい。
(1)排水に混合するマグネシウムイオン源はマグネシウム対窒素のモル比で1.5以上:1であり、リン酸イオン源はリン対窒素のモル比で1以下:1以下であること、
すなわち、両イオン源の添加量については、マグネシウム源は窒素1モルに対し1.5モル以上であり、リン酸イオン源は窒素1モルに対し1モル以下であること
(2)第1工程の固液分離は、沈降分離であり、第2工程のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーは、沈降分離により得られたスラリーであること
(3)第1工程の固液分離は、濾過又は遠心分離であり、第2工程のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーは、固液分離後のリン酸アンモニウムマグネシウムに原水又は浄化処理済み水を添加して形成されたものであること
(4)次亜ハロゲン酸塩が次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム又はこれらの混合物であること
(5)ハロゲン酸塩が塩素酸ナトリウム、塩素酸カルシウム、塩素酸カリウム、塩素酸マグネシウム又はこれらの混合物であること
(6)ハロゲンガスが塩素ガスであること
【発明の効果】
【0019】
本発明のアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法においては、リン酸アンモニウムマグネシウムを形成し、これを分解して生成したリン酸マグネシウムをマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源として利用するものであり、その結果マグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を繰り返し使用することができるので、マグネシウムイオン源及びリン酸イオン源については、排水に一度だけ添加すればよく、その後は新たにマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を添加することなく、MAPを形成することができる。
【0020】
また、本発明では形成されたMAPは、そのスラリーに次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩又はハロゲンガスを接触させることで分解させることができ、特許文献3で提案するMAPを熱分解で分解する場合に比し熱エネルギーを低減することができる。
さらに、本発明の方法では、MAPが分解して生成されるのはアンモニアではなく、無臭、無害の窒素であり、特許文献3で提案するMAPを熱分解で分解した場合に生成するアンモニアのように臭気のある有害物ではないから、更なる無害化処理を必要としないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下において、本発明について発明を実施するための最良の形態を含む実施の形態に関し図1及び図2を用いて詳述するが、本発明は、この実施の形態によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0022】
本発明は、前記したとおりアンモニア態窒素を含む排水にマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を混合してリン酸アンモニウムマグネシウムを析出させ固液分離する第1工程、固液分離後のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーに次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩又はハロゲンガスを接触させてリン酸アンモニウムマグネシウムを分解させリン酸マグネシウム及び窒素を形成する第2工程、並びに第2工程で生成したリン酸マグネシウムを第1工程に循環しマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源として利用する第3工程を含むことを特徴とするものである。
【0023】
この排水の浄化処理工程においてはリン酸アンモニウムマグネシウム生成反応、リン酸アンモニウムマグネシウムの次亜ハロゲン酸塩(ハロゲン酸塩)による分解反応、及びハロゲンガスによる分解反応があるが、それら反応について化学反応式で示すと以下のとおりである。
[燐酸アンモニウムマグネシウムの生成反応について]
NH4++Mg2++PO43- → NH4MgPO4↓ (式1)
[次亜塩素酸による分解反応について]
NH4MgPO4+3HClO → 1/2N2↑+3Cl-+1/3Mg3(PO4)2
+1/3H3PO4+3H2O (式2)
[塩素ガスによる分解反応について]
NH4MgPO4+3/2Cl2
1/2N2↑+3HCl+1/3Mg3(PO42↓+1/3H3PO4 (式3)
【0024】
本発明において、排水に最初に添加するマグネシウムイオン源の化合物については、排水に溶解してMg2+を生成することができる化合物であれば特に制限されることなく各種化合物が使用可能であり、それには炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウムあるいは酸化マグネシウム等が例示できるが、取扱い性、陰イオンが炭酸イオンであることから溶解後に元来排水に含んでいない陰イオンを新たに発生させることがない点で炭酸マグネシウムが好ましい。
【0025】
さらに、排水に最初に添加するリン酸イオン源の化合物についても、排水に溶解してリン酸イオンを生成することができる化合物であれば特に制限されることなく各種化合物が使用可能であり、それには正リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸マグネシウム、あるいはリン酸カルシウム等が例示できるが、取扱い性、陽イオンが水素イオンであることから溶解後に元来排水に含んでいない陽イオンを新たに発生させることがない点で正リン酸が好ましい。
【0026】
塩基性炭酸マグネシウム等のマグネシウムイオン源化合物及び燐酸等のリン酸イオン源化合物を排水と混合するが、排水に混合するマグネシウムイオン源はマグネシウム対窒素のモル比で1.5以上:1であり、リン酸イオン源はリン対窒素のモル比で1以下:1であることが好ましい。
すなわち、両イオン源の添加量については、マグネシウム源は窒素1モルに対し1.5モル以上であり、リン酸イオン源は窒素1モルに対し1モル以下であることことが好ましい。
また、その混合時には排水に両化合物を添加するのが良いが、逆であってもよい。
さらに、その添加の際には、両化合物は固体のままでもよく水を加えてスラリー状態にしてにもよい。
【0027】
[実施の形態1]
次いで、図1及び2を用いて 本発明の態様について説明するが、まず、MAPの固液分離に沈降分離を用いる形態(以下においては「実施の形態1」と略称することもある)について図1を用いて詳述する。
その実施の形態1では、まずアンモニア態窒素を含む排水に塩基性炭酸マグネシウムと燐酸とを攪拌しながら添加し、その後苛性ソーダ溶液を添加し、その添加後は10分〜3時間程度放置するのがよく、その際には攪拌を継続するのがよい。
【0028】
なお、この苛性ソーダ溶液の添加はリン酸イオン源化合物がリン酸であり、その結果pHが極端に低下するためであり、該化合物がリン酸塩であれば、極端なpH低下がないので、その添加は特段必要ない。
前記のように水酸化ナトリウム水溶液(苛性ソーダ溶液)を添加した場合には添加後前記時間放置するのがよく、その際の水酸化ナトリウム水溶液の濃度は5〜50%程度がよく、添加後のpHは8〜9程度がよく、特に8前後が好ましい。
なお、水酸化ナトリウム水溶液を添加しない場合にも前記時間放置するのがよい。
【0029】
この放置後は、MAPを排水から分離するが、その分離はMAPがスラリーで得られることから本実施の形態1のように沈降分離によるのがよく、その理由はスラリー化していることにより、MAP分解反応のために使用する次亜塩素酸ナトリウム又は塩素ガスとの接触性及び反応性に優れているからである。
なお、MAPの分離には、前記したとおり沈降分離が好ましいが、他の固液分離手段でも特に制限されることなく各種のものが使用でき、それには沈降分離、濾過、あるいは遠心分離等が例示できる。
また、沈降分離以外の手段により固液分離しMAPがスラリー化していない場合には、分離されたMAPに原水あるいは排水処理済み水等を添加することによりスラリー化すればよい。
【0030】
そのMAP分解に使用する次亜塩素酸ナトリウム又は塩素酸塩ナトリウムについては、水中でMAPを分解し、窒素を生成することがきる能力を有する次亜ハロゲン酸アルカリ塩又はハロゲン酸アルカリであれば、特に次亜塩素酸ナトリウム又は塩素酸ナトリウムに制限されることなく各種のもが使用でき、それには次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸カルシウムあるいは塩素酸マグネシウム等が例示できる。
また、塩素ガスについても、特にそれに限定されるものではなく、水中でMAPを分解し、窒素を生成することがきる能力を有するハロゲンガスであれば、特に制限されることなく各種のもが使用でき、それにはフッ素、臭素、るいはヨウ素等が例示できる。
【0031】
そのMAPのスラリーに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加した後は、所定時間放置し、その後MAPが分解し、新たに固形分が沈降するが、その新たに生成した固形分がリン酸マグネシウムである。
その次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度は有効塩素3〜15%がよく、放置時間は操作温度、酸化剤濃度等を考慮し、最適の時間を設定すのがよく、放置時には攪拌を継続するのがよい。
その新たに生成した固形分のリン酸マグネシウムは、マグネシウムイオン源及びリン酸イオン源となるので、これを排水中に添加する。
これにより、新たに塩基性炭酸マグネシウムと燐酸とを使用することなく、マグネシウムイオン源及びリン酸イオン源として繰り返し使用することができる。
【0032】
[実施の形態2]
次に、MAPの固液分離に濾過を用いる形態(以下においては「実施の形態2」と略称することもある)について図2を用いて詳述する。
実施の形態1の場合と同様にまずアンモニア態窒素を含む排水に塩基性炭酸マグネシウムと燐酸とを攪拌しながら添加し、MAPを生成するが、それを生成する際の放置時間、攪拌の採用、水酸化ナトリウム水溶液の添加の採用、それを採用した場合の添加後のpH等についても、実施の形態1の場合と同様である。
【0033】
その生成したMAPは、濾過により排水と分離するが、この点が実施の形態1と異なるのみであり、他は実施の形態1と同様にするのがよい。
この差異のために分離されたMAPには、沈降分離の場合とは異なり同伴する水がないので、水(原水あるいは排水処理済み水がよい)を添加することによりスラリー化し、その後MAP分解用の塩素ガス等のハロゲンガスあるいは次亜塩素酸ソーダ等の次亜ハロゲン酸アルカリ塩を添加することになり、他の点は実施の形態1と同様にすれば良い。
【実施例1】
【0034】
アンモニア態窒素をNとして976ミリグラム(mg)/リットル(L)含む排水350mLに塩基性炭酸マグネシウム(MgOとして約45%)2.7gと85w%燐酸2.8gを加えた。
リン酸添加後のpHは約2.5で、酸性であることから、恒温槽中25℃で攪拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.8に調整した。
【0035】
その調整した後、約1.5時間前記液温を維持し攪拌を継続してから析出した固形分を沈降させて上澄み液の組成を分析した。
その組成はアンモニア態窒素がNとして132mg/L、マグネシウムが260mg/L、燐が27mg/Lであった。
また、沈降した固形分は沈降性の良い白色結晶で、その組成はアンモニア態窒素がNとして4.95%、マグネシウムが10.9%、燐が13.7%であった。
【0036】
次に、前記上澄み液280mLを分離し、残りの前記固形分を含むスラリーに有効塩素約5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液350mLを加え脱塩水で550mLにメスアップし、恒温槽中25℃で約4時間攪拌した後固形分を沈降させた。
このときの上澄み液の組成はアンモニア態窒素がNとして0.1mg/L未満、マグネシウムが35mg/L、燐が766mg/Lであった。
また、固形分の組成は、アンモニア態窒素がNとして0.08%、マグネシウムが5.5%、燐が7.1%であった。次に、このアンモニア態窒素が分解除去された、固形分を含むスラリーをアンモニア態窒素含有排水の処理に繰り返し使用した。
【実施例2】
【0037】
アンモニア態窒素をNとして4653mg/L、蟻酸を主成分とする有機物をCODとして612mg/L含む排水200mLに塩化マグネシウム(6水和物)13.89gと85w%燐酸5.94gとを加えた。
リン酸添加後のpHは2.33であることから、恒温槽中にて25℃で攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりpHを8.7に調整した。
その調整後、約1.5時間前記液温を維持し攪拌を継続してから析出した固形分を吸引濾過した。
【0038】
以上の実験操作で得たろ液量は218mL、その組成はアンモニア態窒素がNとして1310mg/L、CODが485mg/L、マグネシウムが1380mg/L、燐が5mg/L未満であった。
また、固形分の重量(未乾燥)は25.5g、その組成は、アンモニア態窒素がNとして1.71%、マグネシウムが4.95%、燐が6.2%であった。
【0039】
次に、有効塩素約5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液350mLに脱塩水を加えて550mlとした液に前記固形分を投入して恒温槽中25℃で約4時間攪拌した後ろ過した。
以上の実験操作で得たろ液量は458mL、その組成はアンモニア態窒素がNとして0.1mg/L未満、マグネシウムが190mg/L、燐が690mg/Lであった。
また、固形分の重量(未乾燥)は20.3g、その組成はアンモニア態窒素がNとして0.1%、マグネシウムが6.6%、燐が7%であった。
次に、このアンモニア態窒素が分解除去された固形分を、アンモニア態窒素含有排水の処理に繰り返し使用した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1を図示する。
【図2】本発明の実施の形態2を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア態窒素を含む排水にマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源を混合してリン酸アンモニウムマグネシウムを析出させ固液分離する第1工程、固液分離後のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーに次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩又はハロゲンガスを接触させてリン酸アンモニウムマグネシウムを分解させリン酸マグネシウム及び窒素を形成する第2工程、並びに第2工程で生成したリン酸マグネシウムを第1工程に循環しマグネシウムイオン源及びリン酸イオン源として利用する第3工程を含むことを特徴とするアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法。
【請求項2】
排水に混合するマグネシウムイオン源はマグネシウム対窒素のモル比で1.5以上:1であり、リン酸イオン源はリン対窒素のモル比で1以下:1である請求項1に記載のアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法。
【請求項3】
第1工程の固液分離は、沈降分離であり、第2工程のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーは、沈降分離により得られたスラリーである請求項1又は2に記載のアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法。
【請求項4】
第1工程の固液分離は、濾過又は遠心分離であり、第2工程のリン酸アンモニウムマグネシウムスラリーは、固液分離後のリン酸アンモニウムマグネシウムに水を添加して形成されたものである請求項1又は2に記載のアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法。
【請求項5】
水が原水又は浄化処理済み水である請求項4に記載のアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法。
【請求項6】
次亜ハロゲン酸塩が次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム又はこれらの混合物である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法。
【請求項7】
ハロゲンガスが塩素ガスである請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアンモニア態窒素を含む排水の浄化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−200599(P2008−200599A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39102(P2007−39102)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】