説明

アンモニウムイオンの分解

本発明は、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成されたアンモニウムをアンモニウム分解帯域において分子状窒素に変換する方法であって、アンモニア燃焼帯域において、アンモニアから窒素酸化物含有蒸気ストリームを調製することと;このアンモニウム分解帯域に,上記蒸気ストリームの少なくとも一部と、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法で形成されたアンモニウムを含有する第1液体ストリームと、硝酸および亜硝酸から選択される少なくとも1種の酸を硝酸+亜硝酸の総濃度が少なくとも30重量%で含有する第2液体ストリームとを、個々におよび/または予め混合された組合せとして供給することによって接触させ、それによって、アンモニウム分解帯域内で混合流体を形成させることと;アンモニウム分解帯域においてこの混合流体中のアンモニウムイオンを窒素酸化物と反応させながら分子状窒素を形成させることとを含む方法に関する。さらに本発明は、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成されたアンモニウムを変換するための設備に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、シクロヘキサノンオキシムを製造するためのリン酸ヒドロキシルアミンオキシム法(HPO法)からのアンモニウムイオン(本明細書においては、以後「アンモニウム」と称する場合もある)を分子状窒素に変換する方法に関する。さらに本発明は、この種の方法を実施するための設備に関する。
【0002】
HPO法については英国特許第1287303号明細書に記載されており、ここでは硝酸イオン(nitrate)がヒドロキシルアミンに接触還元されるが、望ましくない副生物としてアンモニウムも形成される。HPO法の処理液中に存在するアンモニウムは、窒素酸化物蒸気(窒素酸化物ガス(nitrous gas))と反応させることによって分子状窒素を形成しながら除去される。この除去は、典型的には80℃以下の温度で実施される。この窒素酸化物蒸気は、典型的には、アンモニアを酸化することによって硝酸を調製する方法から得られる。次いでこの蒸気は凝縮器に誘導され、一部の蒸気は凝縮されて硝酸を含む液体(典型的には30重量%未満の硝酸を含む水溶液である)を形成し、残りの蒸気の一部はHPO法の処理液ストリーム中に存在するアンモニウムの除去に使用され、一部はさらなる量の硝酸の形成に使用される。
【0003】
米国特許第5,364,609号明細書によれば、英国特許第1287303号明細書の方法は処理能力が小さく、窒素酸化物(および硝酸)を調製するための処理装置に多額の投資が必要となるという欠点がある。さらに、窒素酸化物を含む蒸気を放出することは環境に及ぼす影響が大きいと言われている。米国特許第5,364,609号明細書のHPO法においては、アンモニウムイオンを含む水性酸反応媒体がヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域およびオキシム合成帯域の間を連続的に循環する。この方法は、
(i)ヒドロキシルアンモニウム塩を形成するための水性酸反応媒体に、硝酸イオンまたは硝酸イオンに変換すべき窒素酸化物を窒素供給源により連続供給することと;
(ii)この硝酸イオンを分子状水素で接触還元してヒドロキシルアミンにする(ここで、硝酸イオンの還元における副生物としてアンモニウムイオンが形成される)ことと;
(iii)このアンモニウムイオンを窒素酸化物と反応させることによって除去することと;
(iv)水性酸反応液を、アンモニアの触媒燃焼により生成した窒素酸化物を含む気体流と接触させることと;
(v)このアンモニアの触媒燃焼において生成した上記窒素酸化物含有気体流からの窒素酸化物の0.01〜5重量%を利用することによりアンモニウムイオンを窒素に変換することと;
(vi)上記窒素含有気体流からの窒素酸化物の残りを硝酸の調製に利用することと
を含む。
【0004】
他の文書である英国特許第1287302号明細書においても、硝酸イオンが接触還元されてヒドロキシルアミンとなり、アンモニウム分解帯域でアンモニウムイオンの分解が起こるHPO法が記載されており、ここではHPO法のアンモニウムイオン含有処理液がアンモニア燃焼帯域で生成した窒素酸化物含有気体と40℃を超える温度で直接接触され、この気体ストリームから希硝酸溶液を予め凝縮するステップを経ないことに注目されたい。次いで、アンモニウムイオン分解帯域からの残りの気体ストリームが第2吸収帯域で処理され、ここで残りの窒素酸化物がHPO処理液ストリームに硝酸として40℃未満の温度で吸収される。
【0005】
本発明の目的は、HPO法からのアンモニウムイオンを分子状窒素(N)に変換するための新規な方法を提供することにある。
【0006】
本発明のさらなる目的は、HPO法からのアンモニウムイオンを分子状窒素に変換するための方法を実施するための新規な設備を提供することにある。
【0007】
特に本発明の目的は、アンモニウムイオンを含む液体ストリーム(上述した水性液等)と接触される窒素酸化物が、アンモニウムイオンの分解において、従来技術による方法(例えば、上に特定したもの)よりも有効に使用される方法を提供することにある。
【0008】
本発明によって適い得る他の1つまたはそれ以上の目的は、本明細書における以下の説明および/または特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0009】
本発明は、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成されたアンモニウムイオンをアンモニウム分解帯域において分子状窒素に変換する方法であって、
−a− アンモニア燃焼帯域において、アンモニアから窒素酸化物含有蒸気ストリームを調製することと;
−b− アンモニウム分解帯域に、
(i)−a−で調製された蒸気ストリームの少なくとも一部と、
(ii)リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成されたアンモニウムイオンを含有する第1液体ストリームと、
(iii)硝酸および亜硝酸から選択される少なくとも1種の酸を硝酸+亜硝酸の総濃度が少なくとも30重量%で含有する第2液体ストリームと
を、個々におよび/または予め混合された組合せとして供給することによって接触させ、それによってアンモニウム分解帯域において混合流体を形成させることと;
−c− アンモニウム分解帯域において、この混合流体中のアンモニウムイオンを、分子状窒素を形成させながら窒素酸化物と反応させることと
を含む、方法に関する。
【0010】
さらに本発明は、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム設備(F)からのアンモニウムを分子状窒素に変換するための設備(例えば、図3に示すもの)であって、
− アンモニア含有ストリーム用の入口(V1)と、酸素含有ストリーム用の入口(V2)と、窒素酸化物含有蒸気ストリーム用の出口(V3)であって、この窒素酸化物含有蒸気ストリームをアンモニウム分解帯域(C)に誘導するための導管を介してアンモニウム分解帯域(C)の蒸気ストリーム用入口に接続されている出口とを備える、アンモニアを窒素酸化物に変換するためのアンモニア燃焼帯域(A)と;
液体硝酸および/または亜硝酸をこの設備に同時供給(co−feeding)するための入口(L−Acid)と、アンモニウム含有液体ストリーム用の入口(L3)であって、窒素酸化物吸収帯域(D)の出口に接続された入口と、場合により、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法(F)に由来するアンモニウム含有液体ストリームをアンモニウム分解帯域(C)に誘導するための入口(L6)と、窒素酸化物含有蒸気ストリーム用の出口(V5)であって、窒素酸化物吸収帯域(D)の入口に接続された出口と、液体ストリーム用の出口(L4)であって、漂白帯域(E)の入口に接続された出口とを備える、アンモニウム分解帯域(C)と;
− リン酸ヒドロキシルアミンオキシム製造帯域(F)のオキシム合成帯域に由来するアンモニウム含有液体ストリームを窒素酸化物吸収帯域(D)に誘導するための入口(L2)と、酸素含有ストリームを窒素酸化物吸収帯域(D)に誘導するための入口(V7)と、オフガス用出口(V8)とを備える、窒素酸化物吸収帯域(D)と;
− 酸素含有蒸気ストリーム(空気、酸素富化空気、他の酸素および窒素の混合物等)用の入口(V6)と、酸素含有蒸気ストリームを窒素酸化物吸収帯域(D)に誘導するための入口に接続された酸素含有蒸気ストリーム用の出口(V7)と、処理液および硝酸(帯域C、Dで形成される)を含有する液体ストリーム用の出口(L5)であって、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法(F)のヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域の入口に接続された出口とを備える、漂白帯域(E)と
を備える設備にも関する。
【0011】
この種の設備は、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成されたアンモニウムイオンの分解に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】参照用プロセスを示す図である。図1に示した本発明の実施形態と比較すると、液体硝酸/亜硝酸同時供給原料が存在しない。
【図3】アンモニア燃焼帯域Aおよびアンモニウム分解帯域Cの間に蒸気ストリーム用凝縮器を用いない本発明の実施形態を示す図である。
【図4】さらなるアンモニウム分解帯域Gを用いた本発明の実施形態を示す図である。
【0013】
硝酸および/または亜硝酸を含む第2液体ストリームを、以後、同時供給原料(co−feed)とも称する。同時供給原料とは、この供給原料が本発明のプロセスにおいて製造されたものではないことを意味する。より具体的には、硝酸および/または亜硝酸を含む液体の同時供給原料とは、硝酸および/または亜硝酸を製造するための外部プロセスで製造された硝酸および/または亜硝酸を含む液体を意味する。好ましくは、同時供給原料は、水性液体、すなわち、水が液体の主要な(液体全体の50重量%を超える)または唯一の溶媒であり、通常は液体の唯一の溶媒である液体である。同時供給原料には、例えば、商業的に入手される硝酸、商業的に入手される亜硝酸、またはこれらの混合物を使用してもよい。特に、同時供給原料として、工業用の硝酸および/または亜硝酸を使用してもよい。硝酸水溶液を用いることによって特に良好な結果が達成されている。
【0014】
好ましくは、同時供給原料の硝酸および/または亜硝酸の総濃度は、総重量を基準として35重量%以上である。特に好ましい方法においては、硝酸および/または亜硝酸を合計で40〜70重量%含む水溶液を使用してもよい。好ましくは、同時供給原料中の硝酸および/または亜硝酸の総濃度は少なくとも50重量%、特に少なくとも55重量%、その中でも特に少なくとも約60重量%である。
【0015】
同時供給原料はアンモニウム分解帯域に直接導入してもよいし、分解帯域に流入する前にHPO法からの処理液と合一してもよいし、あるいは分解帯域に流入する前に燃焼帯域Aからの蒸気ストリームと合一してもよい。
【0016】
本発明者らは、同時供給原料を使用することによって、アンモニウム分解に燃焼帯域Aで得られた窒素酸化物を使用することができる効率を高めることができるという点で有利となることを認識した。
【0017】
実施例に示すように、アンモニア燃焼帯域の外部に由来する(濃)酸を含む液体ストリームを同時供給した効果により、窒素酸化物がより効果的に使用される。
【0018】
さらに、本発明による方法は、同量の燃焼用アンモニアを用いてより高い能力でオキシム製造が可能であることが想定されている。
【0019】
本明細書において用いられる「または(もしくは)」は、特段の指定がない限り「および(ならびに)/または(もしくは)」を意味する。
【0020】
本明細書において用いられる不定冠詞(「a」または「an」)は、特段の指定がない限り「少なくとも1の」を意味する。
【0021】
単数形の名詞(例えば、化合物や添加剤等)について言及する場合は、複数形も包含することを意図している。
【0022】
本明細書において「1種または複数種の窒素酸化物」(NO)について言及する場合は、任意の窒素の酸化物、特にNOおよびNOを包含することを意図している。NOおよび/またはNOについて言及する場合、これは、一般に、当該技術分野における一般的な実施に従い、NOおよび/またはNOから形成されるより大きな分子状形態、例えば、N(NO分子1個およびNO分子1個から形成される)、N(NO分子2個から形成される)、ならびに少なくとも概念上、複数個のNOおよび/またはNO分子から構成される他の窒素酸化物を包含する。
【0023】
アンモニウム分解帯域において形成される混合流体は、典型的には液相(通常、HPO法からの処理液および液体同時供給原料から形成されており、蒸気ストリームの少なくとも一部が溶解している)を含み、ここでアンモニウム分解が起こる。混合流体は蒸気相も含み、これはアンモニア燃焼からの窒素以外に、分解帯域において形成された少量部分である窒素および場合により溶解していない窒素酸化物蒸気を含む。
【0024】
何らかの理論に束縛されるものではないが、同時供給原料によって有利な効果が得られる理由の少なくとも一部は、アンモニウム分解帯域における液相のH濃度が上昇することにあると予想される。同時供給原料の供給速度は、通常、同時供給原料が供給されるアンモニウム分解帯域の液相のH濃度が、H濃度が3mol/kg液相を超えるように、好ましくはH濃度が少なくとも5mol/kg液相となるように、より好ましくはH濃度が少なくとも6mol/kg液相となるように選択される。特に好ましい方法においては、供給速度は、H濃度が少なくとも7mol/kg液相となるのに十分なものである。
【0025】
酸同時供給原料が使用される本発明の実施形態においては、同時供給原料の供給速度は、通常、同時供給原料が供給されるアンモニウム分解帯域中の液相のH濃度が10mol/kg液相以下になるように、好ましくはH濃度が9mol/kg液相以下となるように選択される。特に好ましい方法においては、供給速度は、H濃度が8mol/kg液相以下となるように選択される。
【0026】
本明細書において用いられるHの総濃度は、pHが4.2になるように滴定することによって測定することができる濃度である。好ましくは、上記滴定は、液相試料(アンモニウム分解帯域から採取)5mlを蒸留水50mlに加え、0.25NのNaOH溶液でpHが4.2になるように滴定することによって実施される。当業者は、共通の一般知識、本明細書に開示した情報、および場合により限られた量の慣例的な試験に基づき、これを達成するための好適な同時供給原料の供給速度を決定することができるであろう。
【0027】
(少なくとも一部の)蒸気ストリーム、第1液体ストリーム、および第2液体ストリームが供給によって接触する順序ならびにこの方法において最初の接触が起こる場所は所望に応じて選択することができる。これは、アンモニウム分解帯域に導入する前に2つの液体ストリームを予め混合するかまたは第2液体ストリームおよび蒸気ストリームを予め混合することによって適切に実施することができる。別法として、すべてのストリームをアンモニウム分解帯域に個別に導入してもよい。特に、蒸気ストリームが第1および第2液体ストリームと接触すべきである限り、これをアンモニウム分解帯域に導入してアンモニウム分解帯域において第1および第2液体ストリームと接触させる方法が特に好適である。一方、蒸気ストリームおよび第1液体ストリームを予め混合しても利点はより少ない。
【0028】
好ましくは、蒸気ストリーム(−a−で調製されたもの)の大部分はアンモニウム分解帯域に供給され、最も好ましくは、上記蒸気ストリームはすべてここに供給される。好ましい実施形態においては、アンモニウム分解帯域に供給された蒸気ストリームは、アンモニウム分解帯域において第1および第2液体ストリームと接触される。
【0029】
図1に例示するように、本発明に従い、HPO設備Fからの処理液ストリームからアンモニウムが除去され、この液体は導管L0を介して設備Fから送出される。原則として、設備Fは、シクロヘキサノンオキシムを調製するための任意の設備であってもよい。この種の設備は当該技術分野において一般に周知である。アンモニウムの除去は、アンモニウムを窒素酸化物と反応させることを含み、この窒素酸化物は予め液体に溶解されたものである。反応生成物として分子状窒素が形成される。この反応をアンモニウム分解と称することもできる。
【0030】
アンモニウムを分解するための窒素酸化物はアンモニアを窒素酸化物に変換するためのアンモニア燃焼帯域Aで調製される。好適な燃焼帯域は当該技術分野において周知である。
【0031】
アンモニウム含有液体ストリームと一緒にアンモニウム分解帯域に供給される窒素酸化物含有蒸気ストリーム中の、NO+NOの総濃度を基準とするNOの相対モル濃度(100%×[NO]/{[NO]+[NO]})(N分子を1個のNO分子および1個のNO分子として計算し、Nを2個のNO分子として計算する)は、好ましくは少なくとも30%、特に少なくとも40%、好ましくは40〜90%の範囲、その中でも特に少なくとも50%、好ましくは50〜80%の範囲、最も好ましくは少なくとも55%である。通常、窒素酸化物全体の95mol%超、特に98mol%超は、NO、NO、N、およびNから形成されている。
【0032】
当業者は、共通の一般知識および本記載に基づき、このような比率を達成する方法を理解するであろう。実際は、NOの相対モル濃度は、通常は100%未満であろう。特に、NOの相対モル濃度は、90%以下、その中でも特に80%以下であってもよい。特に、所望により、この設備のアンモニア燃焼帯域Aおよびアンモニウム分解帯域Cの間の部分における、アンモニア燃焼帯域Aから得られた窒素酸化物含有蒸気ストリームの温度および/または滞留時間および/または圧力を調節することによってこの比を調節してもよい。
【0033】
図1に例示するように、本発明の方法において、アンモニア含有ストリームV1および酸素含有ストリームV2(例えば、空気または酸素富化空気)をアンモニア燃焼帯域Aに誘導することができ、ここで窒素酸化物が形成される。
【0034】
図1に示す実施形態において、アンモニア燃焼帯域から(V3を介して)送出される窒素酸化物含有蒸気ストリームは、帯域Bで表される硝酸および/または亜硝酸製造帯域に誘導され通過する。通常、この種の帯域は凝縮器を備えている。帯域Bにおいては蒸気ストリームの一部が凝縮されて硝酸および/または亜硝酸を含有するさらなる液体ストリームが形成され、これは導管L1を介して漂白帯域Eに誘導される場合もある。蒸気ストリームの残りは導管V4を介してアンモニウム分解帯域Cに誘導されることになる。帯域Bで形成された液体は、典型的には、硝酸および/または亜硝酸を30重量%未満の総濃度で含む。
【0035】
図1に示していないが、本発明の方法を実施するための設備は、蒸気ストリームのNOの相対モル濃度を調節するための1またはそれ以上の帯域を備えていてもよい。例えば、蒸気ストリームを調節するために、滞留時間を増加させるための1またはそれ以上の帯域(1もしくはそれ以上の槽および/または1もしくはそれ以上の熱交換器(凝縮器以外)等)が帯域Aおよび帯域Cの間に存在していてもよい。
【0036】
帯域Bから送出される蒸気ストリーム用の導管V4は、アンモニア燃焼帯域Aに由来する残りの蒸気ストリームをアンモニウム分解帯域Cに誘導するように配置されている。
【0037】
図1に示す実施形態においては、導管V4は、アンモニウム分解帯域Cの入口に接続されている。その温度は、原則として、燃焼帯域Aから流出する蒸気とほぼ等温であってもよいが、通常はそれよりも低温になるであろう(エネルギー回収のため)。特に帯域Bにおいては、蒸気は通常は冷却され、典型的には70℃以下の温度になるであろう。
【0038】
分解帯域Cの液相(HPO設備Fからの処理液を含み、蒸気からの窒素酸化物の少なくとも一部が溶解しており、同時供給原料である硝酸および/または亜硝酸と混合されている)の温度は幅広い範囲内で選択することができる。通常、上記温度は50℃以上、特に少なくとも60℃、その中でも特に少なくとも65℃、または少なくとも70℃である。驚くべきことに、本発明者らは、アンモニウム分解をより高い温度、例えば少なくとも80℃または少なくとも90℃の温度で分解を実施することによって選択性をさらに増大させることが可能であることを見出した。温度を上昇させると分解帯域の内壁が腐食する危険性が増大する可能性があることに留意されたい。このような危険性は、内壁が耐腐食性の高い素材で作製されているかまたは保護被膜を備えている分解帯域を用いることによって低減することができる。この種の素材は当該技術分野において周知である。特に、許容できない腐食が生じる潜在的危険性を鑑みると、通常、温度は180℃以下、好ましくは150℃以下、特に130℃以下、その中でも特に110℃以下である。
【0039】
図3に示すように、HPO法Fからの処理液ストリームの一部を直接分解帯域Cに誘導(L6を介して)してもよく、また一部を窒素酸化物吸収帯域Dに誘導(L2を介して)してもよく、ここでこの液体は、液相に溶解せずに分解帯域Cから流出した蒸気V5中の窒素酸化物を吸収する媒体としての役割を果たす。吸収帯域Dで処理された蒸気(通常は主として窒素)はオフガスとして廃棄(V8を介して)することができる。原則として、HPO設備Fからの処理液をすべて吸収帯域に誘導することも可能であることが認められている。好ましくは、吸収帯域Dに誘導される一部の処理液は、吸収帯域に誘導された蒸気から所望の程度の窒素酸化物を除去するのに丁度十分となるように選択され、残りの処理液はアンモニウム分解帯域に誘導される。吸収帯域は、通常、分解帯域よりも低温かつHPO法(F)から供給される処理液よりも低温で運転される。オフガス中の窒素酸化物を効率的に除去するとともにHPO法(F)からのアンモニウム含有液体供給原料全体をより効率的に冷却するべく吸収帯域Dにおいて高い冷却能力を維持するためには、分解帯域Cを比較的高温で運転し、かつアンモニウム分解反応の反応熱を放熱するとともに温度を所望の水準に制御する内部または外部冷却器を分解帯域(C)に予め設けておき、ここにHPO処理液の大部分を直接誘導することが好ましい。好適な比率は、共通の一般知識、本明細書に開示された情報、および場合によりある程度の慣例的な試験に基づき決定することができる。
【0040】
吸収帯域Dの条件は、当該技術分野において周知の通りにしてもよい。吸収帯域Dにおいて、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム製造帯域(F)のオキシム合成帯域に由来するアンモニウム含有液体ストリームL2は、分解帯域Cから送出される蒸気ストリームV5から窒素酸化物を吸収するのに用いられる。NOを酸化してNO(処理液中により多量に溶解する)を形成させるために、酸素含有蒸気ストリームV7(空気や酸素富化空気等)を窒素酸化物吸収帯域Dに誘導してもよい。特に、漂白帯域Eに誘導された酸素含有蒸気ストリームV6の残り(Nも含むであろう)である酸素含有ストリームV7を使用してもよい。
【0041】
このストリーム中の酸素の一部は、漂白帯域Eにおいて、分解帯域Cから送出された液体ストリーム(L4)中に存在し得るNOの酸化のために(通常は処理液中に溶解しているHNO/NOとして)使用されていてもよい。漂白帯域Eに好適な条件は当該技術分野において周知の条件に基づいてもよい。
【0042】
図3および4に例示するように、蒸気ストリームV3を、まず最初に硝酸および/または亜硝酸製造帯域Bを通過させることなく、直接アンモニウム分解帯域Cの入口に接続してもよい。当然のことながら、図1の実施形態を図4の実施形態と組み合わせて、別個の硝酸/亜硝酸製造帯域B(特に凝縮器)に加えて、少なくとも2つのアンモニウム分解帯域(C、G)が両方とも存在するようにしてもよい。
【0043】
図3に示す実施形態においては、アンモニア燃焼帯域Aからの蒸気ストリームを別個の硝酸製造帯域Bを通過させることなくアンモニウム分解帯域Cに誘導するように蒸気ストリーム用の導管V3を配置してもよい。
【0044】
本発明者らは、アンモニア燃焼帯域Aおよびアンモニウム分解帯域Cの間でHPO法からの処理液の非存在下に硝酸および/または亜硝酸を生成させる別個の硝酸および/または亜硝酸形成域B(凝縮器等)を省略することによって、HPO法において形成されたアンモニウムを変換する方法を増強することが可能であることを見出した。このような方法は、硝酸形成帯域Bを使用する方法よりも多量の窒素酸化物をアンモニウム分解に利用できる点が特に増強されている。したがって、本発明のこの実施形態によれば、アンモニア燃焼帯域Aから送出される窒素酸化物含有蒸気ストリームを、先ず最初に利用可能な窒素酸化物の大部分を硝酸(水溶液)に変換することに替えて、アンモニウム分解帯域Cにおいて変換すべきアンモニウムを含有する液体ストリームと完全に接触させながら、十分なアンモニウム変換能力を維持するかまたはアンモニウム変換能力を改善することさえ可能である。
【0045】
特に、燃焼帯域Aから得られる蒸気ストリームを高い割合で(上の従来技術の方法と比較して)または帯域Aにおいて形成された燃焼生成物をすべて、別個の亜硝酸および/または硝酸製造帯域Bにおいて予め窒素酸化物を液体硝酸に変換することなく、HPO法Fからの液体ストリーム中のアンモニウムの変換に用いることによって、アンモニウム分解に対する選択性が改善された方法を提供することが可能であることを見出した。
【0046】
アンモニウム分解帯域に流入する蒸気ストリームの(少なくとも一部の)温度または液体ストリームと接触する際の蒸気ストリームの温度(蒸気ストリームがアンモニウム分解帯域に流入する前に液体ストリームと接触する場合)は幅広い範囲内で選択することができる。この温度は、通常は30℃を超え、特に少なくとも40℃、その中でも特に50〜300℃の範囲内にあり、最も好ましくは60〜250℃の範囲内の温度である。エネルギー消費の観点から、300℃以下、特に250℃以下、その中でも特に200℃以下の温度が好ましい。
【0047】
図1に例示するような、蒸気ストリームがまず最初に亜硝酸および/または硝酸製造帯域Bに誘導される一実施形態においては、温度は通常は比較的低く、普通は80℃未満、特に70℃以下である。
【0048】
図3に例示するような、亜硝酸および/または硝酸製造帯域Bが省略された一実施形態においては、窒素酸化物蒸気V3は、アンモニウム分解帯域CにおいてHPO設備Fからの処理液ストリームと接触され、その際の蒸気温度は、液体ストリームと接触するまでは蒸気の凝縮温度を超えるように維持されている。したがって、亜硝酸および/または硝酸製造帯域Bが省略された本発明の一実施形態においては、アンモニウム含有液体ストリームと接触される際の窒素酸化物含有蒸気の温度は、通常、亜硝酸および/または硝酸製造帯域が存在する方法と比較して相対的に高い。原則として、この温度は、蒸気が燃焼帯域Aから流出する際の温度とほぼ等しくてもよく、しかしながら、普通は、この温度は、それよりも低いであろう(エネルギー回収のため)。燃焼帯域に流入する蒸気の温度は、特に少なくとも110℃、好ましくは少なくとも120℃、特に少なくとも130℃、その中でも特に少なくとも140℃であってもよい。
【0049】
分解帯域におけるアンモニウムと窒素酸化物との反応は、通常は50〜180℃の範囲の温度、特に60〜150℃の範囲の温度、その中でも特に65〜130℃の範囲の温度または70〜110℃の範囲の温度で実施される。
【0050】
帯域Bが省略される一実施形態においては、分解帯域Cの液相(HPO設備Fからの処理液を含み、蒸気からの窒素酸化物の少なくとも一部が溶解している)の温度は、通常は上述した通りであるが、ただし、通常は分解帯域Cに流入する蒸気温度よりも低いことを条件とする。
【0051】
特定の実施形態においては、本発明は、2以上のアンモニウム分解帯域が使用される方法または2以上のアンモニウム分解帯域を備える設備に関し、このアンモニウム分解帯域の少なくとも1つに硝酸および/または亜硝酸用の液体同時供給原料が供給される。
【0052】
アンモニウム含有液体の流れおよび窒素酸化物含有蒸気の流れは所望に応じて配置してもよい。例えば、上記液体および蒸気を完全な向流で接触させてもよい。
【0053】
特に好ましい実施形態においては、アンモニウム分解帯域は、アンモニウム含有液体のストリーム(L6、L7)に対し並列(直交流を供する)かつ窒素酸化物含有蒸気のストリーム(V3、V9)に対し直列に配置される。これは分解効率に関し好ましいと見なされる。図4はこのような実施形態を示すものであり、2つのアンモニウム分解帯域すなわち第1アンモニウム分解帯域Gおよびさらなるアンモニウム分解壊域Cが示された実施形態である。図4において示されたアンモニウム分解帯域には両方とも同時供給原料用の入口(L−Acid)が備えられているが、原則として、アンモニウム分解帯域の少なくとも一方が同時供給原料用の入口(L−Acid)を備えていれば十分である。
【0054】
これらの間に1またはそれ以上のさらなる分解帯域(図示せず)が存在してもよく、これは一般に、分解帯域Gに関し次に説明するような入口および出口を有していてもよい。このような実施形態においては、窒素酸化物蒸気V3は第1分解帯域Gに誘導され、HPO設備Fからの処理液ストリームL7も一緒に供給される。分解帯域Gから送出される蒸気V9は次の分解帯域に供給され、一方、分解帯域Gから送出される液体L8は漂白帯域Eに供給される。最後の分解帯域(窒素酸化物含有ストリームに関し「最後」、すなわち図4のC)は、図1または3について検討する際に上述したように、吸収帯域Dに誘導される蒸気用の出口および漂白帯域Eに誘導される液体用の出口を有する。
【0055】
本発明の有利な方法においては、アンモニウム分解から流出する液体ストリーム中のアンモニウム濃度は、窒素酸化物を高効率でアンモニウム分解に用いるのに有利な特定の濃度範囲内に維持される。したがって、アンモニウム分解帯域から流出する液体ストリーム(L4、L8)は、通常はある程度の残留アンモニウムを含んでいる。特に、アンモニウム濃度は少なくとも0.05mol/kg液体であってもよく、好ましくは少なくとも0.1mol/kg液体である。当然のことながら、アンモニウム分解帯域から流出するアンモニウムの濃度は必ずアンモニウム分解帯域に流入する液体よりも低い。アンモニウム分解帯域の入口におけるアンモニウム濃度は、通常、1.5〜3.5mol/kg液体の範囲にある。通常、アンモニウム分解帯域から送出される液体ストリーム(L4、L8)のアンモニウム濃度は、3.0mol/kg液体以下、好ましくは2.0mol/kg液体以下、より好ましくは1.5mol/kg液体以下である。特に好ましい実施形態においては、アンモニウム分解帯域から送出される液体ストリーム(L4、L8)中のアンモニウム濃度は0.15〜1.3mol/kg液体の範囲にある。特にこのような条件下においては、窒素酸化物を少なくとも30%(特に70℃以上において)または少なくとも50%(特に90℃以上において)の効率で使用することが可能であることが見出され、この効率は、アンモニア燃焼帯域Aから得られた気体生成物中に存在する窒素酸化物の、最終的にアンモニウム分解に用いられたモル百分率として求められる。
【0056】
したがって、アンモニウム分解帯域において処理された混合流体は、アンモニウム濃度が、通常は3.0molアンモニウム毎kg液体未満、好ましくは0.05〜2.0molアンモニウム毎kg液体、特に0.1〜1.5molアンモニウム毎kg液体、その中でも特に0.15〜1.3molアンモニウム毎kg液体である液体としてアンモニウム分解帯域外に誘導される。ただし、分解帯域で処理される前の第1液体ストリーム中のアンモニウム濃度は分解帯域外に誘導される液体中のアンモニウム濃度よりも高いことを条件とする。
【0057】
アンモニウム分解帯域から送出される液体ストリーム中のアンモニウム濃度は数多くの方法により調節することができる。
【0058】
有利な一実施形態においては、HPO法からのアンモニウム含有液体ストリーム(L0)の流速は、上記液体ストリーム(L4、L8)のアンモニウム濃度に基づき制御される。流速を増大させることにより(他は同一条件で)、分解帯域から送出されるストリーム中のアンモニウム濃度は典型的には増加し、流速を低下させることにより、分解帯域から送出されるストリーム中のアンモニウム濃度は典型的には低下する。特に好ましい実施形態においては、HPO法からの液体ストリームは、HPO法において一般に存在する内部処理液再循環ストリームから採取される。通常、吸収帯域Dおよび分解帯域C(G)に送出されるHPO法(F)からの処理ストリームL0は、HPO法(F)内のより多量の再循環ストリームから得られる比較的少量のサイドストリームである。窒素酸化物吸収、アンモニウム分解、および漂白(帯域E)後に残留した液体ストリームは上記より多量の再循環ストリームに戻される。したがって、処理ストリームL0を変化させることにより、HPO法(F)内で再循環される全体の量は大幅に変化しないであろう。
【0059】
さらなる実施形態においては、窒素酸化物の供給速度は、アンモニウム濃度を低下させるために増大される(またはその逆である)。さらに、分解帯域の温度を上昇させることによって分解帯域から送出される液体ストリーム中のアンモニウム濃度は低下し得るが、一方、分解帯域における温度を低下させることによって上記液体ストリーム中のアンモニウム濃度は増大し得る。
【0060】
ここで以下の実施例および比較実験により本発明を例示する。
【0061】
[比較実験A]
NOの窒素相対モル濃度の効果
窒素酸化物蒸気供給原料ストリームおよびアンモニウム含有液体供給原料ストリームを150mLの連続撹拌槽型反応器に連続供給した。液中に浸った管(dip−pipe)を介して気体供給原料を導入し、自己駆動型(self impelling)撹拌機を用いて1000RPMの撹拌速度で十分に混合した。このアンモニウム分解反応器内の温度を70℃に制御し、反応器圧を6バールに維持した。反応器内に存在する液体の有効量を約70mlに制御した。液体供給原料は、NHを約2.5mol/kg、NOを0.8mol/kg、HPOを3.8mol/kg、およびHを2.1mol/kgを含む水溶液とし、0.06L/hrの速度で供給した。ヘリウム中にNOおよびNOを7.4mol%含む蒸気供給原料を150℃で27標準リットル/hrの速度で供給した。
【0062】
液体試料を反応器から直接採取し、イオンクロマトグラフィー分析(NH、NO、HPO)をオフラインで実施するとともに、NH分解反応の生成物であるNを含む反応器のオフガス成分のガスクロマトグラフィー分析をオンラインで実施した。
【0063】
気体供給原料中の異なる相対モル濃度のNOに関する実験を実施した(上記モル濃度は100×mol%NO/(mol%NO+mol%/NO)として求めた)。NOの相対モル濃度が20、50、70、および90%であった場合に、NHからNへの分解に有効に使用された窒素酸化物の量は、それぞれ、気体供給原料中に存在するNO+NOの量の12.9、30.9、38.0、および36.9%であった。残りのNO+NOは主としてHNOに変換された。
【0064】
[比較実験B]
温度の効果
以下を除いて、比較実験Aに記載したものと同様にして比較実験Bを実施した。この比較実験においては、蒸気供給速度を58標準L/hrとし、ヘリウムを86.2容積%、NOを9.7容積%、およびNOを4.1容積%から構成されるものとした。液体の組成は比較実験Aと同一にしたが、この実施例においては供給速度を0.078リットル/hrに増大させた。アンモニウム分解反応器の温度を70、85、95、および110℃の温度にそれぞれ制御して実験を実施した。これらの温度においてNHからNへの分解に有効に使用された窒素酸化物の量は、気体供給原料中に存在していたNO+NOの量のそれぞれ33.9、46.7、56.6、および58.4%であった。残りのNO+NOは主としてHNOに変換された。
【0065】
[実施例1]
濃HNO水溶液の同時供給の効果および比較実験C
アンモニウム分解反応器に様々な量の65重量%HNO水溶液も同時供給したことを除いて、比較例Bに記載したものと同様にして70℃で実験を実施した。比較実験(C)は同時供給原料なしで実施し、数種の実験(実施例1)は同時供給原料を用いて、すなわち、それぞれ0.0078または0.0234L/hrとして実施した。NHからNへの分解に有効に使用された窒素酸化物の量は、気体供給原料中に存在していたNO+NOの量のそれぞれ33.9(同時供給原料なし;比較実験C)、45.4(同時供給原料0.0078L/hr)、および50.3%(同時供給原料0.0234L/hr)であった。残りのNO+NOの大部分はHNOに変換された。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例2]
酸性分解における温度の効果
65重量%HNO供給原料の添加速度を0.0234L/hrとして一定に維持し、反応温度を3種の異なる値:70℃、85℃、および95℃に制御したことを除いて、実施例1に記載したように実験を実施した。この温度においてNHからNへの分解に有効に使用された窒素酸化物の量は、気体供給原料中に存在していたNO+NOの量の、それぞれ50.3、57.9、および67.9(mol%)であった。残りのNO+NOの大部分はHNOに変換された。
【0067】
同時供給原料を用いない(本発明によらない)または同時供給原料を用いた(0.0234L/hr;本発明による)場合のNHからNへの分解に対する温度の影響をそれぞれ次頁の表1にまとめる。
【0068】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成されたアンモニウムイオンをアンモニウム分解帯域において分子状窒素に変換する方法であって、
−a− アンモニア燃焼帯域において、アンモニアから窒素酸化物含有蒸気ストリームを調製することと、
−b− 前記アンモニウム分解帯域に、
(i)−a−で調製された前記蒸気ストリームの少なくとも一部と、
(ii)前記リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成されたアンモニウムイオンを含有する第1液体ストリームと、
(iii)硝酸および亜硝酸から選択される少なくとも1種の酸を、硝酸+亜硝酸の総濃度が少なくとも30重量%で含有する第2液体ストリームと
を、個々におよび/または予め混合された組合せとして供給することによって接触させ、それによって前記アンモニウム分解帯域において混合流体を形成させることと、
−c− 前記アンモニウム分解帯域において、前記混合流体中のアンモニウムイオンを、分子状窒素を形成させながら窒素酸化物と反応させることと
を含む、方法。
【請求項2】
−a−で調製された前記蒸気ストリームがすべて前記アンモニウム分解帯域に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンモニウム分解帯域に供給される前記蒸気ストリームが、前記アンモニウム分解帯域において前記第1および前記第2液体ストリームと接触させられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
−a−で調製された前記窒素酸化物含有蒸気ストリームの前記少なくとも一部が、−b−で供給されることによって前記第2液体ならびに/または前記第1液体および第2液体の組合せと接触させられる際の温度が、少なくとも40℃の温度、特に50〜300℃の範囲の温度、その中でも特に60〜250℃の範囲の温度である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アンモニウム分解帯域におけるアンモニウムと窒素酸化物との前記反応が、50〜180℃の範囲の温度、特に60〜150℃の範囲の温度、その中でも特に65〜130℃の範囲の温度、または70〜110℃の範囲の温度で実施される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アンモニウム分解帯域において処理された前記混合流体が、アンモニウム濃度が3.0molアンモニウム毎kg液体未満、好ましくは0.05〜2.0molアンモニウム毎kg液体、特に0.1〜1.5molアンモニウム毎kg液体、その中でも特に0.15〜1.3molアンモニウム毎kg液体の液体として前記アンモニウム分解帯域から導出されるが、ただし、前記分解帯域で処理される前の前記第1液体ストリームのアンモニウム濃度が前記分解帯域から導出される前記液体中のアンモニウム濃度よりも高いことを条件とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2液体ストリーム(iii)中の前記硝酸および/または亜硝酸の総濃度が、硝酸および/または亜硝酸が少なくとも35重量%、好ましくは硝酸および/または亜硝酸が40〜70重量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アンモニウム含有液体ストリームと一緒に前記アンモニウム分解帯域に供給される前記窒素酸化物含有蒸気ストリーム中のNOおよびNOの合計を基準としたNOの相対モル濃度が、少なくとも30%、特に40〜90%の範囲、その中でも特に50〜80%の範囲にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
リン酸ヒドロキシルアミンオキシム設備(F)からのアンモニウムを分子状窒素に変換するための設備であって、
− アンモニア含有ストリーム用の入口(V1)と、酸素含有ストリーム用の入口(V2)と、窒素酸化物含有蒸気ストリーム用の出口(V3)であって、前記窒素酸化物含有蒸気ストリームをアンモニウム分解帯域(C)に誘導するための導管を介して前記アンモニウム分解帯域(C)の蒸気ストリーム用入口に接続されている出口とを備える、アンモニアを窒素酸化物に変換するためのアンモニア燃焼帯域(A)と;
液体硝酸および/または亜硝酸を前記設備に同時供給するための入口(L−Acid)と、アンモニウム含有液体ストリーム用の入口(L3)であって、窒素酸化物吸収帯域(D)の出口に接続された入口と、場合により、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法(F)に由来するアンモニウム含有液体ストリームを前記アンモニウム分解帯域(C)に誘導するための入口(L6)と、窒素酸化物含有蒸気ストリーム用の出口(V5)であって、前記窒素酸化物吸収帯域(D)の入口に接続された出口と、液体ストリーム用の出口(L4)であって、漂白帯域(E)の入口に接続された出口とを備える、前記アンモニウム分解帯域(C)と;
− リン酸ヒドロキシルアミンオキシム製造帯域(F)のオキシム合成帯域に由来するアンモニウム含有液体ストリームを前記窒素酸化物吸収帯域(D)に誘導するための入口(L2)と、酸素含有ストリームを前記窒素酸化物吸収帯域(D)に誘導するための入口(V7)と、オフガス用出口(V8)とを備える、前記窒素酸化物吸収帯域(D)と;
− 酸素含有蒸気ストリーム用の入口(V6)と、酸素含有蒸気ストリームを前記窒素酸化物吸収帯域(D)に誘導するための前記入口に接続された酸素含有蒸気ストリーム用の出口(V7)と、処理液および硝酸(帯域C、Dで形成される)を含有する液体ストリーム用の出口(L5)であって、前記リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法(F)のヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域の入口に接続された出口とを備える、前記漂白帯域(E)と
を備える設備。
【請求項10】
前記アンモニア燃焼帯域(A)の下流(前記蒸気ストリームの方向に対し)かつアンモニウム燃焼帯域(C)の上流(前記蒸気ストリームの方向に対し)に、凝縮器(B)が、前記アンモニア燃焼帯域(A)から出口(V3)を介して送出される前記蒸気ストリームの少なくとも一部を凝縮するように配置されており、前記凝縮器(B)が、アンモニウム燃焼帯域(C)の前記蒸気ストリーム用の入口に接続された窒素酸化物含有蒸気用の出口(V4)および漂白帯域(E)の液体酸ストリーム用の入口に接続された液体用の出口(L1)をさらに備える、請求項9に記載の設備。
【請求項11】
請求項9または10に記載の設備の、リン酸ヒドロキシルアミンオキシム法において形成された前記アンモニウムの分解のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−505138(P2012−505138A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530479(P2011−530479)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063023
【国際公開番号】WO2010/040774
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)