アースコネクタ
【課題】防水性を高めたアースコネクタを提供する。
【解決手段】アースコネクタ10は、電線11に接続された雌端子12と電気的に接続する雄端子32および車体に固定される接地部37を有する金属製の導電部材30と、導電部材30と一体に成形された合成樹脂製のハウジング13と、を備える。導電部材30は、雄端子32をハウジング13の内側に配置するとともに、接地部37をハウジング13の外側に配置して、雄端子32と接地部37との間の領域35がインサート成形によりハウジング13に取り付けられている。導電部材30の雄端子32と接地部37との間には、ハウジング13を構成する合成樹脂材49が貫通する樹脂貫通部47が設けられ、かつ、導電部材30の雄端子32と接地部37との間の領域35は、合成樹脂材49と接着剤により接合されている。
【解決手段】アースコネクタ10は、電線11に接続された雌端子12と電気的に接続する雄端子32および車体に固定される接地部37を有する金属製の導電部材30と、導電部材30と一体に成形された合成樹脂製のハウジング13と、を備える。導電部材30は、雄端子32をハウジング13の内側に配置するとともに、接地部37をハウジング13の外側に配置して、雄端子32と接地部37との間の領域35がインサート成形によりハウジング13に取り付けられている。導電部材30の雄端子32と接地部37との間には、ハウジング13を構成する合成樹脂材49が貫通する樹脂貫通部47が設けられ、かつ、導電部材30の雄端子32と接地部37との間の領域35は、合成樹脂材49と接着剤により接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるアースコネクタとしては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。このアースコネクタは、電線の端末に接続された雌端子を収容可能なキャビティが形成された合成樹脂製のハウジングと、ハウジングに配されるとともに雌端子と接続する雄タブを備えた金属製の導電部材と、を備える。
【0003】
このものにおいては、キャビティ内にはランスが形成され、このランスが雌端子と係合することにより、雌端子がハウジングに係止されるようになっている。そして、雌端子をキャビティ内に収容し、雌端子の接続筒部内に雄タブを挿入することにより、雌端子と雄タブとが電気的に接続される。
【0004】
また、このアースコネクタにおいて、導電部材は、ハウジング内において突出する雄タブと、雄タブから連なってハウジングの外部に導出され、車両の車体に固定されるアース接続部とを備える。アース接続部が車体に固定されることで、アースコネクタが車体に固定され、電線、雌端子、雄タブ、アース接続部、車体が電気的に接続され、接地される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−40263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のアースコネクタにおいては、導電部材は、雄タブとアース接続部との間の部分が、インサート成形によりハウジングに取り付けられている。ここで、導電部材は車両からの振動を受け、ハウジングは電線から伝わる振動を受けるので、振動の相違により、導電部材のハウジングから導出される部分に応力がかかって、ハウジングを構成する合成樹脂材と導電部材との界面の剥離が生じることがある。導電部材とハウジングとの界面において剥離が生じると、ハウジングを構成する合成樹脂材が開口しハウジング内に水が浸入することが懸念される。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、防水性を高めたアースコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する方法としては、導電部材のうち、インサート成形によりハウジングに取り付けられる部分に、金属と樹脂とを接着可能な接着剤を塗布してから、インサート成形を行うことが考えられる。
しかしながら、特許文献1に記載されている導電部材のように、ハウジングに固定される部分の幅寸法がハウジングから導出される部分と概ね同じくらいで、接着剤を塗布する部分の面積が広い場合、接着剤が多量に必要であり、コスト高であった。
【0009】
そこで、さらなる検討の結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、車両の車体に取り付けられるアースコネクタであって、電線に接続された相手方端子と電気的に接続する接続部および車体に固定される接地部を有する金属製の導電部材と、前記導電部材と一体に成形された合成樹脂製のハウジングと、を備え、前記導電部材は、前記接続部を前記ハウジングの内側に配置するとともに、前記接地部を前記ハウジングの外側に配置して、前記接続部と前記接地部との間の領域がインサート成形により前記ハウジングに取り付けられ、前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間には、前記ハウジングを構成する合成樹脂材が貫通する樹脂貫通部が設けられ、かつ、前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間の領域は、前記合成樹脂材と接着剤により接合されているところに特徴を有する。
【0010】
本発明において、導電部材の接続部と接地部との間の領域は、接着剤により合成樹脂材に接合されるので、導電部材とハウジングとのシール性が高まり、水の浸入が防止される。また、本発明において、導電部材の接続部と接地部との間には、合成樹脂材が貫通する樹脂貫通部が設けられているので、この部分には接着剤を塗布する必要がなく、特許文献1に記載されているような構成の導電部材と比べると、接着剤を塗布すべき部分の面積を小さくすることができ、接着剤の量を減らすことができる。さらに、本発明では、樹脂貫通部において合成樹脂材が貫通して導電部材と合成樹脂材との接合部を支持するので、導電部材が合成樹脂材から剥離するのを防止することができる。その結果、本発明によれば、防水性を高めたアースコネクタを提供することができる。
【0011】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記樹脂貫通部は、前記導電部材と前記合成樹脂材との接合部よりも外側に設けられていてもよい。
このような構成とすると、導電部材と合成樹脂材との接合部が、接合部よりも外側に設けられた樹脂貫通部により支持されるので、導電部材が合成樹脂材から剥離するのを確実に防止することができる。
【0012】
前記樹脂貫通部は、前記導電部材に貫通孔を設けることにより形成されててもよい。
このような構成とすると、導電部材内に合成樹脂材が貫通して導電部材を支持するので、導電部材が合成樹脂材から剥離するのをより確実に防止することが出来る。
【0013】
前記ハウジングには、前記樹脂貫通部に対応して肉抜き部が形成されていてもよい。
ハウジングにおいて、厚みが他の部分よりも大きい部分はインサート成形の後に縮んで凹むことがあるが、上記のような構成とすると、厚みが大きくなる傾向のある樹脂貫通部に対応して肉抜き部が形成されているから、厚みを均一化することができ、成形後に縮むのを防止することができる。
【0014】
前記接着剤は、前記導電部材をインサート成形により前記ハウジングに取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化することで、前記導電部材を前記合成樹脂材に接合するものであってもよい。
このような構成とすると、導電部材に塗布しておいた接着剤を、インサート成形の際に発生する熱を利用して溶融させ、合成樹脂材が固化するのを待てば、導電部材と合成樹脂材とを接合することができるので、簡易な方法により、導電部材を合成樹脂財に接合することができる。
【0015】
前記相手方端子は複数である一方、前記導電部材には複数の前記接続部が設けられ、複数の前記相手方端子が前記導電部材によって電気的に接続されていてもよい。
このような構成とすると、本発明をジョイントコネクタに適用することができる。
【0016】
前記ハウジングは、前記相手方端子が収容される端子収容部を備え、前記接続部は前記ハウジングの前記端子収容部内に突出して配され、前記相手方端子と電気的に接続する構成としてもよい。
このような構成とすると、ハウジングは、その内側に接続部を配置するだけでなく、当該接続部に接続される相手方端子を収容する端子収容部も備える。つまりこのような構成によれば、相手方端子を収容する別のハウジングは不要なので部品点数を減らすことができるだけでなく、相手方端子を収容する別のハウジングが嵌合するためのスペースが不要となり、コネクタの小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、防水性を高めたアースコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1のアースコネクタの斜視図
【図2】アースコネクタの平面図
【図3】図2におけるA−A断面図
【図4】導電部材がハウジングにインサートされた状態を示す斜視図
【図5】導電部材がハウジングにインサートされた状態を示す背面図
【図6】図5におけるB−B断面図
【図7】導電部材がハウジングにインサートされた状態を示す正面図
【図8】図7におけるC−C断面図
【図9】接着剤が塗布された導電部材の斜視図
【図10】接着剤が塗布された導電部材の側面図
【図11】接着剤を塗布する前の導電部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明をアースジョイントコネクタ10に適用した実施形態1を図1ないし図11によって説明する。本実施形態に係るアースジョイントコネクタ10(以下、アースコネクタ10)は、図示しない車両の車体に取り付けられて、複数の電線11を接地する。アースコネクタ10は、複数の電線11の端部に接続された雌端子12(相手方端子の一例)が収容されるハウジング13と、このハウジング13に取り付けられて雌端子12と接続される導電部材30と、を備える。以下の説明では、図3における左方を前方とし、右方を後方とし、また、上方を上方とし、下方を下方とする。また、図2における上下方向を幅方向とする。
【0020】
(端子収容部14)
図1〜図3に示すように、合成樹脂製のハウジング13は、複数の雌端子12を収容する端子収容部14を備える。端子収容部14内には、雌端子12が、上下方向に二段に並ぶと共に、幅方向に4つ並んで収容される。各端子収容部14の内壁には、図3に示すように、端子収容部14の内壁から前方に向かってランス15が突出して形成されている。ランス15は、基部16においてハウジング13と一体に形成されている。ランス15の先端には、雌端子12を係止する係止爪17が突出して形成されている。上側に位置するランス15の係止爪17は上方に突出しており、下側に位置するランス15の係止爪17は下方に突出している。
【0021】
(雌端子12)
雌端子12は、電線11の端部に圧着される圧着部18と、この圧着部18から前方に延び筒状をなす接続筒部19と、を備える。接続筒部19の内部には弾性接触片20が形成されている。接続筒部19の壁部には、ランス15の係止爪17と係合する係止孔21が貫通して形成されている。この係止孔21の孔縁に係止爪17が後方から係止することにより、雌端子12が後方へ変位することが規制されるようになっている。
【0022】
端子収容部14の後方(図3における右方)には、防水筒部22が形成されている。防水筒部22は、円筒形状をなしている(図1および図3を参照)。防水筒部22は後方に開口しており、防水筒部22の内部には、電線11に外嵌された電線側ゴム栓23が収容されている。電線側ゴム栓23の外周と、防水筒部22の内壁とが密着することにより、電線11とハウジング13との間が液密にシールされる。
【0023】
(ゴム栓30)
図3に示すように、ハウジング13の端子収容部14の前方(図3における左方)は開口しており、この部分にゴム栓収容部24が形成されている。ゴム栓収容部24の内部には、ゴム栓25が収容されるようになっている。
【0024】
ゴム栓25は、図4〜図6および図7〜図8に示すように、ハウジング13の上壁のうち、前端部寄りの位置にヒンジ26を介して形成されたキャップ27に取り付けられている。キャップ27はヒンジ26を介して回動可能になっている。
【0025】
図1に示すように、キャップ27の側壁に形成されたロック部28と、ハウジング13の側壁に形成されたロック受け部29とが弾性的に係合することにより、キャップ27はハウジング13に対してロックされるようになっている。
【0026】
キャップ27とハウジング13とがロックされた状態では、キャップ27に取り付けられたゴム栓25は、図3に示すように、ハウジング13のゴム栓収容部24内に収容されるようになっている。ゴム栓収容部24の内壁と、ゴム栓25の外面とが密着することにより、キャップ27とハウジング13とが液密にシールされる。
【0027】
(導電部材30)
ハウジング13の前端部寄りの位置には、導電性の金属板材を所定の形状にプレス加工してなる導電部材30が、インサート成形により取り付けられている。詳しくは、導電部材30は、図3および図6に示すように、ハウジング13の内側に雌端子12と電気的に接続する雄端子32(接続部の一例)を配置し、ハウジング13の外側に接地部37が形成された平板状の導電板部34を配置して、雄端子32と接地部37との間の領域35がインサート成形によりハウジング13に取り付けられている。
【0028】
導電部材30は、図9に示すように、図9における左側(前方)に配された導電板部34と、図9における右側(後方)に配され、櫛歯状をなす端子部31とを有し、端子部31と導電板部34とは一体に連なっている。
【0029】
導電板部34は、その前端部(図9における左側の端部)において下方に延出された回り止め部36を備える。回り止め部36は、車両のボディに形成された回り止め凹部(図示せず)に嵌り込むことにより、ボルト止め作業に伴う導電板部34の回り止めを行う。
【0030】
導電板部34の長さ方向(前後方向)における略中央部には、接地部37が設けられている。接地部37には、接地ボルト(図示せず)が挿通可能なボルト挿通孔38が形成されている。このボルト挿通孔38内に、図示しない接地ボルトが挿通されて、車体に形成されたねじ孔(図示せず)に螺合されることにより、接地部37が車体に固定される。
【0031】
導電板部34には、図9に示すように、複数条のリブ39A,39Bが導電板部34の上方に突出形成されている。接地部37から離れたところでは、接地部37の近傍に形成したリブ39Aよりも、高さが高く幅寸法の大きいリブ39Bが形成されている。つまり、接地部37の近傍に剛性の低いリブ39Aを設け、接地部37から離れたところで剛性の高いリブ39Bを設けることで、接地部37の近傍に応力を集中させることなく、導電板部34全体に応力を分散させることができるようになっている。
【0032】
導電板部34の後端部は、接地部37が設けられている領域(固定領域40とする)に対して略垂直に立ち上がっている(起立壁41とする)。起立壁41の幅方向における略中央部には、導電板部34と端子部31を連結する連結部42が形成されている。起立壁41と連結部42との境界には貫通孔43が形成されている。また、連結部42の両側にはそれぞれ切欠部44が形成されており、端子部31と導電板部34とは、連結部42が形成されている部分以外で連なっていない。
【0033】
端子部31には、図9に示すように、上下2段で幅方向に4本(合計8本)の平板状の雄端子32が並んで形成されている。各雄端子32は、U字型をなす端子連結部33によって一体に形成されている。また、端子連結部33は、連結部42を介して導電板部34の図9における右側縁に連結されている。
【0034】
導電板部34の貫通孔43よりも上側の部分および端子連結部33(雄端子32と接地部37との間の領域35の一例)は、図6および図8に示すように、ハウジング13にインサート成形により一体化されている。
【0035】
本実施形態では、導電板部34と端子部31を連結する連結部42が、接着剤によりハウジング13に接合されている。また、起立壁41と連結部42との境界に設けた貫通孔43および連結部42の両側に設けた切欠部44においては、ハウジング13を構成する合成樹脂材49が導電板部34の厚み方向(前後方向)を貫通している。つまり、本実施形態では、樹脂貫通部47が、導電部材30(連結部42)とハウジング13を構成する合成樹脂材49との接合部36を挟んで両側(接合部36よりも外側)に樹脂貫通部47が形成されるだけでなく、導電部材30を貫通する樹脂貫通部47が形成されている。
【0036】
なお、本実施形態では、導電部材30を貫通する樹脂貫通部47は、導電部材30とハウジング13を構成する合成樹脂材49との接合部36よりも下側、つまり接合部36よりもハウジング13の外面に近いところに形成されている。これにより、接合部36の下側において樹脂貫通部47が連結部42を支持するだけでなく、外部からの水の浸入を防止できるようになっている。
【0037】
また本実施形態では、ハウジング13の導電板部34が導出される部分(ハウジング13の前端における下端部)には、図4および図6に示すように、導電板部34に設けた切欠部44に対応する位置、つまり樹脂貫通部47に対応する位置に肉抜き部48が形成されている。上述したように、切欠部44には合成樹脂材49が貫通しており、他の部分よりも樹脂の厚みが大きくなるが、肉抜き部48を形成することにより厚みを均一化している。
【0038】
(ハウジング13と導電部材30との一体化)
本実施形態のアースコネクタ10のハウジング13と導電部材30との一体化について説明する。図示しない導電性の金属板材にプレス加工等を施して図11に示すような形状の導電部材30を作製した後、図9および図10に示すように、連結部42に接着剤を塗布する。
【0039】
本実施形態においては、接着剤を、導電部材30の連結部42の全周を覆うように塗布する。ここで、連結部42とハウジング13の合成樹脂材49とを接合する接着剤としては、導電部材30をインサート成形によりハウジング13に取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化する熱可塑性樹脂等を含む接着剤を用いる。なお、図9および図10には、厚み寸法の大きい接着剤層45を形成した例を示しているが接着剤は薄膜状に塗布してもよい。
【0040】
次に、接着剤が塗布された状態の導電部材30を、ハウジング13の形状に合わせたインサート成形用の金型(図示せず)に配置して、インサート成形を行い、導電板部34の貫通孔43よりも上側の部分および端子連結部33を、ハウジング13と一体化する。このとき、連結部42に形成した接着剤層45はインサート成形により発生する熱により溶融する。
【0041】
合成樹脂材49が固化すると、連結部42が合成樹脂材49とが接合されるとともに、連結部42の貫通孔43に樹脂貫通部47が形成され、連結部42の両側の切欠部44に対応する位置に、一部が肉抜きされた樹脂貫通部47が形成される。また、各雄端子32はハウジング13の内側に、上下2段に4本ずつ配置される。
(本実施形態の作用、効果)
本実施形態において、導電板部34の連結部42は、接着剤により合成樹脂材49に接合されるので、導電部材30とハウジング13とのシール性が高まり、水の浸入が防止される。
【0042】
また、本実施形態において、導電部材30の端子部31と接地部37との間には、切欠部44および貫通孔43の形成により合成樹脂材49が貫通する樹脂貫通部47が設けられており、この樹脂貫通部47には金属製の導電部材30は存在しないので、接着剤を塗布する必要がない。したがって、本実施形態によれば、従来の構成の導電部材30と比べると、接着剤を塗布すべき部分の面積を小さくすることができ、接着剤の量を減らすことができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、樹脂貫通部47において合成樹脂材49が貫通して導電部材30と合成樹脂材49との接合部36を支持するので、導電部材30が車両からの振動を受け、ハウジング13が電線11から伝わる振動を受けて振動の相違により、導電部材30のハウジング13から導出される部分(起立壁42)に応力がかかったとしても、導電部材30が合成樹脂材49から剥離するのを防止することができる。その結果、本実施形態によれば、防水性を高めたアースコネクタ10を提供することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、樹脂貫通部47は、導電部材30(連結部42)と合成樹脂材49との接合部36よりも外側に設けられているから、連結部42と合成樹脂材49との接合部36が、接合部36よりも外側に設けられた樹脂貫通部47により支持されるので、導電部材30が合成樹脂材49から剥離するのを確実に防止することができる。
【0045】
特に、本実施形態によれば、導電部材30に貫通孔43を設けることにより形成された樹脂貫通部47も備えているから、導電部材30内に合成樹脂材49が貫通して導電部材30を支持し、導電部材30が合成樹脂材49から剥離するのをより確実に防止することが出来る。
【0046】
また、本実施形態によれば、ハウジング13には、樹脂貫通部47に対応して肉抜き部48が形成されているから、厚みを均一化することができ、樹脂貫通部47が成形後に縮むのを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態において、接着剤は、導電部材30をインサート成形によりハウジング13に取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化することで、導電部材30を合成樹脂材49に接合するものである。したがって、本実施形態によれば、導電部材30に塗布しておいた接着剤を、インサート成形の際に発生する熱を利用して溶融させ、合成樹脂材49が固化するのを待てば、導電部材30と合成樹脂材49とを接合することができるので、簡易な方法により、導電部材30を合成樹脂財に接合することができる。
【0048】
また、本実施形態において、ハウジング13は、雌端子12が収容される端子収容部を備え、雄端子32はハウジング13の端子収容部内に突出して配され、雌端子12と電気的に接続する構成としたから、ハウジング13は、その内側に雄端子32を配置するだけでなく、当該雄端子32に接続される雌端子12を収容する端子収容部も備える。つまり本実施形態によれば、雌端子12を収容する別のハウジングは不要なので部品点数を減らすことができるだけでなく、雌端子12を収容する別のハウジングが嵌合するためのスペースが不要となり、アースコネクタ10を小型化することができる。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では樹脂貫通部47を導電部材30と合成樹脂材49との接合部36よりも外側に設けたが、当該接合部を樹脂貫通部よりも外側に設けてもよい。
(2)上記実施形態では、導電部材30に切欠部44と貫通孔43とを形成することにより、これらの部分に樹脂貫通部47を形成する例を示したが、切欠部のみを形成してもよいし、貫通孔のみを形成してもよい。
(3)上記実施形態では、樹脂貫通部47に対応する位置に肉抜き部48を形成したが、肉抜き部48がなくてもよい。
(4)上記実施形態では、接着剤として、導電部材30をインサート成形によりハウジング13に取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化するものを用いる例を示したが、これに限定されない。接着剤は、導電部材30を構成する金属材料とハウジングを構成する合成樹脂材49との親和性を有し、外部からの水の浸入を防止できるシール性を有するものであればよい。
(5)上記実施形態では、導電部材30に複数の雄端子32が設けられ、複数の雌端子12が導電部材30によって電気的に接続されるジョイントコネクタ10に適用した例をしめしたが、導電部材に1つの接続部が設けられ、当該接続部に接続される相手方端子が1つであってもよい。
(6)上記実施形態では1つのハウジング13に接続部と、接続部に電気的に接続する相手方端子の端子収容室とを備えるアースコネクタ10を示したが、相手方端子は別体の端子収容室を備えるハウジングに収容されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…アースジョイントコネクタ(アースコネクタ)
11…電線
12…雌端子(相手方端子)
13…ハウジング
14…端子収容部
30…導電部材
32…雄端子(接続部)
34…導電板部
35…雄端子と接地部との間の領域
37…接地部
42…連結部
43…貫通孔
44…切欠部
45…接着剤層
46…接合部
47…樹脂貫通部
48…肉抜き部
49…合成樹脂材
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるアースコネクタとしては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。このアースコネクタは、電線の端末に接続された雌端子を収容可能なキャビティが形成された合成樹脂製のハウジングと、ハウジングに配されるとともに雌端子と接続する雄タブを備えた金属製の導電部材と、を備える。
【0003】
このものにおいては、キャビティ内にはランスが形成され、このランスが雌端子と係合することにより、雌端子がハウジングに係止されるようになっている。そして、雌端子をキャビティ内に収容し、雌端子の接続筒部内に雄タブを挿入することにより、雌端子と雄タブとが電気的に接続される。
【0004】
また、このアースコネクタにおいて、導電部材は、ハウジング内において突出する雄タブと、雄タブから連なってハウジングの外部に導出され、車両の車体に固定されるアース接続部とを備える。アース接続部が車体に固定されることで、アースコネクタが車体に固定され、電線、雌端子、雄タブ、アース接続部、車体が電気的に接続され、接地される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−40263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のアースコネクタにおいては、導電部材は、雄タブとアース接続部との間の部分が、インサート成形によりハウジングに取り付けられている。ここで、導電部材は車両からの振動を受け、ハウジングは電線から伝わる振動を受けるので、振動の相違により、導電部材のハウジングから導出される部分に応力がかかって、ハウジングを構成する合成樹脂材と導電部材との界面の剥離が生じることがある。導電部材とハウジングとの界面において剥離が生じると、ハウジングを構成する合成樹脂材が開口しハウジング内に水が浸入することが懸念される。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、防水性を高めたアースコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する方法としては、導電部材のうち、インサート成形によりハウジングに取り付けられる部分に、金属と樹脂とを接着可能な接着剤を塗布してから、インサート成形を行うことが考えられる。
しかしながら、特許文献1に記載されている導電部材のように、ハウジングに固定される部分の幅寸法がハウジングから導出される部分と概ね同じくらいで、接着剤を塗布する部分の面積が広い場合、接着剤が多量に必要であり、コスト高であった。
【0009】
そこで、さらなる検討の結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、車両の車体に取り付けられるアースコネクタであって、電線に接続された相手方端子と電気的に接続する接続部および車体に固定される接地部を有する金属製の導電部材と、前記導電部材と一体に成形された合成樹脂製のハウジングと、を備え、前記導電部材は、前記接続部を前記ハウジングの内側に配置するとともに、前記接地部を前記ハウジングの外側に配置して、前記接続部と前記接地部との間の領域がインサート成形により前記ハウジングに取り付けられ、前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間には、前記ハウジングを構成する合成樹脂材が貫通する樹脂貫通部が設けられ、かつ、前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間の領域は、前記合成樹脂材と接着剤により接合されているところに特徴を有する。
【0010】
本発明において、導電部材の接続部と接地部との間の領域は、接着剤により合成樹脂材に接合されるので、導電部材とハウジングとのシール性が高まり、水の浸入が防止される。また、本発明において、導電部材の接続部と接地部との間には、合成樹脂材が貫通する樹脂貫通部が設けられているので、この部分には接着剤を塗布する必要がなく、特許文献1に記載されているような構成の導電部材と比べると、接着剤を塗布すべき部分の面積を小さくすることができ、接着剤の量を減らすことができる。さらに、本発明では、樹脂貫通部において合成樹脂材が貫通して導電部材と合成樹脂材との接合部を支持するので、導電部材が合成樹脂材から剥離するのを防止することができる。その結果、本発明によれば、防水性を高めたアースコネクタを提供することができる。
【0011】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記樹脂貫通部は、前記導電部材と前記合成樹脂材との接合部よりも外側に設けられていてもよい。
このような構成とすると、導電部材と合成樹脂材との接合部が、接合部よりも外側に設けられた樹脂貫通部により支持されるので、導電部材が合成樹脂材から剥離するのを確実に防止することができる。
【0012】
前記樹脂貫通部は、前記導電部材に貫通孔を設けることにより形成されててもよい。
このような構成とすると、導電部材内に合成樹脂材が貫通して導電部材を支持するので、導電部材が合成樹脂材から剥離するのをより確実に防止することが出来る。
【0013】
前記ハウジングには、前記樹脂貫通部に対応して肉抜き部が形成されていてもよい。
ハウジングにおいて、厚みが他の部分よりも大きい部分はインサート成形の後に縮んで凹むことがあるが、上記のような構成とすると、厚みが大きくなる傾向のある樹脂貫通部に対応して肉抜き部が形成されているから、厚みを均一化することができ、成形後に縮むのを防止することができる。
【0014】
前記接着剤は、前記導電部材をインサート成形により前記ハウジングに取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化することで、前記導電部材を前記合成樹脂材に接合するものであってもよい。
このような構成とすると、導電部材に塗布しておいた接着剤を、インサート成形の際に発生する熱を利用して溶融させ、合成樹脂材が固化するのを待てば、導電部材と合成樹脂材とを接合することができるので、簡易な方法により、導電部材を合成樹脂財に接合することができる。
【0015】
前記相手方端子は複数である一方、前記導電部材には複数の前記接続部が設けられ、複数の前記相手方端子が前記導電部材によって電気的に接続されていてもよい。
このような構成とすると、本発明をジョイントコネクタに適用することができる。
【0016】
前記ハウジングは、前記相手方端子が収容される端子収容部を備え、前記接続部は前記ハウジングの前記端子収容部内に突出して配され、前記相手方端子と電気的に接続する構成としてもよい。
このような構成とすると、ハウジングは、その内側に接続部を配置するだけでなく、当該接続部に接続される相手方端子を収容する端子収容部も備える。つまりこのような構成によれば、相手方端子を収容する別のハウジングは不要なので部品点数を減らすことができるだけでなく、相手方端子を収容する別のハウジングが嵌合するためのスペースが不要となり、コネクタの小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、防水性を高めたアースコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1のアースコネクタの斜視図
【図2】アースコネクタの平面図
【図3】図2におけるA−A断面図
【図4】導電部材がハウジングにインサートされた状態を示す斜視図
【図5】導電部材がハウジングにインサートされた状態を示す背面図
【図6】図5におけるB−B断面図
【図7】導電部材がハウジングにインサートされた状態を示す正面図
【図8】図7におけるC−C断面図
【図9】接着剤が塗布された導電部材の斜視図
【図10】接着剤が塗布された導電部材の側面図
【図11】接着剤を塗布する前の導電部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明をアースジョイントコネクタ10に適用した実施形態1を図1ないし図11によって説明する。本実施形態に係るアースジョイントコネクタ10(以下、アースコネクタ10)は、図示しない車両の車体に取り付けられて、複数の電線11を接地する。アースコネクタ10は、複数の電線11の端部に接続された雌端子12(相手方端子の一例)が収容されるハウジング13と、このハウジング13に取り付けられて雌端子12と接続される導電部材30と、を備える。以下の説明では、図3における左方を前方とし、右方を後方とし、また、上方を上方とし、下方を下方とする。また、図2における上下方向を幅方向とする。
【0020】
(端子収容部14)
図1〜図3に示すように、合成樹脂製のハウジング13は、複数の雌端子12を収容する端子収容部14を備える。端子収容部14内には、雌端子12が、上下方向に二段に並ぶと共に、幅方向に4つ並んで収容される。各端子収容部14の内壁には、図3に示すように、端子収容部14の内壁から前方に向かってランス15が突出して形成されている。ランス15は、基部16においてハウジング13と一体に形成されている。ランス15の先端には、雌端子12を係止する係止爪17が突出して形成されている。上側に位置するランス15の係止爪17は上方に突出しており、下側に位置するランス15の係止爪17は下方に突出している。
【0021】
(雌端子12)
雌端子12は、電線11の端部に圧着される圧着部18と、この圧着部18から前方に延び筒状をなす接続筒部19と、を備える。接続筒部19の内部には弾性接触片20が形成されている。接続筒部19の壁部には、ランス15の係止爪17と係合する係止孔21が貫通して形成されている。この係止孔21の孔縁に係止爪17が後方から係止することにより、雌端子12が後方へ変位することが規制されるようになっている。
【0022】
端子収容部14の後方(図3における右方)には、防水筒部22が形成されている。防水筒部22は、円筒形状をなしている(図1および図3を参照)。防水筒部22は後方に開口しており、防水筒部22の内部には、電線11に外嵌された電線側ゴム栓23が収容されている。電線側ゴム栓23の外周と、防水筒部22の内壁とが密着することにより、電線11とハウジング13との間が液密にシールされる。
【0023】
(ゴム栓30)
図3に示すように、ハウジング13の端子収容部14の前方(図3における左方)は開口しており、この部分にゴム栓収容部24が形成されている。ゴム栓収容部24の内部には、ゴム栓25が収容されるようになっている。
【0024】
ゴム栓25は、図4〜図6および図7〜図8に示すように、ハウジング13の上壁のうち、前端部寄りの位置にヒンジ26を介して形成されたキャップ27に取り付けられている。キャップ27はヒンジ26を介して回動可能になっている。
【0025】
図1に示すように、キャップ27の側壁に形成されたロック部28と、ハウジング13の側壁に形成されたロック受け部29とが弾性的に係合することにより、キャップ27はハウジング13に対してロックされるようになっている。
【0026】
キャップ27とハウジング13とがロックされた状態では、キャップ27に取り付けられたゴム栓25は、図3に示すように、ハウジング13のゴム栓収容部24内に収容されるようになっている。ゴム栓収容部24の内壁と、ゴム栓25の外面とが密着することにより、キャップ27とハウジング13とが液密にシールされる。
【0027】
(導電部材30)
ハウジング13の前端部寄りの位置には、導電性の金属板材を所定の形状にプレス加工してなる導電部材30が、インサート成形により取り付けられている。詳しくは、導電部材30は、図3および図6に示すように、ハウジング13の内側に雌端子12と電気的に接続する雄端子32(接続部の一例)を配置し、ハウジング13の外側に接地部37が形成された平板状の導電板部34を配置して、雄端子32と接地部37との間の領域35がインサート成形によりハウジング13に取り付けられている。
【0028】
導電部材30は、図9に示すように、図9における左側(前方)に配された導電板部34と、図9における右側(後方)に配され、櫛歯状をなす端子部31とを有し、端子部31と導電板部34とは一体に連なっている。
【0029】
導電板部34は、その前端部(図9における左側の端部)において下方に延出された回り止め部36を備える。回り止め部36は、車両のボディに形成された回り止め凹部(図示せず)に嵌り込むことにより、ボルト止め作業に伴う導電板部34の回り止めを行う。
【0030】
導電板部34の長さ方向(前後方向)における略中央部には、接地部37が設けられている。接地部37には、接地ボルト(図示せず)が挿通可能なボルト挿通孔38が形成されている。このボルト挿通孔38内に、図示しない接地ボルトが挿通されて、車体に形成されたねじ孔(図示せず)に螺合されることにより、接地部37が車体に固定される。
【0031】
導電板部34には、図9に示すように、複数条のリブ39A,39Bが導電板部34の上方に突出形成されている。接地部37から離れたところでは、接地部37の近傍に形成したリブ39Aよりも、高さが高く幅寸法の大きいリブ39Bが形成されている。つまり、接地部37の近傍に剛性の低いリブ39Aを設け、接地部37から離れたところで剛性の高いリブ39Bを設けることで、接地部37の近傍に応力を集中させることなく、導電板部34全体に応力を分散させることができるようになっている。
【0032】
導電板部34の後端部は、接地部37が設けられている領域(固定領域40とする)に対して略垂直に立ち上がっている(起立壁41とする)。起立壁41の幅方向における略中央部には、導電板部34と端子部31を連結する連結部42が形成されている。起立壁41と連結部42との境界には貫通孔43が形成されている。また、連結部42の両側にはそれぞれ切欠部44が形成されており、端子部31と導電板部34とは、連結部42が形成されている部分以外で連なっていない。
【0033】
端子部31には、図9に示すように、上下2段で幅方向に4本(合計8本)の平板状の雄端子32が並んで形成されている。各雄端子32は、U字型をなす端子連結部33によって一体に形成されている。また、端子連結部33は、連結部42を介して導電板部34の図9における右側縁に連結されている。
【0034】
導電板部34の貫通孔43よりも上側の部分および端子連結部33(雄端子32と接地部37との間の領域35の一例)は、図6および図8に示すように、ハウジング13にインサート成形により一体化されている。
【0035】
本実施形態では、導電板部34と端子部31を連結する連結部42が、接着剤によりハウジング13に接合されている。また、起立壁41と連結部42との境界に設けた貫通孔43および連結部42の両側に設けた切欠部44においては、ハウジング13を構成する合成樹脂材49が導電板部34の厚み方向(前後方向)を貫通している。つまり、本実施形態では、樹脂貫通部47が、導電部材30(連結部42)とハウジング13を構成する合成樹脂材49との接合部36を挟んで両側(接合部36よりも外側)に樹脂貫通部47が形成されるだけでなく、導電部材30を貫通する樹脂貫通部47が形成されている。
【0036】
なお、本実施形態では、導電部材30を貫通する樹脂貫通部47は、導電部材30とハウジング13を構成する合成樹脂材49との接合部36よりも下側、つまり接合部36よりもハウジング13の外面に近いところに形成されている。これにより、接合部36の下側において樹脂貫通部47が連結部42を支持するだけでなく、外部からの水の浸入を防止できるようになっている。
【0037】
また本実施形態では、ハウジング13の導電板部34が導出される部分(ハウジング13の前端における下端部)には、図4および図6に示すように、導電板部34に設けた切欠部44に対応する位置、つまり樹脂貫通部47に対応する位置に肉抜き部48が形成されている。上述したように、切欠部44には合成樹脂材49が貫通しており、他の部分よりも樹脂の厚みが大きくなるが、肉抜き部48を形成することにより厚みを均一化している。
【0038】
(ハウジング13と導電部材30との一体化)
本実施形態のアースコネクタ10のハウジング13と導電部材30との一体化について説明する。図示しない導電性の金属板材にプレス加工等を施して図11に示すような形状の導電部材30を作製した後、図9および図10に示すように、連結部42に接着剤を塗布する。
【0039】
本実施形態においては、接着剤を、導電部材30の連結部42の全周を覆うように塗布する。ここで、連結部42とハウジング13の合成樹脂材49とを接合する接着剤としては、導電部材30をインサート成形によりハウジング13に取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化する熱可塑性樹脂等を含む接着剤を用いる。なお、図9および図10には、厚み寸法の大きい接着剤層45を形成した例を示しているが接着剤は薄膜状に塗布してもよい。
【0040】
次に、接着剤が塗布された状態の導電部材30を、ハウジング13の形状に合わせたインサート成形用の金型(図示せず)に配置して、インサート成形を行い、導電板部34の貫通孔43よりも上側の部分および端子連結部33を、ハウジング13と一体化する。このとき、連結部42に形成した接着剤層45はインサート成形により発生する熱により溶融する。
【0041】
合成樹脂材49が固化すると、連結部42が合成樹脂材49とが接合されるとともに、連結部42の貫通孔43に樹脂貫通部47が形成され、連結部42の両側の切欠部44に対応する位置に、一部が肉抜きされた樹脂貫通部47が形成される。また、各雄端子32はハウジング13の内側に、上下2段に4本ずつ配置される。
(本実施形態の作用、効果)
本実施形態において、導電板部34の連結部42は、接着剤により合成樹脂材49に接合されるので、導電部材30とハウジング13とのシール性が高まり、水の浸入が防止される。
【0042】
また、本実施形態において、導電部材30の端子部31と接地部37との間には、切欠部44および貫通孔43の形成により合成樹脂材49が貫通する樹脂貫通部47が設けられており、この樹脂貫通部47には金属製の導電部材30は存在しないので、接着剤を塗布する必要がない。したがって、本実施形態によれば、従来の構成の導電部材30と比べると、接着剤を塗布すべき部分の面積を小さくすることができ、接着剤の量を減らすことができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、樹脂貫通部47において合成樹脂材49が貫通して導電部材30と合成樹脂材49との接合部36を支持するので、導電部材30が車両からの振動を受け、ハウジング13が電線11から伝わる振動を受けて振動の相違により、導電部材30のハウジング13から導出される部分(起立壁42)に応力がかかったとしても、導電部材30が合成樹脂材49から剥離するのを防止することができる。その結果、本実施形態によれば、防水性を高めたアースコネクタ10を提供することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、樹脂貫通部47は、導電部材30(連結部42)と合成樹脂材49との接合部36よりも外側に設けられているから、連結部42と合成樹脂材49との接合部36が、接合部36よりも外側に設けられた樹脂貫通部47により支持されるので、導電部材30が合成樹脂材49から剥離するのを確実に防止することができる。
【0045】
特に、本実施形態によれば、導電部材30に貫通孔43を設けることにより形成された樹脂貫通部47も備えているから、導電部材30内に合成樹脂材49が貫通して導電部材30を支持し、導電部材30が合成樹脂材49から剥離するのをより確実に防止することが出来る。
【0046】
また、本実施形態によれば、ハウジング13には、樹脂貫通部47に対応して肉抜き部48が形成されているから、厚みを均一化することができ、樹脂貫通部47が成形後に縮むのを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態において、接着剤は、導電部材30をインサート成形によりハウジング13に取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化することで、導電部材30を合成樹脂材49に接合するものである。したがって、本実施形態によれば、導電部材30に塗布しておいた接着剤を、インサート成形の際に発生する熱を利用して溶融させ、合成樹脂材49が固化するのを待てば、導電部材30と合成樹脂材49とを接合することができるので、簡易な方法により、導電部材30を合成樹脂財に接合することができる。
【0048】
また、本実施形態において、ハウジング13は、雌端子12が収容される端子収容部を備え、雄端子32はハウジング13の端子収容部内に突出して配され、雌端子12と電気的に接続する構成としたから、ハウジング13は、その内側に雄端子32を配置するだけでなく、当該雄端子32に接続される雌端子12を収容する端子収容部も備える。つまり本実施形態によれば、雌端子12を収容する別のハウジングは不要なので部品点数を減らすことができるだけでなく、雌端子12を収容する別のハウジングが嵌合するためのスペースが不要となり、アースコネクタ10を小型化することができる。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では樹脂貫通部47を導電部材30と合成樹脂材49との接合部36よりも外側に設けたが、当該接合部を樹脂貫通部よりも外側に設けてもよい。
(2)上記実施形態では、導電部材30に切欠部44と貫通孔43とを形成することにより、これらの部分に樹脂貫通部47を形成する例を示したが、切欠部のみを形成してもよいし、貫通孔のみを形成してもよい。
(3)上記実施形態では、樹脂貫通部47に対応する位置に肉抜き部48を形成したが、肉抜き部48がなくてもよい。
(4)上記実施形態では、接着剤として、導電部材30をインサート成形によりハウジング13に取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化するものを用いる例を示したが、これに限定されない。接着剤は、導電部材30を構成する金属材料とハウジングを構成する合成樹脂材49との親和性を有し、外部からの水の浸入を防止できるシール性を有するものであればよい。
(5)上記実施形態では、導電部材30に複数の雄端子32が設けられ、複数の雌端子12が導電部材30によって電気的に接続されるジョイントコネクタ10に適用した例をしめしたが、導電部材に1つの接続部が設けられ、当該接続部に接続される相手方端子が1つであってもよい。
(6)上記実施形態では1つのハウジング13に接続部と、接続部に電気的に接続する相手方端子の端子収容室とを備えるアースコネクタ10を示したが、相手方端子は別体の端子収容室を備えるハウジングに収容されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…アースジョイントコネクタ(アースコネクタ)
11…電線
12…雌端子(相手方端子)
13…ハウジング
14…端子収容部
30…導電部材
32…雄端子(接続部)
34…導電板部
35…雄端子と接地部との間の領域
37…接地部
42…連結部
43…貫通孔
44…切欠部
45…接着剤層
46…接合部
47…樹脂貫通部
48…肉抜き部
49…合成樹脂材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に取り付けられるアースコネクタであって、
電線に接続された相手方端子と電気的に接続する接続部および車体に固定される接地部を有する金属製の導電部材と、前記導電部材と一体に成形された合成樹脂製のハウジングと、を備え、
前記導電部材は、前記接続部を前記ハウジングの内側に配置するとともに、前記接地部を前記ハウジングの外側に配置して、前記接続部と前記接地部との間の領域がインサート成形により前記ハウジングに取り付けられ、
前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間には、前記ハウジングを構成する合成樹脂材が貫通する樹脂貫通部が設けられ、かつ、前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間の領域は、前記合成樹脂材と接着剤により接合されていることを特徴とするアースコネクタ。
【請求項2】
前記樹脂貫通部は、前記導電部材と前記合成樹脂材との接合部よりも外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアースコネクタ。
【請求項3】
前記樹脂貫通部は、前記導電部材に貫通孔を設けることにより形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアースコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記樹脂貫通部に対応して肉抜き部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項5】
前記接着剤は、前記導電部材をインサート成形により前記ハウジングに取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化することで、前記導電部材を前記合成樹脂材に接合することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項6】
前記相手方端子は複数である一方、前記導電部材には複数の前記接続部が設けられ、複数の前記相手方端子が前記導電部材によって電気的に接続されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記相手方端子が収容される端子収容部を備え、
前記接続部は前記ハウジングの前記端子収容部内に突出して配され、前記相手方端子と電気的に接続することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項1】
車両の車体に取り付けられるアースコネクタであって、
電線に接続された相手方端子と電気的に接続する接続部および車体に固定される接地部を有する金属製の導電部材と、前記導電部材と一体に成形された合成樹脂製のハウジングと、を備え、
前記導電部材は、前記接続部を前記ハウジングの内側に配置するとともに、前記接地部を前記ハウジングの外側に配置して、前記接続部と前記接地部との間の領域がインサート成形により前記ハウジングに取り付けられ、
前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間には、前記ハウジングを構成する合成樹脂材が貫通する樹脂貫通部が設けられ、かつ、前記導電部材の前記接続部と前記接地部との間の領域は、前記合成樹脂材と接着剤により接合されていることを特徴とするアースコネクタ。
【請求項2】
前記樹脂貫通部は、前記導電部材と前記合成樹脂材との接合部よりも外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアースコネクタ。
【請求項3】
前記樹脂貫通部は、前記導電部材に貫通孔を設けることにより形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアースコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記樹脂貫通部に対応して肉抜き部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項5】
前記接着剤は、前記導電部材をインサート成形により前記ハウジングに取り付ける際に発生する熱により溶融したのちに固化することで、前記導電部材を前記合成樹脂材に接合することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項6】
前記相手方端子は複数である一方、前記導電部材には複数の前記接続部が設けられ、複数の前記相手方端子が前記導電部材によって電気的に接続されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記相手方端子が収容される端子収容部を備え、
前記接続部は前記ハウジングの前記端子収容部内に突出して配され、前記相手方端子と電気的に接続することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−73797(P2013−73797A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212114(P2011−212114)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
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