説明

イオナイザ

【課題】部品点数の増加、組付作業の複雑化等の問題を招くことなく、イオンエアに塵が混入することを防止できるようにする。
【解決手段】イオナイザ1は、気体をイオン化させる放電部11と、中空の錐体部2とを備える。錐体部2の大径部には、気体が流入する流入口15が形成されている。錐体部2の小径部には、放電部11によりイオン化された気体が流出する流出口16が形成されている。錐体部2の外郭には、錐体部2の内部と外部とを連通させる螺旋状の溝部25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオナイザに関し、特に防塵のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
イオナイザは、イオン化された空気(イオンエア)を対象物に吹き付けることにより、当該対象物の表面に付着した静電気を取り除く装置であり、例えば、電子機器の生産工程等において半導体集積回路等の部品を除電するために用いられる。
【0003】
この種と技術として、例えば特許文献1が開示されている。同文献に係るイオナイザは、風速、湿度等の環境の変化に応じて正負のイオン発生量を均衡させるのに必要な電圧を適正に制御できるようにすることを課題とし、イオン化された空気の流れの中に配置した振動型表面電位センサ自身の帯電電位が所定の範囲に収まるように、対極に印加する直流電圧を制御することを主な技術的特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−203993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオナイザは、上述のように、半導体集積回路等の精密機器の除電に用いられることが多い。そのため、イオンエアに塵等の異物が混入することを防止する手段が必要となる。
【0006】
イオナイザは、空気をイオン化させるための放電部を有する。この放電部には、雰囲気中の塵が付着しやすい。放電部自らが帯電状態となるからである。そこで、放電部に塵が付着した場合でも、吹き出されるイオンエアには塵が混入しないようにする手段が必要となる。
【0007】
このような防塵手段としては、一般的にフィルタを用いることが多い。しかしながら、フィルタを用いる場合には、イオナイザを製造する際の部品点数の増加、組付作業の複雑化等が問題となる。
【0008】
そこで、本発明は、部品点数の増加、組付作業の複雑化等の問題を招くことなく、イオンエアに塵が混入することを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、気体をイオン化させる放電部と、中空の錐体部とを備え、前記錐体部の大径部には、前記気体が流入する流入口が形成され、前記錐体部の小径部には、前記放電部によりイオン化された気体が流出する流出口が形成され、前記錐体部の外郭には、前記錐体部の内部と外部とを連通させる螺旋状の溝部が形成されているイオナイザである。
【0010】
当該態様によれば、錐体部内で流入口から流出口へ向う空気の一部が溝部を介して錐体部外に排出される。この時、溝部が螺旋状であることから、錐体部内には、竜巻状の空気流が発生することとなる。そのため、錐体部内の空気に含まれる塵に遠心力が働き、当該塵は溝部を介して錐体部外に排出される。これにより、フィルタ等の部材を用いることなく、流出口から吹き出されるイオンエアから塵を取り除くことができる。
【0011】
また、前記溝部は、前記外郭の開口部から排出された物体を前記外郭の外面に沿って前記大径部側に導く排気流路を備えることが好ましい。
【0012】
当該態様によれば、溝部から排出された塵が巻き上がることを防止することができる。
【0013】
また、前記放電部は、放電針の先端部であって、前記放電針は、前記錐体部の内部に前記先端部のみが露出するように配置されていることが好ましい。
【0014】
当該態様によれば、帯電により塵が付着する可能性が高い部分の露出を最小限に抑えることができ、更なる防塵効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、たとえ放電針に塵が付着したとしても、フィルタ等を用いることなく、イオンエアに塵が混入しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るイオナイザの構成を示す図である。
【図2】図1に示すイオナイザの溝部の形状を示す上面図である。
【図3】図1に示すイオナイザのIII−III断面図である。
【図4】実施の形態1に係るイオナイザの溝部の構造を示す一部拡大断面図である。
【図5】実施の形態1に係るイオナイザの使用状態を例示する図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るイオナイザの溝部の形状を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1に係るイオナイザ1の構成を示している。図2は、当該イオナイザ1の上面図である。図3は、当該イオナイザ1のIII−III断面図である。
【0018】
イオナイザ1は、錐体部2、筒体部3、放電針4、放電制御部5、及び送風機6を有する。
【0019】
錐体部2は、中空の円錐形の部材である。錐体部2の図1中下方の大径部には、流入口15が形成され、同図中上方の小径部には、流出口16が形成されている。
【0020】
流入口15は、円筒形の筒体部3に形成された風路9と連通している。送風機6から送出されるエア21は、風路9を介して錐体部2内に流入する。本実施の形態においては、風路9が筒体部3に4つ形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
放電針4は、その先端部に放電部11が形成されている。放電部11の放電により、その周囲の空気がイオン化される。当該放電は、放電制御部5により制御される。放電制御部5は、電源、マイクロコンピュータ等を用いて適宜設計される。
【0022】
本実施の形態においては、放電針4は、放電部11のみが錐体部2内に露出するように配置されている。帯電により塵が付着する部分をできるだけ少なくするためである。放電針4の放電部11以外の部分は、筒体部3に形成された支持孔14に挿通されて固定されている。支持孔14は、風路9と連通していない。
【0023】
流入口15から錐体部2内に流入したエア21は、放電部11によりイオン化され、流出口16からイオンエア22として流出する。
【0024】
上記錐体部2の外郭には、渦巻形状の溝部25が形成されている。図4は、溝部25の断面形状を示している。溝部25は、排気流路26を介して、錐体部2の内部Iと外部Oとを連通させる。排気流路26は、錐体部2の外郭に穿設された開口部27及び当該外郭の外面に沿って流出口16から流出するイオンエア22の流れと反対方向に開口する排出口28を有する。
【0025】
上記構成により、錐体部2内を流入口15から流出口16へ向って進行する錐体内エア30の一部が排気31として溝部25から排出される。この時、溝部25が渦巻形状であるため、錐体内エア30は、図1に概念的に示すように、竜巻状に進行する。これにより、錐体内エア30に含まれる塵に遠心力が働き、当該塵は排気31と共に排出される。
【0026】
図5は、上記イオナイザ1の使用形態を例示している。本例に係るイオナイザ1は、半導体デバイス40の微細構造部41(ボンディングワイヤの配置部等)にイオンエア22を吹き付けるものである。1つの半導体デバイス40に複数の微細構造部41がある場合、イオナイザ1を変位させることによって各微細構造部41にイオンエア22を吹き付ける。全ての微細構造部41への吹き付け作業が終了したら、次の半導体デバイス40がイオナイザ1の吹き付け範囲に搬送される。
【0027】
上記構成のイオナイザ1によれば、エア21に塵が混入されていたり、放電部11に塵が付着したりしている場合であっても、フィルタ等の部材を用いることなく、当該塵がイオンエア22に含まれないようにすることができる。
【0028】
実施の形態2
図6は、本発明の実施の形態2に係るイオナイザ51の上面図であり、その溝部52の構成を示している。
【0029】
本実施の形態に係る溝部52は、複数の半円形状の溝部からなり、各半円形状の溝部は、流出口16から錐体部2の大径部の縁部まで延設されている。このような形状の溝部52であっても、上記実施の形態1に係る溝部25と同様に、錐体部2内に竜巻状の空気流を発生させることができ、上記防塵効果を得ることができる。
【0030】
尚、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。本願特許請求の範囲の「螺旋状」との文言には、上記実施の形態1及び2に係る溝部の形状だけでなく、これらの形状に類似し、同様の作用効果を奏するあらゆる形状が含まれると解すべきである。
【符号の説明】
【0031】
1,51 イオナイザ
2 錐体部
3 筒体部
4 放電針
5 放電制御部
6 送風機
9 風路
11 放電部
14 支持孔
15 流入口
16 流出口
21 エア
22 イオンエア
25,52 溝部
26 排気流路
27 開口部
28 排出口
30 錐体内エア
31 排気
40 半導体デバイス
41 微細構造部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体をイオン化させる放電部と、
中空の錐体部と、
を備え、
前記錐体部の大径部には、前記気体が流入する流入口が形成され、
前記錐体部の小径部には、前記放電部によりイオン化された気体が流出する流出口が形成され、
前記錐体部の外郭には、前記錐体部の内部と外部とを連通させる螺旋状の溝部が形成されている、
イオナイザ。
【請求項2】
前記溝部は、前記外郭の開口部から排出された物体を前記外郭の外面に沿って前記大径部側に導く排気流路を備える、
請求項1に記載のイオナイザ。
【請求項3】
前記放電部は、放電針の先端部であって、
前記放電針は、前記錐体部の内部に前記先端部のみが露出するように配置されている、
請求項1又は2に記載のイオナイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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