説明

イオン化装置

【課題】 ノズルによるイオン発生量の減少を抑えつつ放電電極への異物の付着を極力回避することのできるコロナ放電式イオン化装置を提供する。
【解決手段】 クリーンガスの供給を受けるガス通路ユニット11は、電極組立体40の内部クリーンガス通路50、48を通って、放電電極12の先端と同軸のクリーンガス吐出口48aから噴出される。電極組立体40は、放電電極12の回りを囲むガードリング46を有し、このガードリング46は雰囲気エアの自由な通過を許す外部エア導入用開口部46bを備えている。放電電極12に沿って噴出したクリーンエアは、ガードリング46の外部エア導入用開口部46bから導入される雰囲気エアを巻き込んでイオン化エアとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気中の静電気制御又はワークの除電に関し、より詳しくは、いわゆるイオン化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームでの清浄化や浮遊粒子の帯電防止の除電などの空気中の静電気制御やワークの除電のために、コロナ放電式のイオン化装置が多用されている。
【0003】
図14は、現在入手可能なDC式イオン化装置に含まれる放電電極バーを示す。この放電電極バー1は、細長い筒状のケース2を有し、このケース2には、放電電極を囲む円筒状のノズル3が取り付けられ、これらノズル3は、長手方向に沿って互いに間隔を隔てて配置されている。
【0004】
なお、従来の放電電極バー1は、隣接するノズル3、3の間に高圧電源ユニット4又は制御ユニット5が配置され、また、各ノズル3から吐出されるクリーンガスは、ケース2の内部に配置された可撓性チューブ6を通じて供給される。図示のDC式放電電極バー1の正極側のノズルには3aを付し、負極側のノズルには3bを付して、図面上、識別してある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電電極の周りにノズルを設けた場合、ノズルが放電電極と同極で帯電することから、これにより放電電極の周囲の電界が緩和されてしまいイオン発生量が減少するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ノズルによるイオン発生量の減少を抑えることのできるコロナ放電式のイオン化装置及びこれに組み付けられる放電電極組立体を提供することにある。
【0007】
本発明の更なる目的は、放電電極の汚染を防止することのできるイオン化装置及びこれに組み付けられる放電電極組立体を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、放電電極の汚染防止と十分なイオン発生量との確保との両立を図ることのできるイオン化装置及びこれに組み付けられる放電電極組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる技術的課題は、本発明の第1の観点によれば、
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置において、
放電電極の先端と同軸のクリーンガス吐出口を有し、
該クリーンガス吐出口を通じてクリーンガスを噴出させることにより、このクリーンガス吐出口から噴出されるクリーンガスによって雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とするイオン化装置を提供することにより達成される。
【0010】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、クリーンガス吐出口から噴出したクリーンガスが、放電電極の近傍で雰囲気エアを巻き込み、この雰囲気エアと共にイオン化エアとなって流下することになる。
【0011】
そして、放電電極の周りには従来のノズルが存在しない実質的に開放した状態にあることから、従来のノズルを備えたイオン化装置で問題となっていた、ノズルが同極に帯電することに伴う放電電極の周囲での電界の緩和も発生せず、これによりイオン発生量の低下を防止することができる。また、クリーンガス吐出口から放出されるクリーンガスが放電電極の先端に沿って流れることから、このクリーンガスによって放電電極の先端の汚染を防止することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態では、クリーンガス吐出口の中心線上に放電電極の先端が位置ち且つ放電電極の先端はクリーンガス吐出口から前方に突出している。これにより、クリーンガス吐出口から放出されるクリーンガスは、放電電極の先端を包囲しながら流出し、これによりバリアを形成して、外気が放電電極に触れるのを阻止する。外気つまり雰囲気エアは、クリーンガス吐出口から流出するクリーンガスの外周部分が外気を引き込み、放電電極の先端から僅かに離間した前方位置で外気と一緒になりながらイオン化エアとなって前方に放出される。このことに加えて、放電電極の先端をクリーンガス吐出口から前方に突出してあるため、放電電極の先端をクリーンガス吐出口の中に配置させた場合に比べてイオン化エア生成量を多くすることができ、これにより放電電極の汚染を防止しつつ十分なイオン化エアを確保することができる。クリーンガス吐出口から突出する放電電極の先端の突出量は、放電電極の汚染防止の観点と、必要とされるイオン化エアの生成量の観点とのバランスの上に立脚して決定すればよい。
【0013】
本発明の第2の観点よれば、上記の技術的課題は、
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置において、
前記放電電極を支持すると共に、該放電電極の先端部分の回りをクリーンガスで包囲するように該クリーンガスを吐出するガス吐出口を備えた電極支持部材と、
前記放電電極の先端の前方に離間した位置に配設され且つ前方から前記放電電極の先端に対する指の接触を阻止すると共に前記放電電極の回りでイオン化したガスが前方に流出可能な開口を有するフィンガーガードと、
該フィンガーガードと前記電極支持体とに連結された複数の脚とを有し、
前記放電電極の先端を包囲しながら流れるクリーンガスが、前記複数の脚の間の外部エア導入用開口部を通じて該複数の脚で囲まれた空間の中に流入する雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とするイオン化装置を提供することにより達成される。
【0014】
この第2の観点の発明によれば、放電電極の先端の回りには、連続した壁を作る従来のスリーブとは異なり、外部エア導入用開口部を備えた複数の脚が存在しているだけであることから、脚が放電電極と同極に帯電する電荷量を低減することができる。したがって、従来の放電電極の回りにスリーブを備えたイオン化装置に比べて、放電電極の周囲での電界の緩和を抑制することができ、これによりイオン発生量の低下を抑制することができる。また、放電電極の先端の回りが、クリーンガスで包囲された状態にあることから、このクリーンガスによって放電電極の先端の汚染を防止することができる。また、この第2の観点により発明によれば、フィンガーガードによって、作業者が誤って放電電極の先端に指を触れてしまうのを防止することができる。
【0015】
第2の観点のイオン化装置において、好ましくは、ガス吐出口の中心に放電電極の先端部分が配置され、放電電極の先端部分に接しながらクリーンガスがガス吐出口から吐出される。更に好ましくは、放電電極の先端はガス吐出口から前方に僅かに突出して配置される。
【0016】
本発明の第3の観点によれば、上記の技術的課題を達成すべく、
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置に脱着可能に組み付けられる放電電極組立体であって、
放電電極と、
該放電電極を支持すると共に、該放電電極の先端部分の回りをクリーンガスで包囲するように該クリーンガスを吐出するガス吐出口を備えた電極支持部材と、
前記放電電極の先端の前方に離間した位置に配設され且つ前方から前記放電電極の先端に対する指の接触を阻止すると共に前記放電電極の回りでイオン化したガスが前方に流出可能な開口を有するフィンガーガードと、
該フィンガーガードと前記電極支持体とに連結された複数の脚とを有し、
前記放電電極の先端を包囲しながら流れるクリーンガスが、前記複数の脚の間の外部エア導入用開口部を通じて該複数の脚で囲まれた空間の中に流入する雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とする電極組立体が提供される。
【0017】
この第3の観点による放電電極組立体によれば、これをイオン化装置に組み付けることで、上述した第2の観点のイオン化装置の作用効果を奏することは勿論のことであるが、放電電極が摩耗してイオン化装置の性能が低下したときには、放電電極組立体を交換することで、イオン化装置を初期性能まで戻すことができる。また、この交換作業の際に、作業員が指を誤って放電電極の先端に触れて怪我するのをフィンガーガードによって防止することができる。
【0018】
第3の観点のイオン化装置において、好ましくは、ガス吐出口の中心に放電電極の先端部分が配置され、放電電極の先端部分に接しながらクリーンガスがガス吐出口から吐出される。更に好ましくは、放電電極の先端はガス吐出口から前方に僅かに突出して配置される。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態では、放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置において、
前記放電電極を支持すると共に、該放電電極の長手方向に沿って該放電電極の先端部分から外部に向けてクリーンガスを放出するためのガス通路を備えた電極支持部材と、
該電極支持部材から、前記放電電極の長手方向に所定距離隔てた位置に、前記電極支持部材から放出されるクリーンガスの流れを通過させる開口を有するリング本体と、該リング本体と前記電極支持体とに連結された複数の脚とを備えたガードリングとを有し、
前記リング本体が、周方向に連続した形状を有し、また、指先の侵入を防止可能な直径を有し、
前記放電電極の先端部分から放出されるクリーンガスが、互いに隣接する前記脚の間の外部エア導入用開口部を通じて前記ガードリング内に流入する雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とする。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態では、ガス吐出口の中心に放電電極の先端部分が配置され、放電電極の先端部分に接しながらクリーンガスがガス吐出口から吐出される。更に好ましくは、放電電極の先端はガス吐出口から前方に僅かに突出して配置される。
【0021】
ガードリングは、リング本体によって、例えば放電電極の交換作業の際に放電電極の先端に指を触れるのを防止するフィンガーガード機能を有するだけでなく、周方向に連続した形状のリング本体つまりフィンガーガードはガードリングに剛性を付与し、放電電極を交換する際に、ガードリングを指先で把持したときにガードリングの変形を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0023】
図1は、実施例のイオン化装置の放電電極バーの内部レイアウトを説明するための図であり、図2は、実施例の放電電極バー100の外形を示す斜視図である。
【0024】
放電電極バー100は、上端を閉じた逆U字状断面のケース10を有し、ケース10の内部には、その下側領域にガス通路ユニット11及び互いに離間した先端が尖った放電電極12が複数配置されている。
【0025】
他方、ケース10の上側領域には、密閉ボックスに収容された高電圧ユニット13と、電源回路や例えば表示回路やCPUを含む制御ユニット14とが配置されている。ケース10の長手方向両端面には、クリーンガス用ポート15が設けられ、このクリーンガス用ポート15を通じて、図外のガス源から例えば窒素ガスなどの不活性ガスや大気中のゴミを濾過又は水分を除去した濾過エアからなるクリーンガス、より好ましくは、更に有機化合物を除去したクリーンガスがガス通路ユニット11に供給され、ガス通路ユニット11内のクリーンガスは、後に詳しく説明するように、各放電電極12に沿って外部に吐出される。このクリーンガスの吐出により放電電極12の先端を通過したクリーンガスは、雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアとなり、ワークに向かって流下する。これにより、例えばシロキサンなどの有機化合物を含むガスが放電電極12に触れるとコロナ放電により有機化合物を分解し、これにより固体になった物質が放電電極に付着して何らかの原因で落下してしまうという問題を発生することになるが、有機化合物を含まないクリーンガスを放電電極12の先端を通過させることにより、このような問題を解消することができる。
【0026】
ケース10の上側領域と下側領域とは、これら領域間での気体の流通を実質的に防ぐために、長手方向に延びる中間仕切壁16(図1)によって区画されているのが好ましい。なお、参照符号17は、隣接する放電電極バー100同士を連結するためのモジュラコネクタを受け入れるための接続端子を示す。また、参照符号18は、接地した対向電極プレートを示し、この対向電極プレート18は、実質的にケース10の一部を構成しており、この対向電極プレート18によってケース10の下端開口が閉じられている。
【0027】
図3、図4は、ケース10の長手方向に沿って配置される細長い形状のガス通路ユニット11を示すものであり、図3は、2つのガス通路ユニット11を連結した状態を示す斜視図であり、図4は、各ガス通路ユニット11の分解斜視図である。
【0028】
図3から理解できるように、ガス通路ユニット11の長手方向の端壁には、可撓性の連結チューブ20のためのジョイント21が設けられ、このジョイント21に連結チューブ20を嵌合することにより隣接するガス通路ユニット11同士が互いに連通され、また、クリーンガス用ポート15(図1、図2)に連通される。
【0029】
各ガス通路ユニット11は、図4から理解できるように、水平方向に延びる細長い支持プレート25と、上方に向けて開放したボックス状部材26とを有する。支持プレート25には、その下面に、矩形輪郭を有する溝27が形成され、この溝27にボックス状部材26の上端縁を嵌合することにより密閉されたクリーンガス通路28(図6)が構成され、このクリーンガス通路28は、ボックス状部材26の長手方向の各端壁に設けられた上述のジョイント21に連通している。
【0030】
支持プレート25には、その上面に、長手方向に延びる細長い高電圧配板30が配設され、この高電圧配板30は支持プレート25と、その上の固定プレート31とで挟持される。高電圧配板30は、各放電電極12に対応した位置にバネ性の導電性接続口32が設けられている。この導電性接続口32に代えて、高電圧配板30の一部を切り起こすことにより形成したバネ性の接触片であってもよい。支持プレート25には、また、各導電性接続口32に対応した位置に上下に延びる第1スリーブ35が形成されている。
【0031】
上述のボックス状部材26は、支持プレート25の第1スリーブ35に対応する位置に配設された第2スリーブ37を有し、この第2スリーブ37は、その基端部分に、好ましくは、沿面距離を拡大するための円周フランジ38を備えているのが好ましい。
【0032】
図4、図6に参照符号40で示す部材は電極組立体である。電極組立体40は、放電電極12を支持するための本体41(図5)と、この本体41の軸部42に嵌装されたアタッチメント43と、本体軸部42の先端部分に嵌装されたゴムなどの弾性材料からなるシール部材44とで構成されている。
【0033】
電極本体41は、放電電極12の先端部分に位置する拡大ヘッド部分45を有し、この拡大ヘッド部分45は、放電電極12の先端の周りを取り囲むと共に、放電電極12の周囲からエアを放出するエアの進行を確保するための開口部を中央部分に有するガードリング46を備えているのが好ましい。このガードリング46は、拡大ヘッド部分45に対する位置決め保持と、外部からのガードリング46内への外部エアを導入するために、放電電極12から所定の間隔を隔てて位置し且つ周方向に間隔を隔てて設けられた複数の脚部46aを有し、この脚部46aは拡大ヘッド部分45に連結され、隣接する脚部46a、46a間に外部エア導入開口部46bが形成されている。
【0034】
ガードリング46は、その先端に円形リング形状のフィンガーガードつまりリング本体46cを有し、全体として、円柱状の外形輪郭を有しているが、放電電極12の周囲からエアを放出するエアの進行を確保することができ且つ指の挿入防止機能を実現できる寸法であれば断面多角形の形状を有していてもよい。また、ガードリング46の径方向の大きさは、拡大ヘッド部分45の基部の径方向の大きさと実質的に同一又はそれ以下であってもよい。
【0035】
また、上述した各脚部46a間に形成される外部エア導入用開口部46bは、図示のように何も存在しない空所で構成してもよいが、外部からの雰囲気エアの自由な通過を許容できる、例えば比較的大きな網目のネット状の構造を有していてもよく、また、柵状の構造を有していてもよい。このガードリング46の設計においては、各脚部46aが占有する面積を抑えて、外部エア導入用開口部46bの面積を大きく設定することが望ましい。
【0036】
また、拡大ヘッド部分45の先端面は、その外周部分から徐々に隆起した山の形状、つまり、放電電極12の先端の周りの領域がフラットな水平面45aと、その外周縁から傾斜した傾斜面45bとで構成されるのがよい。また、放電電極12に雰囲気エアを積極的には接触させず且つイオン化エアの流下に雰囲気エアを活用するという観点から、外部エア導入用開口部46bを通じて供給される外部からの雰囲気エアを放電電極12の先端から所定距離離れた位置で且つガードリング46の高さと実質的に同じか又はそれ以下の高さで、傾斜面45bと、放電電極12の軸線を延長した仮想軸線との交点が位置するように設定するのが好ましい。
【0037】
電極本体41は、放電電極12の先端部分の周囲に沿って形成されたクリーンガス通路48を有し、このクリーンガス通路48は、放電電極12の先端と同軸の小径吐出口48aを通じて外部に開放されている。すなわち、放電電極12は、クリーンガス通路48の中心軸と同軸に配設され、放電電極12の先端は小径突出口48aから前方に僅かに突出している。この電極本体41の軸部42には、軸部42に径方向に延びる入口48bを有し、電極本体41内のクリーンガス通路48は、この軸部42の入口48bを通じて外部と連通可能である。
【0038】
電極本体41(軸部42)の周りを取り囲むアタッチメント43は、本体軸部42との間の隙間でクリーンガス通路50を形成し、この軸部周りのクリーンガス通路50には、アタッチメント43の先端部分に形成されたエア導入口50aを通じて、ガス通路ユニット11内のクリーンガス通路28からクリーンガスが導入される。
【0039】
電極組立体40をガス通路ユニット11の第2スリーブ37に挿入すると、放電電極12の基端が、高電圧配板30の接続口32の中に嵌入して、高電圧配板30と放電電極12とが電気的に接続されると共に、本体軸部42の先端に設けたシール部材44の一部が第1スリーブ35内に嵌入して、放電電極12と高電圧配板30との接続エリアが密封される。つまり、放電電極12と高電圧配板30との接続部分は、シール部材44によってユニット11内のクリーンガス通路28から完全に隔離されているため、ガス通路ユニット11内を通るクリーンガスに影響を及ぼすことはない。図6の参照符合52はO-リングである。
【0040】
図7は、放電電極バー100の電気回路の概要を示すものである。放電電極バー100は、同一の放電電極12からプラスイオンとマイナスイオンとが交互に発生するパルスAC式イオン発生方式が採用されている。放電電極バー100は、プラス側高電圧発生回路80とマイナス側高電圧発生回路81とを有し、これらの高電圧発生回路80、81で高電圧ユニット13が構成されており、この高電圧ユニット13は密閉ボックス(図示せず)の中に収容されている。
【0041】
プラス側高電圧発生回路80とマイナス側高電圧発生回路81は、共に、トランス82、83の一次側コイルに接続された自励事例発信回路84、85と、二次側コイルに接続された例えば倍整流回路からなる昇圧回路86、87とを含む。高電圧発生回路80、81と放電電極12との間には保護抵抗つまり第1抵抗R1が設けられている。
【0042】
トランス82、83の二次コイルの接地端GNDと、フレームグランドFGとの間には、第2抵抗R2と第3抵抗R3とが直列に接続され、また、対向電極プレート18とフレームグランドFGとの間には、第4抵抗R4と上述した第3抵抗R3とが直列に接続されている。
【0043】
第4抵抗R4を流れる電流をイオン電流検知回路88で検出することにより、放電電極12の近傍のイオンバランスを知ることができる。第3抵抗R3を流れる電流をイオン電流検知回路88で検出することにより、ワーク又は帯電物の近傍のイオンバランスを知ることができる。第2抵抗R2を流れる電流を異常放電電流検知回路89で検出することで、放電電極12と対向電極プレート18又はフレームグランドFGとの間の異常放電を検出することができ、CPU14で異常放電と判別したときには、アラーム手段である表示LED90を点灯するなどして操作者に異常を知らせることができる。
【0044】
以上、パルスAC式放電電極バー100の回路を説明したが、放電電極バーとしては、商用周波数でプラスイオンとマイナスイオンとが交互に発生するAC方式や、プラスイオンとマイナスイオンが同時に発生するSSDC式であってもよく、プラスイオンとマイナスイオンとが交互に発生するパルスDC式であってもよい。
【0045】
放電電極バー100は、その動作において、ガス通路ユニット11内のクリーンガスが、アタッチメント43のエア導入口50aから電極組立体40の内部通路を構成するクリーンガス通路50、48内に入り、この内部クリーンガス通路50,48を通って、放電電極12の先端周りの小径吐出口48aから吐出される。なお、図6に示す参照符号51は、シール部材であり、このシール部材51は、アタッチメント43と、電極本体41の拡大ヘッド部分45との間をシールするものである。
【0046】
上述した実施例によれば、放電電極12の交換は、電極組立体40又は本体41を抜き差しするだけでよく、この交換作業は簡単に行うことができる。また、放電電極12の先端の周りが従来のようにスリーブ状ノズルで囲まれておらず、実質的に外部に露出した状態にあるため、従来のスリーブ状ノズルが放電電極12の電圧と同極に帯電することに伴う電極先端の周囲の電解が緩和されてしまうことを防止することができ、この結果、イオン発生量を増加させることができる。
【0047】
また、ガス源からクリーンガス用ポート15を通じて供給されるクリーンガスが放電電極12の先端と同軸の小径吐出口48aから吐出され、この小径吐出口48aから吐出されるクリーンガスによって放電電極12の先端が覆われるため、放電電極12の先端に対する異物の付着つまり放電電極12の汚染を防止することができる。
【0048】
なお、小径吐出口48aから吐出されるクリーンガスは、放電電極12を通過した直後でイオン化されるが、ガードリング46を通過して供給される雰囲気エアつまり周囲に存在するエアを巻き込んで比較的大量のイオン化エアとなって流下することになる。クリーンガスが雰囲気エアを巻き込む効果は、この吐出口48aから吐出されるクリーンガスの流速が40m/sec以上であると効果的に現れる。
【0049】
前述したように、放電電極12は、クリーンガス通路48の中心軸と同軸に配設され、放電電極12の先端は、小径のガス吐出口48aの中心軸上に配置されて、このガス吐出口48aから前方に突出して配置されている。放電電極12の先端をガス吐出口48aから前方に突出させることでイオン化エアの生成量を増大させることができるが、放電電極12をガス吐出口48aから大きく突出させると放電電極12の先端の汚染の問題が再現する。したがって、必要とされるイオン化エアの生成量と、放電電極12の汚染の問題とをバランスさせることができるように、放電電極12の突出量を決定すればよい。
【0050】
また、放電電極12の先端の周りに、雰囲気エアの自由な通過を許容するガードリング46を設けた場合には、電極組立体40の抜き差しの作業中に放電電極12の先端に触れてしまうことを防止することができるため、安全性を高めることができる。この効果を確実なものにするのに、ガードリング46bの高さを0.5mm〜14mm、直径を2.5mm〜10mmであるのが好ましい。
【0051】
上述した放電電極12の先端に異物が付着するのをクリーンガスによって防止する効果は、図8に示すように、放電電極12の尖った先端を切り落とした切頭形状にすることで効果的なものになる。このよれば、電界集中部分が、尖がった端ではなくて、放電電極12の先端面12aの周囲(図8中、丸で囲んだ部分)となり、この部分は、小径吐出口48aから噴出するクリーンガスが当たり易い領域であるため、クリーンガスによる異物付着防止効果を確実なものにすることができる。
【0052】
図9〜図13は、電極組立体40の変形例110を示す。この変形例の電極組立体110は、第2スリーブ37に対して、上述したアタッチメント43無しで直接的に装着される。したがって、電極組立体110は、拡大ヘッド部分45に連続する装着部111を有し、装着部111には、第2スリーブ37を受け入れる凹所112(図10、図13)が形成されている。図13の参照符合113は、上述したO-リング52を受け入れる溝を示す。
【0053】
装着部111の凹所112は、これを規定する壁面にL字状の鍵溝114が形成されている。この鍵溝114は、図10から理解できるように、装着部111の端に開口している。この鍵溝114は、第2スリーブ37に設けられた凸部(図示せず)を受け入れる。すなわち、電極組立体110を第2スリーブ37に装着するときには、この第2スリーブ37の凸部と鍵溝114とを一致させた状態で電極組立体110の中に第2スリーブ37に挿入した後、電極組立体110を回転させることにより電極組立体110は第2スリーブ37に軸方向に移動不能に固定される。
【0054】
この変形例の電極組立体110にあっては、軸部42のガス入口48bに対して放電電極バー100の内部クリーンガス通路28(図6)からクリーンガスが供給され、ガス入口48bに入ったクリーンガスは、放電電極12回りのガス通路48を通って放電電極12の先端回りの小径吐出口48aを通じて外部に放出される。
【0055】
図5、図6に図示の電極組立体40及び図11〜図13に図示の電極組立体11の要部の好ましい具体的な寸法は、水平面45aからリング本体46cの先端面までの距離は約5mmであり、リング本体46cの内径は約9mmであり、水平面45aから放電電極12の先端の突出量は約0.5mmである。また、ガードリング46の隣接する脚部46a、46a間の4つの外部エア導入開口部46bの総面積は、脚部46aと外部エア導入開口部46bとが占める仮想リング状壁の総面積に対して約67%であり、換言すれば,4つの脚部46aの総面積は、上記の仮想リング状壁の総面積に対して約33%である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例の放電電極バーの構造を説明するための図である。
【図2】実施例の放電電極バーの外形形態を示す斜視図である。
【図3】放電電極バーの内部の下方領域に配置される2つの互いに連結されたガス通路ユニットの斜視図である。
【図4】電極組立体を含むガス通路ユニットを分解して示す斜視図である。
【図5】電極組立体の本体の側面図である。
【図6】放電電極バーの下方領域及び電極組立体を抽出した断面図である。
【図7】放電電極バーの回路図である。
【図8】電極組立体に含まれる放電電極の先端部分の変形例を示す部分側面図である。
【図9】変形例の電極組立体を斜め正面から見た図である。
【図10】図9の電極組立体を斜め背面から見た図である。
【図11】図9の電極組立体の側面図である。
【図12】図9の電極組立体の正面図である。
【図13】図9の電極組立体の断面図である。
【図14】従来のイオン化装置の放電電極バーの構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
100 放電電極バー
10 ケース
11 ガス通路ユニット
12 放電電極
18 対向電極プレート
30 高電圧配板
32 導電性接続口
38 沿面距離拡大用の円周フランジ
40 電極組立体
41 電極本体
45a 電極本体の水平面
45b 電極本体の傾斜面
46 ガードリング
46a ガードリングの脚部
46b 外部エア導入開口部
46c ガードリングのリング本体
48b クリーンガス吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置において、
放電電極の先端と同軸のクリーンガス吐出口を有し、
該クリーンガス吐出口を通じてクリーンガスを噴出させることにより、このクリーンガス吐出口から噴出されるクリーンガスによって雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とするイオン化装置。
【請求項2】
前記放電電極の先端が尖った端を切り落とした切頭形状を有する、請求項1に記載のイオン化装置。
【請求項3】
放電電極の先端の周りに設けられたガードリングを有し、
該ガードリングは雰囲気エアの自由な通過を許容する構造を備えている、請求項1又は2に記載のイオン化装置。
【請求項4】
前記ガードリングが、その先端に全周に亘って延び且つ指先の侵入を防止可能なリング本体を有する、請求項3に記載のイオン化装置。
【請求項5】
前記放電電極と、該放電電極を保持する電極本体とで電極組立体が構成され、
前記クリーンガス吐出口への前記クリーンガスの供給が前記電極組立体の内部通路を通じて行われる、請求項3又は4に記載のイオン化装置。
【請求項6】
前記電極本体は、前記放電電極の先端周りの水平面と、該水平面の外周縁から傾斜した傾斜面とを有する、請求項5に記載のイオン化装置。
【請求項7】
前記傾斜面の延長線と前記放電電極の軸線とが、該放電電極の先端から所定距離離れ且つ前記カードリングの高さと実質的に同じかそれ以下の高さ位置で合流するように、前記傾斜面の傾斜角度が設定されている、請求項6に記載のイオン化装置。
【請求項8】
前記イオン化装置が、複数の放電電極を互いに間隔を隔てて配置した放電電極バーからなり、
該放電電極バーには、その長手方向に延びる高電圧配板が内蔵されると共に、前記電極組立体を挿入可能なスリーブを有し、該スリーブに前記電極組立体を挿入することにより前記放電電極が前記高電圧配板と電気的に接続される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオン化装置。
【請求項9】
前記スリーブの基端に、沿面距離を拡大するためのフランジを有する、請求項7に記載のイオン化装置。
【請求項10】
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置において、
前記放電電極を支持すると共に、該放電電極の長手方向に沿って該放電電極の先端部分から外部に向けてクリーンガスを放出するためのガス通路を備えた電極支持部材と、
該電極支持部材から、前記放電電極の長手方向に所定距離隔てた位置に、前記電極支持部材から放出されるクリーンガスの流れを通過させる開口を有するリング本体と、該リング本体と前記電極支持体とに連結された複数の脚とを備えたガードリングとを有し、
前記リング本体が、周方向に連続した形状を有し、また、指先の侵入を防止可能な直径を有し、
前記放電電極の先端部分から放出されるクリーンガスが、互いに隣接する前記脚の間の外部エア導入用開口部を通じて前記ガードリング内に流入する雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とするイオン化装置。
【請求項11】
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置において、
前記放電電極を支持すると共に、該放電電極の先端部分の回りをクリーンガスで包囲するように該クリーンガスを吐出するガス吐出口を備えた電極支持部材と、
前記放電電極の先端の前方に離間した位置に配設され且つ前方から前記放電電極の先端に対する指の接触を阻止すると共に前記放電電極の回りでイオン化したガスが前方に流出可能な開口を有するフィンガーガードと、
該フィンガーガードと前記電極支持体とに連結された複数の脚とを有し、
前記放電電極の先端を包囲しながら流れるクリーンガスが、前記複数の脚の間の外部エア導入用開口部を通じて該複数の脚で囲まれた空間の中に流入する雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とするイオン化装置。
【請求項12】
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置に脱着可能に組み付けられる放電電極組立体であって、
放電電極と、
該放電電極を支持すると共に、該放電電極の先端部分の回りをクリーンガスで包囲するように該クリーンガスを吐出するガス吐出口を備えた電極支持部材と、
前記放電電極の先端の前方に離間した位置に配設され且つ前方から前記放電電極の先端に対する指の接触を阻止すると共に前記放電電極の回りでイオン化したガスが前方に流出可能な開口を有するフィンガーガードと、
該フィンガーガードと前記電極支持体とに連結された複数の脚とを有し、
前記放電電極の先端を包囲しながら流れるクリーンガスが、前記複数の脚の間の外部エア導入用開口部を通じて該複数の脚で囲まれた空間の中に流入する雰囲気エアを巻き込みながらイオン化エアを生成することを特徴とする電極組立体。
【請求項13】
前記フィンガーガードがリング状の形状を有する、請求項12に記載の放電電極組立体。
【請求項14】
前記ガス吐出口が、前記放電電極と同軸に配設されている、請求項12又は13に記載の放電電極組立体。
【請求項15】
放電電極に高電圧を印加してコロナ放電させることによりイオン化エアを生成するイオン化装置であって、
放電電極と、
該放電電極を支持すると共にクリーンガスを放出するためのクリーンガス通路を備えた電極支持部材と、
前記放電電極の前方に配置され、該放電電極の先端に指が接触するのを防止しつつ前記放電電極に高電圧を印可することにより生成されたイオン化エアを流出させることのできる開口を備えたフィンガーガードと、
該フィンガーガードと前記電極支持部材とに連結された複数の脚であって、隣接する脚が周方向に離間して隣接する脚間を外気が通過可能である複数の脚とを有し、
前記放電電極の先端部分が、クリーンガス通路と同軸に配置され且つ該クリーンガス通路のガス吐出口の中心に前記放電電極の先端が位置すると共に該放電電極の先端が前記ガス吐出口から前方に突出していることからなるイオン化装置。
【請求項16】
前記フィンガーガードがリング状の形状を有する、請求項15に記載のイオン化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−40860(P2006−40860A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337216(P2004−337216)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)