説明

イオン吸着装置及びイオン性物質の除去方法

【課題】大きな設備を必要とせず、自己発電により充分なイオン除去能力を発揮し、溶媒の二次汚染が無く、吸着物の処理が容易なイオン性物質の除去装置とそれを用いたイオン性物質の除去方法を提供することにある。
【解決手段】半導体光触媒膜と電解質吸着性導電材が密着した集電体からなる電極を含んでなるイオン吸着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを利用した自己発電型イオン吸着装置及びこれを用いたイオン性物質の除去方法に関する。本イオン吸着装置は、浄水などの用途に利用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、排水中に含まれる様々な物質が、環境汚染を引き起こすことが問題になっている。従来、排出時の濃度を低下させることで、環境汚染の低減が図られてきたが、最終的に排出される物質を低減させることが重要であり、排出規制は明らかにその方向に向かっていると言っても過言ではない。
【0003】
溶液中に含まれるイオン性物質の除去方法として、イオンが高濃度の場合は、適切な金属イオンや陰イオン、例えば、アルカリ土類金属イオンや炭酸イオンを加え不溶性の塩を形成し、濾別により不溶性の塩を除去して溶液中に含まれる陰イオン濃度を低減させる方法が一般的である。しかしながら、不溶性の塩とはいえ、溶解性を全く持たないものはなく、また、溶液中の組成成分によっては、不溶性とならない場合もあり、必ずしもイオン濃度を十分に低下できない。
【0004】
これまで、溶液中に含まれるイオンを低濃度化する方法として、活性炭などの多孔性物質を使用した物理吸着による方法(特許文献1参照)、イオン交換樹脂を使用した化学吸着による方法(特許文献2参照)が知られている。また、電解吸着を用いて水中の金属汚染物質を除去する方法についても、イオン交換樹脂などと組み合わせるか、単独の電気化学的除去工程を用いる方法が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
一方、電気化学的にイオン性物質を除去する方法として、平板形状の通液型電気二重層コンデンサを用いた液体の処理方法が知られている(特許文献4参照)。さらに、集電極表面へのスケールの堆積を防止する観点から活性炭層に垂直に通液して脱塩する方法も提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−112917号公報
【特許文献2】特開平11―235594号公報
【特許文献3】特開平6−121978号公報
【特許文献4】特開平6−325983号公報
【特許文献5】特開2004−97915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、活性炭などの多孔性物質では、イオン性物質だけを優先的に吸着することはできず、その他の物質まで吸着し、イオン性物質の吸着率が低下し、実際の吸着能力を発揮できない。イオン交換樹脂などの化学吸着では、イオン交換樹脂のイオン交換基の脱落など耐久性が低いことによるコスト高に加え、分解した樹脂成分による汚染にも留意しなければならないなどの問題がある。また、特許文献3に開示されている方法では、イオン交換樹脂などと組み合わせる煩雑さがあることに加え、十分な除去能力を発揮しているとは言い難い。そして、特許文献4に開示された方法では、時間の経過とともに、集電極表面へのスケールの堆積が避けがたい。
【0008】
一方、特許文献5に開示された方法は、集電極表面へのスケールの堆積を防止するものであり、その点では効果を発揮することが期待される。しかしながら、この方式では、電気エネルギーを他から供給することが必要であり、設備的に大きく、複雑な機構を必要とする問題点がある。したがって、本発明の目的は、大きな設備を必要とせず、自己発電により充分なイオン除去能力を発揮し、溶媒の二次汚染が無く、吸着物の処理が容易なイオン性物質の除去装置とそれを用いたイオン性物質の除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討により本発明を完成させた。本発明によれば、以下のものが提供される。
【0010】
[1] 半導体光触媒膜と電解質吸着性導電材が密着した集電体からなる電極を含んでなるイオン吸着装置。
[2] [1]記載のイオン吸着装置を用いるイオン性物質の除去方法。
[3] 太陽光を用いて電力を供給する[2]記載のイオン性物質の除去方法。
[4] イオン吸着装置のイオン除去能力低下時に、放電または逆電圧印加により吸着イオンを放出することによってイオン除去能力を回復する[2]または[3]記載のイオン性物質の除去方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イオン吸着装置において光励起される半導体光触媒と一体化した電極を用いることにより前述した目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】太陽電池を用いたイオン吸着システムの概略を示す図である。
【図2】本発明のイオン吸着装置の一例を示す図である。
【図3】本発明のイオン吸着装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いられる半導体光触媒としては、特に限定されるものではなく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化スズ、酸化タングステンなどが挙げられる。好適なものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステンなどが挙げられ、価格、経済性からより好適には酸化チタン、酸化亜鉛である。酸化物からなる半導体光触媒を採用することにより、高純度の材料を使用せずにイオン吸着装置を製造でき、工業的に有利である。これらは、単独で用いることも出来るし、複合して用いることもできる。複合の態様としては、例えば、2種以上の半導体光触媒を混合して使用すること、単独の半導体光触媒の層を複数種用意して積層構造とすることなどが挙げられる。また、本発明では、発電部分とイオン吸着器が合一化されているため、図1に示すような太陽電池1とイオン吸着器2を組み合わせたシステムより構造が簡単であり、使用する部材が少ないという利点に加え、光発電部分に、透明電極を使用しないため、高価な貴金属、希少金属を使用することがないこと、更に、イオンが溶解した溶液のpHにより透明電極の劣化が進むなどの問題点も解消できるメリットを有している。
【0014】
光励起による電荷分離効率および価格の観点からは、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンとしては、2価から4価までのチタン酸化物を用いることができる。これらは単独で用いても、複合して用いてもよい。電気伝導性の観点からは、3価から4価の酸化チタンを用いることがより好ましい。
【0015】
半導体光触媒の成膜方法としては、特に制限されるものではなく、集電体との密着性が得られる方法であれば良い。例えば、半導体光触媒のゾル溶液を塗布し、加熱することで密着化させることもできるし、セラミックをプラズマ溶射、アーク溶射などの方法で成膜時に半導体光触媒に変えながら、成膜することもできる。また、半導体光触媒をそのまま膜化するコールドスプレー法などによって成膜することも可能である。これらは単独の方法で成膜しても、複数を組み合わせて、積層膜とすることも可能である。
【0016】
半導体光触媒膜の厚さ方向の抵抗(シート抵抗)は、0.1〜1000Ω/□の範囲内であることが光発電による電流を効率よく利用する上で好ましい。
【0017】
集電体の材質としても、特に制限されず、アルミニウム、鉄、ニッケル、白金、銀、金、銅、モリブデンなどの金属集電体、炭素電極などの非金属集電体を用いることができる。
【0018】
集電体の形状としても特に限定されるものではなく、薄膜状、板状、棒状であっても構わない。光電池として面積を確保するため、薄膜状、板状であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いられる電解質吸着性導電材としては、特に限定されるものではなく、前述した半導体光触媒、炭素材などを使用することができる。炭素材としては、グラファイト、活性炭などを使用することができる。表面積、導電性、価格を考慮して、活性炭成型体を使用することが好ましい。
【0020】
活性炭成型体としては、繊維状活性炭から成る不織布、織布、フェルトでも良いし、活性炭微粉をケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック系導電材と共に、PTFEなどをバインダーとして用いて、シート状に成型したものを用いても構わない。活性炭の表面積は、イオンの吸着面積なので蓄電容量に影響する。すなわち、活性炭の表面積は、大きいほど良いが、大きいほど活性炭の電気伝導度が下がる。活性炭の表面積は、400〜5000m2/gであることが好ましい。
【0021】
接着の方法は特に制限されるものではないが、導電性を損なわない方法を用いることが必要である。そこで、集電体への圧着、集電体へのアーク溶射、プラズマ溶射などの溶射による接着などの方法を用いることもできるし、導電性接着剤を用いることもできる。カーボンテープなどの導電性テープによって接着しても構わない。更に、電解質吸着性導電材上に、アーク溶射、プラズマ溶射などの方法で、集電体を作製して密着性を持たせることも可能である。集電体との密着性、導電性材料層の細孔を塞がないなどの観点から、導電性接着剤や導電性テープを用いることが好ましい。導電性接着剤としては、カーボン、銀、ポリアニリンなどの導電性物質を、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂材料中に分散させたペーストを用いることができるが、接着時の界面抵抗、通電使用時の劣化性から、導電性物質としては、グラファイト粉末、グラッフェン、カーボンブラック(たとえば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック)などのカーボン材料を分散させたペーストを用いることが好ましい。更に、分散ペーストの溶媒としては、ブチロラクトン、N-メチルピロリドンなどの水溶性の有機溶媒、水を用いることができるが、導電性材料層への残留、接着剤硬化時に、導電性材料の細孔閉塞などを起こさない水の使用が好ましい。
【0022】
本発明では、イオン吸着装置をコンパクトにするために、電極間に絶縁性のセパレータを置き、複数の電極をセパレータを介して、密着させることができる。
【0023】
セパレータの材料としては、イオン透過性で親水性であれば特に制限されるものではないが、繊維シート材料、多微孔性ポリマー膜状シート材料、粒子含有シート材料などを使用することができる。通液性や、伸縮性を考慮すると、繊維シート材料又は粒子含有シート材料を使用することが好ましく、フェルト状、紙状のものが好ましい。
【0024】
セパレータを構成する素材としては、セルロース、テンセル、ポリビニルアルコール、エチレンポリビニルアルコール共重合体などの水酸基含有高分子素材などを使用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの撥水性素材を、フッ素、プラズマ、発煙硫酸などで浸水処理した親水性材料、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの親水性官能基を有する素材を用いることもできる。分離するイオンが必要以上に吸着し、イオンの透過性が低下したり、素材の柔軟性を損なうことを避けるなどを考慮して、水酸基含有高分子素材を選択したものを使用することが好ましい。
【0025】
本発明のイオン吸着装置の概略を図2に示す。本発明のイオン吸着装置は、半導体光触媒膜11と電解質吸着性導電材13が密着した集電体12からなる光発電電極14を必須の構成要素として含んでなる。図2では集電体12はメッシュから構成されており、電極の重量を低減するように工夫がなされている。本発明のイオン吸着装置では、太陽光などの光10を受けた半導体光触媒膜11から電子が放出され、この電子は集電体12へと移動する。この結果として、半導体光触媒膜11の表面は正に帯電し、電解質吸着性導電材13は負に帯電するので、ハウジング15内に存在する電解質の内、陰イオンは半導体光触媒膜11の表面に付着し、陽イオンは電解質吸着性導電材13の表面に付着する。集電体12を他の集電体(対極)16と導線などの負荷17を介して接続することで電子が集電体(対極)16に移動する。この場合、半導体光触媒膜11と電解質吸着性導電材13が密着した集電体12からなる光発電電極14には陰イオンが付着し、集電体(対極)16には陽イオンが付着する。図3はさらに集電体16にも電解質吸着性導電材18を密着させた態様を示す図である。図3の態様は、両極に電解質吸着性導電材が密着しているので、電解質の吸着効率が非常に高い。
【0026】
また以上の説明からわかるように、本発明のイオン吸着装置では、対極は必須の構成要素ではない。
【0027】
本発明のイオン性物質除去装置によれば、カチオン性成分として、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの典型金属イオン、ニッケル、銅、鉄、コバルト、亜鉛、パラジウム、白金、金、銀、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムなどの遷移金属イオン、セリウム、プラセオジム、ツリウム、テルビウム、ユーロピウムなどの希土類金属イオン、などの金属イオン種、およびこれらの金属を含むカチオン性錯体、アンモニウム、ホスホニウムなどの有機カチオン化合物を吸着除去することができる。
【0028】
また、アニオン成分として、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオン、硫酸、亜硫酸、硝酸、燐酸、亜燐酸、硼酸、塩素酸、次亜塩素酸などの鉱酸イオン、テトラフルオロボラン、ヘキサフルオロボラン、テトラフルオロホスフィンなどの錯体イオンなどを吸着除去することができる。カチオン成分を含む液体とアニオン成分を含む液体の混合物でも適用することができる。
【0029】
本発明によるイオン吸着装置は、イオンを吸着除去したい溶液を密封容器中に収めた形であるいはビーカーなどの開放された容器中に収めた形で使用してもよいし、イオンを吸着除去したい溶液の流路内に設置した形で使用してもよい。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1
3mm厚の銅板に、平均粒径2μmの東邦チタニウム製ルチル酸化チタン粒子を使用した粒子速度450m/Sの大気圧プラズマ溶射により、半導体光触媒膜として膜厚100μmの酸化チタン膜を成膜した。このとき、膜厚方向の抵抗は、30Ω/□であった。この銅板を30mm角に切り出し、溶射面を20mm角とした。この溶射面の反対側に電解質吸着性導電材として活性炭布(クラレケミカル社製 クラクティブCH)20mm角を導電性カーボンテープ(応研商事社製#15-1095 導電性カーボン両面テープ)により接着し光励起発電極とした。溶射されていない銅板を同様に切り出し、活性炭布(クラレケミカル製 クラクティブCH)20mm角を導電性カーボンテープ(応研商事社製#15-1095 導電性カーボン両面テープ)により接着し、吸着電極(対極)を得た。両銅板の間にろ紙(アドバンテック5A)を挟み、お互いが接触しないように設置した。両極を銅線で配線し、50gの12.7重量%塩化ナトリウム水溶液(ナトリウムイオン濃度5.0重量%)に浸け、太陽光の下で、3時間静置した。静置後の塩化ナトリウム水溶液のナトリウムイオン濃度を陽イオンクロマトグラフィーにより求めたところ、2.1重量%であることがわかった。この結果より、本装置がイオン吸着装置として機能したことがわかる。
【0032】
実施例2
塩化ナトリウム水溶液を1.3重量%水酸化マグネシウム水溶液(マグネシウムイオン濃度0.5重量%)に代えた以外は実施例1と同様に行い、陽イオンクロマトグラフィーによりマグネシウムイオン濃度が0.1重量%に低下していることを観測した。
【0033】
実施例3
塩化ナトリウム水溶液を硼酸ナトリウム10水和物を300℃で焼成して得た硼酸ナトリウム無水物の1400ppm水溶液(ナトリウムイオン濃度320ppm、硼酸イオン濃度1080ppm)に代えた以外は実施例1と同様に行い、陽イオンクロマトグラフィーによりナトリウムイオン濃度が19ppm、陰イオンクロマトグラフィーにより硼酸イオン濃度が27ppmであることを観測した。
【0034】
比較例1
半導体光触媒膜を敷設しなかった以外は実施例1と同様に行ったが、太陽光の下で3時間静置後のナトリウムイオン濃度は4.8重量%であった。
【0035】
比較例2
半導体光触媒膜を敷設しなかった以外は実施例2と同様に行ったが、太陽光の下で3時間静置後のマグネシウムイオン濃度は0.4重量%であった。
【0036】
比較例3
半導体光触媒膜を敷設しなかった以外は実施例3と同様に行ったが、太陽光の下で3時間静置後のナトリウムイオン濃度は195ppm、硼酸イオン濃度は960ppmであった。
【0037】
実施例4
3mm厚の銅板に、平均粒径0.1μmの石原産業株式会社製アナターゼ酸化チタン粒子を使用した粒子速度450m/Sの大気圧プラズマ溶射により、膜厚100μmの酸化チタン膜を成膜した。このとき、膜厚方向の抵抗は、27Ω/□であった。この銅板を30mm角に切り出し、溶射面を20mm角とした。この溶射面の反対側に活性炭布(クラレケミカル社製 クラクティブCH)20mm角を導電性カーボンテープ(応研商事社製#15-1095 導電性カーボン両面テープ)により接着し光励起発電極とした。溶射されていない銅板を同様に切り出し、活性炭布(クラレケミカル製 クラクティブCH)20mm角を導電性カーボンテープ(応研商事社製#15-1095 導電性カーボン両面テープ)により接着し、吸着電極(対極)を得た。両銅板の間にろ紙(アドバンテック5A)を挟み、お互いが接触しないように設置した。両極を銅線で配線し、50gの12.7重量%塩化ナトリウム水溶液(ナトリウムイオン濃度5.0重量%)に浸け、太陽光の下で、3時間静置した。静置後の塩化ナトリウム水溶液のナトリウムイオン濃度を陽イオンクロマトグラフィーにより求めたところ、1.7重量%であることがわかった。この結果より、本装置がイオン吸着装置として機能したことがわかる。
【0038】
比較例4
3mm厚の銅板に、平均粒径0.1μmの石原産業株式会社製アナターゼ酸化チタン粒子をポリテトラフルオロエチレン(三井・デュポンフルオロケミカルズ製、テフロン(登録商標)6J)と質量比で、95:5で混合し、混練、延伸し、厚さ100μmの酸化チタンシートとして、導電性カーボンテープ(応研商事社製#15-1095 導電性カーボン両面テープ)により接着した。このとき、膜厚方向の抵抗は、23000Ω/□であった。この銅板を30mm角に切り出した。この酸化チタン含有樹脂層の反対側に活性炭布(クラレケミカル社製 クラクティブCH)20mm角を導電性カーボンテープ(応研商事社製#15-1095 導電性カーボン両面テープ)により接着し、光励起発電極とした。溶射されていない銅板を同様に切り出し、活性炭布(クラレケミカル製 クラクティブCH)20mm角を導電性カーボンテープ(応研商事社製#15-1095 導電性カーボン両面テープ)により接着し、吸着電極を得た。両銅板の間にろ紙(アドバンテック5A)を挟み、お互いが接触しないように設置した。両極を銅線で配線し、50gの12.7重量%塩化ナトリウム水溶液(ナトリウムイオン濃度5.0重量%)に浸け、太陽光の下で、3時間静置した。静置後の塩化ナトリウム水溶液のナトリウムイオン濃度を陽イオンクロマトグラフィーにより求めたところ、4.8重量%であることがわかった。この結果より、半導体光触媒膜に換えて酸化チタン粒子と樹脂との混合物の層を使用した場合には、酸化チタンと集電体との間の密着性が十分でなく、導電性が著しく低く、色素などの増感剤を存在させないと、イオン吸着装置としての機能が発揮できないことがわかった。
【符号の説明】
【0039】
1 太陽電池
2 イオン吸着器
10 太陽光などの光
11 半導体光触媒膜
12 集電体
13 電解質吸着性導電材
14 光発電電極
15 ハウジング
16 集電体(対極)
17 導線などの負荷
18 電解質吸着性導電材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光触媒膜と電解質吸着性導電材が密着した集電体からなる電極を含んでなるイオン吸着装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオン吸着装置を用いるイオン性物質の除去方法。
【請求項3】
太陽光を用いて電力を供給する請求項2記載のイオン性物質の除去方法。
【請求項4】
イオン吸着装置のイオン除去能力低下時に、放電または逆電圧印加により吸着イオンを放出することによってイオン除去能力を回復する請求項2または3記載のイオン性物質の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−98312(P2011−98312A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255804(P2009−255804)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】