説明

イオン導入装置

【課題】プラスイオン化成分及び/又はマイナスイオン化成分を生体に導入可能なイオン導入装置を提供することを目的とする。
【解決手段】イオン化溶液に含まれるイオン化成分を生体に導入するイオン導入装置であ
って、それぞれ略同一量のイオン化溶液が収容される一対のフットバス12,22と、各前記フットバス12,22のイオン化溶液内に配置され、互いに極性の異なる一対の電極板11、21と、これらの電極板11、21に対して、プラス極性の群発パルス信号とマイナス極性の群発パルス信号とを極性が反転するように交互に出力するパルス生成回路3とを有する。電極板11、21は、生体のイオン導入部位である両脚から離間した位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体にイオンを導入するイオン導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、生体治療器や美容器等の電気刺激装置においては、薬液や美容液等中に含まれる有効成分を皮膚から生体内に導入するために、一対の電極を生体に接触させて各電極へ通電を行いながら、イオン化された薬液や美容液等の有効成分(イオン化成分)を生体に導入する方法(イオン導入法)が用いられてきた。
【0003】
イオン化溶液中の有効成分(イオン化成分)を生体に導入するための通電法としては、生体内への電流が流れやすいパルス信号を用いて行うことが提案され、イオン導入装置の内部に、パルス信号を出力するパルス発生回路と、生体に接触しパルス発生回路からのパルス信号を生体に通電するための導入電極と対極電極とを有し、導入電極側のイオン化溶液にパルス信号を印加することにより、イオン化溶液中の有効成分を生体中に浸透させるようにした製品が提供されている。
【0004】
このようなイオン導入装置では、パルス生成回路からプラス又はマイナスのいずれか単極性のパルス信号が出力される構成となっており、イオン化溶液については、プラス又はマイナスのいずれかにイオン化される有効成分を含むものが使用されていた。
【特許文献1】特許第3665632号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際には、使用されるイオン化溶液の中には、プラスイオン化成分とマイナスイオン化成分との両方を含むものがあることや、1回の生体治療にプラスイオン化成分の薬物とマイナスイオン化成分の薬物を併用投与する場合があることから、単極性のパルス信号が出力される従来の通電法及び電気刺激装置では、イオン化溶液中のプラスイオン化成分又はマイナスイオン化成分のどちらか一方のみが生体内に導入され、一度に両方を導入させることができない、という問題点があった。
【0006】
したがって、このようなケースで従来の電気刺激装置を使用する場合には、例えば1回の使用目的に対して手順を2段階に分け、プラスイオン化成分又はマイナスイオン化成分を別々の手順により浸透させる必要が生じることになり、時間や手間が大幅に増え、イオン化溶液の使用量が増える、等の無駄が発生し、さらには極性切替スイッチの設定を間違える虞もあることや、導入電極を、一対の電極のどちらか一方に限定して使用しなければならないことから、非常に不便な状況であった。
【0007】
そこで、本願発明は、イオン化溶液に含まれるイオンの極性を意識せずに効率良く、プラスイオン化成分及び/又はマイナスイオン化成分を生体に導入可能なイオン導入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明のイオン導入装置は、イオン化溶液に含まれるイオン化成分を生体に導入するイオン導入装置であって、それぞれ略同一量のイオン化溶液が収容される一対の第1の容器と、各前記第1の容器のイオン化溶液内に配置され、互いに極性の異なる一対の電極と、これらの電極に対して、プラス極性の群発パルス信号とマイナス極性の群発パルス信号とを極性が反転するように交互に出力するパルス生成回路とを有し、前記一対の電極を生体のイオン導入部位である両脚又は両腕から離間した位置に配置したことを特徴とする。
【0009】
ここで、生体の各前記イオン導入部位を各前記電極から離間した位置に載置するための一対の載置部材を設けてもよい。この載置部材には、イオン化成分を前記イオン導入部位に移動させるための複数のイオン通過口を形成することができる。
【0010】
各前記載置部材のうち前記イオン化溶液に接触する接触面を、絶縁材で形成するとよい。前記載置部材は、格子状に形成するとよい。
【0011】
前記一対の第1の容器に収容されたイオン化溶液を攪拌させる攪拌手段を設けるとよい。
【0012】
各前記第1の容器をそれぞれ着脱可能に収容する一対の第2の容器を設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イオン化溶液に含まれるイオンの極性を意識する必要もなくなり両脚又は両腕から、効率良くイオンを導入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1乃至図3を参照しながら、本発明のイオン導入装置1の概要を説明する。ここで、図1はイオン導入装置1の使用方法を示す参考図であり、図2はフットバス12の平面図であり、図3(a)は格子板14の平面図であり、(b)は電極板11の平面図である。
【0015】
これらの図において、フットバス12にはイオン化溶液が収容されており、フットバス(容器)12の内面には格子板(載置部材)14を支持するための支持板13が形成されている。この格子板14には生体の右足部Aが載置されており、格子板14の下方には電極板11が配置されている。
【0016】
格子板14には複数の貫通穴(イオン通過口)14aが形成されており、この貫通穴14aを介して右足部Aにイオン化成分を導入する構成になっている。格子板14には、樹脂などの絶縁材料を用いることができる。このように格子板14を絶縁材料で構成することにより、イオン化成分を確実に生体に導入させることができる。なお、格子板14の外面(イオン化溶液に接触する面)のみを絶縁材料で形成してもよい。
【0017】
電極板11は、フットバス12の底面に載置されており、後述するパルス生成回路3から導電線15を介して出力される群発パルス信号に基づき交互に極性が反転する。電極板11には、ステンレス、導電性のゴムを用いることができる。
【0018】
イオン化溶液の中には、プラスイオン化成分とマイナスイオン化成分との両方が含まれている。この種のイオン化溶液としては、硝酸ミコナゾール(プラスイオン化成分)、アスコルビン酸(マイナスイオン化成分)を用いることができる。ただし、本願発明は、プラスイオン化成分及びマイナスイオン化成分のいずれか一方のイオン化成分のみを有するイオン化溶液にも適用することができる。
【0019】
次に、パルス生成回路3について詳細に説明する。図4(a)に図示するようにパルス生成回路3は、パルス信号を出力するパルス出力回路32と、パルス出力回路32より出力されたパルス信号の極性を切り替えるための極性切替回路33と、パルス出力回路32及び極性切替回路33を制御するCPU31と、CPU31にクロック信号を供給するクロック発振器34と、これら各回路に電源を供給する電源回路35とを有している。
【0020】
このパルス生成回路3では、クロック発振器34で励起されるクロック信号に基づいてCPU31が駆動され、クロック信号に応じた所定周波数のパルスがCPU31からパルス出力回路32に出力される。
【0021】
パルス出力回路32は、CPU31からのパルスを所定の出力レベル(出力電圧値)に調整して極性切替回路33に出力する。パルス出力回路32から出力されるパルス信号は、図4(b)に示すように、単極性の矩形パルス波となっている。
【0022】
極性切替回路33は、不図示のブリッジ回路を有して構成され、CPU31から制御信号に基づいて、パルス出力回路32から単極性のパルス信号を、ブリッジ回路によってプラス極性の複数のパルス信号(以下、群発パルス信号という)とマイナス極性の群発パルス信号とに切り替えて交互に出力する。極性切替回路33から出力される各群発パルス信号は、フットバス12、22内にそれぞれ配置された一対の電極11、21に出力される。
【0023】
極性切替回路33に供給される制御信号としては、プラス極性のパルス信号を出力するタイミングを指示するB信号(図4(b)の〔B〕)と、マイナス極性のパルス信号を出力するタイミングを指示するC信号(図4(b)の〔C〕)が、それぞれCPU31から出力される。
【0024】
そして、極性切替回路33は、図4(b)の〔B〕及び〔D〕に示すように、CPU31から供給されるB信号がオンの間は、パルス出力回路32の出力したパルス信号の極性を維持して出力し続けることにより、プラス極性の群発パルス信号を出力する。
【0025】
また、極性切替回路33は、図4(b)の〔C〕及び〔D〕に示すように、CPU31から供給されるC信号がオンの間は、パルス出力回路32の出力したパルス信号の極性を反転して出力し続けることにより、マイナス極性の群発パルス信号を出力する。
【0026】
詳細には、CPU31は、B信号及びC信号として、図4(b)の〔B〕及び〔C〕に示すように、矩形波によるオンオフ信号を出力しており、いずれかの信号がオンのときには他方の信号がオフになるように出力する。
【0027】
また、図4(b)の〔A〕と比較して分かるように、CPU31は、B信号及びC信号をオンしている時間が、パルス出力回路32から出力されるパルス信号の周期よりも長くなるように、B信号及びC信号を出力するようになっており、これにより極性切替回路33からプラス及びマイナス極性のパルス信号がそれぞれ群発パルス信号として生成される。
【0028】
次に、イオン導入装置1を用いてイオン導入方法について説明する。イオン導入装置1にイオンの導入を指示する不図示の開始ボタンがオンされると、パルス生成回路3から一対の電極11、21に対して、プラス極性の群発パルス信号とマイナス極性の群発パルス信号とが例えば1.5sec毎に交互に供給される。
【0029】
ここで、足部A及びBはそれぞれ電極11、21から離間しており、足部A及びBを支持する格子板14、24には多数の貫通穴14a、24bが形成されている。したがって、足部A及びBの足裏には十分な量のイオン化溶液が接触しており、イオン化溶液のプラスイオン化成分及びマイナスイオン化成分とを交互に効率良く足裏から導入させることができる。
【0030】
また、フットバス12、22に収容されたイオン化溶液の液量は同じに設定されており、足部A及びBのイオン化溶液に対する接触面積を同じにすることができる。これにより、足部A及びBに流れる電流密度のバラツキを抑制できるため、電流密度の高い部分の皮膚が発赤あるいは炎症するのを防止できる。
【0031】
さらに、格子板14、24を絶縁材料で構成することにより、格子板14に対して接触する部分と非接触となる部分との電流密度のバラツキを抑制して、イオン化成分をより均等に足部A及びBに導入させることができる。
【0032】
また、イオン導入装置1では、パルス生成回路3から発生するパルス信号の極性を切り替えるための極性切替スイッチ等を設ける必要がなくなり、イオン化溶液に含まれるイオンの極性を意識する必要もなくなるので、ユーザの操作が極めて容易になり、極性切替スイッチの誤設定等の虞もなくなる。
【0033】
さらに、イオン導入装置1では、各電極11、21に印加される電圧を数ボルトに抑制しても、各イオン化成分を効率良く生体内に導入することが可能であるため、通電中の生体への刺激が少なくなり、電力消費量を少なくすることができる。
【0034】
(他の実施例)
イオン化溶液を攪拌するための攪拌手段を設けてもよい。攪拌手段としては、イオン化溶液内に気泡を発生させる気泡発生装置やイオン化溶液内に振動波を発生させる振動発生装置を用いることができる。このように、イオン化溶液を攪拌させることにより、イオン導入時に足部から生じる老廃物を視認させにくくするとともに、イオン化溶液の濃度を均一化(濃度のバラツキを抑制)してイオン導入効果を維持することができる。
【0035】
上述の実施例では、両足からイオンを導入させたが、両腕からイオンを導入させる構成としてもよい。この場合、両腕の掌を格子板14、24にそれぞれ載置してイオン導入を行うことができる。
【0036】
また、格子板14、24を省略することもできる。この場合、例えば、使用車の椅子の高さを調節して、電極11、21よりも高い領域(電極11、21から離間した位置)に足裏を配置するとよい。すなわち、生体のイオン導入部位を電極11、21から離間させ、かつ、イオン化溶液に接触させることができれば、どのような構成を採用してもよい。
【0037】
上述の実施例では、フットバス12、22を箱型の容器で構成したが、袋状の容器(第1の容器)で構成することもできる。この場合、箱型の容器(例えば、フットバス12、22と同じものを使用することができる)の中に該袋状の容器を収容し、箱型容器の外面に袋状の容器を引っかけるためのフック部を設けるとよい。フック部に対する係合を解除することにより袋状の容器を箱型の容器から容易に取り外すことができる。なお、この箱型の容器が請求項7に記載の第2の容器に相当する。
【0038】
これにより、老廃物が排出されたイオン化溶液を袋状の容器とともに箱型容器から取り外して廃棄した後、箱型容器に新しい袋状の容器を装着し、さらにこの袋状の容器の内部にイオン化溶液を注入するのみで、簡単にイオン化溶液を交換することができる。その結果、イオン導入装置の衛生管理を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】イオン導入装置の使用状態を示す参考図である。
【図2】フットバスの平面図である。
【図3】(a)が格子板の平面図であり、(b)が電極の平面図である。
【図4】(a)がパルス生成回路の回路構成を示すブロック図であり、(b)がパルス生成回路の収容部における出力のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 イオン導入装置
11 21 電極
12 22 フットバス
13 23 支持板
14 24 格子板
31 CPU
32 パルス出力回路
33 極性切替回路
34 クロック発振器
35 電源回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化溶液に含まれるイオン化成分を生体に導入するイオン導入装置であって、
それぞれ略同一量のイオン化溶液が収容される一対の第1の容器と、
各前記第1の容器のイオン化溶液内に配置され、互いに極性の異なる一対の電極と、
これらの電極に対して、プラス極性の群発パルス信号とマイナス極性の群発パルス信号とを極性が反転するように交互に出力するパルス生成回路とを有し、
前記一対の電極を生体のイオン導入部位である両脚又は両腕から離間した位置に配置したことを特徴とするイオン導入装置。
【請求項2】
生体の各前記イオン導入部位を各前記電極から離間した位置に載置するための一対の載置部材を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン導入装置。
【請求項3】
各前記載置部材には、イオン化成分を前記イオン導入部位に移動させるための複数のイオン通過口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン導入装置。
【請求項4】
各前記載置部材のうち前記イオン化溶液に接触する接触面は、絶縁材により形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のイオン導入装置。
【請求項5】
前記載置部材は、格子状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか一つに記載のイオン導入装置。
【請求項6】
前記一対の第1の容器に収容されたイオン化溶液を攪拌させる攪拌手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載のイオン導入装置。
【請求項7】
各前記第1の容器をそれぞれ着脱可能に収容する一対の第2の容器を有することを特徴とするイオン導入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−22336(P2009−22336A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185503(P2007−185503)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(390018913)株式会社ホーマーイオン研究所 (10)
【Fターム(参考)】