説明

イオン発生ユニット

【課題】イオン発生量を減らすことなく放射ノイズを低減して商品としての信頼性を高めた、さらにはサービス部品としてのイオン発生素子をむやみに多種類化しなくて済むようにしたイオン発生ユニットを提供する。
【解決手段】イオン発生ユニット1は、電圧印加によりイオンを発生するイオン発生素子20と、イオン発生素子20を収容するケーシング10を備える。ケーシング10はケーシング本体11と裏蓋12により構成される。ケーシング10の内面には、イオン発生に伴う放射ノイズを抑制する抑制部材30、31、32、33が取り付けられる。ケーシング本体11にはイオン発生素子20から発生するイオンを外部に放出する開口部13、14が形成されており、開口部13、14以外の箇所に抑制部材が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン発生ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、正イオン(プラスイオン)と負イオン(マイナスイオン)の一方または両方を発生させて、除菌、消臭、リフレッシュなどの効果が得られるようにした電気機器を目にすることが多くなっている。空気調和機、空気清浄機、除湿機などが、イオン発生装置が組み合わせられる電気機器の代表的なものである。単体のイオン発生機として販売されているものもある。
【0003】
イオンを発生させるため昔から採用されている方法の一つにコロナ放電がある。これは大気中で放電体に高電圧を印加してコロナ放電を行わせ、電気的にイオンを発生させるというものである。コロナ放電を利用したイオン発生装置の例を特許文献1に見ることができる。
【0004】
特許文献1に記載されたイオン発生装置は、商用電源からの入力電圧を昇圧装置で昇圧し、さらに、所定の駆動波形を有する駆動電圧とした上でイオン発生素子に印加し、プラスイオンとマイナスイオンを発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−127855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イオン発生素子は、動作原理上、高電圧でのスイッチングを必要とするが、それに伴い放射ノイズの発生が避けられない。放射ノイズ対策としては従来次のようなものが実施されている。
(a)イオン発生素子のイオン発生電圧のピーク値を下げる。
(b)昇圧トランスをシールドケースで囲う。
(c)イオン発生素子の外面に金属箔(金属はアルミニウムであることが多い)を構成要素に含む粘着テープ(以下本明細書では「金属箔テープ」と称する)を貼り付ける。
【0007】
特許文献1記載のイオン発生装置では主として上記(b)に則った対策が施されている。すなわち昇圧コイルの周囲に金属箔テープの一種である銅テープを巻き、またブリキ鋼板からなるシールドケースを昇圧コイルの周囲に配置して、放射ノイズの発生を抑制している。
【0008】
上記(a)の対策では、放電体に印加される電圧が下がるので、所期のイオン発生量を得ることが難しくなる。(b)の対策も、放電体に印加される電圧が下がるという(a)と同様の問題を抱える。これは、昇圧トランスの二次側端子とシールドケースとの間に放電が生じるためである。
【0009】
上記(c)の対策をとる場合、金属箔テープの貼り付け方によって放射ノイズの抑制度合が変わってくる。放射ノイズを抑制しつつ、イオン発生量をそれほど減少させなくて済む貼り付け方を、試行錯誤で求めることは可能である。しかしながらこの対策を実施するとなると、金属箔テープを貼り付けたイオン発生素子をサービス部品として用意しておかねばならない。また、放射ノイズの許容レベルは電気機器によってまちまちなので、金属箔テープの貼り付け方を変えた何種類ものイオン発生素子をサービス部品として確保する必要がある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、イオン発生量を減らすことなく放射ノイズを低減して商品としての信頼性を高めた、さらにはサービス部品としてのイオン発生素子をむやみに多種類化しなくて済むようにしたイオン発生ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るイオン発生ユニットは、電圧印加によりイオンを発生するイオン発生素子と、前記イオン発生素子を収容するケーシングとを備え、イオン発生に伴う放射ノイズを抑制する抑制部材を前記ケーシングの内面に取り付けている。
【0012】
上記構成のイオン発生ユニットにおいて、前記ケーシングには前記イオン発生素子から発生するイオンを外部に放出する開口部が形成されており、前記開口部以外の箇所に前記抑制部材が取り付けられていることが好ましい。
【0013】
上記構成のイオンユニットにおいて、前記抑制部材は金属板により構成されることが好ましい。
【0014】
上記構成のイオン発生ユニットにおいて、前記抑制部材は金属箔を構成要素に含む粘着シートにより構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、イオン発生素子を収容するケーシングの内面に、イオン発生に伴う放射ノイズを抑制する抑制部材を取り付けたから、イオン発生量を減らすことなく放射ノイズを低減できる。またイオン発生素子には手を加えないので、サービス部品としてのイオン発生素子をむやみに多種類化しなくて済む
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るイオン発生ユニットの正面図である。
【図2】構成要素の分解斜視図である。
【図3】裏蓋を嵌め込むだけの組立状態にしたイオン発生ユニットの斜視図である。
【図4】イオン発生ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態であるイオン発生ユニット1は、他の機器、例えば空気調和機の室内機、空気清浄機、あるいは自動車などに搭載されるものとして設計されている。イオン発生ユニット1は、空気調和機の室内機を小型にしたような形状の、横長の合成樹脂製ケーシング10を備える。ケーシング10はケーシング本体11と裏蓋12(図3参照)からなる。裏蓋12は背面からしか見えず、正面から見たときはケーシング本体11が外観の全てとなる。なお図1の上側と下側をイオン発生ユニット1の上側と下側、図1の左側と右側をイオン発生ユニット1の左側と右側とする。各構成要素の方位もこれにならう。
【0018】
ケーシング10の中にイオン発生素子20が収容される。イオン発生素子20は直方体形状をしている。イオン発生素子20に所定の電圧を印加すると、イオン発生素子20はコロナ放電でイオンを発生する。イオン発生素子20は正イオンH(HO)(mは任意の自然数)と負イオンO-(HO)(nは任意の自然数)を同時に生成することができる。
【0019】
ケーシング本体11には、左端に近い箇所と右端に近い箇所に、イオン発生素子20が発生したイオンを外部に放出する開口部が形成されている。開口部の位置はイオン発生素子20のイオン発生部(図示せず)の位置に対応している。左側の開口部も右側の開口部も、ケーシング本体11の正面から上面へと連なる開口部13と、ケーシング本体11の正面から下面へと連なる開口部14を上下に並べて形成したものである。開口部13、14には、ケーシング10の内部に異物が侵入するのを防ぐ縦方向の桟が複数本ずつ所定間隔で形成されている。開口部13は桟13aのピッチが狭く、開口部14は桟14aのピッチが広い。
【0020】
図2に示すように、組立台等の上にケーシング本体11を、正面が下、裏蓋12が嵌め込まれる背面開口が上になるようにして置き、背面開口よりイオン発生素子20を入れる。イオン発生素子20には給電ケーブル21を接続する。給電ケーブル21は両端にコネクタ22、23を有する。コネクタ22はイオン発生素子20に接続するためのものであり、コネクタ23は図示しない外部給電ケーブルを接続するためのものである。コネクタ23はビス24によりケーシング本体11に固定される。
【0021】
図3に示すように、ケーシング本体11の中にイオン発生素子20と給電ケーブル21をセットした状態で、裏蓋12を嵌め込むと、イオン発生ユニット1は完成状態となる。
裏蓋12には、ケーシング10の内側となる面に、ケーシング本体11の内部空間に入り込む2条の突条15、16が形成されている。突条15、16はいずれも水平方向に延びるものであり、突条15は裏蓋12の上縁からほぼケーシング本体11の外殻の厚み分だけ下の位置に形成され、突条16は裏蓋12の下縁からほぼケーシング本体11の外殻の厚み分だけ上の位置に形成されている。
【0022】
突条15の上面と突条16の下面には係合突起17が複数個ずつ形成される。実施形態では、突条15に4個、突条16にも4個の係合突起17が、それぞれ等間隔で形成されている。なお「4」という数字は単なる例示であり、発明を限定するものではない。ケーシング本体11には、係合突起17に対応する位置に係合孔18が形成されている。
【0023】
図3の状態のケーシング本体11の上に裏蓋12を載せ、裏蓋12に下向きの圧力を加えると、係合突起17が係合孔18に係合し、図4に示す状態になる。この状態で、裏蓋12の内面の所々に形成された突起19がイオン発生素子20を押さえ込み、イオン発生素子20はしっかりと固定される。
【0024】
ケーシング10の内面には、イオン発生に伴う放射ノイズを抑制する抑制部材が取り付けられる。抑制部材は金属板により構成することができる。金属板は接着剤や両面粘着テープ、あるいはビスなどでケーシング10に固定することができる。
【0025】
抑制部材は、金属箔、例えばアルミニウムフォイルを構成要素に含む粘着シートにより構成することができる。このような抑制部材は取り付けが簡単である。粘着シートをロール状の粘着テープの形にすれば、取り扱いが容易になる。
【0026】
抑制部材はケーシング本体11と裏蓋12の両方に取り付けるのがよい。図2には、ケーシング本体11の内面に抑制部材が取り付けられた状態が示されている。左右の開口部13、14の間の平坦な内側面には抑制部材30が取り付けられ、下部内側面には抑制部材31が取り付けられ、左側の内側面には抑制部材32が取り付けられている。図2では隠れて見えない上部内側面には抑制部材31と対をなす抑制部材が取り付けられ、同じく図2では隠れて見えない右側の内側面には抑制部材32と対をなす抑制部材が取り付けられる。
【0027】
図3には裏蓋12の内面に抑制部材が取り付けられた状態を示す。突条15、16の間の平坦部を抑制部材33が覆っている。
【0028】
このように、ケーシング11の内面に抑制部材30、31、32、33を取り付けたことにより、イオン発生素子20に抑制部材を取り付けるまでもなく放射ノイズを低減できる。抑制部材30、31、32、33が取り付けられるのは開口部13、14以外の場所であるから、開口部13、14を通じてのイオンの放出が妨げられない。すなわちイオン発生量を減らすことがない。これにより商品としての信頼性が向上する。
【0029】
イオン発生素子20には手を加えないので、サービス部品としてのイオン発生素子20をむやみに多種類化しなくて済む。すなわちイオン発生素子20を標準化できる。
【0030】
イオン発生ユニット1を搭載する各種機器において、イオン発生ユニット1を保持するホルダーの構造は各機器に固有のものであるが、機器の機種変更があったとしても、ホルダー構造が同一である限り、同一のイオン発生ユニット1を搭載できる。すなわち標準サービス部品である同一のイオン発生素子20を使用できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明はイオン発生ユニットに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 イオン発生ユニット
10 ケーシング
11 ケーシング本体
12 裏蓋
13、14 開口部
20 イオン発生素子
30、31、32、33 抑制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印加によりイオンを発生するイオン発生素子と、前記イオン発生素子を収容するケーシングとを備えたイオン発生ユニットにおいて、
イオン発生に伴う放射ノイズを抑制する抑制部材を前記ケーシングの内面に取り付けたことを特徴とするイオン発生ユニット。
【請求項2】
前記ケーシングには前記イオン発生素子から発生するイオンを外部に放出する開口部が形成されており、前記開口部以外の箇所に前記抑制部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生ユニット。
【請求項3】
前記抑制部材は金属板により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のイオン発生ユニット。
【請求項4】
前記抑制部材は金属箔を構成要素に含む粘着シートにより構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のイオン発生ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−248349(P2012−248349A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117700(P2011−117700)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】