説明

イオン発生装置

【課題】イオンが付着される付着対象物の帯電量に応じたイオン発生部の適切な制御を実現できるイオン発生装置を提供する。
【解決手段】放電極18と、放電極18に対向する対向電極19と、放電極18及び対向電極19間に電圧を印加してイオンを発生させる電圧印加部20を具備するイオン発生部14を設ける。静電圧を誘起して付着対象物の帯電量を検知する非接触式の帯電量検知部29と、帯電量検知部29の検知結果に基づいて付着対象物の帯電量が一定となるようにイオン発生部14の単位時間当たりのイオン発生量を制御する制御部27を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪等の付着対象物にイオンを供給して付着させるイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアードライヤやブラシ、アイロンのような毛髪の手入れに用いられる携帯用美容機器等には例えば特許文献1に示すようにマイナスイオンを発生させるイオン発生部を有するものがある。イオン発生部は放電極と放電極に対向する対向電極と電圧印加部とを具備するもので、電圧印加部により放電極及び対向電極間に電圧を印加することでコロナ放電を生じさせてマイナスイオンを発生できるようにしてある。このものは乾燥によりプラスに帯電し易い毛髪にイオン発生部で発生した水分を持つ反対極性のマイナスイオンを吹き付けて付着させることができるようになっており、これにより付着対象物である毛髪を水分率が高い状態に維持できて、髪をしっとりサラサラにでき、髪質を改善できる。
【0003】
ところで上記特許文献1のイオン発生部を具備する携帯用美容機器等のイオン発生装置にあっては、イオン発生部を予め設定された制御に基づいて制御するものである。従ってイオン発生部を毛髪の帯電量に応じて制御することができず、毛髪の帯電量が多くて放出されたイオンが毛髪に先に付着したイオンと反発して付着し難くなっているにも関わらずイオン発生部から多量のイオンを毛髪に供給したり、逆に毛髪の帯電量が少ないにも関わらずイオン発生部から少量のイオンしか供給されなかったりする等、効率良く毛髪にイオンを供給できなかったり、また毛髪の帯電量が多くなりすぎて毛髪に付着したイオン同士が反発して毛髪が広がったりするといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−55351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、イオンが付着される付着対象物の帯電量に応じたイオン発生部の適切な制御を実現でき、付着対象物に効率良くイオンを供給できたり、また付着対象物の帯電量を所望の帯電量とすることができるイオン発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係るイオン発生装置は、放電極18と、放電極18に対向する対向電極19と、放電極18及び対向電極19間に電圧を印加してイオンを発生させる電圧印加部20を具備するイオン発生部14を設け、該イオン発生部14で発生したイオンを付着対象物に供給して付着させるイオン発生装置において、静電圧を誘起して付着対象物の帯電量を検知する非接触式の帯電量検知部29と、該帯電量検知部29の検知結果に基づいて付着対象物の帯電量が一定となるようにイオン発生部14の単位時間当たりのイオン発生量を制御する制御部27を設けて成ることを特徴とする。上記のように制御部27により帯電量検知部29の検知結果に基づいてイオン発生部14を制御することで、付着対象物の帯電量に応じたイオン発生部14の適切な制御を実現できる。
【0007】
また上記イオン発生部14は放電極18に液体を供給する液体供給手段を具備して、電圧印加部20により放電極18及び対向電極19間に電圧を印加することで放電極18に供給された液体を静電霧化してイオンミストを生成する静電霧化装置15であっても良い。拡散性が良く、また付着対象物への浸透性が高く、また脱臭の効果がある静電霧化によって生じるイオンミストを付着対象物に付着することができる。また制御部27により帯電量検知部29の検知結果に基づいて静電霧化装置15を制御できるので、例えば付着対象物の帯電量が多い場合にはイオンミストの発生量を抑えることができ、この場合電極等の機器の寿命が延び、また液体タンクへの液体の補充の手間を軽減できる。
【0008】
また上記電圧印加部20は放電極18及び対向電極19間に一方極性の電圧を印加してイオンを発生させるものであり、制御部27は、付着対象物の帯電量が第一の所定値よりも多くなったときに電圧印加部20の印加電圧を低レベル電圧値VOLに切換えると共に、付着対象物の帯電量が前記第一の所定値よりも少ない第二の所定値よりも少なくなったときに電圧印加部20の印加電圧を高レベル電圧値VOHに切換えるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では付着対象物の帯電量に応じてイオン発生部を制御でき、付着対象物に効率良くイオンを供給できたり、また付着対象物の帯電量を所望の帯電量としたりできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の一例のヘアードライヤを示し、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
【図2】図1(b)のA―A線断面図である。
【図3】同様の制御フローである。
【図4】同上の帯電量検知部の出力電圧と、電圧印加部の印加電圧を示すタイムチャートである。
【図5】参考例のヘアードライヤを示し、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。なお本実施形態では本発明の技術をヘアードライヤに適用した例を示したが、イオン発生装置としてはこれに限定されるものではなく、例えばブラシやアイロンのような携帯用美容機器等であっても良い。
【0012】
図1及び図2に示すヘアードライヤ1は長手方向の一端に吸込口2を形成すると共に他端に吹出口3を形成した略横長筒状の本体部4で主体を構成している。なお以下では本体部4の長手方向における吸込口2を設けた一端側を前側イ、吹出口3を設けた他端側を後側ロとし、また本体部4の長手方向に直交する一方向を下側ハ、反対側を上側ニと定義して説明する。
【0013】
本体部4は前部が円筒状に形成された円筒状部5となり、後部が略球面状に形成された球面状部6となるもので、円筒状部5は球面状部6の前面中央部から前方に向けて一体に突出している。
【0014】
図2に示すように本体部4の内部には吸込口2と吹出口3を連通接続する空気流路7を形成している。空気流路7は球面状部6の内部に形成された空間部で構成された上流部と、円筒状部5の内側に形成された空間部で構成された下流部とからなる。
【0015】
空気流路7の上流部にはファンからなる送風部12を設けてあり、送風部12を駆動することで本体部4の外部の空気を吸込口2から吸い込んで吹出口3から前方に吹き出せるようになっている。また空気流路7の下流部には流路内の空気を加熱するヒータからなる加熱部13を設けてあり、加熱部13及び送風部12を同時に運転することで加熱部13により加熱された空気を吹出口3から温風として吹き出せるようになっている。
【0016】
図1のように本体部4の球面状部6には下側に向けて握り部23を一体に突設してあり、この握り部23には電源スイッチ24を設けている。電源スイッチ24を「入り」に操作することで、上記のように送風部12及び加熱部13を同時に運転して吹出口3から温風を吹き出せるようになっている。
【0017】
ヘアードライヤ1の本体部4にはイオンを発生させるイオン発生部14を設けている。イオン発生部14は空気流路7の左右両外側に位置しており、つまり本体部4の周方向に間隔を介した二箇所にイオン発生部14が設けられている。イオン発生部14は液体(本例では水)を静電霧化して負に帯電したイオンミスト(帯電微粒子水)を発生させる静電霧化装置15からなり、以下各静電霧化装置15について詳述する。
【0018】
図2に示すように静電霧化装置15は、霧化させる液体を貯留する液体タンク17と、先端(前端)が針状に尖った前後に長い棒状の多孔質セラミックからなる放電極18と、所定間隔を介して放電極18の前方に位置して放電極18の先端に対向する対向電極19と、放電極18及び対向電極19間に高電圧を印加する高電圧発生回路からなる電圧印加部20とを具備している。
【0019】
放電極18は基端側が液体タンク17に貯留された液体に接触するように液体タンク17内に挿入された状態で液体タンク17に保持され、これにより液体タンク17内の液体を多孔質セラミックからなる放電極18の毛細管現象による力により放電極18の先端である放電部21に搬送できるようになっている。つまり本例では液体タンク17を放電極18に液体を供給する液体供給手段としている。また対向電極19には正面視中央に前方に開口する孔25を形成している。また対向電極19及び液体タンク17の夫々は冷風流路10に配設したケース26の前端及び後端の夫々に保持されている。
【0020】
電圧印加部20は制御部27に電気的に接続してあり、該制御部27により電圧印加部20による放電極18及び対向電極19間への電圧の印加の有無を切り換え可能としている。電圧印加部20により放電極18及び対向電極19間に電圧が印加されると、放電極18側がマイナス電極となって放電極18の放電部21に電荷が集中し、これにより液体タンク17から供給された放電極18の放電部21に保持された液体が対向電極19側に向けて飛び出し、空気中の高電界中に漂う間にレイリー分裂を繰り返して最終的に粒子径がナノメータサイズのイオンミストを発生させる静電霧化現象が生じ、これによりイオンミストが対向電極19の孔25から本体部4の前方に向けて吹き出されることとなる。上記電圧印加部20による電圧印加の有無は前述の電源スイッチ24の操作に連動して切換えられるようになっており、つまり電源スイッチ24を「入り」にした場合には、送風部12及び加熱部13が運転されて吹出口3から温風が吹き出され、これと同時に各静電霧化装置15で発生させたイオンミストが吹出口3から吹き出された風に誘引されて吹き出され、しかして風に乗せて吹き出したイオンミストを付着対象物側に供給して人体の毛髪等の付着対象物に付着することができるようになっている。
【0021】
上記ヘアードライヤ1の本体部4の球面状部6の前面部(つまりヘアードライヤ1のイオンミストの放出方向を向く面)において正面視で円筒状部5のすぐ上方に位置する箇所には、毛髪等からなる付着対象物の帯電量を検知するための帯電量検知部29を設けている。帯電量検知部29は一般的なコンデンサーの静電誘導と同じ原理により静電圧を誘起して出力する非接触式のもので、この出力電圧は検知対象である付着対象物の帯電量が大きい程高くなる特性を有する。また本体部4の球面状部6には報知ブザーからなる報知部11を設けてあり、この報知部11と前述の帯電量検知部29は制御部27に電気的に接続されている。
【0022】
そして制御部27は図3に示すように帯電量検知部29で検知した検知結果である出力に基づいて静電霧化装置15の電圧印加部20及び報知部11の夫々を制御するように設定されている。具体的には制御部27は図4に示すように電源スイッチ24が「入り」の状態の時には常時連続して電圧印加部20から放電極18及び対向電極19間に電圧を印加するもので、電源スイッチ24が「切り」から「入り」となった時には電圧印加部20の印加電圧を高レベル電圧値VOHとして、単位時間当たりのイオンミスト発生量を所定の値にする。この状態を継続すると付着対象物の帯電量は徐々に増加していき、ついには付着対象物の帯電量が第一の所定値よりも大きくなって帯電量検知部29の出力電圧が予め設定された高レベル所定値VIHよりも高くなる。このように帯電量検知部29の出力電圧が高レベル所定値VIHよりも高くなった場合には、制御部27は電圧印加部20の印加電圧を予め設定された低い低レベル電圧値VOL(高レベル電圧値VOHよりも低い値)に切換え、単位時間当たりのイオンミスト発生量を小さくし、同時に報知部11から音を発して使用者に付着対象物の帯電量が所定量よりも大きくなったことを報知する。この状態を継続すると付着対象物の帯電量は徐々に減少していき、ついには付着対象物の帯電量が第二の所定値よりも小さくなって帯電量検知部29の出力電圧が予め設定された低レベル所定値VIL(前記高レベル所定値VIHよりも低い値)よりも低くなる。このように帯電量検知部29の出力電圧が低レベル所定値VILよりも低くなった場合には、制御部27は電圧印加部20の印加電圧を再び前記高レベル電圧値VOHに切換え、単位時間当たりのイオンミスト発生量を大きくする。そして以下同様の制御を繰り返し行い、電源スイッチ24が「切り」に切り換えられた時点で電圧印加部20による放電極18及び対向電極19間への電圧の印加を停止する。なお上記報知部11による報知は報知開始から一定時間のみ行っても良いし、報知開始から次に帯電量検知部29の出力電圧が低レベル所定値VILや高レベル所定値VIHよりも低くなる時まで行っても良い。
【0023】
このように制御部27は帯電量検知部29で検知した検知結果に基づいて付着対象物の帯電量が一定となるように静電霧化装置15で発生させる単位時間当たりのイオンミストの発生量を自動的に制御でき、これにより付着対象物の帯電量を所定の範囲内に一定に保つことができる。従って付着対象物の帯電量が大きくて放出されたイオンミストが付着対象物に先に付着したイオンミストと反発して付着し難くなっているにも関わらず静電霧化装置15から多量のイオンミストを毛髪に供給してしまったり、逆に付着対象物の帯電量が少ないにも関わらず静電霧化装置15から少量のイオンミストしか供給されなかったりすることを防止でき、静電霧化装置15から効率良く付着対象物にイオンミストを供給して付着することができる。またこのように付着対象物の帯電量が多い場合にはイオンミストの発生量を抑えるため、電極等の機器の寿命が延び、また液体タンク17への液体の補充の手間が軽減される。また帯電量検知部29の検知結果に基づいて静電霧化装置15を制御することで毛髪の帯電量を毛髪に付着したイオンミスト同士が反発して毛髪が広がらない程度の値とすることができ、これにより毛髪の拡がりを抑えてまとまり感をもたせることができる。
【0024】
また帯電量検知部29は付着対象物に帯電量検知部29を接触させることなく付着対象物の帯電量を検知できる非接触式のものであるのでヘアードライヤ1の使用性が良い。
【0025】
また帯電量検知部29の検知結果に基づいて報知部11を制御しているので使用者は付着対象物の帯電量を把握でき、また特に本例では付着対象物の帯電量が所定量を越えた場合に報知ブザーで付着対象物にイオンミストが過剰に付着したことを使用者に報知するようにしているため、使用者が静電霧化装置15の運転状態の変化に気付いて静電霧化装置15が故障したと勘違いすることを防止できる。
【0026】
次に上記とは異なる参考例のイオン発生装置を図5に示す。なお本参考例では上記一例のイオン発生装置と同一の構成については同一の番号を付与してあり、重複する説明については説明を省略する。
【0027】
図5に示す帯電量検知部29は付着対象物に接触させて付着対象物から流れてくる帯電電荷を計測することで付着対象物の帯電量を検知できる接触式のものである。この接触式の帯電量検知部29はヘアードライヤ1を使用する際に手で握られる部分である握り部23の外面に設けてあり、該握り部23を握って使用しているある程度導電性のある人体を介して間接的に付着対象物である毛髪の帯電量を検知できるようになっている。このように帯電量検知部29を接触式とすることで付着対象物に過剰に貯えられた電荷を除去できる。
【0028】
なお上記いずれの例においてもイオン発生部14を静電霧化装置15としたが、イオン発生部14は、放電極18と、放電極18に対向する対向電極19と、放電極18及び対向電極19間に電圧を印加することでコロナ放電を生じさせてイオン(好ましくはマイナスイオン)を発生させる電圧印加部20を具備したコロナ放電装置であっても良い。また上記静電霧化装置15の液体タンク17内に液体が存在する時には上記同様放電極18及び対向電極19間に電圧を印加することで静電霧化を生じさせてイオンミストを発生し、液体タンク17内に液体が存在しない時には放電極18及び対向電極19間に電圧を印加することでコロナ放電を生じさせてイオン(好ましくはマイナスイオン)を発生できるようにしても良く、この場合には液体タンク17内に液体が存在しない時にもイオンを発生させることができる。また上記静電霧化装置によって生じたイオンミストは温風と共に付着対象物側に送られるようにしたが、加熱部13によって加熱されていない冷風と共に付着対象物側に送られるようにしても良いし、またヘアードライヤ1を吹出口3から加熱部13によって加熱された空気からなる温風と加熱されていない冷風とを同時に出せるようにし、イオンミストを温風及び又は冷風と共に付着対象物側に送られるようにしても良い。また空気流路7中に静電霧化装置15を設けても良いものとする。
【符号の説明】
【0029】
1 ヘアードライヤ
14 イオン発生部
18 放電極
19 対向電極
20 電圧印加部
27 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電極と、放電極に対向する対向電極と、放電極及び対向電極間に電圧を印加してイオンを発生させる電圧印加部を具備するイオン発生部を設け、該イオン発生部で発生したイオンを付着対象物に供給して付着させるイオン発生装置において、静電圧を誘起して付着対象物の帯電量を検知する非接触式の帯電量検知部と、該帯電量検知部の検知結果に基づいて付着対象物の帯電量が一定となるようにイオン発生部の単位時間当たりのイオン発生量を制御する制御部を設けて成ることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
上記イオン発生部は放電極に液体を供給する液体供給手段を具備して、電圧印加部により放電極及び対向電極間に電圧を印加することで放電極に供給された液体を静電霧化してイオンミストを生成する静電霧化装置であることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
上記電圧印加部は放電極及び対向電極間に一方極性の電圧を印加してイオンを発生させるものであり、制御部は、付着対象物の帯電量が第一の所定値よりも多くなったときに電圧印加部の印加電圧を低レベル電圧値に切換えると共に、付着対象物の帯電量が前記第一の所定値よりも少ない第二の所定値よりも少なくなったときに電圧印加部の印加電圧を高レベル電圧値に切換えるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−62159(P2010−62159A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277683(P2009−277683)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【分割の表示】特願2005−48023(P2005−48023)の分割
【原出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】