説明

イオン発生装置

【課題】針状放電電極と対向電極間の電位差で発生させたイオン風の風力は非常に弱く、その風向きは針電極の向きに依存した一定方向のみとなる。その結果、空間全体に正イオンおよび負イオンを均等に行き渡らせることは困難である。
【解決手段】メイン電極制御部(112)が出力する昇圧電圧の極性に応じて、メイン電極(121、122)は、正イオンまたは負イオンを交互に目標方向へ送出する。サブ電極制御部(113)が出力する昇圧電圧の極性に応じて、サブ電極(131、132)は、正イオンまたは負イオンを、目標方向に対し正イオンおよび負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向へ放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン発生装置に関し、特に、無風環境下で、正イオンおよび負イオンを効率良く空間に拡散させるためのイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電電極で、正イオンまたは負イオン若しくは正イオンおよび負イオンの両方を発生させるイオン発生方法として、コロナ放電、誘電バリア放電放射線や水破砕等の方法が知られている。コロナ放電によるイオン発生方法は、イオンを発生させる放電電極に高電圧を印加することにより、正イオンや負イオンを発生させる。放電電極に正の電圧を通電すると正イオンが発生し、負の電圧を通電すると負イオンが発生する。
【0003】
正イオンのH(HO)(mは任意の自然数)および負イオンのO(HO)(nは任意の自然数)を同時に発生させて空気中に送出すると、それら正イオンおよび負イオンは、空気中に浮遊する細菌やウイルスに付着した空気中の浮遊菌やカビ菌の除去、またはウイルスの抑制に効果があると言われている。この除去効果や抑制効果は、正イオンおよび負イオンを空間全体に一様に存在させたほうが、その効果が得られやすいと考えられる。
【0004】
一般に、イオンを空気中に送出するには、設置した送風装置が発生する風力でイオンを空気中へ吹き飛ばす構造の機器が多い。イオン発生に必要なエネルギーに対し、イオンを空気中へ送出する送風エネルギーは遥かに膨大である。消費電力を考慮すると、電池を電源とするイオン発生装置の実現は困難な状況にある。
【0005】
特許第4551977号公報(特許文献1)は、針状放電電極および対向電極間の電位差でイオン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4551977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示するイオン・オゾン風発生装置は、イオン風により無風環境下でのイオン送出を可能とする。しかし、イオン風の風力は非常に弱く、その風向も針電極の向きに依存する。微弱な風力でイオンは一定方向のみに送出されるため、空間全体に正イオンおよび負イオンを均等に安定して行き渡らせることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メイン電極と、サブ電極と、メイン電極に昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、サブ電極に昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、メイン電極は、メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、正イオンまたは負イオンを送出し、サブ電極は、サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、正イオンまたは負イオンを送出し、サブ電極の方向は、メイン電極の方向に対し、正イオンおよび負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有している、イオン発生装置である。
【0009】
本発明のイオン発生装置において、メイン電極が有する放電電極の方向がメイン電極の方向を規定し、サブ電極が有する放電電極の方向がサブ電極の方向を規定することが望ましい。
【0010】
本発明のイオン発生装置において、メイン電極が有する放電電極の長さは、サブ電極が有する放電電極の長さより大きいことが望ましい。
【0011】
本発明のイオン発生装置において、メイン電極およびサブ電極は、同期して、正イオンおよび負イオンを放出することが望ましい。
【0012】
本発明は、第1の放電電極および第2の放電電極を有するメイン電極と、第3の放電電極および第4の放電電極を有するサブ電極と、第1の放電電極および第2の放電電極へ昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、第3の放電電極および第4の放電電極へ昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、第1の放電電極は正イオンを、第2の放電電極は負イオンを送出し、サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、第3の放電電極または第4の放電電極は、正イオンまたは負イオンを送出し、第1の放電電極および第2の放電電極は、ともに所定の方向を有し、第3の放電電極および第4の放電電極は、所定の方向に対し、正イオンおよび負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有している、イオン発生装置である。
【0013】
本発明は、第1の放電電極および第2の放電電極を有するメイン電極と、第3の放電電極を有するサブ電極と、第1の放電電極および第2の放電電極へ昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、第3の放電電極へ昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、第1の放電電極は正イオンを、第2の放電電極は負イオンを送出し、サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、第3の放電電極は正イオンおよび負イオンを交互に送出し、第1の放電電極、第2の放電電極、および第3の放電電極は、互いに、正イオンおよび負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有している、イオン発生装置である。
【0014】
本発明は、第1の放電電極を有するメイン電極と、複数の第2の放電電極および複数の第3の放電電極を有するサブ電極と、第1の放電電極へ昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、複数の第2の放電電極および複数の第3の放電電極へ昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、複数の第2の放電電極は、第1の放電電極を取り囲むように配置され、複数の第3の放電電極は、複数の第2の放電電極を取り囲むように配置され、メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、第1の放電電極は正イオンおよび負イオンを交互に送出し、サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、複数の第2の放電電極は、正イオンまたは負イオンのいずれか一方を送出し、複数の第3の放電電極は、正イオンまたは負イオンのいずれか他方を送出し、第1の放電電極は、所定の方向を有し、複数の第2の放電電極は、所定の方向に対し、正イオンおよび負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有し、複数の第3の放電電極は、複数の第2の放電電極の方向に対して、正イオンおよび負イオンが放出される空間に向かって広がる方向を有する、イオン発生装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送風することなくイオンを空間全体に一様に拡散するイオン発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置の構造図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るイオン発生制御部の回路図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置の構造図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るイオン発生制御部の回路図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係るイオン発生装置の構造図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るメイン電極制御部およびサブ電極制御部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載ある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の図面において、同一の参照符号や参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、実施の形態の説明において、同一の参照符号等を付した部分等に対しては、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0018】
<実施の形態1>
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係るイオン発生装置1の構造を説明する。
【0019】
イオン発生装置1は、商用交流電源が印加される端子T1および端子T2と、イオン発生制御部11と、メイン電極と、サブ電極とを備える。
【0020】
メイン電極は、第1のメイン電極121および第2のメイン電極122で構成される。
第1のメイン電極121は、第1の放電電極121aおよび第1の対向電極121bを有する。第2のメイン電極122は、第2の放電電極122aおよび第2の対向電極122bを有する。両放電電極とも針状形状を有し、両対向電極ともリング形状を有する。
【0021】
第1の放電電極121aの先端部と対向する位置に、第1の対向電極121bが配置される。第2の放電電極122aの先端部と対向する位置に、第2の対向電極122bが配置される。
【0022】
サブ電極は、第1のサブ電極131および第2のサブ電極132で構成される。第1のサブ電極131は、第3の放電電極131aおよび第3の対向電極131bを有する。第2のサブ電極は、第4の放電電極132aおよび第4の対向電極132bを有する。第3の放電電極131aおよび第4の放電電極132aとも針状形状を有し、第3の対向電極131bおよび第4の対向電極132bともリング形状を有する。
【0023】
第3の放電電極131aの先端部と対向する位置に、第3の対向電極131bが配置される。第4の放電電極132aの先端部と対向する位置に、第4の対向電極132bが配置される。
【0024】
第1から第4の対向電極は、対応する各放電電極の先端部から一定の距離を隔てて、空間側に配置される。この配置により、発生したイオンは、対向電極と放電電極との間に形成される電界により、空間側へ送出される。
【0025】
図1において、イオン発生装置1で重点的にイオンを放出する目標方向は、図面の下方向と設定している。メイン電極121およびメイン電極122が各々が備える第1の放電電極121aおよび第2の放電電極122aは、目標方向に針状形状の先端部が向くように配置する。
【0026】
一方、サブ電極131が備える第3の放電電極131aおよびサブ電極132が備える第4の放電電極132aは、目標方向に対して、各々、斜め右下方向および斜め左下方向に針状形状の先端部が向くように配置する。このように配置することで、イオンは、目標方向のみならず、その他の方向へ放出され、より空間全体に拡散する。
【0027】
メイン電極121およびメイン電極122の放電部と、サブ電極131およびサブ電極132の放電部との距離は1cm以上離れていることが好ましい。具体的には、メイン電極メイン電極が備える第1の放電電極121aおよび第2の放電電極122aの先端部と、サブ電極が備える第3の放電電極131aおよび第4の放電電極132aの先端部との距離を、1cm以上離すことが好ましい。メイン電極の放電部とサブ電極の放電部との距離が1cmより近すぎると、互いの放電によりイオン発生に影響を及ぼし、空間全体に安定してイオンを送出することが困難となる。
【0028】
図2を参照して、実施の形態1に係るイオン発生制御部11の回路構成を説明する。
イオン発生制御部11は、メイン電極制御部112およびサブ電極制御部113で構成される。
【0029】
メイン電極制御部112は、端子T1と、昇圧トランス17の一次側の一端との間に直列に接続されたダイオードD13、抵抗14、および2端子サイリスタ16を有する。昇圧トランス17の1次側の他端は端子T2と接続される。抵抗14および2端子サイリスタ16の接続点と、昇圧トランスの1次側の他端との間には、コンデンサ15が接続される。昇圧トランス17の2次側からは、商用交流電圧を昇圧した昇圧交流電圧が、ダイオード18およびダイオード19から出力される。
【0030】
ダイオード18のアノード端子は、第1のメイン電極121が備える第1の放電電極121aと接続される。この結果、昇圧トランス17の2次側から出力される昇圧交流電圧の負電圧が第1の放電電極121aに印加される。
【0031】
ダイオード19のカソード端子は、第2のメイン電極122が備える第2の放電電極122aと接続される。この結果、昇圧トランス17の2次側から出力される昇圧交流電圧の正電圧が第2の放電電極122aに印加される。
【0032】
第1のメイン電極121が有する第1の対向電極121b、および第2のメイン電極122が有する第2の対向電極122bには、ともに、昇圧トランス17の2次側の電圧が印加される。
【0033】
以上の構成により、第1のメイン電極121が備える第1の放電電極121aからの負イオンの放出と、第2のメイン電極122が備える第2の放電電極122aからの正イオンの放出は、昇圧交流電圧の半周期毎に交互に行われる。負イオンをO(HO)(nは任意の自然数)、正イオンをH(HO)(mは任意の自然数)とする場合には、正イオンおよび負イオンが浮遊細菌の表面に付着して水酸基ラジカル・OHや過酸化水素等のH等の活性種を生成させ、その働きにより細菌が殺菌される。
【0034】
サブ電極制御部113も、メイン電極制御部112と同様に、昇圧トランス17を備え、その昇圧トランス17の1次側の回路構成は、メイン電極制御部112と同一である。サブ電極制御部113の昇圧トランス17の2次側からは、商用交流電圧を昇圧した昇圧交流電圧が出力される。
【0035】
サブ電極を構成する第1のサブ電極131の第3の放電電極131aおよび第2のサブ電極132の第4の放電電極132aは、いずれも、サブ電極制御部113の昇圧トランス17の2次側とダイオード素子を介さずに接続される。その結果、第3の放電電極131aおよび第4の放電電極132aには、昇圧トランス17の2次側から出力される昇圧交流電圧の正電圧および負電圧が印加される。
【0036】
以上の構成により、第1のサブ電極131が備える第3の放電電極131aおよび第2のサブ電極132が備える第4の放電電極132aは、同時に、正イオンおよび負イオンを昇圧交流電圧の半周期毎に交互に放出する。
【0037】
図1において、第1のメイン電極121が目標方向に向かって負イオンを放出しているとき、同時に、第1のサブ電極131および第2のサブ電極132も、目標方向に対して、各々、斜め右下方向および斜め左下方向に負イオンを放出する。第2のメイン電極122が目標方向に向かって正イオンを放出しているとき、同時に、第1のサブ電極131および第2のサブ電極132も、目標方向に対して、各々、斜め右下方向および斜め左下方向に正イオンを放出する。
【0038】
実施の形態1の構成により、イオン発生装置1が重点的にイオンを放出する目標方向に加えて、その他の方向にも正イオンおよび負イオンが放出される。この結果、空間全体にわたり、浮遊菌やカビ菌の除去、またはウイルスの抑制を行うことが可能となる。
【0039】
図2に示す実施の形態1のメイン電極制御部112は、メイン電極が備える第1の放電電極121aからの負イオンの放出と、第2の放電電極122aからの正イオンの放出とを交互に行うように制御する。しかし、各放電電極から負イオンおよび正イオンが同時に放出されるようにメイン電極制御部112の構成を変更してもよい。
【0040】
メイン電極およびサブ電極が備える対向電極はリング形状に限定されず、線状または網状であっても良い。また、メイン電極およびサブ電極が備える放電電極は針状形状に限定されず、線状、棒状、棒状の先端が球状になっているもの、および平面板に鋸刃状エッチが存在するものでも良い。
【0041】
図1において、メイン電極およびサブ電極は、いずれも、筐体1の外に突出する位置に配置されている。しかしながら、両電極と筐体1との位置関係は、必ずしもそれに限定されない。例えば、両電極を筐体1に内部に配置し、筐体に設けた穴からイオンを外部空間へ放出させる構造でも良い。
【0042】
<実施の形態2>
図3を参照して、本発明の実施の形態2に係るイオン発生装置2の構造を説明する。
【0043】
イオン発生装置2は、商用交流電源が印加される端子T1および端子T2と、イオン発生制御部21と、メイン電極と、サブ電極と、メイン電極制御部211と、サブ電極制御部212とを備える。
【0044】
メイン電極は、第1のメイン電極221および第2のメイン電極222で構成される。第1のメイン電極221は、第1の放電電極221aおよび第1の対向電極221bを有する。第2のメイン電極222は、第2の放電電極222aおよび第2の対向電極222bを有する。第1の放電電極221aおよび第2の放電電極222aとも針状形状を有し、第1の対向電極221bおよび第2の対向電極222bともリング形状を有する。
【0045】
第1の放電電極221aの先端部と対向する位置に、第1の対向電極221bが配置される。第2の放電電極222aの先端部と対向する位置に、第2の対向電極222bが配置される。
【0046】
サブ電極は、第3の放電電極231aおよび第3の対向電極231bで構成される。第3の放電電極231aは針状形状を有し、第3の対向電極231bはリング形状を有する。第3の放電電極231aの先端部と対向する位置に、第3の対向電極231bは配置される。
【0047】
図3において、イオン発生装置2で重点的にイオンを放出する目標方向(図示せず)は、図面の斜め右下方向および斜め左下方向と設定している。第1のメイン電極221が備える第1の放電電極221aおよび第2のメイン電極222が備える第2の放電電極222aは、各目標方向に対して針状形状の先端部が向くように配置する。
【0048】
一方、サブ電極231が備える第3の放電電極231aは、イオン発生装置2の下方向に、その針状形状の先端部が向くように配置する。このように配置することにより、正イオンおよび負イオンは、目標方向のみならず、その他の方向へも放出され、より空間全体に拡散する。
【0049】
図4を参照して、実施の形態2に係るイオン発生制御部21の回路構成を説明する。
イオン発生制御部21は、メイン電極制御部211およびサブ電極制御部212で構成される。
【0050】
メイン電極制御部211が有するダイオード23、抵抗24、2端子サイリスタ26、昇圧トランス27、コンデンサ25、ダイオード28、およびダイオード29の接続と動作は図2と同様であり、説明は省略する。
【0051】
ダイオード28のアノード端子は、第1のメイン電極221が備える第1の放電電極221aと接続される。その結果、昇圧トランス27の2次側から出力される昇圧交流電圧の負電圧が第1の放電電極221aに印加される。
【0052】
ダイオード29のカソード端子は、第2のメイン電極222が備える第2の放電電極222aと接続される。この結果、昇圧トランス27の2次側から出力される昇圧交流電圧の正電圧が第2の放電電極222aに印加される。
【0053】
第1のメイン電極221が備える第1の対向電極221b、および第2のメイン電極222を構成する第2の対向電極222bには、ともに、昇圧トランス27の2次側の電圧が印加される。
【0054】
以上の構成により、第1のメイン電極221が備える第1の放電電極221aからの負イオンの放出と、第2のメイン電極222が備える第2の放電電極222aからの正イオンの放出は、昇圧交流電圧の半周期毎に交互に行われる。
【0055】
サブ電極制御部212の構成は、以下の点を除いて、図2のサブ電極制御部113と同一である。図2のサブ電極制御部113は、第1のサブ電極131および第2のサブ電極132へ、昇圧トランス17の2次側から出力される昇圧交流電圧を印加していた。図4のサブ電極制御部212は、サブ電極231を構成する第3の放電電極231aへ昇圧交流電圧を印加する点が、図2のサブ電極制御部113と異なる。
【0056】
図3において、第1のメイン電極221が目標方向に向かって負イオンを放出しているとき、同時に、サブ電極231も、イオン発生装置2の下方向に向かって負イオンを放出する。また、第1のメイン電極222が目標方向に向かって正イオンを放出しているとき、同時に、サブ電極231も、イオン発生装置2の下方向に向かって正イオンを放出する。
【0057】
実施の形態2の構成により、イオン発生装置2が重点的にイオンを放出する目標方向に加えて、その他の方向にも正イオンおよび負イオンが放出される。この結果、空間全体にわたり、浮遊菌やカビ菌の除去、またはウイルスの抑制を行うことが可能となる。
【0058】
図4に示す通り、実施の形態2に係るイオン発生制御部21は、メイン電極制御部211とサブ電極制御部212をと備える。この構成により、第1のメイン電極221および第2のメイン電極222と、サブ電極231とにおけるイオン発生仕様を変更することが可能となる。
【0059】
さらに、イオン発生装置2へ100Vの商用交流電源を供給する代わりに、周波数や位相が異なる電源を使用することで、イオン発生装置2の制御性が増す。図4に示すイオン発生制御部21は、供給する電源の周波数を増加させることでイオンの発生量を増加させることが可能となる。また、電源電圧を増加させると、イオンの発生量も増加する。電源の周波数や電圧を減少させることで、イオン発生量を低下させることも可能である。
【0060】
イオン発生装置2は、第1のメイン電極221からの負イオンの放出と、第2のメイン電極222からの正イオンの放出とを交互に行う。同時に、サブ電極231は負イオンおよび正イオンの放出を交互に行う。この構成により、第1のメイン電極221および第2のメイン電極222が発生するイオン濃度と、サブ電極231が発生するイオン濃度とを独立に制御可能となる。その結果、イオン発生装置2の使用目的に適したイオン濃度を、より適切に空間に拡散させることが可能となる。
【0061】
図4に示す実施の形態2のメイン電極制御部211は、メイン電極が備える第1の放電電極221aからの負イオンの放出と、第2の放電電極222aからの正イオンの放出とを交互に行うように制御する。しかし、各放電電極から負イオンおよび正イオンが同時に放出されるようにメイン電極制御部211の構成を変更してもよい。
【0062】
<実施の形態3>
図5を参照して、本発明の実施の形態3に係るイオン発生装置3の構造を説明する。
【0063】
イオン発生装置3は、半球状の筐体30の頂上部に配置されたメイン電極が備える第1の放電電極32aを有する。さらに、第1の放電電極32aを2重の同心円状に取り囲むように配置された第1のサブ電極331および第2のサブ電極332を有する。第1のサブ電極331は、第2のサブ電極332に対し、より近く、第1の放電電極32aの周囲に同心円状に配置される。イオン発生装置3は、さらに、メイン電極制御部311およびサブ電極制御部312を有する。
【0064】
メイン電極32は、第1の放電電極32aおよび第1の対向電極32bで構成される。第1のサブ電極331は、n組の第2の放電電極331aおよび第2の対向電極331bを備える。第2のサブ電極332は、m組の第3の放電電極332aおよび第3の対向電極332bを備える。ここで、nおよびmは、2以上の正の整数である。第1のサブ電極331は正イオンを発生し、第2のサブ電極332は負イオンを発生する。
【0065】
第1の放電電極32a、第2の放電電極331aおよび第3の放電電極332aは針状形状を有する。第1の対向電極32b、第2の対向電極331bおよび第3の対向電極332bはリング形状を有する。第1から第3の対向電極は、対応する各放電電極の先端部と対向する位置に、一定の距離を隔てて空間側に配置される。第1の放電電極32aの針電極の長さは、第2の放電電極331aおよび第3の放電電極332aの針電極の長さより大きく設定される。
【0066】
図5において、イオン発生装置3で重点的にイオンを放出する目標方向は、図面の上方向と設定している。即ち、半円状の形態を有する筐体30の頂上面の向きである。メイン電極32が備える第1の放電電極32aは、その先端形状の先端部が目標方向に向くように配置される。
【0067】
第1のサブ電極331が有するn個の第2の放電電極331aは、第1の同心円331cに沿って、筐体30に配置される。同様に、第2のサブ電極332が有するm個の第3の放電電極332aは、第1の同心円331cの外側に位置する第2の同心円332cに沿って、筐体30に配置される。なお、第2の放電電極331aおよび第3の放電電極332aは、各々の同心円331cおよび332cにおいて、等間隔で配置される。
【0068】
図6を参照して、実施の形態3に係るメイン電極制御部311およびサブ電極制御部312の回路構成を説明する。
【0069】
メイン電極制御部311の回路は、図4に示すサブ電極制御部212と同一であり、その構成および動作の説明は省略する。サブ電極制御部312の回路は、図4に示すメイン電極制御部211と、基本的に同一である。図4に示すメイン電極制御部211は、負イオンを発生する第1のメイン電極221と、正イオンを発生する第2のメイン電極222とに対して昇圧交流電圧を印加する。
【0070】
一方、図6のサブ電極制御部312は、正イオンを発生する第1のサブ電極331および負イオンを発生する第2のサブ電極332に対して昇圧交流電圧を印加する。第1のサブ電極331は、n組の第2放電電極331aおよび第2の対向電極331bを備える。第2のサブ電極332は、m組の第3の放電電極332aおよび第3の対向電極332bを備える。
【0071】
図5において、メイン電極32の第1の放電電極32aは、目標方向に向かって負イオンおよび正イオンを交互に放出する。メイン電極32が負イオンを放出しているとき、第2のサブ電極332も負イオンを放出する。メイン電極32が正イオンを放出しているとき、第1のサブ電極331も正イオンを放出する。第1のサブ電極331および第2のサブ電極332が備える各放電電極の向きは、目標方向に対して3次元に広がりを持たせた角度に設定される。この構成により、正イオンおよび負イオンは、より空間全体に拡散される。
【0072】
実施形態3に係るイオン発生装置3は、メイン電極32を取り囲むように正イオンを放出する第1のサブ電極331を配置し、さらに、その第1のサブ電極331を取り囲むように負イオンを放出する第2のサブ電極332を配置した構成である。しかし、第1のサブ電極331と第2のサブ電極332との配置位置を入れ替えても良い。いずれの配置でも、正イオンおよび負イオンを交互に放出するメイン電極32に対し、第1のサブ電極331が放出する正イオンと第2のサブ電極332が放出する負イオンとが、空間全体に、より一様にバランス良く放出される。
【0073】
イオン発生装置3が備えるメイン電極32の数を1つとする場合、そのメイン電極32から正イオンと負イオンの両イオンが放出するように制御する必要がある。何故なら、正イオンと負イオンの両方が存在することで、空気中の細菌除去やウイルス抑制の効果を発揮するからである。メイン電極32が正イオンおよび負イオンを放出することにより、目標方向における空気中でのイオンの効果が発揮される。
【0074】
本発明に係る各実施の形態において、メイン電極が備える放電電極の針電極の長さと、サブ電極が備える放電電極の針電極の長さとは、異なっても良い。その場合、メイン電極が備える放電電極の針電極の長さがサブ電極が備える放電電極の針電極の長さより大きいことが好ましい。この構成により、メイン電極が備える針状放電電極の先端部が、サブ電極が備える同先端部に対して、より外側に配置される結果、イオンが目標方向へ重点的に放出される。
【0075】
実施の形態1および実施の形態2に係るイオン発生装置は、平面上に配置されたメイン電極およびサブ電極を備えていた。しかし、本実施の形態3に係るイオン発生装置3にように、メイン電極とサブ電極とを3次元に配置してもよい。3次元に配置することにより、イオンの空間全体への拡散が促進される。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1,2,3 イオン発生装置、10,20,30 筐体、11,21 イオン発生制御部、112,211,311 メイン電極制御部、113,212,312 サブ電極制御部、121,122,221,222 メイン電極、131,132,231,331,332 サブ電極、121a,122a,131a,132a,221a,222a,231a,32a,331a,332a 放電電極、121b,122b,131b,132b,221b,222b,231b,32b,331b,332b 対向電極、331c,332c 同心円、13,23,33 ダイオード、14,24,34 抵抗、15,25,35 コンデンサ、16,26,36 2端子サイリスタ、17,27,37 昇圧トランス、18,19,28,29 ダイオード、T1,T2 端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン電極と、サブ電極と、前記メイン電極に昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、前記サブ電極に昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、
前記メイン電極は、前記メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、正イオンまたは負イオンを送出し、
前記サブ電極は、前記サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、正イオンまたは負イオンを送出し、
前記サブ電極の方向は、前記メイン電極の方向に対し、前記正イオンおよび前記負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有している、イオン発生装置。
【請求項2】
前記メイン電極が有する放電電極の方向が前記メイン電極の方向を規定し、
前記サブ電極が有する放電電極の方向が前記サブ電極の方向を規定する、請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記メイン電極が有する前記放電電極の長さは、前記サブ電極が有する前記放電電極の長さより大きい、請求項2記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記メイン電極および前記サブ電極は、同期して、前記正イオンおよび前記負イオンを交互に放出する、請求項1ないし請求項3いずれか1項記載のイオン発生装置。
【請求項5】
第1の放電電極および第2の放電電極を有するメイン電極と、
第3の放電電極および第4の放電電極を有するサブ電極と、
前記第1の放電電極および前記第2の放電電極へ昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、
前記第3の放電電極および前記第4の放電電極へ昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、
前記メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、前記第1の放電電極は正イオンを、前記第2の放電電極は負イオンを送出し、
前記サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、前記第3の放電電極または前記第4の放電電極は、正イオンまたは負イオンを送出し、
前記第1の放電電極および前記第2の放電電極は、ともに所定の方向を有し、
前記第3の放電電極および前記第4の放電電極は、前記所定の方向に対し、前記正イオンおよび前記負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有している、イオン発生装置。
【請求項6】
第1の放電電極および第2の放電電極を有するメイン電極と、
第3の放電電極を有するサブ電極と、
前記第1の放電電極および前記第2の放電電極へ昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、
前記第3の放電電極へ昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、
前記メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、前記第1の放電電極は正イオンを、前記第2の放電電極は負イオンを送出し、
前記サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、前記第3の放電電極は正イオンおよび負イオンを交互に送出し、
前記第1の放電電極、前記第2の放電電極、および前記第3の放電電極は、互いに、前記正イオンおよび前記負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有している、イオン発生装置。
【請求項7】
第1の放電電極を有するメイン電極と、
複数の第2の放電電極および複数の第3の放電電極を有するサブ電極と、
前記第1の放電電極へ昇圧電圧を出力するメイン電極制御部と、
前記複数の第2の放電電極および前記複数の前記第3の放電電極へ昇圧電圧を出力するサブ電極制御部と、を備え、
前記複数の第2の放電電極は、前記第1の放電電極を取り囲むように配置され、
前記複数の第3の放電電極は、前記複数の第2の放電電極を取り囲むように配置され、
前記メイン電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、前記第1の放電電極は正イオンおよび負イオンを交互に送出し、
前記サブ電極制御部が出力する昇圧電圧の極性に応じて、前記複数の第2の放電電極は、正イオンまたは負イオンのいずれか一方を送出し、前記複数の第3の放電電極は、前記正イオンまたは負イオンのいずれか他方を送出し、
前記第1の放電電極は、所定の方向を有し、
前記複数の第2の放電電極は、前記所定の方向に対し、前記正イオンおよび前記負イオンが放出される空間領域に向かって広がる方向を有し、
前記複数の第3の放電電極は、前記複数の第2の放電電極の方向に対して、前記正イオンおよび前記負イオンが放出される空間に向かって広がる方向を有する、イオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114921(P2013−114921A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260477(P2011−260477)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)