説明

イオン透過性隔膜の製造装置及び製造方法

【課題】製造時のピンホールの発生や厚みムラ、ヨレを抑制して歩留りを改善したイオン透過性隔膜を製造可能な装置を提供する。
【解決手段】イオン透過性隔膜の製造装置1は、有機性繊維布2の原反ロール3と、第1のガイドロール8Aと、この第1のガイドロール8Aの下側に設置された図示しない駆動装置を備えた一対のカレンダーロール4A,4Bと、このカレンダーロール4A,4B上に配置された塗工機構たる製膜溶液Lを受ける断面略V字状の塗工部材6とを備える。この塗工部材6に製膜溶液Lを供給する給液装置5と、カレンダーロール4A,4Bの下方に配置された抽出槽7と、この抽出槽7の底部側に配置された第2のガイドロール8Bと、抽出槽7の外側に配置された図示しない駆動装置を備えた送給機構たる一対のニップロール9A,9Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水電解装置において水素と酸素とを分離するためのイオン透過性隔膜の製造装置に関し、特に製造時のピンホールの発生や厚みムラ、ヨレを抑制して歩留りを改善したイオン透過性隔膜の製造装置に関する。また、本発明は、アルカリ水電解装置において水素と酸素を分離するためのイオン透過性隔膜の製造方法に関し、特に製造時のピンホールの発生や厚みムラ、ヨレを抑制し、さらにガス耐圧性が向上したイオン透過性隔膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、最近のエネルギー事情を反映し、石油に代わる新しいエネルギー源として多方面から注目されている。このような水素の工業的製造方法としては、コークスや石油のガス化法や水電解法等が挙げられる。
【0003】
前者の方法は、操作が煩雑であるとともに、非常に大規模な設備が必要となるので、イニシャルコストがかなりかかるという問題点がある。
【0004】
一方、後者の方法は、原料として入手し易い水を用いるものであり、電解槽内に複数の電極対を設け、これら対となる電極の間にKOH等のアルカリ電解液を流通させるとともにイオン透過性隔膜で区画して、このイオン透過性隔膜の陰極側で水素を発生するとともに陽極側で酸素を発生させるものであるが、電極間にイオン透過性隔膜と被電解液とが存在しているので、電気抵抗が大きく、電解効率が悪いという問題がある。しかしながら、この水電解法は、比較的小規模な設備でも水素の発生が可能であり、実用的であることから、電解効率の向上が望まれている。
【0005】
このようなアルカリ水電解装置としては、図4に示すようにアルカリ溶液Wが流通する電解槽21と、電極22と、イオン透過性隔膜25とからなり、電極22は、メッシュ状の作用電極26,27と、複極板23,24とを給電体28,29で接続した構造を有する。そして、この電極22のメッシュ状の作用電極26,27側でイオン透過性隔膜25を挟みこんでなるものが提案されている(特許文献1参照)。このアルカリ水電解装置においては、給電体28,29を、それぞれ複極板23,24の陽極側23A及び陰極側24Aにそれぞれ接続する。このようなアルカリ水電解装置用の電極の作用電極として、基材上にニッケル硫黄メッキ処理を施したものを使用することが知られている。
【0006】
この図4に示すアルカリ水電解装置においては、複極板23,24に電流を流すと電圧が生じ、アルカリ溶液Wの電気分解により、イオン透過性隔膜25とメッシュ状の作用電極26(陽極)との界面において、酸素(O)が発生する。
【0007】
そして、イオン透過性隔膜25とメッシュ状の作用電極27(陰極)との界面においては、2倍量の水素(H)が発生する。この電解ユニットにおける電解槽21は、イオン透過性隔膜25により陰極側と陽極側とに区画されているので、陰極側で発生した水素のみを回収することで水素ガスを製造することができる。
【0008】
ところで、このようなアルカリ水電解装置に代表される電気化学的電解槽に使用するイオン透過性隔膜には、以下の性能が要求される。
(1)膜を通じてイオンのみを通し、ガスの通過や拡散がないこと
(2)電解液中で物理的、化学的に耐久性があること
(3)電気抵抗が低いこと
【0009】
このような性能を有する電解用隔膜として、実用的には石綿布が広く使われている。しかし、電解液は場合によっては100℃以上になるにもかかわらず、石綿布は、100℃以上の温度では腐食を受け使用できなくなる上に、近年では、石綿による健康被害も多く報告されており、その使用には大きな問題がある。
【0010】
そこで、上記要求性能を満たすとともに、電気抵抗が一層低いイオン透過性隔膜として、高分子多孔膜又はイオン交換膜、NiO等の金属酸化物膜を用いたもの(特許文献1参照)及び無機物質と有機高分子との複合材料等を隔膜材料としたイオン透過性隔膜(特許文献2参照)等が提案されている。
【0011】
しかしながら、上記各膜材料からなるイオン透過性隔膜のうち、高分子多孔膜は、柔軟であり、機械的損傷に対して抵抗性が強いという利点を有するが、ここで使用される高分子材料は疎水性であるため、多孔性であったとしても電解質の溶媒和したイオンの移動が容易でなく、電気抵抗が大きくなり、電解槽の性能が激しく低下するという問題点がある。また、高分子多孔膜やイオン交換膜では、気体を発生するアルカリ水電解装置においては、気体の泡が膜の表面に付着し電気抵抗が増大するという問題があり、特に気泡が集中して部分的に電気抵抗が大きく増大した場合には、いわゆるホット・スポットと呼ばれる高温部が生じ、隔膜の劣化が起こるという問題点もある。
【0012】
また、上記特許文献1に記載されているようなNiO等の金属酸化物膜は、焼結により製造されるが、ガスの拡散や透過のない緻密な焼結隔膜は、そのサイズに限界があるため、大型の電解槽への適用には向いていないという問題点がある。
【0013】
そして、特許文献2に記載されている無機物質と有機高分子との複合材料を隔膜としたイオン透過性隔膜は、無機湿潤性材料として酸化ジルコニウムやポリアンチモン酸を用い、フルオロカーボン重合体やポリスルホン等をバインダーとして製膜することで微細孔を形成したものである。この複合材料を用いたイオン透過性隔膜は、優れた平滑性及び非常に良好なイオン伝導率を示し、アルカリ水電解装置の隔膜としては好適なものである。
【0014】
この特許文献2でイオン透過性隔膜は、
(a)粒状の無機性親水性物質を、適当な溶剤に溶かした有機性結合剤の溶液と混合してスラリーを作る工程
(b)このスラリーを不活性な平滑な表面上に均一に塗布し湿潤したシートを作る工程
(c)伸張した有機性繊維布を湿潤シート中に浸没させる工程、
(d)該有機性繊維布を、溶剤を除去する間伸張し続けて蒸発及び/又は浸出によって溶剤を除去する工程、及び
(e)シートを平滑な表面から取り去る工程
により製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特公昭62−50557号公報
【特許文献2】特許第2604734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記特許文献2に記載されたイオン透過性隔膜の製造方法では、(1)上記(b)の工程において湿潤したシート中に有機性繊維布を浸没させる段階で、織布の目開きの中に製膜溶液が十分に浸透せず、気泡が入りピンホールの原因となる、(2)気泡の入り込みを避けるために織布を枠等に張って十分に伸張することが重要であるが大型化になるにつれて、均一に伸張した状態を保持するのが困難でありヨレを生じる、(3)このようにして生じる有機性繊維布のヨレのために、溶液の塗布ムラや気泡の入り込みによるピンホールの発生が起こりやすくなる、(4)上記(c)〜(e)の溶媒抽出の工程において、溶媒を片面ずつ抽出することになるため、初めに板に接触している膜表面の方が、緻密層が形成されにくく脆い傾向になる、(5)上記(c)の工程において枠ごと溶媒抽出槽に浸漬する際に、溶媒が波打つことで湿潤シート面が荒れ、ヨレやピンホールの発生の原因となる等の種々の問題点があった。
【0017】
上記課題に鑑み、本発明は、製造時のピンホールの発生や厚みムラ、ヨレを抑制して歩留りを改善したイオン透過性隔膜を製造可能な装置を提供することを目的とする。また、本発明は、製造時のピンホールの発生や厚みムラ、ヨレを抑制し、さらにガス耐圧性が向上したイオン透過性隔膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、有機性繊維布の両面に塗膜を形成してなるイオン透過性隔膜の製造装置であって、有機性繊維布を送り出す送給機構と、この有機性繊維布を両面から挟み込む一対のカレンダーロールと、このカレンダーロール間に製膜溶液を供給する塗工機構と、このカレンダーロールの下方に配置された抽出槽とを備えることを特徴とするイオン透過性隔膜の製造装置を提供する(請求項1)。
【0019】
上記発明(請求項1)によれば、有機性繊維布を挟み込んだ一対のロール間に製膜溶液を流し込みながら、該有機性繊維布を通過させることにより、気泡の浸入を防止しつつ有機性繊維布の両面に製膜溶液を塗布し、続いてカレンダーロールの下方に配置された抽出槽に浸漬して製膜溶液の溶剤を抽出することにより製膜溶液中の製膜成分を凝固させることで、両面から溶剤を抽出して緻密層を形成し、波うちを極小化して面荒れを防止したイオン透過性隔膜を製造可能な装置となっている。
【0020】
上記発明(請求項1)においては、前記製膜溶液が、親水性無機材料と、有機結合材料と、有機溶剤とを含有するのが好ましい(請求項2)。
【0021】
上記発明(請求項2)によれば、有機性繊維布の両面に親水性無機材料による緻密層を形成することができる。
【0022】
上記発明(請求項1、2)においては、前記一対のカレンダーロールの間隙が、調整可能であるのが好ましい(請求項3)。
【0023】
上記発明(請求項3)によれば、親水性無機材料による緻密層の厚さを調整することが可能となり、所望の厚さのイオン透過性隔膜が製造することができる。
【0024】
上記発明(請求項1〜3)においては、前記有機性繊維布の送給機構が、有機性繊維布の送給速度を調整可能であるのが好ましい(請求項4)。
【0025】
上記発明(請求項4)によれば、有機性繊維布の送給機構の送給速度を調整することで、有機性繊維布を伸張させ、ヨレを無くし厚みムラや気泡の浸入を抑制したイオン透過性隔膜が製造可能となる。
【0026】
第二に本発明は、有機性繊維布の両面に塗膜を形成してなるイオン透過性隔膜の製造方法であって、有機性繊維布の送給機構により有機性繊維布を一対のカレンダーロール間に送り出し、このカレンダーロールに近接して設けられた塗工機構からカレンダーロール間に製膜溶液を供給することにより、有機性繊維布に製膜溶液を塗布する塗工工程と、この製膜溶液を塗布した有機性繊維布を、抽出溶媒を充填した抽出槽に浸漬して製膜溶液中の溶剤を抽出するとともに製膜溶液中の製膜成分を凝固させて製膜する製膜工程とからなることを特徴とするイオン透過性隔膜の製造方法を提供する(請求項5)。
【0027】
上記発明(請求項5)によれば、有機性繊維布を挟み込んだ一対のロール間に塗工機構から製膜溶液を流し込みながら、該有機性繊維布を通過させることにより、気泡の浸入を防止しつつ有機性繊維布の両面に製膜溶液を塗布し、続いてカレンダーロールの下方に配置された抽出槽に浸漬して製膜溶液の溶剤を抽出するとともに製膜溶液中の製膜成分を凝固させることで、両面から溶剤を抽出して緻密層を形成し、波うちを極小化して面荒れを防止したイオン透過性隔膜を製造することができる。
【0028】
上記発明(請求項5)においては、前記抽出溶媒として、水と有機溶媒との混合溶液を使用するのが好ましい(請求項6)。
【0029】
上記発明(請求項6)によれば、有機性繊維布からの製膜溶液の溶剤の抽出速度を遅くすることができ、イオン透過性隔膜の内部構造を緻密化することで、ガス耐圧性が向上したイオン透過性隔膜を得ることができる。
【0030】
上記発明(請求項5、6)においては、前記製膜溶液が、親水性無機材料と、有機結合材料と、有機溶剤とを含有するのが好ましい(請求項7)。
【0031】
上記発明(請求項7)によれば、有機性繊維布の両面に親水性無機材料による緻密層を形成することができる。
【0032】
上記発明(請求項7)においては、前記水と有機溶媒の混合溶液における有機溶媒として、前記製膜溶液の有機溶剤と同一種類のものを使用するのが好ましい(請求項8)。
【0033】
上記発明(請求項8)によれば、有機性繊維布からの製膜溶液の溶剤の抽出速度を一層遅くすることができ、イオン透過性隔膜の内部構造を緻密化することでガス耐圧性が向上したイオン透過性隔膜を得ることができる。
【0034】
上記発明(請求項7、8)においては、前記親水性無機材料が、フッ化カルシウムであるのが好ましい(請求項9)。また、上記発明(請求項7〜9)においては、前記有機結合材料が、ポリスルホンであるのが好ましい(請求項10)。さらに、上記発明(請求項7〜10)においては、前記有機溶剤がN−メチル−2−ピロリドンであるのが好ましい(請求項11)。
【0035】
上記発明(請求項9〜11)によれば、イオン透過性隔膜を好適に形成することができる。
【0036】
さらに、上記発明(請求項5〜11)においては、前記製膜溶液中の溶剤を抽出した有機性繊維布を取り出して余分な抽出溶媒を絞る工程をさらに有するのが好ましい(請求項12)。
【0037】
上記発明(請求項12)によれば、抽出溶媒を絞った後は、これを短時間乾燥させることでイオン透過性隔膜を好適に形成することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明のイオン透過性隔膜の製造装置によれば、有機性繊維布を挟み込んだ一対のロール間に製膜溶液を流し込みながら、該有機性繊維布を通過させることにより、有機性繊維布の両面に製膜溶液を塗布し、続いてカレンダーロールの下方に配置された抽出槽に浸漬して製膜溶液の溶剤を抽出することにより製膜溶液中の製膜成分を凝固させることで、製造時のピンホールの発生や厚みムラ、ヨレを抑制して歩留りを改善したイオン透過性隔膜を製造することが可能となる。特に平滑な板や枠等を使用しないため、製膜溶液を塗布した有機性繊維布の両面から溶剤抽出が可能となり、表裏の膜面とも緻密層が形成されたイオン透過性隔膜を製造することができる。
【0039】
また、本発明のイオン透過性隔膜の製造方法によれば、有機性繊維布を挟み込んだ一対のロール間に塗工機構から製膜溶液を流し込みながら、該有機性繊維布を通過させることにより、気泡の浸入を防止しつつ有機性繊維布の両面に製膜溶液を塗布し、続いてカレンダーロールの下方に配置された抽出槽に浸漬して製膜溶液の溶剤を抽出するとともに製膜溶液中の製膜成分を凝固させることで、両面から溶剤を抽出して緻密層を形成し波うちを極小化して面荒れを防止したイオン透過性隔膜を製造するができる。
【0040】
特に、抽出溶媒として、製膜溶液に用いる有機溶剤と同一種類の有機溶媒及び水の混合溶液を用いることで、有機性繊維布からの製膜溶液の溶剤の抽出速度を遅くすることができ、イオン透過性隔膜の内部構造を緻密化することでガス耐圧性が向上したイオン透過性隔膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係るイオン透過性隔膜の製造装置を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係るイオン透過性隔膜の製造装置による製造工程を示す概略図である。
【図3】図2に示す製造工程の次の工程を示す概略図である。
【図4】アルカリ水電解装置の要部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るイオン透過性隔膜の製造装置を示す概略側面図である。
【0043】
図1において、イオン透過性隔膜の製造装置1は、有機性繊維布2の原反ロール3と、第1のガイドロール8Aと、この第1のガイドロール8Aの下側に設置された図示しない駆動装置を備えた一対のカレンダーロール4A,4Bと、このカレンダーロール4A,4B上に配置された塗工機構たる製膜溶液Lを受ける断面略V字状の塗工部材6と、この塗工部材6に製膜溶液Lを供給する給液装置5とを有する。そして、このカレンダーロール4A,4Bの下方には抽出槽7が配置されていて、この抽出槽7の底部側には第2のガイドロール8Bが固設されていて、抽出槽7の外側には図示しない駆動装置を備えた送給機構たる一対のニップロール9A,9Bが設けられている。
【0044】
そして、本実施形態においては、カレンダーロール4A,4Bは、それぞれその両側が枠体10A,10Bにより支持されていて、この枠体10A,10Bに接続されたシリンダ機構11A,11Bによりそれぞれ水平方向にわずかに移動可能となっており、その間隙が調整可能となっている。また、第1のガイドロール8Aは、その図示左端がカレンダーロール4A,4Bの間隙の垂直上方に位置しており、第2のガイドロール8Bは、その図示右端がカレンダーロール4A,4Bの間隙の垂直下方に位置している。さらに、原反ロール3は図示しない制動機構により所定の負荷をもって回動するように制御可能となっており、この回動負荷と一対のニップロール9A,9Bの引張力とにより有機性繊維布2の送給速度及び張力が調整可能となっている。
【0045】
上述したようなイオン透過性隔膜の製造装置1において、有機性繊維布2としては、特に制限はないが、ポリプロピレンからなるメッシュ、又はエチレンとモノクロロトリフルオロエチレン等の予めハロゲン化されたエチレンとの共重合体からなるメッシュ等を用いることができる。この有機繊維布2としては、織布又は不織布を用いることができ、その繊維径は1mm以下であることが好ましく、特に繊維径が0.5mm以下であることが好ましい。また、有機繊維布2の織目の寸法は特に制限はないが、4mm以下であることが好ましく、特に1mm以下であることが好ましい。
【0046】
また、製膜溶液Lは、親水性無機材料と、有機結合材料と、有機溶剤とを含有するのが好ましい。親水性無機材料としては、例えば、フッ化カルシウム(CaF)を用いることが好ましく、この親水性無機材料は、粒状体を用いることが好ましい。この親水性無機材料の粒状体は、粒径5μm以下であることが好ましく、特に粒径1μm以下の微粒子であることが好ましい。したがって、この粒状体を乳鉢、ミル等でより細かく粉砕してもよい。
【0047】
また、有機結合材料としては、イオン透過性隔膜の運転条件下で安定であり、溶剤中に溶解し、かつ溶剤から沈殿でき、さらに織布支持体及び無機酸化物又は水酸化物を攻撃しない任意の種類の有機材料を使用することができる。このような有機結合材料としては、フッ化ポリビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンのようなフルオロカーボン重合体、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール等が含を用いることができる。これらの中では、特にポリスルホンが好適である。
【0048】
さらに、有機結合材料を溶解するとともに親水性無機材料を懸濁させる有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコールのモノ及びジエーテル、又はメチルエチルケトンのようなケトン類等を用いることができる。これらの中では、特にN−メチル−2−ピロリドンが好適である。
【0049】
製膜溶液Lにおけるこれら親水性無機材料と有機結合材料との配合割合は、親水性無機材料の配合割合が10〜95質量%であることが好ましい。親水性無機材料の配合割合が10質量%未満であると、得られる膜材料自体の電気抵抗が大きくなり、これを用いたイオン透過性隔膜の電気抵抗の点でも好ましくない。また、親水性無機材料の配合割合が95質量%を超えると、膜材料の機械的強度、特に脆性が低くなりすぎて膜としての形態を維持するのが困難となるおそれがある。好ましい親水性無機材料の配合割合は40〜90質量%、特に75〜85質量%である。
【0050】
親水性無機材料の配合割合が有機結合材料に対して多いほど、膜材料の湿潤性(親水性)が高くなり、膜の電気抵抗が低くなる傾向がある。
【0051】
また、有機溶剤の配合割合は、イオン透過性隔膜における皮膜形成物質である有機結合材料と親水性無機材料との合計100質量%に対して、50〜250質量%程度であればよい。なお、製膜溶液Lには、当該製膜溶液Lの粘度コントロールを目的として任意の分散剤を適宜添加することができる。
【0052】
上述したような親水性無機材料と有機結合材料と有機溶剤とは、全てを一度に混合してもよいが、初めに親水性無機材料を有機溶剤に分散させた後に、有機結合材料を溶解させるのが好ましい。このような順番で配合することにより、親水性無機材料の微細化に伴う増粘を抑制して製膜溶液調製時の時間を短縮し、回収率を向上させることができる。この際、ビーズミルで親水性無機材料を微細化しながら有機溶剤と混合すればよい。さらに、有機結合材料は70℃以上で溶解させるのが好ましい。このようにして調製した製膜溶液は、該製膜溶液調製後から製膜に使用するまでの間、密閉系で製膜溶液を攪拌操作しておくのが好ましい。
【0053】
次に、上述したようなイオン透過性隔膜の製造装置1を用いたイオン透過性隔膜の製造方法について説明する。本実施形態においては、親水性無機材料としてのフッ化カルシウム、有機結合材料としてのポリスルホン、及び有機溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンからなるスラリーを製膜溶液Lとして用いる場合について説明する。
【0054】
〔初期工程〕
図2に示すように、原反ロール3には有機性繊維布2が巻装されており、当該有機性繊維布2を、あらかじめ第1のガイドロール8Aを経由して塗工部材6及びカレンダーロール4A,4B間に通し、さらに第2のガイドロール8Bを経てニップロール9A,9B間に通しておく。このとき抽出槽7は空となっており、カレンダーロール4A,4Bを移動して所定の間隙に調整する。このカレンダーロール4A,4Bの間隙は、有機性繊維布2の厚さと所望とするイオン透過性隔膜の厚さとに応じてシリンダ機構11A,11Bにより適宜設定すればよいが、具体的には0.1〜1mmとすればよい。
【0055】
この状態で図3に示すように抽出槽7に抽出溶媒Wを所定の位置まで満たしたら、ニップロール9A,9Bを駆動する。このとき図示しない制御手段によりニップロール9A,9Bの引張力を制御することにより、原反ロール3の負荷とともに有機性繊維布2の送給速度及び張力を調整することができる。具体的には、有機性繊維布2の送給速度を1〜25m/分、張力を70〜250N/幅の範囲内で適宜調整すればよい。これにより、有機性繊維布2を伸張させ、ヨレを無くし、厚みムラや気泡の浸入を抑制することができる。
【0056】
〔塗工工程〕
続いて、給液装置5から製膜溶液Lを断面略V字状の塗工部材6に供給する。これにより製膜溶液Lは、塗工部材6における断面略V字状の両側の斜面に沿って幅方向に広がりながらカレンダーロール4A,4B間に流下する。この状態で有機性繊維布2がカレンダーロール4A,4B間を通過することで、有機性繊維布2への気泡の浸入を防止しつつ両面に製膜溶液Lを塗布するとともに、カレンダーロール4A,4B間で圧接することにより、製膜溶液Lが有機性繊維布2の繊維内に滲入する。
【0057】
〔製膜工程〕
続いて、有機性繊維布2の送給を続けると、有機性繊維布2はカレンダーロール4A,4Bから抽出槽7に浸漬される。これにより有機性繊維布2に塗布された製膜溶液Lの両面における偏りを防止することができる。そして、この状態を3〜30分程度保持して製膜成分であるフッ化カルシウム(親水性無機材料)を含んだポリスルホン(有機結合材料)を凝固させるとともに、製膜溶液L中の溶媒成分を抽出槽7の抽出溶媒Wに溶出させることで、緻密層を形成することができる。本実施形態においては、第2のガイドロール8Bの図示右端がカレンダーロール4A,4Bの間隙の垂直下方に位置しているので、有機性繊維布2はカレンダーロール4A,4Bからそのまま垂下して抽出槽7に浸漬されることになる。これにより有機性繊維布2に塗布された製膜溶液Lの両面における偏りを防止することができる。
【0058】
なお、このような有機性繊維布2に浸み込んだ製膜溶液Lの溶媒を抽出する抽出溶媒Wとしては、水、好ましくは超純水を用いることができる。抽出溶媒Wとして超純水を用いることにより、膜厚約600μm、電気抵抗2Ωcm以下、ガス耐圧100kPa以上のイオン透過性隔膜を製造することができる。
【0059】
しかしながら、イオン透過性隔膜としてはさらに電気抵抗が低いこと、すなわち膜厚を薄くするのが望ましい。具体的には、電気抵抗1Ωcm以下のイオン透過性隔膜とするためには、膜厚を300〜400μmにする必要があるが、抽出溶媒Wとして超純水を用いたのでは、膜にピンホールが生じ、ガス耐圧性能が100kPa以上に満たないことがある。
【0060】
この原因について種々検討したところ、溶媒の抽出速度が速すぎることに起因することがわかった。すなわち、本方法は、凝固液(抽出溶媒W)中で製膜溶液Lを塗布した有機性繊維布2を抽出処理に付することによって良溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)を除去する方法であり、凝固液としては、一般には水やメタノール、エタノール等のアルコール類が使用される。このとき、良溶媒と凝固液との溶解度パラメータの差が大きいほど良溶媒の抽出速度が速くなり、その差が小さいほど抽出速度が遅くなる。ここで、N−メチル−2−ピロリドンの溶解度パラメータは10.1であるが、水の溶解度パラメータは、23.4であり、両者の差が大きいので、N−メチル−2−ピロリドンの抽出速度が速くなり、製膜溶液中の表面が直ちに凝固し、膜内部の孔構造が比較的大きくなるのである。
【0061】
そこで、この速度差を利用して膜表面の孔径を制御する。具体的には膜厚300〜400μmのイオン透過性隔膜を製造する場合には、N−メチル−2−ピロリドンと抽出溶媒Wとの溶解度パラメータとの差を縮小させればよい。したがって、抽出溶媒Wとして水(超純水)と有機溶媒との混合溶液を使用するのが好ましい。この抽出溶媒Wを構成する有機溶媒としては、水よりも溶解度パラメータが小さいものであれば特に制限はないが、製膜溶液Lに用いる有機溶剤と同一種類のものを使用するのが好ましい。したがって、本実施形態においては、当該有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いるのが好ましい。また、イソプロピルアルコール等の有機溶媒を用いてもよい。このように、水と有機溶媒との混合溶液を使用することで、超純水のみで抽出するよりも製膜溶液L中の有機溶剤の抽出速度を緩やかにして親水性無機材料の凝固を遅くし、膜の細孔形成速度を緩和することで膜の内部構造を緻密化し、得られるイオン透過性隔膜2Aのガス耐圧性を向上させることができる。
【0062】
このような抽出溶媒Wにおける水と有機溶媒との混合割合は、両者の合計を100容積%として、有機溶媒1〜30容積%とするのが好ましい。有機溶媒が1容積%未満では、得られるイオン透過性隔膜の緻密化が十分でないことがある。一方、有機溶媒が30容積%超を超えると、得られるイオン透過性隔膜の緻密化のさらなる向上が期待できないばかりか、溶媒の抽出速度が遅くなりすぎて製膜に時間がかかりすぎ生産性が低下する。
【0063】
なお、抽出溶媒Wとして、超純水と有機溶媒との混合溶液を用いた場合には、抽出槽7の後段に純水槽(図示せず)を設けて、有機性繊維布2をこの純水槽に浸漬することで、抽出溶媒W中の有機溶媒及び製膜溶液L中の有機溶剤を完全に抽出するのが好ましい。
【0064】
〔絞り工程〕
さらに、このようにして製膜溶液Lによる緻密層を形成した有機性繊維布2は、第2のガイドロール8Bからニップロール9A,9Bに誘導され、余分な液体分(水分等)が除去される。以上により製造時のピンホールの発生や厚みムラ、ヨレを抑制して歩留りを改善したイオン透過性隔膜2Aを製造することができる。
【0065】
このようにして製造されるイオン透過性隔膜2Aの厚さは、使用する有機性繊維布2の厚さにもよるが100μm以上、特に300〜900μmであるのが好ましい。イオン透過性隔膜2Aの厚さが100μm未満では、アルカリ水電解用としての強度が十分でないおそれがある。
【0066】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は特に制限はなく、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0067】
例えば、絞り工程としては他の手段を用いることができる。また、絞り工程は必ずしも必要ではなく、乾燥手段や静置等により余分な液体分(水分等)を除去してもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
〔実施例1〕
ポリスルホン400重量部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)300重量部に溶解させたポリマー溶液に、平均粒径5μmのフッ化カルシウム(CaF,キシダ化学社製)1600重量部を混合し、ボールミルで十分に攪拌して分散させてスラリー状とし、製膜溶液L1を調製した。
【0070】
図1に示す装置において、有機性繊維布2として50メッシュのポリプロピレン製繊維布(繊維径:195μm、目開き313μm、幅850mmm、50m巻、型式ESP50)を原反ロール3にセットし、あらかじめ第1のガイドロール8Aを経由して塗工部材6及びカレンダーロール4A,4B間を通し、さらに第2のガイドロール8Bを経てニップロール9A,9B間を通して伸張状態とした(図2)。そして、抽出槽7に抽出溶媒Wとして純水を水深1mになるように満たした。
【0071】
このカレンダーロール4A,4B間に断面略V字状の塗工部材6から1時間脱泡した製膜溶液L1を供給し、ニップロール9A,9Bを駆動した。このときポリプロピレン製繊維布の送給速度を0.5m/分、張力を約100N/幅とした。これにより製膜溶液Lは、塗工部材6の断面略V字状の両側の斜面に沿って幅方向に広がりながら流下し、ポリプロピレン製繊維布をカレンダーロール4A,4B間に通過させることにより、気泡の浸入を防止しつつ両面に製膜溶液L1が塗布され、さらに製膜溶液L1がポリプロピレン製繊維布の繊維内に滲入する。なお、カレンダーロール4A,4Bの間隙は製膜溶液L1を塗布した後のポリプロピレン製繊維布の厚さが600μm程度となるように調整した。
【0072】
続いて、有機性繊維布2の送給を続け、ポリプロピレン製繊維布を垂下して抽出槽7に浸漬した。そして、ポリプロピレン製繊維布の塗布部が第2のガイドロール8Bに到達する直前でニップロール9A,9Bを停止し、5分間保持して溶剤であるNMPを抽出させた。
【0073】
その後、再度ニップロール9A,9Bを駆動して、ニップロール9A,9Bで余分な水分を除去した後切り取ることで、850mm×850mmのシート状のイオン透過性隔膜2Aを得た。
【0074】
このようにして得られたイオン透過性隔膜2Aの任意の10ヶ所の膜厚を測定した。結果を表1に示す。また、47mmφの電解セルに組み込み、これら10ヶ所におけるガス耐圧をバブルポイント法により測定した。結果を表1に合わせて示す。
【0075】
〔比較例1〕
実施例1で用いたポリプロピレン製繊維布を伸張状態で設置した850mm×850mmのステンレス製の枠体上に、実施例1で調製した製膜溶液Lを150mL流し込み、700mm×700mmで厚さ約600μmの湿潤シートを得た。
【0076】
この湿潤シートごと枠体を水浴中に移送し、5分間放置して溶剤であるNMPを抽出させ、続いて枠体上からシートを剥離し、イオン透過性隔膜を得た。
【0077】
このようにして得られたイオン透過性隔膜2Bの任意の10ヶ所の膜厚と、ガス耐圧を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に合わせて示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1から明らかなように、実施例1のイオン透過性隔膜は、いずれの箇所も膜厚600μm±100μmと厚さが均一で、ガス耐圧100kPa以上を満たしており、均質でピンホールの発生や厚みムラ、ヨレが抑制されていたのに対し、比較例1のイオン透過性隔膜は、600μm±250μmと厚さにムラがあり、ガス耐圧も部分的に10kPa以下の箇所が散見され、不均質であった。
【0080】
〔実施例2〕
[製膜溶液の調製]
ジルコニア製ビーズミルのポット内にNMP500重量部、平均粒径5μmのフッ化カルシウム(CaF,キシダ化学社製)348重量部、オレイン3.5重量部及びリン酸エステル系の分散剤としてDISPRBYK−145(BYK−Cera社製)3.5重量部を入れ、φ1.0mmのビーズを500mL加えて混合するとともにフッ化カルシウムを微細化した。このとき攪拌速度は攪拌羽根先端の線速度として6m/sec、攪拌時間を2時間とした。
【0081】
次に、ポット内からビーズを真空ろ過により分離して、得られた混合液をマントルヒータで100℃に昇温させた後、ポリスルホン87重量部を少量ずつ添加し、攪拌しながら溶解させた。このとき100℃での溶解時間は4時間とし、その後自然冷却させながら6時間攪拌して製膜溶液L2を調製し、その後、製膜溶液Lを常温まで放置したら回収して1時間真空脱泡した。
【0082】
[イオン透過性隔膜の製造]
実施例1において、抽出溶媒Wとして、純水とNMPとの合計100容積%に対して5容積%のNMPを配合したものを用い、抽出槽7に水深1mになるように満たした。
【0083】
そして、カレンダーロール4A,4B間に断面略V字状の塗工部材6から上述したようにして調製した製膜溶液L2を供給し、ニップロール9A,9Bを駆動した。このときポリプロピレン製繊維布の送給速度を0.5m/分、張力を約100N/幅とした。これにより製膜溶液L2は、塗工部材6の断面略V字状の両側の斜面に沿って幅方向に広がりながら流下し、ポリプロピレン製繊維布をカレンダーロール4A,4B間に通過させることにより、気泡の浸入を防止しつつ両面に製膜溶液L2が塗布され、さらに製膜溶液L2がポリプロピレン製繊維布の繊維内に滲入する。なお、カレンダーロール4A,4Bの間隙は製膜溶液L2を塗布した後のポリプロピレン製繊維布の厚さが300〜400μm程度となるようにあらかじめ調節した。
【0084】
続いて、有機性繊維布2の送給を続け、ポリプロピレン製繊維布を垂下して抽出槽7に浸漬した。そして、ポリプロピレン製繊維布の塗布部が第2のガイドロール8Bに到達する直前でニップロール9A,9Bを停止し、15分間保持して溶剤であるNMPを抽出させた。
【0085】
その後、再度ニップロール9A,9Bを再度駆動して、ポリプロピレン製繊維布を繰り出したらニップロール9A,9Bを通過させることなく、抽出溶媒W中からポリプロピレン製繊維布を取り出して切断し、溶剤及び抽出溶媒Wを完全に除去するために、純水槽に30分浸漬させた。
【0086】
このようにして得られたイオン透過性隔膜の膜厚は380μm1mol/L−KOH水溶液中で測定した、実施例1と同様にバブルポイント法により測定した電気抵抗は0.71Ωcm及びガス耐圧151kPaであった。
【0087】
〔参考例1〕
実施例2において、抽出槽7に抽出溶媒Wとして純水を水深1mになるように満たした以外は同じ条件で、イオン透過性隔膜を製造した。得られたイオン透過性隔膜の膜厚、電気抵抗及びガス耐圧を実施例2と同様にして測定したところ、膜厚は392μm、電気抵抗は0.75Ωcmであったが、ガス耐圧は27kPaであり100kPaを下回った。これはイオン透過性隔膜の膜内部の孔構造が実施例2のイオン透過性隔膜よりも大きいため、膜厚を薄くするとガス耐圧が低下してしまうためであると考えられる。
【符号の説明】
【0088】
1…イオン透過性隔膜の製造装置
2…有機性繊維布
2A…イオン透過性隔膜
3…原反ロール
4A,4B…カレンダーロール
5…給液装置
6…塗工部材
7…抽出槽
8A…第1のガイドロール
8B…第2のガイドロール
9A,9B…ニップロール
L…製膜溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性繊維布の両面に塗膜を形成してなるイオン透過性隔膜の製造装置であって、
有機性繊維布を送り出す送給機構と、
この有機性繊維布を両面から挟み込む一対のカレンダーロールと、
このカレンダーロール間に製膜溶液を供給する塗工機構と、
このカレンダーロールの下方に配置された抽出槽と
を備えることを特徴とするイオン透過性隔膜の製造装置。
【請求項2】
前記製膜溶液が、親水性無機材料と、有機結合材料と、有機溶剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載のイオン透過性隔膜の製造装置。
【請求項3】
前記一対のカレンダーロールの間隙が調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン透過性隔膜の製造装置。
【請求項4】
前記有機性繊維布の送給機構が、有機性繊維布の送給速度を調整可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のイオン透過性隔膜の製造装置。
【請求項5】
有機性繊維布の両面に塗膜を形成してなるイオン透過性隔膜の製造方法であって、
有機性繊維布の送給機構により有機性繊維布を一対のカレンダーロール間に送り出し、このカレンダーロールに近接して設けられた塗工機構から、カレンダーロール間に製膜溶液を供給することにより、有機性繊維布に製膜溶液を塗布する塗工工程と、
この製膜溶液を塗布した有機性繊維布を、抽出溶媒を充填した抽出槽に浸漬して製膜溶液中の溶剤を抽出するとともに製膜溶液中の製膜成分を凝固させて製膜する製膜工程と
からなることを特徴とするイオン透過性隔膜の製造方法。
【請求項6】
前記抽出溶媒として、水と有機溶媒との混合溶液を使用することを特徴とする請求項5に記載のイオン透過性隔膜の製造方法。
【請求項7】
前記製膜溶液が、親水性無機材料と、有機結合材料と、有機溶剤とを含有することを特徴とする請求項5又は6に記載のイオン透過性隔膜の製造方法。
【請求項8】
前記水と有機溶媒の混合溶液における有機溶媒として、前記製膜溶液の有機溶剤と同一種類のものを使用することを特徴とする請求項7に記載のイオン透過性隔膜の製造方法。
【請求項9】
前記親水性無機材料が、フッ化カルシウムであることを特徴とする請求項7又は8に記載のイオン透過性隔膜の製造方法。
【請求項10】
前記有機結合材料が、ポリスルホンであることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のイオン透過性隔膜の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶剤が、N−メチル−2−ピロリドンであることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のイオン透過性隔膜の製造方法。
【請求項12】
前記製膜溶液中の溶剤を抽出した有機性繊維布を取り出して余分な抽出溶媒を絞る工程をさらに有することを特徴とする請求項5〜11のいずれかに記載のイオン透過性隔膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−255096(P2010−255096A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278669(P2009−278669)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)