説明

イグサ加工食品

【課題】 イグサに含まれる食物繊維を利用するとともに、より効果的に腸内環境を改善できるイグサ加工食品を提供する。
【解決手段】 イグサ加工食品は、イグサ粉末と、有胞子乳酸菌と、パパイヤ発酵エキスと、天然オリゴ糖とを含む。イグサ粉末は、イグサを熱湯に浸漬してブランチング処理し、熱風乾燥して所定の粒子サイズの粉末に粉砕したものである。パパイヤ発酵エキスは、パパイヤ発酵エキスが、パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを3.0〜3.8に調整したのち、得られた発酵熟成溶液を濾過し、濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖を加え、乾燥させて顆粒状に加工したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物原料を用いた機能性健康食品に関し、特に食物繊維の含有量が豊富で、腸内環境の改善を目指したイグサ加工食品(食用イグサを使用)に関する。
【背景技術】
【0002】
日本で畳の原材料として用いられているイグサはジュンカス属(Juncus)に分類される多年草の植物で、灯心草(とうしんそう)という生薬としても知られている。イグサには毒性がなく、抗菌薬・利尿薬・消炎薬・精神安定薬・不眠薬などの薬草としての効能があると言われている。
【0003】
イグサには食物繊維が豊富に含まれている。食物繊維には、排便の促進作用や、有害物質の除去作用などがあることが知られている。イグサに含まれる食物繊維を摂取するために、イグサを乾燥粉末にした食品がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の食品は、イグサを水洗し、細切したものをブランチング処理し、乾燥させた後、粉砕して乾燥粉末としたものである。特許文献1には、この食品を、たとえば饅頭に入れたり、てんぷら用溶き衣に入たり、煎茶に入れたりして食物繊維を摂取することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−8219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の食品は、イグサに含まれる食物繊維を摂取しやすくするものであるが、食物繊維のみによる整腸効果は限定的なものになりがちである。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、イグサに含まれる食物繊維を利用するとともに、より効果的に腸内環境を改善できるイグサ加工食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明に係るイグサ加工食品は、イグサ粉末と、有胞子乳酸菌と、パパイヤ発酵エキスとを含み、
イグサ粉末が、イグサを熱湯に浸漬してブランチング処理し、熱風乾燥して所定の粒子サイズの粉末に粉砕したものであり、
パパイヤ発酵エキスが、パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させたのち、得られた発酵熟成溶液を濾過し、濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖を加え、乾燥させて顆粒状に加工したものであること
を特徴とする。
【0008】
このようなイグサ加工食品は、イグサ粉末に含まれる食物繊維による有害菌に対する抗菌作用および整腸作用と、有胞子乳酸菌による腸内の善玉菌の増殖・活性化作用と、パパイヤ発酵エキスによるデンプン・タンパク質・脂質の分解除去作用、腸内の善玉菌の増殖作用および病原菌に対する抵抗力の強化作用とが相乗効果を発揮し、優れた腸内環境の改善効果を示す。
【0009】
詳しくは、イグサは抗菌性に優れ、アルカリ性域でも比較的安定しているが、とくに酸性域で安定し、その抗菌性成分は胃の中で失われず、腸内まで達する。そして、腸内(主に大腸を指すが,小腸を含む)で悪玉菌に対して抗菌作用を発揮するが、人体にとって有用な働きをする善玉菌に対しては効果を発揮しない。すなわち、イグサは食中毒菌(サルモレラ菌、ブドウ球菌、大腸菌O−157など)や腐敗細菌(バチルス菌、ミクロコッカス菌など)には抗菌作用を発揮するが、腸内に生息する善玉菌(ビフィズス菌など)には効果を発揮しない。この作用は、抹茶由来のポリフェノールの抗菌スペクトルに類似する。また、有胞子乳酸菌は腸内への到達率が普通の乳酸菌に比べて非常に高いので、生きたまま腸内へ送り込まれて整腸に有用な働きをする一方、天然オリゴ糖が消化されずに大腸内まで達し主に腸内に生息している常在ビフィズス菌の栄養源になる。これにより、腸内の善玉菌が活性化され、かつ増殖されて整腸作用が促進される。同時に,パパイヤ発酵エキスがリパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼなどの消化酵素を活性し、残渣物(残留の脂質、デンプン、タンパク質など)を分解したのち、イグサのハニカム構造繊維の水溶性(3.7%)と不溶性(59.3%)による広大な面積をもつ吸着作用で残留分解物を吸着し排泄される。こうして、腸内の悪玉菌除去と腐敗の元になる腸内残留物の分解除去により腸内善玉菌の増殖がスムーズに行われる。この結果、善玉菌は理想的な腸内環境(腸内フローラ)を形成する。善玉菌が増えて腸内環境が改善され、腸内の栄養分や水分の吸収には欠かせない細胞エアムコサが活性する。また、上記のようにして、残留物の排泄除去が促進されるが、具体的には、排便回数が増え、排便量が増えることから明らかである。
【0010】
まず、イグサ粉末の整腸作用について、イグサの一般的な化学組成(下記の表1)に基づき説明する。表1からわかるように、イグサには食物繊維63%という高い割合で含まれている。これは、レタスの40倍、一般的な青汁に使用されているケールの1.5倍の含有量である。
【0011】
【表1】

ここで、一般的な青汁原料であるケールとイグサとの比較を下記の表2に示すが、イグサは活性酸素消去能がケールの5倍以上と非常に高い。
【0012】
【表2】

したがって、イグサ粉末を含むイグサ加工食品は、この豊富な食物繊維による排便の促進作用を有する。排便が促進される結果、発ガン物質が腸内壁と接触する時間を短くすることができ、大腸がんの発生抑制効果が期待できる。イグサ粉末は、ブランチング処理と熱風乾燥により品質が維持されるとともに、灰汁が除去されて味覚的に摂取しやすくてよい。
【0013】
このようなイグサ粉末に加えて、イグサ加工食品は有胞子乳酸菌を含む。有胞子乳酸菌は、乳酸菌が胃酸では溶けない胞子等で包まれている。したがって、有胞子乳酸菌は胃酸で死滅することなく高い確率で生きた状態で腸内へ到達する。腸内に達した乳酸菌は、腸内で有用な働きをする善玉菌(たとえばビフィズス菌)を増殖させ、活発に活動させる。その結果、腸内でのビタミン合成、消化・吸収を促進し、免疫力を強化するため、多くの現代病の予防と解消に有効となる。また、有胞子乳酸菌は、食品へ添加したときの安定性も大きい。したがって、このような有胞子乳酸菌を含むイグサ加工食品は、イグサ粉末による排便の促進作用に加えて、腸内浄化作用、免疫機能の活性化、食物の栄養の吸収促進作用等をも有するため、排泄機能障害の是正や、腸内の善玉菌が優位になるよう腸内環境を改善する機能に優れている。
【0014】
さらに、発明のイグサ加工食品に含まれるパパイヤ発酵エキスは、発酵食品であるため酵素活性を高め、アミラーゼ活性、プロテアーゼ活性およびリパーゼ活性をなし、新陳代謝を活発にする効能を有する。酵素活性が高いと、タンパク質や脂質等の分解除去が促進されるという利点がある。また、発酵に乳酸菌を用いているので、乳酸、酢酸などの有機酸が豊富につくられる。この有機酸によって腸内が酸性になり、腸のぜん動運動が活発化されて便秘などによる腸内環境の悪化を防止する。さらに、乳酸菌は腸内細菌のなかの善玉菌を増やし、整腸作用や病原菌に対する抵抗力を強化する作用を有する。このようなパパイヤ発酵エキスをイグサ粉末、有胞子乳酸菌とともに含むイグサ加工食品は、それぞれのもつ整腸作用や腸内の善玉菌増殖作用が相乗的に作用し、優れた腸内環境の改善効果を示す。
【0015】
上記したイグサ加工食品は、粉末状に加工されているのでお湯に溶かすなどして飲料として容易に摂取することができる。また、携帯して日常的・継続的に摂取することが可能で、その結果腸内環境を常に良い状態に保てる。
【0016】
請求項2に係るイグサ加工食品は、プロバイオティクスとしての天然オリゴ糖を含むことを特徴とする。
【0017】
天然オリゴ糖は胃で消化されずに大腸にまで達し、乳酸菌の栄養源になる。したがって、天然オリゴ糖を含むイグサ加工食品は、腸内に到達した有胞子乳酸菌の栄養源となり、乳酸菌による腸内の善玉菌増殖作用をさらに効率的に高めることができる。また、天然オリゴ糖は虫歯の原因になりにくく低カロリーでもあるため、天然オリゴ糖を含むイグサ加工食品は毎日摂取しても虫歯や肥満になる心配がない。天然オリゴ糖として、たとえば、大豆オリゴ糖やラフィノースがあげられる。
【0018】
請求項3に係るイグサ加工食品は、さらに乳糖を含むことを特徴とする。
【0019】
乳糖は乳酸菌により発酵するため、このイグサ加工食品を摂取すると有胞子乳酸菌が乳糖を腸内で発酵させることができ、腸内の善玉菌をさらに活性化させ、腸内環境の改善をよりいっそう促進する。
【0020】
請求項4に係るイグサ加工食品は、前記パパイヤ発酵エキスが、パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを3.0〜3.8に調整したのち、得られた発酵熟成溶液を濾過し、濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖とを,濾液:乳酸菌:ブドウ糖とを重量比で12;1:1の比率で加え、乾燥させて顆粒状に加工したものであることを特徴とする。
【0021】
このように製造されたパパイヤ発酵エキスは、上記したpHの範囲に調製して発酵させているので、体温程度の発酵温度でも雑菌による汚染(コンタミネーション)を防ぐことができる。また、このようなpHと発酵温度はパン酵母がキモトリプシンやトリプシンなどの酵素を分泌する環境として最も適当であり、より高濃度の酵素を得ることができ、消化促進効果に優れたパパイヤ発酵エキスが得られる。しかも、体温程度の温度で発酵させるため、生のパパイヤに含まれているタンパク質分解酵素であるパパインやキモパパイン、カルパイン等が活性を失わずにすむ。したがって、このように製造されたパパイヤ発酵エキスを含むイグサ加工食品を摂取すると、上記した整腸作用や腸内の善玉菌の増殖が促進されて腸内環境が改善されるという利点に加えて、高い酵素活性による消化・吸収促進効果が得られるという利点もある。なかでも、タンパク質分解酵素は、イグサ粉末に含まれるタンパク質を分解して体内に吸収しやすい大きさに変えるため、本発明に係るイグサ加工食品は、パパイヤ発酵エキスによってイグサ粉末の栄養成分を有効に活用することもできる。
【0022】
請求項5に係るイグサ加工食品は、抹茶粉末を含む。このようなイグサ加工食品は、抹茶の旨味と風味があるため摂取しやすい。毎日習慣的に摂取すれば、極めて高い活性酸素消去機能(図1いぐさ青汁参照)があり、より確実に継続して腸内環境の改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係るイグサ加工食品によれば、排便の促進による整腸作用と乳酸菌による腸内の善玉菌の増殖促進作用と、酵素(リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ)による分解除去促進作用とが相乗効果となって腸内環境の改善を図ることができ、健康維持に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のイグサ加工食品の実施品としてのいぐさ青汁および原料の食用イグサの活性酸素消去機能と他の野菜との比較を示すグラフである。
【図2】本発明のイグサ加工食品の原料である食用イグサの食物繊維量と他の野菜との比較を示すグラフである。
【図3】本発明のイグサ加工食品を2週間摂取した場合の排便効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るイグサ加工食品の実施形態について説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0026】
イグサ加工食品は、本実施形態では、水やお湯に溶かして飲用する粉末のいぐさ青汁および水で飲んだり水無でも飲んだりできる錠剤状製品で、この錠剤状製品は粉末のいぐさ青汁を固めて錠剤にしたものである.いずれの製品も、イグサ粉末、有胞子乳酸菌、パパイヤ発酵エキス、ラフィノース(天然オリゴ糖)、乳糖、抹茶粉末、ブドウ糖とからなる。
【0027】
イグサ粉末は、食用イグサ(通常、畑で無農薬栽培され、主に地下水を用いて生育される)をブランチング処理し、熱風乾燥して所定の粒子サイズの粉末に粉砕したものである。ブランチング処理では、イグサを100℃の熱湯に8分間(7〜9分程度でよい)湯通しする。この後、イグサを55℃で5時間熱風乾燥する。これらの処理により、イグサの変色や変性を抑制することができ、長期間にわたって品質を維持することができる。また、イグサに含まれる不要成分である灰汁が除去されるので、薬効成分のみを凝縮した粉末状食品を得ることができる。このように処理されたイグサを、回転ディスクに固定されたハンマーがケーシング内を高速回転して衝撃式粉砕を行う粉砕機を用いて、平均粒子径が20μm以下になるまで粉砕する。
【0028】
有胞子乳酸菌は、乳酸菌が確実に腸管に到達するように胞子に包まれたものである。
【0029】
パパイヤ発酵エキスは、以下の手順で製造する。まず、パパイヤの果肉にブドウ糖と純水を加えてミキサーで粉砕する。粉砕後、キモトリプシンやトリプシンを高濃度に分泌するパン酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ)と乳酸菌を適量添加する。この混合液を32.5〜37℃で1〜10日間発酵熟成させる。この際、必要に応じて混合液のpHを3.0〜3.8の範囲になるように調製する。このようにして得られた発酵液をフィルターで濾過し、得られた濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖を加える。濾液:乳酸菌:ブドウ糖の重量比でおおよそ12:1:1の比率で加え、25℃で1週間ほど発酵させてパパイヤ発酵エキスを得る。
【0030】
以上のイグサ粉末、有胞子乳酸菌およびパパイヤ発酵エキスを混合し,この混合液を低温乾燥させて顆粒状に加工し、プロバイオティクスとしての天然オリゴ糖であるラフィノースと、乳糖を加える。これにより、乳酸菌の働きをさらに活性化することができる。さらに、抹茶粉末とブドウ糖を適当量加えて味を調え、摂取しやすくする。
【0031】
このようにして得られたイグサ加工食品の栄養成分表示を下記表3に示す。
【0032】
【表3】

栄養成分表示(100g当たり)
このようにして得られたイグサ加工食品の実施品であるいぐさ青汁の活性酸素の消去機能を図1に示すが、g当たり68000単位と驚異的な数値を発揮し,本イグサ加工食品の飲用によって腸内の栄養分や水分の吸収には欠かせない細胞エアムコサの活性作用が生じる。本例(いぐさ青汁)では、抹茶粉末の混合割合はイグサ粉末に対し、おおよそ6:4の比率(重量比)である。なお、イグサ加工食品全体では、イグサ粉末は32〜45重量%、抹茶粉末は20〜32重量%の範囲で調整されるが、この場合、活性酸素の消去機能は、40000〜68000単位/gの範囲で変化する。
【0033】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。とくに、天然オリゴ糖としてラフィノースの代わりに大豆オリゴ糖を用いることも可能である。したがって、そうしたものも本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグサ粉末と、有胞子乳酸菌と、パパイヤ発酵エキスとを含み、
前記イグサ粉末が、イグサを熱湯に浸漬してブランチング処理し、熱風乾燥して所定の粒子サイズの粉末に粉砕したものであり、
前記パパイヤ発酵エキスが、パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させたのち、得られた発酵熟成溶液を濾過し、濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖を加え、乾燥させて顆粒状に加工したものであること
を特徴とするイグサ加工食品。
【請求項2】
請求項1において、天然オリゴ糖を含むことを特徴とするイグサ加工食品。
【請求項3】
請求項1または2において、乳糖を含むことを特徴とするイグサ加工食品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項において、前記パパイヤ発酵エキスが、パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを3.0〜3.8に調整したのち、得られた発酵熟成溶液を濾過し、濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖とを,濾液:乳酸菌:ブドウ糖とを重量比で12;1:1の比率で加え、乾燥させて顆粒状に加工したものであることを特徴とするイグサ加工食品。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項において、抹茶粉末を含むことを特徴とするイグサ加工食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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