説明

イソシアネートの製造方法及び製造装置

【課題】塩化カルバモイルの塩素及び一酸化炭素への再解離が低減されるか、又は未然に防ぎさえもする、対応するアミンをホスゲンと反応させることによりイソシアネートを製造する方法を提供する
【解決手段】上記課題は、ガス相中で、任意に、不活性ガスの存在下で、対応するアミンをホスゲンと反応させてイソシアネートを製造する方法であって、所定の条件を満たしてホスゲン及びアミンを最初に蒸発させ、その後にさらに反応温度に過熱し、過熱したホスゲン及びアミンを混合し、ホスゲン及びアミンをイソシアネートに転化する反応器へと供給する方法により解決される。更に、ガス相中で、任意に、不活性ガスの存在下で、対応するアミンをホスゲンと反応させることによりイソシアネートを製造する装置であって、アミンとホスゲンを混合する装置が通じている反応器と、ホスゲンとアミンを蒸発及び過熱させる所定の構成の装置と、を含む装置によっても解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス相中で、任意に、不活性ガスの存在下で、対応するアミンをホスゲンと反応させてイソシアネートを製造する方法であって、ホスゲン及びアミンを最初に蒸発させ、その後にさらに反応温度へと過熱し、過熱したホスゲン及びアミンを混合し、ホスゲン及びアミンをイソシアネートに転化する反応器へと供給する方法に関する。更に、本発明は、ガス相中で、任意に、不活性ガスの存在下で、対応するアミンをホスゲンと反応させることによりイソシアネートを製造する装置であって、アミンとホスゲンを混合する装置が通じている反応器と、ホスゲンとアミンを蒸発及び過熱する装置と、を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原則として、イソシアネートは液相ホスゲン化又はガス相ホスゲン化による対応するアミンのホスゲン化により製造することができる。ガス相ホスゲン化では、より高い選択性、有毒なホスゲンのより低い滞留、及びエネルギー量の低減が望まれている。
【0003】
ガス相ホスゲン化では、アミン含有反応物質流及びホスゲン含有反応物質流はそれぞれガス状態で混合される。アミン及びホスゲンは、対応するイソシアネートを提供するために、塩化水素(HCl)の放出を伴って反応する。アミン含有反応物質流は、通常、液相中に存在し、蒸発されなければならない。そして、適宜に、ホスゲン含有流と混合される前に過熱される。
【0004】
ガス相中での対応するイソシアネートの製造方法は、EP−A1319655又はEP−A1555258等に記載されている。
【0005】
アミンとホスゲンの蒸発及び反応温度への過熱は、要求される特定の反応物流の全量の蒸発、又は残留する濃縮画分の蒸発器注入口への再利用を伴う液体流の部分的な蒸発のどちらかにより実施される。
【0006】
しかしながら、対応する化学平衡によると、ホスゲンの過熱の場合には特に、塩化カルバモイルの塩素及び一酸化炭素への再解離があるかもしれない。例えば、“Atkinsonら、J.Chem.Soc.Trans.117、II巻、1920年、1410頁”によると、210℃及び標準圧力下で、約0.2%のホスゲンが解離形態で存在する。しかしながら、355℃では既に約10%が解離形態で存在する。しかしながら、ホスゲン流に存在する塩素は、イソシアネートが360〜450℃の範囲の反応温度で反応器中で塩素化するという不具合を有する。しかしながら、これは品質に問題をもたらす。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの製造では、塩素化した成分は製品の色の問題に対する責任を負う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP−A1319655
【特許文献2】EP−A1555258
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Atkinsonら、J.Chem.Soc.Trans.117、II巻、1920年、1410頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、塩化カルバモイルの塩素及び一酸化炭素への再解離が低減されるか、又は未然に防ぎさえもする、対応するアミンをホスゲンと反応させることによりイソシアネートを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的は、ガス相中で、任意に、不活性媒体の存在下で、対応するアミンをホスゲンと反応させることによりイソシアネートを製造する方法であって、ホスゲンとアミンを最初に蒸発させ、その後に反応温度へとさらに過熱し、過熱したホスゲンとアミンを混合してこの過熱したホスゲンとアミンをイソシアネートに転化する反応器へと供給する方法によって達成される。その方法は、以下の特徴:
(a)300℃を超える温度でのホスゲンの滞留時間を5秒未満とすること、
(b)ホスゲンと接触する伝熱面の温度を、設定されるホスゲンの温度を20K以下の範囲で超える温度とすること
の少なくとも一つを有する。
【発明の効果】
【0011】
高温を有する装置部分でのホスゲンの滞留時間、すなわち、300℃を超える温度で2.5秒未満、好ましくは2.5秒未満が、結果として低い温熱ストレスが実現されるために、ホスゲンの塩素及び一酸化炭素への解離を低減することができるという利点を有する。
【0012】
300℃を超える温度で5秒未満、好ましくは、2.5秒未満のホスゲンの滞留時間は、例えば、ホスゲンの比較的急速な過熱により達成される。比較的急速な過熱は、例えば、750 1/mを超える容積に対する蒸発器表面積の比を有する一般的な熱交換器で達成される。750 1/mを超える容積に対する蒸発器表面積の比は、急速な熱伝達を達成し、それゆえホスゲンの急速な加熱を達成する。そうして反応物質流における塩素含量を最小化させるために、同様に、これは滞留時間を低減させ、ホスゲンの一酸化炭素及び塩素への解離を低下させる。
【0013】
そのうえ、ホスゲンの塩素及び一酸化炭素への解離は上昇する温度とともに増大するので、ホスゲンを500℃未満の温度で、好ましくは450℃未満の温度で、特に、400℃未満の温度で過熱することが好ましい。同様に、この指標は、ホスゲンの塩素及び一酸化炭素への解離を低減させることを許す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
イソシアネートを提供するホスゲンとアミンの反応のために要求される温度は、通常、250〜550℃の範囲であり、特に、300〜500℃の範囲である。反応が実施される圧力は、好ましくは、0.3と3バール絶対圧の間の範囲であり、より好ましくは、0.8から3.0バール絶対圧の範囲である。
【0015】
要求される反応温度への加熱は、好ましくは、ホスゲンとアミンの混合に先立って起こる。よって、イソシアネートの解離又はさらなる反応を未然に防ぐために、反応副産物を避けるために、反応温度での反応混合物の短い滞留時間が望ましい。
【0016】
ホスゲンとアミンが混合される前に、例えば、電気加熱により、燃料の燃焼による直接若しくは間接の加熱により、又は他の加熱媒体を有する熱交換により、それらの加熱を行うことができる。その加熱が燃料の燃焼により行われる場合、天然ガス等の一般的な燃料ガスが用いられる。加熱媒体での加熱のための好適な例は、熱媒体油又は他の蒸気を含む。蒸気の使用の場合、異なる圧力及び異なる温度を有する蒸気を使用することができる多段階加熱が典型的に行われる。しかしながら、ホスゲンとアミンはその後典型的に、例えば、電気加熱、又は燃料の燃焼による間接若しくは直接の加熱により熱媒体油で過熱される。ホスゲンを蒸発し、且つアミンを加熱するために蒸気が用いられる場合、その蒸気の蒸気圧は、例えば、40〜100バールの範囲である。過熱蒸気が用いられない限り、これは、250〜311℃の範囲でその蒸気の温度の上昇をもたらす。
【0017】
ホスゲンとアミンの蒸発及び過熱の過程で、ホットスポットは避けるべきである。それゆえ、加熱媒体を用いることにより蒸発及び過熱を行うことが特に好ましい。
【0018】
イソシアネートを製造するためのアミンのホスゲン化のために用いられる反応器は、当業者にとって公知である。一般に、使用される反応器は管型反応器である。反応器中で、そのアミンは対応するイソシアネート及び塩化水素を提供するためにホスゲンと反応する。一般に、そのホスゲンは過剰量で添加されるので、反応器中で形成する反応ガスのみならず、形成したイソシアネート及び塩化水素もまたホスゲンを含むほどである。
【0019】
イソシアネートの製造のために使用することができるアミンは、モノアミン、ジアミン、トリアミン、又はより高官能性のアミンである。モノアミン又はジアミンを用いることが好ましい。使用されるアミンにより、対応するモノイソシアネート、ジイソシアネート、トリイソシアネート、又はより高官能性のイソシアネートが形成される。本発明に従う方法によりモノイソシアネート又はジイソシアネートの製造が提供されることが好ましい。
【0020】
ジアミン及びジイソシアネートは脂肪族、脂環式、又は芳香族であってもよい。
【0021】
脂環式イソシアネートは、少なくとも一種の脂環式環系を含むものである。
【0022】
脂肪族イソシアネートは、もっぱら直鎖又は分岐鎖に結合したイソシアネート基を有するものである。
【0023】
芳香族イソシアネートは、少なくとも一種の芳香族環系と結合した少なくとも一種のイソシアネート基を有するものである。
【0024】
“(環式)脂肪族イソシアネート”の用語は、以後、脂環式及び/又は脂肪族のイソシアネートに用いられる。
【0025】
芳香族モノイソシアネート及びジイソシアネートの例は、フェニルイソシアネート、モノマーのメチレン2,4’−及び/又は4,4’−ジ(フェニルイソシアネート)(MDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、及びナフチル1,5−若しくは1,8−ジイソシアネート(NDI)等の、好ましくは6〜20個の炭素原子を有するものである。
【0026】
(環式)脂肪族ジイソシアネートの例は、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、デカメチレン1,10−ジイソシアネート、ドデカメチレン1,12−ジイソシアネート、テトラデカメチレン1,14−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナトペンタン、ネオペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの誘導体、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネート、又はテトラメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、及びまた、
3(又は4),8(又は9)−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン異性体混合物、及びまた、
1,4−,1,3−若しくは1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−若しくは2,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−若しくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,4−若しくは2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン等の脂環式イシソアネートである。
【0027】
好ましい(環式)脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及び4,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンである。1,6−ジイソシアナトヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5−ジイソシアナトペンタン、及び4,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを用いることが特に好ましい。
【0028】
芳香族ジイソシアネートの例は、トリレン2,4−,2,6−ジイソシアネート、メチレンジフェニルイソシアネート、又はそれらの異性体混合物である。
【0029】
対応するイソシアネートを提供するための反応のための本発明に従った方法で使用されるアミンは、アミン、対応する中間体、及び対応するイソシアネートが、そのアミンのために選択された反応条件下でガス形態で存在するものである。その反応の間、その反応条件下で最大で2モル%の範囲で、より好ましくは最大1モル%の範囲で、最も好ましくは最大0.5モル%の範囲で分解するアミンが提供されることが好ましい。ここで、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族又は脂環式炭化水素に基づくアミン、特に、ジアミンであることが特に好適である。それらの例は、1,6−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ビス(アミノメチル)−シクロヘキサン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)、及び4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンである。1,6−ジアミノヘキサン(HDA)及び1,5−ジアミノペンタンを用いることが好ましい。
【0030】
同様に、本発明による方法のために有意な分解を伴うことなくガス相に変換することができる芳香族アミンを用いることも可能である。好ましい芳香族アミンの例は、2,4−若しくは2,6−異性体又はそれらの混合物としての、例えば、80:20〜65:35(モル/モル)の混合物等のトリレンジアミン(TDA)、ジアミノベンゼン、2,6−キシリジン、ナフチルジアミン(NDA)、及び2,4’−若しくは4,4’−メチレン(ジフェニルジアミン)(MDA)、又はそれらの異性体の混合物である。これらの中で、ジアミンが好ましく、2,4−及び/又は2,6−TDA、又は2,4’−及び/又は4,4’−MDAであることが特に好ましい。
【0031】
モノイソシアネートを製造するために、同様に、脂肪族、脂環式、又は芳香族アミン、典型的にはモノアミンを使用することができる。好ましい芳香族モノアミンは、特に、アニリンである。
【0032】
ガス相ホスゲン化では、その目的は、その反応の過程で生じる化合物、すなわち、反応物流(アミン及びホスゲン)、中間体(特に、中間体として生じるモノ−及びジカルバモイル塩化物)、最終生成物(イソシアネート)、及び計量投入される任意の不活性化合物が、その反応条件下でガス相に残留することである。これらの又は他の化合物はガス相から、例えば、反応壁又は他の装置の構成成分に堆積しうる。これらの堆積物は望ましくないことに熱伝達又はその構成成分の流れを問題に変え得る。結果として生じるアミン塩酸塩は容易に析出し、且つ再蒸発が非常に困難であるので、これは遊離のアミノ基及び塩化水素から形成されるアミン塩酸塩の発生に特に当てはまる。
【0033】
管型反応器の使用に加えて、平板反応器等の基本的に立方状の反応室を用いることもまた可能である。反応器における任意の他の断面もまた可能である。
【0034】
副産物の形成を防ぐために、ホスゲンを過剰量で供給することが好ましい。その反応のために要求されるアミンの割合のみを供給するために、アミンを不活性ガスと混合することが可能である。アミン中の不活性ガスの割合を通じて、アミンとホスゲンの供給口の与えられた形状のために、供給されるアミンの量を調節することができる。添加される不活性媒体は反応室中でガス形態で存在し、且つ反応の過程で生じる化合物と反応しない。使用される不活性媒体は、窒素、ヘリウム若しくはアルゴン等の希ガス、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン等の芳香族化合物、二酸化炭素、又は一酸化炭素で良い。しかしながら、不活性媒体として窒素及び/又はクロロベンゼンを用いることが好ましい。
【0035】
しかしながら、あるいは、例えばホスゲンの大きすぎる過剰を避けるために、ホスゲンに不活性ガスを添加することもまた可能である。
【0036】
一般に、不活性ガスは、アミン又はホスゲンに対する不活性媒体のガス量の割合が30に対して0.0001未満、好ましくは15に対して0.01未満、より好ましくは5に対して0.1未満となるような量で添加される。
【0037】
望まざる副産物の形成を低下させ、又は防ぐために、及びまた、発生するイソシアネートの分解を抑制するために、反応ガスは反応後直ちに急冷で冷却される。このために、液体の急冷媒体が好ましくは添加される。急冷媒体の加熱又は蒸発の結果として、それは熱を吸収し、そして反応ガスの急速な冷却をもたらす。
【0038】
ホスゲンとアミンは、例えば、アミン及びホスゲンを反応器に供給する混合ノズルで混合される。あるいは、アミン及びホスゲンが混合され、その後さらに反応器へ注ぐ混合室への好適なノズルを介してアミン及びホスゲンを供給することもまた可能である。しかしながら、混合ノズルを用いることが好ましい。
【0039】
高温での所望の短い滞留時間、すなわち、300℃を超える温度で5秒未満、を達成するために、マイクロ若しくはミリの熱交換器、管束熱交換器、流動床熱交換器、マイクロ波過熱器、又は放熱器等の様々な種類の熱交換器を用いることができる。750 1/mを超える単位容積当たりの蒸発器の比表面積を有する熱交換器は、そのような熱交換器での高温でのホスゲンの滞留時間を短くすることができるので、特に好ましい。加えて、交換器の表面とホスゲン流の間の温度差を最小にすることができる。ホスゲンがマイクロ熱交換器の閉塞をもたらす堆積物をほとんど形成しないので、マイクロ熱交換器を用いることが特に有利である。
【0040】
しかしながら、ホスゲンの蒸発及び過熱のために、少なくとも一種の管束熱交換器が用いられることが好ましい。管束熱交換器は乱流を生成する内部若しくは付属品を備えていても良く、又は備えていなくても良い。ホスゲンが管束熱交換器の管に送られるとき、好適な内部は、曲った部分、増加した壁の凹凸、管内伝熱促進エレメント、網目状ネットワーク、ねじられたテープ、又は当業者に公知の他の乱流発生器等である。もしホスゲンがその管の方々を流れるようにする場合は、フィンやリブ等を使用することができる。乱流を発生する内部の使用は必然の壁の過熱及びホスゲンを過熱するための要求される滞留時間を低下させる。このように、ホスゲン流への温度ストレスは降下する。
【0041】
一実施の形態では、横断流を有する放熱器系がホスゲンの過熱のために用いられる。横断流を有する放熱器系の管は、肋材を有するか、又は肋材を有することなく形成されて良い。複数の放熱器系での過熱を段階的に実施することが考えられる。流れの均質化のために、それぞれの放熱器系の間に充填物を組み込むことも可能である。
【0042】
同様に、ホスゲンの蒸発と過熱のために好適なものは、らせん管である。らせん管で発生する二次流は高い熱伝達率をもたらす。よって、低い壁温度及び短い滞留時間をもたらす。また、熱伝達の改良のために、らせん管中に乱流発生器等の付加的な内部を使用することも可能である。
【0043】
また、管束熱交換器に加えて、平板熱交換器を用いることもできる。この場合、特に、熱平板熱交換器が用いられる。熱平板熱交換器を使用する場合も、熱伝達を強化することができるので、内部を用いることにより壁温度及び滞留時間を低下させることができる。
【0044】
さらに好適な熱交換器は、例えば、流動床熱交換器、マイクロ波過熱器、及び放熱器である。これらのデザインもそれぞれ低い壁過熱と短いホスゲンの滞留時間を許すので、ホスゲンの塩素及び一酸化炭素への解離を低下させることができる。
【0045】
ガス相で、任意に、不活性媒体の存在下で、対応するアミンのホスゲンとの反応によりイソシアネートを製造するために好適な装置は、反応器、アミンとホスゲンを混合する反応器中に通じている装置、並びにホスゲンとアミンの蒸発及び過熱のための装置を含む。ホスゲンの蒸発及び/又は過熱のための装置は、750 1/mを超える容積に対する蒸発器表面積の比を有する熱交換器である。
【0046】
既に上述したように、750 1/mを超える容積に対する蒸発器表面積の比を有する熱交換器はホスゲンの300℃を超える温度での5秒未満の滞留時間を可能とする。このことがホスゲンの一酸化炭素と塩素への解離の低下、及び製造されるべきイソシアネートの生成物品質の改良を許すので、副産物の形成が塩素との反応により低下される。
【0047】
750 1/mを超える容積に対する蒸発器表面積の比を有する好適な熱交換器は、例えば、ミリ又はマイクロ熱伝達である。
【0048】
しかしながら、ホスゲンの蒸発及び/又は過熱のために、750 1/mを超える容積に対する蒸発器表面積の比を有する管束熱交換器を用いることが好ましい。適切な比は、管束熱交換器の管を通して、管の管直径及び管の任意の内部を通して過熱されるホスゲン流の場合に達成することができる。熱伝達を改良するために、既に上述したように、乱流発生器が管中に配置される場合が好ましい。
【0049】
高温でのホスゲンの滞留時間を低下させるために、ホスゲンの蒸発と過熱が同一の熱交換器で行われる場合が好ましい。これは、それぞれの蒸発器の間の配管を不要とし、且つその距離を短くすることを許す。これは、同時に、滞留時間の低下をもたらす。ホスゲンのなだらかな蒸発及び過熱のために、熱交換器は、ホスゲンが段階的に蒸発し、且つ過熱する複数の放熱器系を有する場合が好ましい。放熱器系は異なる加熱媒体で操作することができる。例えば、ホスゲンの蒸発のために、約4バールの圧力を有する蒸気が熱媒体として流れる放熱器系を用いることができる。これは、例えば、16から40バールの範囲の圧力の蒸気が流れるさらなる放熱器系が下流に続いていても良い。16から40バールの範囲の圧力の蒸気は4バールの蒸気より高い温度を有し、よって、これはさらなる加熱を達成する。これは、例えば、熱媒体油流を通したさらなる放熱器系が下流に続いて配置されても良い。一般に、熱媒体油の使用は、蒸気の使用より高い温度を許す。また、例えば、熱媒体としてイオン性の液体又は溶融塩を用いることもできる。熱媒体の使用の利点は、ホスゲンの塩素と一酸化炭素への急速な解離をもたらすホットスポットが避けられ、それゆえ、局部過熱が避けられることである。
【0050】
また、ホスゲンを過熱する装置の下流に直接ホスゲンとアミンを混合する装置が続いて配置される場合は、滞留時間のさらなる低下が達成される。こうして、同様に流れの管路を不要とすることができ、それゆえ、反応温度でのホスゲンのフロー時間及び滞留時間を低下させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス相中で、任意に、不活性媒体の存在下で、対応するアミンをホスゲンと反応させることによりイソシアネートを製造する方法であって、
ホスゲン及びアミンを最初に蒸発させ、その後反応温度へとさらに過熱し、
過熱したホスゲン及びアミンを混合して当該ホスゲン及びアミンをイソシアネートへと転化する反応器に供給し、
以下の特徴:
(a)300℃を超える温度でのホスゲンの滞留時間を5秒未満とすること、
(b)ホスゲンと接触する伝熱面の温度を、設定されるホスゲンの温度を20K以下の範囲で超える温度とすること
の少なくとも一つを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
ホスゲンを、マイクロ若しくはミリ熱交換器、管束熱交換器、流動床熱交換器、マイクロ波過熱器、又は放熱器中で蒸発させ、及び/又は過熱する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホスゲンの蒸発及び/又は過熱を、同一の装置で実施する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ホスゲンの蒸発及び過熱を、複数の段階で実施する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
ホスゲンを反応器に過剰量添加する請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応器に添加するアミンを不活性ガスと混合する請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
ガス相中で、任意に、不活性媒体の存在下で、対応するアミンをホスゲンと反応させることによりイソシアネートを製造する装置であって、
アミンとホスゲンを混合するための装置が通じている反応器と、
ホスゲンとアミンを蒸発及び過熱させる装置と、を有し、
ホスゲンを蒸発及び/又は過熱させる装置が750 1/mを超える容積に対する蒸発器表面積の比を有する熱交換器であることを特徴とする装置。
【請求項8】
ホスゲンを蒸発及び/又は過熱させる装置が、ミリ若しくはマイクロ熱交換器、流動床熱交換器、マイクロ波過熱器、又は放熱器である請求項7に記載の装置。
【請求項9】
蒸発及び/又は過熱させる装置が管束熱交換器である請求項7に記載の装置。
【請求項10】
ホスゲンが管束熱交換器の管中を流れ、乱流発生器が当該管中に配置されている請求項9に記載の装置。
【請求項11】
同一の熱交換器が、ホスゲンを蒸発及び過熱させるために用いられる請求項7〜10の何れか1項に記載の装置。
【請求項12】
熱交換器が、ホスゲンを段階的に蒸発且つ過熱する複数の放熱器系を有する請求項11に記載の装置。
【請求項13】
ホスゲン及びアミンを混合する装置が、ホスゲンを過熱させる装置の下流に直接続いて配置されている請求項7〜12の何れか1項に記載の装置。

【公表番号】特表2012−520853(P2012−520853A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500253(P2012−500253)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053527
【国際公開番号】WO2010/106131
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】