説明

イナートガス貯蔵・供給システムおよび方法

【課題】
バラストタンクにイナートガスを加圧貯蔵し、貨物タンクに供給して有効に貨物タンクの防爆が図れるイナートガス貯蔵・供給システムおよび方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
バラスト水を貯えるバラストタンク3と、このバラストタンク3より容積を大きく設定した貨物タンク2と、イナートガスを発生させるイナートガス発生装置1と、イナートガスを加圧するイナートガス加圧装置13と、このイナートガス加圧装置13で加圧されたイナートガスをバラストタンク3に加圧貯蔵するバラストタンクイナートガス配管系統12と、バラストタンク3に加圧貯蔵されたイナートガスを貨物タンク2に供給するイナートガス連通系統18とを備え、貨物の荷揚げ時にバラストタンク3に貯蔵したイナートガスとイナートガス発生装置1からのイナートガスを貨物タンク2に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばイナートガス貯蔵・供給システムおよび方法に係り、特にバラストタンクを用いて貨物タンクにイナートガス(不活性ガス)を供給するイナートガス貯蔵・供給システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンカーの荷揚げにあたっては、船舶に搭載したカーゴポンプ(貨油ポンプ)を使っての荷揚げが通常となっている。荷揚げにより負圧になった貨物タンク(カーゴホールド)には防爆の必要性からイナートガスを送り込む必要がある。
【0003】
イナートガスの発生方法については、(1)ボイラー燃焼排ガスをスクラバー洗浄する(水などの液体を洗浄液として、排ガス中の粒子を洗浄液の液滴や液膜中に捕集して分離することで排ガスを洗浄する)ことで得る方式(Inert System)、(2)専用のオイルバーナーにより燃焼排ガスを作り、イナートガスとする方式(Inert Gas Generator System:IGG)、(3)窒素ガス生成装置を用いて、電力を利用して大気から窒素を得る方式(Nitorogen Gas Generator System:NGG)がある。
【0004】
原油タンカーでは、上記(1)の方法を採り、ボイラーでイナートガスを発生させる際に同時に得られる蒸気のエネルギーにより、蒸気タービンを回してカーゴポンプを作動させるのが一般的である。船舶の停泊中に必要な電力は陸上電力を使うことが指向されているが、原油荷揚げについてはイナートガス発生時にボイラーの余剰エネルギーが得られることと、揮発した原油に電気火花等が点火した場合の被害の拡大防止の観点から、陸上電力を使用しないことが多かった。
【0005】
また、(2)の方式では、カーゴポンプの駆動はイナートガス発生源の専用のオイルバーナーとは別の電気エネルギーで実施するため、船舶に搭載する発電機の数も増す必要があった。カーゴポンプでの荷揚げは、傭船料との関係から短時間で行う必要があり、単位時間当たりの油流量(例えば8000m3/h)の大量性が求められるため、発電機も数を増しピーク負荷に対応する必要があり、コスト面や占有スペース面、重量増加面など課題が多かった。
【0006】
また(3)の方式では、エネルギー源は電力に統一できるが、窒素発生装置は比較的小型のものしか市場に存在しないため、原油荷揚げに当たり一度に大量に窒素ガスを供給することが困難であった。たとえ、窒素ガス生成装置を数多く並べて対応するにしても、(2)と同様な課題を有していた。
【0007】
また、貨物タンクに防爆の目的でイナートガスを供給することに関し、特許の分野においては、例えば、特許文献1、2、3に示すような提案されてきた。
【0008】
特許文献1に開示されるのは、液体窒素を蒸発させてバラストタンクに防食用不活性ガスとして供給するが、一旦、バラストタンクに貯えた窒素ガスを貨油タンク(貨物タンク)に防爆用不活性ガスとして供給する、また逆に貨油タンクに貯えた防爆用不活性ガスをバラストタンクに供給し、防食用不活性ガスとして利用するという技術的思想のものである。すなわち、バラストタンクと貨油タンクの間で、防爆用不活性ガスあるいは防食用不活性ガスを相互に利用したというものである。
【0009】
特許文献2に開示されるのは、一方のウォーターバラストタンク(バラストタンク)に海水を満たすと共に、他方のウォーターバラストタンクにイナートガスを備蓄し、トッピングアップが必要なときに開閉弁を開放し、他方のバラストタンクからカーゴオイルタンクに海水の自重を利用してイナートガスを送り込むという技術的思想のものである。なお、イナートガスの加圧手段としては水のヘッド差を利用し、ウォーターバラストタンクからカーゴオイルタンクにイナートガスを送り込んでいる。
【0010】
特許文献3に開示される技術的思想は、バラストタンクと縦隔壁板を隔てて設けた貨油タンクに、不活性ガス供給弁を開放して、不活性ガス導入手段から供給される不活性ガスを、バラストタンクを経て供給するものであり、バラストタンクの利用により、貨油タンクに外気及び不活性ガスを給気する装置の簡略化を達成しているものである。
【0011】
これらの従来技術は、原油等を積載する貨物タンクにイナートガスを供給するものであるが、バラストタンクに加圧したイナートガスを蓄え、容積の大きな貨物タンクに供給する技術思想は開示されていない。また、イナートガスの貨物タンクへの供給時にバラストタンク用のイナートガス発生手段を同時運転し、バラストタンクの加圧貯蔵したイナートガスとイナートガス発生手段で発生させたイナートガスを貨物タンクに供給する技術思想も開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−115887号公報
【特許文献2】特開平10−250677号公報
【特許文献3】特開平6−312686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願はこうした従来技術上の課題を解決することを企図したものであり、バラストタンクにイナートガスを加圧貯蔵し、貨物タンクに供給して有効に防爆が図れるイナートガス貯蔵・供給システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、本発明の請求項1に係るイナートガス貯蔵・供給システムは、バラスト水を貯えるバラストタンクと、このバラストタンクより容積を大きく設定した貨物タンクと、イナートガスを発生させるイナートガス発生手段と、このイナートガス発生手段で発生させたイナートガスを加圧するイナートガス加圧手段と、このイナートガス加圧手段で加圧された前記イナートガスを前記バラストタンクに加圧貯蔵する加圧貯蔵手段と、前記バラストタンクに加圧貯蔵されたイナートガスを前記貨物タンクに供給する供給制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、バラストタンクとは、たとえば船舶や浮体等に係るバラスト水を貯水する水密区画を指す。なお、バラストタンクの寸法、容積、材質或いは設置場所等に制限はない。
【0016】
また貨物タンクとは、たとえば貨物を積載する船倉等を指す。貨物タンクに積載する貨物はたとえば原油、精製油、液化石油ガス、アルコール、メタンハイドレート、石炭、穀物、木材チップ、粉体等のイナートガスを用いた防爆が必要とされるあらゆる貨物を含める。
【0017】
またイナートガスとは、たとえば化学反応性の低い不活性ガスや燃焼ガスあるいは燃焼ガスを処理したガス類を指し、窒素ガス、炭酸ガス(CO2)、またヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、またオイルバーナーの燃焼排ガス、ボイラー燃焼排ガスをスクラバー洗浄処理したガスやこれらの混合ガス等を指す。
【0018】
イナートガス発生手段とは、イナートガスを発生させる機能を有する装置、機械、器具、機構等であり、たとえば窒素や炭酸ガスを貯蔵するタンクやボンベ、ボイラー燃焼ガスをスクラバー洗浄して得る装置、専用のオイルバーナーにより燃焼ガスを作る装置、大気から窒素を得る窒素ガス生成装置等を指す。
【0019】
イナートガス加圧手段とは、イナートガス発生手段で発生させたイナートガスを加圧する、たとえば高圧のガス類貯蔵タンクやボンベ、燃焼ガス類を加圧するコンプレッサやブロワ等を指す。
【0020】
また、バラストタンクに加圧貯蔵する加圧貯蔵手段とは、加圧されたイナートガスをバラストタンクに貯蔵するに当たって機能する装置、機械、器具、機構等であり、たとえば減圧弁、圧力制御弁、開閉弁、リリーフ弁や配管類、また圧力調整や貯蔵調整を行う装置等を指す。
【0021】
また、供給制御手段は、バラストタンクに貯蔵されたイナートガスを貨物タンクに供給するに当たり機能する装置、機械、器具、機構や制御部品、制御装置、プログラム等を指し、たとえば供給開始を指示あるいは検出する設定器やセンサ、経路を制御するバルブ類、貨物タンクへの供給状況を検出するセンサ類、これらを制御する制御器等を指す。
【0022】
上記のように構成されることで、バラストタンクよりも容積を大きく設定した貨物タンクに、バラストタンクに加圧貯蔵されたイナートガスを供給することで、大量のイナートガスを供給できる。また、イナートガス発生手段が小型のものであっても、時間をかけて予めバラストタンクに大量にイナートガスを貯蔵することが可能となる。
【0023】
また、上記の構成に係るイナートガス貯蔵・供給システムにおいて、請求項2のように、イナートガスの貨物タンクへの供給時にイナートガス発生手段を同時運転し、バラストタンクの加圧貯蔵したイナートガスとイナートガス発生手段で発生させたイナートガスを貨物タンクに供給するようにしてもよい。
【0024】
上記のように構成されることで、バラストタンクとイナートガス発生手段の同時運転により、双方よりイナートガスが貨物タンクへと供給されることになる。これにより、たとえばバラストタンクからのみのイナートガスの供給では、その時間当たりの供給量が不十分だったり、絶対量が不足する場合等にその不足分をイナートガス発生手段で補うことが可能となる。
【0025】
また、上記の構成に係るイナートガス貯蔵・供給システムにおいて、請求項3のように、加圧貯蔵手段は、貨物タンクで必要とされるイナートガス量を保証するレベルにイナートガスを加圧貯蔵するようにしてもよい。
【0026】
「貨物タンクで必要とされるイナートガス量を保証するレベルにイナートガスを加圧貯蔵した」とは、たとえば貨物タンクのイナートガス必要量が少量の場合は加圧貯蔵圧力を低く、必要量が大量の場合は高く貯蔵すること等を指す。
【0027】
上記のように構成されることで、貨物タンクの容積や貨物の量に応じ必要量をバラストタンクに加圧貯蔵することで、必要とされるイナートガス量を確保でき、イナートガス発生手段の無駄な運転や、バラストタンクを必要以上に加圧することの防止が可能となる。
【0028】
また、上記の構成に係るイナートガス貯蔵・供給システムにおいて、請求項4のように、荷揚げ時に貨物物質の移送を行う移送手段を更に備え、この移送手段を陸上電力を用いて運転するようにしてもよい。
【0029】
「荷揚げ時に貨物物質の移送を行う移送手段」とは、たとえばカーゴポンプやコンベア、クレーン等を含むすべての荷揚げの際に使われる移送手段を指す。
【0030】
また、「陸上電力」とは、たとえば港湾などの陸上で発電し供給される電力、陸上で使われる商用電力等を指す。
【0031】
上記のように構成されることで、荷揚げ時の貨物物質の移送にあたり、当該イナートガス貯蔵・供給システムが搭載される船舶や浮体等の使用電力を、従来より削減することができる。従って、たとえば発電機の出力が小さい小型な発電機を選択すること、あるいは台数を減らすこと等が可能となる。
【0032】
また、上記の構成に係るイナートガス貯蔵・供給システムにおいて、請求項5のように、貨物タンクの空間に所定圧力のイナートガスを補充するようにしてもよい。
【0033】
このように構成されることで、たとえば貨物タンク積載された貨物物質の上部空間に所定圧力のイナートガスを補充することにより、温度変動による貨物物質の容積変化や途中消費があっても、これを補うことが可能なる。
【0034】
また、上記の構成に係るイナートガス貯蔵・供給システムにおいて、請求項6のように、イナートガス発生手段は窒素ガス生成装置としてもよい。
【0035】
上記のように構成されることで、たとえば電力を利用して大気中から容易にイナートガスとしての窒素ガスが生成でき、小型のものしか市販されていない窒素ガス生成装置が利用可能となる。
【0036】
また、上記の構成に係るイナートガス貯蔵・供給システムにおいて、請求項7のように、イナートガス発生手段は加圧手段を兼ねるようにしてもよい。
【0037】
「加圧手段を兼ねる」とは、たとえばイナートガスを発生させるときに同時に圧力上昇が得られるように発生エネルギー量を大きくする手段を用いたり、圧力が同時に得られるボンベやエンジン等を用いたり、発生させたイナートガスを加圧するコンプレッサやブロワをイナートガス発生手段に一体的に構成して加圧を行うこと等を指す。
【0038】
上記のように構成されることで、加圧手段を別途設けることや、たとえば複雑な配管経路を用いることをしなくてもイナートガス発生手段で加圧手段を兼ねることが可能となる。
【0039】
また、上記の構成に係るイナートガス貯蔵・供給システムにおいて、請求項8のように、貨物タンクに供給されて貯蔵されたイナートガスをバラストタンクに供給するようにしてもよい。
【0040】
上記のように構成されることで、たとえば、一旦、貨物タンクに貯蔵したイナートガスをバラストタンクに供給し、たとえばバラストタンクの防食用としての再利用が可能となり、イナートガス発生手段の小型化や発生のためのエネルギー消費の低減等が図れる。
【0041】
また、上記課題を解決するために、本発明の請求項9に係るイナートガス貯蔵・供給方法は、イナートガス発生手段で発生させたイナートガスをバラストタンクに加圧貯蔵し、このバラストタンクより容積を大きく設定した貨物タンクに前記加圧貯蔵したイナートガスおよび/もしくは前記イナートガス発生手段で発生させたイナートガスを加圧供給させたことを特徴とする。
【0042】
上記のように構成されることで、バラストタンクよりも容積を大きく設定した貨物タンクに、バラストタンクに加圧貯蔵されたイナートガス、イナートガス発生手段で発生させたイナートガス、あるいはこれら双方のイナートガスを供給することで、イナートガス発生手段が小型のものであっても時間をかけてバラストタンクに加圧貯蔵し供給すること、バラストタンクに加圧貯蔵されたイナートガスとイナートガス発生手段で発生させイナートガスを加圧供給することが可能となり、容積の小さいバラストタンクであっても大容積の貨物タンクで必要とされるイナートガス量をまかなえる。また、イナートガス発生手段で発生させたイナートガスをバラストタンクに直接、加圧供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本願発明のイナートガス貯蔵・供給システムおよび方法によれば、バラストタンクよりも容積を大きく設定した貨物タンクに、バラストタンクに加圧貯蔵されたイナートガスを供給することで、たとえば荷揚げ時に大量に必要なイナートガスをまかなうことができる。またイナートガスをバラストタンクに加圧貯蔵することで、容積の大きな貨物タンクの全量を供給することも可能となる。また、バラストタンクに時間をかけて貯蔵することで、イナートガス発生手段の小型化が図れ、設置スペースの削減、重量の低減、コストの低減等も可能となる。また、バラストタンクにバラスト水が入っていない状態における、外圧に対するバラストタンクの補強が可能となる。
【0044】
また、バラストタンクとイナートガス発生手段の双方よりイナートガスが貨物タンクへと供給され得ることにより、たとえばバラストタンクだけでは、その時間当たりの供給量が不十分だった場合、また絶対量が不足する場合等にその不足分をイナートガス発生手段から供給するイナートガスで補うことができ、荷揚げを的確に迅速に行うことが可能となる。
【0045】
また、貨物タンクで必要とされるイナートガス量を保証するレベルに加圧貯蔵をすることにより、たとえば必要量が少量の場合は加圧貯蔵圧力を低く、必要量が大量の場合は高く貯蔵することが可能となる。これにより、無駄なイナートガス発生手段の運転やイナートガスを余らせることが防止でき、バラストタンクの必要以上の加圧も防止される。また加圧貯蔵することにより、たとえば貨物満載航海時に、バラストタンク壁にかかる外側(海水側)、内側(荷側)からの圧力に抗することができ、バラストタンク壁にかかる応力を緩和することも可能となる。
【0046】
また、荷揚げ時に貨物物質の移送を行う移送手段を陸上電力を用いて運転することにより、たとえば船舶や浮体等に搭載される発電機を小型のものにしたり、数を少なくすることが可能となり、設置スペースや設備コスト等の低減が可能となる。
【0047】
また、貨物タンクの空間に所定圧力のイナートガスを補充することにより、たとえば温度変動による貨物物質の容積変化や途中消費があっても、貨物タンクの空間を所定圧力で保持することが可能なり、変化する状況下での貨物物質の防爆が有効に実施可能なものとなる。
【0048】
また、イナートガス発生手段を窒素ガス生成装置とすることで、たとえば電力を利用して大気中から容易にイナートガスとしての窒素ガスが生成できるので、イナートガスを発生させるためのボイラーやオイルバーナーまたスクラバー等の必要性がなくなり、エネルギー源の統一やシステムの合理化が可能となる。
【0049】
また、窒素ガスをバラストタンクの防食用としてもスクラバー処理等なしで利用が可能となる。
【0050】
また、イナートガス発生手段が加圧手段を兼ねることで、加圧手段を無くし、配管経路を単純化することが可能となる。
【0051】
また、貨物タンクに貯蔵したイナートガスをバラストタンクに供給することにより、イナートガスの再利用が図れ、イナートガス発生手段のさらなる小型化やエネルギー消費を減らすことができ、設置スペース等のさらなる低減や運用コストの低減等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムを使用した船舶の一部切り欠き外観図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムのシステム構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積載航海時の運用方法を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積載航海時の運用方法であってトッピングアップの実施状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物揚荷役時の運用方法を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムのバラスト航海時の運用方法を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積荷役時の運用方法であって、バラストタンクに大気を導入する場合を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積荷役時の運用方法のうち、貨物タンクより排出されるイナートガスをバラストタンクに供給する態様を説明するための図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0054】
図1は、本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムを使用した船舶の一部切り欠き外観図である。図1に示す船舶100は原油タンカーを想定しており、船体の甲板上にイナートガス発生装置1を搭載し、貨物タンク2、バラストタンク3を備えている。
【0055】
この実施形態でイナートガス発生装置1は窒素ガスを生成させる形式を採用しており、電力を用い大気中から窒素ガスを膜分離方式で分離する方式のものである。このため、イナートガス(窒素ガス)の生成には、エネルギー源は電力のみでよく、他の燃料やスクラバー等は必要でなく、システムや運用が簡素化されている。
【0056】
図2は、本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムのシステム構成図であり、イナートガス貯蔵・供給システム(以下、「本システム」という。)は、バラスト水を本来貯えるバラストタンク3と、このバラストタンクより容積を大きく設定した貨物タンク2とを備えている。実際の船舶においては、バラストタンク3や貨物タンク2は、複数の区画から構成されることが多いが、この一実施形態においては、説明の都合上、単数の区画をもって説明を行う。
【0057】
イナートガス発生装置1と、イナートガス発生装置1から貨物タンク2に接続される配管で構成されるイナートガス主配管系統4と、このイナートガス主配管系統4の途上に設置されたウォーターシール5と、P/Vブレーカ(圧力・真空逃がし弁)6とを備えている。
【0058】
イナートガス主配管系統4とは、主に、イナートガス発生装置1やバラストタンク3から貨物タンク2へとイナートガスを供給するために設けられた配管経路である。また、イナートガス主配管系統4は、特にこの配管態様に限定されず、イナートガス発生装置1やバラストタンク3から貨物タンク2へと配管されるのに適した系統ならばいかなる態様であっても良い。
【0059】
また、ウォーターシール5とは、イナートガス発生側と貨物タンク側を水で仕切ることにより、可燃性ガス等を含む可能性のある貨物タンク2側の気体が、イナートガス発生装置1側に逆流することを防ぐために設置されるものである。
【0060】
また、ここで、P/Vブレーカ6とは、装置内の圧力が所定の圧力を超えたときに自動的に大気に圧力を逃がし、所定の真空度を超えたときに自動的に大気を導入し、配管経路内を所定の圧力に保持する機能部品である。
【0061】
また、本システムは、バラストタンク3に対してバラスト水の給排水を行うバラスト水ポンプ8とシーチェスト9を備えたバラスト水給排水系統7と、貨物タンク2に貨物油の出し入れを行うカーゴポンプ11を備えた貨物油配管系統10とが設置されている。
【0062】
なお、バラスト水ポンプ8とカーゴポンプ11は、電力によって運転される。
【0063】
さらに、本システムは、イナートガス発生装置1からバラストタンク3に接続される配管で構成されるバラストタンクイナートガス配管系統12と、配管経路の途上に設置されたイナートガス加圧装置(コンプレッサ)13と、閉鎖弁14と、P/Vブレーカ15とを備えている。イナートガス加圧装置13は、この場合イナートガス発生装置1で発生した窒素ガスを加圧するコンプレッサであり、圧力の脈動低減のためのタンクを備えている。また、閉鎖弁14(開閉弁)は、全開又は全閉の状態で使用する弁であり、目的によっては流量の調整機能を行う弁であってもよい。閉鎖弁14としては、玉型弁、ゲート弁またボール弁等が考えられるが、経路の開閉機能があればいずれでも構わない。
【0064】
また、イナートガス主配管系統4とバラストタンクイナートガス配管系統12を結ぶ配管経路であるイナートガス連通系統18が設けられている。このイナートガス連通系統18は、イナートガス連通系統18aとイナートガス連通系統18bとから成り、各々の連通系統には流量・圧力調整器19a、流量・圧力調整器19b、連通弁20a、連通弁20b、逆止弁21a、逆止弁21bが設けられている。このイナートガス連通系統18は、後述する貨物タンク2へのイナートガスのトッピングアップ時、貨物荷揚げ時にイナートガス連通系統18aを、また貨物の積み荷時にイナートガス連通系統18bを利用するように設けられている。
【0065】
流量・圧力調整器19a、19bは、高圧のイナートガスを所定の圧力にまで減圧し、且つ所定の圧力でイナートガスを安定して供給できる機能を有するものである。流量・圧力調整器19a、19bは、機構的なものであっても電気的に制御されるものであってもよい。連通弁20a、20b(開閉弁)は、全開又は全閉の状態で使用する弁機能であり、流量の調整機能も備えていてもよい。
【0066】
また、本システムにおいては、バラストタンク3にバラストタンク3内の圧力を制御する目的で吸排気弁16及び定圧力調整弁17が設けられている。
【0067】
吸排気弁16はバラストタンク内の気体を排出するときや大気をバラストタンクに吸入するときに「開」で用いる。それ以外は「閉」で用いる。定圧力調整弁17はバラストタンクにイナートガスを貯蔵する際、イナートガス発生装置1からイナートガス加圧装置13(コンプレッサ)を経てイナートガスが供給されるときや、温度変化に伴う内圧変化(特に、過高圧)が発生したときに、外気へイナートガスの排出を行い、タンク内圧を一定以下に保って、船体構造に過度の力が付与されないようにするものである。
【0068】
なお、22は貨物タンク大気開放弁であり、貨物タンク2と大気を連通させ、貨物タンク2への大気導入が必要な場合や、貨物タンク2内のイナートガスが不要な場合に機能する弁である。また、23は貨物タンクイナートガス圧力計、24はバラストタンクイナートガス圧力計であり、貨物タンク2とバラストタンク3のイナートガスの圧力を計測している。貨物タンクイナートガス圧力計23の信号は、流量・圧力調整器19a、流量・圧力調整器19bの制御に利用される。
【0069】
バラストタンクイナートガス圧力計24の信号は、流量・圧力調整器19a、流量・圧力調整器19bの制御およびイナートガス加圧装置13の制御に利用されている。
【0070】
なお、制御装置は特に図示していないが、これらの制御、また後述する動作における制御を行うことができる制御機能を具備しているものである。また、配管経路の随所には、必要な弁類や機能部品類が適宜設けられるものとする。
【0071】
また、本システムにおける弁類や機能部品類は、機構的に動作するもの、油空圧や電気的に動作するものが適宜選択できるものとする。
【0072】
次に、上記により構成されるイナートガス貯蔵・供給システムの動作について詳細に説明する。
【0073】
図3は本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積載航海時の運用方法を説明するための図である。
【0074】
まず、貨物積載航海状態では、貨物タンク2が貨物油で満たされており、バラストタンク3は空になっている。航海中にイナートガス発生装置1を運転して、バラストタンク3にイナートガス(窒素ガス)を加圧貯蔵する。航海中の時間は長いため、イナートガス発生装置1の能力が小さいものであっても時間をかけて、大量のイナートガスをバラストタンク3に蓄えることができる。また、発生したイナートガスは、イナートガス加圧装置13で加圧してバラストタンク3に供給され、定圧力調整弁17の機能と相俟って、バラストタンク3に所定の圧力での貯蔵が可能となる。このため、バラストタンク3より貨物タンク2の容積が大きくても、必要量をまかなうことができる。たとえば、貨物タンク2の圧力はほぼ大気圧(1気圧)に保つとすると、バラストタンク3を1.5気圧に加圧すると、バラストタンク3の容積の1.5倍の貨物タンク容積に対応させることができる。また、所定の圧力で貯蔵することにより、貨物タンク2で必要とされるイナートガス量を保証することができる。
【0075】
また、航海中に空きとなったバラストタンク3にイナートガスを貯蔵することにより、バラストタンク自身の防食も行える。
【0076】
なお、イナートガス発生装置1の運転は、航海時の主機関やその他の動力源からの排・余剰エネルギーでまかなえばより効果的である。
【0077】
なお、イナートガス発生装置1からバラストタンク3に至るバラストタンクイナートガス配管系統12において、何らかの原因により圧力の異常な上昇或いは低下が生じた場合は、P/Vブレーカ15を通じて、過大圧力のイナートガスを排出し或いは外気を取り込み、バラストタンクイナートガス配管系統12の機能損傷を防ぐ。バラストタンク内圧力の制御は、定圧力調整弁17を用いて行う。
【0078】
図4は、本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積載航海時の運用方法であってトッピングアップの実施状態を示す図である。トッピングアップは、貨物タンク2の温度の変動や貨物タンク2内の貨物油の消費等により貨物油の容積が減ったり、イナートガスの漏れが生じイナートガス濃度が希薄になった場合に、それを補充する目的で行われる。トッピングアップは、図4に示すように、バラストタンク3に貯蔵したイナートガスを、イナートガス連通系統18a、イナートガス主配管系統4を経由して貨物タンク2に供給することで実現できる。トッピングアップを行う制御は、貨物タンクイナートガス圧力計23で検出される圧力が所定圧を下回り、バラストタンクイナートガス圧力計24で検出される圧力が所定圧よりも高い場合に、連通弁20aを連通させることによって行われる。貨物タンクイナートガス圧力計23で検出される圧力が所定圧を上回った段階で、連通弁20aが閉じられ、トッピングアップは終了する。
【0079】
また、トッピングアップはイナートガス主配管系統4とウォーターシール5を経由して、イナートガス発生装置1で発生させたイナートガスを貨物タンク2に直接供給してもよい。イナートガス発生装置1で発生させたイナートガス圧力が高い場合は、イナートガス加圧装置13を経ずにイナートガスを貨物タンク2に供給することができる。イナートガス発生装置1で発生させたイナートガス圧力が低い場合は、イナートガス加圧装置13を経て供給し、トッピングアップを行うこともできる。この場合は、イナートガス主配管系統4の一部を閉成させ、連通経路18aを通して加圧したイナートガスを供給する。
【0080】
バラストタンク3から貨物タンク2へイナートガスを供給するバラストタンクイナートガス配管系統12、連通経路18a、イナートガス主配管系統4で何らかの原因により圧力の異常な上昇或いは低下が生じた場合は、P/Vブレーカ6又は15を通じて、過大圧力のイナートガスを排出し或いは外気を取り込み、これらイナートガス主配管系統4、連通経路18a(流量圧力調整器19a、連通弁20a、逆止弁21aを含む)又はバラストタンクイナートガス配管系統12の機能損傷を防ぐ。
【0081】
図5は本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物揚荷役時の運用方法を説明するための図である。貨物の荷揚げ時には、連通弁20aを開とし、閉鎖弁14及び連通弁20bは閉とする。カーゴポンプ11で貨物を荷揚げしていくと、貨物タンク2内が減圧されて行くので、貨物タンク2内を不活性状態とするために、バラストタンク3内のイナートガスを、貨物タンク2内のイナートガス圧力を所定値に保つにように送り込む。この制御は、貨物タンクイナートガス圧力計23で検出される圧力が所定圧を保てるように、流量・圧力調整器19aを調整することによって行われる。
【0082】
貨物の揚げ荷時には、限られた時間内に大量の貨物油を揚げ荷する必要があり、従来は大容量のイナートガス発生装置1を必要としていたが、バラストタンク3内に航海中に加圧貯蔵されたイナートガスを用いることにより、貯蔵に当たって能力の小さなイナートガス発生装置1でもまかなうことが可能となる。さらに、イナートガス発生装置1に電力を供給する発電設備も、一度に大きな電力を必要としないため小型のものあるいは発電機台数を減らすことで済ますことができる。
【0083】
また、貨物の荷揚げ時におけるカーゴポンプ11の電力供給は、従来は万が一の事故を想定し船舶に搭載の設備を使用していたが、揚げ荷に連動してバラストタンク3からイナートガスを逐次貨物タンク2に供給し、防爆を行うことにより事故や被害の拡大が防止できるので、カーゴポンプ11の運転を陸上電力を用いて行うことが可能となる。この場合、船舶に搭載される発電機は、さらに小型なものあるいは少数で済ますことができる。このことにより、発電機の設置スペースや設備コストが低減できる。
【0084】
なお、図5に示す貨物揚荷役時においては、シーチェスト9からバラスト水ポンプ8により水を吸い上げ、バラストタンク3に送り込み、水の押し上げる圧力も利用してイナートガスを貨物タンク2へと送り込むことができる。
【0085】
但し、バラストタンク3に水を送り込む際には、イナートガスの貨物タンク2への供給量とのバランスにおいて、バラストタンク3内のイナートガスが貯蔵圧力を超えて圧縮され、船舶構造に対して危険な圧力レベルにならないように制御することが必要である。バラストタンク3内の圧力が所定値を越えた場合は、定圧調整弁17が機能して圧力を所定値以下に維持する。
【0086】
万が一、故障が発生し、制御不可能な状態になったときは、安全のため吸排気弁16よりイナートガスを大気へ排出する。
【0087】
また、イナートガス発生装置1に電力を供給する発電機も、一度に大きな電力を必要としないため、小型なものあるいは少数で済ますことができる。
【0088】
また、図5に示す貨物揚荷役時において、バラストタンク3から貨物タンク2にイナートガスを送り込むことと、イナートガス発生装置1も運転して送り込むこととを同時に行うことが可能である。イナートガスの供給を同時に行うことにより、バラストタンク3のイナートガスだけでは、その時間当たりの供給量が不十分な場合や絶対量が不足する場合にその不足分をイナートガス発生装置1からのイナートガスで補うことができ、荷揚げを的確に迅速に行うことが可能となる。特に、供給量に不足を来さないため、当初の目的である防爆を確実に行える。
【0089】
図6は、本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムのバラスト航海(積荷無し)時の運用方法を示す図である。貨物油を積んでいないバラスト航海中は、バラストタンク3内は水で満たされ、貨物油が入っていない貨物タンク2内はイナートガスで満たされている。貨物タンク2は、イナートガスにより防爆が図られているが、貨物タンク2の周囲温度の変動や漏洩により貨物タンク2内のイナートガス圧が低下し、トッピングアップが必要な場合がある。この場合は、イナートガス発生装置1よりイナートガスを直接、貨物タンク2に送り込む。
【0090】
イナートガス発生装置1で発生させたイナートガス圧力が低すぎる場合は、イナートガス加圧装置13を経て供給し、トッピングアップを行うこともできる。
【0091】
また、バラスト水満載でない場合、即ち、バラストタンク3にイナートガスが残っている場合、バラストタンク3から貨物タンク2にトッピングアップ充填してもよい。
【0092】
図7は、本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積荷役時の運用方法であって、バラストタンクに大気を導入する場合を示す図である。
【0093】
貨物の積み荷時には、既にイナートガスの充満している貨物タンク2内へ、カーゴポンプ11により貨物油を積載する。このとき貨物タンク2内のイナートガスは、貨物油に追い出される形で貨物タンク大気開放弁22から大気に放出される。
【0094】
一方で、バラストタンク3では、貨物油の積載状況に応じて、バラスト水給排水系統7よりバラスト水の排出を行う。このときバラストタンク3へはバラスト水の排出に伴い、吸排気弁16より大気が流入する。
【0095】
また図8は、本発明の一実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムの貨物積荷役時の運用方法のうち、貨物タンクより排出されるイナートガスをバラストタンクに供給する態様を説明するための図である。この図8に示されるように、カーゴポンプ11を運転した貨物タンク2への貨物油の積み荷時に、連通弁20bを開として、貨物タンク2から貨物油の供給される圧力により排出されるイナートガスを、バラストタンク3へ導いてもよい。
【0096】
この方法の利点としては、貨物タンク2への貨物油積み込み完了時に、バラストタンク3に既にイナートガス(大気圧で)が存在するので、貨物積載航海時にバラストタンクへ注入すべきイナートガス量を少なくできること、及びイナートガス発生装置1の容量を小さくできることである。このため、イナートガス発生のための電力消費や燃料費も低減できる効果も有する。
【0097】
また、貨物タンク2からイナートガスをバラストタンク2へ送る際に加圧を必要とするならば、イナートガス連通系統18bの流量・圧力調整器19aの上流側にコンプレッサを配置して構成してもよい。または別系統を設け、イナートガス加圧装置13を経由してバラストタンク3に繋がるように構成してもよい。
【0098】
以上のように、貨物タンク2に貯蔵されたイナートガスをバラストタンク3に供給することにより、イナートガスの再利用が可能となり、イナートガス発生装置1の小型化やエネルギー消費を減らすことも可能となり、イナートガスをバラストタンク3の防食にも供することができる。
【0099】
図9は、本発明の他の実施形態に係るイナートガス貯蔵・供給システムのシステム構成図である。この図9に示すとおり、イナートガス連通系統18の配管経路の工夫により流量・圧力調節器19が一つになっているが、基本的な動作は図2に示す実施形態と同一である。この図9の構成図を採った場合、図2の構成と比較して流量・圧力調整器19が一つにでき、制御系も簡素化できる効果を有する。
【0100】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0101】
また、上述した実施例は、本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、プロダクトキャリア、タンカー等の貨物船で、バラストタンクを有し、貨物タンクの防爆の必要性があるあらゆる船舶に利用が可能であり、さらに、各種浮体や貯蔵システムにも応用展開ができるものである。
【符号の説明】
【0103】
1…イナートガス発生装置(イナートガス発生手段)、2…貨物タンク、3…バラストタンク、4…イナートガス主配管系統(加圧貯蔵手段)、11…カーゴポンプ(移送手段)、12…バラストタンクイナートガス配管系統(加圧貯蔵手段) 、13…イナートガス加圧装置(イナートガス加圧手段)、18…イナートガス連通系統(加圧貯蔵手段)、19a…流量・圧力調整器a(供給制御手段)、19b…流量・圧力調整器(供給制御手段)、23…貨物タンクイナートガス圧力計(供給制御手段)、24…バラストタンクイナートガス圧力計(供給制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水を貯えるバラストタンクと、このバラストタンクより容積を大きく設定した貨物タンクと、イナートガスを発生させるイナートガス発生手段と、このイナートガス発生手段で発生させたイナートガスを加圧するイナートガス加圧手段と、このイナートガス加圧手段で加圧された前記イナートガスを前記バラストタンクに加圧貯蔵する加圧貯蔵手段と、前記バラストタンクに加圧貯蔵されたイナートガスを前記貨物タンクに供給する供給制御手段とを備えたことを特徴とするイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項2】
イナートガスの前記貨物タンクへの供給時に前記イナートガス発生手段を同時運転し、前記バラストタンクの加圧貯蔵したイナートガスと前記イナートガス発生手段で発生させたイナートガスを前記貨物タンクに供給したことを特徴とする請求項1記載のイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項3】
前記加圧貯蔵手段は、前記貨物タンクで必要とされるイナートガス量を保証するレベルに前記イナートガスを加圧貯蔵したことを特徴とする請求項1或いは2記載のイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項4】
荷揚げ時に貨物物質の移送を行う移送手段を更に備え、この移送手段を陸上電力を用いて運転したことを特徴とする請求項1乃至3のうちの1項に記載のイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項5】
前記貨物タンクの空間に所定圧力のイナートガスを補充したことを特徴とする請求項1乃至4記載のうちの1項に記載のイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項6】
前記イナートガス発生手段は、窒素ガス生成装置としたことを特徴とする請求項1乃至5のうちの1項記載のイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項7】
前記イナートガス発生手段は前記加圧手段を兼ねたことを特徴とする請求項1乃至6記載のうちの1項記載のイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項8】
前記貨物タンクに供給されて貯蔵されたイナートガスを前記バラストタンクに供給したことを特徴とする請求項1乃至7記載のうちの1項記載のイナートガス貯蔵・供給システム。
【請求項9】
イナートガス発生手段で発生させたイナートガスをバラストタンクに加圧貯蔵し、このバラストタンクより容積を大きく設定した貨物タンクに前記加圧貯蔵したイナートガスおよび/もしくは前記イナートガス発生手段で発生させたイナートガスを加圧供給させたことを特徴とするイナートガス貯蔵・供給方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−178250(P2011−178250A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43581(P2010−43581)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)