説明

イネの健苗育成向上剤

【課題】分けつ向上効果、根の重量の増加、緑色向上、茎の太さ向上等のイネの健苗育成効果を有する健苗育成向上剤を提供すること。
【解決手段】一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。]
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と、ジベレリン生合成阻害剤とを有効成分とするイネの健苗育成向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイネの健苗育成を向上させる健苗育成向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
環境の変化や病害虫に弱い幼植物を一括に管理して育て、ある程度の成長した苗を本圃に植えるイネの育苗において重要なことは、根の発育、茎の太さ、乾物重量、充実度(乾燥重量/草丈)が高く、草丈(又は節間)が適度な長さの苗を作ることである。
【0003】
これまでに、多くの健苗育成向上剤が研究されている。ヒドロキシイソキサゾール類は根の発育促進効果があることが知られており、健苗育成に用いられている(特許文献1)。また、植物ホルモンであるジャスモン酸による健苗育成効果 (特許文献2)、ジベレリン生合成阻害剤であるウニコナゾールPを用いた徒長防止による健苗育成効果(非特許文献1)等が報告されている。
しかしながら、これらの健苗育成向上剤は未だ充分満足できるものではなかった。
【0004】
一方、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩は、光合成活性の向上、CO2吸収能力向上、呼吸抑制作用、クロロフィル含量向上作用、さらに優れた成長促進作用を示し、その結果発根促進、倒伏防止、収量向上、耐寒性向上、鮮度保持、緑色向上、緑色保持、健苗育成、器官の成長促進、分けつ数の増加、生育に要する期間の短縮、薬害軽減や挿し木等における活着向上効果に優れている(特許文献3)ことが知られている。
そして、ジベレリン生合成阻害剤であるウニコナゾールPをテンサイ幼植物に処理した後に、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はその塩を処理することにより、植物の健全な生育を行なえることが報告されている(非特許文献2)。これはテンサイに対して徒長防止に用いるウニコナゾールPの効果が持続し、植物体の乾燥重量が減少するという生育停滞が起こる問題を、ウニコナゾールP処理15日後に5−アミノレブリン酸を処理することで5−アミノレブリン酸の成長促進効果で乾燥重量を高め、健全な生育に戻すことで解決する技術である。
【0005】
しかしながら、ウニコナゾールPと5−アミノレブリン酸を併用した場合強まるのは、節間伸長抑制というジベレリン生合成阻害剤の効果と、根部、茎部の充実という5−アミノレブリン酸の効果とのそれぞれの相加効果によるテンサイ幼植物の倒伏防止効果であり、育成効果は未だ充分満足できるものではなかった。
【特許文献1】特願昭60−52048号公報
【特許文献2】特願平10−310580号公報
【特許文献3】特開平4−338305号公報
【非特許文献1】「ウニコナゾールP液剤を用いた健苗育成」、平成17年度普及に移す技術、福井県
【非特許文献2】「5−アミノレブリン酸入り肥料がテンサイ幼植物のウニコナゾール処理による生育遅延に及ぼす影響」、植物化学調節学会要旨集 No.38 p.71
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、イネの分けつ向上、根の重量増加、緑色向上、茎の太さ向上といった健苗育成効果があるイネの育成向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる現状に鑑み鋭意研究を行なったところ、生育阻害の起こるジベレリン生合成阻害剤と、成長促進効果のある5−アミノレブリン酸、その誘導体又はその塩でイネ苗を処理すれば、意外にも、テンサイ幼植物の場合と全く異なり、分けつ向上効果があること、根の重量が増加すること、緑色が向上すること、茎の太さが向上することというイネの健苗育成の新たな効果を見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。]
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と、ジベレリン生合成阻害剤とを有効成分とするイネの健苗育成向上剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩及びジベレリン生合成阻害剤で、イネを処理することを特徴とするイネの健苗育成向上方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の健苗育成向上剤は、分けつ向上効果、根の重量の増加、緑色向上、茎の太さ向上というイネの健苗育成効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の健苗育成向上剤の有効成分の1つは、5−アミノレブリン酸、その誘導体(前記一般式(1))又はそれらの塩である。
一般式(1)中、R1及びR2で示されるアルキル基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、特に炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。アシル基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイル基、アルケニルカルボニル基又はアロイル基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイル基が好ましい。当該アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基が好ましく、特に炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基が好ましい。当該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜16のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数6〜16のアリール基と上記炭素数1〜6のアルキル基とからなる基が好ましく、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
【0012】
3で示されるアルコキシ基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜16のアルコキシ基、特に炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。アシルオキシ基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイルオキシ基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基が好ましい。当該アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等が挙げられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、特に総炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。当該アルコキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、炭素数6〜16のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、前記アラルキル基を有するものが好ましく、例えば、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)中、R1及びR2としては水素原子が好ましい。R3としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はアラルキルオキシ基が好ましく、より好ましくはヒドロキシ基又は炭素数1〜12のアルコキシ基、特にメトキシ基又はヘキシルオキシ基が好ましい。
【0014】
5−アミノレブリン酸誘導体としては、5−アミノレブリン酸メチルエステル、5−アミノレブリン酸エチルエステル、5−アミノレブリン酸プロピルエステル、5−アミノレブリン酸ブチルエステル、5−アミノレブリン酸ペンチルエステル、5−アミノレブリン酸ヘキシルエステル等が挙げられ、特に5−アミノレブリン酸メチルエステル又は5−アミノレブリン酸ヘキシルエステルが好ましい。
【0015】
5−アミノレブリン酸およびその誘導体の塩としては、例えば塩酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩及びナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩が挙げられる。5−アミノレブリン酸とその塩はそれぞれ単独でも、これらの2種以上を混合して用いることもできる。
【0016】
5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩は、化学合成、微生物や酵素を用いる方法のいずれの方法によっても製造できる。例えば、特開平4−9360号公報、特表平11−501914号公報、特願2004−99670号明細書、特願2004−99671号明細書、特願2004−99672号明細書記載の方法が挙げられる。その生産物は、イネに対して有害な物質を含まない限り分離精製することなく、そのまま用いることができる。また、有害な物質を含む場合は、その有害物質を適宜、有害とされないレベルまで除去した後、用いることができる。
【0017】
また、本発明のイネの健苗育成向上剤における有効成分の1つであるジベレリン生合成阻害剤としては、例えば、イナベンフィド(4'−クロロ−2'−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド)、ウニコナゾールP((E)―(S)―1―(4―クロロフェニル)―4,4―ジメチル―2―(1H―1,2,4―トリアゾール―1―イル)ペンタ―1―エン―3―オール)、トリネキサパックエチル(エチル=4−シクロプロピル−α−ヒドロキシメチレン)−3,5−ジオキソシクロヘキサンカルボキシラート)、パクロブトラゾール((2RS,3RS)―1―(4―クロロフェニル)―4,4―ジメチル―2―(1H―1,2,4―トリアゾール―1―イル)ペンタン―3―オール)、プロヘキサジオンカルシウム塩(カルシウム 3―オキシド―5―オキソ―4―プロピオニル―3―シクロヘキセンカルボキシラート)、フルルプリミドール(2−メチル−ピリミジン−5−イル−1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)プロパン−1−オール、アンシミドール(α−シクロプロピル−α(4−メトキシフェニル)−5−ピリミジンメタノール)、クロルメコート(2−クロロエチルトリメチルアンモニウム=クロリド)、ダミノジット(N−(ジメチルアミノ)スクシンアミド酸)が挙げられる。このうち、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩との併用による健苗育成効果に優れるイナベンフィド、ウニコナゾールP、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾール、プロヘキサジオンカルシウム塩、フルルプリミドールがより好ましく、特にイナベンフィド、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾールが好ましい。
【0018】
本発明における健苗育成向上剤の適用対象となる植物としては、好ましくはジャポニカ種、インディカ種であり、より好ましくはジャポニカ種である。
【0019】
本発明において、イネの健苗育成向上剤は、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩とジベレリン生合成阻害剤とが含まれておればよいが、これら以外に、必要により植物成長調節剤、糖類、アミノ酸、有機酸、アルコール、ビタミン、ミネラル等を配合することができる。
【0020】
ここで用いられる植物成長調節剤としては、例えば、エピブラシノライド等のブラシノライド類、塩化コリン、硝酸コリン等のコリン剤、インドール酪酸、インドール酢酸、エチクロゼート剤、1−ナフチルアセトアミド剤、イソプロチオラン剤、ニコチン酸アミド剤、ヒドロキシイソキサゾール剤、過酸化カルシウム剤、ベンジルアミノプリン剤、メタスルホカンブ剤、オキシエチレンドコサノール剤、エテホン剤、クロキンホナック剤、ジベレリン、ストレプトマイシン剤、ダミノジット剤、ベンジルアミノプリン剤、4−CPA剤、アンシミドール剤、イナペンフィド剤、クロルメコート剤、ジケブラック剤、メフルイジド剤、炭酸カルシウム剤、ピペロニルブトキシド剤等を挙げることができる。
【0021】
糖類としては、例えばグルコース、シュクロース、キシリトール、ソルビトール、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノース、マジュロース、スクロース、リボース、ラムノース、フラクトース、マルトース、ラクトース、マルトトリオース等が挙げられる。
【0022】
アミノ酸としては、例えばアスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、チロシン、グリシン、アルギニン、アラニン、トリプトファン、メチオニン、バリン、プロリン、ロイシン、リジン、イソロイシン等を挙げることができる。
【0023】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸、カプロン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ピルビン酸、α−ケトグルタル酸、レブリン酸等を挙げることができる。
【0024】
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、グリセロール等が挙げられる。
【0025】
ビタミンとしては、例えばニコチン酸アミド、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンB5、ビタミンC、ビタミンB13、ビタミンB1、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンK3、ビタミンA、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンK1、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、σ−トコフェロール、p−ヒドロキシ安息香酸、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸、α―リポニック酸等を挙げることができる。
【0026】
ミネラル等としては、例えばチッソ、リン、カリウム、カルシウム、ホウ素、マンガン、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、モリブデン、マグネシウム等を挙げることができる。
【0027】
本発明のイネの健苗育成向上剤は、植物の根、茎葉又は周囲の土壌、水に投与することにより使用される。投与時の形態は、固体であってもよく、水溶液であってもよい。具体的には、茎葉処理用(茎葉処理剤)として使用してもよいし、土壌処理用(土壌処理剤)として使用してもよい。
【0028】
イネの健苗育成向上剤の有効成分である、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩とジベレリン生合成阻害剤との量比は、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩100重量部に対して、ジベレリン生合成阻害剤が、60〜6000000重量部が好ましく、300〜1200000重量部がより好ましく、600〜600000重量部が特に好ましいが、用いるジベレリン生合成阻害剤の種類により、その重量比を適宜決定することが好ましい。
【0029】
具体的には、イネの健苗育成向上剤のイネへの処理においては、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩基準で、10アール当たり0.1〜10000mg、特に好ましくは1〜2000mg、更に好ましくは1〜1000mg用いるのが好ましい。ジベレリン生合成阻害剤の処理量としては、種類によって異なるが、10アール当たり0.1〜12000g、さらに0.625〜2400g用いるのが好ましい。具体的には、イナベンフィドの処理量としては、10アール当たり120〜12000gが好ましく、さらに好ましくは600〜2400gである。同様に、ウニコナゾールPの処理量としては10アール当たり3〜300gが好ましく、さらに好ましくは15〜60gであり、トリネキサパックエチルの処理量としては10アール当たり0.125〜12.5gが好ましく、さらに好ましくは0.625〜2.5gであり、パクロブトラゾールの処理量としては10アール当たり9〜900gが好ましく、さらに好ましくは36〜180gであり、プロヘキサジオンカルシウム塩の処理量としては10アール当たり1.5〜150gが好ましく、さらに好ましくは7.5〜30gである。
また、上記範囲の処理量になるよう調整した剤を10アール当たり10〜1000Lさらに好ましくは20〜300Lにしてイネを処理するのが好ましい。
【0030】
茎葉処理剤として使用する場合は、展着剤の種類及び使用量については、特に制限されない。
【0031】
イネの健苗育成向上剤の植物への処理時期としては、イネの育苗に用いる場合は、水田に定植を行なう前の育苗を行なっている期間であればよい。
【0032】
本剤の有効成分である5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩の処理とジベレリン生合成阻害剤の処理は、同時に行なうことが好ましく、さらに2成分を混合したものによる処理が好ましいが、それぞれの効果が発現する前であればこれに限られない。
【0033】
本剤の有効成分である5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩による処理とジベレリン生合成阻害剤による処理とを異なる時期に行なう場合、先に1成分による処理を行ってから10日以内に残りの1成分による処理を行なうのが好ましく、より好ましくは5日以内である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されない。
【0035】
実施例1.イネの健苗育成向上効果−1
シードリングBOX(面積が1/120000×10a)に450g/potの土を入れた。土は購入した火山灰土(黒ボク土)を用いた。比重1.13の塩水で塩水選を行い、芽出しを行なった稲モミ(コシヒカリ)を15粒/pot 播種し、土を1〜2cm(50g/pot)かぶせた。液肥ハイポニカを3kg-N/10aとなるように施肥を行なった。各試験区(n=4)に対し、ウニコナゾールP、イナベンフィド、トリネキサパックエチル、プロヘキサジオンカルシウム塩、パクロブトラゾールと5−アミノレブリン酸塩酸塩を組合せて、最終処理量が表1となるように200L/10aの液量で土壌に灌中した。播種29日後、液肥ハイポニカを3kg-N/10aとなるように追肥を行なった。播種33日後、植物体を回収し新鮮重量(根部)、分けつ数を測定した。5−アミノレブリン酸塩酸塩とウニコナゾールPとの効果を表1に、イナベンフィド、トリネキサパックエチル、プロヘキサジオンカルシウム塩、パクロブトラゾールとの効果をそれぞれ表2〜5に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
表1〜5に示した通り、5−アミノレブリン酸塩酸塩およびジベレリン生合成阻害剤それぞれ単独で用いるよりも、併用することにより相加効果以上のイネの健苗育成向上効果が認められ、これらを併用したものは健苗育成向上剤として有用であることがわかった。
【0042】
実施例2.イネの健苗育成向上効果−2
シードリングBOX(面積が1/120000×10a)に450g/potの土を入れた。土は購入した火山灰土(黒ボク土)を用いた。比重1.13の塩水で塩水選を行い、芽出しを行なった稲モミを15粒/pot 播種し、土を1〜2cm(50g/pot)かぶせ、液肥ハイポニカを5kg-N/10aとなるように施肥を行った。各試験区(n=4)に対し、イナベンフィドを1200, 300 g/10a、5−アミノレブリン酸塩酸塩を600, 200, 120 mg/10aの処理量となるように組合せて土壌に灌注した。播種22日後に植物体を回収し新鮮重量(根部)、分けつ数、茎太さ、葉緑素含量(SPAD値)の測定を行なった。各条件における根部新鮮重量と分けつ数の結果を表6、茎太さ、葉緑素含量(SPAD値)の結果を表7に示す。
【0043】
【表6】

【0044】
表6に示した通り、5−アミノレブリン酸塩酸塩およびジベレリン生合成阻害剤であるイナベンフィドをそれぞれ単独で用いるよりも、併用することにより、根部新鮮重量および平均分けつ数が相加以上に増加することが認められ、これらを併用したものは健苗育成向上剤として有用であることがわかった。
【0045】
【表7】

【0046】
表7に示した通り、5−アミノレブリン酸塩酸塩およびジベレリン生合成阻害剤であるイナベンフィドをそれぞれ単独で用いるよりも、併用することにより、茎太さおよび葉緑素含量が相加以上に増加することが認められ、これらを併用したものは健苗育成向上剤として有用であることがわかった。
【0047】
実施例3.イネの健苗育成向上効果の検証
実施例2と同様に育苗を行なった。育苗時の処理濃度は5−アミノレブリン酸塩酸塩濃度を120(mg/10a)、イナベンフィド濃度を1200(g/10a)で処理を行った。育苗後、苗4本の根を2cmに切りそろえ、水田状態にしたポットに定植した。水田状態のポットへの定植3週間後に植物体を回収し、地上部、根部の乾燥重量および分けつ数を測定した。育苗時に行なった各処理条件と水田ポット定植3週間後の測定値を表8に示す。
【0048】
【表8】

【0049】
表8に示した通り、育苗時に5−アミノレブリン酸塩酸塩およびジベレリン生合成阻害剤であるイナベンフィドをそれぞれ単独で用いるよりも、併用することにより、定植後の水田ポットにおける植物体の成長促進が見られた。よって、5−アミノレブリン酸塩酸塩およびジベレリン生合成阻害剤によるイネの健苗育成向上効果が認められ、これらを併用したものは健苗育成向上剤として有用であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。]
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と、ジベレリン生合成阻害剤とを有効成分とするイネの健苗育成向上剤。
【請求項2】
ジベレリン生合成阻害剤が、イナベンフィド、ウニコナゾールP、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾール及びプロヘキサジオンカルシウム塩、これらの異性体並びにこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載のイネの健苗育成向上剤。
【請求項3】
一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。]
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩及びジベレリン生合成阻害剤で、イネを処理することを特徴とするイネの健苗育成向上方法。
【請求項4】
一般式(1)で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩による処理とジベレリン生合成阻害剤による処理とを同時に行うことを特徴とする請求項3記載のイネの健苗育成向上方法。

【公開番号】特開2009−274973(P2009−274973A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126017(P2008−126017)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】