説明

イバブラジン及び薬学的に許容されうる酸とのその付加塩の合成のための新たな方法

【課題】徐脈特性を有し、狭心症、心筋梗塞及び関連する律動障害などの心筋虚血の処置又は予防及び心不全において有用な、式(I):


で示されるイバブラジン及び薬学的に許容しうる付加塩の合成法の提供。
【解決手段】ラセミ又は光学活性形態の中間体アルデヒド化合物を、中間体アミン化合物と、還元剤の存在下、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中で、還元的アミノ化反応に供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化1】


で示されるイバブラジン、すなわち3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン、薬学的に許容されうる酸とのその付加塩及びそれらの水和物の合成のための方法に関する。
【0003】
イバブラジン、及び薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、特にその塩酸塩は、非常に有益な薬理学的及び治療的特性、特に徐脈特性を有しており、これにより、それらの化合物は、狭心症、心筋梗塞及び関連する律動障害などの心筋虚血の種々の臨床症状の処置又は予防において、そして律動障害、特に上室性律動障害が関与する種々の病理学において、そして心不全において有用となっている。
【0004】
イバブラジン及び薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、特にその塩酸塩の製造及び治療的使用は、欧州特許第0534859号欧州特許明細書に記載されている。
【0005】
この特許明細書は、式(II):
【0006】
【化2】


で示される化合物を出発材料として使用し、これを分割して、式(III):
【0007】
【化3】


で示される化合物を得て、これを式(IV):
【0008】
【化4】


で示される化合物と反応させ、式(V):
【0009】
【化5】


で示される化合物を得て、これの接触水素化によりイバブラジン得て、次にこれをその塩酸塩に変換する、イバブラジンの塩酸塩の合成を記載している。
【0010】
この合成方法の欠点は、イバブラジンを収率1%でしか得られないことである。
【0011】
この化合物における薬学的利益を考えれば、イバブラジンの良好な収率をもたらす効果的な合成方法によりイバブラジンを得ることができることは重要である。
【0012】
本発明は、式(VI):
【0013】
【化6】


[式中、Aは、HC−CH又はHC=CHを表す]で示されるラセミ又は光学活性形態の化合物の合成のための方法に関し、
これは、式(VII):
【0014】
【化7】


で示されるラセミ又は光学活性形態の化合物を、式(VIII):
【0015】
【化8】


[式中、Aは、上記で定義するとおりである]で示される化合物と、還元剤の存在下、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中で、還元的アミノ化反応に供することを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では、式(VII)の化合物は、光学活性形態であり、特に(S)配置を有する。
【0017】
Aが、HC−CHを表す場合、(S)配置を有する式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化の生成物は、式(I):
【0018】
【化9】


で示されるイバブラジンであり、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよい。
【0019】
Aが、HC=CHを表す場合、(S)配置を有する式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化の生成物は、式(V):
【0020】
【化10】


で示される化合物であり、これの接触水素化により、式(I):
【0021】
【化11】


で示されるイバブラジンが得られ、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよい。
【0022】
本発明の別の好ましい実施態様において、式(VII)の化合物は、ラセミ形態である。式(VII)のラセミ化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応の場合には、得られた式(VI)の化合物の光学分割工程が続く。
【0023】
Aが、HC−CHを表す場合、式(VI)の化合物の光学分割工程の後に得られる生成物は、式(I):
【0024】
【化12】


で示されるイバブラジンであり、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよい。
【0025】
Aが、HC=CHを表す場合、式(VI)の化合物の光学分割工程の後に得られる生成物は、式(V):
【0026】
【化13】


で示される化合物であり、これの接触水素化により、式(I):
【0027】
【化14】


で示されるイバブラジンが得られ、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよい。
【0028】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用することができる還元剤の中で、いかなる限定もするわけではないが、水素化物生成化合物、又は触媒の存在下での二水素に言及しうる。
【0029】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用することができる還元剤の中で、いかなる限定もするわけではないが、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び、特に担体形態又は酸化物形態の、パラジウム、白金、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、及びそれらの誘導体などの触媒の存在下での二水素に言及しうる。
【0030】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために好適に使用される還元剤は、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドである。
【0031】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用することができる溶媒の中で、いかなる限定もするわけではないが、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、酢酸類(acetates)、アルコール類、好ましくはエタノール、メタノール又はイソプロパノール、トルエン及びキシレンに言及しうる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用される溶媒は、有機溶媒の混合物である。
【0033】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために好適に使用される溶媒は、テトラヒドロフランとジクロロメタンとの混合物である。
【0034】
ラセミ又は光学活性形態の式(VII)の化合物は、化学又は医薬産業において、特にイバブラジン、薬学的に許容しうる酸とのその付加塩およびそれらの水和物の合成において、合成中間体として有用である新たな生成物であり、そのようなものとして、本発明の不可欠な部分を構成する。
【0035】
使用する略語の一覧:
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
IR:赤外
【0036】
下記の実施例は本発明を例証する。
【0037】
融点(M.p.)を、Koflerブロック上で測定した。
【0038】
実施例1: 7,8−ジメトキシ−3−[3−(メチルアミノ)プロピル]−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン
3−(7,8−ジメトキシ−2−オキソ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)プロパナール50g(0.18mol)を、メタノール625mlに溶解する。得られた溶液を0℃に冷却し、次に40%メチルアミン水溶液62.5ml(0.81mol;4.5当量)を加える。0℃で1時間撹拌し、次にNaBH 7.5g(0.2mol;1.1当量)を加える。0℃で30分間撹拌し、次に周囲温度で12時間撹拌する。メタノールを蒸発させる。残留物を塩酸水溶液(1N)に取り、そして酢酸エチルで洗浄する。次に20%水酸化ナトリウム溶液を加えることにより水相をpH=8に調整し、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、次に蒸発乾固して、油状物52gを得て、それをシリカ1.5kgのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤=ジクロロメタン/エタノール/NHOH:80/20/2)により精製する。予想される生成物42gを白色の固体の形態で得る。
収率=80%
M.p.(KB)=68〜70℃
【0039】
実施例2: 7,8−ジメトキシ−3−[3−(メチルアミノ)プロピル]−1,3−ジヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン
工程1: tert−ブチル[3−(7,8−ジメトキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)プロピル]メチルカルバメート
7,8−ジメトキシ−1,3−ジヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン1.7g(7.8mmol)を、DMF 35mlに懸濁し、次に水素化ナトリウム(油中の60%懸濁液)374mg(9.35mmol、1.2当量)を加える。清澄な淡黄色の溶液を得て、それを25℃で1時間撹拌する。次にDMF 10mlに溶解したtert−ブチル(3−クロロプロピル)メチルカルバメート1.94g(9.35mmol、1.2当量)を滴下する。全体を50℃で一晩加熱し、次に溶媒を蒸発乾固する。残留物を水に取り、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、次に蒸発乾固する。油状物4.2gを得て、それをシリカ200gのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤=ジクロロメタン/酢酸エチル:80/20)により精製する。予想される生成物2.3gを無色の油状物の形態で得る。
収率=77%
IR(純粋):ν=1685、1659、1155、1102、872、770cm−1
【0040】
工程2: 7,8−ジメトキシ−3−[3−(メチルアミノ)プロピル]−1,3−ジヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン
工程1で得た生成物1.9g(4.86mmol)を、エタノール30mlに溶解し、そしてエタノール中のHClの溶液(3.5N)7ml(24.3mmol、5当量)に加える。60℃で一晩加熱し、そして反応混合物を蒸発乾固する。得られた残留物を水に取り、次に20%水酸化ナトリウム溶液を加えることにより水相をpH=8に調整し、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、次に蒸発乾固する。標記生成物1.1gを無色の油状物の形態で得る。
収率=78%
IR(純粋):ν=3400、1651、1610、1510、856、710cm−1
【0041】
実施例3: 3,4−ジメトキシ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボニトリル
文献(Tetrahedron 1973, 29 73-76参照)に記載されているように、又は下記の反応順序に従って、標記化合物を、3−(2−ブロモ−4,5−ジメトキシフェニル)プロパンニトリルの環化により得ることができる:
工程1: 3,4−ジメトキシ−6−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド
三つ口フラスコ中で、塩化アルミニウム40.8gをジクロロメタン200ml中に撹拌しながら分散する。溶液を0℃に冷却する。ジクロロメタン100mlに溶解した3,4,6−トリメトキシベンズアルデヒド20g(0.101mol)の溶液を滴下してそそぐ。温度を再び19℃に上昇させ、そして45分間撹拌する。反応混合物を400gの水と氷で加水分解し、次に1N HCl 100mlを加え、そして30分間撹拌する。分離させ、次にジクロロメタン200mlで抽出する。有機相を1N HCl 100ml、水100ml及び飽和NaCl水溶液100mlで洗浄し、次にMgSOで乾燥させ、濾過し、そして蒸発乾固する。標記生成物16.4gを得る。
収率=77%
IR(純粋):1625、1146cm−1
【0042】
工程2: 2−ホルミル−4,5−ジメトキシフェニルジメチルスルファメート
3,4−ジメトキシ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド16.2g(0.0889mol)を、DMF 80mlに溶解する。10℃に冷却し、そして炭酸カリウム24.6g(0.178mol)を数回に分けて加える。周囲温度に戻し、そして30分間撹拌する。約10℃に冷却し、そしてN,N−ジメチルスルファモイルクロリド10.1ml(0.093mol)を滴下してそそぐ。周囲温度に戻し、そして2時間撹拌する。反応混合物を600gの水と氷にそそぎ、そして周囲温度で1時間撹拌する。形成された沈殿物を濾別し、そして各回水50mlで3回洗浄し、次に減圧下で乾燥させる。標記生成物21.3gを得る。
収率=83%
IR(純粋):1670、1278、1150cm−1
【0043】
工程3: 2−(2−シアノビニル)−4,5−ジメトキシフェニルジメチルスルファメート
水素化ナトリウム3.1g(0.0773mol)を、THF 400ml中のシアノメチルホスホン酸ジエチル11.9ml(0.0736mol)の0℃の溶液に、数回に分けて加える。混合物を−10℃に冷却し、そしてTHF 200ml中の2−ホルミル−4,5−ジメトキシフェニルジメチルスルファメート21.3g(0.0736mol)の懸濁液を滴下する。30分間撹拌し、炭酸水素ナトリウムと水(50/50)の溶液600mlで加水分解し、次に溶液を各回トルエン300mlで2回抽出する。有機相を水100ml及び飽和NaCl水溶液100mlで洗浄し、次にMgSOで乾燥させ、濾過し、そして蒸発乾固する。得られた残留物をジイソプロピルエーテル80ml中で周囲温度にて結晶化させ、次に濾過し、ジイソプロピルエーテル20mlで洗浄し、そして減圧下で乾燥させる。標記生成物18.4gを得る。
収率=80%
IR(純粋):2217、1361、1165cm−1
【0044】
工程4: 2−(2−シアノエチル)−4,5−ジメトキシフェニルジメチルスルファメート
水素化ホウ素ナトリウム6.7g(0.177mol)をTHF 150ml中に分散する。THF 200ml中の2−(2−シアノビニル)−4,5−ジメトキシフェニルジメチルスルファメート18.4g(0.059mol)の懸濁液を滴下してそそぐ。メタノール48mlを滴下してそそぐ。50℃で3時間加熱し、次に冷却し、そして水素化ホウ素ナトリウム1g(0.026mol)を加える。反応混合物を50℃で1時間加熱し、次に周囲温度で一晩撹拌する。温度を約20℃に維持しながら、4N HCl水溶液60mlを反応混合物に注ぐことにより加水分解する。氷40g及び水30mlを加え、次に各回酢酸エチル200mlで2回抽出する。有機相を水及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、次にMgSOで乾燥させ、濾過し、そして蒸発乾固する。標記生成物17.4gを得る。
収率=94%
IR(純粋):2246cm−1
【0045】
工程5: 3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボニトリル
再蒸留ジイソプロピルアミン5.4ml(0.0382mol)及びTHF 60mlを、窒素下で一緒に混合する。混合物を−50℃に冷却し、そしてヘキサン中のブチルリチウムの2.5N溶液15.3ml(0.0382mol)を滴下してそそぐ。温度を再び−5℃に上昇させ、そして10分間撹拌する。溶液を−60℃に冷却し、そしてTHF 35ml中の2−(2−シアノエチル)−4,5−ジメトキシフェニルジメチルスルファメート3g(0.00954mol)の溶液を滴下してそそぐ。反応物の消失をHPLCによりモニタリングしながら、温度を−24℃に再びゆっくりと上昇させる。反応混合物を水と氷の混合物に加え、そして酢酸エチルで抽出する。有機相を1N 水酸化ナトリウム溶液、1N HCl水溶液、水及び飽和NaCl水溶液で連続して洗浄し、次にそれらをMgSOで乾燥させ、濾過し、そして溶媒を蒸発させる。残留物2gを得て、それをシリカ70gのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤=ジクロロメタン)により精製して、標記生成物0.9gを白色の固体の形態で得る。
収率=50%
M.p.(KB)=89〜91℃
【0046】
実施例4: (R,S)−3,4−ジメトキシ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルバルデヒド
3,4−ジメトキシ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルボニトリル10g(52.8mmol)を、無水トルエン100mlに溶解する。溶液を−78℃に冷却し、次に温度を−65℃より低く維持しながら、水素化ジイソブチルアルミニウム溶液(トルエン中1.2M)55mlを滴下する(添加時間=45分間)。添加が完了したら、撹拌を−78℃で1時間実施する。メタノール20mlを滴下することにより加水分解を実施する。温度を−30℃に戻し、次に反応混合物をHCl(0.1N)200mlに加え、そしてエーテルでの抽出を2回実施する。有機相を水及び飽和NaCl水溶液で連続して洗浄し、次にMgSOで乾燥させ、濾過し、そして蒸発乾固して、標記生成物8gを淡黄色の油状物の形態で得る。
収率=79%
IR(純粋):ν=2714、2630、1712cm−1
【0047】
実施例5: (R,S)−3−(3−{[(3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル)メチル](メチル)アミノ}プロピル)−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン
(R,S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルバルデヒド8g(52.4mmol、1.2当量)を、無水THF 150mlとジクロロメタン20mlとの混合物に溶解する。7,8−ジメトキシ−3−[3−(メチルアミノ)プロピル]−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン12.8g(43.6mmol)及び酢酸2.48ml(43.6mmol)を加える。全体を0℃に冷却し、そして30分間撹拌する。次にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド14g(65.6mmol、1.5当量)を加える。反応は瞬間的である。蒸発乾固を実施する。次に残留物を1N 水酸化ナトリウム溶液に取り、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、そして蒸発乾固して、油状物20gを得て、それをシリカ800gのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤=ジクロロメタン/エタノール/NHOH:90/10/1)により精製する。標記生成物16.8gが無色の油状物の形態で得られ、これは周囲温度で結晶化する。
収率=82%
M.p.(KB)=98〜100℃
【0048】
実施例6: 3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン塩酸塩
実施例5で得られたラセミ化合物2.1gを、Chiralpak(登録商標)AD相(粒度分析20μm)2.1kgを充填した60cm×60mmカラムで分離する。使用する溶離剤は、50ml/分の流速でのエタノール/アセトニトリル/ジエチルアミン混合物(10/90/0.1(容量))である。結合している紫外線検出器を280nmの波長で使用する。
【0049】
(R)配置を有する鏡像異性体0.95gを、白色のメレンゲの形態で得て、次に(S)配置を有する鏡像異性体0.95gを同様に白色のメレンゲの形態で得る。
【0050】
次に(S)配置を有する鏡像異性体の塩酸塩を、欧州特許第0534859号特許明細書(実施例2、工程E)に記載される手順に従って得る。
【0051】
実施例7: 3−{3−[[(3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル)メチル](メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3−ジヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン
7,8−ジメトキシ−3−[3−(メチルアミノ)プロピル]−1,3−ジヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン1.1g(3.78mmol)を、THF 50ml及びジクロロメタン7mlに溶解する。3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルバルデヒド0.69g(4.53mmol、1.2当量)及び酢酸0.22mlを加える。反応混合物を0℃に冷却し、そしてナトリウムトリアセトキシボロヒドリド1.2g(5.67mmol、1.5当量)を加える。反応は瞬間的である。蒸発乾固する。残留物を水に取り、そして水相を20%水酸化ナトリウム溶液を加えることによりpH=8に調整し、そしてジクロロメタンで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、そして蒸発乾固する。油状物1.7gを得て、それをシリカ100gのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤=ジクロロメタン/エタノール/NHOH:95/5/0.5)により精製して、標記生成物1.4gを無色の油状物の形態で得る。
収率=79%
IR(純粋):ν=1656、1607、1511、1273、1206、1102、836、760cm−1
【0052】
実施例8: 3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン塩酸塩
実施例7で得られたラセミ化合物1.4gを、Chiralpak(登録商標)T101相(粒度分析20μm)3kgを充填した60cm×60mmカラムで分離する。使用する溶離剤は、100ml/分の流速でのエタノール/アセトニトリル/ジエチルアミン混合物(10/90/0.1(容量))である。結合している紫外線検出器を280nmの波長で使用する。(R)配置を有する鏡像異性体0.56gを無色の油状物の形態で得て、次に(S)配置を有する鏡像異性体0.62gを同様に無色の油状物の形態で得る。
【0053】
次に(S)配置を有する化合物を、欧州特許第0534859号特許明細書(実施例1、工程D)に記載される手順に従って水素化する。得られた化合物の塩酸塩を、欧州特許第0534859号特許明細書(実施例2、工程E)に記載される手順に従って調製する。
【0054】
実施例9: 3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン塩酸塩
(7S)−3,4−ジメトキシ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルバルデヒド及び7,8−ジメトキシ−3−[3−(メチルアミノ)プロピル]−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オンから出発して、実施例5と同様に進めることにより、イバブラジン塩基を得て、次にそれを欧州特許第0534859号特許明細書(実施例2、工程E)に記載される手順に従ってその塩酸塩に変換する。
【0055】
実施例10: 3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン塩酸塩
(7S)−3,4−ジメトキシ−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−カルバルデヒド及び7,8−ジメトキシ−3−[3−(メチルアミノ)プロピル]−1,3−ジヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オンから出発して、実施例7と同様に進めることにより、化合物を得て、それを欧州特許第0534859号特許明細書(実施例1、工程D)に記載される手順に従って水素化して、イバブラジン塩基を得て、次にそれを欧州特許第0534859号特許明細書(実施例2、工程E)に記載される手順に従ってその塩酸塩に変換する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VI):
【化15】


[式中、Aは、HC−CH又はHC=CHを表す]で示されるラセミ又は光学活性形態の化合物の合成方法であって、式(VII):
【化16】


で示されるラセミ又は光学活性形態の化合物を、式(VIII):
【化17】


[式中、Aは、上記で定義するとおりである]で示される化合物と、還元剤の存在下、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中で、還元的アミノ化反応に供することを特徴とする、合成方法。
【請求項2】
式(VII)の化合物が光学活性形態であり、特に(S)配置を有することを特徴とする、請求項1記載の合成方法。
【請求項3】
基Aが、HC−CHを表し、そして式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応の生成物が、式(I):
【化18】


で示されるイバブラジンであり、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよいことを特徴とする、請求項2記載の合成方法。
【請求項4】
基Aが、HC=CHを表し、そして(S)配置を有する式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応の生成物が、式(V):
【化19】


で示される化合物であり、これの接触水素化により、式(I):
【化20】


で示されるイバブラジンが得られ、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよいことを特徴とする、請求項2記載の合成方法。
【請求項5】
式(VII)の化合物が、ラセミ形態であり、そして式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応に、得られた式(VI)のラセミ化合物の光学分割工程が続くことを特徴とする、請求項1記載の合成方法。
【請求項6】
Aが、HC−CHを表し、そして式(VI)の化合物の光学分割工程の後に得られる生成物が、式(I):
【化21】


で示されるイバブラジンであり、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよいことを特徴とする、請求項5記載の合成方法。
【請求項7】
Aが、HC=CHを表し、そして式(VI)の化合物の光学分割工程の後に得られる生成物が、式(V):
【化22】


で示される化合物であり、これの接触水素化により、式(I):
【化23】


で示されるイバブラジンが得られ、これを、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸から選択される薬学的に許容されうる酸とのその付加塩に、そしてそれらの水和物に、場合により変換してもよいことを特徴とする、請求項5記載の合成方法。
【請求項8】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用する還元剤が、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び、特に担体形態又は酸化物形態の、パラジウム、白金、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、及びそれらの誘導体などの触媒の存在下での二水素から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項記載の合成方法。
【請求項9】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用する還元剤が、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドであることを特徴とする、請求項8記載の合成方法。
【請求項10】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用する溶媒が、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、酢酸類、アルコール類、好ましくはエタノール、メタノール又はイソプロパノール、トルエン及びキシレンから選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項記載の合成方法。
【請求項11】
式(VII)の化合物の式(VIII)の化合物との還元的アミノ化反応を実施するために使用する溶媒が、テトラヒドロフランとジクロロメタンとの混合物であることを特徴とする、請求項10記載の合成方法。
【請求項12】
式(VII):
【化24】


で示されるラセミ又は光学活性形態の化合物。