説明

イミダゾリドン基を有するポリマー鎖を含むポリマー材料

【課題】イミダゾリドン官能基を有する鎖を含むポリマー材料。衝撃改質剤、レオロジー調整剤、2種類のポリマーを含む組成物での相溶化剤としても使用できる。
【解決手段】水素結合を介して互いに結合された高分子鎖から成るポリマー材料であって、上記高分子鎖を構成するポリマー主鎖に少なくとも一つの共有結合を介して改質剤が結合され、この改質剤は水素結合を介して結合可能な一つまたは複数の会合基(groupes associatifs)と上記ポリマー主鎖と共有結合を形成可能な一つまたは複数の反応性基とを同じ分子中に一緒に有し、上記改質剤の少なくとも一つの会合基がイミダゾリドン型の複素環であり、上記高分子鎖の1鎖当たりのイミダゾリドン基の数が平均して1〜10個であるポリマー材料。導入するイミダゾリドン基の平均数は高分子鎖の平均重量と所望最終特性とに依存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料、特に水素結合型の相互作用によって結合した高分子鎖から成るポリマー材料に関するものである。
本発明はさらに、上記材料の合成方法と、その組成物中での添加剤としての使用とに関するものである。
本発明材料はそのままの形で衝撃改質剤、レオロジー調整剤等として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明が解決しようとする一つの技術的課題はポリマーの溶融状態での粘度(粘性レベル)とその機械特性とをバランスさせることにある。すなわち、熱可塑性樹脂では加工時には低粘度であることが必要であり、それは低分子量の系でしか得られない。一方、最終材料には高い破断点伸びと、優れた衝撃強度、クリープ強度および耐溶剤性が望まれ、そのためには逆に高分子量であることが必要である。
【0003】
また、分子量が極めて高いポリマーは低分子量のポリマーの合成よりはるかに合成が難しいということも知られている。
本発明が解決すべき他の技術的課題は優れた耐薬品性と化学安定性とを有するポリマー組成物を製造することにある。
本発明が解決すべきさらに別の問題は、第1段階で製造されたホモポリマーと結合させてブロックコポリマーまたは櫛形コポリマーを製造することにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、イミダゾリドン基を有する改質剤をポリマーに導入してポリマーを化学的に改質することによって上記課題が解決できるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるポリマーの化学的改質では、ポリマー主鎖と改質剤との間に共有結合が形成される。この改質剤は水素結合によって結合可能な一つまたは複数の会合基(groupes associatifs)と、ポリマー主鎖と共有結合を形成可能な一つまたは複数の反応性基(groupes reactifs)とを同じ分子中に一緒に有する。
本発明の改質剤の少なくとも一つの会合基はイミダゾリドン(imidazolidone)型の複素環である。
上記ポリマー主鎖はグラフト操作(すなわち少なくとも一つの共有結合を介して改質剤をポリマー主鎖に結合させること)を容易にするために、必要に応じて、慎重に選択された一定数のコモノマーを含むことができる。
【0006】
変性ポリマー鎖は上記会合基が存在することによって水素結合を介して互いに結合できる。また、この会合基が未変性ポリマー中にある場合には未変性ポリマの会合能力を強化する役目をする。この形式の会合の一つの利点は水素結合が可逆であること、すなわち、水素結合が温度の上昇または選択溶媒の作用で開裂でき、再形成できることにある。
【0007】
本明細書の化学的改質の一つの利点は加工条件が改善され、変性ポリマーの最終特性、特に機械的特性が改良されることにある。また、上記会合基を使用することによって高分子量ポリマーの特性を低分子量のポリマー(制御された状態で製造するのが容易)に付与することができる。
本明細書の化学的改質によって種類の異なる高分子鎖に同じ型の会合基をグラフトすることができる。
【0008】
上記会合基は種々の経路でポリマーに導入できる。例えば、会合基を有するモノマーとの共重合、または、改質剤をポリマー合成中に移動剤または停止剤として用いることが挙げられる。本発明では既に構成されたポリマーまたはコポリマー系に改質剤を反応させることで会合基を導入する。換言すれば、重合または重縮合の段階の後に会合基を導入する。重縮合で得られる反応性の鎖末端を有するしポリマー系、例えばポリエステルやポリアミドでは合成中に改質剤を連鎖制限剤として導入することもできる。
【0009】
既存のポリマーまたはコポリマーを改質によって加工することの一つの利点は一回の重合で全ての範囲の製品を作ることができること、例えば、グラフト段階での改質剤の量または反応時間を変えることによって会合基の数の異なる変性ポリマーを作ることができる。これに対して、会合基を有するモノマーを用いて同じ結果を得るためには、毎回、新規に重合を行う必要がある。
異なるポリマーの種類に属する複数の高分子鎖に会合基を存在させることによって、水素結合を介して互いに結合した2種類のブロックを有するブロックコポリマーを製造することができる。
【0010】
本発明の対象は、水素結合を介して互いに結合された高分子鎖から成るポリマー材料であって、上記高分子鎖を構成するポリマー主鎖(squelettes)に少なくとも一つの共有結合を介して改質剤が結合され、この改質剤は水素結合を介して結合可能な一つまたは複数の会合基(groupes associatifs)と上記ポリマー主鎖と共有結合を形成可能な一つまたは複数の反応性基(groupes reactifs)とを同じ分子中に一緒に有し、上記改質剤の少なくとも一つの会合基がイミダゾリドン型の複素環であり、上記高分子鎖の1鎖当たりのイミダゾリドン基の数が平均して1〜10個であることを特徴とするポリマー材料にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記ポリマー主鎖はグラフト操作を容易にするための慎重に選択されたコモノマーを含むことができる。すなわち、改質剤を少なくとも一つの共有結合を介してポリマー主鎖に結合させるのを容易にするためのコモノマーを必要に応じて含むことができる。
高分子鎖に導入されるイミダゾリドン基の平均数は高分子鎖の平均重量とポリマー材料に付与したい最終特性との両方に依存する。
【0012】
改質剤の混合物を用いることができる。例えば、種類の異なる改質剤を同じポリマー主鎖に結合させたり、一種の改質剤を一つのポリマー主鎖に結合させ、別の改質剤を他のポリマー主鎖に結合させたり、ポリマー主鎖を種類の異なるポリマー主鎖の混合物にしたり、これらを組合せることができる。
【0013】
本発明のポリマー材料は押出、共押出、射出成形、吹込み成形、圧縮成形、多色成形、カレンダー加工、熱成形等で加工できる。本発明のポリマー材料を用いて管、フィルム、シート、レース、ボトルまたはコンテナのような物品が製造ができる。本発明のポリマー材料はその他の材料、例えば他のポリマーとブレンドすることもでき、従って、本発明のポリマー材料は例えば衝撃改質剤またはレオロジー調整剤としても用いられる。
【0014】
本発明の別の対象は、種類の異なる少なくとも2種類のポリマーを含む組成物中での相溶化剤としての上記ポリマー材料の使用にある。
ポリマー主鎖は種類の異なるポリマーにすることができ、このポリマー主鎖はポリオレフィン、ポリジエン、ポリビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマーの中から選択するのが好ましい。好ましい実施例のポリマー主鎖の数平均分子量は1000〜100,000である。
【0015】
改質剤は水素結合を介して互いに結合できる一つまたは複数の会合基Aと、ポリマーと共有結合を形成できる一つまたは複数の反応性基Rとを同じ分子中に一緒に含む。会合基Aと反応性基Rは硬質または軟質な鎖Xを介して結合している:
A−X−R
【0016】
本発明では、改質剤の少なくとも一つの会合基Aがイミダゾリドン型の複素環である。
【化1】

【0017】
改質剤中に存在する反応性基Rは重合可能な化学基である必要はなく、ポリマー主鎖に存在する反応性基と共有結合を形成できる基であればよい。この反応性基Rはハロゲン、第一または第二アミン、アルコール、チオール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはその誘導体(カルボン酸の塩化物または臭化物、カルボン酸の無水物またはエステル)、スルホン酸またはその誘導体、イソシアネートまたはエポキシ基にすることができる。
【0018】
硬質または軟質な鎖Xは一つまたは複数のヘテロ元素を有する炭化水素鎖にすることができ、−C(O)O−、OC(O)、C(O)、−O−、−S−または−NH−のブリッジを介して結合した1〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル鎖、環またはアルキルまたはアリール単位のブロックにすることができる。鎖X中に存在する上記の基、特にC(O)NHアミドブリッジは水素結合を介して互いに結合できるので有利である。
【0019】
反応性基Rとポリマー主鎖との反応によって追加の基ができ、その基が水素結合、特に−C(ON)NH−または−NHC(O)−アミドのブリッジによって結合する場合もある。
本発明の好ましい実施例の改質剤は下記の分子の一つに対応する:
【0020】
【化2】

【0021】
驚くべきことに、イミダゾリドン会合基のグラフトによるポリマーを化学的に改質することによってポリマーの物理特性に大きな変化が生じる。特に、会合基の存在によって変性ポリマーの弾性率が広範囲の温度で上昇する。すなわち、変性PMMAの場合、弾性率の向上は約170℃の温度までみられるが、この系の機械特性の実質的な向上は低温度でしか見られない(80℃以下は下記文献1、140℃以下は下記文献2を参照)。
【非特許文献1】Yamauchi K.et al., Macromolecules, 37,3519 (2004)
【非特許文献2】Colombani O. Doctoral thesis, Universite de Paris VI(2003)
【0022】
本発明の特徴を用いることで他の特性、例えば透明性、高温流動性または易加工性を維持したままで、既に高い熱機械的強度を有するPMMAのような系を強化することができる。さらに、イミダゾリドン型の会合基によって改質されたポリマー系は耐溶剤性が向上する。
イミダゾリドン官能基を有する2種類の異なるポリマー主鎖をブレンドすることによって「ブロックコポリマー」を形成することができる。このジブロックはマイクロ相分離を示す。
ジブロック型の直鎖の会合
【0023】
【化3】

【0024】
「マルチブロック」型の直鎖の会合
AとBは異なるポリマー主鎖である。○はイミダゾリドン官能基を含む基。異なるポリマー主鎖AおよびBはその各末端に改質剤を有し、マルチブロックな直鎖の会合A/Bが得られる。
【化4】

【0025】
「グラフト化コポリマー」型の「分岐鎖」会合
AとBは異なるポリマー主鎖である。○はイミダゾリドン官能基を含む基。2種類の異なるポリマー主鎖AおよびBは、Aの各鎖が少なくとも2つの改質剤を有し、Bの各鎖はその一方の末端の一つの改質剤を有するか、各末端に一つの改質剤を有する。
【化5】

【実施例】
【0026】
実施例1
N−アミノエチル−2−イミダゾリドン(AEIO)の合成
水冷還流凝縮器と磁気攪拌器を備えた500mlの三つ口フラスコに、154.5(1.5mol)gのジエチレントリアミン(DETA)と154.5(8.58mol)gの水とを入れる。反応混合物を窒素でパージする。水/DETAの混合で熱が発生し、反応媒体が予熱される。次に、45g(0.75mol)の尿素を添加する。還流に達成するまで温度を上げる(〜130℃)。反応を10時間続ける。
反応後、温度は変えずに、還流装置を取り外して、水とDETAとをできるだけ蒸発させる。残留DETAをわずかな減圧下(10mmHg)、〜75℃で単純な蒸留によって蒸発させる。次に、混合物を〜0.08〜0.09mmHg下で分留する。最初の留分は回収しない。次の留分でのカラム頂部温度は105℃である。
融点M.p.が41℃で、分子量が129gの白色結晶固体AEIOが得られる。蒸留後の収率は尿素に対してη=75%である。
【0027】
実施例2
MMAベースのコポリマーにAEIOをグラフト
再循環を備えたDaca二軸スクリュー押出機に220℃で3gのHT10コポリマー(90%のメチルメタクリレートを含むアクリルコポリマー、Mn=40,000g/mol、1鎖当たり〜30個の無水物基)と、実施例1で合成した290mg(2.25mmol)のAEIOとを導入する。5分のブレンド時間でグラフト化コポリマーHT10−g−UDが得られる。
FTIRによってC=O二重結合に関する3つの帯域(1850〜1600cm-1)を各コポリマーで記録した。
【表1】

【0028】
無水物の帯域が完全に消失し、イミダゾリドン単位に特徴的な帯域が現れたことでグラフトしたことが証明される。
変性コポリマーでは、クロロホルム中での溶解度が大幅に低下し、ガラス転移温度の上昇が記録された。
Tg(HT10)=121℃
Tg(HT10−g−UD)=129℃
DMAで軟化点に関して2種のコポリマーのTg値に差がみられる。さらに、190℃からHT10−g−UDの弾性率が下がり、最後にはHT10の弾性率と一致する。
【0029】
【表2】

【0030】
実施例3
MMAベースのコポリマーにAEIOをグラフト
再循環を備えたDaca二軸スクリュー押出機に220℃で3gのHT121コポリマー(96%のメチルメタクリレートを含むアクリルコポリマー、Mn=40,000g/mol、1鎖当たり〜3個の無水物基)と、実施例1で合成した29mg(0.225mmol)のAEIOとを入れる。5分のブレンド時間でグラフト化コポリマーHT121−g−UDが得られる。
FTIRによってC=O二重結合に関する3つの帯域(1850〜1600cm-1)を各コポリマーげ記録した。
【表3】

【0031】
無水物の帯域が完全に消失し、イミダゾリドン単位に特徴的な帯域が現れることによってグラフトしたことが証明される。
このコポリマーではガラス転移温度の上昇が記録された。
Tg(HT121)=123℃
Tg(HT121−g−UD)=129℃
【0032】
実施例4
エチレンベースのコポリマーにAEIOをグラフト
再循環を備えたDaca二軸スクリュー押出機に140℃で0.21mmolの無水物官能基を含む3gのロタデル(Lotader3210、登録商標)コポリマー(Mn=13,500g/mol、1鎖当たり〜2.8個の無水物基)と、実施例1で合成した27mg(0.21mmol)のAEIOとを導入する。10分のブレンド時間でグラフト化コポリマーロタデル(Lotader)3210−g−UDが得られる。
FTIRによってC=O二重結合に関する3つの帯域(1850〜1600cm-1)を各コポリマーで記録した。
【表4】

【0033】
ロタデル(Lotader3210、登録商標)の赤外線スペクトルから、高い比率の無水マレイン酸基が加水分解され、グラフトには関与しないことがわかる。ロタデル(Lotader)3210−g−UDでは無水物ピーク、酸ピークの強度の低下し、新しいアミドおよびイミダゾリドンのピークが現れる。しかし、グラフトは100%ではない。
このコポリマーの融点は同じ(150℃)で、結晶化度も同じ(28%)である。
DMAでは、溶融後にロタデル(Lotader)3210−g−UDコポリマーの弾性率は約0.15MPaの所に第2のプラトーを示すが、ロタデル(Lotader)3210コポリマーは第2のプラトーがない。
【0034】
実施例5
ポリアミドにAEIOをグラフト
COOH末端を有する低分子量Mw=1500g/molのポリアミドに上記と同様な条件下でAEIOをグラフトする。分子量Mw=15,000g/molの同じポリアミド(Platamide)と比較して、変性ポリアミドPADUは周囲温度および約65℃以下の温度で弾性率が増加し、高温で高い流動性を示す。
【表5】

【0035】
実施例6
5%の酸官能基を有するPMMAにAEIOをグラフト
再循環を備えたDSM二軸スクリュー小型押出機で220℃でメチルメタクリレートとメタクリル酸(数で4.5%)とのコポリマーHT121(Mn=40,000g/mol)を30分間押し出す。FTIR(クロロホルム溶液)により無水物のC=O二重結合に特徴的な2つの吸収帯の出現が1755〜1805cm-1で観察される。
続いて、同じ押出機で15gの上記生成物と、1gのAEIOとを220℃で5分間ブレンドする。得られた生成物のFTIR試験(CHCl3)から部分グラフトであることがわかる。すなわち、生成したアミドのC=O結合の帯域は約1670cm-1で出現するが、無水物のC=O帯域に対応する帯域はほんのわずかしか減少していない。
HT121とグラフト化したHT121のサンプルをディスク状に圧縮した。これらのディスクを175℃でAres平行板レオメータに入れ、周波数掃引試験を1%の一定ひずみで行った(10Hz〜0.32MHz)。
【0036】
【表6】

【0037】
0.2Hz以上の周波数での粘度は両サンプルで同じである。一方、低周波数での粘度はグラフトによって大きく増加する。グラフト化したHT121ではポリマー鎖の緩和時間の著しい増加も観察される。この時間は過度に長く、用いた周波数掃引モードでは測定できない。
DMAでは、ガラス転移温度以上で、グラフト化したHT121に弾性率の緩やかな低下が観察される(150℃でのE’が約50MPa)。
【0038】
【表7】

【0039】
実施例7
無水物官能基を有するPMMAにAEIOをグラフト
メチルメタクリレートと、3.3%の無水物官能基を有するメタクリル酸(数で7.5%)とのコポリマー(Mn=30,000g/mol)を選択する。このコポリマーを「72565」と記録する。このポリマー15gと、0.64gのAEIOとを再循環を備えたDSM二軸スクリュー小型押出機で220℃で5分間ブレンドする。
【0040】
FTIR分光分析法(CHCl3)で1755〜1805cm-1で無水物に特徴的な帯域が減少し、グラフトで生成したアミドに起因する約1670cm-1で帯域が出現する。
グラフトに起因するガラス転移温度Tgの上昇が観察される:
Tg(72565)=130.8℃
Tg(グラフト化72565)=133.7℃
【0041】
DMA曲げクリープ試験を「72565」と、グラフト化した「72565」とに対して行う。各化合物の試験温度はTgより10℃低い。10MPaの応力を2時間加え、回復が2時間かけて観察される。図2は時間の関数で測定した応力と歪み(変形)の分布を示している。「72565」の2時間後の歪みレベルは9.2%であるのに対して、グラフトした72565では7.2%である。グラフトはさらに回復(recouvrance)を大きく向上させる。回復後2時間のグラフト化した72565の残留ひずみは3.8%(すなわち、クリープに起因するひずみのほぼ半分)であるのに対して、「72565」では6.0%であり、従って「72565」はクリープによるひずみの3分の1しか回復していない。
【0042】
【表8】

【0043】
【表9】

【0044】
実施例8
無水物基を有するPMMAに溶液中でAEIOをグラフト
還流加熱装置を備えた1リットルの丸底フラスコに、40gのPMMA72565と、3.5gのAEIO(過剰)と、600mlの無水クロロホルムとを入れる。
FTIR(CHCl3)で1755〜1805cm-1で無水物に起因する帯域が消失し、1670cm-1でアミド帯域が出現する。
DSC試験はさらにTgの著しい上昇を示している。
Tg(72565)=130.8℃
Tg(グラフト化72565 溶液)=138.3℃
【0045】
実施例8a
無水物基を有するMn=10,000g/molのPMMAにAEIOを押出グラフト
DSM二軸スクリュー押出機で220℃で10gのPMMA−3(8mol%の無水物官能基を含み、数平均分子量が10,000g/mol)を、一当量のAEIOの存在下または非存在下で押し出す。押出したポリマーを射出成形して断面積が1.5×4mmの棒にする。熱機械分析から変性したポリマーのサンプル(グラフト、グラフト2)と、未変性サンプル(ニート、ニート2、ニート3)との相違が明らかである。すなわち、未変性および変性ポリマーサンプルのガラス転移温度Tgはそれぞれ120℃および136℃である。三点曲げ試験(接触点間距離は10.2mm)では変性したサンプルで弾性率が+15%、破断点ひずみが+80%上昇するのが観察される。
【0046】
【表10】

【0047】
さらに、クリープ強度の向上がみられる。この実験ではシングルカンチレバー(単一片持ちレバー)で棒(長さ18mm、断面積1.5×4mm)に1MPaの応力を加えた。温度はTgより10℃高く設定した。変性サンプルでは126℃で2時間後のひずみ率が毎時0.16%であるが、未変性ポリマーのサンプルでは同じ条件下、110℃の温度で毎時0.35%である。応力除去後、温度をさらに3時間維持した時の変性したポリマーのサンプルではひずみが初期値の29%に減少するが、未変性のポリマーのサンプルでは初期値の60%に留まる。
【0048】
実施例9
ポリアミドにAEIOをグラフト
再循環を備えたDaca二軸スクリュー小型押出機に、3gの末端に酸基を有する低分子量(Mn=3000g/mol)のポリアミドPA(Platamid)と、0.256gのAEIOと、一滴のオルト燐酸とを導入する。得られたブレンドを230℃で2分間、20分間および1時間攪拌する。
FTIR分析からカルボン酸のC=O二重結合に対応する約1710cm-1の帯域が時間とともに減少することがわかる。
【0049】
【表11】

【0050】
平行プレート式レオメータARESを用いた150℃での1%歪下での分析で、全周波数範囲(10Hz〜0.32MHz)で粘性係数がグラフト時間の関数で増加することがわかる(弾性率は低く過ぎて正確に測定できない)。
【0051】
【表12】

【0052】
反応時間を20分以上にした場合、純粋な未グラフト化PAと比較してPA+AEIOブレンドでは粘性係数の増加がみられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素結合を介して互いに結合された高分子鎖から成るポリマー材料であって、上記高分子鎖を構成するポリマー主鎖(squelettes)に少なくとも一つの共有結合を介して改質剤が結合され、この改質剤は水素結合を介して結合可能な一つまたは複数の会合基(groupes associatifs)と上記ポリマー主鎖と共有結合を形成可能な一つまたは複数の反応性基(groupes reactifs)とを同じ分子中に一緒に有し、上記改質剤の少なくとも一つの会合基がイミダゾリドン型の複素環であり、上記高分子鎖の1鎖当たりのイミダゾリドン基の数が平均して1〜10個であることを特徴とするポリマー材料。
【請求項2】
上記改質剤が下記[化1]の一般式で表される請求項1に記載のポリマー材料:
【化1】

〔ここで、
Rはハロゲン、第一または第二アミン、アルコール、チオール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはその誘導体(カルボン酸の塩化物または臭化物、カルボン酸の無水物またはエステル)、スルホン酸またはその誘導体、イソシアネートまたはエポキシ基を表し、
Xは一種または複数のヘテロ元素を有する炭化水素鎖、例えば−C(O)O−、OC(O)、−C(O)NH−、−NHC(O)−、C(O)、−O−、−S−または−NH−のブリッジで結合した1〜30個の炭素原子から成る直鎖または分岐鎖のアルキル鎖、環またはアルキルまたはアリール単位のブロックを表す〕
【請求項3】
改質剤が結合した時に−NHC(O)−または−C(O)NH−のアミド型結合基ができる請求項1または2に記載のポリマー材料。
【請求項4】
上記改質剤が下記[化2]の一般式で表される請求項2に記載のポリマー材料:
【化2】

【請求項5】
上記改質剤が下記[化3]の一般式で表される請求項2に記載のポリマー材料:
【化3】

【請求項6】
上記改質剤が下記[化4]の一般式で表される請求項2に記載のポリマー材料:
【化4】

【請求項7】
上記改質剤が下記[化5]の一般式で表される請求項2に記載のポリマー材料:
【化5】

【請求項8】
ポリマー主鎖の数平均分子量が1000〜100,000である請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項9】
2つの異なる種類のポリマー主鎖が存在する請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項10】
各末端に改質剤を有する2つの異なる種類のポリマー主鎖AおよびBが存在し、マルチブロックの直鎖の会合A/Bを形成している請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項11】
2つの異なる種類のポリマー主鎖AおよびBが存在し、Aの各鎖は少なくとも2つの改質剤を有し、Bの各鎖はその一方の末端に一つの改質剤を有するか、両末端に各改質剤を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項12】
ポリマー主鎖がPMMAである請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項13】
ポリマー主鎖がポリアミドである請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項14】
ポリマー主鎖がポリエチレンである請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリマー材料で作られ物品、例えば管、フィルム、シート、レース、ボトル、コンテナ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリマー材料の衝撃改質剤またはレオロジー調整剤としての使用。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の材料の、種類の異なる少なくとも2種類のポリマーを含む組成物での相溶化剤としての使用。

【公表番号】特表2008−505998(P2008−505998A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519839(P2007−519839)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001741
【国際公開番号】WO2006/016041
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】