説明

イミノジコハク酸含有組成物及びその保存方法

【課題】保存安定性に優れ、輸送や保存において有利であり、溶解性に優れ、優れた洗浄力等の機能を発揮し、各種用途に好適に用いることができる固体組成物、及び、その保存方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):
[化1]


(式中、Rは、水素原子又は水酸基を表す。X〜Xは、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウム基を表す。)で表されるイミノジコハク酸を10〜95質量%含む固体組成物であって、
該固体組成物は、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含むものである固体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミノジコハク酸を含有する固体組成物及びその保存方法に関する。より詳しくは、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等に有用なキレート化合物含有組成物、並びに、食品工業、化学工業及び機械工業等の各種分野における各種洗浄や、家庭用及び業務用の自動食器洗浄機による洗浄に有用なイミノジコハク酸を含有する固体組成物及びその保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キレート化合物を含む組成物は、各種の金属イオン等と錯体を形成することができるものであることから、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等の各種用途に好適に用いられている。このような組成物としては、輸送や保存上の便宜の点から、固形状とすることが望まれている。
【0003】
イミノジコハク酸化合物を固形状とすることに関し、イミノジコハク酸化合物と無機金属塩とを含有する粘着性がなく取り扱いの容易な粉末ビルダー組成物(例えば、特許文献1参照。)、及び、イミノジコハク酸化合物を含有し、気温23℃、湿度65%の恒温恒湿下での吸湿速度が20重量%/日以下であることを特徴とする造粒されていてもよい粉末、及び、イミノジコハク酸化合物および無機金属塩を含有し、気温23℃、湿度65%の恒温恒湿下での吸湿速度が20重量%/日以下であることを特徴とする造粒されていてもよい粉末が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの粉末は、溶解性については示唆も開示もなくどのような粉末を調製すれば溶解性に優れた粉末になるかということについて工夫の余地があった。また、これらの粉末は、pH調整のための酸やゼオライト等の無機金属塩や界面活性剤等を添加して製造することとなるが、このような添加剤を含まず、種々の用途に好適なものとすることが望まれている。
【0004】
3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類の固体組成物及びその製造方法に関し、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類を含有する固体組成物であって、該3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類の含有量は、固体組成物の水を除く固形分に対して70質量%以上であり、該固体組成物は、該固体組成物に対して20質量%以下の水分を含むものであることを特徴とする固体組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法においては、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類の水分量を調製することによっているが、固体組成物の各種特性を充分に発揮するとともに、溶解性や取り扱い性等において、さらに優れたものとする工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平9−104897号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平9−110813号公報(第2頁)
【特許文献3】特開2007−31594号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、保存安定性に優れ、流動性や吸湿性に優れ、各種用途に好適に用いることができる固体組成物、及び、その保存方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、キレート化合物含有組成物について種々検討したところ、イミノジコハク酸が優れた洗浄能力及び生分解性を有すことに着目した。イミノジコハク酸と、特定の水溶性重合体及び/又は有機酸塩とを用いた固体組成物とすることにより、固体組成物の吸湿性が低くハンドリング性に優れ、ブロッキングを起こしにくい等の優れた安定性を示し、輸送や保存においても有利であるだけでなく、溶解性にも優れたものとすることができる固体組成物とすることができることを見いだした。すなわち、イミノジコハク酸と有機酸塩の混合粉体、イミノジコハク酸と水溶性ポリマーの混合粉体、又は、イミノジコハク酸と有機酸塩と水溶性ポリマーを含む固体組成物(混合粉体)とすることで、高いキレート能及び水溶性を保ったまま、吸湿性及び流動性を改善することができることを見いだした。また、イミノジコハク酸の含有量を特定のものとすることにより、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等の各種用途に好適に用いられるものとできることを見いだした。特に、酸やゼオライト等の無機金属塩や界面活性剤等を添加剤として含まないことから、これらが含まれることが好まれない用途にも好適に用いることができ、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、上述の作用効果を発揮し、様々な用途に用いることができるイミノジコハク酸固体組成物の保存方法を有利なものとすることができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、下記一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは、水素原子又は水酸基を表す。X〜Xは、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウム基を表す。)で表されるイミノジコハク酸を10〜95質量%含む固体組成物であって、上記固体組成物は、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含むものである固体組成物である。
本発明はまた、上記固体組成物の保存方法であって、上記保存方法は、上記固体組成物中、イミノジコハク酸を10〜95質量%含有する固体組成物の保存方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の固体組成物は、上記一般式(1)で表されるイミノジコハク酸を含むものである。
本発明の固体組成物は、上記イミノジコハク酸を含み、さらに、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つ(以下、第2成分ということもある。)を含むことにより、キレート能に優れ、水溶性が高い等の優れた性能を有するだけでなく、固体組成物の吸湿性が低く、優れた流動性を示し、保存安定性及び取り扱い性に優れるものである。このような効果を奏するため、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等に有用であり、食品工業、化学工業及び機械工業等の各種分野における各種洗浄や、家庭用及び業務用の自動食器洗浄機による洗浄等の各種用途に用いることができる。
【0011】
上記イミノジコハク酸としては、上記一般式(1)で表されるものである。上記一般式(1)中、Rは、水素原子又は水酸基を表す。Rは、水素原子又は水酸基のいずれであっても好適に用いることができるが、Rが水酸基であるイミノジコハク酸の方が、吸湿性が高く水への溶解性に優れることから、第2成分(水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つ)を含むものとすることにより、吸湿性を低下させる効果が大きく、保存安定性に優れるものとなり、種々の用途に好適に用いることができるため好ましい。このように、上記イミノジコハク酸は、Rが水酸基である固体組成物もまた本発明の好ましい形態の一つである。以下、主にRが水酸基である形態について説明するが、Rが水素原子である場合も同様である。なお、Rが水酸基であるイミノジコハク酸をイミノカルボン酸、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸又はHIDSとも言う。
【0012】
上記一般式(1)中、X〜Xとしては、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウム基を表す。アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が好適である。アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が好適である。アンモニウム基としては、アンモニウム基又は有機アンモニウム基が好適であり、有機アンモニウム基(有機アミン基)としては、例えば、モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が好適である。これらの中でも、上記X〜Xとしては、ナトリウム又はカリウムであることがより好ましい。
上記イミノジコハク酸は、部分中和されたものであってもよく、完全に中和されたものであってもよい。したがって、単に「イミノジコハク酸」とは、上記X〜Xが全て水素原子である酸の形態、上記X〜Xの一部又は全部が、水素原子以外の原子又は基である塩の形態のいずれであってもよい。すなわち、「イミノジコハク酸」は、一分子中に存在する4つのカルボキシル基の全てが酸の形態であるもの、一分子中に存在する4つのカルボキシル基のうち1つ以上が塩の形態であるもののいずれかを指す。なお、Rが水酸基であるイミノカルボン酸(3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸、HIDS)においても同様であり、イミノカルボン酸(3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸、HIDS)は、一分子中に存在する4つのカルボキシル基の全てが酸の形態であるもの(HIDS酸又はHIDS−4Hともいう)、一分子中に存在する4つのカルボキシル基のうち1つ以上が塩の形態であるもの(HIDS−4Na等で表すこともある)のいずれかを指す。
【0013】
上記イミノジコハク酸の製造方法において、例えば、HIDSの製造方法としては、アスパラギン酸及び/又はその塩と、エポキシコハク酸とを含む原料を水性媒体中で反応させる方法を挙げることができる。
上記製造方法において、原料におけるアスパラギン酸及び/又はその塩と、エポキシコハク酸との比率や、反応温度等の反応条件は、特に限定されるものではない。また、エポキシコハク酸としては、シス体、トランス体の両立体異性体を用いることができ、両者の中でもシス体を用いることが好ましい。水性媒体とは、水又は水と水に溶解する溶媒との混合物であり、水;水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル等との混合溶媒が好適である。これらの中でも、水を用いることが好ましい。
【0014】
上記イミノジコハク酸は、上記一般式(1)で表される構造を有するため、アスパラギン酸骨格部分がL体、D体である光学異性体が存在することになる。
イミノジコハク酸のアスパラギン酸骨格部分とは、上記一般式(1)中の下記一般式(2);
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、X及びXは、同一若しくは異なって、上記一般式(1)中のX及びXと同じである。)で表される構造を意味する。
またアスパラギン酸骨格部分におけるL体、D体とは、上記一般式(2)で表される構造中の不斉炭素原子における立体配置がS配置、R配置である化合物であり、S配置の場合はL体、R配置の場合はD体となる。
【0017】
上記イミノジコハク酸は、上記イミノジコハク酸の製造方法において、原料としてL体又はD体の立体配置を有するアスパラギン酸及び/又はその塩を用いることにより、対応するイミノジコハク酸のアスパラギン酸骨格部分がL体又はD体の立体配置とすることができる。例えば、原料としてD体のアスパラギン酸及び/又はその塩を用いると、エポキシコハク酸と反応して生成するイミノジコハク酸のアスパラギン酸骨格部分が、原料の立体配置に由来してD体に保持され、イミノジコハク酸のアスパラギン酸骨格部分の不斉炭素原子がR配置であるイミノジコハク酸が生成することになる。また、イミノジコハク酸のラセミ体を分割することにより、L体又はD体を得ることもできる。
【0018】
上記イミノジコハク酸は、アスパラギン酸骨格部分の異性体の割合すなわちD体/L体のモル比(D体/L体=)が、0/1〜0.3/0.7、又は、1/0〜0.7/0.3であることが好ましい。D体/L体のモル比を上記範囲とすることで、水への溶解性が優れた固体組成物とすることができる。異性体の割合(D体/L体のモル比)としてより好ましくは、0/1〜0.2/0.8、又は、1/0〜0.8/0.2であり、更に好ましくは、0/1〜0.1/0.9、又は、1/0〜0.9/0.1である。このように、イミノジコハク酸のアスパラギン酸骨格部分における異性体割合を特定の範囲に調整する方法としては、上記イミノジコハク酸の製造方法において、D体とL体の比率が特定範囲にあるアスパラギン酸及び/又はその塩を含む原料を用いて反応を行う方法、D体のイミノジコハク酸とL体のイミノジコハク酸とを別々に合成し、これらを特定比率で混合する方法等が好適である。
なお、上記イミノジコハク酸の生分解性は異性体間で異なり、D体、ラセミ体、L体の順に高くなることから、生分解性の観点からは、使用するイミノジコハク酸としては、ラセミ体を用いることが好ましく、L体の割合が高いイミノジコハク酸を用いることがより好ましい。
【0019】
本発明の固体組成物は、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含むものである。このような水溶性重合体(水溶性ポリマー)としては、ポリアルキレングリコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリカルボン酸(塩)系重合体等が好ましい。なお、水溶性重合体における「重合体」とは、繰り返しユニットを2つ以上有するものである。上記重合体には、例えばアクリル酸とマレイン酸の共重合体等のランダム重合体も含まれ、この場合、「繰り返しユニットを2つ以上有する」とは、モノマー由来の構成単位が2以上つながっていることを意味する。水溶性重合体が、ポリアルキレングリコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体及びポリカルボン酸(塩)系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つである固体組成物もまた本発明の好ましい形態の一つである。
【0020】
上記ポリアルキレングリコール系重合体としては、ポリアルキレングリコール、及び、ポリアルキレングリコール系単量体と、ポリアルキレングリコール系単量体と重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。
上記ポリアルキレングリコールとしては、オキシアルキレン基がアルコールに付加した構造を有していてもよい。このようなオキシアルキレン基としては、炭素数2〜18のオキシアルキレン基であることが好ましい。
上記オキシアルキレン基は、炭素数2〜18のオキシアルキレン基であるが、このようなオキシアルキレン基の構造は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基等のオキシアルキレン基の1種又は2種以上により形成される構造である。このようなオキシアルキレン基の中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基付加物であることが好ましい。更にオキシエチレン基が主体であるものが好ましい。
これらのオキシアルキレン基は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。オキシアルキレン基が同一のポリアルキレングリコールに2種以上存在する場合には、オキシアルキレン基がランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。オキシアルキレン基が同一のポリアルキレングリコールに2種以上存在する場合の好ましい形態としては、オキシエチレン基が主体であるアルコキシポリアルキレングリコールである。
【0021】
上記オキシアルキレン基は、オキシエチレン基を主体とするものであることが好ましい。この場合、主体とは、全オキシアルキレン基の存在数において、大半を占めることを意味する。上記の「大半を占める」とは、全オキシアルキレン基100モル%中のオキシエチレン基をモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。50モル%未満であると、オキシアルキレン基の親水性が不足し、水への溶解性が低下するおそれがある。好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
上記ポリアルキレングリコールにおいて、オキシアルキレン基が付加するアルコールとしては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類、シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類が好ましい。
【0022】
上記ポリアルキレングリコール系重合体はまた、ポリアルキレングリコール系単量体と、ポリアルキレングリコール系単量体と重合可能な単量体との共重合体が好ましい。
上記ポリアルキレングリコール系単量体としては、重合性二重結合と、ポリアルキレングリコール鎖とを有するものであれば特に限定されず、例えば、重合性二重結合が、アリルグリシジルエーテル、イソプレノール、アリルアルコール、又は、メタリルアルコールに由来するものであり、ポリアルキレングリコール鎖は、アルキレングリコールが同一若しくは異なって、1〜200繰り返されているものであることが好ましい。
【0023】
上記ポリアルキレングリコール系重合体として、より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールである。
上記ポリアルキレングリコール系重合体の重量平均分子量としては、500〜100000が好ましい。より好ましくは、750から10000であり。更に好ましくは、1000〜3000である。
上記ポリアルキレングリコール系重合体として、具体的には、例えば、重量平均分子量2000のポリエチレングリコールが好適に使用できる。
【0024】
上記ポリビニルピロリドン系重合体としては、ポリ(N−ビニルピロリドン)、及び、N−ビニルピロリドンと、N−ビニルピロリドンと共重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。
上記N−ビニルピロリドン系重合体を形成する単量体成分は、少なくともN−ビニルピロリドンを含有していれば特に制限されず、例えば、N−ビニルピロリドンを単独で用いてもよいし、N−ビニルピロリドンと共重合可能な重合性単量体を用いてもよい。なお、N−ビニルピロリドン以外の重合性単量体を共重合させる場合、単量体成分中のN−ビニルピロリドンの含有量は、特に限定されず、例えば、上記単量体成分中のN−ビニルピロリドンの含有量を50質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましく、80質量%以上とすることが特に好ましい。
【0025】
上記N−ビニルピロリドンと共重合可能な重合体単量体成分としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、及び、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダソール等の塩基性不飽和単量体及びその塩又は第4級化物;ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン等のビニルアミド類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体及びその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の、ビニルエステル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;スチレン及びその誘導体;(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル及びその誘導体;ビニルスルホン酸及びその誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類が挙げられる。これらのうち、N−ビニルピロリドンとの共重合性等との観点からは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、塩基性不飽和単量体及びその又は、第4級化物、ビニルアミド類、カルボキシル基含有不飽和単量体及びその塩、ビニルエステル類、ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体が特に好適である。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合してN−ビニルピロリドンと共重合させてもよい。
上記ポリビニルピロリドン系重合体の重量平均分子量としては、1000〜4000000が好ましい。より好ましくは、10000〜3000000であり、更に好ましくは、50000〜2000000である。
上記ポリビニルピロリドン系重合体として、具体的には、例えば、重量平均分子量40000のポリビニルピロリドンK−30(日本触媒社製)が好適に使用できる。
【0026】
上記ポリビニルアルコール系重合体としては、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールとビニルエステル系単量体との共重合体、及び、ポリビニルアルコール及びビニルエステル系単量体と、ポリビニルアルコール及びビニルエステル系単量体と重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。
上記ビニルエステル系単量体としては、特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、吉草酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロへキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル等が好ましい。
上記ポリビニルアルコール及びビニルエステル系単量体と共重合可能な重合体単量体成分としては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、及び、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、マレイン酸、その塩またはそのエステル;イタコン酸、その塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が好ましい。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合してポリビニルアルコール及びビニルエステル系単量体と共重合させてもよい。
上記ポリビニルアルコール系重合体の重量平均分子量としては、1000〜10000000が好ましい。より好ましくは、5000〜3000000であり、更に好ましくは、10000〜1000000である。
上記ポリビニルアルコール系重合体として、具体的には、例えば、重量平均分子量44000のポリビニルアルコール(完全けん化型)(ポリビニルアルコール1000完全けん化型、和光純薬工業社製)が好適に使用できる。
【0027】
上記ポリカルボン酸(塩)系重合体としては、カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体の単独重合体;カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体とその他の単量体との共重合体等が挙げられる。上記例示の重合体のうち、カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体を含む単量体成分を重合してなる共重合体がより好ましい。
なお、本発明における「カルボキシル基」には、−COOH基(遊離のカルボキシル基)に加えて、この官能基のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩も含むこととする。
【0028】
上記ポリカルボン酸(塩)系重合体は、例えば、アミド基含有単量体、カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体、及び、スルホン酸基及び/又はその塩を含有する単量体等に、必要に応じて、上記単量体と共重合可能なその他の単量体(以下、単に、その他の単量体と記す)をさらに含む単量体成分を重合させることにより、容易に得ることができる。
上記アミド基含有単量体は、アミド基を有する単量体であればよく、特に限定されるものではない。アミド基含有単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
上記カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体は、カルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体であればよく、特に限定されるものではない。カルボキシル基含有単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸等が挙げられる。また、カルボキシル基の塩を含有する単量体としては、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の単量体のうち、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩、マレイン酸及び/又はその塩がより好ましく、(メタ)アクリル酸(本発明においてはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する)の塩、マレイン酸の塩が特に好ましい。
【0030】
上記スルホン酸基及び/又はその塩を含有する単量体は、スルホン酸基及び/又はその塩を有する単量体であればよく、特に限定されるものではない。スルホン酸基含有単量体としては、具体的には、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニルオキシ)プロパンスルホン酸、イソプロペニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、イソプレンのスルホン化物等が挙げられる。また、スルホン酸基の塩を含有する単量体としては、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0031】
上記その他の単量体は、アミド基含有単量体、カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体、及び、スルホン酸基及び/又はその塩を含有する単量体と共重合可能な単量体であればよく、特に限定されるものではない。つまり、本発明にかかる重合体に含まれていてもよい、アミド基含有単量体単位、カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体単位、及び、スルホン酸基及び/又はその塩を含有する単量体単位以外の構造単位は、特に限定されるものではない。
【0032】
上記その他の単量体としては、具体的には、例えば、アリルホスホン酸、イソプロペニルホスホン酸、ビニルホスホン酸、及び、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の、モノエチレン性不飽和酸;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、ポリアルキレングリコールと上記カルボキシル基及び/又はその塩を含有する単量体とのエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール等の不飽和アルコール;アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド等のアミド系単量体;ホスホエチルメタクリレート、スチレン、アリルアルコールやイソプレノールのエチレンオキシド付加物(前記不飽和アルコールに対して、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜300モル、好ましくは3〜100モル、さらに好ましくは5〜80モル付加した化合物)、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、アリルアミン等の、上記以外の官能基を含有する単量体;等が挙げられる。
【0033】
上記その他の単量体は、必要に応じて、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示のその他の単量体のうち、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び、N−ビニル−2−ピロリドンが特に好ましい。また、所望の粘度特性を得るために、2以上の重合性不飽和結合を有する単量体を使用することが好ましい。具体的にはポリオールの2置換以上のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アリルエーテル類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類などが挙げられる。前記ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ショ糖、ソルビトールなどが挙げられる。さらに、N,N−ビスメチレンアクリルアミドなどのビスアクリルアミド類、アクリル酸やメタクリル酸などのアリルエステル類、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、テトラアリルオキシエタン、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。但し、これらの2以上の重合性不飽和結合を有する単量体を添加する場合には、その添加量は、全単量体中1〜100000ppmが好ましい。10〜50000ppmがより好ましく、100〜30000ppmがさらに好ましく、1000〜10000ppmが特に好ましい。100000ppmより多く添加すると3次元化して水不溶性又はほとんど水に膨潤しないゲルが生成する恐れがある。
【0034】
上記ポリカルボン酸(塩)系重合体の重量平均分子量としては、500〜1000000が好ましい。より好ましくは、1000〜50000であり、更に好ましくは、2000〜10000である。
上記ポリカルボン酸(塩)系重合体としてより好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)の共重合体などが好ましい。具体的には、上記ポリ(メタ)アクリル酸(塩)としては、例えば、アクアリックDL−40(日本触媒社製)、アクアリックYS−100(日本触媒社製)等が好適であり、上記(メタ)アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)の共重合体としては、アクアリックTL−37(日本触媒社製)、アクアリックTL−200(日本触媒社製)、アクアリックTL−213(日本触媒社製)、アクアリックTL−400(日本触媒社製)、アクアリックTL−500(日本触媒社製)等が好適である。なお、ポリカルボン酸(塩)の塩の形態において、塩を構成するカチオン原子(又は基)としては、上記一般式(1)のX〜Xにおいて説明したものと同様であることが好ましい。これらの酸からなる塩を用いることで、本発明の作用効果が充分に発揮され、キレート能、水溶性、吸湿性、流動性、保存安定性等に優れる固体組成物とすることができる。
上記ポリカルボン酸(塩)系重合体を構成するモノマー組成比としては、(メタ)アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)のモノマー組成比としては、モル重量比で20/80〜80/20が好ましい。より好ましくは、70/30〜30/70である。
【0035】
上記水溶性重合体としては、上述した重合体のいずれも好適に用いることができるが、中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びポリカルボン酸(塩)がより好ましい。このように、上記水溶性重合体は、ポリエチレングリコール系重合体、ポリアルキレングリコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体及びポリカルボン酸(塩)系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つである固体組成物もまた本発明の好ましい形態の一つである。
【0036】
上記分子量の測定方法としては、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製、商品名「HLC−8220GPC」を用い、下記の条件で測定することができる。
(重量平均分子量の測定条件)
カラム:東ソー社製「TSK−GEL SUPER HZM−M 6.0×150」
溶離液:クロロホルム
流速:0.6mL/分
温度:40℃
検量線:ポリスチレン標準サンプル(東ソー社製)を用いて作成。
【0037】
上記有機酸塩は、カルボキシル基を有する化合物の塩であり、重合体ではない(繰り返しユニットやモノマー由来の構成単位が2以上つながっている構造を持たない)ものである。
上記有機酸塩は、カルボキシル基を1個から10個有する炭素数1から20の化合物であることが好ましい。より好ましくは、カルボキシル基を1個から6個有する炭素数1から15の化合物であり、更に好ましくは、カルボキシル基を1個から4個有する炭素数1から10の化合物である。
上記有機酸として、具体的には、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、タルトロン酸、メチルタルトロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、ケイ皮酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸、カルボキシメチルタルトロン酸、カルボキシメチルオキシコハク酸が好ましい。より好ましくは、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、タルトロン酸、メチルタルトロン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸、カルボキシメチルタルトロン酸、カルボキシメチルオキシコハク酸であり、更に好ましくは、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸である。これらの酸からなる塩を用いることで、本発明の作用効果が充分に発揮され、キレート能、水溶性、吸湿性、流動性、保存安定性等に優れる固体組成物とすることができる。また、有機酸塩を構成するカチオン原子(又は基)としては、上記一般式(1)のX〜Xにおいて説明したカチオン原子(又は基)の中の水素原子以外の原子又は基と同様であることが好ましい。また、有機酸塩が一分子中に複数のカルボキシル基を有するものである場合は、存在する複数のカルボキシル基のうち1つ以上が塩の形態であればよい。このような有機酸塩はまた、上記有機酸と上記一般式(1)のX〜Xにおいて説明したカチオン原子(又は基)の中の水素原子以外の原子又は基の炭酸塩、水酸化物塩等の無機塩とを原料として用いて調製したものでもよく、又は、上記有機酸塩と上記有機酸との混合物でもよい。上記有機酸塩の塩基の量としては、塩基/カルボキシル基の比率は、50モル%〜120モル%であることが好ましい。120モル%以上となると、本発明の効果が得られなくなるおそれがある。より好ましくは、80モル%〜115モル%であり、更に好ましくは、90モル%〜110モル%であり、100モル%であることが最も好ましい。このように、上記有機酸塩は、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群より選ばれる少なくとも一つの酸の塩である固体組成物もまた本発明の好ましい形態の一つである。
【0038】
本発明の固体組成物は、上記第2成分(水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つ)を、イミノジコハク酸とともに含有することにより、上述した効果を充分に発揮するものである。上記水溶性重合体と有機酸塩としては、いずれも好適に用いることができるが、中でも、固体組成物の吸湿性を低いものとする効果に優れるものとしては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)の共重合体が好ましい。より好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)の共重合体であり、更に好ましくはポリビニルピロリドン、アクリル酸塩−マレイン酸塩の共重合体である。具体的には、ポリビニルピロリドンK−30、アクアリックTL−37、アクアリックTL−200、アクアリックTL−213、アクアリックTL−400、アクアリックTL−500が好ましい。これらの水溶性重合体を用いることで吸湿性が低くなる理由は解明されてはいないが、TL−37、TL−200、TL−213、TL−400、TL−500については、イミノジコハク酸の酸のまわりを水溶性重合体がコーティングすることで、吸湿性が低くなるものと予想される。
【0039】
上記第2成分のなかで、固体組成物の流動性を特に向上させるものとしては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)の共重合体が好ましい。より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)であり、更に好ましくはポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩、アクリル酸塩−マレイン酸塩である。具体的には、重量平均分子量2000のポリエチレングリコール、アクアリックDL−40、アクアリックTL−400が好ましい。
上記第2成分は、上述したいずれも固体組成物の保存安定性を優れたものとすることができるものであるが、特に、ポリエチレングリコール、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、有機酸塩が好ましい。より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、有機酸塩であり、更に好ましくはポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、有機酸塩である。具体的には、重量平均分子量2000のポリエチレングリコール、重量平均分子量44000のポリビニルアルコール(完全けん化型)、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムが好ましい。
【0040】
本発明の固体組成物において、イミノジコハク酸の含有量としては、固体組成物100質量%中10〜95質量%である。10質量%未満であると、種々の用途として本発明の固体組成物を添加して用いた場合に、キレート能などの各種性能が充分に発揮されないおそれがあり、95質量%を超えると、優れた保存安定性が充分に発揮されないおそれがある。
上記イミノジコハク酸の含有量として好ましくは、20〜90質量%であり、より好ましくは、40〜75質量%である。本発明の固体組成物とするためには、イミノジコハク酸の含有量が10質量%以上、95質量%以下とすることである。イミノジコハク酸の含有量の下限を10質量%とする意味は、イミノジコハク酸含有量が少なくなると、目的の性能を得るための固体組成物の使用量が多くなるためである。また、イミノジコハク酸の含有量の上限を95質量%とする意味は、本発明の固体組成物は、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含むものであるためである。
上記固体組成物において、第2成分(水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つ)の含有量としては、固体組成物100質量%中1〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは5〜80質量%であり、更に好ましくは10〜60質量%である。
上記固体組成物において、イミノジコハク酸と、第2成分(水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つ)との比率(質量比)としては、イミノジコハク酸/第2成分が、1/9〜95/1であることが好ましい。より好ましくは、1/9〜9/1であり、更に好ましくは、1/4〜18/1であり、特に好ましくは、2/3〜15/2である。
【0041】
上記固体組成物は、イミノジコハク酸、第2成分以外に、その他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては、イミノジコハク酸の作用効果を妨害しないものであれば特に限定されないが、水分、有機ビルダー、無機ビルダー、分散剤、消泡剤、造粒剤、増量剤、漂白剤、漂白活性化剤、表面改質剤、腐食防止剤、再汚染防止剤、蛍光剤、殺菌剤、酵素、香料、着色料等の1種又は2種以上を含んでもよい。
【0042】
上記その他の成分として、水分を含む場合、その含有量としては、固体組成物100質量%に対し、20質量%以下であることが好ましい。水分含有量が20質量%を超えると、優れた溶解性が充分には発揮されないおそれがあり、また、固体組成物を長期間保存する場合、粘着性が増し、取り扱いにくくなるおそれがある。より好ましくは、18質量%以下であり、更に好ましくは、15質量%以下である。
上記その他の成分として、水分以外の成分の含有量としては、固体組成物100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以下である。
【0043】
本発明の固体組成物は、イミノジコハク酸と、第2成分(水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つ)を含む固体状ものであればその形状は特に限定されず、例えば、粒状、粉体状、顆粒状であってもよい。
上記固体組成物の粒径としては、0.1μm〜10mmであることが好適である。上限値として好ましくは、500μmであり、より好ましくは、300μmであり、更に好ましくは、150μmである。
【0044】
本発明の固体組成物としては、上記一般式(1)で表される化合物よりなる(粉又は固形物を80重量%以上含む)固体組成物であり、該固体組成物は、
(a)上記一般式(1)で表されるイミノジコハク酸を10〜95質量%含有し、
(b)ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸(塩)から選ばれる水溶性ポリマー及び有機酸塩の少なくとも一つを1〜90質量%含有するものである形態が好ましい。
【0045】
上記固体組成物はまた、吸湿性が低く、優れた流動性を示すものである。乾燥状態の固体組成物の吸湿性としては、該固体組成物を粉末状とし、水分含有量と形状をそろえた後、温度25℃、湿度45%で24時間放置し、放置前後の質量変化により吸湿性を評価することができる。すなわち、下記式:
重量増加=((上記条件下で放置後の固体組成物の重量)−(放置前の固体組成物の重量))/(放置前の固体組成物の重量)×100
で得られる質量(重量)増加が小さいほど吸湿性が低く、保存安定性に優れる。
【0046】
上記固体組成物の流動性としては、粉体の流動性の指標の一つである安息角を測定して、tan(安息角)により算出される値を比較することにより評価することができる。安息角とは、粉末を平面に堆積させたときに、平面と粉末の稜線の作る角度のことである。
上記tan(安息角)が小さいほど流動性がよく、tan(安息角)が大きい粉末は、流動性が悪く、ホッパー内などでブリッジをおこしやすい。具体的には、本発明の固体組成物の安息角は、上記固体組成物を、注入法により測定して求めることができる。注入法とは、図1に示すように、粉体を容器に入れ自然落下させ、水平面に堆積させた時に粉体の作る角度(安息角θ)を測定する方法である。
【0047】
上記注入法による流動性の測定条件としては、例えば、以下の条件が好適である。
測定装置:ホソカワミクロン社製パウダテスタ
型式:PT−E型
測定方法:注入法
18メッシュのふるいを通過させた粉体の安息角を測定する。
本発明の固体組成物のtan(安息角)としては、固体組成物が乾燥状態のとき、具体的には、1.40以下であることが好ましい。1.40を超えると、ホッバー等の貯蔵容器からの排出の際にブリッジングを起こしてしまうおそれがある。より好ましくは、1.30以下であり、更に好ましくは、1.20以下である。
【0048】
本発明の固体組成物は、保存安定性に優れるものである。固体組成物の保存安定性は、固体組成物をある一定期間恒温恒湿条件下で保存し、保存前後の固体組成物の流動性を比較することで評価することができる。具体的には、上記吸湿性を評価する際に用いた乾燥状態の固体組成物(真空乾燥し、乳鉢ですりつぶした固体組成物)を、温度25℃、湿度45%で24時間放置して、放置後の固体組成物を得て、上記流動性の評価方法と同様の方法で放置後の固体組成物の安息角を測定し、乾燥状態の固体組成物の安息角と比較することで、評価することができる。
上記tan(安息角)の変化が小さければ小さいほど、保存前と流動性が変わらず、保存安定性に優れる固体組成物といえる。また、tan(安息角)の変化(増加)が大きいほど、保存前に比べて流動性が悪くなっており、保存安定性に劣るといえる。
上記tan(安息角度)の変化量としては、0.15以下であることが好ましい。0.15を超えると、ホッバー等での貯蔵容器での保存中に流動性が悪化し、排出できなくなるおそれがある。より好ましくは、0.08以下であり、更に好ましくは、0.05以下であり、特に好ましくは、変化がないことである。
【0049】
上記固体組成物の製造方法としては、本発明の効果を発揮するものである限り特に限定されず、種々の方法を好適に用いることができる。例えば、(I)イミノジコハク酸と第2成分とを溶液の形態にして混合し、溶媒を除去する方法、(II)イミノジコハク酸と第2成分とを固体(粉体)状で混合する方法等が好適である。これらの中でも均一に混合することが容易であるとの観点から、(I)の方法が好適である。なお、上記その他の成分を含む場合は、通常用いられる方法により適宜添加することが好ましい。
【0050】
以下に上記(I)の方法について説明する。
上記イミノジコハク酸と第2成分とを含む溶液(以下、「固体組成物の溶液」とも言う。)としては、該イミノジコハク酸と第2成分とが溶媒に溶解したものであればよい。なお、第2成分が上記有機酸塩である場合には、上記有機酸塩と上記無機塩とを含む溶液を用いてもよい。
上記溶媒としては、イミノジコハク酸と第2成分とを溶解するものであって、容易に溶媒を除去できるものが好ましい。具体的には、水、水と水に溶解する溶媒との混合物;水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリルとの混合溶媒が好ましい。中でも有機溶媒の除去、廃棄の観点から、水が好ましい。
上記固体組成物の溶液は、(a)イミノジコハク酸の溶液と、第2成分の溶液とを混合して調製する、(b)いずれか一方の溶液に固体状の他方の成分を添加して調製する、(c)固体状のイミノジコハク酸と、固体状の第2成分と、溶媒とを混合して調製する等を好適に用いることができる。
【0051】
上記(I)の方法においては、固体組成物の溶液は、溶媒を除去することとなる。溶媒の除去方法としては、乾燥、晶析等が好適である。中でも、乾燥工程を経ることにより溶媒を除去することが大スケールでの固体組成物の製造が容易であるため好ましい。乾燥工程により、固体組成物の溶液を乾燥させることにより、イミノジコハク酸、及び、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含む固体組成物を得ることができる。
【0052】
上記乾燥工程においては、例えば、スプレードライヤーのような噴霧乾燥装置、ドラムドライヤーやCDドライヤーのようなドラム乾燥装置、気流乾燥装置、流動乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、薄膜式蒸発濃縮粉末化装置、レーディゲミキサーやニーダーのような縦型式攪拌造粒機、箱型乾燥装置、通気棚段乾燥装置、トンネル乾燥装置、連続式通気乾燥装置、回転乾燥装置、溝型攪拌乾燥装置、真空箱型乾燥装置、凍結乾燥装置、円筒攪拌真空乾燥装置、赤外線乾燥装置、高周波乾燥装置を用いることができる。これらの中でも、スプレードライヤーのような噴霧乾燥装置、ドラムドライヤーやCDドライヤーのようなドラム乾燥装置、気流乾燥装置、流動乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、薄膜式蒸発濃縮粉末化装置、レーディゲミキサーやニーダーのような縦型式攪拌造粒機が好ましい。このように、スプレードライヤーのような噴霧乾燥装置を用いる乾燥工程を含むものである固体組成物の製造方法は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0053】
上記乾燥工程により乾燥して得られた固体組成物は、更に、必要に応じて適当な粉砕機を用いて疎砕してもよく、更に、造粒してもよい。CDドライヤー、噴霧乾燥機等を用いて乾燥して得られる固体組成物は、通常、嵩密度が小さく、粒径が不揃いであるが、このような固体組成物を粉砕及び造粒処理することにより、嵩密度や粒径を用途に応じて適当な範囲のものとすることができる。例えば、固体組成物をビルダーとして粒状洗剤組成物に使用する場合、上記乾燥後の固体組成物を洗剤組成物成分と混合すると均一な混合が困難となる場合があるが、粉砕及び造粒処理することにより、固体組成物の嵩密度を、一般的なコンパクト洗剤の嵩密度である0.5〜1g/cc程度にすることができる。
【0054】
上記造粒処理は、本発明の固体組成物を好適な嵩密度及び粒径とすることができるものであれば特に限定されず、一般の造粒機を用いることができる。中でも、撹拌造粒機を好適に用いることができる。撹拌造粒機としては、例えば、深江工業(株)製のハイスピードミキサーのような横型式撹拌造粒機、又は、レーディゲ社製のレーディゲミキサーのような縦型式撹拌造粒機等を用いることができる。これらの中でも、重力方向にシェアーをかけることができ、容易に嵩密度を上昇させることができる縦型式撹拌造粒機が好ましい。なお、造粒後、必要に応じて、さらに乾燥させて、本発明の固体組成物を得てもよい。
【0055】
本発明はまた、上記固体組成物の保存方法であって、該保存方法は、上記固体組成物中、イミノジコハク酸を10〜95質量%含有する固体組成物の保存方法(保存安定化方法)でもある。
本発明においては、上記イミノジコハク酸と、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含む固体組成物において、イミノジコハク酸の含有量を10〜95質量%とすることにより、長期間保存後も、本発明の固体組成物の作用効果を充分に発揮し、キレート能に優れ、水溶性が高い等の優れた性能を有し、優れた流動性を示し、保存安定性に優れるものである。
上記イミノジコハク酸の含有量としては、固体組成物100質量%中、10〜95質量%である。イミノジコハク酸の含有量の臨界的意義や好ましい範囲、イミノジコハク酸以外の成分やその割合等、固体組成物に関する例示や特性等は、上述したとおりである。
【0056】
上記固体組成物の保存方法としては、上記のようにイミノジコハク酸の含有量が10〜95質量%の間であれば特に限定されないが、例えば、25℃における相対湿度が42%以下の雰囲気下で保存する固体組成物の保存方法であることが好ましい。このような保存方法を用いると、吸湿のおそれがなく、優れた溶解性や高い洗浄力等の高い品質を長期間維持することができる。
上記保存方法において、「雰囲気」とは、粉末(固体組成物)を乾燥したり、保存や輸送のために容器に充填したりする作業雰囲気と、粉末を保存するための容器内部の雰囲気をいう。
上記25℃における相対湿度としては、42%以下であればよいが、好ましくは、40%以下である。
【0057】
上記固体組成物の保存方法としては、相対湿度が上記範囲であればその他の条件は特に限定されないが、保存容器としては、固体組成物の品質が保てるものであればよい。保存期間中に保存容器の外部の雰囲気が25℃における相対湿度が42%以下の雰囲気となる場合は、保存容器の材質及び形状は特に限定されないが、保存容器の外部の雰囲気が変化するおそれがある場合は、保存期間中の容器内の相対湿度を保存開始時と同じ状態に維持できるもの(つまり、水分を通さず、容器外の湿度が高くなっても、容器内の湿度は高くならない材質であって密閉できる形状)であることが好ましい。保存容器の材質として具体的には、クラフト紙、ポリエチレン、ビニール、ポリプロピレン、アルミニウム(アルミ)、ポリラミネート等が好適である。これらの中でも、湿度を一定に保てる点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、アルミ、ポリラミネートがより好ましい。
【0058】
上記保存容器の形状としては、密封できるものであることが好ましく、袋状、蓋付形状であることが好適である。中でも、密閉が容易にできる等の取り扱い性に優れる点から、袋状容器であることが好ましい。保存容器の厚みの下限値としては、容器強度やシール性等の点から、0.005mmであることが好ましい。より好ましくは、0.01mmであり、更に好ましくは、0.02mmである。保存容器の厚みの上限値としては、取り扱い性等の点から、0.5mmであることが好ましい。より好ましくは、0.3mmであり、更に好ましくは、0.1mmである。保存容器の厚みは上述の範囲であることが好ましい。このような保存容器は、一種の材質のものを一層で用いてもよく、多層で用いてもよく、また、異なる材質のものを組み合わせて多層で用いてもよい。
【0059】
本発明の固体組成物は、イミノジコハク酸、及び、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含むものであり、これらをともに含有することにより、イミノジコハク酸単独では奏しない効果を発揮することができる。具体的には、イミノジコハク酸としてHIDSを、水溶性重合体としてポリカルボン酸系重合体を用いて固体組成物とした場合、HIDS単独の場合に比べてカルシウムキレート能が向上する。このように、イミノジコハク酸と、水溶性重合体及び/又は有機酸塩とを組み合わせることにより、イミノジコハク酸単独の場合よりもキレート能等種々の効果が上昇するという相乗効果がみられる。HIDSとポリカルボン酸系重合体とを混合して固体組成物とする場合においては、カルシウムキレート能がHIDS単独に比べて上昇するだけでなく、ゲル化を抑制するという相乗効果も発揮される。
また、本発明の固体組成物は、通常、水に溶解させて使用することになるが、該固体組成物を溶解させた水溶液は、該水溶液と同組成となるように該固体組成物を構成している各化合物及び/又は各化合物の水溶液と必要に応じて水を添加して得られた水溶液と同等の効果が発揮される。
【0060】
上記ポリカルボン酸(塩)系重合体としては、マレイン酸(塩)−アクリル酸(塩)の共重合体が好ましい。上記ポリカルボン酸(塩)系重合体の重量平均分子量としては、500〜1000000が好ましい。より好ましくは、1000〜50000であり、更に好ましくは、2000〜10000である。
上記ポリカルボン酸(塩)系重合体を構成するモノマー組成比としては、(メタ)アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)のモノマー組成比としては、モル重量比で20/80〜80/20が好ましい。より好ましくは、70/30〜30/70である。相乗効果を発揮するポリカルボン酸(塩)系重合体としては、アクアリックTL−37(日本触媒社製)、アクアリックTL−200(日本触媒社製)、アクアリックTL−213(日本触媒社製)、アクアリックTL−400(日本触媒社製)、アクアリックTL−500(日本触媒社製)等が好適である。
【発明の効果】
【0061】
本発明の固体組成物及びその保存方法は、上述の構成よりなり、保存安定性に優れ、流動性や吸湿性に優れ、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤、各種分野における各種洗浄や、家庭用及び業務用の自動食器洗浄機による洗浄等の各種用途に好適に用いることができる固体組成物、及び、その保存方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0063】
<イミノジコハク酸>
合成例1
エポキシコハク酸2ナトリウム塩1761g、L−アスパラギン酸2ナトリウム塩1770g及び水3100gを混合し、90℃で4時間反応させて、3−ヒドロキシイミノジコハク酸4ナトリウム塩(HIDS4Na)の50質量%の水溶液を得た。
【0064】
<第2成分>
水溶性重合体
ポリエチレングリコール:ポリエチレングリコール2000(重量平均分子量2000、和光純薬工業社製)
ポリビニルアルコール:ポリビニルアルコール1000完全けん化型(重量平均分子量44000、和光純薬工業社製))
ポリビニルピロリドン:ポリビニルピロリドンK−30(重量平均分子量40000、日本触媒社製)
ポリアクリル酸塩A:アクアリックDL−40(重量平均分子量3500、日本触媒社製)
ポリアクリル酸塩B:アクアリックYS−100(重量平均分子量5000、日本触媒社製)
アクリル酸塩−マレイン酸塩の共重合体A:アクアリックTL−400(重量平均分子量50000、日本触媒社製)
アクリル酸塩−マレイン酸塩の共重合体B:アクアリックTL−500(重量平均分子量10000、日本触媒社製)
アクリル酸塩−マレイン酸塩の共重合体C:アクアリックTL−37(重量平均分子量5000、日本触媒社製)
【0065】
有機酸塩
クエン酸3ナトリウム:(和光純薬工業社製)
グルコン酸ナトリウム:(和光純薬工業社製)
リンゴ酸2ナトリウム:(和光純薬工業社製)
酒石酸2ナトリウム:(和光純薬工業社製)
【0066】
実施例1〜16及び比較例1
<吸湿性テスト>
合成例1で合成したL体のHIDS4Naと、表1に示す第2成分(水溶性重合体又は有機酸塩)とを、表1に記載の比(HIDS/第2成分〔固体換算の質量比〕)の水溶液として混合した。得られた固体組成物の水溶液をバットに入れて8時間、60℃で真空乾燥し、乳鉢ですりつぶして、乾燥状態の固体組成物を得た。得られた乾燥状態の固体組成物を、温度25℃、湿度45%で24時間放置し、放置前後の質量変化を、下記式:
重量増加=((上記条件下で放置後の固体組成物の重量)−(放置前の固体組成物の重量))/(放置前の固体組成物の重量)×100
から求めた。
合成例1で得られたHIDSの50質量%の水溶液を、上記の方法と同様に真空乾燥し、乳鉢ですりつぶして、乾燥状態のHIDSを得て、同様にして吸湿性を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例17〜32及び比較例2〜4
<流動性テスト>
吸湿性テストにて調製したのと同様にして、乾燥状態の固体組成物を調製した。図1に示すように、乾燥状態の固体組成物を容器に入れ自然落下させ、水平面に堆積させた時に乾燥状態の固体組成物の作る角度(安息角θ)を測定した。
上記注入法による流動性は、以下の条件で行った。
測定装置:ホソカワミクロン社製パウダテスタ
型式:PT−E型
測定方法:注入法
18メッシュのふるいを通過させた粉体の安息角を測定した。
また吸湿性テストにて調製したのと同様にして、乾燥状態のHIDSを得て、流動性テストを行った。また、第2成分の代わりに炭酸ナトリウム又はクエン酸を用いる以外は、固体組成物の場合と同様にして、流動性テストを行った。なお、クエン酸を添加する比較例4においては、HIDSの50重量%水溶液にクエン酸を添加してpH9.0に調整した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例33〜44及び比較例5〜7
<恒温高湿下で放置後の流動性テスト>
吸湿性テストにて調製したのと同様にして、乾燥状態の固体組成物を得て、温度25℃、湿度45%で24時間放置し、流動性テストを行った。
また吸湿性テストにて調製したのと同様にして乾燥状態のHIDSを得て、恒温高湿で24時間放置し、流動性テストを行った。第2成分の代わりに炭酸ナトリウム又はクエン酸を用いる以外は固体組成物の場合と同様にして、恒温高湿で24時間放置し、流動性テストを行った。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
表3中、比較例5(HIDSのみ)及び比較例7(クエン酸添加)は、安息角が測定できなかったことを示す。
表3について説明する。比較例6の炭酸ナトリウム添加の混合粉体は、保存後もさらさらのままであったが、HIDSのみ(比較例5)及びクエン酸添加(比較例7)の場合は、粉の吸湿性が高いため、粉が固化し、ブロッキングがおこり、保存後に安息角を測定することができなかった。それに対し、実施例では、24時間保存後も、水溶性ポリマー添加(実施例33〜40)及び有機酸塩(実施例41〜44)添加のすべての混合粉体が、さらさらのままであり、安息角を測定することができた。
また比較例6の炭酸ナトリウム添加の混合粉体は、安息角が測定できたが、保存前に比べてtan(安息角度)が0.304も上昇し、実施例(0〜0.103)に比べてtan(安息角度)の上昇の程度が大きかった。
【0073】
なお、上述した実施例及び比較例では、水溶性重合体として、ポリアルキレングリコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体及びポリカルボン酸(塩)系重合体を用い、有機酸塩として、クエン酸3ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸2ナトリウム、リンゴ酸2ナトリウムを用いているが、第2成分としては,これらの実施例で用いた化合物と作用機構により本願発明の効果を発揮できる類似の構造や構成を有するものであればよい。すなわち、水溶性重合体や有機酸塩である限り、固体組成物の優れた溶解性、高いキレート能を保ったまま、固体組成物、具体的には、イミノジコハク酸の吸湿性を改善し、固体組成物の流動性を向上させ、保存安定性、ハンドリング性に優れ、ブロッキングを起こしにくい等の優れた安定性を発揮するものとする機構は同様である。したがって、イミノジコハク酸に加えて、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含むものを含有させた固体組成物とすれば、本発明の有利な効果を発現することは確実であるといえる。少なくとも、水溶性重合体が、ポリアルキレングリコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体及びポリカルボン酸(塩)系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、有機酸塩が、カルボキシル基を1個から10個有する炭素数1から20の化合物の塩である場合においては、上述した実施例及び比較例で充分に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本願発明の流動性テストを模式的に示した図である。乾燥状態の固体組成物を容器に入れた状態(左図)、及び、容器から固体組成物を自然落下させ、水平面に堆積させた状態(右図)を示している。右図中、θは安息角を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rは、水素原子又は水酸基を表す。X〜Xは、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウム基を表す。)で表されるイミノジコハク酸を10〜95質量%含む固体組成物であって、
該固体組成物は、水溶性重合体と有機酸塩のうちの少なくとも一つを含むものであることを特徴とする固体組成物。
【請求項2】
前記イミノジコハク酸は、Rが水酸基であることを特徴とする請求項1記載の固体組成物。
【請求項3】
前記水溶性重合体は、ポリアルキレングリコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体及びポリカルボン酸(塩)系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2記載の固体組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の固体組成物の保存方法であって、
該保存方法は、前記固体組成物中、イミノジコハク酸を10〜95質量%含有することを特徴とする固体組成物の保存方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−120801(P2009−120801A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116609(P2008−116609)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】