説明

イムノクロマトグラフィー装置

【課題】 フォロースルー法において、免疫反応を成立させかつ反応結果を目視確認するために、処理の迅速化を目的として、1個又は2個以上の液容器を開いて処理を速やかに進める。
【解決手段】 イムノクロマトグラフィー法における測定のための装置について、測定物質14を配置する測定部15を本体内部に設置し、測定物質14に液体を供給する1個又は2個以上の液容器17を測定部15の上位に配置し、本体11に対して回転可能に設けた操作部材20に、操作部材20の回転に基いて開封し内部の液体を取り出す開封手段を設ける。操作部材20の回転に基いて液体を取り出す開封手段は、液容器17の放出部を切り開く爪状の突起部33ないしは、液容器47を押しつぶす押圧部55である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマトグラフィー法における測定のための液容器を内蔵したイムノクロマトグラフィー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマトグラフィー法は簡便な免疫測定法であり、最近、種々の測定物質即ち感染症の抗原等の被検体の測定に用いられている。イムノクロマトグラフィー法には、1)フォロースルー法と、2)ラテラルフロー法の2種がある。特許文献中、特開平10−104236号は被覆部材で覆われた液体吸収容器を有する試験用具を開示しており、また特開昭63−223559号のものは試薬及び又はキャリヤ液体をブリスター式に密閉した分析検査板を開示しているが、これらに採用されているのはいずれもラテラルフロー法によるものである。これに対してフォロースルー法において試薬を内蔵する小容器を具えた装置に関する発明法において試薬を内蔵する小容器を具えた装置に関する発明ないし報告は見受けられない。
【0003】
【特許文献1】特開平10−104236号
【特許文献2】特開昭63−223559号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、フォロースルー法において、免疫反応を成立させかつ反応結果を目視確認するために、処理の迅速化を目的として、1個又は2個以上の液容器を一つの装置に組み込み、順次液容器を開いて処理を速やかに進めることである。フォロースルー法の簡易化のために、金コロイド若しくは着色ラテックス等の担体を用いて反応数を減少することも試みられているが、その場合、検出感度が酵素を用いる方法に比べてやや劣っているので、本発明では酵素を用いる方法に比べて劣らない検出感度を得ることも、その課題の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するため本発明は、イムノクロマトグラフィー法における測定のための装置について、測定物質を配置する測定部を本体内部に設置し、測定物質に液体を供給する1個又は、2個以上の液容器を測定部の上位に配置し、本体に対して回転可能に設けた操作部材に、操作部材の回転に基いて開封し内部の液体を取り出す開封手段を設けた構成を有するものとするという手段を講じたものである。
【0006】
本発明におけるイムノクロマトグラフィー装置は、測定物質に対して、1又は2以上の液容器から試薬等の液体を供給するものであり、それによって反応を速やかに進めるという構成を取っている。液容器は、測定部の上位に配置されるから、内部の液体を測定部に対して重力供給することとなり、この作用は2個以上の液容器中の液体について共通である。また、1個又は2個以上の液容器は、測定部に向けて液体を供給するために、放出部を測定部へ向けたり(請求項2記載の発明)傾斜させて配置する、液容器の傾斜配置部に配置することができる(請求項3記載の発明)。また、1個又は2個以上の液容器は液容器取り付け部に立てて配置しても良い(請求項4記載の発明)。これによって、液容器内部の液体を速やかに流出させ、かつ最後まで供給可能となるので、反応の正確性、確実性が約束される。傾斜による効果は、1個又は2個以上の液容器の底面が傾斜している形態を有していることによっても得ることができる。
【0007】
本発明において、1個又は2個以上の液容器は、使用前の状態では密封されており、これを開封することによって内部の液体を取り出すという構成を取る。そのための開封手段として本発明では、本体に回転可能に設けた操作部材に液容器を開封するための爪状の突起部を設けている。使用前の状態において、液容器は、その1面である正面の放出部がアルミニウム又はその他の切開き得る金属箔によって覆われ、密封状態となっているものであることが望まれる(請求項5記載の発明)。これによって、使用前は液容器内の液体の品質が保証され、使用の際には開封する作業も支障なく行われるようになる。
【0008】
操作部材は、本体に薄肉ヒンジ又は軸と軸受とから成るヒンジによって結合され、それによって回転可能に設けられている(請求項6記載の発明)薄肉ヒンジは、操作部材を本体と一体成形することによって形成される。軸と軸受から成るヒンジは2部材構造になり、薄肉ヒンジよりも精度及び伝達力が必要な場合に適するのに対して、薄肉ヒンジはより簡便である。
【0009】
操作部材は、ヒンジによって結合している回転する部材であり、回転部分の適所に開封手段として爪状の突起部を設けることができる(請求項7記載の発明)。回転部は、ヒンジが支点となり、爪状の突起部が作用点、回転部の回転端等任意の部分が力点となる梃子作用によって、突起部を液容器に当接させ、放出部を引き裂くか或いは引っ掻くようにして切り開くことが可能となる。この突起部は複数個設けることができるが、複数個とは液容器の個数に合わせて複数個の場合もあれば、1個の液容器について複数個も受けることができるものと考えて良い(請求項8記載の発明)。さらに、突起部の長さを長短変更することにより、開口形態や開口面積に変化を与え液体の流出時間に差を設けるようにすることも可能である。
【0010】
操作部材は、その回転に基いて液体を取り出す開封手段として、液容器を押しつぶす梃子状の押圧部の形態を取り得る(請求項9記載の発明)。この場合、液容器を後方から押しつぶして液容器の正面の予め脆弱に形成されている放出部に破断を生じさせるものである。押圧部もその長さを長短変化させ、流出時間等を調整することができる(請求項10記載の発明)。いずれの場合にせよ、突起部によって開封される液容器の開口は、内部の液体を必要量、確実に流出させることができるように設けられていなければならない。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上の如く構成されかつ作用するものであるから、1個又は2個以上の液容器から液体を測定物質に順次供給することができ、それによって反応を速やかに進められ、フォロースルー法であるから、酵素を用いる方法に比べて劣らない検出感度を得ることができる等、顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図示の実施形態を参照しながら本発明をより詳細に説明する。図1は本発明の実施例1に係る液容器を内蔵したイムノクロマトグラフィー装置10の使用前の外観図、図3は分解図、図4は使用状態の外観図である。
【0013】
各図において、11はハウジング状の本体を示しており、上下2部分12、13から成る。本体下部分13の前側には、後述する測定物質14を配置する測定部15が凹状に設けられている。測定部15の上方の本体上部分12には窓部16が開口しており、その後方には、液容器17を配置する傾斜配置部18が設けられており、傾斜配置部15は底面が測定部15に向かって傾斜し、かつ前端にて測定部15と通じている。本体上部分12の上部は平坦な面19になっており(図3)、その後側に、操作部材20の取り付け部21が取り付けられるようになっている。取り付け部21は下面の左右に係合用のフック22、22を有しており、それを、本体上部分12の面19の左右に形成されている係合用の孔23、23に嵌め込んで、取り付け部21にて本体上部分12に操作部材20を取り付ける構成になっている。
【0014】
例示されている測定物質14は、メンブレン24の上に置かれ、メンブレン24は、コンジュゲートパッド25を介して吸収体26に層状に重ねられた構造となっている。測定物質14は層状構造で支えられた状態で、浅い皿状に形成されている測定部15に配置され、それに向かって底面が傾斜した状態に置かれている液容器17が、境界のストッパー27によって止められた状態で配置される。例示されている液容器17は2個の独立した容器部分を有するタイプであり、夫々の容器部分の正面にはアルミニウム箔から成る放出部28、28が設けられており、各容器部分に密封されている試薬等から成る2種の液体を、後述する手法により取り出し得るようになっている。
【0015】
操作部材20は、全体として本体11の上面を覆うように設けられ、ヒンジ部29によって取り付け部21と結合している回転部31を有しており、そのため回転部31には、測定部15に向かい、かつ、本体上部分12の窓部16に入り込む筒状開口32が形成されている。そして、ヒンジ部29、29の中間部分に、ヒンジ部29の軸線を後方に越えて突出する爪状の突起部33が開封手段として設けられている。例示した突起部33は、液容器17の個数に合わせて複数個設けた例であり、鋭利な先端を有している。なお、回転部31の前端には本体係合部34との係合、離脱が可能な係合片35を設けている。
【0016】
使用するには、本体11の測定部15に、吸収体26、コンジュゲートパッド25、測定物質14を配置したメンブレン24を置き、液容器17を配置部18にセットし、操作部材20を一体に有している本体上部分12をかぶせると、本発明に係る装置10の使用準備を完了する。その状態から操作部材回転部31の係合を外し、図4、図5に示すように前端を上に回転させることによって、突起部33、33を液容器17を密封している放出部28、28に押し当てるものとする。そのとき、突起部33、33の尖端は放出部28、28を上から下へ引っ掻くようにして切り開くことになり、尖端の形態に応じた形状及び開口面積の開口36、36を形成し、内部の液体を流出させ、測定部15の測定物質14に向かわせる。このようにして2個の液容器から液体を測定物質14に供給するので、免疫反応等の処理を速やかに進められる。またフォロースルー法を実施するものであるから検出感度も良好である。
【0017】
図6以下は本発明の実施例2に係るイムノクロマトグラフィー装置40を示しており、図6は分解図、図7、図8は操作前の状態の外観図と断面図、図9、図10は操作中の外観図と断面図を示している。実施例2の装置40は、液容器47を押圧して液体を取り出す方式を取る。
【0018】
図中、41はハウジング状の本体であり、実施例1における本体下部分13のような、測定物質44を配置するため凹状に設けられた測定部45を前側に有している。本体41は実施例1における本体下部分13よりも深く形成され、測定部45の上方は、蓋体42によって開閉可能であり、蓋体42には測定部45に通じる窓部46が開口している。蓋体42は後部左右に支軸43、43を有し、本体測定部後部左右の軸溝49、49に支軸43、43を軸承させる構造を有している。
【0019】
本体41の内部は、前側に位置する測定部45の後方に、液容器47を測定部45に向けて液体を供給するように立てて保持するための液容器保持部48が設けられている。例示の液容器保持部48は、2種の液体を密封した液容器47の基版部にて上から下へ差し入れる溝構造を有している。また、例示の液容器保持部48は、蓋体42の支軸43、43を受け入れる軸溝49、49を左右に有する山型の仕切状構造部53に設けられており、軸溝49、49とも通じている。液容器47は2種の液体を別々に密封した可撓性の膨らみを有し、これらの膨らみから成る液容器47は山型の仕切状構造部53の凹状の切り欠き51、51に配置される。仕切状構造部53の後側は空所52となっている。
【0020】
実施例2において操作部材50は、蓋体42の支軸43を利用する軸と、操作部材50の左右に設けた軸受54の孔から成るヒンジによって本体41に対して回転可能に結合されている。軸受54は操作部材の中央よりやや後寄りの位置に設けられており、操作部材50の前端から軸受54までの長さと軸受54から後端までの長さの比に応じた梃子作用を行う。操作部材50の後端側の部分は上記梃子作用による押圧部55となっており、前記本体41の後側の空所52を回転する。例示した押圧部55は液容器47の2箇所のふくらみを同時に押すような形態に設けられているけれども、図6に鎖線55′で示したように押圧部55、55′の梃子としての長さを長短変化させ、それによって液容器47に対する押圧のタイミングや押圧量を調整することができる。図6において、56は窓部46に入り込む筒状開口を示す。
【0021】
測定物質44はメンブレン57の上に置かれ、メンブレン57は、コンジュゲートパッド58を介して吸収体59に層状に重ねられた構造となっており、凹皿状に形成されている測定部45に配置される。なお、操作部材50の回転部61の前端には、本体係合部62との係合、離脱が可能な係合片63を設けている。また液容器正面の開口を密封している放出部64は実施例1の場合と同様金属箔製であるが、最も脆弱に作られ押圧力で破壊される。
【0022】
実施例2の装置40を使用するには、本体41の測定部45に、吸収体59、コンジュゲードパッド58、測定物質44を配置したメンブレン57を置き、液容器47を液容器保持部48にセットし、押圧部材55を一体に有している操作部材50を蓋体42とともに本体41にかぶせ、準備を完了する(図7及び図8の状態である)。この状態から操作部材50の係合を外し、前端の回転部61を上方へ回転させ、後端の押圧部55を液容器47の後面に押し当て前方へ押圧する。この押圧力によって、液容器47は後方から前方へ押しつぶされ(図9、図10)、最も脆弱に作られている前面の放出部64が破れて内部の液体を前方へ流出させ、測定部45の測定物質44に供給する。複数個の膨らみを持つ液容器47から液体を流出させるタイミング等は調整可能であり、かくしてフォロースルー法をより適切に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
病気の診断、特に高感度を要求される、例えば肝炎ウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなどの体外診断薬、或いはまた特には高感度を要求されないホルモン、ガンマーカーなどの検出に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る液容器を内蔵したイムノクロマトグラフィー装置の実施例1を示す斜視図。
【図2】同上装置の中央縦断面図。
【図3】図1の装置の分解斜視図。
【図4】同じく使用状態を示す斜視図。
【図5】図4の状態の図2と同様の断面図。
【図6】本発明に係る装置の実施例2を示す分解斜視図。
【図7】同上のものの準備完了状態における斜視図。
【図8】図7に対応する断面図。
【図9】同じく使用状態を示す斜視図。
【図10】図9に対応する断面図。
【符号の説明】
【0025】
10、40 イムノクロマトグラフィー装置
11、41 本体
12、13 上部分、下部分
14、44 測定物質
15、45 測定部
17、47 液容器
18 配置部
20、50 操作部材
21 取り付け部
24、57 メンブレン
28、64 放出部
29 ヒンジ部
31、61 回転部
33 突起部
42 蓋体
48 液容器保持部
49 軸溝
51 切り欠き部
54 軸受
55 押圧部
64 放出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムノクロマトグラフィー法における測定のための装置であって、測定物質を配置する測定部を本体内部に設置し、測定物質に液体を供給する1個又は2個以上の液容器を測定部の上位に配置し、本体に対して回転可能に設けた操作部材に、操作部材の回転に基いて開封し内部の液体を取り出す開封手段を設けた構成を有することを特徴とするイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項2】
1個又は2個以上の液容器は、液体を供給するために、放出部を測定部に向けて配置した構成を有している請求項1記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項3】
1個又は2個以上の液容器は、測定部に向けて液体を供給するように、傾斜させるための傾斜保持部に配置する構成を有している請求項2記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項4】
1個又は2個以上の液容器は、測定部に向けて液体を供給するように、立てるための液容器保持部に配置する構成を有している請求項2記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項5】
操作部材の回転に基いて液体を放出させる液容器の放出部は、アルミニウム又はその他の金属箔によって覆われている請求項1記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項6】
操作部材は、本体に薄肉ヒンジ又は軸と軸受とから成るヒンジによって結合されている請求項1記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項7】
操作部材の回転に基いて液体を取り出す開封手段は、液容器の放出部を切り開く爪状の突起部である請求項1記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項8】
2個以上の液容器の放出部を切り開くために2個以上の爪状の突起部を有しており、それら2個以上の爪状の突起部の長さが長短の変化を有している請求項7記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項9】
操作部材の回転に基いて液体を取り出す開封手段は、液容器を後方から押しつぶし前方へ液体を流出させる押圧部である請求項1記載のイムノクロマトグラフィー装置。
【請求項10】
2個以上の液容器の放出部を押し開くために2個以上の梃子状の押圧部を有しており、それら2個以上の梃子状の押圧部の長さが長短の変化を有している請求項9記載のイムノクロマトグラフィー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−170858(P2006−170858A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364935(P2004−364935)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(399032813)株式会社 ベセル (3)