説明

イメージセンサユニット

【課題】密着型イメージセンサに関して、原稿用紙の位置変動などによる反射光量のむらを軽減し、均一な反射特性が得られるようにする。
【解決手段】イメージセンサを構成するレンズアレイとその画角をθ1としたとき、レンズアレイの光軸を基準にして、導光体から原稿へ出射される照明光の照射角度をθ1以上かつ30度未満の範囲にすることによって、照明深度特性を向上させ、照明光のムラを軽減したイメージセンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージスキャナ、ファクシミリあるいは複写機等の画像読取装置に係り、特に原稿面からの反射光を読取る画像読取部に設けられるイメージセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージスキャナ、ファクシミリあるいは複写機等の画像読取装置において、画像読取装置内におけるセンサユニットの取り付け方法は、下記の2つに大別される。
画像読取装置内の原稿支持体上に原稿を固定して、センサユニットが移動し読取りを行うフラットベッド型画像読取装置にセンサユニットを固定して、原稿支持体上の原稿用紙を移動させて読取りを行うシートフィード型
先ずフラットベット型の従来の画像読取装置の一例を図7に示す。ここでは密着型イメージセンサ(以下CISと略す。)を用いたフラットベット型画像読取装置の例を示している。以下、従来の密着型イメージセンサの構成例を説明する。図4は従来の密着型イメージセンサの構成断面図であり、導光体42が一本の場合を示している。この密着型イメージセンサに関しては、原稿を照射するための光源を有し、レンズを通して原稿用紙からの反射光を光電変換素子で形成された受光部で受け、電気信号に変換する。
【0003】
同図において、43は構成部材を支持するフレーム、44は原稿の光学像をセンサアレイ45上に結像するレンズアレイ、45は原稿の光学像を電気信号に光電変換する受光部を複数備えたライン状のセンサアレイ、46はセンサアレイを搭載しているセンサ基板、41r、42g、43bは原稿を照明するためのLEDからなる光源であり、長手方向に延びた導光体42の端面に配置されている。光源ユニット41は、LEDからの出射光を取入れ、原稿読取部の1ラインの長さにわたって照明光量が略均一になるように設計された導光体42から構成される。47はセンサ信号と外部機器を接続するコネクタ、48は原稿用紙49を支持する透明ガラス製の原稿支持台である。
【0004】
一般的に導光体42の中に導かれた光は、出射部の反対側に設けられた反射部で反射してレンズ部から照射され、照明光は概略45度の角度で原稿用紙に向かって行く。特に反射特性を上げる必要がある場合、この反射部には反射材として酸化チタン粉末やアルミニウム粉末を印刷等の手段で配置しておくのが好ましい。
【0005】
また図5には、高速のシートフィード型のイメージセンサ及びそれを用いた画像読取装置を示す。同図においては光源の明るさを増すために、導光体を2本内蔵している例を示している。25は原稿搬送ローラーであり、このローラー間に原稿用紙を挟んで搬送することにより、所定の紙搬送路Wが設定され、この中央にレンズアレイの原稿側焦点26を設定している。この場合、原稿用紙の機械的な搬送に伴って原稿用紙の高さが、レンズアレイの光軸方向つまり原稿側焦点26に対して遠近両方向に変動するという問題が存在する。
【0006】
また、この照明光の照射角度に関しては、特許文献1において30−50度を中心としていることが開示されており、さらにレンズアレイに近接して配置することが開示されている。(詳細は特許文献1を参照のこと)
【特許文献1】特開平11−17903号公報、図24他
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来例では、以下のような課題があった。すなわち、例えば本を見開いた状態でスキャナ読取りを行った場合や凹凸のある原稿用紙を読取る場合、イメージセンサの照明深度が浅いために、原稿支持台から若干でも離れた位置では照明光量が減少し、レンズアレイによってセンサアレイ上に集光できる光量も少なくなり、結果的に見開き部が黒く表示されてしまうので、画質上の改善を求められていた。
【0008】
仮に原稿情報が均一な濃度であっても、原稿用紙がレンズアレイの光軸方向に高さ変動した場合、レンズアレイの光軸に対し垂直な原稿面上の照明光量が変化して、画像読取装置の出力画像には読取り位置の高さに依存した濃度ムラが発生しやすくなるという課題が生じていた。
【0009】
またフラットベッド型の画像読取装置においても、表面に凹凸のある原稿を容易に読み取れるように、レンズアレイの原稿側焦点は原稿支持体の原稿側表面位置よりも若干上方に設定されており、原稿がレンズアレイの光軸方向に高さ変動した場合に濃度ムラが発生しやすくなるという課題が生じていた。
【0010】
本発明はかかる実情に鑑み、照明装置を有する密着型イメージセンサユニットにおいて、照明装置から出射された照明光の最大光量を示す光軸の入射角度を調整することにより、原稿支持台上の原稿の高さ変動に対し、読取り光量の変動が少ないセンサユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導光体から原稿台に向かう照射光の光軸を、なるべく原稿台に対して垂直方向に近づけることによって、照明装置の照明深度を深くして、原稿台から遠ざかった位置に対しても光量減少を低く抑え、結果的に良好な画像読取装置を得ることを目的とする。
本発明は、透明な原稿支持台上に配置された原稿用紙を照明する照明装置と、原稿用紙からの反射光を結像するレンズアレイと、前記反射光を電気信号に変換する画素を複数備えたセンサアレイとから構成されるイメージセンサユニットであって、
前記レンズアレイの画角をθ1、
前記レンズアレイのレンズ光軸に対して、前記照明装置から出射され原稿へ向かう照明光光軸の交差角度をθ2としたとき、
θ1 < θ2 < 30°
であることを特徴とするイメージセンサユニットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照明光の照射角度を変えることによって照明深度を深くすることができ、原稿支持体上の原稿の位置が変化したときも、読取り光量の変化を小さく抑えることが可能になる。よって照明装置の集光性を高めたまま、大きな光量を得ることができるため、単位時間あたりの読取光量が増し、高速な読取りが可能となる。かつ原稿の上下位置の変動に対し出力変動の小さいイメージセンサユニットを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の構成において、本発明によるイメージセンサユニットは、次のように構成する。従来からのイメージセンサユニットを用いて、それを固定するフレーム形状或いはフレーム受け部の形状を工夫することにより、原稿支持台に入射する光線の角度を従来よりも低角度にした。すなわちレンズアレイの画角をθ1、レンズアレイを通りセンサアレイに向かう光軸を基準軸として、導光体から出射され原稿に向かって直進する照明光のうち、光量分布が最大を示す光軸との成す角度をθ2としたとき、
θ1 < θ2 < 30°としたことを特徴としている。
以下実施例により本発明の詳細な説明を行う。
【実施例1】
【0014】
本発明のイメージセンサユニットを用いた密着型イメージセンサの例を図1に示す。
センサフレーム13の中に格納された導光体12は、その端面にLED光源11が配置されている。そこから発せられた光は、導光体内部に導かれ、長手方向に渡って原稿用紙19をライン状に照射することができる。この導光体から出射された光は、原稿支持体18に入り、その上の原稿用紙19を照射する。次に原稿用紙によって反射された光は、レンズアレイ14によって集光され、センサ基板16上に配置された光電変換素子15に結像し、光電変換されて電気信号となる。画像信号はセンサ基板の下部に取り付けられた外部端子17を通じて、制御回路(不図示)に送られ、画像を形成する。
【0015】
このとき導光体から出射された光は、原稿用紙の読取位置をライン状に照射するが、その光量は実際には原稿用紙の横方向、高さ方向に光量分布を持っている。原稿用紙が原稿支持台から浮き上がる場合にも、この光量分布がなるべく変化しないことが望まれる。
【0016】
図1中に示すように、レンズアレイ14の中心を垂直に延伸した線をレンズ光軸とし、また本導光体から出射される光の最大光量を示す軸を、照明光光軸とする。ここで照射角とは、この2つの光軸の交差する角度θ2を意味する。図中では導光体から出射された光束を直線で描いているが、実際の光束は原稿支持台に入ると屈折して角度を変え、また空気中に出るときに元の角度に戻るため、前記θ2の実質的な角度は一定である。そこで、本願では図面を簡潔にするために、敢えて直線で描いている。
【0017】
本実施例では、導光体とフレームとの間にスペーサを入れることによって、前記照射角θ2を27度になるように調整した。また導光体出射部の反対側には反射部材としてアルミニウム粉末を印刷法にて形成し、反射効率を上げる処置を施してある。
【0018】
図3は、横軸に原稿支持台からの距離と照度との関係を示すグラフである。図1に示す原稿支持台上にスペーサを入れて、原稿用紙との距離を変えてセンサアレイに到達する光量をラインセンサの電気信号出力として計測したものである。図では原稿支持台上の位置におけるセンサ出力を1として規格化して表してある。
【0019】
図3(II)の曲線は本願実施例の結果、図2(I)は従来技術による比較例を示している。原稿支持台上での光量を1としたたき、従来例では2mm離れた位置で、約30%程度光量が低下するのに対して、本願導光体では約10%程度に収まり、高い光量を維持していることがわかる。さらに8mm離れても40%の光量を有しており、照度低下が顕著に抑制されていることがわかる。
【0020】
一般に本を見開いた状態で原稿支持台に置いた場合、従来例では原稿支持台から距離が離れた綴じ部では光量が少なくなり、綴じ部が黒く印刷されることがあったが、本願イメージセンサを用いることによって黒くなる程度を格段に少なくすることができた。
【0021】
また上記照射角をより小さくすることによって照明深度をより深くすることが可能となるが、反面照射角θ2を小さくすると正反射光を取り込み易くなり、ノイズが増える問題がある。以下これを詳述する。本実施例では、レンズアレイが光を取り込める画角が12度のものを用いている。例えば、照射角を12度よりも小さくすると、原稿面などで反射した高い光量を持つ正反射光がレンズの画角に確実に入り込み、センサアレイの周囲に結像する。こうした正反射光は迷光となり、センサアレイに取り込まれることによりノイズ成分となるので、好ましくはない。このため照射角はレンズアレイの画角以上あることが必須である。
【0022】
さらに、照射角θ2がレンズアレイの画角θ1に近い場合、原稿用紙の凹凸などにより、正反射した光が画角内に入り込む可能性が高くなり、特に黒色画像を読取るような場合にノイズとなり、白点として表示されることが起こり易くなる問題がある。このために、実際上照射角の下限はレンズアレイの画角の2倍、つまり2xθ1程度にすることが好ましい。
【実施例2】
【0023】
図2は、本発明の異なる実施例である導光体を2本用いた場合を示す。一般にこのタイプのセンサユニットは、照射光量を増すことにより1ライン当たりの読取り時間を少なくすることができるので、時間当たりの読取り枚数を増やすことができ、高速スキャナなどに応用されている。
【0024】
2本の導光体から出射される照明光の最大光量を示す光軸は、導光体とフレームの位置関係をスペーサなどによって調節することにより、原稿台に入射する光軸が27度になるように設計されている。この方式のCISユニットも、実施例1と同様に原稿の読取位置による光量差を小さく抑えることができた。
【0025】
これによって実施例1の場合と同様に、照明深度を深くすることができ、本を見開いた場合などのように、奥行きがある原稿に関しても黒くなる部分を少なく抑えることが可能となった。
【0026】
(比較例)
図4は、図3(I)に示した照明深度特性を示した従来タイプの密着型イメージセンサの断面図を示す。原稿用紙への照射角度を45度になるように設定した以外は、図1に示す構造と同様なイメージセンサユニットである。
【0027】
図中LED素子から出た光は導光体42に導かれ、そこ原稿支持台48を通じて原稿用紙49をライン状に照射する。その反射光はセルフォックレンズアレイ44を通ってセンサ基板上46上に配置された光電変換素子45に導かれ、電気信号に変換されることは本発明と同じ原理である。
【0028】
図3(I)に示すように、原稿用紙の位置が高くなると急激に光量が低下することがわかる。
【実施例3】
【0029】
本発明のイメージセンサーユニットを用いたフラットベット型イメージスキャナの実施の形態について説明する。
図7はイメージスキャナの外観を示す斜視図である。図において、71は本発明の密着型イメージセンサである。74は駆動モータ、75はワイヤ、76は原稿支持台であるガラス板、77は原稿用紙の圧板である。
【0030】
駆動モータ74を駆動させてワイヤ75を機械的に動かすことにより、CIS71は読取方向(走査方向)に移動して原稿の画像を読取ることができる。CISは照明部が一体に組み込まれたセンサーユニットとして構成され、照明された原稿からの反射光はCIS中のレンズアレイ(不図示)によって光電変換素子上に集光され、1ラインごとに画像情報として出力される。このようにして、シート状の画像情報を読取り出力することが可能となる。
【0031】
本発明のCISユニットを搭載したイメージスキャナでは、原稿用紙の位置変動や凹凸に対し影響を受けにくく、安定した画像情報を出力できるイメージスキャナを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施例による密着イメージセンサの構成断面図。
【図2】本発明の第2の実施例による密着イメージセンサの構成断面図。導光体を2本用いた例を示す。
【図3】本発明及び従来例の密着型イメージセンサを用いた場合の照明深度特性を示す図。横軸が焦点位置からの変化を示し、縦軸はその光量変動を示す。
【図4】従来の密着イメージセンサの構成断面図。
【図5】従来例の密着型イメージセンサを用いたシートフィード型画像読取り装置の一例を示す図。
【図6】本願の密着型イメージセンサを用いたシートフィード型画像読取装置の一例を示す図。
【図7】本発明のイメージセンサを用いたフラットベッド型画像読取り装置の一例を示す図。
【符号の説明】
【0033】
θ1 レンズアレイの光を散りこめる範囲を示す画角
θ2 照射角。レンズ光軸に対して照明光の光軸が交差する角度
11 LED光源
12 導光体
13 フレーム
14 セルフォックレンズアレイ
15 光電変換素子
16 センサ基板
18 原稿支持台
19 原稿用紙

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な原稿支持台上に配置された原稿用紙を照明する照明装置と、原稿用紙からの反射光を結像するレンズアレイと、前記反射光を電気信号に変換する画素を複数備えたセンサアレイとから構成されるイメージセンサユニットであって、
前記レンズアレイの画角をθ1、
前記レンズアレイのレンズ光軸に対して、前記照明装置から出射され原稿へ向かう照明光光軸との交差角度をθ2としたとき、
θ1 < θ2 < 30°
であることを特徴とするイメージセンサユニット。
【請求項2】
前記θ1及びθ2の関係が、
2xθ1 < θ2 < 30°
であることを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサユニット。
【請求項3】
請求項1乃至2の何れかに記載のイメージセンサユニットを内蔵したことを特徴とする画像読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−174038(P2006−174038A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363054(P2004−363054)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000104629)キヤノン・コンポーネンツ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】