説明

イメージング部材

【課題】従来のカール防止バックコーティングを必要としない改善されたカールのないイメージング部材を提供する。
【解決手段】基材と、基材上に配置された電荷発生層と、電荷発生層上に配置され、複数の層を有し、各層は、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの電荷輸送化合物と、高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、液体化合物はポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、電荷輸送層と、を備える、イメージング部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで開示した実施形態は、静電写真において使用されるイメージング部材に関する。より詳細には、実施形態は、カール防止バックコーティング層を必要としない構造的に簡略化されたフレキシブル静電写真イメージング部材ならびにその部材の製造および使用プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
静電写真フレキシブルイメージング部材は、単一層または複合層を含む光導電性層を含んでもよい。典型的なフレキシブル静電写真イメージング部材は望ましくない上向きのイメージング部材のカーリング(curling)を示す可能性があるので、カールの均衡をとるために、裏側に適用されるカール防止バックコーティングが要求される。このように、所望の平坦性を有する適当なイメージング部材ベルトを提供するにはカール防止バックコーティングの適用が必要である。
【0003】
様々なベルト機能欠陥がまた、典型的な従来のイメージング部材ベルトにおいて使用される普通のカール防止バックコーティング調合物において観察されており、例えば、標準の機械機能条件下で、カール防止バックコーティングは必ずしも満足のいく動的イメージング部材ベルト性能を提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,265,990号明細書
【特許文献2】米国特許第5,660,961号明細書
【特許文献3】米国特許第5,215,839号明細書
【特許文献4】米国特許第5,958,638号明細書
【特許文献5】米国特許第6,660,441号明細書
【特許文献6】米国特許第7,413,835号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0099525号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、電荷輸送層材料再調合法および上記欠陥のないフレキシブルイメージング部材を製造するプロセスは、カール防止バックコーティングのないイメージング部材の調製により識別され、実証されている。従来のカール防止バックコーティングを必要としない改善されたカールのないイメージング部材は、摩損/摩耗障害、電荷輸送層の亀裂の延びを抑制し、これらは下記で詳細に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材と、前記基材上に配置された電荷発生層と、前記電荷発生層上に配置され、複数の層を有し、各層は、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの電荷輸送化合物と、高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、電荷輸送層と、を備える、イメージング部材である。
【0007】
また、前記イメージング部材において、前記液体化合物は300℃を超える沸点を有し、前記液体化合物は前記電荷輸送層中に、前記電荷輸送層中の前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの総重量の約3重量%から約30重量%の量で存在することが好ましい。
【0008】
また、前記イメージング部材において、前記液体化合物は、オリゴマポリスチレン、カーボネートモノマおよびそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0009】
また、前記イメージング部材において、前記液体化合物は、下記式からなる群より選択される式を有するオリゴマポリスチレン、およびそれらの混合物を含み:
【化1】


式(I)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択され、mは0から10の間である)、
【化2】


式(III)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択される)、
【化3】


式(IV)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択される)、
【化4】


式(V)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択される)、
前記カーボネートモノマは下記式を有することが好ましい。
【化5】


式(II)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHである)
【0010】
また、本発明は、基材と、前記基材上に配置された電荷発生層と、前記電荷発生層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第1の電荷輸送層と、前記第1の電荷輸送層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第2の電荷輸送層と、を備える、イメージング部材である。
【0011】
また、本発明は、基材と、前記基材上に配置された電荷発生層と、前記電荷発生層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第1の電荷輸送層と、前記第1の電荷輸送層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第2の電荷輸送層と、前記第2の電荷輸送層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第3の電荷輸送層と、を備える、イメージング部材である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の記載による、構成および構造設計を有するフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【図2A】本開示の1つの実施形態による、単一電荷輸送層を有する構造的に簡略化したフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【図2B】本開示の1つの実施形態による、単一電荷輸送層を有する、別の構造的に簡略化したフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【図3】本開示の1つの実施形態による、単一電荷輸送層を有する、さらに別の構造的に簡略化したフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【図4】本開示の1つの実施形態による、二重電荷輸送層を有する、構造的に簡略化したフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【図5】本開示の1つの実施形態による、三重電荷輸送層を有する、構造的に簡略化したフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【図6】本開示の1つの実施形態による、複数の電荷輸送層を有する、構造的に簡略化したフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【図7】本開示の別の実施形態による、単一の電荷発生/輸送層を有する、構造的に簡略化したフレキシブル多層静電写真イメージング部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるイメージング部材は、基材と、前記基材上に配置された電荷発生層と、前記電荷発生層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの電荷輸送化合物と、高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、少なくとも1つの電荷輸送層と、を備える。
【0014】
本明細書で説明した観点によれば、フレキシブル基材と、導電性接地面(conductive ground plane)と、ホールブロッキング層と、電荷発生層と、電荷輸送層の反対側の基材上に配置されるカール防止バックコーティング層が適用されていない最外電荷輸送層とを備え、電荷輸送層は、適した液体可塑剤を組み入れることにより内部構築歪み(build−in strain)が最小に押さえられるように調合される、カールのないフレキシブル部材が存在する。カール防止バックコーティングがないイメージング部材調製のために生じる、目的とする電荷輸送層の可塑化を達成するために、2つの高いボイラ液(boiler liquid)候補が下記でさらに記載されているように、本開示適用のために選択される。
【0015】
電荷輸送層の可塑化用途のために選択されたオリゴマポリスチレン液は、下記式(I)で示される分子構造を有し、
【化6】


式(I)
式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択され、mは0から10の間である。
【0016】
電荷輸送層に組み入れるための可塑化液体モノマカーボネートは、モノマビスフェノールAカーボネートにより表され、下記分子式(II)を有し、
【化7】


式(II)
式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHである。
【0017】
電荷輸送層の可塑化のための実行可能な候補となる他の芳香族カーボネート液もまた、式(I)から誘導してもよく、本開示出願のために含めてもよい。それらの分子構造は下記式(III)から(V)までにより表され、
【化8】


式(III)
【化9】


式(IV)
【化10】


式(V)
式中、これらの式全てにおけるRはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択される。
【0018】
イメージング部材電荷輸送層の可塑化のためのオリゴマポリスチレンおよびモノマカーボネートの選択は、それらが、(a)300℃を超える沸点を有する高ボイラ液であり、そのため、可塑化の結果に影響を与えるための電荷輸送層中でのそれらの存在は永久的であろう、(b)電荷輸送化合物およびポリマバインダの両方と全体的に混和可能/相溶性である液体であり、そのため、それらを電荷輸送層材料マトリクス中に組み入れても、得られたイメージング部材の有害な光電機能を引き起こさないという事実に基づく。
【0019】
従来の負に帯電したフレキシブル静電写真イメージング部材の例示的な実施形態を図1に示す。基材10は必要に応じて用いられる導電層12を有する。導電層12上に配置された必要に応じて用いられるホールブロッキング層14は必要に応じて用いられる接着層16でコートされる。電荷発生層18は接着層16と電荷輸送層20との間に配置される。必要に応じて用いられるグランドストリップ層(ground strip layer)19は動作可能なように、電荷発生層18および電荷輸送層20を導電性接地面12に接続し、必要に応じて用いられるオーバコート層が電荷輸送層20上に適用される。カール防止バッキング層1を基材10の電気活性層とは反対側に適用し、イメージング部材を平坦にする。
【0020】
イメージング部材の層は、例えば、イメージング部材の1つの縁に適用された、必要に応じて用いられるグランドストリップ層19を含み、ホールブロッキング層14を介して導電性接地面12との電気連続性が促進される。典型的には薄い金属層、例えば、10nmの厚さのチタンコーティングである、導電性接地面12は、真空蒸着またはスパッタリングプロセスにより基材10上に堆積させてもよい。他の層14、16、18、20は別個に、および連続して、それぞれ、基材10の導電性接地面12の表面上に、溶媒を含む溶液のウェットコーティングとして堆積され、各層は次のそれに続く層の堆積前に乾燥させられる。カール防止バックコーティング層1はその後、支持基材10の裏側に形成されてもよい。カール防止バックコーティング層1もまた溶液コートされるが、基材10の裏側(全ての他の層の反対側)に適用され、イメージング部材が平坦にされる。
【0021】
図2Aは、本開示の材料調合および方法に従い調製されたイメージング部材を開示する。実施形態では、開示したイメージング部材(カール防止バックコーティングを含まない)の基材10、導電性接地面12、ホールブロッキング層14、接着界面層16、電荷発生層18が、図1の従来のイメージング部材において記載されているものと全く同じ材料、組成、寸法、および手順を有するように調製されるが、例外として、電荷輸送層20は、電荷輸送層20中に可塑剤としてのオリゴマポリスチレン液26が組み入れられるように再調合され、その内部歪みの排除が達成され、これにより、カール防止バックコーティングの必要のない、所望の平坦度を有するイメージング部材が得られる。本質的に、層材料マトリクス中に可塑剤液が存在すると、可塑化された電荷輸送層のTgが実質的に低下し、そのため(Tg−25℃)の大きさが小さな値となり、式(1)に従い、電荷輸送層の内部歪みが減少し、イメージング部材のカーリング減少が達成される。再調合された電荷輸送層20は平均して、約10から約60重量%のジアミン電荷輸送化合物、例えば、mTBD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[3−メチルフェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)、約10から約90重量%のビスフェノールAポリカーボネートポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニルカーボネート)、および可塑化オリゴマスチレン液の添加を含む。この可塑化液の量は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン(m−TBD)とポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%の範囲にあり、好ましくは、約10から約20重量%の間である。オリゴマポリスチレン液26の分子式は上記式(I)において示されている。
【0022】
これらの対応する実施形態のイメージング部材においては、図2Bで開示したイメージング部材の電荷輸送層20中のオリゴマポリスチレン液が別の可塑化液と置換される。すなわち、再調合された電荷輸送層は、同じジアミンm−TBDおよびビスフェノールAポリカーボネート電荷輸送層材料マトリクス中に組み入れられる液体モノマカーボネート28を含む。可塑化液カーボネートモノマの量は、ジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%の範囲にあり、好ましくは約10から約20重量%の間である。可塑化液体モノマカーボネート28はモノマビスフェノールAカーボネートであり、上記分子式(II)〜(V)のいずれかを有することができる。
【0023】
図3について説明すると、この開示の別の実施形態は、可塑剤が液体オリゴマポリスチレン26とモノマカーボネート28の混合物であることを除き、図2Aおよび2Bの実施形態による全く同じジアミンm−TBDおよびビスフェノールAポリカーボネート組成物マトリクスを含むように別に再調製された可塑化電荷輸送層20を製造する。可塑化された電荷輸送層中の2つの可塑化液の量は、ジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%の範囲、好ましくは約10から約20重量%の間にある。そのため、可塑化された電荷輸送層20中に存在するオリゴマポリスチレンのカーボネートモノマに対する個々の可塑剤比(オリゴマポリスチレン:モノマカーボネート)は、約10:90から約90:10の間である。
【0024】
図4に示される拡張実施形態によれば、図3の電荷輸送層20は、オリゴマポリスチレン液26で可塑化された二重層、すなわち底(第1)層20Bおよび最上(第2)層20Tを備えるように再設計される。これらの層はどちらも、大体同じ厚さの、同じジアミンm−TBD、および各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間のポリスチレン液添加を含む。これらの全く同じ拡張実施形態の改変では、オリゴマポリスチレン液で可塑化された二重層はまた、第1層が第2層よりもより多くの量のジアミンm−TBDを含む、すなわち、第1層が約40から約70重量%のジアミンm−TBDを含み、第2層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDを含むように再調合される。
【0025】
図4のさらに別の拡張実施形態では、二重電荷輸送層はどちらも、液体モノマカーボネート28を用いて可塑化される。これらの層のどちらも、大体同じ厚さの、同じジアミンm−TBDおよびビスフェノールAポリカーボネート組成物マトリクス、ならびに各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間の同じ量のモノマカーボネート液の組み入れを含むように設計される。これらの全く同じさらに別の拡張実施形態の改変では、モノマカーボネートで可塑化された二重層はその後、第1層が第2層よりもより多くの量のジアミンm−TBDを含む、すなわち、第1層が約40から約70重量%のジアミンm−TBDを含み、第2層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDを含むように再調合される。
【0026】
図4のさらに別の拡張実施形態では、二重電荷輸送層はどちらも、液体オリゴマポリスチレンおよびモノマカーボネートの混合物の使用により可塑化され、可塑化された二重層中のオリゴマポリスチレンのカーボネートモノマに対する個々の可塑剤比(オリゴマポリスチレン:モノマカーボネート)は約10:90から約90:10の間である。しかしながら、混合物は等量部の液体オリゴマスチレンおよびカーボネートモノマであることが好ましい。これらの層の両方が、大体同じ厚さ、同じジアミンm−TBDおよびビスフェノールAポリカーボネート組成物マトリクス、および、各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間の同じ量の可塑剤液混合物の組み入れを有するように設計される。図4のこれらの全く同じさらに別の拡張実施形態の改変では、これらの可塑化された二重層はさらに、第1層が第2層よりもより多くの量のジアミンm−TBDを含む、すなわち、第1層が約40から約70重量%のジアミンm−TBDを含み、第2層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDを含むように再調合される。
【0027】
図5に示した、別の実施形態のイメージング部材における可塑化された電荷輸送層は、三重層、すなわち底(第1)層20B、中央(メジアン)層20C、および最上(外側)層20Tを提供するように再設計され、これらの層はすべて、オリゴマポリスチレン液で可塑化される。これらの実施形態では、三重層は全て、大体同じ厚さ、同じジアミンm−TBDおよびビスフェノールAポリカーボネート組成物マトリクス、および、各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間の同じ量のオリゴマポリスチレン液添加を有する。これらの全く同じさらに別の実施形態の改変では、オリゴマポリスチレン液により可塑化された三重層はさらに、第1層が約50から約80重量%のジアミンm−TBDを含み、第2層が約40から約70重量%のジアミンm−TBDを含み、第3層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDを含むように、底層から最上層まで下降順で異なる量のジアミンm−TBDを含むように再調合される。
【0028】
図5の別の実施形態の拡張では、イメージング部材の三重電荷輸送層の全てが液体モノマカーボネートで可塑化される。実施形態では、これらの層は全て、大体同じ厚さ、同じジアミンm−TBDおよびビスフェノールAポリカーボネート組成物マトリクス、および、各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間の同じ量のカーボネートモノマ添加を有する。これらの別の実施形態の全く同じ拡張の改変では、カーボネートモノマにより可塑化された三重層はさらに、第1層が約50から約80重量%のジアミンm−TBDを含み、第2層が約40から約70重量%のジアミンm−TBDを含み、第3層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDのジアミンm−TBDを含むように、底層から最上層まで下降する濃度勾配で異なる量のジアミンm−TBD量を含むように再調合される。
【0029】
図5の別の実施形態の別の拡張では、イメージング部材の三重電荷輸送層の全てが、液体オリゴマポリスチレンおよびモノマカーボネートの混合物の使用により可塑化され、可塑化された三重層中に存在するオリゴマポリスチレンのカーボネートモノマに対する個々の可塑剤比(オリゴマポリスチレン:モノマカーボネート)は約10:90から約90:10の間である。しかしながら、混合物は等量部の液体オリゴマスチレンおよびカーボネートモノマであることが好ましい。これらの実施形態では、これらの層の全てが、大体同じ厚さ、同じジアミンm−TBDおよびビスフェノールAポリカーボネート組成物マトリクス、および、各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間の同じ量の2つの可塑剤添加を有するように設計される。別の実施形態のこれらの全く同じ別の拡張の改変では、可塑化された三重層はさらに、第1層が約50から約80重量%のジアミンm−TBDを含み、第2層が約40から約70重量%のジアミンm−TBDを含み、第3層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDのジアミンm−TBDを含むように、底層から最上層まで下降する濃度勾配で異なる量のジアミンm−TBD量を含むように再調合される。
【0030】
革新的な実施形態では、図6で示した開示したイメージング部材は、約4から約10の別個の層、好ましくは約4から約6の間の別個の層を有する、可塑化された複数の電荷輸送層を有する。これらの複数の層は、同じ厚さを有し、第1(底)層20F、複数の(中間)層20M、および最終(最外)層20Lを有するように形成される。これらの層は全てビスフェノールAポリカーボネートバインダ、同じ量のオリゴマポリスチレン液の組み入れ、および、底層が約50から約80重量%のジアミンm−TBDを含み、最上層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDを含むような、底層から最上層まで下降する連続順で存在するジアミンm−TBD量を含む。これらの複数の層中へ組み入れられるオリゴマスチレン可塑剤量は、各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間である。これらの全く同じ革新的な実施形態の改変では、可塑化された複数の電荷輸送層はその後、各層由来の液体オリゴマポリスチレン可塑剤によるモノマカーボネート置換を有するように修飾され、再調合される。
【0031】
別の革新的な実施形態では、図6で示している開示したイメージング部材は、可塑化された複数の電荷輸送層中に存在するオリゴマポリスチレンのカーボネートモノマに対する個々の可塑剤比(オリゴマポリスチレン:モノマカーボネート)が約10:90から約90:10の間である混合物を有する。しかしながら、これらの約4から約10の層の、好ましくは約4から約6の別個の層の間の可塑化された複数の層中では、混合物は等量部の液体オリゴマスチレンおよびカーボネートモノマであることが好ましい。複数の層は、同じ厚さを有し、底層と、複数の中間層と、最上層と、から構成されるように形成される。これらの層の全てが、ビスフェノールAポリカーボネートバインダ、同じ量のオリゴマポリスチレンおよびモノマカーボネート液体混合物の組み入れ、および、底層が約50から約80重量%のジアミンm−TBDを含み、最上層が約20から約60重量%のジアミンm−TBDを含むように底層から最上層まで下降する連続する順で存在するジアミンm−TBD量を含む。これらの複数の層中へ組み入れられる可塑剤混合物量は、各々の層中のジアミンm−TBDおよびポリカーボネートの合計重量に対し、約3から約30重量%、好ましくは約10から約20重量%の間である。
【0032】
図1で記載されるもののような電荷輸送層20および電荷発生層18である2つの離散的に分離された層の別の例として、他の層全てが前の図面において記載されたものと全く同じ様式で形成されている構造的に簡略化されたイメージング部材は、図7で示されているように、電荷発生能力および電荷輸送能力の両方を有し、ここで開示されている可塑剤の使用により可塑化もされ、カール防止バックコーティングの必要性が排除されている単一のイメージング層22を含むように作製されてもよい。
【0033】
一般に、上記図2から7で開示した、全てのイメージング部材の可塑化された1つ(複数の)電荷輸送層および可塑化された単一層の厚さは、約10から約100μmの範囲にあるが、好ましくは、約15から約50μmの間である。開示実施形態における、配合された電荷輸送層を使用するイメージング部材の最外最上層は、最少量のジアミンm−TBD電荷輸送分子(底層から最上層まで下降する濃度勾配で)を含むように調合される理由は、(1)2つのコーティング層の間の界面でのジアミンm−TBD結晶化を阻止すること、および(2)現場での動的機械ベルトサイクル機能(dynamic machine belt cyclic function)中の最上層の疲労亀裂抵抗を増強することであることを強調することが重要である。
【0034】
電荷輸送層のガラス転移温度は、例えば、約50℃以上である。
【0035】
本開示のフレキシブルイメージング部材の曲率直径は、例えば、約25インチ以上である。
【0036】
複数の電荷輸送層の各層における可塑剤(液体化合物)は、同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0037】
可塑化された電荷輸送層を含むが、カール防止バッキング層の適用はないように調製された、本開示のフレキシブルイメージング部材は、各対照イメージング部材に対し、光電完全性(photoeletcrical integrity)を維持しているはずである。要するに、約750から約850ボルトの範囲の電荷受容性(V)、約250から約450ボルト/エルグ/cmの感度(S)、約150ボルト未満の残留電位(V)、約280から約620ボルトの間の暗発現電位(dark development potential)(Vddp)、および約70から約20ボルトの間の暗減衰電圧(Vdd)を有する。
【0038】
開示したイメージング部材設計の機械性能をさらに改善するために、可塑化した最上イメージング層はまた、より大きな摩耗耐性増強を与える無機または有機フィラー添加物を含んでもよい。無機フィラーとしては、シリカ、金属酸化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩、などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
上記の全てにおいて記載されている、本開示の実施形態により作製されたフレキシブル多層静電写真イメージング部材は長方形シートにカットしてもよい。各イメージング部材のカットシートの一対の対向端をその後、共に重ね合わせ、任意の適した手段、例えば超音波溶接、グルーイング、テーピング、ステープリング、または圧力および熱融合により接合させ、連続イメージング部材継ぎ目ありベルト、スリーブ、またはシリンダを形成させる。
【実施例】
【0040】
<対照実施例I>
対照実施例Iでは、図1に示されるように、従来のフレキシブル静電写真イメージング部材ウエブは、3.5ミル(89μm)の厚さを有する二軸配向ポリエチレンナフタレート基材(カダレックス(KADALEX)、デュポンテイジンフィルムズ(Dupont Teijin Films)から入手可能)の基材上にコートされた0.02μmの厚さのチタン層を提供することにより調製した。チタン化したカダレックス基材を、γアミノプロピルトリエトキシシラン6.5g、蒸留水39.4g、酢酸2.08g、200度(proof)変性アルコール752.2gおよびヘプタン200gの混合物を含むブロッキング層溶液で押出コートした。この湿潤コーティング層をその後、強制空気オーブン内で135℃で5分間乾燥させ、コーティングから溶媒を除去し、架橋シランブロッキング層を形成させた。得られたブロッキング層はエリプソメータで測定すると、0.04μmの平均乾燥厚さを有した。
【0041】
その後、ブロッキング層に、テトラヒドロフラン/シクロヘキサノンの70:30(v/v)混合物に溶解したポリエステル接着剤(MOR−ESTER49,000、モートンインターナショナル社(Morton International,Inc.)から入手可能)の溶液の総重量に基づき5重量%を含む湿潤コーティングを適用することにより、接着界面層を押出コートした。オーブンを通過させた後、得られた接着界面層は、0.095μmの乾燥厚さを有した。
【0042】
接着界面層はその後、電荷発生層でコートさせた。電荷発生層分散物は、ポリスチレン−コ−4−ビニルピリジン1.5gおよびトルエン44.33gを4オンスガラス瓶に添加することにより調製した。ヒドロキシガリウムフタロシアニンV型1.5gおよび1/8−インチ(3.2mm)直径のステンレス鋼ショット300gを溶液に添加した。この混合物をその後、ボールミル上に約8から約20時間の間置いた。得られたスラリをその後、押出塗布プロセスにより接着界面上にコートさせ、0.25ミルの湿潤厚さを有する層を形成させた。しかしながら、ブロッキング層および接着層を有する基材ウエブストック(stock)の1つの縁に沿った約10mmの幅のストリップを、意図的に、電荷発生層によりコートされていないままとし、後に適用されるグランドストリップ層による十分な電気接触を促進させる。湿潤電荷発生層を強制空気オーブン中で125℃で2分間乾燥させ、0.4μmの厚さを有する乾燥電荷発生層を形成させた。
【0043】
コートしたウエブストックは、2つのコーティング溶液の共押出により、電荷輸送層およびグランドストリップ層で同時にコートした。電荷輸送層は、マクロロン(MAKROLON)5705、ファルベンサブリケンバイエルA.G.(Farbensabricken Bayer A.G.)から市販されている約12,000の分子量を有するビスフェノールAポリカーボネート熱可塑性物質を、電荷輸送化合物N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンと、琥珀色ガラス瓶中で、1:1の重量比(または各々50重量%)で混合することにより、調製した。得られた混合物を溶解し、塩化メチレン中15重量%の固体となるようにし、共押出コーティングプロセス中、グランドストリップ層と共に電荷発生層上に適用した。
【0044】
電荷発生層によりコートされないままとされた、接着層の約10mmの幅のストリップを電荷輸送層およびグランドストリップコーティングの共押出中にグランドストリップでコートした。グランドストリップ層コーティング混合物は、ポリカーボネート樹脂(バイエルA.G.(Bayer A.G.)から入手可能なマクロロン5705、7.87%総重量固体)23.81gと、塩化メチレン332gとを、カーボイ容器(carboy container)内で混合することにより調製した。容器にしっかり蓋をし、ロールミル上に約24時間、ポリカーボネートが塩化メチレンに溶解されるまで置いた。得られた溶液を15から30分間、9.41重量部のグラファイト、2.87重量部のエチルセルロースおよび87.7重量部の溶媒のグラファイト分散物(12.3重量%固体)(アチェソンコロイドカンパニ(Acheson Colloids Company)から入手可能なアチェソングラファイト分散物RW22790)約93.89gと、水冷ジャケット付き容器内に分散させた高せん断ブレードの助けを借りて混合し、分散物が過加熱され、溶媒を損失しないように阻止した。得られた分散物をその後濾過し、塩化メチレンの助けを借りて粘度を調整した。このグランドストリップ層コーティング混合物をその後、電荷輸送層と共に共押出コーティングにより、静電写真イメージング部材ウエブに適用し、導電グランドストリップ層を形成させた。
【0045】
上記層を全て含むイメージング部材ウエブストックを、その後、60フィート/分のウエブ速度で輸送させ、125℃製造コーター強制空気オーブンを通過させ、共押出コートしたグランドストリップおよび電荷輸送層を同時に乾燥させ、それぞれ、19μmおよび29μmの乾燥厚さとした。この時点で、乾燥させたコーティング層全てを有するイメージング部材は、拘束されない場合、ウエブが25℃の室温まで冷却されるにつれ、自然に上方にカールし、1.5インチのチューブとなる。電荷輸送層は85℃のガラス転移温度(Tg)および約6.6×10−5/℃の熱収縮係数を有するので、約1.9×10−5/℃のより小さな熱収縮を有するPEN基材よりも約3.7倍大きな寸法収縮を有した。そのため、式(I)により、2.75%の内部歪みが電荷輸送層中で蓄積され、イメージング部材の上方カーリングとなった。
【0046】
カール防止コーティングは、ポリカーボネート樹脂(マクロロン5705)88.2gと、ヴィテル(VITEL)PE−2200コポリエステル(マサチューセッツ州ミドルトン所在のボスティック社(Bostik,Inc.)から入手可能)7.12gと、塩化メチレン1,071gと、をカーボイ容器中で混合し、8.9%の固体を含むコーティング溶液を形成させることにより調製した。容器にしっかり蓋をし、ロールミル上に約24時間、ポリカーボネートおよびポリエステルが塩化メチレンに溶解されるまで置き、カール防止バックコーティング溶液を形成させた。カール防止バックコーティング溶液をその後、静電写真イメージング部材ウエブの裏面(電荷発生層および電荷輸送層とは反対側)に、押出コーティングにより適用し、強制空気オーブン内で125℃の最高温度まで乾燥させ、17μmの厚さを有する乾燥したカール防止バッキング層を生成させ、イメージング部材を平坦化させた。図1で示した従来技術により得られたイメージング部材は、29μmの厚さの単層電荷輸送層を有する。
【0047】
<開示実施例I>
開示実施例Iでは、図2Aで示されるように、5つのフレキシブル静電写真イメージング部材ウエブが、カール防止バックコーティングが排除され、これらのイメージング部材ウエブの単一の電荷輸送層がそれぞれ、電荷輸送層のマクロロンおよび電荷輸送化合物を合わせた重量に基づき、4、8、12、16および20重量%の式(I)の液体スチレン二量体(式中、RはCHである)(SPサイエンティフィックポリマプロダクツ社(SP Scientific Polymer Products,Inc.)から入手可能)を組み入れることにより可塑化されたことを除き、対照実施例Iで記載されているものと全く同じ材料組成および下記の同一の手順を用いて調製された。
【0048】
<開示実施例II>
開示実施例IIでは、図2Bのもののような5つのカール防止バックコーティングを有さないフレキシブル静電写真イメージング部材ウエブがまた、これらのイメージング部材ウエブの単一電荷輸送層にそれぞれ、マクロロンおよび電荷輸送化合物を合わせた重量に基づき、4、8、12、16および20重量%の式(II)の別の可塑化液モノマビスフェノールAカーボネート(式中、RはCHである)(PPGインダストリーズ社(PPG Industries,Inc.)からCR−37として入手可能)が組み入れられたことを除き、開示実施例Iで記載されているものと全く同じ材料組成および下記の同一の手順を用いて調製された。
【0049】
<対照実施例II>
対照実施例IIでは、典型的な二重層フレキシブル静電写真イメージング部材ウエブが、単一電荷輸送層が二重層、それぞれ14.5μmの厚さを有する底層および最上層を有し、底層は50:50重量比のジアミン電荷輸送化合物対ポリカーボネートバインダを含み、最上層ではその重量比が30:50であることを除き、対照実施例Iで記載されているものと全く同じ材料、組成および下記の同一の手順を用いて調製された。
【0050】
<開示実施例III>
開示実施例IIIでは、フレキシブル静電写真イメージング部材ウエブが、カール防止バックコーティングが排除され、図4において示されるように、このイメージング部材の二重電荷輸送層にそれぞれ、電荷輸送層中のマクロロンおよび電荷輸送化合物を合わせた重量に基づき、8重量%の式(I)の液体スチレン二量体(式中RはHである)が組み入れられたことを除き、対照実施例IIで記載されているものと全く同じ材料組成および下記の同一の手順を用いて調製された。
【0051】
<開示実施例IV>
開示実施例IVでは、カール防止バックコーティングを有さない静電写真イメージング部材ウエブが、このイメージング部材の二重電荷輸送層にそれぞれ、マクロロンおよび電荷輸送化合物を合わせた重量に基づき、12重量%の式(II)の別の可塑化液モノマビスフェノールAカーボネート(式中、RはCHである)が組み入れられたことを除き、開示実施例IIIで記載されているものと全く同じ材料組成および下記の同一の手順を用いて調製された。
【0052】
スチレン二量体またはビスフェノールAカーボネートのいずれかを開示実施例の材料マトリクス中に組み入れることにより可塑化された電荷輸送層(CTL)を有する、調製されたイメージング部材は、その後、対照実施例のそれぞれのイメージング部材に対する、それらのそれぞれの上方イメージング部材カーリング度、CTLガラス転移温度(Tg)、光電特性完全性、およびイメージング部材ベルトプリント試験について評価された。
【0053】
可塑化された単一CTLイメージング部材についてその後、巻き上がりの出現を評価し、各それぞれの曲率直径を測定し、カール防止バックコーティングの適用前の対照実施例Iのイメージング部材に対して見られるものと比較した。これらのイメージング部材全てについても、示差走査熱量測定(DSC)法を用いて、そのCTLガラス転移温度(Tg)を決定した。このようにして得られた、スチレン二量体およびモノマカーボネートにより可塑化されたCTLを有するイメージング部材ならびに対照対応物に対する結果を別々に、各表1および表2に一覧表示する。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
上記表で示したデータは、スチレン二量体またはモノマカーボネートのいずれかを用いて可塑化された単一層CTLは、可塑剤の負荷レベルに対し単調なイメージング部材巻き上がり制御を提供するのに十分であったことを示す。スチレン二量体はCTLに対し12重量%の組み入れであっても、モノマカーボネートよりもカールを抑制するのにわずかにより効果的であることがわかったが、どちらの可塑剤も大体等価のカール制御結果を生成させることができ、ほとんど平坦なイメージング部材が提供された。16重量%を組み入れると、可塑化されたCTL(いずれかの可塑剤を使用)は、完全なカール制御を提供することができ、絶対平坦度を有するイメージング部材が得られた。CTLの可塑化は12重量%を超える負荷レベルでは、絶対平坦度を有するイメージング部材を提供するには効果的であったが、CTL中にスチレン二量体またはモノマカーボネートが存在するとCTLのTg低下が引き起こされた。しかしながら、典型的には全ての電子写真イメージング機械の動作温度は40℃未満であるので、最高20重量%の負荷レベルであっても、可塑剤を組み入れることによる50℃までのCTLのTg低下は依然として、現場でのイメージング部材ベルト機械機能温度を超えている。
【0057】
各それぞれの可塑化CTLを備える、開示実施例IおよびIIの調製した単一層CTLイメージング部材についてその後、電荷受容性(V)、感度(S)、残留電位(V)、および暗減衰電位(Vdd)などの光電特性を分析し、研究室5000スキャナ試験を用いた対照実施例Iの各それぞれの対照イメージング部材対応物に対する正確な機能を評価した。このようにして得られた結果を下記表3において示すが、これらから、CTL中中に、4、8、12、16、および20重量%のレベルで、スチレン二量体またはカーボネートモノマのいずれかの可塑剤液を組み入れると、各それぞれの対照イメージング部材対応物と比較した場合に、得られたイメージング部材の非常に重要な光電特性に実質的に影響を与えることが見出されることが、実証された。そのため、これらの結果から、現場での適切なイメージング部材ベルト機械機能完全性が保証された。
【0058】
【表3】

【0059】
本開示実施例IIIおよびIVの二重層CTLを有するイメージング部材に対し、それらのそれぞれの対照実施例IIの対照イメージング部材と共に実施した、さらなるカール、Tgおよび光電試験/評価によっても、上記実験負荷レベルの全てにおける二重層CTLの可塑化により、単一層CTLを含むように調製されたイメージング部材に対して見られたものと等価の結果が得られることが確認された。
【0060】
開示実施例IおよびIIにより調製された、2つの単一層CTLイメージング部材ウエブ、一方は8重量%スチレン二量体を有し、他方は12重量%のカーボネートを有する可塑化されたCTLは、対照実施例Iのイメージング部材ウエブと共に(対照実施例(I)と同様)、それぞれカットされ、特定の寸法の3つの別個の長方形イメージング部材シートが得られた。各カットシートの対向端を輪にし、重ね合わせ、その後、超音波により溶接し、3つの個々のイメージング部材ベルトとした。溶接したベルトについてその後、同じ選択した電子写真機で印刷試験し、各それぞれのコピープリントアウト品質、故障モード、および最終的な耐用年数を評価し、比較した。機械ベルト印刷試験運転後にこのようにして得られた結果から、可塑化されたCTLを有し、カール防止バックコーティングを有さない本開示のイメージング部材はどちらも摩耗画線印刷欠陥コピーを発現せず、疲労は拡張100万回プリントアウト運転後にCTL亀裂を誘導しないことが示された。比較により、対照イメージング部材ベルトは、300,000コピーで摩耗画線印刷欠陥を表すことが示され、800,000印刷量によるCTL亀裂を有した。これらの機械の試験運転結果は、3倍を超えるイメージング部材ベルト耐用年数機能改善を示す。さらに、可塑化されたイメージング部材ベルトはどちらも、増強されたコピープリントアウト品質改善を提供することが見出された。
【0061】
CTL可塑化によるカール防止バックコーティングのないイメージング部材の材料および調製法はさらに、下記追加の実施例にしたがい、CTL組み入れのためにスチレン二量体およびモノマカーボネートの混合物を使用することにより、さらに拡張され、実証された。
【0062】
<実施例A>
開示実施例Aにおいては、カール防止のないフレキシブル静電写真イメージング部材ウエブは、イメージング部材の単一電荷輸送層が、電荷輸送層のマクロロンおよび電荷輸送化合物を合わせた重量に基づき、12重量%の、等量部の液体スチレン二量体および液体ビスフェノールAモノマカーボネートの混合物を組み入れることにより、可塑化されたことを除き、開示実施例Iで記載されているものと全く同じ材料組成および下記の同一の手順を用いて調製された。
【0063】
<実施例B>
開示実施例Bにおいては、カール防止バックコーティングのないフレキシブル静電写真イメージング部材ウエブが、このイメージング部材の二重電荷輸送層にそれぞれ、電荷輸送層のマクロロンおよび電荷輸送化合物を合わせた重量に基づき、12重量%の、等量部の可塑化液体スチレン二量体および液体モノマビスフェノールAカーボネートの混合物を組み入れたことを除き、開示実施例IVで記載されているものと全く同じ材料組成および下記の同一の手順を用いて調製された。
【0064】
それぞれ、等量部の可塑化液体スチレン二量体および液体モノマビスフェノールAカーボネートの混合物を使用することにより、可塑化された単一層CTLおよび可塑化された二重CTLを有する開示実施例AおよびBで調製した、可塑化された電荷輸送層イメージング部材を、対照実施例IおよびIIのイメージング部材と共に、下記試験法に従い評価した。
(1)光電特性完全性、
(2)巻き上がり評価、
(3)各CTLガラス転移温度(Tg)、および
(4)それぞれのコピープリントアウト品質、故障モード、および最終的な耐用年数を決定/比較するための、同じ選択された静電写真機を使用する溶接ベルト印刷試験運転。
【0065】
開示実施例AおよびBはいずれも対照実施例IおよびIIよりも良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0066】
1 カール防止バッキング層(カール防止バックコーティング層)、10 基材(支持基材)、12 導電層(導電性接地面)、14 ホールブロッキング層、16 接着層(接着界面層)、18 電荷発生層、19 グランドストリップ層、20 電荷輸送層、20B 底(第1)層、20C 中央(メジアン)層、20F 第1(底)層、20L 最終(最外)層、20M (中間)層、20T 最上(第2)層(最上(外側)層)、22 イメージング層、26 オリゴマポリスチレン液(液体オリゴマポリスチレン)、28 液体モノマカーボネート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配置された電荷発生層と、
前記電荷発生層上に配置され、複数の層を有し、各層は、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの電荷輸送化合物と、高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、電荷輸送層と、
を備える、イメージング部材。
【請求項2】
前記液体化合物は300℃を超える沸点を有し、前記液体化合物は前記電荷輸送層中に、前記電荷輸送層中の前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの総重量の約3重量%から約30重量%の量で存在する、請求項1記載のイメージング部材。
【請求項3】
前記液体化合物は、オリゴマポリスチレン、カーボネートモノマおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載のイメージング部材。
【請求項4】
前記液体化合物は、下記式からなる群より選択される式を有するオリゴマポリスチレン、およびそれらの混合物を含み:
【化1】


式(I)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択され、mは0から10の間である)、
【化2】


式(III)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択される)、
【化3】


式(IV)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択される)、
【化4】


式(V)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHからなる群より選択される)、
前記カーボネートモノマは下記式を有する、
【化5】


式(II)
(式中、RはH、CH、CHCH、およびCHOCOOCHである)
請求項3記載のイメージング部材。
【請求項5】
基材と、
前記基材上に配置された電荷発生層と、
前記電荷発生層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第1の電荷輸送層と、
前記第1の電荷輸送層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第2の電荷輸送層と、
を備える、イメージング部材。
【請求項6】
基材と、
前記基材上に配置された電荷発生層と、
前記電荷発生層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第1の電荷輸送層と、
前記第1の電荷輸送層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第2の電荷輸送層と、
前記第2の電荷輸送層上に配置され、ポリカーボネートと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、300℃を超える高い沸点を有する液体化合物とを含み、さらに、前記液体化合物は前記ポリカーボネートおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミンの両方と混和可能である、第3の電荷輸送層と、
を備える、イメージング部材。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−262282(P2010−262282A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100882(P2010−100882)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】