インキュベータシステム
【課題】 様々な培養条件に柔軟に対応可能なインキュベータシステムを提供すること。
【解決手段】 培養容器の試料を観察する観察部を備える観察ユニットと培養容器を収納する収納部を備える収納ユニットと培養容器を搬送する搬送部を備える搬送ユニットとのうち少なくとも1つを選択して、恒温室内部に備え付けることのできるインキュベータシステムであって、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのそれぞれを、恒温室の内部に位置決めする締結部を有するユニットベースと、搬送ユニットと収納ユニットとの少なくとも一方に代えてユニットベースに位置決め固定可能で、かつ、収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える。
【解決手段】 培養容器の試料を観察する観察部を備える観察ユニットと培養容器を収納する収納部を備える収納ユニットと培養容器を搬送する搬送部を備える搬送ユニットとのうち少なくとも1つを選択して、恒温室内部に備え付けることのできるインキュベータシステムであって、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのそれぞれを、恒温室の内部に位置決めする締結部を有するユニットベースと、搬送ユニットと収納ユニットとの少なくとも一方に代えてユニットベースに位置決め固定可能で、かつ、収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのうち少なくとも1つと、インキュベータとからなるインキュベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動培養装置としてインキュベータが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなインキュベータでは、培養容器の格納、搬送などが自動で行われている。さらに、このようなインキュベータで培養されている試料を観察するために顕微鏡を備えるものもある。
【特許文献1】特開2004−180675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インキュベータを用いた培養については、培養の対象、培養する容器の数や種類、顕微鏡により観察する必要のあるサンプル数など様々なバリエーションがある。このようなバリエーションに対応するため、培養条件に応じて容量や構成の異なるインキュベータを用意するとなると、設置するスペースが嵩むとともにコストもかかる。また、複数のインキュベータを同じ環境に制御して使用したいという要望は多いが、インキュベータには機種などにより個体差があるため、複数のインキュベータの環境を同一に制御するのは困難である。
【0004】
本発明は、様々な培養条件に柔軟に対応可能なインキュベータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインキュベータシステムは、培養容器の試料を観察する観察部を備える観察ユニットと前記培養容器を収納する収納部を備える収納ユニットと前記培養容器を搬送する搬送部を備える搬送ユニットとのうち少なくとも1つを選択して、恒温室内部に備え付けることのできるインキュベータシステムであって、前記観察ユニットと前記収納ユニットと前記搬送ユニットとのそれぞれを、前記恒温室の内部に位置決めする締結部を有するユニットベースと、前記搬送ユニットと前記収納ユニットとの少なくとも一方に代えて前記ユニットベースに位置決め固定可能で、かつ、前記収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える。
【0006】
なお、好ましくは、前記観察ユニット、前記搬送ユニット、前記収納ユニット、前記第2の収納ユニットの各ユニットと前記ユニットベースとの接続部分に設けられる電気的接点部を有しても良い。
【0007】
また、好ましくは、前記インキュベータは、前記電気的接点部を介して固定されたユニットの種類を認識する認識部と、前記認識部による認識結果に応じて、前記観察部と前記搬送部との少なくとも一方を制御する制御部とを備えても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な培養条件に柔軟に対応可能なインキュベータシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1および図2は第1実施形態のインキュベータの全体構成を示す概要正面図である。インキュベータは、第1筐体10と、第2筐体11とで構成されている。
【0011】
第1筐体10は、第2筐体11の上側に積まれている。第1筐体10の内部には、断熱材で覆われた恒温室12が形成されている。第1筐体10の正面側は開口部10aをなしている。そして、この開口部10aは観音開きの正面扉13によって開閉可能に閉塞されている。また、第1筐体10の右側の正面扉13の下寄りの位置には、培養容器14(ウエルプレート、フラスコ、ディッシュ等)が通過可能な搬出入口15が形成されている。この搬出入口15は、駆動機構16によりスライドする自動扉17で開閉可能に閉塞されている。なお、第1筐体10の外側には、恒温室12外部の環境パラメータ(例えば、温度、湿度、二酸化酸素濃度、酸素濃度、窒素濃度など)の値を検出するための外部センサ18が配置されている。
【0012】
第1筐体10の恒温室12内には、恒温室12内部の環境パラメータの値を検出するための内部センサ22と、搬送用ストッカーユニット23と、容器搬送ユニット24と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とが収納される。各ユニットは、恒温室12の底面にユニットベース60を介して固定される。各ユニットの詳細およびユニットベース60の詳細は後述する。また、恒温室12の内部は、不図示の環境制御機構により、一定の雰囲気(例えば、温度37℃、湿度90%、CO2濃度5%)に保たれる。
【0013】
一方、第2筐体11には、制御ユニット50が格納されている。
【0014】
図3は制御ユニット50とインキュベータ各部との関係を示すブロック図である。制御ユニット50は、図3に示すように、CPU51と、操作部52と、表示パネル53と、情報記憶部54とを有している。CPU51は、駆動機構16、外部センサ18、内部センサ22、容器搬送ユニット24、サンプルストッカーユニット25、顕微鏡ユニット26と接続されている。そして、CPU51は所定のプログラムに従って上記各部を制御する。
【0015】
操作部52はキーボード等の入力手段を有しており、CPU51を介してインキュベータの各部を動作させる。すなわち、CPU51は、操作部52からの入力に基づき、恒温室12内外への培養容器14の搬出入、培養容器14の試料の観察、恒温室12内での培養容器14の搬送などの動作を実行する。ここで、操作部52の指示は、ユーザの直接入力による指示と、予めプログラムで設定された指示とのいずれもが含まれる。また、操作部52は、培養する試料に関する情報などの入力にも用いられる。
【0016】
また、表示パネル53はCPU51から出力された恒温室12の環境条件などを出力表示する。表示パネル53は、後述する情報記憶部54に記憶された情報や、インキュベータの操作関連の情報などを表示するディスプレイである。この表示パネル53は、ユーザにより見やすい位置および高さに設置されるのが好ましい。また、表示パネル53は、ユーザの視認性を良くするために、傾斜機構により傾斜可能な構成とすると良い。
【0017】
また、情報記憶部54は、培養する試料(細胞など)の情報や、顕微鏡ユニット16で取得した試料の観察結果などの情報を保存するメモリである。なお、試料の情報には、試料の種類、培地組成情報、初期の試料数、培地交換頻度、継代期間などの試料固有の情報の他に、培養容器の種類を示す情報、試料を管理する管理者情報、培養の実験情報(実験名)、試料の培養履歴の情報などを含む。
【0018】
次に、各ユニットの詳細について説明する。
【0019】
(1)搬送用ストッカーユニット23
搬送用ストッカーユニット23は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の左側に配置される。図4に示すように、搬送用ストッカーユニット23の内部は複数の棚23aで上下に区画されている。そして、搬送用ストッカーユニット23には培養容器14を水平に収納できるようになっている。本実施形態の搬送用ストッカーユニット23は、図4に示すようにz方向(第1筐体10の上下方向)に10個、y方向(第1筐体10の奥行き方向)に3個(合計30個)の培養容器14を収納可能である。
【0020】
本実施形態では、後述する容器搬送ユニット24による運搬を容易にするために、培養容器14はトレー状のホルダー27に載置されて取り扱われる。なお、ホルダー27の外周部には外向きに支持片27aが形成されている。培養容器14の搬送の詳細は後述する。
【0021】
(2)容器搬送ユニット24
容器搬送ユニット24は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の中央に配置される。容器搬送ユニット24は、図5に示すように、y方向に長い長方形状の基台28と、z方向に延長する垂直フレーム29と、ホルダー27を支持する搬送アーム部30とを有している。
【0022】
基台28には垂直フレーム29がy方向に移動可能に取り付けられている。この垂直フレーム29のy方向位置は位置センサ31によって検出される。また、基台28の外側には垂直フレーム29をy方向に駆動させるための第1モータ32が固定されている。
【0023】
垂直フレーム29は平行配置された2本のガイドレールで構成されている。垂直フレーム29の間には搬送アーム部30がz方向に移動可能に取り付けられている。この搬送アーム部30は垂直フレーム39の一方に内蔵されたネジ軸(不図示)によって移動する。さらに、垂直フレーム29には、搬送アーム部30をz方向に駆動させるための第2モータ33と、搬送アーム部30のz方向位置を検出する位置センサ34とが固定されている。なお、第2モータ33の位置は垂直フレーム29の移動に伴ってy方向に変化することとなる。
【0024】
(3)サンプルストッカーユニット25
サンプルストッカーユニット25は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の右側かつ後述する顕微鏡ユニット26の手前側で、搬出入口15の近傍に設置されている。サンプルストッカーユニット25は、図6に示すように、ホルダー27を載置可能な搬送テーブル25aと、搬送テーブル25aを搬出入口15の外部へ往復動させるモータユニット25bとを有している。
【0025】
操作部52から培養容器14の搬出指示がある場合、CPU51は駆動機構16を動作させて自動扉17を開放する。そして、CPU51はサンプルストッカーユニット25のモータユニット25bを駆動させて搬送テーブル25aの培養容器14およびホルダー27を恒温室12外に搬出する。同様に、操作部52から培養容器14の搬入指示がある場合、CPU51はサンプルストッカーユニット25のモータユニット25bを駆動させて搬送テーブル25aの培養容器14およびホルダー27を恒温室12内に搬入する。そして、CPU51は駆動機構16を動作させて自動扉17を閉鎖する。
【0026】
(4)顕微鏡ユニット26
顕微鏡ユニット26は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の右側かつ上述したサンプルストッカーユニット25の奥側に配置される。顕微鏡ユニット26は、図7に示すように、培養容器14およびホルダー27を載置する試料台38と、試料台38の上方に張り出した状態で配置される照明装置39と、試料台38に対して照明装置39と反対側に配置される対物レンズ部40と、不図示の撮像素子を備える撮像部41とを有している。試料台38は、ホルダー27をx方向、y方向、z方向に移動可能に構成されている。また、照明装置39は培養容器14を上方から照明する。
【0027】
操作部52から培養容器14の観察指示がある場合、CPU51は顕微鏡ユニット26を動作させて培養容器14の試料を観察する。このとき、CPU51は顕微鏡ユニット26の照明装置39で試料を照明する。そして、CPU51は操作部52からの指示に応じて試料台38を移動させ、撮像部41により試料の像を撮像する。これにより、培養容器14の任意位置における試料の観察が可能となる。
【0028】
次に、ユニットベース60を用いて以上説明した各ユニットをどのように固定するかについて説明する。各ユニットは、前述したように、恒温室12の底部にユニットベース60を介して固定される。
【0029】
ユニットベース60は、恒温室12の底部に予め固定される。ユニットーベース60は、図8に示すように、固定されるユニットに対応したピン61とタップ穴62とを備える。ピン61は、各ユニットの底面寸法に応じて、各ユニットの外周のうち1つの角に沿って3本ずつ備えられる。ピン61は、ユニットベース60に固定するユニットの位置決めに用いられる。また、タップ穴62は、各ユニットの底面寸法に応じて、各ユニットに対応する部分の4隅にそれぞれ設けられる。つまり、各ユニットにつき4個のタップ穴62が備えられる。タップ穴62は、ユニットベース60にユニットを固定する際に用いられる。また、タップ穴62は、その内部に不図示の電気的接点部を備える。すなわち、図3で説明した制御ユニット50と各ユニット(容器搬送ユニット24、サンプルストッカーユニット25、顕微鏡ユニット26)との接続は、この電気的接点部を介したものである。なお、ピン61が挿入される穴およびタップ穴62は、恒温室12の密閉性を確保するため、非貫通穴である。
【0030】
一方、各ユニットの底面には、上述したユニットベース60のタップ穴62に対応する位置にタップ穴が備えられる。すなわち、ユニットベース60と各ユニットとは予め対応づけて設計および製造される。
【0031】
各ユニットをユニットベース60に固定する際には、固定するユニットの側面を位置決めの基準面とし、ユニットベース60の3本のピン61に対して、固定するユニットの底部の側面を押し当てることにより位置決めを行う。そして、位置決め後に、固定するユニットの底面とユニットベース60のタップ穴62とをビス63により締め付けて固定する。
【0032】
なお、図8の例では、3本のピン61を位置決めに用いる例を示したが、L字部材等の位置決め部材を用いても良い。
【0033】
以上説明したように、恒温室12内に、搬送用ストッカーユニット23と、容器搬送ユニット24と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とが収納される構成は、最も一般的な構成(以下、「基本構成」と称する)であり、多品種の試料のそれぞれを観察しながら培養するのに最適である。一方、インキュベータを用いた培養においては、上述した多品種の試料のそれぞれを観察しながら培養を行った結果に基づいて選択した少品種の試料を、大量に培養する場合がある。この場合には、試料のそれぞれを観察する必要がない一方、大量の培養容器14を収納することが求められる。そこで、本実施形態では、大量の培養容器14を収納可能な大容量棚ユニット55を用意する。
【0034】
大容量棚ユニット55は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の中央および左側の部分に配置される。図9に示すように、大容量棚ユニット55の内部は複数の棚55aで上下に区画されている。ただし、この棚55aは、図4で説明した搬送用ストッカーユニット23の棚23aと異なり、培養容器14ごとに設ける必要はない。これは、大容量棚ユニット55に収納された培養容器14は、搬送して観察する必要がないからである。そして、大容量棚ユニット55の棚55aは、培養容器14を5個重ねたものを、水平に収納できるようになっている。本実施形態の大容量棚ユニット55は、図9に示すようにz方向(第1筐体10の上下方向)に5×5=25個、y方向(第1筐体10の奥行き方向)に4個、x方向(第1筐体10の左右方向)に2個(合計200個)の培養容器14を収納可能である。なお、大容量棚ユニット55は、大量の培養容器14を収納である一方、培養容器14の出し入れが困難であるという問題がある。そこで、培養容器14の出し入れを容易にするために、左右それぞれの棚55aをx方向にスライドして引き出し可能な構成とすると良い。
【0035】
さらに、大容量棚ユニット55の底面には、上述したユニットベース60のタップ穴62に対応する位置にタップ穴が備えられる。すなわち、ユニットベース60と大容量棚ユニット55とは予め対応づけて設計および製造される。大容量棚ユニット55をユニットベース60に固定する際には、まず、搬送用ストッカーユニット23と容器搬送ユニット24とをユニットベース60から取り外す。このとき、容器搬送ユニット24には、可動部(垂直フレーム29,搬送アーム部30など)にアダプタなどの固定部材を取り付けてから取り外すと良い。これは、容器搬送ユニット24の可動部が位置ずれなどを起こすと、以降の使用に支障を来すおそれがあるからである。次に、大容量棚ユニット55の側面を位置決めの基準面とし、ユニットベース60のうち、搬送用ストッカーユニット23と容器搬送ユニット24との少なくとも一方に対応するピン61に対して、大容量棚ユニット55の底部の側面を押し当てることにより位置決めを行う。そして、位置決め後に、大容量棚ユニット55の底面とユニットベース60のタップ穴62とをビス63により締め付けて固定する。図10(a)に、基本構成の配置図を示し、図10(b)に、恒温室12内に、大容量棚ユニット55と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とを収納した場合の配置図を示す。
【0036】
以上説明したように、恒温室12内に、大容量棚ユニット55と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とが収納される構成(図10(b))は、少品種の試料を大量に培養する場合に最適である。この場合には、顕微鏡ユニット26の試料台38上に培養容器14を1つ配置しておき、この培養容器14を顕微鏡ユニット26により観察することにより、大容量棚ユニット55内の培養容器14における培養状態の目安とすることができる。
【0037】
なお、大容量棚ユニット55に代えて、大容量棚ユニット55に比較して収納容量の小容量棚ユニット56を用意しても良い。小容量棚ユニット56は、例えば、z方向(第1筐体10の上下方向)に5×5=25個、y方向(第1筐体10の奥行き方向)に4個、x方向(第1筐体10の左右方向)に1個(合計100個)の培養容器14を収納可能なユニットであり、容器搬送ユニット24と同じ寸法のユニットである。基本構成(図10(a))から容器搬送ユニット24を取り外し、この小容量棚ユニット56を取り付けることにより、培養容器の収納量を増やすことができる。図11(a)に、基本構成の配置図を示し、図11(b)に、恒温室12内に、搬送用ストッカーユニット23と、小容量棚ユニット56と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とを収納した場合の配置図を示す。図11(b)に示した構成においても、顕微鏡ユニット26の試料台38上に培養容器14を1つ配置しておき、この培養容器14を顕微鏡ユニット26により観察することにより、大容量棚ユニット55内の培養容器14における培養状態の目安とすることができる。なお、小容量棚ユニット56を、搬送用ストッカーユニット23を同じ寸法のユニットとし、搬送用ストッカーユニット23に代えて恒温室12内に収納可能な構成としても良い。また、図10(a)に示した基本構成から、搬送用ストッカーユニット23および容器搬送ユニット24を取り外し、小容量棚ユニット56を2つ取り付ける構成としても良い。
【0038】
ここで、大量の培養容器14を収納しつつ、培養状態の目安とする培養容器の数を増やしたいという要望がある。すなわち、上述した図10および図11で説明したように、図10(a)に示した基本構成から、搬送用ストッカーユニット23とび容器搬送ユニット24との少なくとも一方を取り外してしまうと、培養状態の目安となる培養容器14が、顕微鏡ユニット26の試料台38上に配置された1つの培養容器14のみになってしまう。この1つの培養容器14のみを培養状態の目安とするのはリスクが高く、このような場合に、上述した培養状態の目安とする培養容器の数を増やしたいという要望がある。
【0039】
そこで、図12に示すように、サンプルストッカーユニット25と交換可能な搬送用サンプルストッカーユニット57を用意しても良い。搬送用サンプルストッカーユニット57は、サンプルストッカーユニット25と同じ寸法のユニットであり、サンプルストッカーユニット25と同様に、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の右側かつ後述する顕微鏡ユニット26の手前側で、搬出入口15の近傍に設置可能である。また、搬送用サンプルストッカーユニット57は、図12に示すように、ホルダー27を載置可能な搬送テーブル57aと、搬送テーブル57aを搬出入口15の外部へ往復動させるモータユニット57bとを有するとともに、2つの棚57cで上下に3区画に区分されている。したがって、搬送用サンプルストッカーユニット57は、恒温室12への培養容器の搬出入に利用可能であるとともに、容器搬送ユニット24による搬送および顕微鏡ユニット26による観察を行うことで、搬送用サンプルストッカーユニット57に収納された3つの培養容器14を培養状態の目安として利用することができる。図13(a)に、基本構成の配置図を示し、図13(b)に、恒温室12内に、容器搬送ユニット24と、小容量棚ユニット56と、搬送用サンプルストッカーユニット57と、顕微鏡ユニット26とを収納した場合の配置図を示す。
【0040】
なお、搬送用サンプルストッカーユニット57に培養状態の目安とする培養容器14を収納する代わりに、搬送用ストッカーユニット23の内部構成を変更する構成としても良い。例えば、搬送用ストッカーユニット23の大部分を培養容器14を搬送不可能な棚部(大容量棚ユニット55参照)とし、一部のみを培養容器14を搬送可能な棚部(搬送用ストッカーユニット23参照)とすることにより、収納量を増やしつつ培養状態の目安とする培養容器14の数を増やすことができる。
【0041】
以上説明したように、ユニットベース60を介して恒温室12の底面に様々なユニットを選択的に固定することができる。なお、交換時と同様に、取り外したユニットを再び固定する際には、再現性を維持しつつ、位置決めおよび固定を容易に行うことができる。
【0042】
最後に、ユニットが交換された際のCPU51の動作について、図14に示すフローチャートを用いて説明する。
【0043】
ユニットベース60の電気的接点部を介してユニットが交換されたことを認識すると(ステップS1)、CPU51は、ユニットベース60に固定されたユニットの種類を判別する(ステップS2)。そして、CPU51は、ユニットベース60に固定されたユニットの組み合わせに応じて、各ユニットの制御モードを選択する(ステップS3)。例えば、図10(a)に示した基本構成の場合には、CPU51は、容器搬送ユニット24に関して、「搬送用ストッカーユニット23と顕微鏡ユニット26との間」および「搬送用ストッカーユニット23とサンプルストッカーユニット25との間」の搬送を可能とする制御モードを選択する。また、CPU51は、顕微鏡26に関しては、容器搬送ユニット24によって搬送用ストッカーユニット23から搬送された培養容器14を観察可能とする制御モードを選択する。
【0044】
また、図13(b)に示したように、恒温室12内に、容器搬送ユニット24と、顕微鏡ユニット26と、小容量棚ユニット56と、搬送用サンプルストッカーユニット57とが収納されている場合には、CPU51は、容器搬送ユニット24に関して、「搬送用ストッカーユニット23と顕微鏡ユニット26との間」の搬送のみを可能とする制御モードを選択する。また、CPU51は、顕微鏡26に関しては、容器搬送ユニット24によって搬送用サンプルストッカーユニット57から搬送された培養容器14を観察可能とする制御モードを選択する。
【0045】
そして、CPU51は、ステップS3で選択した制御モードを各ユニットに指示して(ステップS4)、ユニットが交換された際の処理を終了する。
【0046】
なお、ユニットベース60に固定可能なユニットは上記の例に限定されない。例えば、顕微鏡ユニット26と内部構成(検鏡法など)の異なる別の顕微鏡ユニットを用意しても良い。また、ペルチェ素子などを備えた温度調整装置、湿度調整用の噴霧装置、恒温室12内の二酸化炭素濃度、酸素濃度および窒素濃度を調整するガス導入部等を含む環境制御ユニットを用意しても良い。また、培養容器中の試料に対して試薬などを自動で投入する投薬ユニットを用意しても良い。何れの場合も、各ユニットとユニットベース60とを予め対応づけて設計および製造すれば良い。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのうち少なくとも1つと、インキュベータと、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのうち少なくとも1つを位置決めして固定するユニットベースと、搬送ユニットと収納ユニットとの少なくとも一方に代えて恒温室の内部に位置決め固定可能で、かつ、収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える。したがって、恒温室の内部に固定するユニットとを適宜交換することにより様々な培養条件に柔軟に対応することができる。特に、ユニット交換により1つのインキュベータを複数の用途に使用可能であるとともに、同一の環境下で様々な培養条件に対応可能である。また、本実施形態で説明したユニット交換により、恒温室12内のレイアウトを自由に変更可能であるとともに、元のレイアウトに戻す際の高い再現性も実現することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、各ユニットとユニットベースとの接続部分に電気的接点部を有し、電気的接点部を介して固定されたユニットの種類を認識する。そして、認識結果に応じて観察部と搬送部との少なくとも一方を制御する。したがって、恒温室の内部に固定されたユニットに応じて自動的に制御を切り換えることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、ユニットベース60を恒温室12の底面に予め固定しておき、そのユニットベース60を介して各ユニットを固定する例を示したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、ユニットベース60を恒温室12の側面または上面に予め固定しておき、そのユニットベース60を介して各ユニットを固定する構成としても良い。上述した環境制御ユニットなどはこの構成に最適である。
【0050】
また、本実施形態では、ユニットベース60を恒温室12の底面に予め固定しておく例を示したが、ユニットベース60を着脱可能とし、ユニットベース60に固定したいユニットに応じて適宜交換可能としても良い。この場合、ユニットベース60の着脱時に本実施形態における各ユニットの固定で説明したものと同様の位置決め部材や固定部材を備えれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態のインキュベータの正面図である。
【図2】図1において第1筐体を正面扉を開けた状態を示す図である。
【図3】制御ユニット50とインキュベータ各部との関係を示すブロック図である。
【図4】搬送用ストッカーユニット23の内部構成を示す図である。
【図5】(a)容器搬送ユニット24の正面の内部構成図、(b)容器搬送ユニット24の側面の内部構成図である。
【図6】サンプルストッカーユニット25の内部構成を示す図である。
【図7】顕微鏡ユニット26の内部構成を示す図である。
【図8】ユニットベース60について説明する図である。
【図9】大容量棚ユニット55の内部構成を示す図である。
【図10】ユニットの配置例を示す図である。
【図11】ユニットの配置例を示す別の図である。
【図12】搬送用サンプルストッカーユニット57の内部構成を示す図である。
【図13】ユニットの配置例を示す別の図である。
【図14】ユニットが交換された際のCPU51の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
12…恒温室、14…培養容器、15…搬出入口、16…駆動機構、17…自動扉、18…外部センサ、22…内部センサ、23…搬送用ストッカーユニット、24…容器搬送ユニット、25…サンプルストッカーユニット、26…顕微鏡ユニット、50…制御ユニット、51…CPU、52…操作部、54…情報記憶部、55…大容量棚ユニット、60…ユニットベース、57…搬送用サンプルストッカーユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのうち少なくとも1つと、インキュベータとからなるインキュベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動培養装置としてインキュベータが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなインキュベータでは、培養容器の格納、搬送などが自動で行われている。さらに、このようなインキュベータで培養されている試料を観察するために顕微鏡を備えるものもある。
【特許文献1】特開2004−180675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インキュベータを用いた培養については、培養の対象、培養する容器の数や種類、顕微鏡により観察する必要のあるサンプル数など様々なバリエーションがある。このようなバリエーションに対応するため、培養条件に応じて容量や構成の異なるインキュベータを用意するとなると、設置するスペースが嵩むとともにコストもかかる。また、複数のインキュベータを同じ環境に制御して使用したいという要望は多いが、インキュベータには機種などにより個体差があるため、複数のインキュベータの環境を同一に制御するのは困難である。
【0004】
本発明は、様々な培養条件に柔軟に対応可能なインキュベータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインキュベータシステムは、培養容器の試料を観察する観察部を備える観察ユニットと前記培養容器を収納する収納部を備える収納ユニットと前記培養容器を搬送する搬送部を備える搬送ユニットとのうち少なくとも1つを選択して、恒温室内部に備え付けることのできるインキュベータシステムであって、前記観察ユニットと前記収納ユニットと前記搬送ユニットとのそれぞれを、前記恒温室の内部に位置決めする締結部を有するユニットベースと、前記搬送ユニットと前記収納ユニットとの少なくとも一方に代えて前記ユニットベースに位置決め固定可能で、かつ、前記収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える。
【0006】
なお、好ましくは、前記観察ユニット、前記搬送ユニット、前記収納ユニット、前記第2の収納ユニットの各ユニットと前記ユニットベースとの接続部分に設けられる電気的接点部を有しても良い。
【0007】
また、好ましくは、前記インキュベータは、前記電気的接点部を介して固定されたユニットの種類を認識する認識部と、前記認識部による認識結果に応じて、前記観察部と前記搬送部との少なくとも一方を制御する制御部とを備えても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な培養条件に柔軟に対応可能なインキュベータシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1および図2は第1実施形態のインキュベータの全体構成を示す概要正面図である。インキュベータは、第1筐体10と、第2筐体11とで構成されている。
【0011】
第1筐体10は、第2筐体11の上側に積まれている。第1筐体10の内部には、断熱材で覆われた恒温室12が形成されている。第1筐体10の正面側は開口部10aをなしている。そして、この開口部10aは観音開きの正面扉13によって開閉可能に閉塞されている。また、第1筐体10の右側の正面扉13の下寄りの位置には、培養容器14(ウエルプレート、フラスコ、ディッシュ等)が通過可能な搬出入口15が形成されている。この搬出入口15は、駆動機構16によりスライドする自動扉17で開閉可能に閉塞されている。なお、第1筐体10の外側には、恒温室12外部の環境パラメータ(例えば、温度、湿度、二酸化酸素濃度、酸素濃度、窒素濃度など)の値を検出するための外部センサ18が配置されている。
【0012】
第1筐体10の恒温室12内には、恒温室12内部の環境パラメータの値を検出するための内部センサ22と、搬送用ストッカーユニット23と、容器搬送ユニット24と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とが収納される。各ユニットは、恒温室12の底面にユニットベース60を介して固定される。各ユニットの詳細およびユニットベース60の詳細は後述する。また、恒温室12の内部は、不図示の環境制御機構により、一定の雰囲気(例えば、温度37℃、湿度90%、CO2濃度5%)に保たれる。
【0013】
一方、第2筐体11には、制御ユニット50が格納されている。
【0014】
図3は制御ユニット50とインキュベータ各部との関係を示すブロック図である。制御ユニット50は、図3に示すように、CPU51と、操作部52と、表示パネル53と、情報記憶部54とを有している。CPU51は、駆動機構16、外部センサ18、内部センサ22、容器搬送ユニット24、サンプルストッカーユニット25、顕微鏡ユニット26と接続されている。そして、CPU51は所定のプログラムに従って上記各部を制御する。
【0015】
操作部52はキーボード等の入力手段を有しており、CPU51を介してインキュベータの各部を動作させる。すなわち、CPU51は、操作部52からの入力に基づき、恒温室12内外への培養容器14の搬出入、培養容器14の試料の観察、恒温室12内での培養容器14の搬送などの動作を実行する。ここで、操作部52の指示は、ユーザの直接入力による指示と、予めプログラムで設定された指示とのいずれもが含まれる。また、操作部52は、培養する試料に関する情報などの入力にも用いられる。
【0016】
また、表示パネル53はCPU51から出力された恒温室12の環境条件などを出力表示する。表示パネル53は、後述する情報記憶部54に記憶された情報や、インキュベータの操作関連の情報などを表示するディスプレイである。この表示パネル53は、ユーザにより見やすい位置および高さに設置されるのが好ましい。また、表示パネル53は、ユーザの視認性を良くするために、傾斜機構により傾斜可能な構成とすると良い。
【0017】
また、情報記憶部54は、培養する試料(細胞など)の情報や、顕微鏡ユニット16で取得した試料の観察結果などの情報を保存するメモリである。なお、試料の情報には、試料の種類、培地組成情報、初期の試料数、培地交換頻度、継代期間などの試料固有の情報の他に、培養容器の種類を示す情報、試料を管理する管理者情報、培養の実験情報(実験名)、試料の培養履歴の情報などを含む。
【0018】
次に、各ユニットの詳細について説明する。
【0019】
(1)搬送用ストッカーユニット23
搬送用ストッカーユニット23は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の左側に配置される。図4に示すように、搬送用ストッカーユニット23の内部は複数の棚23aで上下に区画されている。そして、搬送用ストッカーユニット23には培養容器14を水平に収納できるようになっている。本実施形態の搬送用ストッカーユニット23は、図4に示すようにz方向(第1筐体10の上下方向)に10個、y方向(第1筐体10の奥行き方向)に3個(合計30個)の培養容器14を収納可能である。
【0020】
本実施形態では、後述する容器搬送ユニット24による運搬を容易にするために、培養容器14はトレー状のホルダー27に載置されて取り扱われる。なお、ホルダー27の外周部には外向きに支持片27aが形成されている。培養容器14の搬送の詳細は後述する。
【0021】
(2)容器搬送ユニット24
容器搬送ユニット24は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の中央に配置される。容器搬送ユニット24は、図5に示すように、y方向に長い長方形状の基台28と、z方向に延長する垂直フレーム29と、ホルダー27を支持する搬送アーム部30とを有している。
【0022】
基台28には垂直フレーム29がy方向に移動可能に取り付けられている。この垂直フレーム29のy方向位置は位置センサ31によって検出される。また、基台28の外側には垂直フレーム29をy方向に駆動させるための第1モータ32が固定されている。
【0023】
垂直フレーム29は平行配置された2本のガイドレールで構成されている。垂直フレーム29の間には搬送アーム部30がz方向に移動可能に取り付けられている。この搬送アーム部30は垂直フレーム39の一方に内蔵されたネジ軸(不図示)によって移動する。さらに、垂直フレーム29には、搬送アーム部30をz方向に駆動させるための第2モータ33と、搬送アーム部30のz方向位置を検出する位置センサ34とが固定されている。なお、第2モータ33の位置は垂直フレーム29の移動に伴ってy方向に変化することとなる。
【0024】
(3)サンプルストッカーユニット25
サンプルストッカーユニット25は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の右側かつ後述する顕微鏡ユニット26の手前側で、搬出入口15の近傍に設置されている。サンプルストッカーユニット25は、図6に示すように、ホルダー27を載置可能な搬送テーブル25aと、搬送テーブル25aを搬出入口15の外部へ往復動させるモータユニット25bとを有している。
【0025】
操作部52から培養容器14の搬出指示がある場合、CPU51は駆動機構16を動作させて自動扉17を開放する。そして、CPU51はサンプルストッカーユニット25のモータユニット25bを駆動させて搬送テーブル25aの培養容器14およびホルダー27を恒温室12外に搬出する。同様に、操作部52から培養容器14の搬入指示がある場合、CPU51はサンプルストッカーユニット25のモータユニット25bを駆動させて搬送テーブル25aの培養容器14およびホルダー27を恒温室12内に搬入する。そして、CPU51は駆動機構16を動作させて自動扉17を閉鎖する。
【0026】
(4)顕微鏡ユニット26
顕微鏡ユニット26は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の右側かつ上述したサンプルストッカーユニット25の奥側に配置される。顕微鏡ユニット26は、図7に示すように、培養容器14およびホルダー27を載置する試料台38と、試料台38の上方に張り出した状態で配置される照明装置39と、試料台38に対して照明装置39と反対側に配置される対物レンズ部40と、不図示の撮像素子を備える撮像部41とを有している。試料台38は、ホルダー27をx方向、y方向、z方向に移動可能に構成されている。また、照明装置39は培養容器14を上方から照明する。
【0027】
操作部52から培養容器14の観察指示がある場合、CPU51は顕微鏡ユニット26を動作させて培養容器14の試料を観察する。このとき、CPU51は顕微鏡ユニット26の照明装置39で試料を照明する。そして、CPU51は操作部52からの指示に応じて試料台38を移動させ、撮像部41により試料の像を撮像する。これにより、培養容器14の任意位置における試料の観察が可能となる。
【0028】
次に、ユニットベース60を用いて以上説明した各ユニットをどのように固定するかについて説明する。各ユニットは、前述したように、恒温室12の底部にユニットベース60を介して固定される。
【0029】
ユニットベース60は、恒温室12の底部に予め固定される。ユニットーベース60は、図8に示すように、固定されるユニットに対応したピン61とタップ穴62とを備える。ピン61は、各ユニットの底面寸法に応じて、各ユニットの外周のうち1つの角に沿って3本ずつ備えられる。ピン61は、ユニットベース60に固定するユニットの位置決めに用いられる。また、タップ穴62は、各ユニットの底面寸法に応じて、各ユニットに対応する部分の4隅にそれぞれ設けられる。つまり、各ユニットにつき4個のタップ穴62が備えられる。タップ穴62は、ユニットベース60にユニットを固定する際に用いられる。また、タップ穴62は、その内部に不図示の電気的接点部を備える。すなわち、図3で説明した制御ユニット50と各ユニット(容器搬送ユニット24、サンプルストッカーユニット25、顕微鏡ユニット26)との接続は、この電気的接点部を介したものである。なお、ピン61が挿入される穴およびタップ穴62は、恒温室12の密閉性を確保するため、非貫通穴である。
【0030】
一方、各ユニットの底面には、上述したユニットベース60のタップ穴62に対応する位置にタップ穴が備えられる。すなわち、ユニットベース60と各ユニットとは予め対応づけて設計および製造される。
【0031】
各ユニットをユニットベース60に固定する際には、固定するユニットの側面を位置決めの基準面とし、ユニットベース60の3本のピン61に対して、固定するユニットの底部の側面を押し当てることにより位置決めを行う。そして、位置決め後に、固定するユニットの底面とユニットベース60のタップ穴62とをビス63により締め付けて固定する。
【0032】
なお、図8の例では、3本のピン61を位置決めに用いる例を示したが、L字部材等の位置決め部材を用いても良い。
【0033】
以上説明したように、恒温室12内に、搬送用ストッカーユニット23と、容器搬送ユニット24と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とが収納される構成は、最も一般的な構成(以下、「基本構成」と称する)であり、多品種の試料のそれぞれを観察しながら培養するのに最適である。一方、インキュベータを用いた培養においては、上述した多品種の試料のそれぞれを観察しながら培養を行った結果に基づいて選択した少品種の試料を、大量に培養する場合がある。この場合には、試料のそれぞれを観察する必要がない一方、大量の培養容器14を収納することが求められる。そこで、本実施形態では、大量の培養容器14を収納可能な大容量棚ユニット55を用意する。
【0034】
大容量棚ユニット55は、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の中央および左側の部分に配置される。図9に示すように、大容量棚ユニット55の内部は複数の棚55aで上下に区画されている。ただし、この棚55aは、図4で説明した搬送用ストッカーユニット23の棚23aと異なり、培養容器14ごとに設ける必要はない。これは、大容量棚ユニット55に収納された培養容器14は、搬送して観察する必要がないからである。そして、大容量棚ユニット55の棚55aは、培養容器14を5個重ねたものを、水平に収納できるようになっている。本実施形態の大容量棚ユニット55は、図9に示すようにz方向(第1筐体10の上下方向)に5×5=25個、y方向(第1筐体10の奥行き方向)に4個、x方向(第1筐体10の左右方向)に2個(合計200個)の培養容器14を収納可能である。なお、大容量棚ユニット55は、大量の培養容器14を収納である一方、培養容器14の出し入れが困難であるという問題がある。そこで、培養容器14の出し入れを容易にするために、左右それぞれの棚55aをx方向にスライドして引き出し可能な構成とすると良い。
【0035】
さらに、大容量棚ユニット55の底面には、上述したユニットベース60のタップ穴62に対応する位置にタップ穴が備えられる。すなわち、ユニットベース60と大容量棚ユニット55とは予め対応づけて設計および製造される。大容量棚ユニット55をユニットベース60に固定する際には、まず、搬送用ストッカーユニット23と容器搬送ユニット24とをユニットベース60から取り外す。このとき、容器搬送ユニット24には、可動部(垂直フレーム29,搬送アーム部30など)にアダプタなどの固定部材を取り付けてから取り外すと良い。これは、容器搬送ユニット24の可動部が位置ずれなどを起こすと、以降の使用に支障を来すおそれがあるからである。次に、大容量棚ユニット55の側面を位置決めの基準面とし、ユニットベース60のうち、搬送用ストッカーユニット23と容器搬送ユニット24との少なくとも一方に対応するピン61に対して、大容量棚ユニット55の底部の側面を押し当てることにより位置決めを行う。そして、位置決め後に、大容量棚ユニット55の底面とユニットベース60のタップ穴62とをビス63により締め付けて固定する。図10(a)に、基本構成の配置図を示し、図10(b)に、恒温室12内に、大容量棚ユニット55と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とを収納した場合の配置図を示す。
【0036】
以上説明したように、恒温室12内に、大容量棚ユニット55と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とが収納される構成(図10(b))は、少品種の試料を大量に培養する場合に最適である。この場合には、顕微鏡ユニット26の試料台38上に培養容器14を1つ配置しておき、この培養容器14を顕微鏡ユニット26により観察することにより、大容量棚ユニット55内の培養容器14における培養状態の目安とすることができる。
【0037】
なお、大容量棚ユニット55に代えて、大容量棚ユニット55に比較して収納容量の小容量棚ユニット56を用意しても良い。小容量棚ユニット56は、例えば、z方向(第1筐体10の上下方向)に5×5=25個、y方向(第1筐体10の奥行き方向)に4個、x方向(第1筐体10の左右方向)に1個(合計100個)の培養容器14を収納可能なユニットであり、容器搬送ユニット24と同じ寸法のユニットである。基本構成(図10(a))から容器搬送ユニット24を取り外し、この小容量棚ユニット56を取り付けることにより、培養容器の収納量を増やすことができる。図11(a)に、基本構成の配置図を示し、図11(b)に、恒温室12内に、搬送用ストッカーユニット23と、小容量棚ユニット56と、サンプルストッカーユニット25と、顕微鏡ユニット26とを収納した場合の配置図を示す。図11(b)に示した構成においても、顕微鏡ユニット26の試料台38上に培養容器14を1つ配置しておき、この培養容器14を顕微鏡ユニット26により観察することにより、大容量棚ユニット55内の培養容器14における培養状態の目安とすることができる。なお、小容量棚ユニット56を、搬送用ストッカーユニット23を同じ寸法のユニットとし、搬送用ストッカーユニット23に代えて恒温室12内に収納可能な構成としても良い。また、図10(a)に示した基本構成から、搬送用ストッカーユニット23および容器搬送ユニット24を取り外し、小容量棚ユニット56を2つ取り付ける構成としても良い。
【0038】
ここで、大量の培養容器14を収納しつつ、培養状態の目安とする培養容器の数を増やしたいという要望がある。すなわち、上述した図10および図11で説明したように、図10(a)に示した基本構成から、搬送用ストッカーユニット23とび容器搬送ユニット24との少なくとも一方を取り外してしまうと、培養状態の目安となる培養容器14が、顕微鏡ユニット26の試料台38上に配置された1つの培養容器14のみになってしまう。この1つの培養容器14のみを培養状態の目安とするのはリスクが高く、このような場合に、上述した培養状態の目安とする培養容器の数を増やしたいという要望がある。
【0039】
そこで、図12に示すように、サンプルストッカーユニット25と交換可能な搬送用サンプルストッカーユニット57を用意しても良い。搬送用サンプルストッカーユニット57は、サンプルストッカーユニット25と同じ寸法のユニットであり、サンプルストッカーユニット25と同様に、第1筐体10の正面から見て恒温室12内の右側かつ後述する顕微鏡ユニット26の手前側で、搬出入口15の近傍に設置可能である。また、搬送用サンプルストッカーユニット57は、図12に示すように、ホルダー27を載置可能な搬送テーブル57aと、搬送テーブル57aを搬出入口15の外部へ往復動させるモータユニット57bとを有するとともに、2つの棚57cで上下に3区画に区分されている。したがって、搬送用サンプルストッカーユニット57は、恒温室12への培養容器の搬出入に利用可能であるとともに、容器搬送ユニット24による搬送および顕微鏡ユニット26による観察を行うことで、搬送用サンプルストッカーユニット57に収納された3つの培養容器14を培養状態の目安として利用することができる。図13(a)に、基本構成の配置図を示し、図13(b)に、恒温室12内に、容器搬送ユニット24と、小容量棚ユニット56と、搬送用サンプルストッカーユニット57と、顕微鏡ユニット26とを収納した場合の配置図を示す。
【0040】
なお、搬送用サンプルストッカーユニット57に培養状態の目安とする培養容器14を収納する代わりに、搬送用ストッカーユニット23の内部構成を変更する構成としても良い。例えば、搬送用ストッカーユニット23の大部分を培養容器14を搬送不可能な棚部(大容量棚ユニット55参照)とし、一部のみを培養容器14を搬送可能な棚部(搬送用ストッカーユニット23参照)とすることにより、収納量を増やしつつ培養状態の目安とする培養容器14の数を増やすことができる。
【0041】
以上説明したように、ユニットベース60を介して恒温室12の底面に様々なユニットを選択的に固定することができる。なお、交換時と同様に、取り外したユニットを再び固定する際には、再現性を維持しつつ、位置決めおよび固定を容易に行うことができる。
【0042】
最後に、ユニットが交換された際のCPU51の動作について、図14に示すフローチャートを用いて説明する。
【0043】
ユニットベース60の電気的接点部を介してユニットが交換されたことを認識すると(ステップS1)、CPU51は、ユニットベース60に固定されたユニットの種類を判別する(ステップS2)。そして、CPU51は、ユニットベース60に固定されたユニットの組み合わせに応じて、各ユニットの制御モードを選択する(ステップS3)。例えば、図10(a)に示した基本構成の場合には、CPU51は、容器搬送ユニット24に関して、「搬送用ストッカーユニット23と顕微鏡ユニット26との間」および「搬送用ストッカーユニット23とサンプルストッカーユニット25との間」の搬送を可能とする制御モードを選択する。また、CPU51は、顕微鏡26に関しては、容器搬送ユニット24によって搬送用ストッカーユニット23から搬送された培養容器14を観察可能とする制御モードを選択する。
【0044】
また、図13(b)に示したように、恒温室12内に、容器搬送ユニット24と、顕微鏡ユニット26と、小容量棚ユニット56と、搬送用サンプルストッカーユニット57とが収納されている場合には、CPU51は、容器搬送ユニット24に関して、「搬送用ストッカーユニット23と顕微鏡ユニット26との間」の搬送のみを可能とする制御モードを選択する。また、CPU51は、顕微鏡26に関しては、容器搬送ユニット24によって搬送用サンプルストッカーユニット57から搬送された培養容器14を観察可能とする制御モードを選択する。
【0045】
そして、CPU51は、ステップS3で選択した制御モードを各ユニットに指示して(ステップS4)、ユニットが交換された際の処理を終了する。
【0046】
なお、ユニットベース60に固定可能なユニットは上記の例に限定されない。例えば、顕微鏡ユニット26と内部構成(検鏡法など)の異なる別の顕微鏡ユニットを用意しても良い。また、ペルチェ素子などを備えた温度調整装置、湿度調整用の噴霧装置、恒温室12内の二酸化炭素濃度、酸素濃度および窒素濃度を調整するガス導入部等を含む環境制御ユニットを用意しても良い。また、培養容器中の試料に対して試薬などを自動で投入する投薬ユニットを用意しても良い。何れの場合も、各ユニットとユニットベース60とを予め対応づけて設計および製造すれば良い。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのうち少なくとも1つと、インキュベータと、観察ユニットと収納ユニットと搬送ユニットとのうち少なくとも1つを位置決めして固定するユニットベースと、搬送ユニットと収納ユニットとの少なくとも一方に代えて恒温室の内部に位置決め固定可能で、かつ、収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える。したがって、恒温室の内部に固定するユニットとを適宜交換することにより様々な培養条件に柔軟に対応することができる。特に、ユニット交換により1つのインキュベータを複数の用途に使用可能であるとともに、同一の環境下で様々な培養条件に対応可能である。また、本実施形態で説明したユニット交換により、恒温室12内のレイアウトを自由に変更可能であるとともに、元のレイアウトに戻す際の高い再現性も実現することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、各ユニットとユニットベースとの接続部分に電気的接点部を有し、電気的接点部を介して固定されたユニットの種類を認識する。そして、認識結果に応じて観察部と搬送部との少なくとも一方を制御する。したがって、恒温室の内部に固定されたユニットに応じて自動的に制御を切り換えることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、ユニットベース60を恒温室12の底面に予め固定しておき、そのユニットベース60を介して各ユニットを固定する例を示したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、ユニットベース60を恒温室12の側面または上面に予め固定しておき、そのユニットベース60を介して各ユニットを固定する構成としても良い。上述した環境制御ユニットなどはこの構成に最適である。
【0050】
また、本実施形態では、ユニットベース60を恒温室12の底面に予め固定しておく例を示したが、ユニットベース60を着脱可能とし、ユニットベース60に固定したいユニットに応じて適宜交換可能としても良い。この場合、ユニットベース60の着脱時に本実施形態における各ユニットの固定で説明したものと同様の位置決め部材や固定部材を備えれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態のインキュベータの正面図である。
【図2】図1において第1筐体を正面扉を開けた状態を示す図である。
【図3】制御ユニット50とインキュベータ各部との関係を示すブロック図である。
【図4】搬送用ストッカーユニット23の内部構成を示す図である。
【図5】(a)容器搬送ユニット24の正面の内部構成図、(b)容器搬送ユニット24の側面の内部構成図である。
【図6】サンプルストッカーユニット25の内部構成を示す図である。
【図7】顕微鏡ユニット26の内部構成を示す図である。
【図8】ユニットベース60について説明する図である。
【図9】大容量棚ユニット55の内部構成を示す図である。
【図10】ユニットの配置例を示す図である。
【図11】ユニットの配置例を示す別の図である。
【図12】搬送用サンプルストッカーユニット57の内部構成を示す図である。
【図13】ユニットの配置例を示す別の図である。
【図14】ユニットが交換された際のCPU51の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
12…恒温室、14…培養容器、15…搬出入口、16…駆動機構、17…自動扉、18…外部センサ、22…内部センサ、23…搬送用ストッカーユニット、24…容器搬送ユニット、25…サンプルストッカーユニット、26…顕微鏡ユニット、50…制御ユニット、51…CPU、52…操作部、54…情報記憶部、55…大容量棚ユニット、60…ユニットベース、57…搬送用サンプルストッカーユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器の試料を観察する観察部を備える観察ユニットと前記培養容器を収納する収納部を備える収納ユニットと前記培養容器を搬送する搬送部を備える搬送ユニットとのうち少なくとも1つを選択して、恒温室内部に備え付けることのできるインキュベータシステムであって、
前記観察ユニットと前記収納ユニットと前記搬送ユニットとのそれぞれを、前記恒温室の内部に位置決めする締結部を有するユニットベースと、
前記搬送ユニットと前記収納ユニットとの少なくとも一方に代えて前記ユニットベースに位置決め固定可能で、かつ、前記収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える
ことを特徴とするインキュベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のインキュベータシステムにおいて、
前記観察ユニット、前記搬送ユニット、前記収納ユニット、前記第2の収納ユニットの各ユニットと前記ユニットベースとの接続部分に設けられる電気的接点部を有する
ことを特徴とするインキュベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のインキュベータシステムにおいて、
前記インキュベータは、前記電気的接点部を介して固定されたユニットの種類を認識する認識部と、前記認識部による認識結果に応じて、前記観察部と前記搬送部との少なくとも一方を制御する制御部とを備える
ことを特徴とするインキュベータシステム。
【請求項1】
培養容器の試料を観察する観察部を備える観察ユニットと前記培養容器を収納する収納部を備える収納ユニットと前記培養容器を搬送する搬送部を備える搬送ユニットとのうち少なくとも1つを選択して、恒温室内部に備え付けることのできるインキュベータシステムであって、
前記観察ユニットと前記収納ユニットと前記搬送ユニットとのそれぞれを、前記恒温室の内部に位置決めする締結部を有するユニットベースと、
前記搬送ユニットと前記収納ユニットとの少なくとも一方に代えて前記ユニットベースに位置決め固定可能で、かつ、前記収納部よりも収納容量の大きい第2の収納部を備える第2の収納ユニットとを備える
ことを特徴とするインキュベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のインキュベータシステムにおいて、
前記観察ユニット、前記搬送ユニット、前記収納ユニット、前記第2の収納ユニットの各ユニットと前記ユニットベースとの接続部分に設けられる電気的接点部を有する
ことを特徴とするインキュベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のインキュベータシステムにおいて、
前記インキュベータは、前記電気的接点部を介して固定されたユニットの種類を認識する認識部と、前記認識部による認識結果に応じて、前記観察部と前記搬送部との少なくとも一方を制御する制御部とを備える
ことを特徴とするインキュベータシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−22221(P2009−22221A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189409(P2007−189409)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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