説明

インク、インクジェット記録方法、記録ユニット、インクカートリッジ及びインクジェット記録装置

【課題】様々な被記録材における黒色再現性が良好であり、更に、コート紙上に写真調の画像を形成した場合であっても変色の問題を生じない、形成画像に優れた耐ガス性を与えることのできるインク、特に、ブラックインクの提供。
【解決手段】少なくとも一般式(I)で表される色材と、一般式(II)で表される色材とを含有してなるインク、インクジェット記録方法、記録ユニット、インクカートリッジ及びインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、特にブラックインク、更には、記録信号に応じてオリフィスからインクを吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方式に好適に使用できるインク、これらのインクを用いるインクジェット記録方法、記録ユニット、インクカートリッジ及びインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、カラー画像を容易に形成できる手段として、とりわけオフィスや個人使用において広く用いられている。こうしたインクジェット記録方式に用いられるインクには、保存安定性が高く、吐出オリフィスの目詰まりを起こさないことや、連続印字した際に、長時間放置後の記録開始時に記録画像の掠れ等の不都合を起こさないことといった、当該記録方式に適応するためのインク性能が求められる。更には、色調再現性が優れていることや、光学濃度が高く、色調が鮮明な画像を与えるといった、インクによって形成される記録画像に対する品位性能が求められる。
【0003】
又、インクジェット記録方式に用いられるインクのうち、ブラックインクは、モノカラー画像は当然のことながら、フルカラー画像にも用いられる重要なインクである。このようなブラックインクに使用される染料としては、C.I.Food Black 2(例えば、特許文献1参照)等を始め、様々な構造種の染料が用いられてきた。
【0004】
ところで、近年ではインクジェット記録画像の高画質化が進み、銀塩写真に匹敵するほどの高画質な記録画像の実現が可能となった。そのためインクジェット記録画像に対しては、より高いレベルでの記録画像性能が求められ、画像品位は当然のことながら、該画像が、太陽光や各種照明光等に対して変腿色を起こすことのない優れた耐光性や、大気中に微量に含まれる酸化性ガス(オゾン、NOX、SOX等)によって変腿色を起こすことのない優れた耐ガス性、といった画像堅牢性も要求されるようになっている。
【0005】
画像堅牢性は、従来は、主として太陽光や各種照明光による褪色が問題視され、これらの褪色の問題に対しては、耐光性に優れた染料を選択することによって解決が図られてきた。しかしながら、最近では、これらの褪色の問題に加えて画像の変色の問題がクローズアップされてきた。即ち、従来のインクによって形成されたインクジェット記録画像は、特に、画像情報等の記録物、例えば、写真調のカラー記録物において、画像の褪色の防止みならず、変色の発生を防止することが重要な問題となっている。ここで、変色とは、濃度はあまり変化しないが色相が変化することである。
【0006】
特に、ブラックインクの画像においては、黒色が茶色に変色することが重大な問題であって、フルカラー画像の場合においては、この変色によって画像品質が急激に低下することが起こる。この変色の問題は、大気中に微量に含まれる酸化性ガス(オゾン、NOX、SOX等)の影響が大きく、太陽光や各種照明光の当たらない環境でも進行する。本発明者らの検討によれば、特に、インクの鮮明性、色調再現性や光学濃度を高めるために、紙等の基材上に顔料とバインダーとを含むインク受容層を形成したいわゆるコート紙に記録した場合に、普通紙に記録した場合には変色の問題が少ないインクを使用したとしても、著しい変色を生じる。従って、特に、コート紙に記録した場合における画像の変色を有効に防止するために、形成した画像が耐ガス性に優れるものとなるインクの開発が望まれる。
【0007】
上記した技術課題に対しては、これまでにも、色調及びオゾンガスに対する耐変色性の改良がなされているが(例えば、特許文献2及び3参照)、銀塩写真に匹敵するほどの高画質な記録画像を得ることができる近年のインクジェット記録方式においては、ブラックインクによって形成した画像の色調及び、画像の耐ガス性をより一層改善することが依然として必要であるとの認識を得た。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−93766号公報
【特許文献2】特許第2919615号公報
【特許文献3】特公平8−26263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明の目的は、様々な被記録材における黒色再現性が良好であり、更に、コート紙上に写真調の画像を形成した場合であっても変色の問題を生じない、形成した画像に優れた耐ガス性を与えることのできるインクを提供することにある。特に、ブラックインクを提供すること、更には、インクジェット記録用インクに要求される基本性能を満たすインクを提供することにある。
【0010】
又、本発明は、優れた色調を有し、且つその色調が容易に褪せることのない、ブラックの画像を得ることのできる記録方法を提供することを他の目的とする。更に本発明は、このブラックインクを使用した記録ユニット、インクカートリッジ、及びインクジェット記録装置を提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、少なくとも一般式(I)で表される色材と、一般式(II)で表される色材とを含有してなることを特徴とするインクである。
【0012】

(上記一般式(I)中、R1及びR2は各々独立に、置換若しくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を表し、且つ、少なくともR1及びR2のいずれかは、1の水酸基を有するアルキル基である。R3は、水素原子、或いは、置換若しくは未置換のフェニル基を表す。X1は、カルボキシル基又はスルホン酸基、若しくは、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウムの塩のいずれかを表す。mは1又は2を表す。Mはスルホン酸基の対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウム及び有機アンモニウムのいずれかを表す。)
【0013】

(上記一般式(II)中、R4及びR5は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルカノイルアミノ基及びアルコキシ(炭素数1〜4)−アルコキシ(炭素数1〜4)基のいずれかを表し、且つ、R4及びR5の少なくとも一方は炭素数1〜4のアルコキシ基である。R6は、水素原子、若しくは、置換若しくは未置換の、フェニル基、ベンゾイル基及びベンジル基のいずれかを表す。X2は、カルボキシル基又はスルホン酸基、若しくは、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩のいずれかを表す。nは1又は2を表す。Mはスルホン酸基の対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウム或いは有機アンモニウムのいずれかを表す。)
【0014】
本発明の別の実施形態は、上記構成の本発明にかかるインクを用いて画像を形成するインクジェット記録方法、又は、本発明にかかるインクを搭載した記録ユニット、インクカートリッジ、インクジェット記録装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、普通紙のみならずコート紙等の各種の記録用紙に印字した際に鮮明なブラックの色調の画像が得られ、特に、褪色や変色の抑制された、優れた耐ガス性の画像を提供し得るインクが提供される。更に、本発明によれば、インクジェット記録方法及び記録装置に好適に使用できるインクが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明者らは、前記した従来技術の課題に鑑み、インクの組成等について様々な検討を重ねた。その過程において、前記一般式(I)で示される色材と、前記一般式(II)で示される色材とを含有してなるインクを調製し、得られたインクについての評価、及びこのインクによって形成した画像の評価を行った。その結果、このインクは、写真調の画像形成にも用い得る優れた色味を有するものであり、且つ、当該画像は、オゾン等の酸化性ガスに曝されたとしても変色や褪色を生じることがなく、極めて優れた耐ガス性の画像となることを見出して、本発明に至った。又、上記インクは、インクジェット記録特性を高いレベルで満たすものであり、インクジェット記録用として有用であることを見出して、本発明をなすに至った。以下、本発明にかかるインクを特徴づける色材、及び該色材を溶解或いは分散する水性媒体等について説明する。
【0017】
[色材]
本発明にかかるインクは、色材として、下記一般式(I)で表される第1の色材と、下記一般式(II)で表される第2の色材とを併有する。
【0018】
(第1の色材)

(上記一般式(I)中、R1及びR2は各々独立に、置換若しくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を表し、少なくともR1及びR2のいずれかは、且つ、その基の中に1の水酸基を有する。R3は、水素原子、或いは、置換若しくは未置換のフェニル基を表す。X1は、カルボキシル基又はスルホン酸基、若しくは、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウムの塩のいずれかを表す。mは1又は2を表す。Mはスルホン酸基の対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウム及び有機アンモニウムのいずれかを表す。)
【0019】
上記一般式(I)中のR1〜R3についてより具体的に説明する。式中のR1及びR2は各々独立に、置換若しくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を表し、且つ、R1及びR2のアルキル基のいずれかは、1の水酸基を有する。アルキル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシル基、アミノ基、或いはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)等が挙げられる。式中のR3は、水素原子、置換若しくは未置換のフェニル基のいずれかを表す。フェニル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、スルホン基、カルボキシル基、若しくは、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩等が挙げられる。又、上記一般式(I)中のX1は、−COOMや−SO3M等が挙げられる。ここでMは、アルカリ金属(例えば、Li、Na等)、アンモニウム(NH4)、有機アンモニウム等である。
【0020】
(第2の色材)


(上記一般式(II)中、R4及びR5は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルカノイルアミノ基及びアルコキシ(炭素数1〜4)−アルコキシ(炭素数1〜4)基のいずれかを表し、且つ、R4及びR5の少なくとも一方は炭素数1〜4のアルコキシ基である。R6は、水素原子、若しくは、置換若しくは未置換の、フェニル基、ベンゾイル基及びベンジル基のいずれかを表す。X2は、カルボキシル基又はスルホン酸基、若しくは、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩のいずれかを表す。nは1又は2を表す。Mはスルホン酸基の対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウム或いは有機アンモニウムのいずれかを表す。)
【0021】
上記一般式(II)中のR6について詳述する。R6は、水素原子、置換若しくは未置換の、フェニル基、ベンゾイル基及びベンジル基のいずれかを表すが、フェニル基等の置換基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、スルホン基或いはカルボキシル基、若しくはその塩等が挙げられる。X2としては、例えば、−COOMや−SO3M等が挙げられる。このとき、Mは、アルカリ金属(例えば、Li、Na等)、アンモニウム(NH4)、有機アンモニウム等が挙げられる。
【0022】
上記した一般式(I)及び(II)で表される第1及び第2の色材が含有されてなる本発明にかかるインクによって得られる画像は、非常に優れた色調を示し、更に優れた耐オゾン性(耐ガス性)を示す。
【0023】
(第1の色材の具体例)
一般式(I)で示される第1の色材の具体例として、以下に、例示化合物1〜5を挙げる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、国際公開第00/43451号パンフレットに記載されている構造の化合物等が挙げられる。又、下記に挙げるような一般式(I)で示される第1の色材を同時に2種類以上用いてもよい。
【0024】

【0025】

【0026】

【0027】


【0028】

【0029】
(第2の色材の具体例)
本発明に用いられる一般式(II)で表される具体的な色材としては、下記例示化合物6〜9のような化合物が挙げられる。本発明で使用する第2の色材は、これらに限定されるものではない。又、本発明にかかるインクにおいては、下記に挙げるような色材を同時に2種類以上用いてもよい。
【0030】

【0031】


【0032】

【0033】

【0034】
本発明にかかるインク中に含有させる一般式(I)で表される第1の色材と一般式(II)で表される第2の色材との比率は、これらの第1の色材と第2の色材とを組み合わせて使用してインクとしたことによって得られる、鮮明な色調と、十分な画像濃度と、しかも優れた耐オゾン性を有する画像が得られるという効果を考慮すると、一般式(I)で表される第1の色材と一般式(II)で表される第2の色材の混合比(第1の色材:第2の色材)が、質量比で、8:2〜2:8の範囲となるように併用することが好ましい。又、これらの色材を含むインク中の全色材の含有量は、インク全量に対して、1.0〜15.0質量%、特には4.0〜10.0質量%の範囲となるようにすることが好ましい。
【0035】
[水性媒体]
本発明にかかるインクは、上記で説明した第1及び第2の色材を水性媒体に溶解或いは分散して得られるが、水性媒体としては、水、或いは、水と水溶性有機溶剤との混合媒体を用いることが好ましい。この際に用いることのできる水溶性有機溶剤は、水溶性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤の含有量は、インクの保湿性維持や色材の溶解性向上、インクの記録紙への効果的な浸透等を考慮すると、インク全体の1〜40質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3〜30質量%の範囲である。又、インク中における色材の溶解性が良好であり、安定したインク吐出のための粘度を有し、且つ、ノズル先端における目詰まりを生じさせないようにするために、インク中の水の含有量は、30〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
【0036】
[添加剤]
又、本発明にかかるインクおいては、インクの保湿性維持のために、必要に応じて、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の保湿性固形分をインクの成分として含有させてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般には、インク全量に対して0.1〜20.0質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。更に、本発明にかかるインクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤及び水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0037】
[第3の色材を含むインク]
更に、本発明にかかるインクの別の形態としては、上記で説明した第1及び第2の特定の色材を含有させてなる形態のインクに、更に、第3の色材として、イエロー染料を含有させたインクが挙げられる。以下、かかる形態のインクについて説明する。このように構成されてなる本発明にかかるインクは、先に挙げた第1及び第2の色材に、更に第3の色材としてイエロー染料を加えることによって、かかるインクによって形成された画像は、優れた耐オゾン性を示すことは勿論、より優れた色調を示すものとなる。イエロー染料の含有量としては、インク中における全色材の含有量の合計に対して質量基準で1〜20%の範囲とすることが好ましい。
【0038】
上記したように、第3の色材として、イエロー染料、より好ましくは、C.I.Direct Yellow 86及びC.I.Direct Yellow 132の少なくとも一方を含有させた構成のインクによる画像の色調は、特に優れたものとなる。このような、高い耐オゾン性は勿論、より一層優れた色調の画像の形成が可能な上記形態にかかるインクは、例えば、特にデリケートな色調の再現が要求される銀塩写真に匹敵する高品位な画像の印刷のために用いられるインクジェットプリンター用のブラックインクとして、極めて好適に用いることができる。
【0039】
上記で説明した第1〜第3の色材を含有してなる本発明のインクにおいて、インク中に含有させる、一般式(I)で表される第1の色材の量(A)と、一般式(II)で表される第2の色材の量(B)と、上記に挙げた第3の色材であるイエロー染料の量(C)は、下記のようにすることが好ましい。即ち、これらの3種の色材を組み合わせたことにより得られる極めて鮮明な色調と高い画像濃度、そして、形成画像における十分な耐ガス性の発現という効果を考慮すると、第1の色材の量と第2の色材の量とを合わせた質量(A+B)に対して、第3の色材であるイエロー染料の質量(C)の比が、(A+B):C=99:1〜80:20の範囲となるようにしてインクを作製することが好ましい。より好ましいインク中における第1〜第3の色材の含有比率は、(A+B):C=98:2〜85:15の範囲である。
【0040】
本発明にかかるインクはイエローインク、マゼンタインク及びシアンインクから選ばれる少なくとも1色のインクと組み合わせるインクセットとして使用できる。その際に使用できる、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のインクに含有される色材としては、例えば、カラーインデックスに記載されている水溶性の、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、テトラアゾ系の染料等をいずれも好ましく使用できる。
【0041】
以上説明した本発明にかかるインクは、熱エネルギーの作用により液滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方式にとりわけ好適に用いられるが、他のインクジェット記録方法や一般の筆記用具としても使用できることはいうまでもない。
【0042】
[記録装置、インクカートリッジ、記録ユニット]
次に、本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適な記録方法及び記録装置等について説明する。先ず、これらのインクが収容されるインク収容部を有する記録ヘッドの室内のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを与え、該エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0043】
図1〜図3に、その主要部である記録ヘッドの構成例を示した。ヘッド13は、インクを通す溝14を有するガラス、セラミックス、又はプラスチック板等と、感熱記録に用いられる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図ではヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。発熱ヘッド15は、酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17−1及び17−2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、畜熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20より成っている。インク21は、吐出オリフィス(微細孔)22まで満たされており、圧力Pによりメニスカス23を形成している。
【0044】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域(ヒータ)が急速に加熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が吐出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴となり、被記録材に向かって飛翔する。図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0045】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の1例を示した。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端は、ブレード保持部材によって保持されて、固定端となりカンチレバーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配設され、又、図4に示した例の場合は、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。62はキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して、吐出面と当接しキャッピングを行う構成を具える。更に、図4中の63は、ブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及び吸収体63によってインク吐出口面の水分、塵やほこり等の除去が行われる。
【0046】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は、記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ68(不図示)によって駆動されるベルト69と接続している。これにより、キャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0047】
51は、被記録材を挿入するための給紙部、52は不図示のモータにより駆動される紙送りローラである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行するにつれて、排紙ローラ53を配した排紙部へ排紙される。
【0048】
上記構成において、記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中へ突出するように移動する。
【0049】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても、記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上記した記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って、上記ワイピングが行われる。
【0050】
図5は、ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す断面図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にできる。44は廃インクを受容するインク吸収体である。
【0051】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上記の如きヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようにそれらが一体になったものも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであって、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。72は記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4で示す記録ヘッド65に代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0052】
次に、本発明に好適に使用できる記録装置及び記録ヘッドの他の具体例について説明する。図7は、本発明に好適な吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッド、及び、この液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。図7に示したインクジェットプリンタは、ケーシング1008内に、長手方向に沿って設けられる被記録材としての用紙1028を、図7に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送するための搬送装置1030と、該搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する方向Sに略平行に、ガイド軸1014に沿って往復運動せしめられる記録部1010と、記録部1010を往復運動させるための駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。
【0053】
上記搬送装置1030は、互いに略平行に対向配置されている一対のローラユニット1022a及び1022bと、一対のローラユニット1024a及び1024bと、これらの各ローラユニットを駆動させるための駆動部1020とを備えている。かかる構成により、搬送装置1030の駆動部1020が作動状態とされると、用紙1028が、夫々のローラユニット1022a及び1022bと、ローラユニット1024a及び1024bにより狭持されて、図7に示す矢印P方向に間欠送りで搬送されることとなる。
【0054】
又、移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026a及び1026bに巻きかけられるベルト1016と、ローラユニット1022a及び1022bに略平行に配置され、且つ、記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を、順方向及び逆方向に駆動させるためのモータ1018とを含んで構成されている。
【0055】
そして、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図7の矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは、図7の矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。又、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図7の矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは、図7の矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。更に、この移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が、記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0056】
記録部1010には、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012C及び1012Bが、各色用毎に、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック用毎に、キャリッジ部材1010aに対して夫々着脱自在に備えられている。
【0057】
図8に、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示した。本例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インク等の液体を収容するための液体タンク1001とで主要部が構成されている。インクジェット記録ヘッド100は、液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インク等の液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(図9参照)へと導かれるようになっている。図8に示したカートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク1001内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【0058】
以下に、上記したような構成のインクジェットプリンタに搭載され得る液体吐出ヘッドの具体例を、更に詳しく説明する。図9は、本発明の基本的な形態を示す液体吐出ヘッドの要部を模式的に示す概略斜視図である。尚、電気熱変換素子を駆動するための電気的な配線等は省略している。
【0059】
本例の液体吐出ヘッドにおいては、例えば、図9に示されるような、ガラス、セラミックス、プラスチック或いは金属等からなる基板934が用いられる。このような基板の材質は、本質的なものではなく、流路構成部材の一部として機能し、インク吐出エネルギー発生素子、及び後述する液流路、吐出口を形成する材料層の支持体として機能し得るものであれば、特に限定されるものではない。以下に、Si基板(ウエハ)を用いた場合で説明する。吐出口は、レーザー光による形成方法の他、例えば、後述するオリフィスプレート(吐出口プレート)935を感光性樹脂として、MPA(Mirror Projection Aliner)等の露光装置により形成することもできる。
【0060】
図9において、934は、電気熱変換素子(以下、ヒータと記述する場合がある)931及び共通液室部としての長溝状の貫通口からなるインク供給口933を備える基板であり、インク供給口933の長手方向の両側に、熱エネルギー発生手段であるヒータ931が夫々1列ずつ千鳥状に、例えば、電気熱変換素子(ヒータ)の間隔が300dpiで配列されている。この基板934上には、インク流路を形成するためのインク流路壁936が設けられている。このインク流路壁936には、更に、吐出口832を備える吐出口プレート935が設けられている。
【0061】
ここで、図9においては、インク流路壁936と吐出口プレート935とは、別部材として示されているが、このインク流路壁936を、例えば、スピンコート等の手法によって基板934上に形成することにより、インク流路壁936と吐出口プレート935とを同一部材として同時に形成することも可能である。本例では、更に、吐出口面(上面)935a側は、撥水処理が施されている。
【0062】
本例では、先に説明した図7の矢印S方向に走査しながら記録を行うシリアルタイプのヘッドを用い、例えば、1,200dpiで記録を行う。駆動周波数は10kHzであり、一つの吐出口では、最短時間間隔100μs毎に吐出を行うことになる。
【0063】
図9に示した、吐出口832を含む吐出口プレート935に設けられた吐出口部940の断面のうち、インクの吐出方向(オリフィスプレート935の厚み方向)に交差する方向で切断してみた断面の形状は、概略星形となっている。。
【0064】
本例においては、吐出口部940は、例えば、その厚み方向に交差する方向で切断した断面が、一辺27μmの二つの正三角形を60度回転させた状態で組み合わせた形状となっている。
【0065】
上記で説明したように、本例の液体吐出ヘッドでは、気泡が最大体積に成長した後の体積減少段階で液体を吐出する際に、吐出口の中心に対して分散した複数の溝により、吐出時の主液滴の方向を安定化させることができる。その結果、吐出方向のヨレのない、着弾精度の高い液体吐出ヘッドを提供することができる。又、高い駆動周波数での発泡ばらつきに対しても吐出を安定して行うことができることにより、高速高精細印字を実現することができる。
【0066】
特に、気泡の体積減少段階で、この気泡を初めて大気と連通させることで液体を吐出することにより、気泡を大気に連通させて液滴を吐出する際に発生するミストを防止できるので、所謂、突然不吐の要因となる、吐出口面に液滴が付着する状態を抑制することもできる。又、本発明に好適に使用できる、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様としては、例えば、日本特許第2783647号に記載のように、所謂エッジシュータータイプが挙げられる。
【0067】
本発明にかかるインクは、インクセットを構成するインクを各々独立に収納するための収納部が設けられている記録ユニットや、インクカートリッジ等を有するインクジェット記録装置で用いられる。尚、先の説明では、インクジェット記録装置として、インクに熱エネルギーを作用させてインク液滴を吐出する記録装置を例に挙げて説明したが、その他、圧電素子を使用するピエゾ方式のインクジェット記録装置でも同様に利用することができる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。尚、特に指定のない限り、各インクの成分は「質量部」を意味する。
【0069】
<実施例1〜4>
下記の各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、0.20μmフィルターにて加圧濾過を行い、実施例1〜4のブラックインクを夫々調製した。
(実施例1のインク組成)
・一般式(I)で示される前記例示化合物1 2.0部
・一般式(II)で示される前記例示化合物6 2.0部
・C.I.Direct Yellow 132 0.1部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 70.4部
【0070】
(実施例2のインク組成)
・一般式(I)で示される前記例示化合物2 2.5部
・一般式(II)で示される前記例示化合物8 1.5部
・C.I.Direct Yellow 86 0.3部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 70.2部
【0071】
(実施例3のインク組成)
・一般式(I)で示される前記例示化合物3 1.8部
・一般式(II)で示される前記例示化合物9 2.4部
・C.I.Direct Yellow 86 0.5部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 69.8部
【0072】
(実施例4のインク組成)
・一般式(I)で示される前記例示化合物5 2.0部
・一般式(II)で示される前記例示化合物7 2.0部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 70.5部
【0073】
<比較例1〜4>
下記の各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、0.20μmフィルターにて加圧濾過を行い、比較例1〜4のブラックインクを夫々調製した。
【0074】
(比較例1のインク組成)
・一般式(I)で示される前記例示化合物4 4.2部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 70.3部
【0075】
(比較例2のインク組成)
・一般式(II)で示される前記例示化合物6 4.2部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 70.3部
【0076】
(比較例3のインク組成)
・一般式(II)で示される前記例示化合物6 4.0部
・C.I.Direct Yellow 86 0.4部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 70.1部
【0077】
(比較例4のインク組成)
・C.I.Food Black 2 4.0部
・グリセリン 5.0部
・尿素 5.0部
・エチレングリコール 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)0.5部
・エタノール 5.0部
・イオン交換水 70.5部
【0078】
<インクの評価>
上記で得られた本発明の実施例1〜4、及び比較例1〜4の各インクを記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であるカラーインクジェットプリンタ(BJ F850:キヤノン(株)製)にそれぞれ搭載し、以下の(1)、(2)について下記の方法及び基準に従って評価した。表1に、実施例1〜4と比較例1〜4の各インクの色材と、これらのインクを用いて得られた評価結果をまとめて示した。
【0079】
(1)黒色再現性(発色性)
前記したプリンタに所定のインクを充填して、PPC用紙(キヤノン製)及び表面コート層を有する光沢紙(PR−101;キヤノン製)の2種類の被記録材にベタ部を印字した後、24時間自然乾燥させ、その後の画像について色調を目視で観察し、下記の基準で評価した。
A:鮮明な黒の色調である。
B:鮮明な黒とはやや異なる色味(赤味、青味、緑味等)が感じられる。
C:黒の色調として違和感がある。
【0080】
(2)耐ガス性(耐オゾン性)
前記したプリンターに所定のインクを充填して、光沢紙(PR−101;キヤノン製)に、評価(1)で用いたものと同様のベタ部を印字した。その後、印字物を24時間自然乾燥させ、オゾンフェードメーターにて、槽内温度40℃、相対湿度55%、3ppmのオゾン雰囲気下の条件に、1時間印字物を投入した。試験前後における印字物の色差ΔE(CIE L***)をGretag Spectrolino(商品名:Gretag社製)で測定し、得られた測定値を用いて下記の基準で耐ガス性を評価した。又、試験前後のベタ部の色相変化の程度について目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0081】
(2−1)ΔE
A:ΔE変化量が15未満
B:ΔE変化量が15以上、20未満
C:ΔE変化量が20以上
【0082】
(2−2)色相の変化
A:試験後の画像に色相の変化があまり感じられない。
B:試験後の画像は色相が若干変化している。
C:試験後の画像は色相が明らかに変化(茶変)している。
【0083】


【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッド部の横断面図である。
【図3】インクジェット記録装置のヘッド部の外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図5】インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】記録ユニットの斜視図である。
【図7】液体吐出ヘッドを搭載可能なインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【図8】液体吐出ヘッドを備えたインクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。
【図9】液体吐出ヘッドの一例の要部を模式的に示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
13:ヘッド
14:インク溝
15:発熱ヘッド
16:保護膜
17−1、17−2:アルミニウム電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:被記録材
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
100:インクジェット記録ヘッド
832:吐出口
931:電気熱変換素子(ヒータ、インク吐出エネルギー発生素子)
933:インク供給口(開口部)
934:基板
935:オリフィスプレート(吐出口プレート)
935a:吐出口面
936:インク流路壁
940:吐出口部
1012:カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一般式(I)で表される色材と、一般式(II)で表される色材とを含有してなることを特徴とするインク。

(上記一般式(I)中、R1及びR2は各々独立に、置換若しくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を表し、且つ、少なくともR1及びR2のいずれかは、1の水酸基を有するアルキル基である。R3は、水素原子、或いは、置換若しくは未置換のフェニル基を表す。X1は、カルボキシル基又はスルホン酸基、若しくは、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウムの塩のいずれかを表す。mは1又は2を表す。Mはスルホン酸基の対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウム及び有機アンモニウムのいずれかを表す。)

(上記一般式(II)中、R4及びR5は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルカノイルアミノ基及びアルコキシ(炭素数1〜4)−アルコキシ(炭素数1〜4)基のいずれかを表し、且つ、R4及びR5の少なくとも一方は炭素数1〜4のアルコキシ基である。R6は、水素原子、若しくは、置換若しくは未置換の、フェニル基、ベンゾイル基及びベンジル基のいずれかを表す。X2は、カルボキシル基又はスルホン酸基、若しくは、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩のいずれかを表す。nは1又は2を表す。Mはスルホン酸基の対イオンであり、アルカリ金属、アンモニウム或いは有機アンモニウムのいずれかを表す。)
【請求項2】
一般式(I)で表される色材と一般式(II)で表される色材との混合比が、質量比で8:2〜2:8の範囲である請求項1に記載のインク。
【請求項3】
更に、イエロー染料を含有してなる請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
イエロー染料の含有量は、インク中における全色材の含有量の合計に対して質量基準で1〜20%である請求項3に記載のインク。
【請求項5】
イエロー染料が、C.I.Direct Yellow 86又はC.I.Direct Yellow 132の少なくともいずれかを含む請求項3又は4に記載のインク。
【請求項6】
インクジェット記録に用いられるインクである請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク。
【請求項7】
記録信号に応じてオリフィスからインクを吐出する過程を有するインクジェット記録方法において、上記インクが、請求項6に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項8】
インクが収容されているインク収容部と、該インクを吐出させるためのヘッド部が設けられている記録ユニットにおいて、上記インクが、請求項6に記載のインクであることを特徴とする記録ユニット。
【請求項9】
インクが収容されているインク収容部が設けられているインクカートリッジにおいて、上記インクが、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とすることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項10】
インクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのヘッド部とを有する記録ユニットを具備しているインクジェット記録装置において、上記インクが、請求項6に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−160998(P2006−160998A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358318(P2004−358318)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】