説明

インクを除去する方法

【課題】廃棄紙からインクを除去する方法を提供すること。
【解決手段】印刷紙からインクを除去する方法は、水性スラリーを形成するために紙をパルプ化する工程と、脱インク用添加物を紙に加える工程と、浮選により分離されたインクを除去する工程とからなる。
同添加物は、以下の式:


にて示される単位からなる有機変性シロキサンからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された廃棄紙からインクを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
森林破壊が引き起こす環境被害に関する認識の高まりにより、近年、廃棄紙の再生利用の増大が見られるようになってきた。リサイクル廃棄紙が商業的に有利であり、かつ未使用の繊維資源の保護において重要な影響を与えるという能力が認識されてきた。しかしながら、印刷用インク及び印刷媒体における技術的な発展は、再生資源業者に対して挑戦し続けるべく問題を提起し続ける一方である。
【0003】
紙への印刷は、典型的には二種類のインク即ち、紙上へ物理的に押圧されるインパクトインク(impact ink)と、帯電された画像に吸引され、かつ紙へ移動される非インパクトインク(non−impact ink)のうちの一方を用いて行われる。インパクトインクは、典型的には、例えば、活版印刷用インク、オフセット平版印刷用インク、グラビア印刷用インク及びフレキソ印刷用インクのような湿式インクである。例えば、活版印刷用インクは、通常、鉱油担体中のカーボンブラック顔料から構成されており、例えば、新聞の印刷に使用されている。オフセット平版印刷用インクは活版印刷用インクに比べより多くの顔料を含んでおり、かつアマニ又はアルキル樹脂のような乾燥した油を含んでいる。フレキソ印刷用インクは、活版印刷用インクと同様の工程において使用されるが、水性であり、かつアルカリの可溶性結合剤中に乳化したインクを含んでいる。それらのインクは容易に除去され得るが、捕捉及び除去が困難であるような極端に微細な粒子を形成するかもしれない。
【0004】
例えばトナーのような非インパクトインクは、通常、乾燥した、粉末状のインクであり、かつレーザ印刷、コピー印刷及びファクシミリ機において使用されるとともに熱可塑性樹脂及び顔料から構成されている。
【0005】
これら二つの異なるタイプのインクを含んだ紙からのインクの除去は、異なる脱インクの工程及び条件を必要とする。従来、非インパクトインクを含んだ紙からのインクの除去は、中性条件下において界面活性剤にてパルプ化することのみが必要であるのに対し、インパクトインクを含んだ紙からのインクの除去は、例えば、界面活性剤に加えて、アルカリ、ケイ酸塩及び過酸化物を用いて処理するような異なる条件を必要とする。
【0006】
従来の脱インク法において、廃棄紙は水性媒体中にて機械的撹拌により分解され(パルプ化され)、紙の繊維からインク及び不純物を分離し、かつインクを約0.1乃至1000μmの粒子に分解する。従って、灰色のスラリーが得られ、インクは該スラリー中において微細に分散した状態において存在している。例えば、プラスチック、アルミホイル、石、ビス、留め金、ペーパークリップ等のような不純物は、種々の選別工程において除去される。
【0007】
例えば、コピー印刷のような非インパクト印刷紙のインクの除去は通常中性の条件下にて実施されるが、他の印刷紙において、インクの除去は通常、アルカリ性水酸化物、アルカリ性ケイ酸塩、酸化漂白剤及び界面活性剤を使用するアルカリ性のpHレベルにて、30乃至50℃の温度にて実施される。通常、石鹸、エトキシ化脂肪アルコール及び/又はエトキシ化アルキルフェノールのようなアニオン性及び非イオン性の界面活性剤(tensides)が界面活性剤として使用される(例えば、特許文献1を参照されたい)。
【0008】
次いで、インク粒子は洗浄及び/又は浮選(flotation)により繊維スラリーから除去される。より小さなインク粒子は洗浄により除去され、より大きなインク粒子及び棒状のインク(例えば、のりの残留物及び接着剤)は、浮選により除去される。浮選時、気泡がパルプ中に送り込まれる。分散したインク粒子は気泡に付着し、該気泡がインク粒子を表面に運ぶ。得られた泡は表面からすくい取れられる。次の工程は、パルプを加熱して、落ちにくいインク粒子を均等に分配し、かつ傷ついた繊維、短い繊維、又は弱い繊維を分別するためにパルプを選別する工程を含む。選別後に残った、不純物が取り除かれた状態のパルプをローラー間にて押圧し、シートを形成し、乾燥させる。
【0009】
従って、効果的な脱インク法では、インクを紙繊維から有効に分離することと、分散されたインクを繊維状スラリーから除去することの両方を必要とする。
しかしながら、従来の脱インク法には種々の欠点が存在する。例えば、インク粒子の繊維スラリーからの除去が不完全である場合、得られた紙が、灰色の色調となったり、染みがついていたり、明度の低いものとなる。明度及び色は、多くの紙の用途において重要な品質の基準となっている。
【0010】
加えて、従来の脱インク法において使用されるアルカリ条件は、例えば、フィラー、微細な繊維及び棒状体のような水溶性及び/又はコロイド状の固形物及び微細に分散した固形物の処理水への混入を引き起こす。これら混入物が洗浄工程時において十分に除去されていない場合、該混入物が引き続く洗浄工程において濃縮され、かつ紙繊維中に再び組み込まれるので、得られた紙が明度を失うことになる。更に、従来の脱インク法において使用されている上述の化学物質を含む廃液は、環境上好ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0013758号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の脱インク法の欠点を克服した、廃棄紙からインクを除去する方法を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を解決するために、請求項1に記載の発明は、印刷紙からインクを除去する方法において、同方法は、水性スラリーを形成するために紙をパルプ化する工程と、脱インク用添加物を紙に加える工程と、浮選により分離されたインクを除去する工程とからなり、同添加物は、以下の式:
【0014】
【化1】

にて示される単位からなる有機変性シロキサン
[ここで、Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、アルカリル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、ヒドロキシル、エステル又はエーテル基から選択され;
Zはそれぞれ独立して、アミン、アミド、カルボキシル、エステル若しくはエポキシ基にて置換されたアルキル基、又は
【0015】
【化2】

基から選択され;
nは1より大きい整数であり;
a及びbは独立して、0、1、2又は3であり;
はアルキレン基または直接結合であり;
は上記R又はZにて定義された基であり;
p及びrは独立して、1乃至6の整数であり;
q及びsは独立して、0又は1≦q+s≦400を満たす整数であり、かつ
有機変性シロキサンの各分子が少なくとも一つのZ基を含む]
、からなる方法を提供する。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、Zは
【0017】
【化3】

基であることをその要旨とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の方法において、p及びrの少なくとも一方は独立して2、3又は4であることをその要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の方法において、q及びsはそれぞれ独立して10乃至30の整数であることをその要旨とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の方法において、q及びsは、それぞれ独立して15乃至25の整数であることをその要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の方法において、pは2であり、rは3であり、かつq及びsはいずれも18であることをその要旨とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法において、Rはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン又はヘキシレン基であることをその要旨とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法において、Rは水素原子又はヒドロキシル基であることをその要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法において、シロキサンは直鎖状であることをその要旨とする。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法において、シロキサンは分枝状部を含むことをその要旨とする。
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法において、Zは
【0023】
【化4】

基であり、かつRはヒドロキシル基又はアルカノイルオキシ基であることをその要旨とする。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法において、シロキサン分子中のケイ素原子の2乃至20モル%がZ基にて置換されていることをその要旨とする。
【0025】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の方法において、シロキサン分子中のケイ素原子の5乃至16モル%がZ基にて置換されていることをその要旨とする。
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法において、シロキサンは、5.0乃至7.3の範囲の親水性/親油性バランス(HLB)を有することをその要旨とする。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法において、シロキサンは、1000乃至500000の範囲の分子量を有することをその要旨とする。
【0027】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の方法において、シロキサンは、10000乃至100000の範囲の分子量を有することをその要旨とする。
請求項17に記載の発明は、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法において、シロキサンは、HLB値が5.9乃至6.3である水酸基がエンドキャップ処理された直鎖状ポリジメチルシロキサンであり、該直鎖状ポリジメチルシロキサンは、10乃至12モル%のケイ素原子が、式:
【0028】
【化5】

で示されるZ基にて置換されており、ここで、pは2であり、rは3であり、q及びsはいずれも18であり、Rは1乃至6個の炭素原子を有するアルキレン基であるか又は直接結合されており、かつRは水素原子又はヒドロキシル、エステル若しくはエーテル基であることをその要旨とする。
【0029】
請求項18に記載の発明は、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法において、添加物は、ポリジメチルシロキサン、有機ポリエーテル及び脂肪酸から選択される一つ以上の成分を更に含むことをその要旨とする。
【0030】
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の発明において、添加物は、式:
【0031】
【化6】

で示される有機ポリエーテルを更に含むとともに、R及びRは水素原子、ヒドロキシル、アルキル及びアルコキシ基から選択され、p及びrは独立して1乃至6の整数であり、かつq及びsは独立して0又は1≦q+s≦400を満たす整数であることをその要旨とする。
【0032】
請求項20に記載の発明は、請求項18又は19に記載の方法において、添加物は、飽和又は不飽和の一塩基性脂肪族カルボン酸である脂肪酸を更に含むことをその要旨とする。
【0033】
請求項21に記載の発明は、請求項20に記載の方法において、カルボン酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸から選択されることをその要旨とする。
【0034】
請求項22に記載の発明は、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法において、添加物は乳剤であることをその要旨とする。
請求項23に記載の発明は、請求項22に記載の方法において、添加物は、ガムベースの自己乳化型シロキサンであることをその要旨とする。
【0035】
請求項24に記載の発明は、請求項1乃至23のいずれか一項に記載の方法において、添加物は紙に対して0.1乃至1重量%の範囲内の量にて同紙に加えられることをその要旨とする。
【0036】
請求項25に記載の発明は、請求項24に記載の方法において、添加物は紙に対して0.1乃至0.5重量%の範囲内の量にて同紙に加えられることをその要旨とする。
請求項26に記載の発明は、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法において、ほぼ中性のpHにて実施されることをその要旨とする。
【0037】
請求項27に記載の発明は、請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法において、添加物は、パルプ化工程の前、パルプ化工程時又はパルプ化工程の後に加えられることをその要旨とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、廃棄紙からインクを除去する方法が得られ、しかも、周知の脱インク法を使用した場合と比較して、明度が改善されたパルプを生成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明によれば、印刷紙からインクを除去する方法が提供され、該方法は、水性スラリーを形成するために紙をパルプ化する工程と、脱インク用添加物を紙に加える工程と、浮選により分離されたインクを除去する工程とからなり、該添加物は、以下の式:
【0040】
【化7】

、にて示される単位からなる有機変性シロキサン
[ここで、Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、アルカリル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、ヒドロキシル、エステル又はエーテル基から選択され;
Zはそれぞれ独立して、アミン、アミド、カルボキシル、エステル若しくはエポキシ基にて置換されたアルキル基、又は
【0041】
【化8】

基から選択され;
nは1より大きい整数であり;
a及びbは独立して、0、1、2又は3であり;
はアルキレン基または直接結合であり;
は上記R又はZにて定義された基であり;
p及びrは独立して、1乃至6の整数であり;
q及びsは独立して、0又は1≦q+s≦400を満たす整数であり、かつ
有機変性シロキサンの各分子が少なくとも一つのZ基を含む]からなる。
【0042】
Zは
【0043】
【化9】

基であることが好ましく、より好ましくはp及び/またはrは独立して2、3又は4であり、即ち、エチレン、プロピレン及び/またはブチレンオキサイド基からなる置換基である。好ましくは、q及びsはそれぞれ独立して10乃至30の整数であり、より好ましくは15乃至25(例えば、18)の整数である。特に好ましいZ基において、pは2であり、rは3であり、かつq及びsはいずれも18である。Rは例えば1乃至6個の炭素原子を有するアルキレン基(即ち、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、又はヘキシレン基)であるか、または直接結合している。Rは上記R又はZにて定義された置換基であり、かつ好ましくは水素原子又はヒドロキシル基である。
【0044】
加えて、又はこれに代えて、Zはアミン、アミド、カルボキシル、エステル又はエポキシ基にて置換されたアルキル基であり、例えば、1乃至6個の炭素原子を有するアルキル基、即ち、置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル基であり得る。
【0045】
シロキサンは、直鎖状であり得るか、又はa+b=0又は1である、即ち、シロキサンが分枝状のものを含む単位からなる。Zが
【0046】
【化10】

基である場合、Rは好ましくはヒドロキシル又はアルカノイルオキシ基である。
【0047】
シロキサン分子中において、好ましくは2乃至20モル%の、より好ましくは5乃至16モル%のケイ素原子がZ基にて置換されている。
シロキサンは、好ましくは、5.0乃至7.3の範囲の親水性/親油性バランス(HLB)を有している。
【0048】
シロキサンの分子量は、好ましくは1000乃至500000の範囲であり、より好ましくは10000乃至100000の範囲である。
本発明において使用される特に好ましいシロキサンは、HLB値が5.9乃至6.3である水酸基のエンドキャップ処理された(hydroxy−endcapped)直鎖状ポリジメチルシロキサンであり、該直鎖状ポリジメチルシロキサンは10乃至12モル%のケイ素原子が式:
【0049】
【化11】

であるZ基にて置換されており、ここで、pは2であり、rは3であり、q及びsはいずれも18であり、Rは1乃至6個の炭素原子を有するアルキレン基であるか、又は直接結合されており、かつRは水素原子又はヒドロキシル、エステル若しくはエーテル基である。
【0050】
本発明において使用される添加物は、有機変性シロキサンに加えて更なる成分からなる。例えば、添加物は、ポリジメチルシロキサン、有機ポリエーテル及び脂肪酸から選択される一つ以上の成分からなる。適切な有機ポリエーテルは、一般式が
【0051】
【化12】

であり、かつR及びRが水素原子、ヒドロキシル、アルキル及びアルコキシ基から選択されるとともにp、q、r及びsが上述に定義されたものである該一般式のうちのいくつかを含む。適切な脂肪酸は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸のような8乃至22個の炭素原子を有する飽和及び不飽和の一塩基性脂肪族カルボン酸を含む。
【0052】
添加物は、乳剤の形態であり得、例えば、有機変性シロキサンはガムベースの自己乳化型シロキサンである。
本発明の方法において、該添加物はパルプ化の前、パルプ化の工程時、又はパルプ化の後に紙に加えることができる。紙に加えられるべき添加物の量は、紙に対して0.1乃至1重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.1乃至0.5重量%である。添加物は、例えば、乳剤のように希釈せずに紙に加えられるか、又は例えば水溶液のように、溶解して加えられる。
【0053】
本発明の方法は、該方法がアルカリ性のpHにて実施可能ではあるものの、ほぼ中性のpHにて実施されることが好ましい。
本発明のパルプ化工程及びインク除去工程は、当業者には周知であり、かつ上記に記載されたように、従来どおりの方法にて実施され得る。例えば、紙は、35乃至45℃のような30乃至50℃の範囲の温度にて、1乃至10%(例えば、1乃至5%)の濃度を有する水性のスラリーを形成するためにパルプ化され得る。濃度(consistency)は繊維を含んだ懸濁液中のパルプ固形物の重量%にて定義される。インクの除去は、例えば30乃至50℃(例えば、35乃至45℃)の適切な温度であり、かつ例えば500乃至1000rpmのような単位時間(分)当たりの所定の回転数にて、適切な浮選用セル(例えば、Denver Lab社製の浮選セル)中にて実施され得る。本発明の方法に関連した更なる利点は、フレキソ印刷の廃棄物を処理するために使用した場合、処理工程中における水が、比較的澄んでいる点が挙げられる。これに対し、周知の脱インク法を使用した場合、水は黒色になる。更に、本発明の方法は明度が改善されたパルプを生成する。
【0054】
本発明の実施形態を、以下に詳細に記載する。
【実施例1】
【0055】
a)パルプ化
混合容器中において、4%の濃度を有する110gの空気乾燥した廃棄紙(50%の新聞紙と50%の雑誌)の水性懸濁液に440gの工業用水を45℃にて加えた。懸濁された紙は45℃にて15分間混練された。
【0056】
b)インクの除去
16°dHの硬度を有する水を、上記a)において得られたパルプ中に加えて、1%の濃度を得た。約11モル%のケイ素原子が−(OC18(OC18側鎖に置換された置換物を有し、HLBが約6.1であり、かつ分子量が約60000である水酸基がエンドキャップ処理された種々の量のポリジメチルシロキサン(以下の明細書中において「シロキサン1」と参照される)を該パルプに水性溶液として加えた。該パルプをDenver Lab社製の浮選セル中にて、45℃、1000rpmにて8分間、浮選した。その後、パルプを水から分離し、真空下、95℃にて10分間乾燥しながら、シート形成機の二つのフィルタの間にてシートを形成した。
【0057】
比較のために、上記工程a)及びb)は、市販の脂肪酸ベースの脱インク調製物を用いて繰り返された。結果を以下の表1に示す。白色度(whiteness)はDIN(ドイツ工業標準規格)53145パート1に従って評価した。
【0058】
【表1】

【実施例2】
【0059】
a)パルプ化
混合容器中において、20%の濃度を有する110gの空気乾燥した廃棄紙(10%の新聞紙と90%の雑誌)の水性懸濁液に440mlの工業用水を45℃にて加えた。懸濁された紙は45℃にて15分間混練された。
【0060】
b)インクの除去
上記a)において得られたパルプ中に水を加えて、1.09%の濃度を得た。以下の表4において定義される水酸基がエンドキャップ処理された種々の量のシロキサンを該パルプに水性溶液として加えた。該パルプをDenver Lab社製の浮選セル中にて、45℃にて8分間、浮選した。
【0061】
上記工程a)及びb)は、実施例1において使用されたシロキサン(シロキサン1)及び表4において定義されたシロキサン(シロキサン2乃至8)を用いて、新しい廃棄紙と古い廃棄紙について繰り返された。表4はまた、各シロキサンに対する粘度のデータも含む。比較のために、実施例1において使用された、市販の脂肪酸ベースの脱インク調製物を用いた実験も実施した。結果を以下の表2(新しい廃棄紙の場合)及び表3(古い廃棄紙の場合)に示す。白色度はDIN53145パート1に従って評価した。
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【実施例3】
【0065】
a)パルプ化
混合容器中において、20%の濃度を有する110gの空気乾燥した廃棄紙(100%新聞紙)の水性懸濁液に400mlの工業用水を45℃にて加えた。懸濁された紙は45℃にて15分間混練された。
【0066】
b)インクの除去
上記a)において得られたパルプ中に水を加えて、1.09%の濃度を得た。表4及び実施例1において定義された水酸基がエンドキャップ処理された種々の量のシロキサンを該パルプに水性溶液として加えた。該パルプをDenver Lab社製の浮選セル中にて、45℃にて8分間、浮選した。
【0067】
上記工程a)及びb)は、実施例1において使用されたシロキサン(シロキサン1)及び表4において定義されたシロキサンのうちの二つ(シロキサン4及び7)を用いて繰り返された。比較のために、実施例1において使用された、市販の脂肪酸ベースの脱インク調製物を用いた実験も実施した。結果を以下の表5に示す。白色度はDIN53145パート1に従って評価した。
【0068】
【表5】

【実施例4】
【0069】
実施例1の工程a)及びb)は、実施例1において使用されたシロキサン(シロキサン1)を用いて繰り返されたが、100%フレキソ印刷紙について実施した。加えて、0.10重量%の水酸化ナトリウム及び1.20重量%のケイ酸ナトリウムをスラリーに加えた。
【0070】
比較のために、実施例1において使用された、市販の脂肪酸ベースの脱インク調製物を用いた実験も実施した。結果を以下の表6に示す。ろ過水の外観も記録した。白色度はDIN53145パート1に従って評価した。
【0071】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷紙からインクを除去する方法において、前記方法は、水性スラリーを形成するために紙をパルプ化する工程と、脱インク用添加物を紙に加える工程と、浮選により分離されたインクを除去する工程とからなり、
前記添加物は、以下の式:
【化1】

にて示される単位からなる有機変性シロキサン
[ここで、Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、アルカリル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、ヒドロキシル、エステル又はエーテル基から選択され;
Zはそれぞれ独立して、アミン、アミド、カルボキシル、エステル若しくはエポキシ基にて置換されたアルキル基、又は
【化2】

基から選択され;
nは1より大きい整数であり;
a及びbは独立して、0、1、2又は3であり;
はアルキレン基または直接結合であり;
は上記R又はZにて定義された基であり;
p及びrは独立して、1乃至6の整数であり;
q及びsは独立して、0又は1≦q+s≦400を満たす整数であり、かつ
有機変性シロキサンの各分子が少なくとも一つのZ基を含む]
、からなる方法。
【請求項2】
前記Zは、
【化3】

基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記p及びrの少なくとも一方は独立して2、3又は4である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記q及びsはそれぞれ独立して10乃至30の整数である請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記q及びsは、それぞれ独立して15乃至25の整数である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
pは2であり、rは3であり、かつq及びsはいずれも18である請求項2乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記Rはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン又はヘキシレン基である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記Rは水素原子又はヒドロキシル基である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シロキサンは直鎖状である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シロキサンは分枝状部を含む請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記Zは、
【化4】

基であり、かつ前記Rはヒドロキシル基又はアルカノイルオキシ基である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シロキサン分子中のケイ素原子の2乃至20モル%がZ基にて置換されている請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記シロキサン分子中のケイ素原子の5乃至16モル%がZ基にて置換されている請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シロキサンは、5.0乃至7.3の範囲の親水性/親油性バランス(HLB)を有する請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記シロキサンは、1000乃至500000の範囲の分子量を有する請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記シロキサンは、10000乃至100000の範囲の分子量を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シロキサンは、HLB値が5.9乃至6.3である水酸基がエンドキャップ処理された直鎖状ポリジメチルシロキサンであり、該直鎖状ポリジメチルシロキサンは、10乃至12モル%のケイ素原子が、式:
【化5】

で示されるZ基にて置換されており、ここで、pは2であり、rは3であり、q及びsはいずれも18であり、Rは1乃至6個の炭素原子を有するアルキレン基であるか又は直接結合されており、かつRは水素原子又はヒドロキシル、エステル若しくはエーテル基である請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記添加物は、ポリジメチルシロキサン、有機ポリエーテル及び脂肪酸から選択される一つ以上の成分を更に含む請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記添加物は、式:
【化6】

で示される有機ポリエーテルを更に含むとともに、R及びRは水素原子、ヒドロキシル、アルキル及びアルコキシ基から選択され、p及びrは独立して1乃至6の整数であり、かつq及びsは独立して0又は1≦q+s≦400を満たす整数である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記添加物は、飽和又は不飽和の一塩基性脂肪族カルボン酸である脂肪酸を更に含む請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記カルボン酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記添加物は乳剤である請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記添加物は、ガムベースの自己乳化型シロキサンである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記添加物は紙に対して0.1乃至1重量%の範囲内の量にて前記紙に加えられる請求項1乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記添加物は紙に対して0.1乃至0.5重量%の範囲内の量にて前記紙に加えられる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ほぼ中性のpHにて実施される請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記添加物は、パルプ化工程の前、パルプ化工程時又はパルプ化工程の後に加えられる請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−53504(P2010−53504A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264247(P2009−264247)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【分割の表示】特願2004−523792(P2004−523792)の分割
【原出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願人】(505028369)ダウ コーニング コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【出願人】(505028185)ノプコ ペーパー テクノロジー ホールディング アーエス (2)
【氏名又は名称原語表記】NOPCO PAPER TECHNOLOGY HOLDING AS
【Fターム(参考)】