説明

インクカートリッジに対するインクの補給充填方法及び補給充填器具

【課題】 上部と下部のインク室付きのインクカートリッジのインク室に対するインクの補充充填を、インク室内の空気の的確な排除と並行して、的確にかつ迅速に行うことができる方法と器具を提供する。
【解決手段】 下部インク室12の底壁のインク補給口13にインク補給充填具21を接続して、下部インク室12にインクを補給充填した後、インク補給口13に補充充填用インクタンク24を接続する一方、上部インク室15に接続のインクカートリッジ11底部のインク供用口17にインク室抜気減圧具25を接続して、上部インク室15を抜気により減圧することによって、下部インク室12のインクを室間インク流路14を通して上部インク室15に吸入充填するとともに下部インク室12にインクタンク24のインクを吸入充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクを使い切ったインクカートリッジ内にインクを補給充填する方法及び器具に関する。
【背景技術】
【0002】
インクカートリッジに対するインクの補給充填方式としては、ピストン付きシリンダ形のインク容器からなる注射器型のインク補給充填具の先端部(補給充填ノズル)を、インクカートリッジのインク室に連通するインク補給口(製造当初のインク充填口に相当)に挿着し、ピストンの後退操作により、インク室内の空気をシリンダ内のインク層の背後部に吸引除去して、インク室内を減圧した後、シリンダ内のインク層の前後の圧力差による自然な又は手によるピストンの前進操作によって、シリンダ内のインクをインク室内に送給する方式が知られている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0003】
しかしこの公知のインクの補給充填方式は、インク室が単一のインクカートリッジの場合には比較的問題化することは少ないが、インク室が、底壁にインク補給口を有する下部インク室と、下部インク室に室間インク流路を介して接続するとともに供用インク流路を介してカートリッジ底部に設けたインク供用口(プリンタの記録ヘッドに対するインクの供給口)に接続した上部インク室の二つに区画されているインクカートリッジの場合(例えば、特許文献4、5及び6参照)には、特にインク補給口から離れた上部インク室のインク供用流路接続部近傍やインク供用流路部に空気が残留し易く、使用開始時に、この残留した空気により、補給充填したインクのインク供用口からのスムースな流出が阻害されて、インク切れが生じ易いことから、記録ヘッドを含めたクリーニング操作が必要であるという問題がある。
【0004】
またこのようなクリーニング操作を行う場合においても、適正で安定した印字品質を確保するためには、すべての残留空気が上部インク室の上部に移動するまでの期間(例えば1日〜数日間)、使用開始時期を延ばすことが望ましいとされている。
【特許文献1】特開2000−141680号公報
【特許文献2】特開平11−320903号公報
【特許文献3】特開平11−207989号公報
【特許文献4】特開2004−203059号公報
【特許文献5】特開2004−195653号公報
【特許文献6】特開2003−34041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、公知のインクの補給充填方式に認められる上記のような問題等に鑑み、上部と下部のインク室付きのインクカートリッジにおけるインク室に対するインクの補給充填を、インク室内の空気の的確な排除と並行して、的確かつ迅速に行うことができる方法と該方法を実施するための器具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】

この発明によれば、上記の課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載のように、底壁にインク補給口を設けた下部インク室と、下部インク室に室間インク流路を介して接続するとともに供用インク流路を介してカートリッジ底部に設けたインク供用口に接続した上部インク室を有するインクカートリッジに対するインクの補給充填方法であって、インク補給口を通して下部インク室にインクを補給充填する工程と、インク補給口に補給充填用インクタンクを接続した状態において、インク供用口を通して上部インク室を抜気(吸引)により減圧して、下部インク室のインクを室間インク流路を介して上部インク室に吸入充填するとともに下部インク室にインクタンクのインクを吸入充填する工程とからなる、インクの補給充填方法によって解決する。
【0007】
またこの発明によれば、上記の方法を実施するために、請求項2に記載のごとく、底壁にインク補給口を設けた下部インク室と、下部インク室に室間インク流路を介して接続するとともに供用インク流路を介してカートリッジ底部に設けたインク供用口に接続した上部インク室を有するインクカートリッジに対するインクの補給充填器具であって、インク補給口を通して下部インク室にインクを補給充填可能なインク補給充填具と、インク補給口に挿着可能な補給充填用インクタンクと、インク供用口に挿着可能なインク室抜気減圧具とからなる、インクの補給充填器具を提供する。
【発明の効果】
【0008】
特許請求の範囲の請求項1に記載のこの発明に係るインクの補給充填方法によれば、下部インク室にインク補給口を通してインクを補給充填した後、インク補給口に補給充填用インクタンクを挿着した状態で、上部インク室を供用インク流路を介して抜気減圧するとともに室間インク流路を介して下部インク室を抜気減圧することにより、下部インク室内のインクを上部インク室内に吸入により充填すると同時に、補給充填用インクタンク内のインクを下部インク室内に吸入により充填するので、上部と下部の両インク室に対するインクの補給充填と並行して、両インク室内の空気は実質上完全に排除される。
【0009】
また請求項2に記載のこの発明のインクの補給充填器具によれば、補給充填用インクタンクとともに、インク補給充填具と、インク室抜気減圧具の簡単な器具と操作のみで、インク室内の空気の排除と並行したインクの補給充填を、的確かつ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面に基づいて、この発明に係るインクの補給充填の方法と器具の好適な実施形態について説明する。
【0011】
図1と図2に示すように、この発明の実施に当たっては、インクカートリッジ11は、上下を逆にして、下部インク室12、従ってインク補給口13及びインク供用口17が上に位置する状態に、適宜の保持台(図示せず)を介して保持する(一方、図示はしないが、印字用の空気導入孔をシール類で密閉した状態にする)もので、最初の下部インク室12に対するインクの補給充填工程は、図1に示すごとく、インク補給口13(補給充填操作前に適宜の用具で開口)に、ピストン23付きシリンダ形インク容器22からなるインク補給充填具21の先端部を挿着した状態で、ピストン23の前進操作を介して行う。
【0012】
下部インク室12に対するインクの補給充填の終了後の上部インク室15と下部インク室15に対するインクの吸入充填工程は、図2に示すように、インク補給口13に、補給充填用インクタンク24の先端部を挿着する一方、インク補給口13に隣接するばね式常閉弁18付きのインク供用口17に、ピストン26付きのシリンダ形抜気筒27からなるインク室抜気減圧具25の側部抜気口28付きの先端部を挿着して、常閉弁18を開放した状態において、インク室抜気減圧具25のピストン26の後退操作を介して行う。
【0013】
この操作により供用インク流路16を通して上部インク室15が抜気減圧されると同時に、室間インク流路14を通して下部インク室12も抜気減圧されるため、上部インク室16内に下部インク室12のインクが吸入されて充填されると同時に、下部インク室12内に補給充填用インクタンク24のインクが吸入されて充填され、最終的には上部インク室15及び下部インク室12が満量の状態に充填される。この満量の状態、すなわちピストン26の後退操作の終点は、一般には、インク室抜気減圧具25の抜気筒27に付ける終点マークや抜気筒27にインクが吸入され始める時点、或いは補給充填用インクタンク24内のインクの残量の状態で確認することができるが、この後はインク室抜気減圧具25の先端部をインク供用口17から抜いて、インク供用口17を常閉弁18により自動的に閉鎖する一方、補給充填用インクタンク24の先端部をインク補給口13から抜いた後、インク補給口13をプラグ類で閉鎖する。
【0014】
この発明に係るインクの補給充填方法及び補給充填器具は、このほか種々の形態で実施することができるもので、上記の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明におけるインクカートリッジの下部インク室に対するインクの補給充填工程の実施形態を示す略図である。
【図2】この発明におけるインクカートリッジの上部インク室と下部インク室に対するインクの吸入充填工程の実施形態を示す略図である。
【符号の説明】
【0016】
11 インクカートリッジ
12 下部インク室
13 インク補給口
14 室間インク流路
15 上部インク室
16 供用インク流路
17 インク供用口
18 ばね式常閉弁
21 インク補給充填具
22 シリンダ
23 ピストン
24 補給充填用インクタンク
25 インク室抜気減圧具
26 ピストン
27 抜気筒
28 側部抜気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁にインク補給口を設けた下部インク室と、下部インク室に室間インク流路を介して接続するとともに供用インク流路を介してカートリッジ底部に設けたインク供用口に接続した上部インク室を有するインクカートリッジに対するインクの補給充填方法であって、インク補給口を通して下部インク室にインクを補給充填する工程と、インク補給口に補給充填用インクタンクを接続した状態において、インク供用口を通して上部インク室を抜気(吸引)により減圧して、下部インク室のインクを室間インク流路を介して上部インク室に吸入充填するとともに下部インク室にインクタンクのインクを吸入充填する工程とからなる、インクカートリッジに対するインクの補給充填方法。
【請求項2】
底壁にインク補給口を設けた下部インク室と、下部インク室に室間インク流路を介して接続するとともに供用インク流路を介してカートリッジ底部に設けたインク供用口に接続した上部インク室を有するインクカートリッジに対するインクの補給充填器具であって、インク補給口を通して下部インク室にインクを補給充填可能なインク補給充填具と、インク補給口に挿着可能な補給充填用インクタンクと、インク供用口に挿着可能なインク室抜気減圧具とからなる、インクカートリッジに対するインクの補給充填器具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−55076(P2007−55076A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242632(P2005−242632)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(592205045)株式会社北村製作所 (10)
【Fターム(参考)】