説明

インクジェットヘッド

【構成】 マイクロマシニング技術により、Si基板の両面にインク吐出用ノズルを、Si基板端面において千鳥状になるように配置、加工する。
【効果】 ノズル密度の高いインクジェットヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロマシニング技術を応用して作製した小型高密度のインクジェット記録装置の主要部であるインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録装置は、記録時の騒音がきわめて小さく、又、高速印字が可能であり、安価な普通紙にも印字が可能であるなど多くの利点を有しているが、中でも記録に必要な時にのみインク滴を吐出する、いわゆるインク・オン・デマンド方式が、記録に必要なインク滴の回収を必要としないため、現在主流となってきている。
【0003】このインク・オン・デマンド方式のインクジェットヘッドには、特公平2−51734号公報に示されるように、駆動手段が圧電素子であるものや、特公昭61−59911号公報に示されるように、インクを加熱し気泡を発生させることによる圧力でインクを吐出する方式がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の従来のインクジェットヘッドでは以下に述べるような課題があった。
【0005】前者の圧電素子を用いる方式においては、圧力室に圧力を生じさせるためのそれぞれの振動板に圧電素子のチップを貼り付ける工程が煩雑で、特に、最近のインクジェット記録装置による印字には、高速・高印字品質が求められてきており、これを達成するためのマルチノズル化・ノズルの高密度化において、圧電素子を微細に加工し各々の振動板に接着することはきわめて煩雑である。又、高密度化においては、圧電素子を幅数10〜100数十ミクロンで加工する必要が生じてきているが、従来の機械加工における寸法・形状精度では、印字品質のバラツキが大きくなってしまうという課題があった。
【0006】又、後者のインクを加熱する方式においては、駆動手段が薄膜の抵抗加熱体により形成されるため、上記のような課題は存在しなかったが、駆動手段の急速な加熱・冷却の繰り返しや、気泡消滅時の衝撃により抵抗加熱体がダメージを受けることにより、インクジェットヘッドの寿命が短いという課題があった。
【0007】これらの課題を解決するものとして本出願人は、駆動手段として圧力室に圧力を生じさせる振動板を、静電気力で変形させる方式のインクジェット記録装置について特許出願(特願平3−234537号)を行っているが、この方式は小型高密度・高印字品質及び長寿命であるという利点を有している。
【0008】本発明の目的は、静電気力を用いる方式のインクジェットヘッドにおいて、さらに高密度のインクジェットヘッドを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のインクジェットヘッドは、インク滴を吐出するための複数のノズルと、該ノズルのそれぞれに連通する圧力室と、該圧力室の少なくとも一方の壁を構成する振動板と、該圧力室にインクを供給する共通のインク室と、該振動板に変形を生じさせる駆動手段とを備え、前記駆動手段が前記振動板を静電気力により変形させる電極からなるインクジェットヘッドにおいて、(100)面方位のSi単結晶基板を構成部材とし、該Si単結晶基板の一方の面と他方の面のそれぞれに複数個の前記ノズルが等間隔に形成されていることを特徴とし、又、前記一方の面及び他方の面に形成されたノズルが、前記Si単結晶基板の所定位置を切断して生じる端面において、千鳥状に配置され、さらには、前記一方の面に形成された前記ノズルと他方の面に形成された前記ノズルとでは、前記端面の長手方向において、ノズル間隔を単位長として互いに1/2ずつずれて配置されていることを特徴とする。
【0010】Si単結晶は、アルカリ液を用いてエッチングする際、その結晶面方位によりエッチング速度が大きく異なるいわゆる異方性エッチングが可能であり、このことを利用して様々な立体形状を精度良く加工することができる。さらに、これまでIC製造技術において培われてきた、フォトリソグラフィ・薄膜形成・エッチング等の各技術を利用しての加工を組み合わせることによる微小なデバイスを形成する、いわゆる“マイクロマシニング技術”が現在注目を浴びているが、本発明はマイクロマシニング技術によりSi単結晶に高精度な立体形状加工を施し、高性能なインクジェットヘッドを提供するものである。
【0011】(100)面方位のSi単結晶基板では、アルカリエッチングにおいて最もエッチングレートが小さい(111)面は、該基板表面に対し約55度の角度をもって交わっており、すなわち、55度の傾斜面に囲まれた空間形状を高精度に形成できる。この空間形状を圧力室(キャビティ)として応用することにより、圧力室体積のバラツキが小さい、従って吐出インク体積が一定であるような高印字品質のインクジェットヘッドが提供できる。
【0012】前記振動板の変形・復元により、インクを吐出する本方式のインクジェットヘッドでは、図8に示す振動板6の幅をW1 、キャビティ5の深さをDとすると、キャビティ5の上端の幅W2 は、
【0013】
【数1】


【0014】であり、Si単結晶基板の一方の面に複数個のノズルを形成する場合、そのノズルピッチは数1より小さくすることはできないが、図9に示すように、Si単結晶基板の両面にキャビティを形成する本発明の構成によれば、ノズルピッチを小さくすることができる。本発明の優れている点は、Si単結晶基板の一方の面に形成されたキャビティと、該キャビティに最も接近して他方の面に形成されるキャビティとの間を形成する壁17は、両面とも(111)面18からなるため、エッチングによるキャビティ形成プロセスにおいては、エッチングにより壁が貫通されることがなく、又、設計寸法通りの形状が形成できるところにある。
【0015】
【作用】本発明のインクジェットヘッドの動作原理は、前記電極又は前記振動板にパルス電圧を付加し、正又は負の電荷を前記電極又は前記振動板に与えることにより、前記振動板を静電的吸引又は反発により変形させ、前記圧力室内のインクをノズルより吐出させるものである。
【0016】
【実施例】
(実施例1)以下、本発明の第1の実施例に基づき詳細に説明する。
【0017】図1は、本発明の第1の実施例におけるインクジェットヘッドの構造を分解して示す斜視図であり、一部断面を示してある。図1に示すように、本実施例のインクジェットヘッドは、ノズル4a・4b、キャビティ5a・5b、振動板6a・6b等がアルカリ異方性エッチングにより形成されたSi基板1と電極11a・11b、ギャップ部を形成するための溝12a・12b等がそれぞれ形成されたガラス基板2a・2bとを積層・接合してなる構造を有する。
【0018】Si基板1は、結晶面方位が(100)である単結晶Si基板であって、該Si基板1の表側の面(図1では上側の面)には、複数のノズル4aと、各々のノズル4aに連通し底部の壁が振動板6aであるようなキャビティ5aと、各々のキャビティ5aにおいてノズル4aと反対側の端部に形成されるインク供給路8aと、各々のインク供給路8aにインクを供給するための共通のインク室7とが形成され、該Si基板1の裏側の面(図1では下側の面)には、同様にノズル4b、振動板6b、キャビティ5b、インク供給路8b、及びインク室7が形成されているが、本実施例では、インク室7はSi基板1の両面からエッチング加工し、貫通して形成されているため、Si基板1の表側及び裏側で共通して用いられる。
【0019】ガラス基板2a及び2bには、Si基板1上に形成された振動板6a及び6bに対向して配置される電極11a及び11bと、前記振動板6a及び6bと前記電極11a及び11bとの対向間隔(ギャップ)を保持するための溝12a及び12bが形成されており、それぞれが前記キャビティ5a及び5bがインクを加圧するための圧力室となるように、各々前記Si基板1の裏側及び表側に接合される。
【0020】図1に示したSi基板1の製造工程を図2に示す。
【0021】まず、(100)面方位のSiウェハの両面を鏡面研磨し、厚み200ミクロンのSi基板1を形成し(図2(a))、該Si基板1にO2 及び水蒸気雰囲気中で摂氏1100度、4時間の熱酸化処理を施し、該Si基板1の両面に厚さ1ミクロンのSiO2 膜15a及び15bを形成する(図2(b))。前記SiO2 膜15a及び15bは、耐エッチング材として使用するものである。
【0022】次いで、前記SiO2 膜15a上に、ノズル4a・キャビティ5a・インク室7等の形状に相当するフォトレジストパターン16a(図示しない)を形成し、又、前記SiO2 膜15b上には、同様にノズル4b・キャビティ5b・インク室7等の形状に相当するフォトレジストパターン16b(図示しない)を形成し、フッ酸系エッチング液にて前記SiO2 膜15a及び15bの露出部分をエッチング除去し、フォトレジストパターン16a及び16bを除去する(図2(c))。前記フォトレジストパターン16a及び16bとは、両面アライナにより互いの位置をミクロンオーダーでアラインメントし形成される。又、フォトレジストパターン16a及び16bの元となるフォトマスクパターンの各部設計寸法値は以下の通りに決定された。
【0023】本構成のインクジェットヘッドに要求されるインク吐出特性から、各構成部位の設計寸法値が決定される。本実施例では、振動板6a及び6bの幅W1 を500ミクロン、厚みtを30ミクロンとした。
【0024】(100)Si基板において、(111)面は基板表面である(100)面に対して結晶構造上、約55度の角度をもって交わっているため、上記のように(100)Si基板中に形成される構造の寸法が決定されると、Si基板の厚みに対し耐エッチング材のマスクパターンは一義的に決定される。図3に示すように、キャビティ5aの上端の幅W2 を740ミクロンとし、Si基板1に170ミクロンのエッチングを施すと、幅W1 が500ミクロン、厚みtが30ミクロンであるような振動板6aが得られる。
【0025】実際のエッチングでは、(111)面はわずかずつエッチング(アンダーカット)され、図3における寸法W2 は、マスクパターン幅W3 より若干大きくなる。従って、フォトマスクパターン16aの幅W2 は、(111)面18のアンダーカット寸法分だけ小さく補正する必要があり、本実施例では730ミクロンとした。又、近接するキャビティとの間隔(又はピッチ)は、Si基板1の裏面側に形成されるキャビティ5bの位置により制約を受ける。すなわち、本実施例におけるインクジェットヘッドでは、前記したように前記キャビティ5aと該キャビティ5aと近接して形成されるキャビティ5bとの間は、2面が(111)面18からなる壁部17により隔てられるが、該壁部17の厚みはクロストークすなわち隣接するキャビティへの吐出特性上の影響を考慮すると、ある程度以上の厚みを有することが必要であり、本実施例においては、壁部17の厚みt´の値を40ミクロンとした。厚みt´の値よりSi基板1の表面及び裏面に複数個ずつ形成されるキャビティ5a及び5bの寸法と間隔が決定される。すなわち、ピッチ間隔としては、1296ミクロンであり、この値はSi基板上の一方の面での値であるから、両面では2倍のノズル密度、すなわち648ミクロンとなる。
【0026】図2の(c)工程の段階にあるSi基板1に、アルカリ液によるエッチングを施す。エッチング液としては、イソプロピルアルコールを含む水酸化カリウム水溶液を用いて、所定量である170ミクロンのエッチングを施した(図2(d))。このとき、キャビティ5a及び5bと同時にノズル4a及び4b、インク供給路8a及び8b、インク室7等も形成されるが、ノズルやインク供給路に相当する耐エッチングマスクパターンは、幅が狭いために、エッチングにより発現する2つの(111)面がキャビティ5a及び5bに比して浅いところで交わり、それ以上のエッチングはほとんど進行しなくなる。又、インク室7については、Si基板1の両側の面において、同一の耐エッチングマスクパターンとしたために、Si基板1の板厚の1/2である100ミクロンのエッチングを両側の面から施した時点で貫通穴が生じ、両側の面において共通のインク室となる。
【0027】次に、Si基板1の両側の面に残留している耐エッチングマスク材であるSiO2 膜15a及び15bをフッ酸系エッチング液により完全に除去し(図2(e))、Si基板1が完成する。
【0028】次に、ガラス基板2a及び2bの製造工程について記す。
【0029】Si基板1に形成した振動板6a及び6bに対応する箇所に、振動板6a及び6bと同一の幅(730ミクロン)、同一のピッチでギャップを形成するための溝12a及び12bをフッ酸系エッチング液を用いたエッチングにより形成する。溝深さとしては、ギャップ長の設計寸法値が0.50ミクロンであり、この値に電極11a及び11bの材料厚みである0.10ミクロンを加えた0.60ミクロンとなるようエッチング工程において調節を行う。電極材料としては、Au(金)/Cr(クロム)の2層膜をスパッタリング法でガラス基板2a及び2bの全面に形成し、次いで、エッチングにより不要部分を除去する。本実施例では、Crの厚みを0.05ミクロン、Auの厚みを0.95ミクロンとし、連続したスパッタリングにより2層膜を形成した。
【0030】又、ガラス基板2bには、Si基板1上のインク室7に相当する箇所に、インク供給用の穴13を明ける。
【0031】次に、図4に示すように、Si基板1とガラス基板2a及び2bとの接合を行う。接合は陽極接合法による。Si基板1とガラス基板2a及び2bとの位置合わせを行った後、各部材を突き合わせて、ホットプレート20上で突き合わせた部材全体を上電極21及び下電極22間に狭持し、摂氏310度に加熱し、Si基板を正側、ガラス基板2a及び2bを負側として800Vの直流電圧を10分間印加することにより、ガラス−Si−ガラスの接合体が得られる。
【0032】最後に、得られた接合体をダイシングにより切断し、インクジェットヘッドを得る。
【0033】以上記したように、Si基板の片側のみにノズル等を形成する場合に比べて、高密度であるインクジェットヘッドが得られた。実際の印字においては、各々の振動板6a及び6bに対応する発振回路14a及び14b(図示しない)により各々の振動板を振動させ、各々の圧力室内のインクを加圧し、各々のノズル4a及び4bからインク滴を吐出させる。
【0034】(実施例2)以下、本発明の第2の実施例に基づき詳細に説明する。
【0035】図5に本発明の第2の実施例におけるインクジェットヘッドの断面図を示す。本実施例は、本発明の第1の実施例において示したインクジェットヘッドを2つ積層したような構造を有しており、従って、ノズル密度としてはさらに2倍となる。図5に示したSi基板1a及び1bは、共に本発明の第1の実施例の場合と同一の製造方法により製造されるので、製造工程の説明は省略する。又、ガラス基板2c及び2eも、本発明の第1の実施例におけるガラス基板2a及び2bと同一の方法によって製造される。ただし、ガラス基板2eにもインク供給用の穴13(図示しない)が明けられる。
【0036】本実施例のインクジェットヘッドのSi基板端面の長手方向(図5のx方向)において、4本のノズル列(4c、4d、4e、4f)を均等に分散配置するために、ノズル4cとノズル4eではSi基板の同一面上に隣接して形成されるノズル間距離を1として、1/4だけずれるようにSi基板1aと1bを積層・組立する関係上、ガラス基板2d上に形成される電極11dと11eの位置は、1/4だけずれている。ガラス基板2dの厚みとしてはあらゆる値をとり得るが、ノズル4dからなるノズル列と、ノズル4eからなるノズル列の間隔は適当な値でなければならない。本実施例では、Si基板1a及び1bと同一の厚みである200ミクロンとした。
【0037】Si基板1a及び1b、ガラス基板2c及び2d及び2eの各部材間の位置合わせを行った後、本発明の第1の実施例と同様に、陽極接合法によりSi−ガラス間の接合を行い、各部材を一体化した。ここで得られたインクジェットヘッドは、同一Si面上ではノズル間隔(ピッチ)は1296ミクロンであるが、4つのノズル列を1/4ピッチずつずれた形で積層してあるため、ピッチは324ミクロン相当となる。
【0038】最後に、得られた接合体をダイシングにより切断し、インクジェットヘッドを得る。以上記したように、両側の面にノズル等を形成したSi基板を2枚積層することにより、さらに高密度のインクジェットヘッドが得られた。
【0039】又、上記の構成に対し、さらにSi基板とガラスとを積層し、ノズル列の数を6、8、・・・・と増加させた構造の形成により、さらなる高密度化が容易に達成できる。
【0040】(実施例3)以下、本発明の第3の実施例に基づき詳細に説明する。
【0041】図6は、本発明の第3の実施例におけるインクジェットヘッドの構造を分解して示す斜視図であり、一部断面を示してある。
【0042】図6に示すように、本実施例のインクジェットヘッドは、ノズル4i・4h、圧力室5i・5h、振動板6i・6h等がアルカリ異方性エッチングにより形成されたSi基板1cと、電極11i・11h(図示しない)、ギャップ部を形成するためのSiO2 スペーサ23i・23h等が形成されたSi基板24・30とを積層・接合してなる構造を有する。図6に示したSi基板1cは、本発明の第1の実施例の場合と同一の製造方法により製造されるので、製造工程の説明は省略する。
【0043】Si基板24の製造工程を図7に示す。Si基板24と30とは、基本的に同一の工程で製造されるので、Si基板30の製造工程については省略する。
【0044】まず、(100)面方位のn型Si基板24の表側の面(図7では上側)を鏡面研磨し、該Si基板24にO2 及び水蒸気雰囲気中で摂氏1100度にて所定時間の熱酸化処理を施し、該Si基板24の両面にSiO2 膜25a及び25bを形成する(図7(a))。
【0045】次いで、前記SiO2 膜25a上に、電極11iの形状に相当するフォトレジストパターン26a(図示しない)を形成し、フッ酸系エッチング液にて前記SiO2 膜25aの露出部分をエッチング除去し、フォトレジストパターン26aを除去する(図7(b))。
【0046】次に、Si基板24の露出部分27へのB(ホウ素)ドープを行う。処理方法は、以下の通りである。前記Si基板24を石英管中に石英ホルダにて固定し、N2 をキャリアとしてBBr3 をバブリングした蒸気をO2 と共に該石英管中に導入する。摂氏1100度にて所定時間処理を行った後、前記Si基板24をフッ酸系エッチング液にてライトエッチングし、次いで、O2 中でドライブインを行い、前記露出したSi部27をp型層28とした(図7(c))。前記p型層は、図6における電極11iとして機能するものである。前記の図7(c)工程においては、前記Si基板24の両面のSiO2 膜25a及び25bの膜厚が増加するが、本実施例では、該SiO2 膜25aを図6における振動板6iと電極11iとの間隔を正確に規定するためのスペーサ23iとして用いるために、p型層28(電極11i)の形状に相当するフォトレジストパターン29(図示しない)を形成し、フッ酸系エッチング液にてSiO2 膜25aの露出部分をエッチング除去し(図7(d))、図6に示したSi基板24が形成される。
【0047】本実施例のインクジェットヘッドにおいては、本発明の第1の実施例の場合と同様に、振動板6iと電極11iの間隔の寸法は、該インクジェットヘッドのインク吐出特性上から0.50ミクロンと決定されており、図7(c)工程においては、前記SiO2 膜25aの厚みが0.50ミクロンとなるようプロセスが行われた。
【0048】上記の工程により形成された図6におけるSi基板24及び同一の工程で製造されたSi基板30とSi基板1cとは、Si−Si直接接合法により接合される。接合工程は以下の通りである。
【0049】まず、Si基板1c、24、30を硫酸と過酸化水素水の混合液(摂氏100度)にて洗浄し、乾燥後、前記Si基板1c及び24と30の対応するパターン同士の位置合わせを行った後、3枚の基板を重ね合わせる。一体化したSi基板1c、24、30をN2 雰囲気中で摂氏1100度、1時間の熱処理を行い、強固な接合状態を得る。
【0050】最後に、得られた接合体をダイシングにより切断し、インクジェットヘッドを得る。
【0051】以上記したように、本実施例でも本発明の第1の実施例の場合と同様、高密度であるインクジェットヘッドが得られた。
【0052】又、本発明の第2の実施例の場合と同様に、本実施例における両側の面にノズル等を形成したSi基板と、両側の面の所定位置に電極が形成されたSi基板とを交互に積層することにより、さらに高密度なインクジェットヘッドを容易に製造することができる。
【0053】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は以下のような効果を有する。
【0054】Si単結晶基板の両側の面に、ノズル・キャビティ等を等間隔で、又、一方の面に形成されるノズルと他方の面に形成されるノズルは、前記Si単結晶基板の端面において千鳥状の位置関係に配置されることにより、高密度のインクジェットヘッドが得られるという効果を有する。又、上記の両側の面にノズル・キャビティが形成されたSi基板を複数枚、各々のノズルが互いに最適な配置となるよう、積層・組立することにより、さらに高密度なインクジェットヘッドが得られるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例におけるインクジェットヘッドの構造を分解して示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるインクジェットヘッドの製造工程図である。
【図3】本発明の第1の実施例におけるインクジェットヘッドの各部寸法の関係を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施例におけるインクジェットヘッドの接合方法を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例におけるインクジェットヘッドの構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例におけるインクジェットヘッドの構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例におけるインクジェットヘッドの製造工程図である。
【図8】本発明の第1及び第2及び第3の実施例におけるインクジェットヘッドの振動板とキャビティの寸法関係を示す図である。
【図9】本発明の第1及び第2及び第3の実施例におけるインクジェットヘッドのキャビティの位置関係を示す断面図である。
【符号の説明】
1 Si基板
2a,2b ガラス基板
4a,4b ノズル
5a,5b キャビティ
6a,6b 振動板
7 インク室
8a,8b インク供給路
11a,11b 電極
12a,12b 溝
13 穴
14a,14b 発振回路
15a,15b SiO2
16a,16b フォトレジストパターン
17 壁
18 (111)面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インク滴を吐出するための複数のノズルと、該ノズルのそれぞれに連通する圧力室と、該圧力室の少なくとも一方の壁を構成する振動板と、該圧力室にインクを供給する共通のインク室と、該振動板に変形を生じさせる駆動手段とを備え、前記駆動手段が前記振動板を静電気力により変形させる電極からなるインクジェットヘッドにおいて、(100)面方位のSi単結晶基板を構成部材とし、該Si単結晶基板の一方の面と他方の面のそれぞれに複数個の前記ノズルが等間隔に形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】 前記一方の面及び他方の面に形成された前記ノズルが、前記Si単結晶基板の所定位置を切断して生じる端面において、千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】 前記端面の長手方向に仮想した座標軸において、前記他方の面に形成されるノズルの座標値と、該ノズルに最も近接して前記一方の面に形成されるノズルの座標値との差が、ノズル間隔を単位長として、0.5であることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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