説明

インクジェット印刷用段ボールライナ、及びこれを用いた段ボール

【課題】紙粉に起因する問題が極めて起こり難いインクジェット印刷用段ボールライナ、及び段ボールを提供することを目的とする。
【解決手段】ライナ原紙の表面に、顔料と接着剤とインク定着剤の三成分を少なくとも含有するインク受容層を設けてなり、下記条件の印刷適性試験を行なった際に、該インク受容層に剥がれが生じないことを特徴とするインクジェット印刷用段ボールライナ。
〔印刷適性試験〕
プリューフバウ印刷適性試験機を使用し、インクとしてインク強度T−13のマゼンタインクを用い、インク量0.5g、ロール圧40kg、ブランケット硬度40°、印刷速度1.0m/sの条件で、インク受容層面に印刷を行い、白抜けを評価。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用段ボールライナ、及びこれを用いた段ボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映画館の等身大ポスター等は、オフセット印刷やインクジェット印刷を施した印刷紙を段ボールに手作業で貼合し、これを裁断することで制作されている。しかしながら、貼合時に皺が発生しやすいため、歩留まりが悪くコスト高となっている。
かかる背景下、直接インクジェット印刷が出来る段ボールとして、一般的なインク受容層を設けた段ボールが開示されている(特許文献1等)。
【特許文献1】特開2001−88434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術は、単にインクジェット記録紙の技術を段ボールに転用したに過ぎず、段ボール独自の製造工程を考慮したものではないために性能上問題があり、インクジェット印刷用段ボールとして実用化するには不充分である。
段ボールは、中芯とライナとを接着剤等を介して貼合する処理、すなわちコルゲータ処理を経て製造されが、インクジェット印刷用段ボールは、その工程でライナのインク受容層が過酷な熱圧条件に曝され、そのために顔料成分を主成分とするインク受容層に割れや剥離が生じやすく、紙粉となりやすい。特に、コルゲータ処理が複数回実施される両面段ボールや複数段の段ボールの場合、インク受容層からの紙粉はより深刻な問題となる。
また、インクジェット印刷用段ボールは、通常大型インクジェットプリンターで印刷される前に、断裁処理されることが多く、この断裁工程でもコルゲータ処理時と同様な部分的インク受容層の剥がれ落ちや紙粉発生が起こりやすい。
上記先行技術の段ボールは、インクジェット印刷時のインク乾燥性に重点を置いたものであるため、コルゲータ処理や断裁処理で極めて紙粉が発生しやすく、インクジェット印刷で紙粉部分に印刷ができない色抜けを生じたり、プリンタのノズルに紙粉が付着して、目詰まりや汚れを発生するという問題がある。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、紙粉に起因する問題が極めて起こり難いインクジェット印刷用段ボールライナ、及び段ボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、インク受容層の表面強度を一定以上に設定することによって、この問題が解決出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、(1)ライナ原紙の表面に、顔料と接着剤とインク定着剤の三成分を少なくとも含有するインク受容層を設けてなり、下記条件の印刷適性試験を行なった際に、該インク受容層に剥がれが生じないことを特徴とするインクジェット印刷用段ボールライナである。
〔印刷適性試験〕
プリューフバウ印刷適性試験機を使用し、インクとしてインク強度T−13のマゼンタインクを用い、インク量0.5g、ロール圧40kg、ブランケット硬度40°、印刷速度1.0m/sの条件で、インク受容層面に印刷を行い、白抜けを評価。
印刷速度2.0m/sの条件で印刷適性試験を行なった際に、インク受容層の剥がれが生じないことがより好ましい。
【0007】
(2)インク受容層が、顔料100質量部に対し接着剤12〜80質量部含有する(1)記載のインクジェット印刷用段ボールライナである。
(3)前記インク受容層の塗工量が、3〜18g/mである(1)又は(2)に記載のインクジェット印刷用段ボールライナである。
(4)接着剤として、シラノール変性ポリビニルアルコールを含有する(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェット印刷用段ボールライナである。
(5)インク受容層に架橋剤を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載のインクジェット印刷用段ボールライナである。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のインクジェット印刷用段ボールライナを、少なくとも一方の最外面に備えたことを特徴とするインクジェット印刷用段ボールである。
【0008】
(7)ライナ原紙の表面に、顔料と接着剤とインク定着剤の三成分を少なくとも含有するインク受容層を設けてなり、また、下記条件の印刷適性試験を行なった際に、該インク受容層に剥がれが生じないインクジェット印刷用段ボールライナを用いたことを特徴とするインクジェット印刷用段ボールの製造方法である。
〔印刷適性試験〕
プリューフバウ印刷適性試験機を使用し、インクとしてインク強度T−13のマゼンタインクを用い、インク量0.5g、ロール圧40kg、ブランケット硬度40°、印刷速度1.0m/sの条件で、インク受容層面に印刷を行い、白抜けを評価。
印刷速度2.0m/sの条件で印刷適性試験を行なった際に、インク受容層の剥がれが生じないことがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の段ボールライナは、インク受容層の層間強度が強く、インク受容層のライナ原紙への密着性が良好であるので、段ボール製造の際のコルゲータ処理や断裁加工の際に紙粉が発生せず、段ボールの印刷品質及び印刷工程上のトラブルなく良好に印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ライナ原紙の表面に、顔料と接着剤とインク定着剤の三成分を少なくとも含有するインク受容層を設けてなり、下記条件の印刷適性試験を行なった際に、該インク受容層に剥がれが生じないことを特徴とする。
【0011】
(印刷適性試験)
試験は、プリューフバウ印刷適性試験機を使用し、インクとしてインク強度T−13のマゼンタインクを採用する。インク量0.5g、ロール圧40kg、ブランケット硬度40°、印刷速度1.0m/sの条件に調製し、段ボールライナのインク受容層面に印刷を行い、白抜けを評価。
【0012】
インク受容層の剥がれは、印刷面を直接観察し判定してもよいが、微細な剥がれを見逃す可能性が高いので、印刷後の試験機に、上質紙を通紙し、残インクを上質紙に転写させたものを観察する方法を採用することがより好ましい。この場合、剥がれて印刷ロールに付着したインク受容層成分が、着色された上質紙に白抜け状態で現れるが、その着色部の中央部の2cm×2cmの領域に直径3mm以上の円と同等の面積の白抜けがあれば剥離ありと判定する。また、直径3mmの円に満たなくても、直径1mm以上の円と同等の面積を有する白抜けが10個以上あれば剥離ありと判定する。なお、着色部の端部では、着色ムラのために正確な判定が出来ないので、判定に適さない。本発明では、この印刷適性試験で剥離なしと判断したライナを使用する。
【0013】
なお、上記印刷適性試験で、印刷速度を2m/sの条件で行なった場合でも剥がれのない段ボールライナがより好ましい。印刷速度を速めた、より剥離の生じやすい過酷な条件に耐えた段ボールライナは、より紙分が発生し難い。
【0014】
「段ボールライナ」
本発明の段ボールライナは、ライナ原紙の一方の表面にインク受容層が形成されたものである。
【0015】
(ライナ原紙)
ライナ原紙としては、例えばセミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラインドパルプ(CGP)、晒しクラフトパルプ、未晒しクラフトパルプ、脱墨古紙パルプ、合成繊維等を原料パルプとする、クラフトライナ、ジュートライナ、白板紙等、一般の段ボールに使用されているものを好ましいものとして挙げることが出来るが、本発明におけるライナ原紙はこれに限定されるものではなく、例えば上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、箔紙、クラフト紙、バライタ紙、含浸紙、蒸着紙などの他の紙類も適用できる。
ライナ原紙は積層紙であっても良いが、美麗な印刷物を得るためには、少なくともインク受容層側の面が、晒しクラフトパルプを20質量%以上含む白色度70%以上の紙からなることが好ましい。尚、積層紙は、層間に合成樹脂接着剤層を有するタイプでもよい。
【0016】
ライナ原紙の吸水度も重要で、インク受容層側のJIS P 8140に準拠して測定される吸水度(水との接触時間2分)が25g/m以上、さらには30g/m以上、特に35g/m以上であることが好ましい。印刷のインク量が比較的多い高濃度印刷や写真調印刷等では、インク受容層だけではインク吸収が不充分となり、にじみを生じるが、吸収性のよいライナ原紙は、インク受容層で吸収しきれなかったインクを素早く吸収できるので、にじみを生じない。
しかし、ライナ原紙のインク受容層側の吸水度が高すぎると、印刷時にコックリングを発生する恐れがあるので、吸水度は65g/m以下、特に60g/m以下が好ましい。
【0017】
ライナ原紙の吸水度は、ライナ原紙の原料組成(パルプ、填料、サイズ剤等の種類や配合量)や叩解度、各種添加剤の使用(紙力増強剤、濡れ剤、耐水化剤、撥水剤、耐油剤等)等によって調整できる。
【0018】
(インク受容層)
顔料と接着剤とインク定着剤の三成分を少なくとも含有するインク受容層は、単層又は複数層設けることができる。なお、インク受容層を複数設ける場合、各層の組成は同一でも非同一でも構わない。
【0019】
<顔料>
顔料としては特に制限はなく、インクジェット記録紙に使用されているものが使用できる。その具体例としては、シリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、擬ベーマイト、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料や、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の有機顔料が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
例示した中でも、発色性及びインク吸収性の点から、シリカ、アルミナ、擬べーマイト、軽質炭酸カルシウム、ゼオライト等、特にシリカ、アルミナ、擬べーマイト等が好ましく用いられる。中でも、シリカ、特に非晶質シリカが好ましく用いられる。シリカの製法は特に限定されず、電弧法、乾式法、湿式法(沈殿法、ゲル法)等、いかなる製法で製造されたものであっても良い。
顔料の形態は特に限定されず、球状でも不定形状でも良く、無孔質でも多孔質でも良い。
【0020】
<接着剤>
接着剤としては特に限定するものではなく、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系樹脂、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の重合体または共重合体であるアクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂等、一般にインクジェット記録用として用いられている従来公知の接着剤が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、併用しても構わない。
【0021】
これら接着剤の中でも、ポリビニルアルコールおよびその誘導体は、インクジェット印刷適性に優れるので好ましく、特にシラノール変性ポリビニルアルコールが顔料との接着性が良好であるので好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度は特に制限はないが、粘度安定性や塗膜強度の点で、400〜6500、特に500〜5000が好ましい。
また、接着剤の配合量は、顔料100質量部に対して、12〜80質量部、特に14〜50質量部が好ましい。接着剤の配合量が下限未満では充分な塗膜強度が得られない恐れがあり、上限超ではインク吸収性が不充分となる恐れがある。
【0022】
(インク定着剤)
インク定着剤は、印刷の発色性や保存性を向上するために配合される成分である。インク定着剤としては特に制限はないが、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、2)第2級又は第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、4)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体等のジシアン系カチオン樹脂、5)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合物等のポリアミン系カチオン樹脂、6)ジメチルアミン−エピクロルヒドリン共重合物、7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO共重合物、8)ジアリルアミン塩−SO共重合物、9)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、10)アリルアミン塩の重合物、11)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合物、12)アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物、13)ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム等のアルミニウム塩等を1種又は2種以上用いることができる。中でも、ジシアン系カチオン樹脂、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物等が発色性が良く、好ましく用いられる。
【0023】
インク定着剤の配合量は特に制限はないが、顔料100質量部に対して3〜60質量部、特に5〜50質量部が好ましい。インク定着剤量が下限未満では、これを配合する効果(発色性や保存性の向上効果)の発現が弱く、上限超では、インク吸収性の低下や、印刷ムラ、印刷の鮮明性の低下等を招く恐れがある。
【0024】
(架橋剤)
架橋剤は、接着剤を架橋して、インク受容層の層間強度やインク受容層とライナの間の密着性を高める効果があり、例えば、ホウ素化合物、エポキシ化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等などが例示できる。なお、架橋剤は、インク受容層の塗工液に配合できるが、予め、ライナ原紙に塗布しておくこともできる。
【0025】
(その他の成分)
インク受容層には、上記成分の他に、一般のインクジェット記録紙に使用される各種添加剤、例えば、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、着色剤、蛍光染料、帯電防止剤、耐光性助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤等を必要に応じて添加することができる。
【0026】
インク受容層は、通常構成成分を混合してインク受容層用組成物を調製し、これをライナ原紙上に塗工し乾燥することで形成される。塗工方法は特に制限はないが、ブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータ等の公知の各種塗工装置にて実施することができる。また、マシンカレンダ、スーパーカレンダ、ソフトカレンダ等のカレンダを用いて仕上げ処理を行っても良い。
【0027】
インク受容層の塗工量(複数設ける場合は総塗工量)は特に限定されないが、3〜18g/m、特に5〜13g/mであることが好ましい。インク受容層の塗工量が下限未満ではインク吸収性が不充分となる恐れがある。上限超ではそれ以上のインク吸収性は不要であり単なるコスト増を招くだけであり、さらにはインク受容層の塗膜強度が弱くなり、紙粉が発生する恐れもある。
【0028】
本発明の段ボールライナは、ライナ原紙とインク受容層とを必須とするものであるが、必要に応じてその他の層を設けることは差し支えない。
例えば、ライナ原紙の白色度や色味等を調整し、下地の白色度を高めること等を目的とし、ライナ原紙とインク受容層との間に、顔料と接着剤を含み、インク定着剤を含まない単層又は複数層の下地層を設けることができる。なお、下地層を複数設ける場合、各層の組成は同一でも非同一でも構わない。
【0029】
下地層に用いる顔料及び接着剤としては、インク受容層と同様のものが使用できる。
なお、下地層にも、インク受容層と同様、各種公知の添加剤を配合することができる。
下地層の塗工量(複数設ける場合は総塗工量)は特に限定されないが、0.5〜30g/m、特に1〜20g/mが好ましい。下限未満では、下地層を設ける効果、すなわち下地の白色度向上、及びこれに伴う印刷の鮮明性向上等の効果が顕著に発現せず、上限超では、塗膜強度が低下する恐れがある。
【0030】
本発明では、下記条件の印刷適性試験を行なった際に、該インク受容層に剥がれを生じない段ボールライナが用いられる。
〔印刷適性試験〕
プリューフバウ印刷適性試験機を使用し、インクとしてインク強度T−13のマゼンタインクを用い、インク量0.5g、ロール圧40kg、ブランケット硬度40°、印刷速度1.0m/sの条件で、インク受容層面に印刷を行い、白抜けを評価。
更に好ましいものとしては、印刷速度2.0m/sの条件で印刷適性試験を行なった際に、インク受容層に剥がれが生じないものが挙げられる。
【0031】
本発明の段ボールライナのインク受容層上には、更にコロイダルシリカ、アルミナ、擬ベーマイト、乾式法シリカ等を含む光沢層を設けることもできる。その場合、上記条件の印刷適性試験を行なった際に、該光沢層(或いは該インク受容層と該光沢層)に剥がれを生じない段ボールライナが用いられる。
【0032】
「段ボール」
本発明の段ボールは、本発明の上記段ボールライナを少なくとも一方の最外面に備えていればよい。即ち、直接インクジェット印刷を施す面に、本発明の上記段ボールライナを有していれば、所期の目的を達成できるので、インクジェット印刷を施さない面に対しては、本発明の段ボールライナを用いる必要はなく、従来のライナをそのまま用いれば良い。
段ボールとしては、中芯の片面にのみライナが貼合された片面段ボール、中芯の両面にライナが貼合された両面段ボール、中芯/ライナの積層体が複数段設けられた複数段の段ボールがあるが、本発明はいずれの段ボールにも適用可能である。
【0033】
ライナと共に段ボールを構成する波状部材の中芯としては特に制限はなく、一般の段ボールに使用されているものが使用できる。原料パルプとしては、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラインドパルプ(CGP)、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプ、未晒しクラフトパルプ、クラフトパルプ、合成繊維等が使用でき、中でも、資源保護の観点から、段ボール古紙パルプや雑誌古紙パルプ等の古紙パルプを多く用いることが好ましい。
中芯は積層紙であっても良く、さらには層間に合成樹脂接着剤層を有する積層紙であっても良い。
【0034】
本発明の段ボールは、従来公知の段ボールの製造方法をそのまま適用でき、例えば、中芯とライナとを、接着性物質を介して貼合するコルゲータ処理を経て製造することができる。接着性物質としては、澱粉糊や合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル系共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等)等が挙げられる。
【0035】
具体的には、(1)中芯又はライナの表面に、押出ラミネートや合成樹脂エマルジョンの塗布等により接着剤層を形成してから、これらを重ね合わせ、加圧及び加熱して接着する方法、(2)中芯/ライナ間に合成樹脂フィルムを介在させ、これを加圧及び加熱して接着する方法、(3)中芯/ライナ間に合成樹脂のエマルジョンや溶液等の接着剤を介在させ、これを加圧及び加熱して接着する方法等が挙げられる。
なお、(2)の方法においては、あらかじめ成形された合成樹脂フィルムを繰り出し、中芯/ライナ間に供給することもできるし、合成樹脂フィルムを溶融押出成形しながら、中芯/ライナ間に供給することもできる。
【0036】
上記コルゲータ処理を1回実施することで、片面段ボールが製造され、複数回繰り返し実施することで、両面段ボールや複数段の段ボールが製造される。
両面段ボールは、例えば、中芯とライナとを加熱加圧ロールにて貼合し片面段ボールとするシングルフェーサ(SF)と、SFで得られた片面段ボールの中芯側に更にライナを重ね、加圧しながら熱盤上を走行させ貼合するダブルフェーサ(DF)とを有するコルゲータを用いて製造することができる。製造時の好ましい加熱加圧条件としては、SFの加熱温度150〜200℃、線圧20〜40kg/cm、加圧時間0.01〜0.20秒、DFの加熱温度150〜200℃、線圧0.1〜1.0kg/cm、加圧時間2〜7秒を挙げることが出来るが、条件は特に制限されるものではない。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、もちろんこれらに限定されるものではない。また、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を示す。
【0038】
「ライナ原紙の吸水度」
水との接触時間を2分としてコッブ法(JIS P 8140)で実施した。
【0039】
「ライナの印刷適性試験」
プリューフバウ印刷適性試験機を使用し、インクとしてインク強度T−13のマゼンタインクを使用する。インク量0.5g、ロール圧40kg、ブランケット硬度40°、印刷速度1.0m/s及び2.0m/sの条件に調製し、段ボールライナのインク受容層面に印刷を行い、印刷後に、試験機に上質紙を通紙し、残インクを上質紙に転写させ、その印刷面上の白抜けを下記基準で判定した。
○:2cm×2cmの領域で直径3mm以上の円と同等の面積の白抜けはなく、且つ、直径1mm以上の円と同等の面積を有する白抜けが9個未満である。
△:2cm×2cmの領域で直径3mm以上の円と同等の面積の白抜けはないが、直径1mm以上の円と同等の面積を有する白抜けが10個以上ある。剥離物が少しある。
×:2cm×2cmの領域で直径3mm以上の円と同等の面積の白抜けがあり、且つ、直径1mm以上の円と同等の面積を有する白抜けが10個以上ある。
【0040】
実施例1
ライナ原紙(特白PC5、王子板紙社、松本工場製、吸水度48g/m)上に、下記インク受容層塗液Aを、乾燥重量で10g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、インク受容層のあるライナを得た。
【0041】
(インク受容層塗液Aの調製)
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、ファインシールX−60)100部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA145)30部、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(センカ社製、ユニセンスCP103)10部、蛍光染料(住友化学社製、ホワイテックスBPS(H))1部。(固形分濃度17%)
【0042】
実施例2
実施例1において、インク受容層塗液Aを塗布する前に、2.0%硼砂水溶液を乾燥塗工量が0.15g/mとなるように塗布し、次いでインク受容層塗液Aを塗布した以外は実施例1と同様にして、インク受容層のあるライナを得た。
【0043】
実施例3
実施例1において、下記インク受容層塗液Bを用いた以外は実施例1と同様にして、インク受容層のあるライナを得た。
(インク受容層塗液Bの調製)
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、ファインシールX−60)100部、シラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA R−1130)30部、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(センカ社製、ユニセンスCP103)10部、蛍光染料(住友化学社製、ホワイテックスBPS(H))1部。(固形分濃度17%)
【0044】
実施例4
実施例1において、下記インク受容層塗液Cを用いた以外は実施例1と同様にして、インク受容層のあるライナを得た。
(インク受容層塗液Cの調製)
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、ファインシールX−60)100部、シラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA R−1130)25部、酢酸ビニル系ラテックス(日本NSC社製、ヨドゾール CC 9)15部、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(センカ社製、ユニセンスCP103)10部、蛍光染料(住友化学社製、ホワイテックスBPS(H))1部。(固形分濃度17%)
【0045】
実施例5
実施例1において、下記インク受容層塗液Dを用いた以外は実施例1と同様にして、インク受容層のあるライナを得た。
(インク受容層塗液Dの調製)
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、ファインシールX−60)100部、シラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA R−1130)60部、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(センカ社製、ユニセンスCP103)10部、蛍光染料(住友化学社製、ホワイテックスBPS(H))1部。(固形分濃度17%)
【0046】
実施例6
実施例1において、インク受容層塗液Aの塗布量を乾燥重量で20g/mとした以外は実施例1と同様にして、インク受容層のあるライナを得た。
【0047】
比較例1
実施例1において、下記インク受容層塗液Eを用いた以外は実施例1と同様にして、インク受容層のあるライナを得た。
(インク受容層塗液Eの調製)
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、ファインシールX−60)100部、シラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA R−1130)10部、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(センカ社製、ユニセンスCP103)10部、蛍光染料(住友化学社製、ホワイテックスBPS(H))1部。(固形分濃度17%)
【0048】
比較例2
ライナ原紙にインク受容層を設けることなくライナとして用いた。
【0049】
このようにして得られたインク受容層のあるライナを以下のように評価し、その結果を表1に示す。
【0050】
〔ダンボール加工適性〕
得られたインク受容層のあるライナと一般的な中芯原紙を、インク受容層面を外側にしてシングルフェーサーによりプレスロール部温度180℃、線圧40kg/cm、加圧時間0.02秒の条件で貼合した。続いて、同様に得られたライナ原紙を外側にして、ダブルフェーサーの熱盤部で温度180℃、線圧0.3kg/cm、加圧時間5秒の条件で加熱、加圧しダンボール加工を行った。
上記プレスロール部、および熱盤部において以下のように評価した。
○:ライナ塗工面の剥がれが発生しなかった
△:ライナ塗工面にわずかに剥れが見られる。
×:ライナ塗工面に剥がれが見られる。
【0051】
[インクジェット吸収性]
ダンボール加工した各ライナをインクジェットプリンター(ミマキ社製、JV4−130、水系顔料インク)で、高精細カラーディジタル標準画像データN5 自転車(日本規格協会)を印字し、線のニジミ具合を以下のように目視評価した。
○:線にニジミが見られず、良好。
△:若干、線にニジミが見られ、使用上に制限がある。
×:線にニジミが見られ問題あり。
【0052】
[インクジェット塗工層耐水性]
各ライナの塗工層に水を滴下し、指で軽く撫でて、塗工層の剥れ具合を以下のように目視評価した。
◎:全く塗工層の剥れが見られず、良好
:若干塗工層が剥れるが、実用上問題なし。
△:少し塗工層が剥がれるが、実用上問題なし。
×:塗工層の剥れが見られ、問題あり。
【0053】
[ダンボールカット適性]
カッターナイフで切断したときの、紙粉の発生度合いを観察した。
○紙粉が殆ど発生しない。
△紙粉がわずかに発生している。
×紙粉が多量に発生している。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の段ボールライナ及び段ボールは、直接インクジェット印刷を施すことができるものであり、等身大ポスター等の用途に好ましく適用できる。
本発明の段ボールに対して、直接インクジェット印刷を施し、これを打ち抜き、必要に応じてグルー糊付け等の加工を行うことで、等身大ポスターや、インクジェット印刷が施され意匠性に優れた段ボール箱等を製造することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナ原紙の表面に、顔料と接着剤とインク定着剤の三成分を少なくとも含有するインク受容層を設けてなり、下記条件の印刷適性試験を行なった際に、該インク受容層に剥がれが生じないことを特徴とするインクジェット印刷用段ボールライナ。
〔印刷適性試験〕
プリューフバウ印刷適性試験機を使用し、インクとしてインク強度T−13のマゼンタインクを用い、インク量0.5g、ロール圧40kg、ブランケット硬度40°、印刷速度1.0m/sの条件で、インク受容層面に印刷を行い、白抜けを評価。
【請求項2】
インク受容層が、顔料100質量部に対し接着剤12〜80質量部含有する請求項1記載のインクジェット印刷用段ボールライナ。
【請求項3】
前記インク受容層の塗工量が、3〜18g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用段ボールライナ。
【請求項4】
接着剤として、シラノール変性ポリビニルアルコールを含有する請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷用段ボールライナ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の段ボールライナを、少なくとも一方の最外面に備えたことを特徴とするインクジェット印刷用段ボール。


【公開番号】特開2006−150697(P2006−150697A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343156(P2004−343156)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】