説明

インクジェット印刷用転写紙

【課題】インクジェット印刷に適した転写紙とインクを用いてインクジェットプリンタにより転写紙に印刷する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも印刷面に最高100ml/minの多孔度を持つリリースまたはバリヤの層が設けられたインクジェット印刷に適した転写紙と、転写紙を製造する方法と、昇華可能インクの分散液を用いてインクジェットプリンタにより転写紙に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
転写紙は、布(織物)や、ポリエステルでコーティングされた材料、とくにポリエステル布や、ポリエステルと他の繊維が混ざった布に印刷するために使用される。このため、一般的な印刷技術(フレキソ印刷、オフセット印刷、凹版印刷、ロータリスクリーン印刷)により、パターン、デザイン,印刷の像が紙に形成される。印刷技術に応じて、インクは希薄な流体またはペースト状である。インクまたはペーストは昇華可能な色素成分を含有している。昇華可能なインク成分は次に、転写プロセスにおいて、最終的に印刷される表面へ熱転写される。このプロセスでは、色素の転写に一般的な温度は約170℃から約210℃の範囲である。熱と圧力によってインクの色素を転写する際に、色素の一部が紙に残存することが多い。転写プロセスで昇華可能色素が紙から布に転写される程度を、転写効率という。
【0003】
転写プロセスでの非転写色素の量を低下させるために転写率(転写効率)を改善するための手段が、これまでに提案されている。これらの手段の一つは、紙の滑らかな面(つまり印刷面)に層(リリースまたはバリヤの層)を形成して、色素が基体に一層容易に転写されるようにするというものである。
【0004】
バリヤ層は、インクの色素が紙の奥まで浸透し過ぎないようにする。また、色素が層から離れやすい、または除去されやすいように紙に層を形成することもある。この場合、この種の層をリリース層という。多くの場合、リリースとバリヤの機能は同じ物質により達成できる。
【0005】
リリースまたはバリヤの層を紙に形成すると、転写印刷プロセスの後に紙に残存する色素が少なくなり、経済的である。特に水性インクの場合、カルボキシメチルセルロース等の親水性ポリマーがリリースまたはバリヤの層に適している。層の形成により、紙から最終印刷面に色素が転写される程度が上昇する。このような層の形成が色素の転写効率に与える影響は、例えば、U.Einsele博士とHerlinger教授による論文、Melliand Textilberichte 7,1987年の487〜494ページに記載されている。
【0006】
実際、このようなバリヤ層を紙の裏面(つまり印刷面でない面)に形成することは、「ゴースト作用」を防止するということで知られている。この作用はとりわけ、印刷された転写紙を保存する間に発生する。転写紙は通常、ロールで保存される。ゴースト防止用バリヤを有するような紙は一般的に、約200ml/minの多孔度を持つ。
【0007】
多孔度は、ISO規格により決定される透気度として定義される。ここでいうISO規格とは、紙の粗さを決定するためのISO規格8791−2と紙の透気度、つまり多孔度に関するISO規格5636−3である。これは、スウェーデンのKistaにあるAB Lorentzen&Wettre社のL&W Bendtsen Testerで測定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
接触印刷プロセス、特にロータリスクリーン印刷プロセスにより、紙、この場合は転写紙に印刷するときの欠点は、スクリーンやテンプレート等の印刷版を製作しなければならないことである。印刷版の製作はコストを伴う。そのコストは、少量のバッチ(短い長さ)またはサンプリングでも多量のバッチ(長い長さ)と同じほど高い。結果的に、短い長さのもの、サンプルや1回限りのデザインでも、比較的高いコストを要する。このような利用では、一般的に接触印刷プロセスの利用に費用がかかることになる。
【0009】
転写紙に印刷するのに考えられる別の方法は、非接触印刷プロセスである。このプロセスでは、インクジェットプリンタまたは別の静電技術等により、支持材料にディジタルの像が転写される。この技術は、接触印刷プロセスに対して、テンプレート、スクリーン、または他の印刷版を使用する必要がないという長所を持っている。コンピュータ制御(例えばDTP技術)が用いられると、像を転写紙に直接印刷することが可能である。
【0010】
インクジェットプリンタでの印刷に適した紙に関する出版物は、多数知られている。そのうち幾つかについて以下に述べる。例えば欧州特許出願第EP−A 0730 976号には、親水性官能基としてカルボキシ基を多く含有する水溶性色素をベースとするインクを用いて印刷するのに適したインクジェットプリンタ用の紙が開示されているが、この紙は炭酸カルシウムを含有せず、少なくとも紙の印刷面は、主成分として吸水色素と水性の結合剤とを有する。
【0011】
DE19628342には、印刷後に熱の影響で溶解して耐水性と耐光性を備える層を形成する合成層を有する、インクジェット印刷用の紙が開示されている。
【0012】
DE19604693には、色素と結合剤を含有する層から成るインクジェット印刷用の紙が記載されており、色素は概ねベントナイトから成り、結合剤は親水性結合剤または親水性結合剤と疎水性結合剤との混合物から成る。
【0013】
DE19618607には、支持材料と受色層を含むインクジェットプリンタ用の紙が開示され、受色層の上には、無機色素および/または充填剤を含む細かい多孔性の陽イオン電荷中心から構成される層が設けられている。受色層は、とくにカルボキシメチルセルロースを含んでもよい。
【0014】
DE19628341には、水性インクを用いた印刷に適した紙が開示されており、一時的支持材料には層が形成され、この層は熱可塑性合成粒子と結合剤で構成され、結合剤としてはとくにカルボキシメチルセルロース等が使用できる。
【0015】
EP770729には、水性インクを用いてインクジェット印刷を行うのに適した紙について記載され、コーティングプロセスの前に、コーティングプロセスにより生じる収縮を無くす処理を紙に施すことにより、寸法の不安定性が解消される。
【0016】
接触印刷プロセスと非接触印刷プロセスの両方に使用される昇華転写印刷用のインクは、水性でもよい。水性インクとは主な液体成分として水を含むもので、液体に色素粒子が分散されている。この種のインクでは、例えばロータリスクリーン印刷プロセスでペースト体としてインクを処理できるように、増粘剤が追加されることもある。上述したプロセスで使用できるインクは一般的に、約0.1μmの範囲の粒子サイズを持つ色素粒子を含有する。
【0017】
無接触印刷プロセス、特にインクジェット印刷で水性インクを使用する場合の欠点は、インクが水性の合成物であるため様々な色部分が混ざって、得られる色のコントラストが弱くなるということである。その結果、画像の鮮鋭度と色部分のコントラストが影響を受け、印刷プロセスの結果、品質が低下することが多い。また、色部分の均一性が悪影響を受ける。水性インクのこの欠点は、インクジェットプリンタにより周知のタイプの転写紙に印刷する場合に発生する。インクジェット印刷に特に適した紙のタイプは、とりわけ転写効率が過度に低いため、転写紙には適していない。
【0018】
接触印刷プロセスの場合のように、ペースト体となるまでインクの粘度を高めると、インクがもはや噴射されなくなるので、インクジェット印刷には適用されない。これでは、インクジェット印刷の場合におけるインクの流動に関する問題は解決できない。
【0019】
ゆえにジレンマが生じる。
【0020】
一方、接触印刷プロセスでは、インクの流動と印刷された像の不均一性はペースト状のインクにより解消できるが、印刷版を製作するコストが高くなる。
【0021】
他方、インクジェット印刷等の非接触印刷プロセスならば、印刷版を製作するコストはかからないが、この場合には、希薄流体のインクが使用されるためインクが流動する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くことに、次のようなリリースまたはバリヤの層が形成された転写紙が使用されるとジレンマが解決され、その結果上述した欠点そのものが存在しなくなる。そのリリースまたはバリヤの層とは、層が形成された紙の透気度および/または多孔度が低くなるような厚さと密度、さらに組成を持つものである。ベースとなる紙(層が形成されていない紙)の多孔度は一般的に、層が形成された紙より何倍も高い(約2000から約3000ml/min)ので、透気度は形成された層により決定される。
【0023】
ゆえに本発明は、少なくとも印刷面に最高100ml/minの多孔度を持つリリースまたはバリヤの層を備えた、インクジェット印刷に適した転写紙に関する。多孔度はISO規格5636−3にしたがって測定される。
【0024】
本発明による紙を使用すると、各色の流動が見られないかごくわずかであり、同時に色素を表面に転写する際に高い転写効率が達成できる。
【0025】
本発明はまた、最初にバリヤ材料が余分に塗布され、つぎに拭き取りナイフ(ブレードナイフ)またはローラナイフで拭き取られるコーティングプロセスにより、印刷される面にリリースまたはバリヤの層が形成される、インクジェット印刷用の転写紙を製造するための方法から成り、層は最高100ml/minの多孔度を持つ。
【0026】
このようなリリースまたはバリヤの層を上述したブレードやローラナイフ技術を用いることなく、転写ローラで塗布するという技術もある。本発明においてこの方法で層を形成するという可能性を除外するわけではないが、一般的にこの方法では、所望の特性を充分に備える紙が得られないことが発明者らの経験から分かっている。転写ローラで層が形成された紙の層の構造は通常、目が粗すぎると考えられる。すなわち、層、ひいては紙の多孔度は高すぎ、転写効率は低くなるのである。しかしよりクローズした層を設ける技術により追加層を形成すると、転写ローラにより形成された目の粗すぎるというい構造は解消できる。
【0027】
本発明はさらに、昇華可能なインクの分散液によりインクジェットプリンタで紙が印刷される時、インク中の色素の吸収が(実質的に)発生しない、またはインク中の色素の不均一な吸収が発生しない転写紙の印刷方法に関する。
【0028】
本発明はまた、インクジェットプリンタで印刷するための転写紙の使用と、さらに、リリースまたはバリヤの層を備える紙以外の支持材料、例えば好適なプラスチック膜にパターンが形成され、次に転写印刷によりパターンが印刷面(基体)に転写される、表面の印刷方法に関連する。
【0029】
フランス特許明細書第76022691号には、インクジェットプリンタで転写紙に印刷するための昇華可能な色素を含有する水性インクの組成が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ワイヤ面から見た未コーティング転写紙である。
【図2】フェルト面がコーティングされた転写紙(ゴースト防止紙)である。
【図3】フェルト面がコーティングされたインクジェット印刷用の転写紙である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態によれば、紙に形成されるのに適した層は、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン等の親水性ポリマー、またはこれらの混合物、望ましくはカルボキシメチルセルロースである。本発明の実施の形態では、約0.2から0.3の置換度(DS)を持つカルボキシメチルセルロースが使用される。
【0032】
実施の形態では、層の多孔度が最高100ml/min、望ましくは最高75ml/min、最も望ましくは0から25ml/minであるようなカルボキシメチルセルロースの層が、紙に設けられる。
【0033】
リリースまたはバリヤの層はまた、例えば、カオリン、タルカム等の充填剤を含む。この充填剤は、層の性質が悪影響を受けない限り、15重量%までの量、使用できる。また、リリースまたはバリヤの層、または充填剤や支持紙には、例えば紙の識別のため非転写色素を追加してもよい。
【0034】
層は、公知の方法、例えば拭き取りナイフやローラナイフでコーティングを設けることで形成できる。充分に厚く高密度の層を得るため、複数の層が上に重ねて形成されてもよい。層の厚さは、層が充分に高密度でクローズ状態となるようなものでなければならない。所望の多孔度を得るのに充分な厚さの層には、層に追加される充填剤があるとすれば、その充填剤に応じて、1から10g/m、望ましくは2から4g/mの乾燥重量を持つ適切な層が要求される。
【0035】
クローズ層とは、倍率が約60倍の走査電子顕微鏡により未処理の紙面に通常見られる開口の数が層により明らかに減少するような量のコーティングが施されたことを意味していると理解される。ゆえに層は、実質的にはクローズした膜を紙の上に形成する。本発明による紙の層の孔のサイズは、5から35μmの範囲である。本発明による紙に見られる単位面積あたりの孔の数は、ゴースト防止の用途でコーティングされた公知のタイプの転写紙の1mmあたり約80個とは対照的に、1mmあたり約20個である。
【0036】
これに限定されるつもりはないが、発明者らは、層の厚さと組成は水を吸収するためのものであり、層の性質と単位面積あたりの孔の数が少ないことは、分散したインク粒子が層の上部に残り、層、または層の孔に浸透しないか、またはごく限られた程度のみ浸透するという作用を与えるためのものであるとする。リリース層は、層をふさぐことなく、つまり水の吸収および/または通過を生じなくなることなく、昇華可能な色素の分散液からの水が、おそらく下の紙またはベース紙と本発明による層の間の他の層を通して比較的高速で吸収されるような構成を持つ。
【0037】
実施の形態では、リリースまたはバリヤの層は一般的に、ワイヤ面に形成される。紙のワイヤ側は概してフェルト面より滑らかである。ゆえに充分に滑らかなクローズした層を得ることがより容易であり、またクローズ層を得るのに必要な材料が少なく済む。しかしそれでも、充分に厚く滑らかなリリースまたはバリヤの層をフェルト面に形成しても同じ作用が得られないという事実は変わらない。原則的に、よりクローズした層では転写効率と像の均一性が向上すると考えられる。
【0038】
上述したように、紙のワイヤ面にバリヤ層を形成する場合の長所は、紙のワイヤ面の方が滑らかだということである。その結果、形成されたリリースまたはバリヤの層もより一定した厚さを持つことになる。一定の厚さを持つ、より均一な層は、より均一なインクからの水の吸収または移動を行い、転写印刷の品質を高める。ワイヤ面にリリースまたはバリヤの層を形成する別の長所は、通常、紙に見られる凹凸があまり影響しないということである。このような凹凸が、形成された層ではカバーできない、または低い程度しかカバーできないようなサイズを持つ際には、層、ひいては紙の多孔度が局所的に高くなる。局所的にこのような状態になると、インクは塗布時にこの箇所で紙の繊維に吸収される。この不均一な吸収は転写効率の低下だけでなく、紙から表面への昇華可能色素の不均一な転写に影響し、望ましくない。本発明の実施の形態では、リリースまたはバリヤの層はこの不均一な吸収を引き起こさない厚さを持つ。
【0039】
本発明の実施の形態で使用される紙は、リリースまたはバリヤの層の形成時および水性インクによる印刷時に紙が充分な強度と寸法安定性を保ち、少なくとも印刷時以外に紙にひどくしわがよるか、さもなければ寸法が不安定となることのないような組成を持つ。紙は40から120g/m、望ましくは50から100g/m、最も望ましくは60から80g/mの重量を持つ。
【0040】
インクジェットプリンタにより写真品質の像を印刷するための紙は、公知である。これは一般的に、比較的重い品質(約250g/m)を持ち、通常の条件下では写真品質の印刷が可能である。この紙は寸法安定性に関してきわめて高い要求を受ける。この種の紙は、300%の負荷に耐えなければならない、つまり最大色密度/彩度で3色が重ねて印刷されるのである。この紙はまた、フォトインクジェット紙として知られる。フォトインクジェット紙に本発明によるリリースまたはバリヤの層が形成されると、紙の寸法安定性が保持されるうえ、高負荷にも耐えられる。この紙はまた、高い転写効率が保持されるうえ、昇華可能色素の流動を引き起こさない。
【0041】
このように一実施の形態において本発明はまた、インクジェットプリンタによる印刷に適し、単一または複数のコーティングを持つベースから製造され、本発明による(上)層、望ましくはカルボキシメチルセルロース層を備えた紙に関連する。
【0042】
別の実施の形態では、本発明による紙は、昇華可能な色素の分散液を含む水性インクを用いたインクジェットプリンタによる紙の印刷時に、インクの流動が実質的に発生しないようなものである。
【0043】
インクジェット印刷用の転写紙を製造する方法では、リリースまたはバリヤの層がベース紙、望ましくはワイヤ面に形成され、約10から25重量%の粘性ゲル状態のカルボキシメチルセルロースの水溶液が最初にコーティングプロセスにより余分に塗布され、続いて拭き取りナイフ(ブレードナイフ)で拭き取られ、通常の方法で乾燥される。
【0044】
充分に滑らかなクローズした層を得るのに拭き取り技術(ローラナイフや拭き取りナイフ等)では不十分な際には、すでに層が形成された紙に追加処理を施すことが可能である。この追加処理では、例えばロータリスクリーン印刷により追加層が小さな点で形成される。これらの点がその後混ざって膜を形成する。このようにして、拭き取りナイフによる塗布プロセスで生じうる拭き取りストライプが被覆される、および/または埋められる。
【0045】
転写紙に印刷する方法を詳しく述べると、昇華可能な色素の分散液がインクジェットプリンタにより塗布され、塗布後にインクの流動は、たとえあったとしてもほとんど見られない。これは、画素の強度の混合が発生せず、適切な鮮鋭度と適切な色の均一性を持つ像が得られることを意味している。
【0046】
本発明の一実施の形態では、コーティング層へインクジェットプリンタにより印刷した後に転写効率がかなり向上する転写紙が得られる。平均して、本発明による層を備えた紙は、平均65%の転写効率を持つロータリスクリーン印刷によって印刷された従来の転写紙と比較して、80%を越える非常に高い転写効率を示す。
【0047】
この方法はまた、インクジェットプリンタを用いて、本発明によるリリースまたはバリヤの層が設けられた好適なプラスチックフィルム等、紙以外の支持材料の印刷に使用でき、インクジェットプリンタは昇華可能色素の分散液を材料に塗布し、色素は転写印刷により表面に転写される。
【0048】
最終的に像が転写される表面は、例えば、ポリエステル層等の層が設けられた石、木、金属、または別の材料でもよい。好適な支持材料と印刷面と層の条件は、転写印刷に一般的な温度に対する耐性を持ち、形状と寸法を保つことである。昇華可能インクについては、表面とインクの組成に基づいて、約170から210℃の範囲の転写温度が使用される。これは、支持材料と表面の製作材料がフィルム材料または他のプラスチックであるとき、これらの材料の処理温度は転写温度を上回らなければならないことを意味している。
【0049】
上記の実施の形態では、単数または複数のコーティングが設けられたベースや膜で構成される、写真品質のインクジェット紙等、従来の転写紙以外のベース材料がインクジェット印刷に使用される。これらの材料は、それ自体すでに多孔度が低いか非常に低い。本発明による層がこのことにも関係するということを以下に説明する。
【0050】
本発明による層が形成された写真品質のインクジェット紙等、別のベース材料について、転写効率は決定される。この転写効率を、本発明によるCMC層が設けられた上述したベース紙で得られる転写効率と比較する。これらの転写効率が対応する時、二つの層の多孔度もまた対応していると推定される。
【0051】
図1から図3では、リリースまたはバリヤの層の効果が分かる。顕微鏡写真はすべて、倍率が60倍の走査電子顕微鏡で撮影されたものである。
【0052】
以下、本発明の幾つかの実施例を示す。
例:

*内部パネルによる視覚的評価方法,評価範囲+ + +/+ + /+/±/−/− −/− − −。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも印刷される面にリリースまたはバリヤの層が設けられ、該層が最高100ml/minの多孔度を持つ、インクジェット印刷に適した転写紙。
【請求項2】
前記リリースまたはバリヤの層がワイヤ面に形成される、請求項1に記載の転写紙。
【請求項3】
前記多孔度が最高75ml/minである、請求項1または2に記載の転写紙。
【請求項4】
前記多孔度が0から25ml/minである、請求項1から3のいずれか一つに記載の転写紙。
【請求項5】
前記リリースまたはバリヤの層がポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、またはこれらの混合物をベースとする、請求項1から4のいずれか一つに記載の転写紙。
【請求項6】
前記リリースまたはバリヤの層がカルボキシメチルセルロースをベースとする、請求項5に記載の転写紙。
【請求項7】
前記リリースまたはバリヤの層が充填剤を15%まで含有できる、請求項1から6のいずれか一つに記載の転写紙。
【請求項8】
前記充填剤がカオリンまたはタルカムである、請求項7に記載の転写紙。
【請求項9】
前記リリースまたはバリヤの層または前記紙に転写不可能な色素が追加される、請求項1から8のいずれか一つに記載の転写紙。
【請求項10】
昇華可能な色素が分散された水性インクを用いてインクジェットプリンタにより前記紙の印刷を行う際に、該インクの流動が実質的に発生しない、請求項1から9のいずれか一つに記載の転写紙。
【請求項11】
前記紙が写真品質のものである、請求項1から10のいずれか一つに記載の転写紙。
【請求項12】
前記紙が単数または複数のコーティングが施されたベースを持つ、請求項11に記載の転写紙。
【請求項13】
最初に前記バリヤ材料が余分に塗布され、続いて拭き取りナイフ(ブレードナイフ)またはローラーナイフにより拭き取られるコーティングプロセスにより、印刷面にリリースまたはバリヤの層が形成され、該層が最高100ml/minの多孔度を得る、請求項1から12のいずれか一つに記載のインクジェット印刷用転写紙を製造するための方法。
【請求項14】
前記層が、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、またはこれらの混合物をベースとし、任意の充填剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記層がカルボキシメチルセルロースをベースとする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
昇華可能インクの分散液を用いてインクジェットプリンタにより前記紙を印刷する際に、該インクの流動および/または不均一な吸収が実質的に発生しない、請求項1から12のいずれか一つに記載の転写紙を印刷するための方法。
【請求項17】
インクジェットプリンタにより印刷するための、請求項1から12のいずれか一つに記載の転写紙の使用。
【請求項18】
多孔度が最高100ml/minのリリースまたはバリヤの層を備える紙以外の支持材料に、インクジェットプリンタによりパターンが設けられ、該パターンが続いて転写により前記表面に設けられる、表面に印刷する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262563(P2009−262563A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127713(P2009−127713)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【分割の表示】特願2007−177700(P2007−177700)の分割
【原出願日】平成11年7月28日(1999.7.28)
【出願人】(501038632)
【Fターム(参考)】