説明

インクジェット用画像材料の製造方法

【課題】インクジェット用画像材料において、光沢、平滑性を高くすること。
【解決手段】基紙上の少なくとも一方の表面に、ポリオレフィン系樹脂を主成分とした樹脂層を基紙上に溶融押出し法により設け、かかるポリオレフィン樹脂の融点が100〜165℃の範囲であり、かかる樹脂層上に、シリカあるいはアルミナを主成分とする画像記録層を設け、リウェット法により、かかる画像記録層をキャスト処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂を主成分とする樹脂組成物を紙、フィルム等の基材に溶融塗布した支持体に、多孔質顔料を主成分とするインクジェット受像層を設けたインクジェット用画像材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂を基紙に塗布した高平滑なポリオレフィン樹脂被覆紙は、今日では多くの分野で用いられている。例えば、ポリオレフィン樹脂被覆紙は、インクジェット記録紙の他、写真印画紙、印刷用紙、印刷製版材料、感熱紙、感圧紙、磁気記録紙、電子写真記録紙等の各分野における支持体として用いられており、それぞれの用途に応じて、記録層の塗布や表面処理が行われることが多い。
【0003】
インクジェット方式は、受像紙に、インクジェットノズルで微細なインクを転写し、画像形成を行うものである。受像紙は、インクの転写および定着を考慮して、受容容量を大きく、かつ、光散乱による画像の鮮鋭度低下や色相悪化を防止するために微細な空隙を持つマイクロポーラス構造の記録層を設ける場合が多い。かような構造は、特に、ポリオレフィン樹脂被覆紙のごとく、インクの吸収性のない支持体を用いた場合には、特に重要な特性である。また、かかる構造を達成するために、気相法による合成シリカ微粒子を用いる方法(例えば、特許文献1)や、アルミナあるいはアルミナ水和物を用いる方法(例えば、特許文献2)がある。いずれも、一次粒子の平均粒径が数十nm以下の超微粒子であり、高い光沢と高いインク吸収性が得られるという特徴がある。しかし、ポリオレフィン樹脂被覆紙を溶融樹脂によるラミネート法で得る場合、高温の樹脂を短時間で冷却・凝固させるため、樹脂層内部に、構造的に応力が蓄積される。経時において、残留応力の緩和により、分子の再配列が起こり、樹脂層の表面平滑性、平坦性が失われ、インクジェット受像層の塗布後の平滑性や光沢を低下させる問題がある。
【0004】
高い光沢を得るその他の方法として、キャスト法により、インクジェット受像層を処理する方法がある。キャスト法ではいくつかの処理法があり、リウェット法(例えば、特許文献3)や直接法(例えば、特許文献4)、凝固法(例えば、特許文献5)などによる処理がある。これらの方法は、天然パルプを主成分とする紙を基紙とし、インクジェット受像層を設け、キャスト処理を行うため、パルプ繊維の熱あるいは水分による再配列の影響や、パルプ本来の繊維形状により、インクジェット受像層において、満足できる平滑性や光沢を得ることが難しいのが現実であった。
【特許文献1】特開平10−81064号公報
【特許文献2】特開平6−199034号公報
【特許文献3】特開2000−141868号公報
【特許文献4】特開平7−117335号公報
【特許文献5】特開2002−248850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い平滑性と光沢を持つインクジェット用画像材料を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基紙上の少なくとも一方の表面に、ポリオレフィン系樹脂を主成分とした樹脂層を基紙上に溶融押出し法により設け、かかるポリオレフィン樹脂の融点が100〜165℃の範囲であり、かかる樹脂層上に、シリカあるいはアルミナを主成分とする画像記録層を設け、リウェット法により、かかる画像記録層をキャスト処理することを特徴とするインクジェット用画像材料の製造方法により、目的が達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインクジェット用画像材料を用いることにより、平滑性に優れ、また、光沢感の高い高品位なインクジェット出力画像を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、基紙上の表面にポリオレフィン系樹脂を主成分とした樹脂層を基紙上に溶融押出し法により設け、かかるポリオレフィン樹脂の融点が100〜165℃の範囲であり、かかる樹脂層上に、シリカあるいはアルミナを主成分とする画像記録層を設け、リウェット法により、かかる画像記録層をキャスト処理することにより、高い平滑性、光沢が得られることが判明した。
【0009】
ポリオレフィン樹脂の融点を100〜165℃の範囲のものを選択する理由を以下の述べる。本発明は、ポリオレフィン樹脂層上に設けられた画像記録層をリウェット法により処理を行うが、リウェットに用いる溶媒は主成分が水であり、常圧での沸点は100℃である。画像記録層は、溶媒の吸収容量が大きく、水の蒸発潜熱の大きさも奏して、キャスト処理時に、画像記録層に接するキャストドラムが任意の温度であっても、長時間100℃で保持される。融点が100〜165℃のポリオレフィン樹脂は、融点以上で液状化するが、特性上、融点以下であっても、軟化状態になり、外部からの力の印加により不可逆な変形を来す。キャストロールに画像記録層が押しつけられるとき、下層のポリオレフィン樹脂層も100℃に達し、プレスロールによるニップ圧や基紙の張力によりキャストロールに押しつけされる力ににより、ポリオレフィン樹脂は変形を来たし、より高い平滑性を得ることができる。融点が100℃未満のポリオレフィン樹脂の場合、100℃に保持される時、樹脂が液状化して、平滑性が著しく低下してしまう。融点が165℃を超えるポリオレフィン樹脂の場合、100℃では、弾性構造状態にあり、不可逆的な変形を与えることができず、平滑化を達成できない。
【0010】
本発明におけるポリオレフィン樹脂としては、高圧法による低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒による低密度ポリエチレン、低圧法による高密度ポリエチレン、エチレンとプロピレン、ブチレン等のα―オレフィンとの共重合体、エチレンとアクリル酸、アクリル酸エチルエステル、無水マイレン酸等の共重合体またはグラフト共重合体である、所謂カルボキシ変性ポリエチレン樹脂等、またオートクレーブ型反応器、チューブラ型反応器等を用いた高圧ラジカル重合法によるポリエチレン系樹脂、メタロセン重合触媒を用いて重合製造したポリエチレン系樹脂、チーグラー法、フィリップス法等を用いた、メタロセン以外の金属触媒を用いて重合製造したポリエチレン系樹脂及びこれらの混合物、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンである。これら樹脂のDSC法(JIS K7121)で測定した樹脂の融点範囲は、100〜165℃の範囲であることが必須である。
【0011】
本発明における画像記録層には、シリカあるいはアルミナを主成分として含むことが必須である。インクの吸収容量を確保し、乾燥性、画像の鮮鋭性等を向上させる目的と、キャスト処理により、平滑性および光沢の向上を達成する目的の、両方を満足する顔料としては、吸収容量の大きい層を形成でき、屈折率が適度で、マイクロポーラスな構造が得られるシリカとしては、気相法シリカ、沈降性シリカが好ましく、アルミナとしては、ベーマイト、擬ベーマイト、γアルミナあるいは、これらの混合構造であることが好ましい。いずれも、分散性の向上や、光特性の変更を目的に各種の有機処理、無機処理を施すことができる。また、シリカ、アルミナ系の顔料として、コロイダルシリカ、θアルミナ、δアルミナ、αアルミナ、水酸化アルミナなどを添加することができる。その他の顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、活性白土、カオリン、タルクなどを挙げることができる。
【0012】
本発明における支持体は、天然繊維あるいは合成繊維からなる基紙上に表樹脂層用及び裏樹脂層用の樹脂組成物を溶融押し出し機を用いて、そのスリットダイからフィルム状に流延して被覆する、いわゆる溶融押し出しコーティング法によって製造される。通常は、走行する基紙上に溶融押し出し機を用いて、そのスリットダイから溶融した樹脂組成物をフィルム状に押し出し、流延して被覆し、加圧ロールと冷却ロールとの間で圧着し、冷却ロールから剥離されるという一連の工程で生産される。その際、溶融フィルムの温度は280℃及至340℃であることが好ましい。スリットダイとしては、T型ダイ、L型ダイ、フィッシュテイル型ダイのフラットダイが好ましく、スリット開口径は0.1mm乃至2mmであることが望ましい。また、樹脂組成物を基紙にコーティングする前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すのが好ましい。また、特公昭61−42254号公報に記載の如く、基紙に接する側の溶融樹脂組成物にオゾン含有ガスを吹きつけた後に走行する基紙に樹脂層を被覆しても良い。また、表、裏の樹脂層は逐次、好ましくは連続的に、押し出しコーティングされる、いわゆるタンデム押し出しコーティング方式で基紙に被覆されるのが好ましく、二層以上の多層を有する表の樹脂層は、多層押し出しコーティング方式で被覆しても良い。
【0013】
また、本発明における支持体の表、裏の樹脂層の厚さとしては、特に制限はないが、表樹脂層の厚さとしては、9μm〜60μmの範囲が有用であり、好ましくは12μm〜45μmの範囲である。裏樹脂層の厚さとしては、5μm〜60μmの範囲が有用であるが、好ましくは8μm〜40μmの範囲である。
【0014】
本発明における支持体の表、裏樹脂層中には、各種の添加剤を含有せしめることが出来る。特公昭60−3430号、特公昭63−11655号、特公平1−38291号、特公平1−38292号、特開平1−105245号等の各公報に記載もしくは例示の酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、特開平1−105245号に記載もしくは例示のヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、リン系、硫黄系等の各種酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルー系の顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガンバイオレット等のマゼンタ系の顔料や染料、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を適宜組み合わせて含有せしめることが出来る。それらの添加剤は、樹脂のマスターバッチあるいはコンパウンドとして含有せしめるのが好ましい。
【0015】
本発明におけるインクジェット用画像材料の画像形成層を設ける側のポリオレフィン系表樹脂層面には、コロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが出来る。更に、活性化処理後、特開平1−102551号公報、特開平1−166035号公報に記載もしくは例示のような下引き処理を施すことが出来る。
【0016】
本発明において、好ましく用いられる下引層のためのゼラチンとしては、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、例えば二塩基酸の無水物と反応したゼラチンなど各種のものを挙げることが出来る。また、ゼラチンと併用してポリビニルアルコール、澱粉などのその他の親水性ポリマーを用いることも出来る。
【0017】
本発明における下引層の塗設量としては特に制限はないが、ゼラチンの塗設量として、0.1質量%〜10質量%の水性塗液を1g/m2〜40g/m2塗布するのが良く、画像形成層用塗布液の液付き性及び支持体と画像形成層との接着性の改良効果の点から、固形重量で0.005g/m2〜2.0g/m2の範囲が好ましく、0.01g/m2〜1.0g/m2の範囲が一層好ましく、0.02g/m2〜0.5g/m2の範囲が特に好ましい。
【0018】
又、下引層中には、各種の添加剤を含有せしめることが出来る。防腐剤として、特開平1−102551号公報に記載もしくは例示のp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物、ベンズイソチアゾロン化合物、イソチアゾロン化合物等、界面活性剤として、アニオン系界面活性剤の他に、サポニン、アルキレンオキサイド系等のノニオン系界面活性剤、特公昭47−9303号公報、米国特許第3,589,906号等に記載のフルオロ化した界面活性剤、スルフォベタイン系両性界面活性剤、アミノ酸類、アミノアルコールのエステル類等の両性界面活性剤、硬膜剤として、活性ハロゲン化合物、ビニルスルフォン化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物、アクリロイル化合物、イソシアネート化合物等の硬膜剤の他調色剤、蛍光増白剤、マット化剤、pH調節剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0019】
下引層を表樹脂層側に設ける方法としては、走行する支持体面に樹脂層を被覆した後、巻き取るまでの間に画像形成層を設ける側の樹脂層側に、下引塗液を塗布・乾燥して下引層を設ける、いわゆるオンマシン法で行うのが好ましい。また、樹脂被覆紙を巻き取ってから、必要に応じて巻取りを貯蔵後、改めて下引層を設ける、いわゆるオフマシン法で行うこともできる。下引塗液を塗布する装置としては、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター及びそれらの組み合わせ等があげられる。下引層の塗布に際しては塗布に先立ち、樹脂面をコロナ放電処理を施すことの他に火炎処理等のその他の活性化処理を施してもよい。塗布された塗液の乾燥装置としては直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等各種乾燥装置をあげることができる。また、乾燥条件は任意であるが、一般にはドライヤの内部温度としては、40℃〜150℃で数秒〜10分で行われ、表側の樹脂層の表面温度の好ましい範囲は、45℃〜75℃の範囲である。
【0020】
本発明におけるインクジェット用画像材料の画像形成層を設ける側と反対側の裏樹脂層には、コロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施した後、帯電防止等のために各種のバックコート層を塗設することができる。また、バックコート層には、特公昭52−18020号公報、特公昭57−9059号公報、特公昭57−53940号公報、特公昭58−56859号公報、特開昭59−214849号公報、特開昭58−184144号公報等に記載もしくは例示の無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤等を適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0021】
本発明に係わるインクジェット記録材料の画像記録層中には、顔料の他に各種のバインダーを含有せしめることができる。例えば、ポリビニルアルコールおよびその変性体、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、例えばフタール酸、マレイン酸、フマール酸等の二塩基酸の無水物と反応したゼラチン等の各種のゼラチン、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジウムハライド、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸メタクリル酸共重合体塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体及びそれらの塩、ポリエチレンイミン等の合成ポリマー、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系重合体ラテックス、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系重合体または共重合体のラテックス、塩化ビニリデン系共重合体ラテックス等或はこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性接着剤及びポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニルコーポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤を挙げることができ、これらを単独或は併用して含有せしめることができる。
【0022】
本発明に係わるインクジェット記録材料の画像記録層中には、バインダーの他に各種の添加剤を含有せしめることができる。例えば、界面活性剤として、長鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、長鎖、好ましくは分枝アルキルスルフォコハク酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、長鎖、好ましくは分岐アルキル基含有フェノールのポリアルキレンオキサイドエーテル、長鎖アルキルアルコールのポリアルキレンオキサイドエーテル等のノニオン系界面活性剤、特公昭47−9303号公報、米国特許3,589,906号明細書等に記載のフルオロ化した界面活性剤など、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、ポリマーの硬膜剤として、活性ハロゲン化合物、ビニルスルフォン化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物、アクリロイル化合物、イソシアネート化合物等の硬膜剤、防腐剤として、特開平1−102551号公報に記載もしくは例示のP−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物、ベンズイソチアゾロン化合物、イソチアゾロン化合物等、特開昭63−204251号、特開平1−266537号等の各公報に記載もしくは例示の着色顔料、着色染料、蛍光増白剤など、黄変防止剤としてヒドロキシメタンスルフォン酸ソーダ、P−トルエンスルフィン酸ソーダ等、紫外線吸収剤として、ヒドロキシ−ジ−アルキルフェニル基を2位に有するベンゾトリアゾール化合物など、酸化防止剤として、特開平1−105245号公報に記載もしくは例示のポリヒンダードフェノール化合物など、鉛筆加筆剤として、澱粉粒、硫酸バリウム、二酸化珪素等の有機または無機の粒子径0.2μm〜5μmの微粒子、特公平4−1337号公報等に記載もしくは例示のオルガノポリシロキサン化合物、pH調節剤として、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸など、オクチルアルコール、シリコン系消泡剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0023】
本発明におけるキャスト処理方法の具体例を図1に示す。インクジェット用画像材料1は、グラビアロール3に搬送され、バックアップロール4とのニップでカラーパン2より溶媒が画像記録層側に供給される。プレスロール5によりキャストドラム6に画像記録側が押しつけられ、キャスト処理を行う。剥離ロール7でキャストドラム6から剥がされ、キャスト工程を終了する。キャストドラムの温度は、好ましくは100〜130℃の範囲であり、より好ましくは100〜120℃の範囲である。リウェットの溶媒の塗布方式は、図示のグラビアコータの他、リップコータ、スライドダイ、ダイレクトダイ、マイクログラビア、ボックスブレード、カーテンコータ、ロッドコータなどの各種塗布方式を用いることができる。リウェットの溶媒は、主成分は水であり、共沸沸点の出現により、100℃の水の沸点が消失しない程度であれば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を添加することができる。
【0024】
以下では、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。また添加量%は、質量%である。
【実施例1】
【0025】
木材パルプを主成分とした支持体基紙をコロナ処理後、下記組成のポリオレフィン系樹脂組成物1を裏面として溶融塗布し、続けて、裏面の反対面にポリオレフィン系樹脂組成物2を溶融塗布し、インクジェット用画像材料のラミネート基紙を得た。
ポリオレフィン系樹脂組成物1:高密度ポリエチレン(密度958kg/m3)80部、低密度ポリエチレン(密度922kg/m3)20部
ポリオレフィン系樹脂組成物2:低密度ポリエチレン(融点111℃)88部、ルチル型酸化チタン12部
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物2の調整に際しては、分散を効率よく進めるため、予め、低密度ポリエチレンを希釈樹脂として60%濃度の酸化チタンマスターバッチを作製したのち、低密度ポリエチレンと再度混合を行った。なお、支持体基紙の坪量は絶乾で150g/m2、ポリエチレン塗布量は裏面33g/m2、表層29g/m2とした。得られたインクジェット用画像材料基紙の表面にコロナ処理を行い、次に示す画像記録層液配合に調整した塗布液を18%の濃度になるように調整し、乾燥後の固形分塗布量が、28g/m2となるように、カーテンコーターを用いて塗布を行い、乾燥後、図1に示すグラビアコーター型のリウェット装置で水を塗布後、ドラム径600mmでロール温度を104℃に設定したキャストドラムでキャスト処理を行いインクジェット用画像材料を得た。
【0026】
<画像記録層液>
気相法シリカ(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g):100部
ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重縮合物 (第一工業製薬(株)製、商品名シャロールDC902P):3部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、(株)クラレ製、ケン化度88%、
平均重合度3500):25部
塩基性ポリ水酸化アルミニウム((株)理研グリーン製のピュラケムWT):3部
ほう酸:5部
両性界面活性剤(商品名:SWAM AM−2150、日本サーファクタント工業(株)製):0.3部
【実施例2】
【0027】
ポリオレフィン系樹脂組成物2の代わりに、次に示すポリオレフィン系樹脂組成物3を用いた以外は、実施例1と同じ条件で、インクジェット用画像材料を得た。
ポリオレフィン系樹脂組成物3:ランダムポリプロピレン(融点162℃)88部、ルチル型酸化チタン12部
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物3の調整に際しては、分散を効率よく進めるため、予め、ランダムポリプロピレンを希釈樹脂として60%濃度の酸化チタンマスターバッチを作製したのち、ランダムポリプロピレンと再度混合を行った。
【実施例3】
【0028】
ポリオレフィン系樹脂組成物2の代わりに、次に示すポリオレフィン系樹脂組成物4を用いた以外は、実施例1と同じ条件で、インクジェット用画像材料を得た。
ポリオレフィン系樹脂組成物4:低密度ポリエチレン(融点103℃)88部、ルチル型酸化チタン12部
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物4の調整に際しては、分散を効率よく進めるため、予め、ランダムポリプロピレンを希釈樹脂として60%濃度の酸化チタンマスターバッチを作製したのち、ランダムポリプロピレンと再度混合を行った。
【0029】
(比較例1)
ポリオレフィン系樹脂組成物2の代わりに、次に示すポリオレフィン系樹脂組成物5を用いた以外は、実施例1と同じ条件で、インクジェット用画像材料を得た。
ポリオレフィン系樹脂組成物5:ホモポリプロピレン(融点168℃)88部、ルチル型酸化チタン12部
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物5の調整に際しては、分散を効率よく進めるため、予め、ホモポリプロピレンを希釈樹脂として60%濃度の酸化チタンマスターバッチを作製したのち、ホモポリプロピレンと再度混合を行った。
【0030】
(比較例2)
ポリオレフィン系樹脂組成物2の代わりに、次に示すポリオレフィン系樹脂組成物6を用いた以外は、実施例1と同じ条件で、インクジェット用画像材料を得た。
ポリオレフィン系樹脂組成物6:メタロセン触媒型低密度ポリエチレン(融点97℃)88部、ルチル型酸化チタン12部
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物6の調整に際しては、分散を効率よく進めるため、予め、メタロセン触媒型低密度ポリエチレンを希釈樹脂として60%濃度の酸化チタンマスターバッチを作製したのち、メタロセン触媒型低密度ポリエチレンと再度混合を行った。
【0031】
(比較例3)
キャスト処理をしなかった以外は、実施例1と同じ条件で、インクジェット用画像材料を得た。
【0032】
得られた各々の画像記録材料について、下記の通り評価した。なお、インクジェット記録はセイコーエプソン(株)製PM−A900カラープリンターを用いて23℃,50%RHの条件下で行った。測定結果のまとめは、表1に示す。
【0033】
<光沢>
光沢測定装置(日本電色工業(株)製VGS−1D型 ISO 2813準拠)を用い、 白紙部の75°光沢の測定を実施した。
【0034】
<平滑性>
D65光源を用いて、平坦な板上にA4のサンプルをおき、画像部、非画像部の平坦性を目視で判定した。
記品質評価の評価基準は、次の通りである。
◎:優れている。
○:良好である。
△:実用限界内である。
×:劣る
【0035】
【表1】

【0036】
<評価のまとめ>
実施例1〜3に示すように、基紙上に設けるポリオレフィン樹脂の融点が100〜165℃の範囲であり、かかる樹脂層上に、シリカあるいはアルミナを主成分とする画像記録層を設け、リウェット法により、かかる画像記録層をキャスト処理することにより、極めて高い光沢度と平滑性を得ることができる。比較例1に示すように、基紙上に設けるポリオレフィン樹脂の融点が165℃を超えると、光沢および平滑性が実施例に劣る。比較例2に示すように、基紙上に設けるポリオレフィン樹脂の融点が100℃未満になると、樹脂の溶融が発生して表面の『荒れ』が発生し、光沢および平滑性が実施例に劣る。比較例3に示すように、キャスト処理を実施しないと、実施例に対して、光沢および平滑性のいずれも劣る結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のキャスト装置の概略図。
【符号の説明】
【0038】
1 インクジェット用画像材料
2 カラーパン
3 グラビアロール
4 バックアップロール
5 プレスロール
6 キャストドラム
7 剥離ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上の少なくとも一方の表面に、ポリオレフィン系樹脂を主成分とした樹脂層を基紙上に溶融押出し法により設け、かかるポリオレフィン樹脂の融点が100〜165℃の範囲であり、かかる樹脂層上に、シリカあるいはアルミナを主成分とする画像記録層を設け、リウェット法により、かかる画像記録層をキャスト処理することを特徴とするインクジェット用画像材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−212839(P2006−212839A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25875(P2005−25875)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】