説明

インクジェット用記録媒体

【課題】一種類のインクジェット用記録媒体で金属光沢のような光沢性の高いものからマット化されて光沢性のほとんどないものまでの広い範囲の光沢度をインク打ち込みの量の変化のみで再現でき、且つ光沢度調整のための白インクの消費量の少ないインクジェット用記録媒体を提供すること。
【解決手段】
透明フィルムにインク受容層と金属光沢を得るための金属層が設けられているインクジェット記録用記録媒体であって、前記インク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が750以上を有し、前記インク受容層に白インクを10%印刷した際の前記インク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が450以下であることを特徴とするインクジェット用記録媒体により解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性顔料インクを使用し、且つ透明性に優れ、光沢や白色の表現範囲の広いインクジェット用記録媒体に関するものである。例えば、プルーフ用に適したインクジェット用記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙あるいはフィルム等の記録媒体に付着させ、画像記録を行うものである。該インクジェット記録方式により形成される画像は、高解像度化及び色再現性範囲の拡大によって、近年ではポスター、ディスプレイ、チラシ、パッケージプルーフ等の高発色性や色再現性が要求される意匠性用途においてその需要が急速に高まってきている。例えば、パッケージプルーフでの用途ではパッケージの材料が有する光沢特性をも加味した色見本が求められる。
パッケージの材料の違いなどによる光沢度の違いを精度よく再現するには、金属光沢のような高光沢からマット化された材料のようにほとんど光沢のない程度までの広い範囲の光沢度再現性が必要である。
【0003】
このような要求に完全に対応できるインクジェット記録媒体は従来は存在しなかった。高い光沢性を出すには、従来金属層を透明支持体の一方の面に設け、もう一方の側にインク受容層を置いていた(例えば、特許第3372709号(特許文献1)。この方法では高い光沢性を出すことができたが、光沢度を低くすることが困難であった。マット化された材料のように光沢性の低いものの質感を出すことは金属層を有するインクジェット記録媒体においては困難であった。
そのため、インクジェット記録媒体の基材の片面に金属層を有するフィルムなどを使用する場合で、マット調の質感を表現するときは、例えば特開平7−34227(特許文献2)のように基材の金属層のある側と反対の面をサンドブラストなどを施して表面をマット化するなど基材を白濁させたりして光沢を低下させることが行われていた。いずれにしても複数の記録媒体を用意しておく必要があり、インク打ち込み量により光沢度を調整できるものは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3372709号公報
【特許文献2】特開平7−34227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、意匠性用途に対応できる質感再現性の高い、すなわち一種類のインクジェット記録媒体で金属光沢のような光沢性の高いものから、マット化されて光沢性の低いものまでの広い範囲の光沢度をインク打ち込みの量の変化で再現できるインクジェット記録媒体を提供することである。また、光沢度調整のための白インクの消費量の少ないインクジェット記録媒体を提供することである。また、多くの種類のパッケージ材料の光沢度特性に対応でき、パッケージ材料の質感を加味した色見本を精密に表現できるパッケージプルーフ用のインクジェット記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の金属層とインク受容層とを有するインクジェット記録媒体であって、インク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が750以上ある記録媒体のインク受容層に白インクを10%duty打ち込んだときに、インク受容層における60°光沢度が450になるようにしたときには人間の目は、マット化されて光沢性の低い質感を感じることを発見した。この発見に基づいたものが本発明であり、金属層とインク受容層とを有する記録媒体への白インクの打ち込み量を0%dutyから10%dutyの間で変化させることにより、金属光沢を有する材料からマット化されて光沢のない材料における質感を忠実に再現できるようになった。
【0007】
すなわち、上記目的の解決手段は下記の通りである。
本発明のインクジェット用記録媒体は、透明フィルムにインク受容層と金属光沢を得るための金属層が設けられているインクジェット記録用記録媒体であって、前記インク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が750以上を有し、前記インク受容層に白インクを10%印刷した際の前記インク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が450以下であることを特徴とする。
【0008】
但し、本明細書において、「%duty」とは、下式で算出される値である。
%duty=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。)
【0009】
本発明のインクジェット用記録媒体に白インクを0%dutyから最大10%dutyの範囲で打ち込むことにより金属光沢からマット化されて、メタリック感が少なくなった状態までを1種類の記録媒体上に再現できる。例えば、メタリック感が少なくなり光源の形状が全く認識できない程度の光沢の状態を再現できる。
【0010】
また、本発明のインクジェット用記録媒体は、白インクを10%印刷した際のL値が50以上であることを特徴とする。
【0011】
但し、本発明におけるL値とはJIS Z 8729で示される明度指数L*で、例えばGretag Macbeth社製 Eye−Oneを用いて観測光源:D50、観測視野角:2°の条件で測定される。L値が100に近いほど明度が高く(白く)、0に近いほど明度が低く(黒く)なる。
【0012】
かかるインクジェット用記録媒体の場合には、白インクの付与により光沢性が著しく低下した場合でもL値を50以上有するため、完全に白色としての色再現を可能にすることができる。このため、プラスチック包装材料へのデザインをする場合のプルーフの材料として特に有効である。
【0013】
上記の通り、本発明のインクジェット記録用媒体によれば、いろいろな光沢性を持つ各種の包装材料の影響を加味した色見本を実際の包装材料に描いてみる必要もなく、一つの記録媒体にインクジェット方式で画像を描かせることで包装材料の変更の影響をも加味した色見本を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において使用される透明フィルムは、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、セルロース系フィルム、ポリアミド系フィルム、アラミド系フィルム等が好適に使用できる。その中でも、ポリエチレンテレフタレートが特に望ましい。
【0015】
金属層は蒸着によって透明フィルムの面上に設けられるか或いは金属箔を貼り付けることで設けることができる。
使用される金属は、アルミニウム、錫、亜鉛、金、銅などであるが、アルミが高い光沢度を得る上で、コストを考えるともっとも望ましい。
金属膜の厚みは、1オングストローム〜2μmが好ましい。1オングストロームより薄い場合は金属特有の金属光沢が得られず、2μmより厚い場合には厚くしただけの効果が得られない。
【0016】
本発明において必要に応じて前記透明フィルムと前記金属層との間に接着性を高めるために、プライマー層(下塗層)を設けてもよい。該プライマー層は、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂の有機溶剤溶液、水溶液などをたとえばグラビアコーティング法、スプレイコーティング法などの通常のコーティング法により均一な厚みに塗布し、乾燥(熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などの場合は硬化)することによって塗膜化される。前記プライマー層の厚みは通常0.005〜2μmの範囲、好ましくは0.01〜1μmの範囲である。プライマー層の厚みが前記範囲未満では後染め加工適性、金属蒸着層との密着性などの改善にほとんど寄与しないので設ける意味がなく好ましくない。
【0017】
本発明では、例えば、金属層の設けられた面と反対側の面にインク受容層を作成されるが、これには、インク吸収性、耐水性、透明性のよいインク受容層を作成することで知られているウレタンやアクリルなどの分散樹脂の使用が好ましく、またウレタンまたはアクリルなどの分散樹脂をカルボジイミドで架橋させたものも更に好ましく使用できる。特に、樹脂としてウレタン樹脂が広く使われている。なお、金属層の設けられた面と同じ面に、金属層の上に直接あるいは他の層を挟んで、インク受容層を設けてもよい。
【0018】
このようなインク受容層としては、例えば下記構成のものが知られている。
シラノール基を有するポリウレタン樹脂をポリイソシアネート、ポリエチレンイミン及びカルボジイミド樹脂から選ばれた架橋剤で架橋された樹脂を含む特開2003−166183に開示されているようなインク受容層、
具体的にはこの公報の実施例5にあるポリウレタン樹脂エマルジョン(武田薬品工業(株)製タケラックXW−75−X35(固形分30重量%))75重量%とカルボジイミド樹脂(日清紡績(株)製カルボジライトV−02)15重量%などからなるインク受容層、
アクリル重合物とカルボジイミド基を有する化合物を含有する特開2004−345110に記載のインク受理層、
特開2009−125958に記載のポリエステル系ウレタンラテックス及びアクリルシリコーン系ラテックスなどの分散樹脂とカルボジイミドを含有するインク受理層。
また、特開2005−74880に記載の水性ウレタン樹脂および水性アクリル樹脂の2種と架橋剤を含むインク受容層も使用できる。
さらに、加水分解性シリル基を架橋成分として有しているカチオン性アクリルシリコンエマルション系樹脂のような分散樹脂とカチオン性ウレタン系樹脂との併用系のように分散樹脂とウレタン樹脂とを架橋したような特開2006−88341に記載のものも好ましい。
【0019】
ウレタン樹脂は、ポリエステル系、ポリエーテル系等が例示できる。カチオン性ポリエーテル系ウレタン樹脂が好ましい。
カチオン性ウレタン系樹脂は、ポリエステル系、ポリエーテル系等が例示できるが、カチオン性ポリエーテル系ウレタン樹脂が好ましい。
アクリル樹脂は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体樹脂、または、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−アクリル−酢酸ビニル、エチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル等のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル・スチレン共重合体樹脂等が例示できる。カチオン性アクリル・スチレン共重合体樹脂が好ましい。
インク受容層固形分中のカチオン性アクリルシリコンエマルション系樹脂とカチオン性ウレタン系樹脂の重量%は、カチオン性アクリルシリコンエマルション系樹脂が5〜25質量%で、カチオン性ウレタン系樹脂が75〜95質量%のものが好ましい。
さらには、カチオン性アクリルシリコンエマルション系樹脂が10〜20質量%で、カチオン性ウレタン系樹脂が80〜90質量%のものが好ましい。
【0020】
架橋剤として、ポリイソシアネート、ポリエチレンイミン及びカルボジイミド樹脂から選ばれるものが用いられる。
カルボジイミド樹脂は、ジイソシアネート類又はジイソシアネート類とトリイソシアネート類とを脱二酸化炭素縮合して得られる縮合反応物の末端イソシアネート基を親水性基で封止してなる水溶性又は水分散性カルボジイミド化合物である。
ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類としては、脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び芳香族イソシアネートのいずれでもよく、分子中にイソシアネート基を少なくとも2個以上、特に2個有するものが好適である。このようなイソシアネートとしては、分子中にメチレン基の炭素原子に結合したイソシアネート基を有しないイソシアネート化合物では4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)などが、また分子中にメチレン基の炭素原子に結合したイソシアネート基を2個以上有する脂環族、脂肪族、芳香族イソシアネートではヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、及び2,4−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)などが挙げられる。
末端イソシアネート基を封止する化合物は、イソシアネート基と反応し得る基を有する水溶性又は水分散性有機化合物であって、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二官能性の水分散性有機化合物のモノアルキルエステル又はモノアルキルエーテル、あるいはカチオン系の官能基(例えば窒素を含む基)、又はアニオン系の官能基(例えばスルホニル基を含む基)を持つ一官能の有機化合物などが挙げられ、特に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが好適である。
【0021】
なお、本発明において白インク組成物は、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に、該用紙が被覆される量のインク組成物が吐出された印字物の明度(L)と色度(a、b)が、Gretag Macbeth Spectrolino(X-Rite社製)の測色器を用いて計測した場合に、
70≦L≦100
−3.5≦a≦1
−5≦b≦1.5
の範囲を示すインク組成物のことをいう。
本発明の記録媒体において光沢性を下げるために使用される白インクは、白色の色材を含む白インク組成物は特に制限されるものではないが、金属化合物または中空樹脂粒子を白色色材として含むものが望ましい。
本発明における白インク組成物は、白色色材として金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種を含むことが望ましい。さらに、記録媒体に対する定着性を向上させる場合には、定着樹脂を含むことが望ましい。
金属化合物としては、従来から白色顔料として用いられている金属酸化物、硫酸バリウムや炭酸カルシウムである。金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。本発明における金属化合物としては、二酸化チタン、アルミナが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、白インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは5〜20質量%であり、特に好ましくは5〜15質量%である。金属酸化物の含有量が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、1質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
【0022】
金属化合物の平均粒子径(外径)は、好ましくは30〜600nmであり、より好ましくは200〜400nmである。外径が600nmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径30nm未満であると、白色度が不足する傾向にある。
金属化合物の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0023】
本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。かかる構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
上記の中空樹脂粒子を含む白インク組成物を、紙その他の記録媒体上に吐出させると、粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。粒子が内部に空気を含有することにより、粒子は屈折率の異なる樹脂層および空気層を形成し、入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができる。
【0024】
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2〜1.0μmであり、より好ましくは0.4〜0.8μmである。外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。また、内径は、0.1〜0.8μm程度が適当である。
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
上記中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5質量%未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0025】
上記中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
【0026】
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0027】
本発明における白インク組成物は、金属化合物や中空樹脂粒子を定着させる樹脂を含むことが望ましい。係る樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))が挙げられる。
これらの定着樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%である。
【0028】
本発明における白インク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、白インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0029】
本発明における白インク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
更に、本発明における白インク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
上記界面活性剤の含有量は、白インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0030】
本発明における白インク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、白インク組成物のpHを容易に調整することができる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
上記第三級アミンの含有量は、白インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0031】
本発明における白インク組成物は、通常溶媒として水を含有することが好ましい。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0032】
本発明における白インク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明における白インク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【実施例】
【0033】
1. インクジェット用記録媒体1の作製
特表平9−511955の記載に基づき、100μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、約500オングストロームの厚さのアルミニウム層を減圧環境下にて蒸着により形成する。次いで、該フィルムの他方の表面に次の液体を塗布してインク受容層とする。
【0034】
<インク受容層形成組成物1>
カチオン性アクリルシリコン樹脂
(ダイセル化学工業株式会社 アクアブリット 908 固形分23%) 15重量部
ポリエーテル系ウレタン樹脂
(第一工業製薬株式会社 スーパーフレックス600固形分25%) 78重量部
カルボジイミド
(日清紡ケミカル株式会社 商品名;カルボジライトV02−L2) 7重量部
【0035】
上記重量比は乾燥重量比である。
上記成分をイオン交換水に順次投入し攪拌処理を行なった後、乾燥塗膜が20μmとなるようにインク受容層を設けてインクジェット用記録媒体1を得た。
【0036】
2.インクジェット用記録媒体2の作製
インクジェット用記録媒体1におけるインク受容層形成組成物を下記の組成(インク受容層形成組成物2)に変え、乾燥塗膜を16μmとした以外はインクジェット用記録媒体1と同様にしてインクジェット用記録媒体2を作成した。尚、下記重量比は乾燥重量比である。
【0037】
<インク受容層形成組成物2>
ポリエーテル系ウレタン樹脂
(第一工業製薬株式会社 スーパーフレックス600 固形分25%) 72質量部
アクリル・スチレン共重合樹脂
(中央理化工業株式会社 リカボンド FK -820 固形分39%) 24質量部
オキサゾリン基を有する水溶性ポリマー(固形分40%) 0.5質量部
アクリル系の水溶性自己乳化型エポキシ硬化剤として、メタクリル酸・アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル・スチレン共重合物とポリエチレンイミンのグラフト化物の塩化水素中和物(固形分49%) 3.5質量部
【0038】
3.白インク組成物1の調製
白色色材として中空樹脂粒子(市販品「SX8782(D)」または「SX866(B)」(以上、JSR株式会社製)10質量%、定着樹脂としてWBR−022U(商品名、大成ファインケミカル社製(ウレタン樹脂、固形分濃度30質量%)) 1質量%、浸透性有機溶剤としてグリセリン 10質量%、1,2−ヘキサンジール 3質量%、水性溶剤としてトリエタノールアミン 0.5質量%、界面活性剤としてBYK−348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製(ポリシロキサン系界面活性剤))0.5質量%、イオン交換水 残量にて、白インク組成物(インク1)を調整した。
尚、SX8782(D)は、外径1.0μm、内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が28%である。SX866(B)(JSR株式会社製)は、外径0.3μm、内径0.2μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20%である。
【0039】
4.印刷評価試験
評価には、インクジェットプリンタPX−A650(セイコーエプソン(株)製)を用いた。黒用インクカートリッジに白インク組成物(インク1)を充填させ、これを通常黒用インクカートリッジが装着される部分に装着して使用した。
まず、上記インクジェット用記録媒体1及び2に白インク組成物1を全面に1%から10%dutyになるようにベタ印刷した。
また比較例として本発明のインクジェット記録媒体1の代わりに市販品の商品名folex ディスプレイフィルム メタリックシルバー(フォーレックス株式会社製)および商品名シルバーラベルG(株式会社Too製)の記録媒体を使用して上記と同様にベタ印刷した。
印刷したものについてJIS Z 8741の規定に従い60°光沢度を測定した。また印刷しない記録媒体についても60°光沢度を測定した。またJIS Z 8729のL値をGretag Macbeth社製 Eye−Oneを用いて観測光源:D50、観測視野角:2°の条件で測定した。
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から実施例品は、それのインク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が750以上あり、金属光沢の質感を完全に表現でき、また10%dutyの白インク打ち込みでインク受容層における光沢度は450以下となり、光沢の低下したマット化された質感を完全に表現できていることがわかる。
一方、比較例1は、マット化されたものの質感再現はよいが金属光沢の再現に難があり、比較例2は、金属光沢が表現できるものはマット化されたものの質感の再現に難があり、一つの記録媒体でインクの打ち込み量の制御だけで金属光沢からマット化された光沢のないものまでの質感を表現することはできていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルムにインク受容層と金属光沢を得るための金属層が設けられているインクジェット記録用記録媒体であって、前記インク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が750以上を有し、前記インク受容層に白インクを10%印刷した際の前記インク受容層におけるJIS Z 8741で規定される60°光沢度が450以下であることを特徴とするインクジェット用記録媒体。
【請求項2】
前記白インクを10%印刷した際のL値が50以上である請求項1記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項3】
前記インク受容層が、分散樹脂を含有する液体を塗布することにより形成されたものである請求項1または請求項2に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項4】
前記液体が架橋性樹脂を含有する請求項3に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項5】
前記白インクが、中空樹脂粒子および金属化合物から選ばれる少なくとも1種の色材を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項6】
前記白インクが定着樹脂を含有し、前記定着樹脂が溶媒中に粒子として分散している請求項5に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記白インクが定着樹脂を含有し、前記定着樹脂の含有量が0.5〜10質量%である請求項5または請求項6に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項8】
前記白インク中、前記色材の含有量が5〜20質量%である請求項5〜7のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項9】
前記色材が中空樹脂粒子である場合、その平均粒子径が0.2〜1.0μmである請求項5〜8のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項10】
前記色材が金属化合物である場合、その平均粒子径が30〜600nmである請求項5〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項11】
前記請求項1から請求項10のいずれかに1項に記載のインクジェット用記録媒体への白インクのインクジェット打ち込み量を制御することにより所望の光沢を表現できるインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−6242(P2012−6242A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143878(P2010−143878)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】