説明

インクジェット記録体用支持体およびインクジェット記録体

【課題】プリント後のコックリングの少ない、良質な表面性を有したインクジェット記録体に使用される紙支持体、およびその支持体を用いたインクジェット記録体を提供する。
【解決手段】インクジェット記録用インキにより記録を行うインク受容層を少なくとも片面に有するインクジェット記録体用支持体において、支持体が、熱可塑性樹脂によるラミネート層を有さないパルプを主成分とする紙であり、J.TAPPI No.27−Bにより測定したCD方向の水中伸度が2.0%以下であり、坪量100g/mに換算したときのステキヒトサイズ度が20秒以上150秒以下であり、且つ、30℃、80%RHの環境下で、J.TAPPI 紙パルプ試験法 No.40に準じて測定したCD方向のガーレーこわさが2.5mN以上であることを特徴とするインクジェット記録体用支持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント後のコックリングの少ない、良質な表面性を有したインクジェット記録体に使用される紙支持体、およびその支持体を用いたインクジェット記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェットプリンタ技術の発展は目覚しく、プリンタの精度が向上するに伴い、銀塩写真の画質に匹敵する記録品質が求められるようになっている。これに対応して色の再現範囲を広げるため、インクジェット記録体に打ち込まれるインク量も増える傾向にある。
【0003】
紙を支持体とするインクジェット記録体に、水性インクで記録するとインクジェット記録体がぼこついたり、波打ったりする場合がある。この現象をコックリングと呼ぶ。コックリングが発生すると、インクジェット記録体の外観が損なわれ、印刷物の品位が低下してしまう。また、インクジェット記録体に対する記録ヘッドの距離や角度が部分的に変化して、打ち込まれたインク滴の間隔が変化して不揃いになったり、位置がずれたりすることにより、本来の記録精度が得られず、結果として記録物の品位が低下することもある。さらに甚だしい場合は、ぼこついたインクジェット記録体に、インクヘッドが衝突し、記録画像を汚したり、記録用紙が破れたり、さらには記録ヘッドを破損したりする場合もある。また、上記のように印刷直後だけでなく、数時間あるいは数日間記録物を乾燥させると、インクジェット記録体のボコツキは軽減されるが、完全に無くなることはなく、インクジェット記録物の外観を損ねることになる。
【0004】
コックリングは、以下の原因により発生すると考えられる。すなわち、インクジェット記録体上に打ち込まれたインク中の水分は支持体まで浸透し、支持体である紙のパルプ繊維に吸収され、パルプ繊維を膨潤させる。水によるパルプ繊維の膨潤率は繊維の軸方向とそれに直行する方向で大きな差があることはよく知られており、抄紙機の流れ方向に繊維が配向している。よって、紙の膨潤率も抄紙機の流れ方向より幅方向が大きくなり、膨潤に異方性が生じる。さらに、記録用紙に打ち込むインクの量は、通常図柄の濃度階調に伴って薄いところは少なく、濃いところは多くなる。コックリングは、こういった支持体の膨潤率の異方性や膨潤の不均一によって発生すると考えられるため、支持体に紙を用いる記録用紙にとってコックリングを改良することは多大な困難を伴うものである。
【0005】
コックリングの改良方法としては、特開昭62−95285号公報(特許文献1参照)には、無定形シリカを含む塗被層が設けられているキャストコート紙よりなるインクジェット記録用紙で、横方向の浸水伸度が2.0%以下であるインクジェット記録用紙が開示されている。
また、特開平3−199081号公報(特許文献2参照)には、紙支持体のパルプ繊維の配向する程度を、縦方向と横方向の差を極力小さくすることの目安として原紙を抄造した方向(Machine Direction:MD方向)の浸水伸度とこれに直行する方向(Cross Direction:CD方向)の浸水伸度の比を1.3以下とすることによりコックリングの改良を提案している。
更に、特開2003−276309号公報(特許文献3参照)には、紙支持体がJ.TAPPI No.27 B法に記載されているフェンチェン伸縮度試験機において抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向に直角な方向の1分後の浸水伸度が1.5%以下であるコックリングの良好な昇華インク用インクジェット記録媒体が記載されている。
そして、特開2003−54117号公報(特許文献4参照)には、全面印刷時においてもインクヘッドと記録紙の接触が起きない記録媒体として、1)記録用紙のCD方向の水中伸度が1.5〜0%、2)記録用紙の搬送方向のクラークこわさが20〜80(cm/100)であり、3)搬送方向のクラークこわさと搬送方向に直行する方向のクラークこわさの比が1.4以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙に関して記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−95285号公報(第2及び3頁)
【特許文献2】特開平3−199081号公報(第1及び2頁)
【特許文献3】特開2003−276309号公報(第2及び3頁)
【特許文献4】特開2003−54117号公報(第2、3及び4頁)
【0007】
しかし、これらの提案においても、近年の写真画像に匹敵する高精細記録像を得るための、インク量の増加、画像の濃淡に起因するインク量の不均一性により、いまだコックリングの改良は不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印刷後のボコツキが少なく、フルカラー印刷にもコックリングが発生しない、高精細な画像を良好な再現性で記録できるインクジェット記録体を得るため、本発明者らはインクジェット記録体の支持体(紙)の研究を行った。
記録の際、インクはインクジェット記録体に印字された後、乾燥していくと略同時に、支持体内部に浸透していく。つまり、インクジェット記録体用支持体は長時間水を含んだ状態を維持することになる。例えば、特許文献2や特許文献3の技術を検討したが、多量の水の中に長時間漬けた後の挙動を考慮するものではないので、コックリングの改良に必ずしも十分でないことが判った。本発明者等は、この多量の水の中に長時間漬けた後の挙動を考慮した、ある特定の条件を満足することにより、コックリングを生じない優れたインクジェット記録体用支持体を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は寸法安定性に優れ、プリント後のボコツキ(コックリング)の少ない、良質な表面性を有したインクジェット記録体用支持体およびそれを用いたインクジェット記録体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の態様を含む。
(1)インクジェット記録用インキにより記録を行うインク受容層を少なくとも片面に有するインクジェット記録体用支持体において、
支持体が、熱可塑性樹脂によるラミネート層を有さないパルプを主成分とする紙であり、J.TAPPI No.27−Bにより測定したCD方向の水中伸度が2.0%以下であり、坪量100g/mに換算したときのステキヒトサイズ度が20秒以上150秒以下であり、且つ、30℃、80%RHの環境下で、J.TAPPI 紙パルプ試験法 No.40に準じて測定したCD方向のガーレーこわさが2.5mN以上であることを特徴とするインクジェット記録体用支持体である。
【0010】
CD方向の水中伸度は、2.0%以下が好ましく、1.8%以下がより好ましい。ステキヒトサイズ度は、20秒以上150秒以下が好ましく、25秒以上100秒以下がより好ましい。30℃、80%RHの環境下でのガーレーこわさは、12mN以下であることが好ましく、3.0mN以上10mN以下がより好ましい。
支持体が湿潤紙力増強剤を塗布または含浸していることが好ましい。
【0011】
(2)パルプとして、乾燥履歴を経たドライパルプ及び/またはリサイクルパルプを含む(1)記載のインクジェット記録体用支持体である。
(3)全パルプ中5%以上、好ましくは15%以上、乾燥履歴を経たドライパルプ及び/又はリサイクルパルプを含む(2)記載のインクジェット記録体用支持体である。
【0012】
(4)(1)〜(3)のいずれか一つに記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を少なくとも一層有するインクジェット記録体である。
(5)(1)〜(3)のいずれか一つに記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を少なくとも一層有し、該インク受容層上に平均粒子径0.5μm以下の顔料を含有する光沢発現層を有するインクジェット記録体である。
(6)(1)〜(3)のいずれか一つに記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、インク受容層を有し、該インク受容層表面が鏡面ドラムにより仕上げられているインクジェット記録体である。
(7)(1)〜(3)のいずれか一つに記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、顔料と、温度により親水性と疎水性を可逆的に示す感温性高分子化合物を含有するインク受容層を有するインクジェット記録体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインクジェット記録体用支持体は、その表面にインク受容層を設けたインクジェット記録体を提供するものであり、そのインクジェット記録体に写真画像を記録すると、コックリングの少ない良質な表面性を有した印字物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔インクジェット記録体用支持体〕
本発明は、インクジェット記録用インキにより記録を行うインク受容層を少なくとも片面に有するインクジェット記録体用支持体において、下記の「1」〜「4」の四条件を満足する必要がある。
「1」支持体が、熱可塑性樹脂によるラミネート層を有さないパルプを主成分とする紙であること。
「2」J.TAPPI No.27−Bにより測定したCD方向の水中伸度が2.0%以下であること。
「3」坪量100g/mに換算したときのステキヒトサイズ度が20秒以上150秒以下であること。
「4」30℃、80%RHの環境下で、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法 No.40に準じて測定したCD方向のガーレーこわさが2.5mN以上であること。
【0015】
「1」支持体が、熱可塑性樹脂によるラミネート層を有さないパルプを主成分とする紙である。
写真画質に近く、コックリングのないインクジェット記録体は、ポリオレフィン樹脂被覆紙を支持体としたものでは、いろいろ提案されている。紙の両面に樹脂被覆層を有するので、記録の際のインクが支持体である紙に浸透しないので、コックリングは生じない。しかし、樹脂被覆紙を用いたインクジェット記録体は、インクをインク受容層のみで吸収しなければならないので、ニジミが生じたり、高塗工量のインク受容層が必要であったり、また高価であったりする。本発明は、樹脂被覆紙を採用せず、パルプを主成分とする紙を支持体とし、樹脂被覆層を形成することなく、コックリングを防止するものである。
【0016】
「2」支持体の紙が、J.TAPPI No.27−Bにより測定したCD方向の水中伸度が2.0%以下である。CD方向の水中伸度は、1.8%以下が好ましく、1.6%以下がより好ましい。因みに、水中伸度が2.0%を超えると、コックリングが発生しやすくなる。
【0017】
「3」支持体の紙が、坪量100g/mに換算したときのステキヒトサイズ度が20秒以上150秒以下である。
支持体の坪量を100g/mに換算したときのステキヒトサイズ度(基材のステキヒトサイズ度測定値を坪量で割り、100を掛けた値)は20秒以上150秒以下である。好ましくは25秒以上100秒以下である。ステキヒトサイズ度が150秒を超える場合は、インク受容層の吸収速度が遅くなり、支持体へのインク吸収を抑えることができ、コックリングは少ないが、インク受容層の吸収限界を超えた場合、記録画像がにじんだり、印字されたインクが記録用紙表面で乾燥せずに長時間残り、装置や連続して印字された記録用紙を汚したりする可能性が高い。逆に、20秒未満の場合、インクの浸透が早くなり、インクが支持体にも多く浸透することにもなり、コックリングを起こしやすくなる。
【0018】
「4」支持体の紙が、30℃、80%RHの環境下で、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法 No.40に準じて測定したCD方向のガーレーこわさが2.5mN以上である。
インクジェット記録体用支持体が、吸湿もしくは吸水によってこわさが低下する場合、インク溶媒の浸透による膨潤を押さえ込むことができずに支持体である紙が変形し、コックリングが発生する。このため、吸湿もしくは吸水によってこわさの低下を抑えることができれば、コックリングを抑制できる。従って、本発明は、環境を30℃、80%RHという高湿度の環境下で、支持体のCD方向のガーレーこわさをJ.TAPPI紙パルプ試験法No.40に準じて測定する。このガーレーこわさが、2.5mN以上である必要がある。こわさが2.5mNより低いと、記録の際のインク吸収による膨潤にインクジェット記録体が耐えられなくなり、コックリングが発生する可能性がある。なお、ガーレーこわさが12mNを超えると、プリンタの用紙搬送に問題が起こる可能性があるので、12mN以下であることが好ましい。より好ましくは3.0mN〜10mNである。
【0019】
本発明は、上記「1」〜「4」の条件を全て満足することを特徴とするインクジェット記録用支持体である。これらの条件を全て満足すること、特に、「1」〜「3」だけでなく、「4」の高湿度にさらしても、ガーレーこわさが2.5mN以上有することを満足することにより、多量の水の中に長時間漬けた後の挙動を考慮した、インクジェット記録体用支持体となる。
【0020】
更に、具体的にインクジェット記録体用支持体について説明する。
本発明のインクジェット記録体用支持体に用いるパルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(以下NBKP)や広葉樹晒しクラフトパルプ(以下、LBKP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプなどが使用できる。また、高白色度を必要とする場合は、塩素、二酸化塩素、酸素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸等各種漂白法を組み合わせて漂白したパルプが適宜使用できる。中でも、塩素を使用しない所謂ECF漂白、TCF漂白されたパルプは、黄変を起こし難く好ましく使用される。更に、これらのパルプを一度ないし二度以上乾燥させたドライパルプ、あるいは工程回収パルプ(DIP)などのリサイクルパルプが例示でき、使用できる。
【0021】
パルプとして、乾燥履歴を経たパルプやリサイクルパルプを全パルプ中の5%以上、好ましくは10%以上添加することが好ましい。このようなパルプを用いることにより、上記本発明の条件を満足し易く、コックリングを大幅に改善する。添加率が5%未満の場合、十分なコックリング改善効果が得られない場合がある。
【0022】
本発明で、乾燥履歴を経たパルプというのは、一般に行われるパルプ製造方法、例えばチップの蒸解、漂白、洗浄等の工程を経た後、繊維の含有水分が4.0%以下になるまで乾燥させたパルプを差す。このようなパルプは、繊維自身の歪みが小さく、また膨潤から乾燥における変形が小さく、寸法安定性に優れる傾向にある。このため、乾燥履歴を経たパルプを用いたインクジェット記録体用支持体は水中伸度も小さくなり、インクジェット記録体としてはコックリングが抑制される。
【0023】
また、リサイクルパルプもまた、繊維自身の歪みが小さく、また膨潤から乾燥における変形が小さく、寸法安定性に優れる傾向にある。このため、乾燥履歴を経たパルプを用いたインクジェット記録体用支持体は水中伸度も小さくなり、記録体としてはコックリングが抑制される。乾燥履歴を経たパルプとリサイクルパルプは、併用することもできる。
【0024】
上記パルプ(好ましくは、乾燥履歴を経たパルプやリサイクルパルプを配合したパルプ)は、円筒形リファイナー、円錐形リファイナー、ディスク型リファイナーなど通常使用されている叩解手段を用いて叩解することができる。この場合の叩解度はカナダ式標準ろ水度で、100ml〜600ml程度、より好ましくは200〜500mlである。因みに600mlを超えるような場合、パルプ繊維のフィブリル化が十分でなく、繊維間結合が阻害され、十分な紙力が得られない。また、100mlより低い場合は、フィブリル化は十分であるが、繊維自体の強度が損なわれ、必要な紙力が得られない可能性がある。
【0025】
支持体は、パルプに必要に応じて、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、無定形シリカ、珪藻土、酸化チタン、活性白土、硫酸バリウム等の無機顔料、尿素ホルマリン樹脂、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダーなどの有機顔料を填料として添加し、酸性あるいは中性抄紙で通常の方法により調整できる。
【0026】
さらに、ロジン系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテンダイマーなどに代表されるサイズ剤、酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉などの澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシセルロース、完全鹸化または部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、カゼインなどの水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、スチレン・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのラテックスに代表される接着剤、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、N−ビニルホルムアミド・ビニルアミン共重合体等の湿潤紙力増強剤を内添あるいは塗布もしくは含浸して用いることができる。
【0027】
上記の中でも、特に湿潤紙力増強剤、特にポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂は効果的に湿潤時の紙の寸法安定性を向上させる効果をもっているため、好適に使用される。また、サイズ剤を選ぶことにより、ステキヒトサイズ度を調整することもできる。
【0028】
抄紙を行う手段としては、長網抄紙機、円筒抄紙機、ヤンキー抄紙機、ツインワイヤーフォーマー、傾斜ワイヤーフォーナーなど、ドライヤーとしては、ヤンキードライヤー、他筒式ドライヤーなどが各種公知の抄紙機が使用できる。坪量は特に規定されるものではないが、20〜400g/m、好ましくは50g/m〜250g/m、表面平滑性の良好なものが通常用いられる。
【0029】
〔インクジェット記録体〕
本発明のインクジェット記録体用支持体は、例えば、その少なくとも片面にカチオン性化合物などを塗布・含浸して、インクジェット記録用インキによる記録適性を付与することもできるが、支持体の少なくとも片面に、インクジェット記録用インキにより記録を行う、顔料と接着剤を主成分とするインク受容層を形成することが好ましい。なお、支持体とインク受容層の間に、下塗り層を形成することもできる。
【0030】
(下塗り層)
下塗り層の目的としては、支持体(紙)の凹凸を覆いインクジェット記録体の表面平滑性を上げる、インクジェット記録体の隠蔽性を上げる、インクジェット記録体の白色度を向上させる、バリア層として働き支持体(紙)側からインク受容層へ進入するオゾンやNOx等インク染料及び顔料を劣化させるガスを減ずる、等が挙げられる。
【0031】
下塗り層に使用される顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、サチンホワイト等の無機顔料、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ナイロン樹脂等の各種合成樹脂から成る有機樹脂粒子を例示できる。これら顔料の中でも、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂粒子が好ましく、白色度、隠蔽性、平滑性の点からは、特に酸化チタン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体中空樹脂粒子が好ましく用いられる。また、必要により、併用しても良い。
【0032】
これら顔料の形状、粒径は、下塗り層への要求品質により適宜選択できる。因みに、酸化チタン、中空樹脂粒子を使用する場合、粒径は0.1〜5.0μmのものが好ましく、0.3〜3μmがより好ましい。粒子径が小さいと、強度低下、発色性の低下となる傾向にあり、粒子径が大きいと平滑で均一な面が得られない。
【0033】
下塗り層に使用される接着剤は、通常紙加工に用いられる水性エマルジョン、水溶性高分子、溶剤系高分子から適宜選択して使用できる。例えば、水性エマルジョンとしては、スチレン−ブタジエン系ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン等が挙げられる。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、デンプン及びその変性物、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン等を挙げられる。溶剤系高分子としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤にを溶解したり、分散した樹脂を挙げられる。これら接着剤の中で、取り扱いやすさ、安全・衛生の点から、水性エマルジョン、水溶性高分子が好ましく、特に水性エマルジョンは耐水性や高濃度化が可能で乾燥工程で有利であり、好ましく用いられる。また、水性エマルジョン樹脂を用いる場合は、該高分子のガラス転移温度が−30〜40℃の範囲のものが好ましい。より低いと皮膜強度が十分でなく、より高いと乾燥工程における皮膜形成が不十分であり皮膜強度が低くなる場合が有る。
【0034】
上記顔料と接着剤との比率は、顔料100部に対して接着剤を2〜30部程度、好ましくは5〜20部程度である。接着剤の量が少ないと下塗り層の強度が低下し、接着剤の量が多すぎると、吸収量が低下、発色の悪化するばかりか、白色度まで低下する傾向にある。
さらに、下塗り層には、耐水性や皮膜強度を向上させる架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、pH調整剤、キレート化剤、色味付け用各種染料や顔料、蛍光増白剤、防腐剤、塗工適性を付与するための増粘剤、界面活性剤、消泡剤等を適宜配合できる。
【0035】
こうして調製された塗料は、乾燥塗工量として1〜30g/mの範囲で目的に応じて適宜設定でき、好ましくは5〜15g/mである。1g/mより少ないとその効果が十分でなく、30g/mより多いと層間強度が弱くなる傾向になったり、乾燥工程で経済的に不利となる。
【0036】
下塗り層を形成するための塗工装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーターおよびダイコーター等の各種公知の塗工装置が挙げられる。また、抄紙機に付属の塗工装置で塗工することもできる。塗工後に、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダーを用いて仕上げても良い。
【0037】
(インク受容層)
本発明のインクジェット記録体用支持体上に、或いは該支持体上に形成された下塗り層上に、インクジェット記録用インクにより記録を行うインク受容層を形成し、インクジェット記録体となる。インクジェット記録体は、インク受容層に比較的粒子径の大きな顔料を用いた光沢度の低いマットタイプのもの、記録層に粒子径の小さい顔料を用いた光沢タイプのもの、更には光沢タイプのなかでも記録層の最表層を鏡面ドラムに圧接して仕上げるキャストタイプのものなど、様々な形態がある。
【0038】
本発明は、紙支持体を用いたものであれば、形態を特に限定するものではない。しかしながら、光沢タイプのインクジェット記録体は、高級感のある画像、特に写真に近い画質を要求されることが多く、また、そのような画像を記録する場合はインク量が多くなることから、コックリングの問題が顕著である。更に、光沢タイプのインクジェット記録体は、光沢性を付与するために、表面の平滑性を高めたものが多く、コックリングが発生すると、コックリングが目立ってしまいやすい。本発明のインクジェット記録体用支持体は、コックリングの問題が大きい光沢タイプのインクジェット記録体において、作用効果が優れるので、好ましい。
【0039】
次にインク受容層について述べる。インク受容層は、顔料とバインダーを含有し、必要に応じてカチオン性染料定着剤、その他各種助剤を配合して用いられる。
【0040】
インク受容層に使用する顔料としては、不定形シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイと、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ホワイトカーボン、アルミナ、ゼオライト、水酸化アルミニウム等の無機顔料類、スチレン系、アクリル系、尿素樹脂系、メラミン樹脂系、ベンゾグアナミン樹脂系の有機顔料類が例示でき、必要に応じて単独、または2種類以上を併用することができる。これらの中で、非晶質シリカ、アルミナ、ゼオライトを主成分として含有させるのが好ましい。
【0041】
また、インク受容層の結着剤として澱粉及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパクなどの天然または半合成高分子類、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル・ブタジエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体樹脂の水溶液または水分散体、あるいは上記の樹脂類にアニオン性またはカチオン性残基を導入した変性重合体などの公知の材料を適宜用いることができる。
【0042】
さらに、水性インクでの印字画像の耐水性を向上させる目的で、インク受容層には、カチオン性染料定着剤を含有せしめることが好ましい。カチオン性染料定着剤としては、例えば、1)ポリエチレンアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、2)第2級アミン基や第3級アミン基、第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、3)ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、4)ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、5)ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、6)エポクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、7)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO共重合物、8)ジアリルアミン−SO共重合物、9)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、10)アリルアミン塩の重合物、11)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、12)アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物、13)ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム、ポリ乳酸アルミニウムなどのアルミニウム塩等の一般市販されるものが挙げられる。なお、カチオン性染料定着剤の添加量としては、顔料100質量部に対し、1〜30質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましい。インク受容層は二層以上形成することができるが、この場合、少なくとも上層にカチオン性染料定着剤を含有させるのが好ましい。
【0043】
インク受容層には、さらに必要に応じ、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、離型剤、浸透剤、湿潤剤、熱ゲル化剤、滑剤、その他当該技術分野で公知の各種助剤も使用することができる。
【0044】
インク受容層の塗工量は特に限定されず、求める記録品質に応じて決定することができるが、コックリングが問題になるのは特に高画質の記録物を求める場合であり、その為には全塗工量として5g/m以上45g/m以下、好ましくは12g/m以上40g/m以下である。少ない塗工量では高精度な画像再現性に優れた記録物を得ることが困難であり、逆に塗工量が多い場合は記録濃度や表面強度が低下する恐れがある。なお、塗工層の構成は一層よりも二層以上とすることが好ましい。
【0045】
インク受容層を塗工する手段としては、サイズプレス、ゲートロール、ロールコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター、ダイコーター、カーテンコーターなど通常使用されている塗工手段から適宜選択することが出来る。また、塗布後にマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を用いて平滑化することもできる。
【0046】
インク受容層を構成するの顔料のうち、平均粒子径1μm以上13μm以下のものを主顔料として用いると、インク受容層表面の光沢はなく、マットタイプのインクジェット記録体となる。
【0047】
インク受容層を構成する顔料として、平均粒子径が0.01〜1μmの微細顔料、好ましくは0.01〜0.5μmの微細顔料を主顔料として含む層を有すると、光沢を有するインクジェット記録体となるので好ましい。なお、インク受容層を二層以上とする場合、平均粒子径が0.01〜1μmの微細顔料を全ての層に含んでも構わないが、下層に上層よりも大きいの粒径の顔料、上層に平均粒子径が0.01〜1μmの微細顔料を含む層を設けると、下層がインク溶媒を多く吸収するので好ましい。
【0048】
インク受容層或いはインク受容層上層に適した、平均粒子径が0.01〜1μmの微細顔料としては、気相法シリカ、メソポーラスシリカ、活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカのコロイド状物、アルミナ酸化物、およびアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。このなかで、気相法シリカとアルミナ酸化物が好ましく選択される。アルミナ酸化物の中では気相法(フュームド)アルミナ酸化物が好ましい。
【0049】
気相法シリカは、フュームドシリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化珪素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化珪素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシランなどのシラン類も、単独または四塩化珪素と混合した状態で使用することができる。
【0050】
メソポーラスシリカとは、1.5〜100nmに平均細孔径を有するシリカ多孔体である。また、アルミニウム、チタン、バナジウム、ホウ素、マンガン原子等を導入したメソポーラスシリカも使用できる。多孔体の物性としては特に限定されないが、BET比表面積(窒素吸着比表面積)は200〜1500m/gが好ましく、細孔容積としては0.5〜4cc/gが好ましい。メソポーラスシリカの合成方法は特に限定されないが、米国特許第3556725号明細書に記載されている、シリカのアルコキシドをシリカ源として、長鎖のアルキルを含む4級アンモニウム塩をテンプレートとした合成方法、特表平5−503499号公報等に記載されているアモルファスシリカ粉末やアルカリシリケート水溶液をシリカ源として、長鎖のアルキル基を有する4級アンモニウム塩、あるいはホスホニウム塩をテンプレートとする水熱合成法、特開平4−238810号公報等に記載されているシリカ源としてカネマイト等の層状ケイ酸塩を、長鎖のアルキルアンモニウムカチオン等をテンプレートとしてイオン交換法により合成する方法、更にドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン、ノニオン系界面活性剤等をテンプレートとして、シリカ源として水ガラス等をイオン交換した活性シリカを用いて合成する方法などである。ナノポーラスシリカ前駆体からのテンプレートの除去方法としては高温で焼成する方法、有機溶媒で抽出する方法が挙げられる。
【0051】
活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカのコロイド状物とは、コロイド状に分散したシリカシード液にアルカリを添加したのち、該シード液に対し活性珪酸水溶液及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種類からなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させて得る2次シリカ分散体であり、例えば特開平2001−354408号公報などに記載されている方法で得ることが可能である。
【0052】
アルミナ酸化物とは、一般的に結晶性を有する酸化アルミナとも呼ばれる。具体的には、χ、κ、γ、δ、θ、η、ρ、擬γ、α結晶を有する酸化アルミナが挙げられる。本発明は光沢感、インク吸収性から気相法アルミナ酸化物、γ、δ、θ結晶を有するアルミナ酸化物が好ましく選択される。粒度分布がシャープで、成膜性が特に優れる気相法アルミナ酸化物(フュームドアルミナ)が最も好ましい。
【0053】
気相法アルミナ酸化物とは、ガス状アルミニウムトリクロライドの高温加水分解によって形成されたアルミナであり、結果として高純度のアルミナ粒子を形成する。これら粒子の1次粒子サイズはナノオーダーであり、非常に狭い粒子サイズ分布(粒度分布)を示す。かかる気相法アルミナ酸化物は、カチオン表面チャージを有する。インクジェット塗工における気相法アルミナ酸化物の使用は、例えば米国特許第5,171,626号公報に示されている。
【0054】
アルミナ水和物とは、特に限定するものではないが、インク吸収速度や成膜性の観点からベーマイトか擬ベーマイトが好ましく選択される。アルミナ水和物の製造方法は例えばアルミニウムイソプロポキシドを水で加水分解する方法(B.E.Yoldas,Amer.Ceram.Soc.Bull.,54,289(1975)など)やアルミニウムアルコキシドを加水分解する方法(特開平06−064918号公報など)などが挙げられる。
【0055】
上記微細顔料の形態は、高いインク吸収性、及び塗工層の成膜性、平滑性を得る目的で上記顔料の凝集粒子分散体が主に好ましく用いられる。平均粒子径は、0.01〜1μm程度である。インク吸収速度などの観点から平均1次粒子径0.003〜0.040μmの1次粒子が凝集してなる平均粒子径0.01〜0.7μmの凝集体顔料がより好ましい。インク中の染料や顔料を固定しやすく、かつ高いインク吸収速度、印字濃度、光沢を得るためには、平均1次粒子径0.005〜0.020μmの1次粒子が凝集してなる平均粒子径0.5μm以下の顔料がさらに好ましい。
【0056】
平均粒子径0.7μm以下の顔料は、たとえば機械的手段で強い力、所謂breakingdown法(塊状原料を細分化する方法)により得ることが可能である。機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、液流衝突式ホモジナイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、乳鉢、擂解機(鉢状容器中の被粉砕物を、杵状攪拌棒で磨砕混練する装置)、サンドグラインダー等が挙げられる。粒子径を小さくする為に、分級と繰り返し粉砕を行なうことができる。
【0057】
本発明でいう平均粒子径は、顔料が粉体、スラリー状に関係なく、まず3%の顔料水分散液を200g調整し、続いて市販のホモミキサーで1000rpm、30分間を攪拌分散した後、直ちに電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し平均したもの。「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年参照)。
【0058】
本発明は、また、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を、鏡面ドラムにより仕上げることもでる。インク受容層を塗布し、該塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト方式)、あるいは該塗工層を一旦乾燥し再湿潤後、過熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト方式)、湿潤状態にあるうちに、ゲル化剤を付与して塗工層をゲル化した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ゲル化キャスト方式)が、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録体が得られるため好ましい。加熱された鏡面ドラムの温度は例えば50〜150℃、好ましくは70〜120℃である。
【0059】
さらに、加熱された鏡面ドラムに樹脂及び必要に応じて顔料を含有して構成される塗工液を直接塗工して、該塗工層がある程度湿潤状態にある間にインク受容層を設けた基材に圧接、乾燥して仕上げる方法(プレキャスト方式)を採用することもできる。さらに、平滑なフィルムやシート上に樹脂及び必要に応じて顔料を含有して構成される塗工液を塗工して、塗工層あるいは張り合わせようとするインク受容層がある程度湿潤状態にある間に基材に圧接、乾燥した後平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法(フィルム転写方式)も採用できる。
【0060】
本発明は、また、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を有し、該インク受容層上に、平均粒子径が0.05μm以下の微細顔料を含有する塗液を塗工し、湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧着して形成した最表層を有するインクジェット記録体を得ることもできる。最表層は、樹脂を含有させて構成される。最表層はインクを速やかに通過または吸収できるよう、光沢を阻害しない範囲で多孔性もしくは通液性にするのが好ましい。このようにするためには、顔料を配合するか、光沢を落とさない範囲で、樹脂が完全に成膜しないような乾燥条件を選択すると良い。
【0061】
最表層に用いる顔料は、インク受容層に用いたものと同様のものが上げられるが、光沢、透明性、インク吸収性の点で、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、酸化アルミニウム、ゼオライト、合成スメクタイトなどが好ましい。これらの顔料は塗工層中に10〜80質量%含まれることが望ましい。顔料のBET式比表面積が大きいほど、インクの吸収性に優れるため、150m/g以上が好ましい。上限は特にないが、例えば1000m/g程度の顔料は入手可能である。
顔料の平均粒子径は0.01〜5μmが好ましく、0.05〜1μmのものがより好ましい。粒子径が0.01μm未満になると、インク吸収性の改良効果に乏しく、5μmを超えると、光沢や印字濃度の低下が起こる恐れがある。特に顔料として一時粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、二次粒子の平均粒子径が10nm以上、300nm以下であるシリカ微粒子を使用すると、光沢、インク吸収性に特に優れたものとなる。光沢層が顔料を主成分(10〜80%)として形成する場合特に好ましい。この場合、光沢層がインク吸収性及び透明性に優れるため、光沢層にカチオン性化合物を配合すると、インク染料が効率よく光沢層に定着し、光沢層の透明性とあいまって印字濃度の極めて優れたものとなりやすい。
【0062】
最表層の樹脂としては、有機高分子、特にポリビニルアルコール類、水性ウレタン樹脂、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合してなる重合体樹脂などが例示できる。水性ウレタン樹脂はジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネートなどのイソシアネート類とポリオール類を反応させて得られる。中でも特にエチレン性不飽和結合を有するモノマー(以下エチレン性モノマーという)を重合してなる重合体組成物が好適に使用され、このような重合体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどのアルキル基炭素数が1〜18個のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性モノマーを重合して得られる重合体が挙げられる。
【0063】
なお、重合体は、必要に応じて2種類以上のエチレン性モノマーを併用した共重合体であっても良いし、さらに、これらの重合体あるいは共重合体の置換誘導体でも良い。また、上記のエチレン性モノマーをコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R(R:重合体成分)結合によって複合体になった形、あるいは上記重合体または共重合体にSiOH基などのコロイダルシリカと反応するような官能基を導入しておき、コロイダルシリカと反応させて複合体になった形で使用することも可能である。この複合体を使用した場合、光沢、インク吸収性に優れたものとなりやすく、さらに後述するキャスト方式を用いた再に、キャストドラムからの離型性に優れたものとなりやすい。複合体粒子は特に限定しないが、例えば平均粒子径が30〜150nm程度である。
【0064】
上記の(共)重合体は、そのガラス転移点が40℃以上のものが好ましく、50〜100℃の範囲であるものがより望ましい。ガラス転移点が低いと乾燥の際に成膜が進みすぎ、表面の多孔性が低下し、インク吸収速度が低下する恐れが生じる。また、乾燥温度が重要であり、乾燥温度が高すぎると成膜が進みすぎ、表面の多孔性が低下し、インク吸収速度が低下し、逆に乾燥温度が低すぎると、光沢に乏しくなる傾向があり、生産性も低下する。光沢層は、塗工層上に樹脂及び必要に応じて顔料を主成分として構成される塗工液を塗工し、適宜スーパーカレンダーなどにより平滑化処理を施すこともできる。
【0065】
最表層は、樹脂及び必要に応じて顔料を主成分として構成される塗工液を塗工して、該塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト方式)、あるいは該塗工層を一旦乾燥し再湿潤後、過熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト方式)が、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用紙が得られるため好ましい。加熱された鏡面ドラムの温度は例えば50〜150℃、好ましくは70〜120℃である。
さらに、加熱された鏡面ドラムに樹脂及び必要に応じて顔料を含有して構成される塗工液を直接塗工して、該塗工層がある程度湿潤状態にある間にインク受容層を設けた基材に圧接、乾燥して仕上げる方法(プレキャスト方式)を採用することもできる。さらに、平滑なフィルムやシート上に樹脂及び必要に応じて顔料を含有して構成される塗工液を塗工して、塗工層あるいは張り合わせようとするインク受容層がある程度湿潤状態にある間に基材に圧接、乾燥した後平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法(フィルム転写方式)を採用することもできる。
光沢層用塗工組成物中には白色度、粘度、流動性などを調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤、及び分散剤、増粘剤などの各種助剤が適宜添加できる。また、カチオン樹脂を配合し、最表層にもインク染料定着性を付与させることが可能である。
【0066】
前述した最表層用塗工液をインク受容層上に塗工する場合、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーターカーテンコーターなどの各種公知の塗工装置が使用できる。またその後、好ましくは前記のように塗工層が湿潤状態にある間に、あるいは一旦乾燥し再湿潤後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥してキャスト仕上げを行う。この場合の光沢層用塗工液の塗工量は、乾燥固形分で、0.2〜30g/m、好ましくは1〜10g/mである。ここで、0.2g/m未満では光沢が十分に出ない場合があり、30g/mを超えて多いとインク乾燥性が劣ったり、記録濃度が低下する恐れがある。最表層を設けた後で、さらにスーパーカレンダーなどにより平滑化処理を行うこともできる。最表層の役割もかねるインク受容層を1層のみ基材に設け、前記キャスト方式で仕上げて、キャスト方式のインクジェット記録用紙を得ることもできる。この場合、好ましくは最表層に関して前記した顔料を用いる。
【0067】
本発明は、また、光沢タイプのインクジェット記録体の場合、インク受容層用塗工液を塗工と同時、或いはその後に増粘またはゲル化させ、乾燥することにより得られるマイクロポーラスな層を形成することが好ましい。インク受容層用塗工液を塗工と同時、或いはその後に増粘またはゲル化させる方法としては、特に限定するものではない。例えば、(a)記録層に配合した親水性バインダーと架橋反応可能な架橋剤を用いて増粘またはゲル化させる方法、(b)電子線などのエネルギーを供給することにより増粘またはゲル化させる方法、(c)親水性バインダーとして、温度条件によって親水性と疎水性を示す感温性高分子化合物を用い、温度変化させることにより増粘またはゲル化させる方法などが挙げられる。
【0068】
(a)記録層に配合した親水性バインダーと架橋反応可能な架橋剤を用いて増粘またはゲル化させる方法としては、前記例示した親水性バインダーと、該親水性バインダーを架橋反応可能な架橋剤を組み合わせて使用する。例えば、架橋剤を予め基材に塗布・含浸させておき、記録層用塗工液を塗布する、記録層用塗工液に架橋剤を配合せしめておき塗布する、記録層用塗工液を塗布後、架橋剤を塗布する方法などにより製造するとよいが、架橋剤を予め塗布しておくことが、増粘またはゲル化が均一な記録層が得られるため、好ましい。
【0069】
架橋剤としては、ホウ素化合物、エポキシ化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等などが例示できる、中でも、ホウ素化合物は、増粘またはゲル化が早く生じるので特に好ましい。
【0070】
ホウ素化合物としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことである。例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。このなかで、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが塗料を適度に増粘させる効果があるために好ましく用いられる。
ホウ素化合物の含有量は、ホウ素化合物及び親水性バインダーの種類にもよるが、基材の片面に0.01〜1.5g/m含有されるのが好ましい。1.5g/mより多いと親水性バインダーとの架橋密度が高くなり、塗膜が硬くなって折り割れしやすくなる。また、0.01g/mより少ないと親水性バインダーとの架橋が弱く、塗料のゲル化も弱くなって塗膜がひび割れやすくなる。
【0071】
(b)電子線などのエネルギーを供給することにより増粘またはゲル化させる方法としては、記録層のバインダーとして、ラジカル重合性の不飽和結合を有さず、かつ水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する親水性バインダーを用い、前記微細顔料100質量部に対して、親水性バインダー1〜100質量部の割合で含有する塗工液を塗布し、ついで電子線を照射して該塗布された塗工液をハイドロゲル化させた後、乾燥して形成して記録層を形成するとよい。
【0072】
ラジカル重合性の不飽和結合を有さず、かつ水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、カゼイン、及びこれらの水溶性誘導体、並びにこれらの共重合体などが例示でき、これらを単独使用、或いは併用するとよい。
【0073】
電子線の照射方式としては、例えばスキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが採用され、電子線を照射する際の加速電圧は50〜300kV程度が適当である。電子線の照射量は1〜200kGy程度の範囲で調節するのが好ましい。1kGy未満では塗工層をゲル化させるのに不十分であり、200kGyを越えるような照射は基材や塗工層の劣化や変色をもたらす恐れがあるため好ましくない。
【0074】
(c)親水性バインダーとして、温度条件によって親水性と疎水性を示す感温性高分子化合物を用い、温度変化させることにより増粘またはゲル化させる方法としては、バインダーとして、感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点より高い温度領域では疎水性を示す感温性高分子化合物を用いるとよい。
【0075】
この感温性高分子化合物を用いた場合、感温点以上の温度で塗工を行い、感温点以下に冷却することにより、塗工した層が増粘またはゲル化され、その後乾燥して記録層を形成するとよい。このような感温性高分子化合物としては、特開2003−40916号公報に開示されている、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール誘導体の共存下に重合して得られる感温性高分子化合物が例示できる。
【0076】
上記のようにして調製されたインク受容層用塗工液は、例えば以下のような方法で塗布される。該記録層が減率乾燥部になる(減率乾燥速度を示す)前に、増粘またはゲル化(例えば、ホウ素化合物等の架橋剤によって塗工液を増粘またはゲル化)させて形成する。これは、塗料を乾燥初期に増粘またはゲル化させることで乾燥時の熱風による塗工層のひび割れを防ぎ、また基材への塗料のしみ込みを防止する大きな効果を有する。特に、感温性高分子化合物を用い、冷却により塗工液をゲル化する場合、ひび割れが発生しないので特に好ましい。
【0077】
インク受容層用塗工液の塗工量は特に限定するものではないが、5〜40g/m程度、好ましくは7〜30g/mある。塗布量が少ないと、高精細且つ高速の昨今のプリンターではインク吸収速度が不足するおそれがあり、多すぎると塗膜のひび割れの制御が困難である。
インク吸収速度とインク吸収容量のバランスから、記録層の塗布量は後で述べる最表層塗布量の3倍以上が好ましい。7倍以上がさらに好ましく、10〜60倍は最も好ましい範囲である。
【0078】
インク受容層用塗工液を塗布する塗工装置としては、塗料の物性及び塗工量の点から前計量法の塗工方法が好適である。前計量法の塗工方法としては、リップコーター、カーテンコーター、スライドビード、スライドホッパー、およびスロットダイなどのダイコーター等、各種公知のものが挙げられる。また、二層以上塗工する場合にはWet on Wet(下層が未乾燥のうちに上層を下層の上に塗工する方法)で塗工することが好ましい。
【0079】
本発明のインク受容層の乾燥方法は特に限定はしない。従来から塗工機で使用されている乾燥装置が利用でき、例えば、熱風乾燥、ガスヒーター乾燥、高周波乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥、レーザー乾燥等の各種加熱乾燥方式が好ましく、適宜使用される。このなかで、熱風乾燥がコストの面で有利であるため好ましく採用される。また、最表層を鏡面ドラムで仕上げをして、高光沢を付与することも可能である。
【実施例】
【0080】
以下の実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろんこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例において示す部数及び%は質量部及び質量%を意味する。
【0081】
(下塗り層塗工液の作成)
カオリン(商品名:UW90、エンゲルハード(株)製)100部を分散した分散液と、結着剤としてスチレン・ブタジエン系ラテックス(商品名:ニポールLX407F、日本ゼオン(株)製)10%水溶液200部を混合して下塗り層塗工液を作成した。
【0082】
(インク受容層塗工液の作成)
無定形シリカ(商品名:ファインシールX−37、(株)トクヤマ製、BET比表面積260m/g、平均粒径2.8μg)100部をカチオン樹脂(商品名:ユニセンスCP−103、センカ工業(株)製)の10%水溶液500部中に分散した分散液と、結着剤として変性ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールR1130、(株)クラレ製)10%水溶液250部を混合してインク受容層用塗工液を作成した。
【0083】
(光沢層塗工液1の作成)
スチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体とコロイダルシリカの複合体(商品名:モビニール8055、ヘキスト合成(株)製)100部、アルキルビニルエーテル・マレイン酸誘導体共重合体(増粘、分散剤)5部、レイシチン(離型剤)3部を混合して光沢層用塗工液1を作成した。
【0084】
「カチオン性微細顔料の調製」
市販気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均一次粒子径9nm、比表面積300m/g、(株)トクヤマ製)をサンドグラインダーにより水分散粉砕した後、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて、粉砕分散を繰り返し、分級後、平均二次粒子径80nmからなる10%分散液を調製した。
該分散液にカチオン性化合物として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績(株)製)10部を添加し、顔料の凝集と、分散液の増粘を起こさせた後、再度ナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均二次粒子径300nmからなる8%分散液を調製しカチオン性微細顔料を得た。
【0085】
(光沢層塗工液2の作成)
上記カチオン性微細顔料100部、感温性高分子化合物(ALB−8.01、旭化成(株)製、感温点15℃、ガラス転移温度90℃)20部、ステアリン酸アミド5部、消泡剤0.1部を混合して光沢層塗工液2を作成した。なお、各材料を混合する際の温度は40℃とした
【0086】
実施例1
(紙支持体の作製)
カナダ式標準ろ水度(以下CSFと略す)450mlのLBKPを90部と、繊維の含有水分が4.0%以下になるように乾燥し、その状態を24時間維持した後、再び湿潤状態にしてCSF450mlに調整したLBKPを10部に、填料としてカオリン23部、歩留り剤0.01部を加え、次いで変性ロジンサイズ剤0.2部を加えて長網抄紙機にて、150g/mの上質紙を抄造した後、濃度2%の変性でん粉からなる表面サイズ液を付着量40ml/mとなるようにサイズプレスし、紙支持体とした。この紙支持体の灰分は15%であった。100g/mに換算したステキヒトサイズ度は75秒であった。
【0087】
(インクジェット記録体の作製)
得られた紙支持体を用い、その片面に上記インク受容層塗工液を、紙支持体に掛ける張力を30kg/mとし、乾燥後の塗布量が20g/mとなるように塗工、乾燥した後、スーパーカレンダー処理(線圧50kg/cm、通紙速度5m/分)を行ってインクジェット記録体を得た。
【0088】
実施例2
(紙支持体の作製)
繊維の含有水分が4.0%以下になるように乾燥し、その状態を24時間維持した後、再び湿潤状態にしてCSF450mlに調整したLBKPを100部に、填料としてカオリン
23部、歩留り剤0.01部を加え、次いで変性ロジンサイズ剤0.2部を加えて長網抄紙機にて、150g/mの上質紙を抄造した後、濃度2%の変性でん粉からなる表面サイズ液を付着量40ml/mとなるようにサイズプレスし、紙支持体とした。この紙支持体の灰分は15%であった。100g/mに換算したステキヒトサイズ度は75秒であった。
【0089】
(インクジェット記録体の作製)
得られた紙支持体を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
【0090】
実施例3
(紙支持体の作製)
実施例1の紙支持体の作製において、更にポリアミン・エピクロルヒドリン系湿潤紙力増強剤0.2部を配合した以外は実施例1と同様にして紙支持体を作製した。この紙支持体の灰分は15%であった。100g/mに換算したステキヒトサイズ度は78秒であった。
【0091】
(インクジェット記録体の作製)
得られた紙支持体を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
【0092】
実施例4
(紙支持体の作製)
カナダ式標準ろ水度(以下CSFと略す)250mlのLBKPを90部と、繊維の含有水分が4.0%以下になるように乾燥し、その状態を24時間維持した後、再び湿潤状態にしてCSF450mlに調整したLBKPを10部に、填料としてカオリン23部、歩留り剤0.01部を加え、次いで変性ロジンサイズ剤0.2部を加えて長網抄紙機にて、150g/mの上質紙を抄造した後、濃度2%の変性でん粉からなる表面サイズ液を付着量40ml/mとなるようにサイズプレスし、紙支持体とした。この紙支持体の灰分は15%であった。100g/mに換算したステキヒトサイズ度は75秒であった。
【0093】
(インクジェット記録体の作製)
得られた紙支持体を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
【0094】
比較例1
実施例1の紙支持体の作製において、変性ロジンサイズ剤の配合を0.01部にした以外は実施例1と同様にして、紙支持体を得た。この紙支持体の灰分は15%であった。100g/mに換算したステキヒトサイズ度は10秒であった。
【0095】
(インクジェット記録体の作製)
得られた紙支持体を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
【0096】
比較例2
実施例1の紙支持体の作製において、変性ロジンサイズ剤の配合を0.35部にした以外は実施例1と同様にして、紙支持体を得た。この紙支持体の灰分は15?%であった。100g/mに換算したステキヒトサイズ度は200秒であった。
【0097】
(インクジェット記録体の作製)
得られた紙支持体を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
【0098】
比較例3
カナダ式標準ろ水度(以下CSFと略す)450mlのLBKPを100部、填料としてカオリン23部、歩留り剤0.01部を加え、次いで変性ロジンサイズ剤0.2部を加えて長網抄紙機にて、150g/mの上質紙を抄造した後、濃度2%の変性でん粉からなる表面サイズ液を付着量40ml/mとなるようにサイズプレスし、紙支持体とした。この紙支持体の灰分は15?%であった。100g/mに換算したステキヒトサイズ度は75秒であった。
【0099】
(インクジェット記録体の作製)
得られた紙支持体を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
【0100】
実施例5
(インクジェット記録体の作製)
実施例1で得られた紙支持体を用い、その片面に上記インク受容層塗工液を、紙支持体に掛ける張力を30kg/mとし、乾燥後の塗布量が20g/mとなるように塗工、乾燥した後、スーパーカレンダー処理(線圧50kg/cm、通紙速度5m/分)を行ってインク受容層を形成した。
次いで、インク受容層上に更に、光沢層塗工液1をロールコーターを用いて塗工した後、直ちに表面温度が85度の鏡面ドラムに圧接し、乾燥、離型させ、キャストタイプの光沢インクジェット記録体を得た。
【0101】
比較例4
(インクジェット記録体の作製)
比較例1で得られた紙支持体を用い、その片面に上記インク受容層塗工液を、紙支持体に掛ける張力を30kg/mとし、乾燥後の塗布量が20g/mとなるように塗工、乾燥した後、スーパーカレンダー処理(線圧50kg/cm、通紙速度5m/分)を行ってインク受容層を形成した。
次いで、インク受容層上に更に、光沢層塗工液1をロールコーターを用いて塗工した後、直ちに表面温度が85度の鏡面ドラムに圧接し、乾燥、離型させ、キャストタイプの光沢インクジェット記録体を得た。
【0102】
実施例6
(インクジェット記録体の作製)
実施例1で得られた紙支持体を用い、その片面に上記インク受容層塗工液を、紙支持体に掛ける張力を30kg/mとし、乾燥後の塗布量が20g/mとなるように塗工、乾燥した後、スーパーカレンダー処理(線圧50kg/cm、通紙速度5m/分)を行ってインク受容層を形成した。
次いで、インク受容層上に更に、光沢層塗工液2を、塗工液温度25℃で、絶乾質量で6g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、続いて冷風機を用いて温度が10℃になるまで冷却し、該塗工液をゲル化させた。続いて塗工層が湿潤状態にある間に、表面温度90℃の鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げ、インクジェット記録体を得た。
【0103】
実施例7
(インクジェット記録体の作製)
実施例1で得られた紙支持体を用い、その片面に上記インク受容層塗工液を、紙支持体に掛ける張力を30kg/mとし、乾燥後の塗布量が20g/mとなるように塗工、乾燥した後、スーパーカレンダー処理(線圧50kg/cm、通紙速度5m/分)を行ってインク受容層を形成した。
次いで、インク受容層上に更に、光沢層塗工液2を、塗工液温度25℃で、絶乾質量で3g/mとなるようにロールコーターを用いて塗工し、該塗工層の温度を低下させずに、該塗工層が湿潤状態にある間に表面温度90℃の鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げ、インクジェット記録体を得た。
【0104】
実施例8
(インクジェット記録体の作製)
実施例1で得られた紙支持体を用い、その片面に上記インク受容層塗工液を、紙支持体に掛ける張力を30kg/mとし、乾燥後の塗布量が20g/mとなるように塗工、乾燥した後、スーパーカレンダー処理(線圧50kg/cm、通紙速度5m/分)を行ってインク受容層を形成した。
次いで、インク受容層上に更に、光沢層塗工液2を、塗工液温度25℃で、絶乾質量で6g/mになるようにバーコーターを用いて塗工し、続いて冷却装置を用いて温度が10℃になるまで冷却し、該塗工液をゲル化させた。続いて該塗工層に90℃の熱風を送風して乾燥して仕上げ、インクジェット記録体を得た。
【0105】
実施例9
(インクジェット記録体の作製)
実施例1で得られた紙支持体を用い、その両面に下塗り層塗工液を乾燥後の塗布量が各20g/mとなるように塗工、乾燥した以外は実施例1と同様にインクジェット記録体を作製した。
【0106】
このようにして得られたインクジェット記録体用支持体(紙支持体)についての、水中伸度、ステキヒトサイズ度およびガーレーこわさの評価を、また、インクジェット記録体についてのインクジェット記録適性、及び印字後のコックリングの評価を、下記の方法にて行い、表1にまとめた。
【0107】
[水中伸度]
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.27−B法に基づき、インクジェット記録体用支持体におけるCD方向の水中伸度測定を行った。
【0108】
[ステキヒトサイズ度]
JIS P 8122法に基づき、インクジェット記録体用支持体のステキヒトサイズ度(100g/m換算)の測定を行った。
【0109】
〔ガーレーこわさ〕
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法N0.40法に準じ、30℃、80%RHの環境下で、インクジェット記録体用支持体のこわさを測定した。
【0110】
[インクジェット記録適性]
インクジェットプリンターPM970C(セイコーエプソン(株)製)を用いて印字を行った。
【0111】
(印字ニジミ)
ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー各色のベタ印字を、境界部が互いに接するように印字し、境界でのニジミを目視にて評価した。
◎:ニジミは見られず良好なレベル。
○:ニジミは若干あるが、実用上問題とならないレベル。
△:ニジミがやや目立ち、実用上やや問題となるレベル。
×:ニジミが著しく、実用上重大な問題となるレベル
【0112】
(コックリング)
印字1日後のコックリング状況を目視で評価した。
○:コックリングの発生が見られず、良好である。
×:コックリングが発生し、問題となるレベルである。
【0113】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のインクジェット記録体用支持体を用いることにより、印刷後のボコツキが少なく、フルカラー印刷にもコックリングが発生しない、高精細な画像を良好な再現性で記録するインクジェット記録体を得ることができる。また、紙支持体にラミネート加工を施すことなく、高品位のインクジェット記録体を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録用インキにより記録を行うインク受容層を少なくとも片面に有するインクジェット記録体用支持体において、
支持体が、熱可塑性樹脂によるラミネート層を有さないパルプを主成分とする紙であり、J.TAPPI No.27−Bにより測定したCD方向の水中伸度が2.0%以下であり、坪量100g/mに換算したときのステキヒトサイズ度が20秒以上150秒以下であり、且つ、30℃、80%RHの環境下で、J.TAPPI 紙パルプ試験法 No.40に準じて測定したCD方向のガーレーこわさが2.5mN以上であることを特徴とするインクジェット記録体用支持体。
【請求項2】
パルプとして、乾燥履歴を経たドライパルプ及び/またはリサイクルパルプを含む請求項1記載のインクジェット記録体用支持体。
【請求項3】
全パルプ中5%以上、乾燥履歴を経たドライパルプ及び/又はリサイクルパルプを含む請求項2記載のインクジェット記録体用支持体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を少なくとも一層有するインクジェット記録体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を少なくとも一層有し、該インク受容層上に平均粒子径0.5μm以下の顔料を含有する光沢発現層を有するインクジェット記録体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を有し、該インク受容層表面が鏡面ドラムにより仕上げられているインクジェット記録体。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録体用支持体の片面に、顔料と接着剤とインク定着剤を有するインク受容層を有し、該インク受容層上に、平均粒子径が0.05μm以下の微細顔料を含有する塗液を塗工し、湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧着して形成した最表層を有するインクジェット記録体。
【請求項8】
インク受容層の接着剤が、温度により親水性と疎水性を可逆的に示す感温性高分子化合物である請求項4〜7のいずれか一項記載のインクジェット記録体。


【公開番号】特開2006−1219(P2006−1219A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182067(P2004−182067)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】